(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054731
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20240410BHJP
H01L 33/54 20100101ALI20240410BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161152
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田井 浩平
(72)【発明者】
【氏名】田渕 健司
(72)【発明者】
【氏名】椎名 紘大
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA32
5F142AA65
5F142BA02
5F142BA24
5F142CA11
5F142CA13
5F142CC16
5F142CC26
5F142CE06
5F142CE22
5F142CG05
5F142CG26
5F142DA12
5F142DB16
5F142FA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】樹脂とリードフレームとの剥離が防止され、ダイシェア強度が高く、また断線不良、樹脂成形体のカール及び内部損傷等が防止された発光装置を提供する。
【解決手段】板状の複数のリード電極と複数のリード電極を埋設する樹脂枠体とからなり、複数のリード電極が露出する、互いに平行な第1及び第2の主面を有する基板成形体と、基板成形体の第1の主面から露出したリード電極上に実装された半導体発光素子と、基板成形体の前記第1の主面及び前記半導体発光素子を覆う封止部材と、を備えている。基板成形体は、外縁部が第1の主面から窪んだ環状の段差部を有し、複数のリード電極の各々は、基板成形体の外縁に向いてリード電極の本体部から突出し、かつ突出端の端面全体が段差部の側面と同一面上に露出した第1の突出部を有し、封止部材は、基板成形体の段差部を覆う外縁凸部を有している。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の複数のリード電極と前記複数のリード電極を埋設する樹脂枠体とからなり、前記複数のリード電極が露出する、互いに平行な第1及び第2の主面を有する基板成形体と、
前記基板成形体の前記第1の主面から露出した前記リード電極上に実装された半導体発光素子と、
前記基板成形体の前記第1の主面及び前記半導体発光素子を覆う封止部材と、を備え、
前記基板成形体は、外縁部が前記第1の主面から窪んだ環状の段差部を有し、
前記複数のリード電極の各々は、前記基板成形体の外縁に向いて前記リード電極の本体部から突出し、かつ突出端の端面全体が前記段差部の側面と同一面上に露出した第1の突出部を有し、
前記封止部材は、前記基板成形体の前記段差部を覆う外縁凸部を有する、半導体発光装置。
【請求項2】
前記第1の突出部は、前記リード電極の前記本体部よりも小なる厚さの薄肉端部を有する請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第1の突出部の前記突出端の端面は切断端面である請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記第1の突出部の前記突出端の前記端面を除き、前記複数のリード電極の表面にはメッキ層が施され、前記突出端の前記端面には前記リード電極の芯材が露出している請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記複数のリード電極の各々は、他のリード電極に向けて突出し、前記第1の主面から露出した第2の突出部を有する請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記第2の突出部は、前記リード電極の前記本体部よりも小なる厚さの薄肉端部を有する請求項5に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記第2の突出部の突出端の端面は切断端面である請求項5に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記半導体発光素子は、前記複数のリード電極の前記第2の突出部上に実装されている請求項5に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記半導体発光装置の外側面に露出する基板形成体と封止部材が同一面である請求項1に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、特にリードフレームに発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子が実装された発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インサート成形によって樹脂体をリードフレームに設け、ダイサーで切断して形成される発光装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、切り欠き部を設けたリードフレームに樹脂成形体を形成し、切り欠き部に沿って樹脂成形体とリードフレームとを切断して発光装置を形成する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、発光素子と第1及び第2のリードとを一体成形してなる第1の樹脂成形体と、発光素子を被覆する蛍光体を含有する第2の樹脂成形体と有する表面実装型発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-62272号公報
【特許文献2】特開2006-156704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一体成形された樹脂及びリードフレームの切断によって、樹脂とリードフレームとの剥離、断線不良、リードフレーム端面からの腐食進行等の問題があった。さらに、リードフレームの切断に起因する樹脂成形体のカール、切断応力による装置内部の接合部材及び接続部材等の損傷等の問題があった。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、樹脂とリードフレームとの剥離が防止され、リードフレーム端面からの腐食、また断線不良、樹脂成形体のカール及び内部損傷等が防止された発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1実施形態による発光装置は、
板状の複数のリード電極と前記複数のリード電極を埋設する樹脂枠体とからなり、前記複数のリード電極が露出する、互いに平行な第1及び第2の主面を有する基板成形体と、
前記基板成形体の前記第1の主面から露出した前記リード電極上に実装された半導体発光素子と、
前記基板成形体の前記第1の主面及び前記半導体発光素子を覆う封止部材と、を備え、
前記基板成形体は、外縁部が前記第1の主面から窪んだ環状の段差部を有し、
前記複数のリード電極の各々は、前記基板成形体の外縁に向いて前記リード電極の本体部から突出し、かつ突出端の端面全体が前記段差部の側面と同一面上に露出した第1の突出部を有し、
前記封止部材は、前記基板成形体の前記段差部を覆う外縁凸部を有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】第1の実施形態による発光装置の上面を示す図である。
【
図1B】第1の実施形態による発光装置の側面を示す図である。
【
図1C】第1の実施形態による発光装置の裏面を示す図である。
【
図2A】発光装置の封止部材を取り除いた状態の内部構造を模式的に示す上面図である。
【
図2B】
図2Aに示す中心線CX-CXに垂直な方向Sから発光装置を見た場合を示す図である。
【
図3A】
図2Aに示す線A-Aに沿った発光装置の断面を示す断面図である。
【
図3B】
図2Aに示す線B-Bに沿った発光装置の断面を示す断面図である。
【
図4B】
図4Aに示す線B-Bに沿った基板成形体の断面を示す断面図である。
【
図4C】
図4Aに示す線A-Aに沿った基板成形体の断面を示す断面図である。
【
図5A】発光装置の製造工程のステップS1を示す平面図である。
【
図5B】発光装置の製造工程のステップS2を示す平面図である。
【
図5C】発光装置の製造工程のステップS3,S4を示す平面図である。
【
図5D】発光装置の製造工程のステップS5を示す平面図である。
【
図5E】発光装置の製造工程のステップS6を示す平面図である。
【
図5F】発光装置の製造工程のステップS7を示す平面図である。
【
図5G】発光装置の製造工程のステップS8を示す平面図である。
【
図5H】発光装置の製造工程のステップS9を示す平面図である。
【
図6】第1の実施形態の改変例1である発光装置の断面を示す断面図である。
【
図7】第1の実施形態の改変例2である発光装置の断面を示す断面図である。
【
図8】第1の実施形態の改変例3である発光装置の断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1A、
図1B及び
図1Cは、本発明の第1の実施形態による発光装置10の、それぞれ上面、側面及び裏面を示す図である。発光装置10は、基板成形体11上に封止部材30が形成されている。
【0012】
図1Cに示すように、発光装置10の基板成形体11は、板状の複数のリード電極(以下、単にリードともいう。)及び樹脂枠体11Aを有している。より具体的には、発光装置10は、発光装置10の裏面から露出した第1のリード12A、第2のリード12B及び第3のリード12Cを有している。
【0013】
図2Aは、発光装置10の封止部材30を取り除いた状態の内部構造を模式的に示す上面図である。また、
図2Bは、
図2Aに示す中心線CX-CXに垂直な方向(図中、方向S)から発光装置10を見た場合を示す側方図である。なお、内部構造の理解の容易さのため、封止部材30を取り除いた状態を模式的に示している。
【0014】
また、
図3Aは、
図2Aに示す線A-Aに沿った発光装置10の断面を示す断面図である。
図3Bは、
図2Aに示す線B-Bに沿った発光装置10の断面を示す断面図である。
【0015】
図2A、
図2B及び
図3Aに示すように、2つの半導体発光素子(以下、単に発光素子という。)21及び発光素子22が、基板成形体11の上面から露出したリードに接合されて実装されている。
【0016】
より具体的には、
図2A及び
図3Aに示すように、発光素子21は、裏面に素子電極である第1の電極21A(例えば、アノード)及び第2の電極21B(例えば、カソード)を有している。第1の電極21Aは接合部16Aによって第1のリード12Aに電気的に接続され、第2の電極21Bは接合部16Bによって第2のリード12Bに電気的に接続されている。
【0017】
また、発光素子22は、裏面に第1の電極22A(例えば、アノード)及び第2の電極22B(例えば、カソード)を有している。第1の電極22Aは接合部17Aによって第2のリード12Bに電気的に接続され、第2の電極21Bは接合部17Bによって第3のリード12Cに電気的に接続されている。
【0018】
この場合、第1のリード12A及び第3のリード12Cはそれぞれ発光装置10のアノード及びカソードとして機能し、第2のリード12Bは発光素子21及び発光素子22を直列接続する中間電極(中継電極)として機能する。
【0019】
発光素子21及び発光素子22は、
図2B及び
図3Aに示すように、その上面が出射面であり、素子の上方に出射光LEを放射する。より詳細には、発光素子21及び発光素子22の上面と同じ材質からなる連続する側面は副出射面であり、素子の側方にも一定量の出射光を放射する。
【0020】
発光素子21及び22は、例えば、青色の放出光を発する半導体発光ダイオード(LED)である。具体的には、発光素子21及び22は、n型半導体層、発光層及びp型半導体層を含む半導体構造層が形成された窒化ガリウム系のLEDである。
【0021】
なお、発光素子21及び22の発光色は青色に限られず、また、窒化ガリウム系以外の結晶系の半導体構造層を用いてもよい。さらに、発光素子21及び22は、LEDに限られず、半導体レーザ等であってもよい。
【0022】
封止部材30は、基板成形体11の上面11Sの全体を覆い、発光素子21,22等の基板成形体11上に設けられた部材を埋め込むように形成されている。
【0023】
封止部材30は、波長変換材が含まれた透光性樹脂からなる。透光性樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。
【0024】
また、波長変換材として、青色LED光を受けて黄色光を発する蛍光体粒子が含まれている。したがって、封止部材30の出射面からは白色光が出射される。また、波長変換材として青色LED光を受けて緑色光、赤色光及び緑黄色光を発する蛍光体粒子であってもよい。また、同様な作用のあるナノ波長変換粒子でもよい。
【0025】
なお、蛍光体は、特に限定されないが、例えばYAG(イットリウムムアルミニウムガーネット)、LuAG(ルテチウムアルミニウムガーネット)、GYAG(ガドリニウムアルミニウムガーネット)、α、βサイアロン、SCASN、CASN、KFS等の各種蛍光体を適宜用いることができる。
【0026】
また、ナノ波長変換粒子としてはCdTe系、ZnCdSe系、InN系、AgInS2系、PdS系などのII-VI族系、II-V-VI族系、III-V族系、I-III-IV族系、IV-VI族系の量子ドット(QD:Quantum Dot)を適宜用いることができる。なお、ナノ波長変換粒子の場合は、発光素子21及び22の出射面に直接塗布することもできる。
【0027】
また、発光装置10は、第1のリード12Aに接合され、第2の電極21BにボンディングワイヤBWで電気的に接続された保護素子25が設けられている。すなわち、保護素子25は、直列接続された発光素子21及び発光素子22と並列に接続されている。
【0028】
保護素子25は、ツェナーダイオードを例示することができるが、これに限らない。保護素子33としてバリスタ等を用いることもできる。また、キャパシタ、抵抗、受光素子等の受動素子が設けられていてもよい。
【0029】
(1)樹脂枠体及びリード
以下に、基板成形体11について図面を参照して詳細に説明する。
図4Aは、基板成形体11の上面を示す平面図である。
図4B及び
図4Cは、それぞれ
図4Aに示す線B-B及び線A-Aに沿った基板成形体11の断面を示す断面図である。
【0030】
基板成形体11は、リード12A、リード12B及びリード12Cからなる複数のリード(以下、発光装置10のリードフレーム12ともいう。)と、リード12A,12B及び12Cを保持する樹脂枠体11Aとを有している。
【0031】
より詳細には、リード12A,12B及び12Cに樹脂枠体11Aがインサート成形され、樹脂枠体11Aがリード間の間隙を埋設しつつ矩形板状の基板成形体11として形成されている。
【0032】
樹脂枠体11Aは、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂に酸化チタン粒子等の光反射性粒子を加えて形成されている。あるいは、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂にカーボンブラック等の光吸収性粒子を加えて形成してもよい。
【0033】
リード12A,12B及び12Cは、互いに離間して形成されている。なお、以下において、リード12A,12B及び12Cを特に区別しない場合は、単にリード12と称する。
【0034】
リード12A,12B及び12Cのコア材(芯材)は、良エッチング性(腐食性)の金属である銅(Cu)からなり、表面には耐食性の金属であるニッケル/金(Ni/Au)または、ニッケル/パラジウム/金(Ni/Pd/Au)がメッキされている。
【0035】
また、リード12A,12B及び12Cの表面には反射率の高いニッケル(Ni)/銀(Ag)のメッキ層が設けられていてもよい。
【0036】
リードの最表面が耐腐食性のAuならば、リード12A,12B及び12Cへの発光素子21,22の接合、及び、回路基板(図示しない)上への発光装置10のはんだ実装を安定に行うことができる。またリードの最表面が反射率の高いAgならば、発光素子21,22の光出力を向上することができる。
【0037】
なお、 リード12A,12B及び12C(すなわちリードフレーム12)のコア材としては、腐食性の金属であるアルミニウム(Al)、鉄-ニッケル-コバルト(Fe-Ni-Co)等の鉄合金などを用いることができる。
【0038】
また、リード12A,12B及び12Cの表面には、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の耐食性の金属層を設けることもできる。
【0039】
図4B及び
図4Cに示すように、基板成形体11は、リード12A、リード12B及びリード12Cの上面と樹脂枠体11Aの上面とが同一面である上面11Sを有している。また、リード12A、リード12B及びリード12Cの裏面と樹脂枠体11Aの裏面とが同一面である裏面11Rを形成している。すなわち、樹脂枠体11Aの厚さとリードフレーム12の厚さとは同一である。
【0040】
なお、本明細書において「同一」又は「同一面」とは、インサート成形等によって、リードフレーム12と樹脂との基板成形体11を形成して得られる程度の実質的な同一又は同一面を意味する。
【0041】
したがって、基板成形体11は、互いに平行な2つの主面、すなわち、上面11S(第1の主面)及び裏面11R(第2の主面)を有している。そして、リード12A、12B及び12Cは上面11S及び裏面11Rにおいて露出している。
【0042】
なお、リード12A、12B及び12Cの上面/裏面と樹脂枠体11Aの上面/裏面とが同一面であることが好ましい。但し、必ずしも同一面でなくてもよい。
【0043】
基板形成体11の上面と裏面が同一面ならば、例えば、基板形成体11の上面に発光素子21,22の実装が容易なる。また、回路基板(図示しない)への発光装置10の実装が容易になる。すなわち、発光装置10の断線不良などの損傷を防ぐことができる。また、基板形成体11の上面と裏面が同一面又は非同一面の何れであっても、基板形成体11は発光装置10の裏面側への光漏れを防止し、裏面からの環境ガス等の侵入を遮蔽する。
【0044】
また、
図4A~
図4Cに示すように、リード12A、リード12B及びリード12Cは、それぞれリード本体部12AM,12BM及び12CM(破線で囲んで示している)と、リード本体部12AM,12BM及び12CMの周囲部に設けられ、リード面内において突出する突出部を有し、当該突出部にはリード本体部よりも厚さの小なる薄肉部が形成されている。
【0045】
より詳細には、リード12A,12B及び12Cは、それぞれリード12A,12B及び12Cから基板成形体11の外縁(側面)に向いて突出した第1の突出部12A1,12B1及び12C1を有している。
【0046】
具体的には、リード12Aは、それぞれ互いに直交する方向に突出した2つの突出部12A1を有し、リード12Cは、当該直交方向に突出した2つの突出部12C1を有している。また、リード12Bは、当該直交方向に突出した4つの突出部12B1を有している。
【0047】
また、リード12A及びリード12Bの各々は、それぞれ他方のリード12B及びリード12Aに向けて突出した第2の突出部12A2及び12B2を有している。また、リード12C及びリード12Bの各々は、それぞれ他方のリード12B及び12Cに向けて突出した第2の突出部12C2及び12B2を有している。すなわち、リード12Bは、リード12A2及びリード12C2に対向する2つの第2の突出部12B2を有している。なお、本実施形態においては2つの突出部12B2は一体化している。
【0048】
リード12Aの突出部12A2及びリード12Bの突出部12B2間には発光素子21が実装され、リード12Cの突出部12C2及びリード12Bの突出部12B2間には発光素子22が実装され、発光素子21及び発光素子22が直列接続されている。
【0049】
図4A~
図4Cに示すように、第1の突出部12A1,12B1及び12C1及び第2の突出部12A2,12B2及び12C2は、リード12A、リード12B及びリード12Cの上部に設けられ、厚さが薄い薄肉部として形成されている。なお、
図2Aに示すように、リード12Cは、中心線CYに対してリード12Aに対称な形状を有している。
【0050】
より詳細には、第1の突出部12A1,12B1及び12C1及び第2の突出部12A2,12B2及び12C2は、いわゆるハーフエッチングによって、リードの裏面からリードの厚さに対して、例えば50%程度の深さで削られて形成されている。
【0051】
また、リード本体部12AM,12BM及び12CMの裏面が基板成形体11の裏面から露出しており(
図1Cを参照)、リード本体部12AM,12BM及び12CMの当該露出面が発光装置10を回路基板の配線上に実装する際の実装電極面である。
【0052】
すなわち、リード本体部12AM,12BM及び12CM以外のリード周囲部が裏面側からのエッチングによって薄肉化されている。したがって、この構造によりリード12A,12B及び12Cと樹脂枠体11Aの樹脂との接着面積が増加し、かつ樹脂充填部が一体化するので電極から剥離することを防止することができる。また、薄肉化されているので、リードフレーム12の切断が容易である。
【0053】
なお、第1の突出部12A1,12B1及び12C1及び第2の突出部12A2,12B2及び12C2は、全体が薄肉部として形成されている場合について説明したが、これに限らず、薄肉部が突出部の端部に部分的に設けられていてもよい。すなわち、第1の突出部12A1,12B1及び12C1、及び、第2の突出部12A2,12B2及び12C2が、リード本体部よりも小なる厚さの端部(薄肉端部)を有していてもよい。
【0054】
図4A~
図4Cに示すように、基板成形体11の外縁部には矩形環状の段差部STが設けられている。段差部STは、段差側面SA及び段差底面SBからなる。より詳細には、基板成形体11の樹脂枠体11Aの側面全体が内側に段差状に削られた形状を有し、樹脂枠体11Aの上面が基板成形体11の上面11Sから窪んだ段差部STが設けられている。
【0055】
ここで、樹脂枠体11Aの段差側面SAと、第1の突出部12A1,12B1及び12C1の先端の端面CE(以下、突出端の端面CEという。)とは同一面上にあり、
図2Bに示すように、突出端の端面CEの全体が樹脂枠体11Aの段差側面SAから露出している。
【0056】
また、
図4Aに示すように、リード12A,12B及び12Cの第1の突出部12A1,12B1及び12C1の端部(端面CE)は、段差部STの段差底面SBの幅だけ基板成形体11の外側面(すなわち、発光装置10の外側面)よりも内側にある。
【0057】
なお、第1の突出部12A1,12B1及び12C1は、インサート形成後、1単位の基板成形体11に含まれる形状になるように、これに隣接する基板成形体11との間を段差STの段差側面SAの高さ(深さ)及び段差底面SBの幅でハーフダイシング(分離溝形成工程)することによって形成することができる。したがって、隣接する基板成形体11間のリード間には間隙が空いて、第1の突出部の突出端の端面CEは、基板成形体11の外側面よりも内側にあり、端面CEの全体にはリードフレーム12のコア材が露出している。
【0058】
再び、
図3A及び
図3Bを参照すると、封止部材30は、基板成形体11の上面側の全体を覆い、基板成形体11の上面上に設けられた発光素子等を埋設及び封止している。
【0059】
より詳細には、
図3Aに示すように、発光素子21及び発光素子22が実装された基板成形体11上を封止樹脂で封止したとき、段差部STは封止部材30の外縁凸部(以下、封止部材スカート部ともいう。)30Sが基板成形体11の外縁全体を覆う構造となるので、封止部材30の接合強度が向上し、剥離を防止することができる。
【0060】
また、
図3Bに示すように、封止部材30の外縁凸部30Sがリード12A,12B及び12Cの第1の突出部12A1,12B1及び12C1の突出端の端面(切断端面)CEを被覆している。したがって、電極コア材である銅(Cu)が露出する端面CEが封止部材30によって被覆され、環境ガス等による腐食が防止される。
【0061】
さらに、発光装置製造における個片化工程においては、電極(リードフレーム)を切断しない。すなわち、個片化の際にリードを切断する従来の方法では、リードの切断応力が発光装置の内部に及ぶが、本実施形態によれば、個片化の際にリードを切断しないので、発光装置の内部への当該切断応力は生じず、接続部材の破断及び素子接合部等の内部損傷を防止でき、信頼性の高い発光装置を製造することができる。
【0062】
なお、本実施形態においては、中間電極(中継電極)として機能する第2のリード12Bを設けた場合について説明した。かかる中間電極(第2のリード12B)を設けることにより、第2のリード12Bは発光素子21及び発光素子22の共通の放熱経路として機能するので、発光装置10の高温環境下における光出力を向上することができる
また、当該中間電極は複数の発光素子の温度を平衡させ、当該複数の発光素子が安定した光学特性を発揮するのに役立つ。
【0063】
なお、第1の突出部12A1,12B1,12C1がリード12A,12B,12Cの上面部に設けられた場合について説明したが、リード12A,12B,12Cの厚さ方向における中央部に設けられていてもよい。この場合、当該第1の突出部は、裏面側からのリードのエッチングに加え、上面側からもリードをエッチングすることで形成することができる。
【0064】
上記実施形態においては、第2のリード12B(中継電極)を含む3つのリードが設けられた基板成形体11について説明したが、これに限定されない、基板成形体11には2つ以上のリードが設けられていればよい。また、この場合、リードの各々は、基板成形体11の外縁に向いて突出した第1の突出部を有していればよい。
【0065】
また、2つの発光素子が設けられた発光装置について説明したが、少なくとも1つの発光素子が設けられていればよい。
【0066】
(2)発光装置の製造方法
以下に発光装置10の製造方法について図面を参照して詳細に説明する。
図5A~
図5Hは、発光装置10の製造工程のステップS1~S8を示す平面図である。なお、
図5A及び
図5Bはリードフレーム用のコア材CRの裏面を示し、
図5C~
図5Hは、リードフレーム12の上面側(発光素子21,22の実装面側)を示している。
【0067】
(S1)コア材の準備
始めに、複数の発光装置を形成する大きさのリードフレーム12用のコア材CRを用意する(
図5A)。コア材として、例えば、銅(Cu)又は銅合金を用いている。
【0068】
(S2)ハーフエッチング工程
発光装置10の電極実装部であるリード本体部12AM,12BM及び12CM及びコア材(リードフレーム12)の外枠12FRを除く部分(ハーフエッチング領域ER)をコア材の厚さの1/3~2/3をエッチングして薄くする(
図5B:コア材CRの裏面)。
【0069】
(S3)抜き工程
コア材CRのリード12A,12B及び12Cとなる以外の部分を打ち抜いて、リードフレーム12を形成する(
図5C:リードフレーム12の上面)。すなわち、リードフレーム12は複数の発光装置10のリードが繋がったものである。なお、発光装置10の1単位に対応する領域を破線で示している。
【0070】
また、リードフレーム12は先のS2工程と同様なエッチング工程でも形成できる。具体的には、エッチング工程S2を完了したリードフレームの裏面側(
図5B)をレジストなどで全面保護し、次にリードフレームの表面側(
図5C)にリード12A,12B及び12Cとなる部分をレジストマスクで保護する。その後、レジストマスクで保護されてないリードフレームの部分をエッチング除去することでリードフレーム12を形成することができる。
【0071】
(S4)メッキ工程
リードフレーム12の表面をニッケル(Ni)/金(Au)および、ニッケル/パラジウム/金(Ni/Pd/Au)でメッキしてメッキ層を形成する(
図5C)。
【0072】
(S5)樹脂充填工程
リードフレーム12を成形型で挟みこむ。続いて、加熱しつつ熱硬化性樹脂を成形型に注入し、硬化して樹脂成形体を形成する(インサート成形)(
図5D)。
【0073】
なお、透光性かつ熱硬化性のシリコーン樹脂を用い、光反射粒子として酸化チタン(TiO2)粒子を含有させた。TiO2粒子の粒径は200nm~300nm、充填量は8wt%~54wt%が好ましい。
【0074】
当該樹脂は、リードフレーム12の間隙部とハーフエッチング領域ERに充填される。これにより基板成形体11が樹脂でつながった成形体が得られる。なお、
図5Dには、基板成形体11の1単位に対応する領域を一点鎖線で示している。
【0075】
また、樹脂枠体11Aの厚さはリードフレーム12の厚さと同一であり、基板成形体11の表面及び裏面は平坦である。このように、樹脂枠体11Aの厚みをリードフレーム12の厚みと同一にすることで、樹脂成型体である基板成形体11のカールを防止できる。また、カールしないので樹脂枠体11Aとリードフレーム12の剥離も防止できる。
【0076】
(S6)分離溝形成工程
樹脂充填したリードフレーム12にダイサーを用いて分離溝GRを形成する。より具体的には、ダイシングブレードDBによって上面側(素子搭載面側)から樹脂成型体11の樹脂枠体11A及びリードフレーム12を削って分離溝GRを形成する(
図5E)。分離溝GRは、ダイシング以外にレーザー加工によっても形成できる。例えば、樹脂部の照射強度を弱くして、リードフレーム12部の照射強度を強くするなどのスキャニングをすることで、分離溝GRを形成することができる。このように分離溝形成工程によって、リード12A,12B及び12Cが基板成形体11の1単位に分離される。
【0077】
より具体的には、分離溝GRの深さは、リード12A,12B及び12Cの薄肉部である第1の突出部12A1,12B1及び12C1及び第2の突出部12A2,12B2及び12C2の厚さ以上である。また、溝幅はこれに限定されないが、例えば、0.2~0.4mm程度である。
【0078】
図5Eには、基板成形体11の1単位に対応する領域を一点鎖線で示している。
【0079】
(S7)素子実装工程
リード12A,12B及び12Cの突出部12A2,12B2及び12C2上と、リード12A上とにはんだペーストを塗布する(
図5F。また、
図2A,
図3Aを参照)。続いて、はんだペーストと素子電極が重なるように発光素子21,22及び保護素子25を載置し、はんだペーストが溶融する温度まで加熱して、発光素子21,22及び保護素子25を各リードに接合する。
【0080】
溶融温度は、例えば、Au-20wt%Snはんだの場合では約300℃、Sn-Ag-Cu系はんだの場合では約240℃である。また、異方性導電性ペーストを用いてもよく、その場合は約180℃である。
【0081】
本実施形態においては、樹脂成型体である基板成形体11がカールすることなく平坦なので、発光素子21及び22を正確に接合することができるので断線不良を低減できる。また、発光素子21及び22を接合後においても接合部に基板成形体11がカールすることで発生する応力が加わらないので断線不良を防止できる。
【0082】
ワイヤボンディングが必要な場合は、素子電極(例えば、保護素子26の素子電極)と対応するリード間をボンディングワイヤBW(Auワイヤ)で接続する。本実施形態では、保護素子25の素子電極とリード12Cの間をボンディングワイヤBWで接続する。
【0083】
(S8)封止部材形成工程
リードフレーム12の外枠12FRの上面上に樹脂を用いてダム枠体32を形成する(
図5G)。なお、
図5Gにおいては、発光装置10の1単位を一点鎖線で示している。また、発光装置10の1単位と内部構造との関係の理解の容易さのため、発光装置10内のリード、発光素子、保護素子等の内部構造を示している。
【0084】
ダム枠体32の形成後、ダム枠体32の内部に封止部材30となる蛍光体が含有された樹脂を、素子が被覆される量だけ注入し、加熱硬化して封止部材30を形成する。実施形態においては緑色の蛍光を発するβサイアロン蛍光体と赤色の蛍光を発するKFS蛍光体を含有したシリコーン樹脂を用いた。
【0085】
封止部材は、コンプレッションモールド法によっても形成できる。具体的には、基板成形体11(個片化前の基板成形体)が嵌まり込む凹部を備えた金型に、封止部材30となる蛍光体を含有したシリコーン樹脂を所定量流し込む。次に、素子が実装された基板成形体11の素子実装面側を当該のシリコーン樹脂に素子が実装された面が浸るまで浸液する。この状態で加熱硬化して封止部材30を形成する。
【0086】
以上、この段階において基板成形体11のリードフレーム12の突出端の端面CEが封止部材30で覆われて環境ガスから保護される。
【0087】
(S9)個片化工程
薄刃のダイシングブレードDBで分離溝GRの中央線に沿って切断して発光装置10を切り出し、個片化する(
図5H)。
【0088】
かかる個片化においては、樹脂のみを切断するので発光素子の内部、発光素子の接合部に応力を与えることなく、簡単に切断できる。
【0089】
以上の工程により、発光装置10の製造が完了する。
【0090】
[第1の実施形態の改変例]
以下に、第1の実施形態の改変例について説明する。
図6は、第1の実施形態の改変例1である発光装置40の断面を示す断面図である。
【0091】
本改変例1の発光装置40は、第1の実施形態の発光装置10(
図3Aを参照)の上面(光出射面)上、すなわち封止部材30上に光拡散性の層である光拡散層41が設けられている。
【0092】
拡散層41は、例えば、粒径10μm~50μmの酸化チタン、酸化亜鉛、またはアルミナやジルコニアを含む白色セラミックが含まれた層である。発光素子21から出射された光、及び封止部材30に含まれる光変換部材から出射される光を拡散する。
【0093】
拡散層41を設けることによって、発光装置の指向特性を略ランバシアンから半値角(強度が50%となる指向角)が広がったアンブレラ状にすることができる。
【0094】
図7は、第1の実施形態の改変例2である発光装置50の断面を示す断面図である。本改変例2の発光装置50は、第1の実施形態の発光装置10(
図3Aを参照)の封止部材30が透明な封止部材(以下、透明封止部材)51に置き換えられた構造を有している。例えば、透明封止部材51はシリコーン樹脂からなる。
【0095】
さらに、発光装置50は、透明封止部材51の上面上に設けられた光学反射プレート52を有している。光学反射プレート52は、透明なガラスプレート上に設けられた光学多層膜52Rを有している。
【0096】
例えば、発光素子21の発光色が青色(例えば、波長445nm)のとき、光学多層膜52Rは、波長帯域430nm~460nm程度の光を反射率20%~80%で反射する特性を有している。
【0097】
すなわち、光学多層膜52Rは、光学多層膜52Rへ垂直入射する光の透過率は低く、斜め入射した光の透過率が高くなるように設定されている。このように、光学多層膜を設けると指向特性が略ランバシアンから半値角(強度が50%となる指向角)が広がったアンブレラ状にすることができる。
【0098】
図8は、第1の実施形態の改変例3である発光装置60の断面を示す断面図である。本改変例3の発光装置60は、第1の実施形態の発光装置10(
図3Aを参照)の封止部材30の全面(すなわち、上面及び4側面の全面)を覆うガスバリア性の被覆層61を有している。
【0099】
より具体的には、封止部材30をガスバリア性の高い樹脂である、例えばフッ素系の樹脂でアウターコーティングして被覆層61が形成されている。したがって、発光装置60は、環境ガス等の遮蔽により、耐久性及び信頼性に優れている。
【0100】
また、被覆層61の樹脂に低屈折率の樹脂である、例えば低屈折率性のシリコーン樹脂、または表面部にナノサイズポア(気孔)備えたシリコーン樹脂等を採用することにより、光取り出し効率が向上する。
【0101】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、樹脂とリードフレームとの剥離が防止され、また断線不良、樹脂成形体のカール及び内部損傷等が防止された発光装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0102】
10,40,50,60:発光装置
11:基板成形体
11A:樹脂枠体
11S:第1の主面
11R:第2の主面
12:リードフレーム
12A,12B,12C:リード
12A1,12B1,12C1:第1の突出部
12A2,12B2,12C2:第2の突出部
21,21:発光素子
21A,21B:素子電極
30S:外縁凸部(封止部材スカート部)
41:光拡散層
51:透明封止部材
52R:光学多層膜
61:ガスバリア性の被覆層
CE:突出端の端面
GR:分離溝
ST:段差部
SA:段差側面
SB:段差底面