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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054735
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤及び合成繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/224 20060101AFI20240410BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20240410BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
D06M13/224
D06M13/17
D06M15/53
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161157
(22)【出願日】2022-10-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 千尋
(72)【発明者】
【氏名】服部 誠
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB01
4L033AC09
4L033AC15
4L033BA14
4L033BA21
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる合成繊維用処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明の合成繊維用処理剤は、平滑剤、及びノニオン界面活性剤を含有し、前記平滑剤が、多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物を含み、前記ノニオン界面活性剤が、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑剤、及びノニオン界面活性剤を含有し、
前記平滑剤が、多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物を含み、
前記ノニオン界面活性剤が、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を含むことを特徴とする合成繊維用処理剤。
【請求項2】
前記脂肪酸(A1)が、不飽和結合を2つ有する1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含むものである請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記合成繊維用処理剤中において、前記化合物(A)を0.1質量%以上20質量%以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記ノニオン界面活性剤が、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)を含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記合成繊維用処理剤中において、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)の質量比が、化合物(A)/化合物(B)=40/60~5/95である請求項4に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
前記ノニオン界面活性剤が、更に任意選択で、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)を含み、
前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)を合計で70質量%以上の割合で含有する請求項4に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
前記平滑剤が、更に含硫黄エステル化合物を含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項8】
更に、イオン界面活性剤を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性を向上できるとともにスカムを低減できる合成繊維用処理剤及び該合成繊維用処理剤が付与された合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維の紡糸延伸工程等において、平滑性、制電性等の向上の観点から、合成繊維の表面に合成繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1に開示の合成繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、アルケニル基を持つスルホン酸化合物、ヒドロキシアルキル基を持つスルホン酸化合物、及びスルホ基を有する炭化水素基を持つスルホン酸化合物を含有する合成繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-046647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の合成繊維用処理剤において、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果の両立が不十分であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、合成繊維用処理剤において、所定の平滑剤及びノニオン界面活性剤とを含有する構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決する各態様を記載する。
【0006】
態様1の合成繊維用処理剤は、平滑剤、及びノニオン界面活性剤を含有し、前記平滑剤が、多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物を含み、前記ノニオン界面活性剤が、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を含むことを特徴とする。
【0007】
態様2は、態様1に記載の合成繊維用処理剤において、前記脂肪酸(A1)が、不飽和結合を2つ有する1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含むものである。
【0008】
態様3は、態様1又は2に記載の合成繊維用処理剤において、前記合成繊維用処理剤中において、前記化合物(A)を0.1質量%以上20質量%以下の割合で含有する。
態様4は、態様1~3のいずれか1態様に記載の合成繊維用処理剤において、前記ノニオン界面活性剤が、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)を含む。
【0009】
態様5は、態様4に記載の合成繊維用処理剤において、前記合成繊維用処理剤中における前記化合物(A)、及び前記化合物(B)の質量比が、化合物(A)/化合物(B)=40/60~5/95である。
【0010】
態様6は、態様4又は5に記載の合成繊維用処理剤において、前記ノニオン界面活性剤が、更に任意選択で、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)を含み、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)を合計で70質量%以上の割合で含有する。
【0011】
態様7は、態様1~6のいずれか1態様に記載の合成繊維用処理剤において、前記平滑剤が、更に含硫黄エステル化合物を含む。
態様8は、態様1~7のいずれか1態様に記載の合成繊維用処理剤において、更に、イオン界面活性剤を含有する。
【0012】
態様9の合成繊維は、態様1~8のいずれか1態様に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、所定の平滑剤及びノニオン界面活性剤を含有する。処理剤は、さらにイオン界面活性剤を含有してもよい。
【0015】
(平滑剤)
本実施形態の処理剤に供される平滑剤は、多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物を含んで構成される。完全エステル化合物は、好ましくは炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物である。
【0016】
多価アルコールとしては、鎖状構造の多価アルコールが好ましく、鎖状構造としては、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0017】
1価脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0018】
1価脂肪酸の具体例としては、例えば、(1)ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等の直鎖の飽和脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐の飽和脂肪酸、(3)クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等の直鎖の不飽和脂肪酸、(4)リシノール酸等のヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。
【0019】
完全エステル化合物の具体例としては、例えばトリメチロールプロパンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸)のトリエステル等のトリメチロールプロパンと脂肪酸のトリエステル、グリセリンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸)のトリエステル等のグリセリンと脂肪酸のトリエステル、及びヤシ油、ナタネ油、菜種白絞油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、パーム油、魚油等の天然油脂等が挙げられる。
【0020】
これらの完全エステル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物の含有割合の下限は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。かかる多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物の含有割合の上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0021】
本実施形態の処理剤に供される平滑剤は、更に含硫黄エステル化合物を含むことが好ましい。平滑剤が、更に含硫黄エステル化合物を含むことにより、処理剤が付与された合成繊維についてガイド等に発生するスカムをより低減できる。
【0022】
含硫黄エステル化合物の具体例としては、例えばジオクチルチオジプロピオナート、ジイソラウリルチオジプロピオナート、ジラウリルチオジプロピオナート、ジイソセチルチオジプロピオナート、ジイソパルミチルチオジプロピオナート、ジイソテトラコシルチオジプロピオナート、ジイソステアリルチオジプロピオナート、ジオレイルチオジプロピオナート、オクチルチオジプロピオナート、イソラウリルチオジプロピオナート、ラウリルチオジプロピオナート、イソセチルチオジプロピオナート、イソステアリルチオジプロピオナート、オレイルチオジプロピオナート、オクチルメルカプトプロピオナート、ステアリルメルカプトプロピオナート、トリメチロールプロパントリス(メルカプトプロピオナート)等が挙げられる。これらの中でも、処理剤での相溶性の観点から、チオジプロピオン酸と分岐鎖構造を有するアルコール又は不飽和結合を有するアルコールとのエステル化合物が好ましい。
【0023】
これらの含硫黄エステル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、含硫黄エステル化合物の含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含硫黄エステル化合物の含有割合の上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維についてガイド等に発生するスカムをより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0024】
本実施形態の処理剤に供される平滑剤は、上記以外のその他のエステル化合物を配合してもよい。その他のエステル化合物の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート、イソステアリルエルシナート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)ジイソステアリルアジパート、ジオレイルアジパート、ジオレイルアゼラート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(3)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(4)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(5)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物等が挙げられる。
【0025】
これらのその他のエステル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
平滑剤としては、上記エステル化合物以外に鉱物油(動粘度が40℃で5mm/s以上のもの)等を使用してもよい。鉱物油としては、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えばスピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの鉱物油は、市販品を適宜採用することができる。
【0026】
これらの鉱物油は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、平滑剤の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。かかる平滑剤の含有割合の上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、繊維に平滑性を付与しながら、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0027】
(ノニオン界面活性剤)
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を含む。
【0028】
2価以上5価以下の多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、イソソルバイド等が挙げられる。これらの中でも、処理剤の安定性の観点から、グリセリン、ソルビタン、ポリエチレングリコール、イソソルバイドが好ましい。
【0029】
(ポリ)オキシアルキレン基を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上250モル以下、より好ましくは1モル以上200モル以下、さらに好ましくは2モル以上150モル以下、特に好ましくは3モル以上40モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0030】
不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸の具体例としては、例えば(1)リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等の不飽和結合を2つ有する1価不飽和脂肪酸、(2)α-リノレン酸、γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸等の不飽和結合を3つ有する1価不飽和脂肪酸、(3)ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸等の不飽和結合を4つ有する1価不飽和脂肪酸、(4)エイコサペンタエン酸、テトラコサペンタエン酸等の不飽和結合を5つ有する1価不飽和脂肪酸、(5)ドコサヘキサエン酸等の不飽和結合を6つ有する1価不飽和脂肪酸等が挙げられる。これらの中でも炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸が好ましい。
【0031】
脂肪酸(A1)としては、不飽和結合を2つ有する1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含むものであることが好ましい。かかる1価不飽和脂肪酸を適用することにより、本発明の効果をより向上できる。
【0032】
化合物(A)は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(A1)と、を所定の仕込み比で混合し、加熱等の条件下でエステル化することにより得られる。また、2価以上5価以下の多価アルコールと脂肪酸(A1)のエステル化合物にアルキレンオキサイドを反応させ、エステル結合部分に(ポリ)オキシアルキレン基を挿入させることにより得てもよい。エステル化反応における(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(A1)との仕込み比(モル比)は、適宜設定される。
【0033】
化合物(A)の具体例としては、例えば混合脂肪酸(リノール酸とオレイン酸の混合物)とポリエチレングリコールとのエステル、リノール酸とポリエチレングリコールとのエステル、リノール酸とグリセリンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、リノール酸とソルビタンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、リノール酸とイソソルバイドのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、リノレン酸とポリエチレングリコールとのエステル、リノレン酸とソルビタンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル等が挙げられる。
【0034】
これらの化合物(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、化合物(A)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。化合物(A)の含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性をより向上できる。かかる化合物(A)の含有割合の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。化合物(A)の含有割合が20質量%以下の場合、処理剤が付与された合成繊維についてガイド等に発生するスカムをより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0035】
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤は、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)を含むことが好ましい。ノニオン界面活性剤が、更に化合物(B)を含むことにより、処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0036】
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。また、好ましい化合物も(A)欄の説明と同様である。
【0037】
(ポリ)オキシアルキレン基を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。
不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの中でも炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸が好ましい。なお、脂肪酸(B1)には、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸は含まれないものとする。
【0038】
化合物(B)は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(B1)と、を所定の仕込み比で混合し、加熱等の条件下でエステル化することにより得られる。また、2価以上5価以下の多価アルコールと脂肪酸(B1)のエステル化合物にアルキレンオキサイドを反応させ、エステル結合部分に(ポリ)オキシアルキレン基を挿入させることにより得てもよい。エステル化反応における(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(B1)との仕込み比(モル比)は、適宜設定される。
【0039】
化合物(B)の具体例としては、例えばオレイン酸とポリエチレングリコールとのエステル、オレイン酸とソルビタンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、パルミトレイン酸とポリエチレングリコールとのエステル、エルカ酸とポリエチレングリコールとのをエステル等が挙げられる。
【0040】
これらの化合物(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、化合物(B)の含有割合の下限は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。かかる化合物(B)の含有割合の上限は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0041】
処理剤中において、上述した化合物(A)と化合物(B)の質量比は、化合物(A)/化合物(B)=50/50~5/95であることが好ましく、40/60~5/95であることがより好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0042】
処理剤中において、上述した化合物(A)と化合物(B)の含有割合の合計は、好ましくは10質量%以上40質量%以下である。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0043】
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤は、更に任意選択で、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)を含んでもよい。
【0044】
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。また、好ましい化合物も(A)欄の説明と同様である。
【0045】
(ポリ)オキシアルキレン基を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。
1価飽和脂肪酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。これらの中でも炭素数12以上22以下の1価飽和脂肪酸が好ましい。なお、脂肪酸(C1)には、1価不飽和脂肪酸は含まれないものとする。
【0046】
化合物(C)は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(C1)と、を所定の仕込み比で混合し、加熱等の条件下でエステル化することにより得られる。また、2価以上5価以下の多価アルコールと脂肪酸(C1)のエステル化合物にアルキレンオキサイドを反応させ、エステル結合部分に(ポリ)オキシアルキレン基を挿入させることにより得てもよい。エステル化反応における(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(C1)との仕込み比(モル比)は、適宜設定される。
【0047】
化合物(C)の具体例としては、例えば混合脂肪酸(パルミチン酸とステアリン酸の混合物)とポリエチレングリコールとのエステル、混合脂肪酸(ラウリン酸とミリスチン酸とパルミチン酸の混合物)とポリエチレングリコールとのエステル等が挙げられる。
【0048】
これらの化合物(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、化合物(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる化合物(C)の含有割合の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。化合物(C)の含有割合がかかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0049】
また、処理剤中において、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)を合計で好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上の割合で含有する。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0050】
本実施形態の処理剤は、更に上述した化合物(A)~(C)以外のその他のノニオン界面活性剤を配合してもよい。
その他のノニオン界面活性剤としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコール等との部分エステル化合物、アミン化合物とカルボン酸類とを縮合させたアミド化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物等が挙げられる。
【0051】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソトリアコンタノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0052】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)乳酸、クエン酸、リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(6)アジピン酸、セバシン酸、トリカルバリル等の多価カルボン酸等が挙げられる。
【0053】
ノニオン界面活性剤の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。
ノニオン界面活性剤の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、上述した化合物(A)欄において列挙した多価アルコール、ショ糖、ソルビトール、ポリグリセリン等が例示される。
【0054】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるアミン化合物の具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、オクタデセニルアミン、ヤシアミン、エチレンアミン等が挙げられる。
【0055】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、脂肪酸とジエタノールアミンとのアミド、脂肪酸とエチレンアミンとのアミド等が挙げられる。
【0056】
ノニオン界面活性剤の具体例としては、例えば1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物、ひまし油及びその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、ひまし油及びその誘導体のアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸のエステル化物、炭素数3以上6以下の多価アルコールとカルボン酸の部分エステル、脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加物、一級アルキルアミンのアルキレンオキサイドが挙げられる。さらに、具体的にはイソドデカノールに対しアルキレンオキサイド付加したもの、オレイルアルコールに対しアルキレンオキサイド付加したもの、イソテトラデカノールに対しアルキレンオキサイド付加したもの、硬化ひまし油に対しアルキレンオキサイド付加したもの、硬化ひまし油に対しアルキレンオキサイド付加したものをオレイン酸でエステル化した化合物、硬化ひまし油に対しアルキレンオキサイド付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸でエステル化した化合物、グリセリンジオレアート、トリメチロールプロパンとイソステアリン酸のジエステル、ソルビトールと混合脂肪酸(パルミチン酸とオレイン酸とリノール酸)をエステル化させた化合物、オレイルジエタノールアミドのアルキレンオキサイド付加物、ラウリルアミンのアルキレンオキサイド付加物、ステアリルアミンのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0057】
これらのその他のノニオン界面活性剤は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、全ノニオン界面活性剤の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。かかるノニオン界面活性剤の含有割合の上限は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0058】
(イオン界面活性剤)
本実施形態の処理剤は、更にイオン界面活性剤を配合してもよい。イオン界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0059】
アニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、イソセチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルカンスルホン酸(炭素数13~15)塩、二級アルカンスルホン酸塩(炭素数11~14)、α-オレフィンスルホン酸塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキサン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩、(10)オレオイルサルコシン塩等のN-アシルサルコシン塩等が挙げられる。
【0060】
アニオン界面活性剤を構成する塩としては、金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0061】
ホスホニウム塩を構成するホスホニウムの具体例としては、例えばテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、ジブチルジヘキシルホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等の四級ホスホニウムが挙げられる。
【0062】
有機アミン塩を構成するアミンは、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。
【0063】
カチオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0064】
両性界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
これらのイオン界面活性剤は、一種類のイオン界面活性剤を単独で使用してもよいし、又は二種以上のイオン界面活性剤を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0065】
処理剤中において、イオン界面活性剤の含有割合の下限は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。かかるイオン界面活性剤の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0066】
<第2実施形態>
次に、本発明による合成繊維を具体化した第2実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している合成繊維である。処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、希釈溶媒で希釈した希釈液、例えば有機溶媒溶液、水性液等として付与してもよい。希釈溶媒には、処理剤の繊維への付着性と経済性の観点から炭素数10以上15以下の炭化水素及び/又は水を使用することが好ましい。処理剤と希釈溶媒の混合割合は、処理剤の質量:希釈溶媒の質量=99:1~10:90であることが好ましい。合成繊維は、水性液等の希釈液を、例えば紡糸又は延伸工程等において合成繊維に付着させる工程を経て得られる。合成繊維に付着した希釈液は、延伸工程、乾燥工程により希釈溶媒を蒸発させてもよい。延伸もしくは熱処理工程において、150℃以上のローラーを通過させる工程を有する製造設備、工程での使用により、発明の効果がより期待できる。
【0067】
本実施形態の処理剤が付与される合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。これらの中でポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維に適用されることが好ましい。製造する合成繊維の繊度としては、特に制限はないが、好ましくは150デシテックス以上であり、より好ましくは500デシテックス以上であり、さらに好ましいのは1000デシテックス以上である。また、製造する合成繊維の強度としては、特に制限はないが、好ましくは5.0cN/dtex以上であり、より好ましくは6.0cN/dtex以上、さらに好ましくは7.0cN/dtex以上である。
【0068】
処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤を合成繊維に対し0.1質量%以上5質量%以下の割合(水等の溶媒を含まない割合)となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。また、処理剤を付着させる方法は、特に制限はなく、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等の公知の方法を採用できる。
【0069】
本発明において、合成繊維の用途としては、特に限定されないが、産業資材に用いられる合成繊維が好ましい。例えばエアバッグ用繊維、シートベルト用繊維、タイヤコード用繊維、カーペット用繊維、テント用繊維、広告布用繊維、漁網用繊維、コンベアベルト用繊維、ロープ用繊維等の自動車、建築、商業、農業・水産業、土木等の分野で使用される合成繊維がより好ましい。
【0070】
上記実施形態の処理剤及び合成繊維の効果について説明する。
(1)上記実施形態の処理剤では、上述した平滑剤と、上述したノニオン界面活性剤とを配合して構成した。したがって、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。特に、処理剤が付与された合成繊維を長期保管した場合であっても、ガイド等へのスカムを低減することができる。
【0071】
産業資材用繊維はゴム接着用途で使用されることが多い。ゴム接着性は不飽和結合の増大に伴い増大する傾向がある。しかしながら、不飽和結合の増大は、熱のかかる工程においてタール発生の要因ともなる。さらには、処理剤が紡糸後の保管中に合成繊維上で変質することで、ガイドへのスカム付着、解舒張力変動、繊維の粘着・ネバつき等、後加工に影響を及ぼすことがあった。上述した本発明の構成により、紡糸及び後加工の性能を両立できる。
【0072】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の製造途中又は製造後に、処理剤の品質保持のための上記以外の安定化剤、制電剤、つなぎ剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0073】
・保管時の処理剤の外観の安定性等を高める観点から、処理剤と水を予め混合させてもよく、その場合、処理剤と水の混合比率は、処理剤の質量:水の質量=85:15~99.9:0.1であることが好ましい。
【実施例0074】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0075】
試験区分1(処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、平滑剤としてジイソセチルチオジプロピオナート(ES-1)を10部(%)、トリメチロールプロパンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸、質量比4:6混合物)のトリエステル(E-1)を30部(%)、菜種白絞油(E-2)を20部(%)、ノニオン界面活性剤として後述する表3に示される化合物(A-1)を5部(%)、後述する表4に示される化合物(B-1)を8部(%)、イソドデカノール1モルに対してエチレンオキサイド(以下、「EO」という)10モルプロピレンオキサイド(以下、「PO」という)10モルをランダムに付加したもの(N-3)を5部(%)、硬化ひまし油1モルに対しEO10モル付加したもの(N-5)を10部(%)、硬化ひまし油1モルに対しEO15モル付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸でエステル化した化合物(質量平均分子量7000)(N-7)を5部(%)、ラウリルアミン1モルに対しEO5モル付加したもの(N-12)を2部(%)、イオン界面活性剤として二級アルカンスルホン酸ナトリウム塩(炭素数11~14)(D-1)を3部(%)、オレイルアルコールEO5モル付加物のリン酸エステル-ジブチルエタノールアミン塩(D-5)2部(%)を含む実施例1の処理剤を調製した。
【0076】
(実施例2~14、比較例1~4)
実施例2~14、比較例1~4の処理剤は、実施例1の処理剤と同様にして、平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を表1に示した割合で含むように調製した。
【0077】
平滑剤の種類と含有量、ノニオン界面活性剤の種類と含有量、及びイオン界面活性剤の種類と含有量を、表1の「平滑剤」欄、「ノニオン界面活性剤」欄、及び「イオン界面活性剤」欄にそれぞれ示す。また、ノニオン界面活性剤である化合物(A)と化合物(B)の質量比を「質量比(A)/(B)」欄に示す。また、ノニオン界面活性剤である化合物(A)、化合物(B)、及び化合物(C)の含有割合の合計を100%としたとき、化合物(A)、及び化合物(B)の含有量の合計を「質量比[(A)+(B)]/[(A)+(B)+(C)]」欄に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
表1に記載する平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤の詳細は以下のとおりである。
【0080】
<平滑剤>
(含硫黄エステル化合物)
ES-1:ジイソセチルチオジプロピオナート
ES-2:ジオレイルチオジプロピオナート
ES-3:ジイソステアリルチオジプロピオナート
(多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物)
E-1:トリメチロールプロパンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸、質量比4:6混合物)のトリエステル
E-2:菜種白絞油
E-3:グリセリンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸、質量比4:6混合物)のトリエステル
(その他の平滑剤)
E-4:ジ(イソステアリル)アジパート
E-5:オレイルパルミタート
<ノニオン界面活性剤>
(化合物(A))
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)として、以下の表3に示される化合物(A-1)~化合物(A-7)を使用した。また、化合物(A)に近似する化合物として表3に示される化合物(rA-1)及び化合物(rA-2)を使用した。化合物(A)の原料として脂肪酸(A1)及び多価アルコール、並びに脂肪酸(A1)と多価アルコールの仕込み比(モル比)を、表3の「1価不飽和脂肪酸(A1)」欄、「多価アルコール」欄、及び「反応比」欄にそれぞれ示す。なお、化合物(A-1)の液体クロマトグラフィーによる定性分析の結果、化合物(B)に該当する化合物の含有はなかった。「多価アルコール」欄のPEG400は、質量平均分子量400のポリエチレングリコール、PEG600は、質量平均分子量600のポリエチレングリコールを示す。
【0081】
【表3】
(化合物(B))
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)として、以下の表4に示される化合物(B-1)~化合物(B-7)を使用した。また、化合物(B)の原料として脂肪酸(B1)及び多価アルコール、並びに脂肪酸(B1)と多価アルコールの仕込み比(モル比)を、表4の「1価不飽和脂肪酸(B1)」欄、「多価アルコール」欄、及び「反応比」欄にそれぞれ示す。「多価アルコール」欄のPEG400は、質量平均分子量400のポリエチレングリコール、PEG600は、質量平均分子量600のポリエチレングリコール、PEG1000は、質量平均分子量1000のポリエチレングリコールを示す。
【0082】
【表4】
(化合物(C))
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)として、以下の表5に示される化合物(C-1)及び化合物(C-2)を使用した。また、化合物(C)の原料として脂肪酸(C1)及び多価アルコール、並びに脂肪酸(C1)と多価アルコールの仕込み比(モル比)を、表5の「1価飽和脂肪酸(C1)」欄、「多価アルコール」欄、及び「反応比」欄にそれぞれ示す。「多価アルコール」欄のPEG400は、質量平均分子量400のポリエチレングリコール、PEG600は、質量平均分子量600のポリエチレングリコールを示す。
【0083】
【表5】
(その他のノニオン界面活性剤)
N-1:イソドデカノール1モルに対しEO10モル付加したもの
N-2:オレイルアルコール1モルに対しEO10モル付加したもの
N-3:イソドデカノール1モルに対してEO10モルPO10モルをランダムに付加したもの
N-4:イソテトラデカノール1モルに対してPO15モル付加したものにEO15モル付加したもの
N-5:硬化ひまし油1モルに対しEO10モル付加したもの
N-6:硬化ひまし油1モルにEO15モル付加したものをオレイン酸3モルでエステル化した化合物
N-7:硬化ひまし油1モルに対しEO15モル付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸でエステル化した化合物(質量平均分子量7000)
N-8:グリセリンジオレアート
N-9:トリメチロールプロパンとイソステアリン酸のジエステル
N-10:ソルビトールと混合脂肪酸(パルミチン酸とオレイン酸とリノール酸が質量比で、7/75/18)をエステル化させた化合物(反応モル比1:1)
N-11:オレイルジエタノールアミド1モルに対しEO8モル付加したもの
N-12:ラウリルアミン1モルに対しEO5モル付加したもの
N-13:ステアリルアミン1モルに対しEO10モル付加したもの
<イオン界面活性剤>
D-1:二級アルカンスルホン酸ナトリウム塩(炭素数11~14)
D-2:ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩
D-3:α-オレフィンスルホン酸ナトリウム塩
D-4:2-エチルヘキサン酸カリウム塩
D-5:オレイルアルコールEO5モル付加物のリン酸エステル-ジブチルエタノールアミン塩
D-6:イソセチルリン酸エステル-ステアリルアミンEO10モル付加物塩
なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(標準物質はポリスチレン)で求めた。
【0084】
試験区分2(接着)
上記のように調製した各処理剤を希釈溶媒として有機溶剤(ヘキサンとエタノールの混合溶媒)で均一に希釈し、15%希釈液とした。紡糸工程にて1670デシテックス、288フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に、前記希釈液を、オイリングローラー給油法にて、不揮発分として付与量5.0%となるように付与した。その後、希釈溶媒を乾燥させ試験糸を得た。
【0085】
試験糸2本を、下撚40回/10cm、上撚40回/10cmの撚数で撚り、撚糸コードとした。この撚糸コードを、第1接着剤(エポキシ化合物(ナガセケムテックス社製の商品名デナコールEX-512)/ブロックドイソシアネート(第一工業製薬社製の商品名エラストロンBN-27)=5/5(固形分比))に浸漬した後、熱処理した。次に、更に第2接着剤(レゾルシン(キシダ化学社製の商品名レソルシノール)/ホルマリン(キシダ化学社製の商品名ホルムルデヒド液(37%))/ラテックス(日本ゼオン社製の商品名Nipol 2518FS)=1.5/0.5/8(固形分比)のRFL溶液)に浸漬した後、熱処理して、接着剤で処理した補強用コードを得た。この補強コードを、縦2.5cmで横12.5cmの未加硫ゴムに隙間なく並べ、さらにその上に未加硫ゴムを乗せ、これを150℃、4MPaで30分間プレス加硫することで、ゴム接着評価の試験片を作成した。放冷した試験片に対して、剥離速度50mm/minで補強コードとゴム間を剥離させて、補強コードへのゴムの付き具合を目視で観察し、接着を次の評価基準で評価した。結果を表2の「接着」欄に示す。
【0086】
・接着の評価基準
○○(良好):補強コードが見えないほどゴムが付着している場合
○(可):補強コードがわずかに見える程度にゴムが付着している場合
×(不可):補強コードがよく見える場合
試験区分3(スカム)
試験区分2で得られた試験糸を60℃で6週間保管した後、初期張力0.5kg、糸速50m/分で、5分セラミックガイドに接触させた。セラミックガイドに付着したスカムの量を目視で観察し、スカムを次の評価基準で評価した。結果を表2の「スカム」欄に示す。
【0087】
・スカムの評価基準
○○(良好):スカムが観察されない場合
○(可):薄っすらとスカムが観察される場合
×(不可):明らかにスカムが観察される場合
表2の結果からも明らかなように、各実施例の処理剤は、接着及びスカムの評価がいずれも可以上であった。本発明によれば、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑剤、及びノニオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤であって
前記平滑剤が、炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物を含み、
前記ノニオン界面活性剤が、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を含み、
前記合成繊維用処理剤中に前記完全エステル化合物を30質量%以上70質量%以下、前記化合物(A)を0.1質量%以上22質量%以下含むことを特徴とする合成繊維用処理剤。
【請求項2】
前記ノニオン界面活性剤が、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)を含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記合成繊維用処理剤中において、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)の質量比が、化合物(A)/化合物(B)=40/60~5/95である請求項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記ノニオン界面活性剤が、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)を含み、
前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)を合計で70質量%以上の割合で含有する請求項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記平滑剤が、更に含硫黄エステル化合物を含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、イオン界面活性剤を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする合成繊維。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性を向上できるとともにスカムを低減できる合成繊維用処理剤及び該合成繊維用処理剤が付与された合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維の紡糸延伸工程等において、平滑性、制電性等の向上の観点から、合成繊維の表面に合成繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1に開示の合成繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、アルケニル基を持つスルホン酸化合物、ヒドロキシアルキル基を持つスルホン酸化合物、及びスルホ基を有する炭化水素基を持つスルホン酸化合物を含有する合成繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-046647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の合成繊維用処理剤において、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果の両立が不十分であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、合成繊維用処理剤において、所定の平滑剤及びノニオン界面活性剤とを含有する構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決する各態様を記載する。
【0006】
態様1の合成繊維用処理剤は、平滑剤、及びノニオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤であって、前記平滑剤が、炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物を含み、前記ノニオン界面活性剤が、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を含み、前記合成繊維用処理剤中に前記完全エステル化合物を30質量%以上70質量%以下、前記化合物(A)を0.1質量%以上22質量%以下含むことを特徴とする。
【0007】
は、態様1に記載の合成繊維用処理剤において、前記ノニオン界面活性剤が、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)を含む。
【0008】
態様は、態様に記載の合成繊維用処理剤において、前記合成繊維用処理剤中における前記化合物(A)、及び前記化合物(B)の質量比が、化合物(A)/化合物(B)=40/60~5/95である。
【0009】
態様は、態様2又は3に記載の合成繊維用処理剤において、前記ノニオン界面活性剤が、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)を含み、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)を合計で70質量%以上の割合で含有する。
【0010】
態様は、態様1~のいずれか1態様に記載の合成繊維用処理剤において、前記平滑剤が、更に含硫黄エステル化合物を含む。
態様は、態様1~のいずれか1態様に記載の合成繊維用処理剤において、更に、イオン界面活性剤を含有する。
【0011】
態様の合成繊維は、態様1~のいずれか1態様に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、所定の平滑剤及びノニオン界面活性剤を含有する。処理剤は、さらにイオン界面活性剤を含有してもよい。
【0014】
(平滑剤)
理剤に供される平滑剤は、多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物を含んで構成される。本発明の完全エステル化合物は、炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物が適用される
【0015】
多価アルコールとしては、鎖状構造の多価アルコールが好ましく、鎖状構造としては、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0016】
1価脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0017】
1価脂肪酸の具体例としては、例えば、(1)ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等の直鎖の飽和脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐の飽和脂肪酸、(3)クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等の直鎖の不飽和脂肪酸、(4)リシノール酸等のヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。
【0018】
完全エステル化合物の具体例としては、例えばトリメチロールプロパンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸)のトリエステル等のトリメチロールプロパンと脂肪酸のトリエステル、グリセリンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸)のトリエステル等のグリセリンと脂肪酸のトリエステル、及びヤシ油、ナタネ油、菜種白絞油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、パーム油、魚油等の天然油脂等が挙げられる。
【0019】
これらの完全エステル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物の含有割合の下限は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。かかる多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物の含有割合の上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0020】
本発明では、処理剤中において、炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物の完全エステル化合物を30質量%以上70質量%以下含む構成が適用される。
【0021】
本実施形態の処理剤に供される平滑剤は、更に含硫黄エステル化合物を含むことが好ましい。平滑剤が、更に含硫黄エステル化合物を含むことにより、処理剤が付与された合成繊維についてガイド等に発生するスカムをより低減できる。
【0022】
含硫黄エステル化合物の具体例としては、例えばジオクチルチオジプロピオナート、ジイソラウリルチオジプロピオナート、ジラウリルチオジプロピオナート、ジイソセチルチオジプロピオナート、ジイソパルミチルチオジプロピオナート、ジイソテトラコシルチオジプロピオナート、ジイソステアリルチオジプロピオナート、ジオレイルチオジプロピオナート、オクチルチオジプロピオナート、イソラウリルチオジプロピオナート、ラウリルチオジプロピオナート、イソセチルチオジプロピオナート、イソステアリルチオジプロピオナート、オレイルチオジプロピオナート、オクチルメルカプトプロピオナート、ステアリルメルカプトプロピオナート、トリメチロールプロパントリス(メルカプトプロピオナート)等が挙げられる。これらの中でも、処理剤での相溶性の観点から、チオジプロピオン酸と分岐鎖構造を有するアルコール又は不飽和結合を有するアルコールとのエステル化合物が好ましい。
【0023】
これらの含硫黄エステル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、含硫黄エステル化合物の含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含硫黄エステル化合物の含有割合の上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維についてガイド等に発生するスカムをより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0024】
本実施形態の処理剤に供される平滑剤は、上記以外のその他のエステル化合物を配合してもよい。その他のエステル化合物の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート、イソステアリルエルシナート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)ジイソステアリルアジパート、ジオレイルアジパート、ジオレイルアゼラート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(3)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(4)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(5)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物等が挙げられる。
【0025】
これらのその他のエステル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
平滑剤としては、上記エステル化合物以外に鉱物油(動粘度が40℃で5mm/s以上のもの)等を使用してもよい。鉱物油としては、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えばスピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの鉱物油は、市販品を適宜採用することができる。
【0026】
これらの鉱物油は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、平滑剤の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。かかる平滑剤の含有割合の上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、繊維に平滑性を付与しながら、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0027】
(ノニオン界面活性剤)
理剤に供されるノニオン界面活性剤は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を含む。本発明のノニオン界面活性剤は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)が適用される。
【0028】
2価以上5価以下の多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、イソソルバイド等が挙げられる。これらの中でも、処理剤の安定性の観点から、グリセリン、ソルビタン、ポリエチレングリコール、イソソルバイドが好ましい。
【0029】
(ポリ)オキシアルキレン基を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上250モル以下、より好ましくは1モル以上200モル以下、さらに好ましくは2モル以上150モル以下、特に好ましくは3モル以上40モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0030】
不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸の具体例としては、例えば(1)リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等の不飽和結合を2つ有する1価不飽和脂肪酸、(2)α-リノレン酸、γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸等の不飽和結合を3つ有する1価不飽和脂肪酸、(3)ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸等の不飽和結合を4つ有する1価不飽和脂肪酸、(4)エイコサペンタエン酸、テトラコサペンタエン酸等の不飽和結合を5つ有する1価不飽和脂肪酸、(5)ドコサヘキサエン酸等の不飽和結合を6つ有する1価不飽和脂肪酸等が挙げられる。これらの中でも炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸が好ましい。
【0031】
脂肪酸(A1)としては、不飽和結合を2つ有する1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含むものであることが好ましい。かかる1価不飽和脂肪酸を適用することにより、本発明の効果をより向上できる。
【0032】
化合物(A)は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(A1)と、を所定の仕込み比で混合し、加熱等の条件下でエステル化することにより得られる。また、2価以上5価以下の多価アルコールと脂肪酸(A1)のエステル化合物にアルキレンオキサイドを反応させ、エステル結合部分に(ポリ)オキシアルキレン基を挿入させることにより得てもよい。エステル化反応における(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(A1)との仕込み比(モル比)は、適宜設定される。
【0033】
化合物(A)の具体例としては、例えば混合脂肪酸(リノール酸とオレイン酸の混合物)とポリエチレングリコールとのエステル、リノール酸とポリエチレングリコールとのエステル、リノール酸とグリセリンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、リノール酸とソルビタンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、リノール酸とイソソルバイドのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、リノレン酸とポリエチレングリコールとのエステル、リノレン酸とソルビタンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル等が挙げられる。
【0034】
これらの化合物(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、化合物(A)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。化合物(A)の含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性をより向上できる。かかる化合物(A)の含有割合の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。化合物(A)の含有割合が20質量%以下の場合、処理剤が付与された合成繊維についてガイド等に発生するスカムをより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0035】
本発明では、処理剤中に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を0.1質量%以上22質量%以下含む構成が適用される。
【0036】
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤は、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)を含むことが好ましい。ノニオン界面活性剤が、更に化合物(B)を含むことにより、処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0037】
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。また、好ましい化合物も(A)欄の説明と同様である。
【0038】
(ポリ)オキシアルキレン基を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。
不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの中でも炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸が好ましい。なお、脂肪酸(B1)には、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸は含まれないものとする。
【0039】
化合物(B)は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(B1)と、を所定の仕込み比で混合し、加熱等の条件下でエステル化することにより得られる。また、2価以上5価以下の多価アルコールと脂肪酸(B1)のエステル化合物にアルキレンオキサイドを反応させ、エステル結合部分に(ポリ)オキシアルキレン基を挿入させることにより得てもよい。エステル化反応における(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(B1)との仕込み比(モル比)は、適宜設定される。
【0040】
化合物(B)の具体例としては、例えばオレイン酸とポリエチレングリコールとのエステル、オレイン酸とソルビタンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、パルミトレイン酸とポリエチレングリコールとのエステル、エルカ酸とポリエチレングリコールとのをエステル等が挙げられる。
【0041】
これらの化合物(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、化合物(B)の含有割合の下限は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。かかる化合物(B)の含有割合の上限は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0042】
処理剤中において、上述した化合物(A)と化合物(B)の質量比は、化合物(A)/化合物(B)=50/50~5/95であることが好ましく、40/60~5/95であることがより好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0043】
処理剤中において、上述した化合物(A)と化合物(B)の含有割合の合計は、好ましくは10質量%以上40質量%以下である。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0044】
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤は、更に任意選択で、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)を含んでもよい。
【0045】
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。また、好ましい化合物も(A)欄の説明と同様である。
【0046】
(ポリ)オキシアルキレン基を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。
1価飽和脂肪酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。これらの中でも炭素数12以上22以下の1価飽和脂肪酸が好ましい。なお、脂肪酸(C1)には、1価不飽和脂肪酸は含まれないものとする。
【0047】
化合物(C)は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(C1)と、を所定の仕込み比で混合し、加熱等の条件下でエステル化することにより得られる。また、2価以上5価以下の多価アルコールと脂肪酸(C1)のエステル化合物にアルキレンオキサイドを反応させ、エステル結合部分に(ポリ)オキシアルキレン基を挿入させることにより得てもよい。エステル化反応における(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(C1)との仕込み比(モル比)は、適宜設定される。
【0048】
化合物(C)の具体例としては、例えば混合脂肪酸(パルミチン酸とステアリン酸の混合物)とポリエチレングリコールとのエステル、混合脂肪酸(ラウリン酸とミリスチン酸とパルミチン酸の混合物)とポリエチレングリコールとのエステル等が挙げられる。
【0049】
これらの化合物(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、化合物(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる化合物(C)の含有割合の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。化合物(C)の含有割合がかかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0050】
また、処理剤中において、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)を合計で好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上の割合で含有する。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0051】
本実施形態の処理剤は、更に上述した化合物(A)~(C)以外のその他のノニオン界面活性剤を配合してもよい。
その他のノニオン界面活性剤としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコール等との部分エステル化合物、アミン化合物とカルボン酸類とを縮合させたアミド化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物等が挙げられる。
【0052】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソトリアコンタノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0053】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)乳酸、クエン酸、リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(6)アジピン酸、セバシン酸、トリカルバリル等の多価カルボン酸等が挙げられる。
【0054】
ノニオン界面活性剤の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。
ノニオン界面活性剤の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、上述した化合物(A)欄において列挙した多価アルコール、ショ糖、ソルビトール、ポリグリセリン等が例示される。
【0055】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるアミン化合物の具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、オクタデセニルアミン、ヤシアミン、エチレンアミン等が挙げられる。
【0056】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、脂肪酸とジエタノールアミンとのアミド、脂肪酸とエチレンアミンとのアミド等が挙げられる。
【0057】
ノニオン界面活性剤の具体例としては、例えば1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物、ひまし油及びその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、ひまし油及びその誘導体のアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸のエステル化物、炭素数3以上6以下の多価アルコールとカルボン酸の部分エステル、脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加物、一級アルキルアミンのアルキレンオキサイドが挙げられる。さらに、具体的にはイソドデカノールに対しアルキレンオキサイド付加したもの、オレイルアルコールに対しアルキレンオキサイド付加したもの、イソテトラデカノールに対しアルキレンオキサイド付加したもの、硬化ひまし油に対しアルキレンオキサイド付加したもの、硬化ひまし油に対しアルキレンオキサイド付加したものをオレイン酸でエステル化した化合物、硬化ひまし油に対しアルキレンオキサイド付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸でエステル化した化合物、グリセリンジオレアート、トリメチロールプロパンとイソステアリン酸のジエステル、ソルビトールと混合脂肪酸(パルミチン酸とオレイン酸とリノール酸)をエステル化させた化合物、オレイルジエタノールアミドのアルキレンオキサイド付加物、ラウリルアミンのアルキレンオキサイド付加物、ステアリルアミンのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0058】
これらのその他のノニオン界面活性剤は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、全ノニオン界面活性剤の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。かかるノニオン界面活性剤の含有割合の上限は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0059】
(イオン界面活性剤)
本実施形態の処理剤は、更にイオン界面活性剤を配合してもよい。イオン界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0060】
アニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、イソセチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルカンスルホン酸(炭素数13~15)塩、二級アルカンスルホン酸塩(炭素数11~14)、α-オレフィンスルホン酸塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキサン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩、(10)オレオイルサルコシン塩等のN-アシルサルコシン塩等が挙げられる。
【0061】
アニオン界面活性剤を構成する塩としては、金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0062】
ホスホニウム塩を構成するホスホニウムの具体例としては、例えばテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、ジブチルジヘキシルホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等の四級ホスホニウムが挙げられる。
【0063】
有機アミン塩を構成するアミンは、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。
【0064】
カチオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0065】
両性界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
これらのイオン界面活性剤は、一種類のイオン界面活性剤を単独で使用してもよいし、又は二種以上のイオン界面活性剤を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0066】
処理剤中において、イオン界面活性剤の含有割合の下限は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。かかるイオン界面活性剤の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0067】
<第2実施形態>
次に、本発明による合成繊維を具体化した第2実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している合成繊維である。処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、希釈溶媒で希釈した希釈液、例えば有機溶媒溶液、水性液等として付与してもよい。希釈溶媒には、処理剤の繊維への付着性と経済性の観点から炭素数10以上15以下の炭化水素及び/又は水を使用することが好ましい。処理剤と希釈溶媒の混合割合は、処理剤の質量:希釈溶媒の質量=99:1~10:90であることが好ましい。合成繊維は、水性液等の希釈液を、例えば紡糸又は延伸工程等において合成繊維に付着させる工程を経て得られる。合成繊維に付着した希釈液は、延伸工程、乾燥工程により希釈溶媒を蒸発させてもよい。延伸もしくは熱処理工程において、150℃以上のローラーを通過させる工程を有する製造設備、工程での使用により、発明の効果がより期待できる。
【0068】
本実施形態の処理剤が付与される合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。これらの中でポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維に適用されることが好ましい。製造する合成繊維の繊度としては、特に制限はないが、好ましくは150デシテックス以上であり、より好ましくは500デシテックス以上であり、さらに好ましいのは1000デシテックス以上である。また、製造する合成繊維の強度としては、特に制限はないが、好ましくは5.0cN/dtex以上であり、より好ましくは6.0cN/dtex以上、さらに好ましくは7.0cN/dtex以上である。
【0069】
処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤を合成繊維に対し0.1質量%以上5質量%以下の割合(水等の溶媒を含まない割合)となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。また、処理剤を付着させる方法は、特に制限はなく、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等の公知の方法を採用できる。
【0070】
本発明において、合成繊維の用途としては、特に限定されないが、産業資材に用いられる合成繊維が好ましい。例えばエアバッグ用繊維、シートベルト用繊維、タイヤコード用繊維、カーペット用繊維、テント用繊維、広告布用繊維、漁網用繊維、コンベアベルト用繊維、ロープ用繊維等の自動車、建築、商業、農業・水産業、土木等の分野で使用される合成繊維がより好ましい。
【0071】
上記実施形態の処理剤及び合成繊維の効果について説明する。
(1)上記実施形態の処理剤では、上述した平滑剤と、上述したノニオン界面活性剤とを配合して構成した。したがって、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。特に、処理剤が付与された合成繊維を長期保管した場合であっても、ガイド等へのスカムを低減することができる。
【0072】
産業資材用繊維はゴム接着用途で使用されることが多い。ゴム接着性は不飽和結合の増大に伴い増大する傾向がある。しかしながら、不飽和結合の増大は、熱のかかる工程においてタール発生の要因ともなる。さらには、処理剤が紡糸後の保管中に合成繊維上で変質することで、ガイドへのスカム付着、解舒張力変動、繊維の粘着・ネバつき等、後加工に影響を及ぼすことがあった。上述した本発明の構成により、紡糸及び後加工の性能を両立できる。
【0073】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の製造途中又は製造後に、処理剤の品質保持のための上記以外の安定化剤、制電剤、つなぎ剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0074】
・保管時の処理剤の外観の安定性等を高める観点から、処理剤と水を予め混合させてもよく、その場合、処理剤と水の混合比率は、処理剤の質量:水の質量=85:15~99.9:0.1であることが好ましい。
【実施例0075】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0076】
試験区分1(処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、平滑剤としてジイソセチルチオジプロピオナート(ES-1)を10部(%)、トリメチロールプロパンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸、質量比4:6混合物)のトリエステル(E-1)を30部(%)、菜種白絞油(E-2)を20部(%)、ノニオン界面活性剤として後述する表3に示される化合物(A-1)を5部(%)、後述する表4に示される化合物(B-1)を8部(%)、イソドデカノール1モルに対してエチレンオキサイド(以下、「EO」という)10モルプロピレンオキサイド(以下、「PO」という)10モルをランダムに付加したもの(N-3)を5部(%)、硬化ひまし油1モルに対しEO10モル付加したもの(N-5)を10部(%)、硬化ひまし油1モルに対しEO15モル付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸でエステル化した化合物(質量平均分子量7000)(N-7)を5部(%)、ラウリルアミン1モルに対しEO5モル付加したもの(N-12)を2部(%)、イオン界面活性剤として二級アルカンスルホン酸ナトリウム塩(炭素数11~14)(D-1)を3部(%)、オレイルアルコールEO5モル付加物のリン酸エステル-ジブチルエタノールアミン塩(D-5)2部(%)を含む実施例1の処理剤を調製した。
【0077】
(実施例3,4,6~9,11,12,14、参考例2,5,10,13、比較例1~4)
実施例3,4,6~9,11,12,14、参考例2,5,10,13、比較例1~4の処理剤は、実施例1の処理剤と同様にして、平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を表1に示した割合で含むように調製した。
【0078】
平滑剤の種類と含有量、ノニオン界面活性剤の種類と含有量、及びイオン界面活性剤の種類と含有量を、表1の「平滑剤」欄、「ノニオン界面活性剤」欄、及び「イオン界面活性剤」欄にそれぞれ示す。また、ノニオン界面活性剤である化合物(A)と化合物(B)の質量比を「質量比(A)/(B)」欄に示す。また、ノニオン界面活性剤である化合物(A)、化合物(B)、及び化合物(C)の含有割合の合計を100%としたとき、化合物(A)、及び化合物(B)の含有量の合計を「質量比[(A)+(B)]/[(A)+(B)+(C)]」欄に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
表1に記載する平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤の詳細は以下のとおりである。
【0081】
<平滑剤>
(含硫黄エステル化合物)
ES-1:ジイソセチルチオジプロピオナート
ES-2:ジオレイルチオジプロピオナート
ES-3:ジイソステアリルチオジプロピオナート
(多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物)
E-1:トリメチロールプロパンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸、質量比4:6混合物)のトリエステル
E-2:菜種白絞油
E-3:グリセリンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸、質量比4:6混合物)のトリエステル
(その他の平滑剤)
E-4:ジ(イソステアリル)アジパート
E-5:オレイルパルミタート
<ノニオン界面活性剤>
(化合物(A))
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)として、以下の表3に示される化合物(A-1)~化合物(A-7)を使用した。また、化合物(A)に近似する化合物として表3に示される化合物(rA-1)及び化合物(rA-2)を使用した。化合物(A)の原料として脂肪酸(A1)及び多価アルコール、並びに脂肪酸(A1)と多価アルコールの仕込み比(モル比)を、表3の「1価不飽和脂肪酸(A1)」欄、「多価アルコール」欄、及び「反応比」欄にそれぞれ示す。なお、化合物(A-1)の液体クロマトグラフィーによる定性分析の結果、化合物(B)に該当する化合物の含有はなかった。「多価アルコール」欄のPEG400は、質量平均分子量400のポリエチレングリコール、PEG600は、質量平均分子量600のポリエチレングリコールを示す。
【0082】
【表3】
(化合物(B))
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)として、以下の表4に示される化合物(B-1)~化合物(B-7)を使用した。また、化合物(B)の原料として脂肪酸(B1)及び多価アルコール、並びに脂肪酸(B1)と多価アルコールの仕込み比(モル比)を、表4の「1価不飽和脂肪酸(B1)」欄、「多価アルコール」欄、及び「反応比」欄にそれぞれ示す。「多価アルコール」欄のPEG400は、質量平均分子量400のポリエチレングリコール、PEG600は、質量平均分子量600のポリエチレングリコール、PEG1000は、質量平均分子量1000のポリエチレングリコールを示す。
【0083】
【表4】
(化合物(C))
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)として、以下の表5に示される化合物(C-1)及び化合物(C-2)を使用した。また、化合物(C)の原料として脂肪酸(C1)及び多価アルコール、並びに脂肪酸(C1)と多価アルコールの仕込み比(モル比)を、表5の「1価飽和脂肪酸(C1)」欄、「多価アルコール」欄、及び「反応比」欄にそれぞれ示す。「多価アルコール」欄のPEG400は、質量平均分子量400のポリエチレングリコール、PEG600は、質量平均分子量600のポリエチレングリコールを示す。
【0084】
【表5】
(その他のノニオン界面活性剤)
N-1:イソドデカノール1モルに対しEO10モル付加したもの
N-2:オレイルアルコール1モルに対しEO10モル付加したもの
N-3:イソドデカノール1モルに対してEO10モルPO10モルをランダムに付加したもの
N-4:イソテトラデカノール1モルに対してPO15モル付加したものにEO15モル付加したもの
N-5:硬化ひまし油1モルに対しEO10モル付加したもの
N-6:硬化ひまし油1モルにEO15モル付加したものをオレイン酸3モルでエステル化した化合物
N-7:硬化ひまし油1モルに対しEO15モル付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸でエステル化した化合物(質量平均分子量7000)
N-8:グリセリンジオレアート
N-9:トリメチロールプロパンとイソステアリン酸のジエステル
N-10:ソルビトールと混合脂肪酸(パルミチン酸とオレイン酸とリノール酸が質量比で、7/75/18)をエステル化させた化合物(反応モル比1:1)
N-11:オレイルジエタノールアミド1モルに対しEO8モル付加したもの
N-12:ラウリルアミン1モルに対しEO5モル付加したもの
N-13:ステアリルアミン1モルに対しEO10モル付加したもの
<イオン界面活性剤>
D-1:二級アルカンスルホン酸ナトリウム塩(炭素数11~14)
D-2:ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩
D-3:α-オレフィンスルホン酸ナトリウム塩
D-4:2-エチルヘキサン酸カリウム塩
D-5:オレイルアルコールEO5モル付加物のリン酸エステル-ジブチルエタノールアミン塩
D-6:イソセチルリン酸エステル-ステアリルアミンEO10モル付加物塩
なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(標準物質はポリスチレン)で求めた。
【0085】
試験区分2(接着)
上記のように調製した各処理剤を希釈溶媒として有機溶剤(ヘキサンとエタノールの混合溶媒)で均一に希釈し、15%希釈液とした。紡糸工程にて1670デシテックス、288フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に、前記希釈液を、オイリングローラー給油法にて、不揮発分として付与量5.0%となるように付与した。その後、希釈溶媒を乾燥させ試験糸を得た。
【0086】
試験糸2本を、下撚40回/10cm、上撚40回/10cmの撚数で撚り、撚糸コードとした。この撚糸コードを、第1接着剤(エポキシ化合物(ナガセケムテックス社製の商品名デナコールEX-512)/ブロックドイソシアネート(第一工業製薬社製の商品名エラストロンBN-27)=5/5(固形分比))に浸漬した後、熱処理した。次に、更に第2接着剤(レゾルシン(キシダ化学社製の商品名レソルシノール)/ホルマリン(キシダ化学社製の商品名ホルムルデヒド液(37%))/ラテックス(日本ゼオン社製の商品名Nipol 2518FS)=1.5/0.5/8(固形分比)のRFL溶液)に浸漬した後、熱処理して、接着剤で処理した補強用コードを得た。この補強コードを、縦2.5cmで横12.5cmの未加硫ゴムに隙間なく並べ、さらにその上に未加硫ゴムを乗せ、これを150℃、4MPaで30分間プレス加硫することで、ゴム接着評価の試験片を作成した。放冷した試験片に対して、剥離速度50mm/minで補強コードとゴム間を剥離させて、補強コードへのゴムの付き具合を目視で観察し、接着を次の評価基準で評価した。結果を表2の「接着」欄に示す。
【0087】
・接着の評価基準
○○(良好):補強コードが見えないほどゴムが付着している場合
○(可):補強コードがわずかに見える程度にゴムが付着している場合
×(不可):補強コードがよく見える場合
試験区分3(スカム)
試験区分2で得られた試験糸を60℃で6週間保管した後、初期張力0.5kg、糸速50m/分で、5分セラミックガイドに接触させた。セラミックガイドに付着したスカムの量を目視で観察し、スカムを次の評価基準で評価した。結果を表2の「スカム」欄に示す。
【0088】
・スカムの評価基準
○○(良好):スカムが観察されない場合
○(可):薄っすらとスカムが観察される場合
×(不可):明らかにスカムが観察される場合
表2の結果からも明らかなように、各実施例の処理剤は、接着及びスカムの評価がいずれも可以上であった。本発明によれば、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑剤、及びノニオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤であって、
前記平滑剤が、炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物を含み、
前記ノニオン界面活性剤が、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)、並びに(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)を含み、
前記合成繊維用処理剤中に前記完全エステル化合物を30質量%以上70質量%以下、前記化合物(A)を0.1質量%以上22質量%以下含むことを特徴とする合成繊維用処理剤。
【請求項2】
平滑剤、及びノニオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤であって、
前記平滑剤が、炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物、及び含硫黄エステル化合物を含み、
前記ノニオン界面活性剤が、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を含み、
前記合成繊維用処理剤中に前記完全エステル化合物を30質量%以上70質量%以下、前記化合物(A)を0.1質量%以上22質量%以下含むことを特徴とする合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記合成繊維用処理剤中において、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)の質量比が、化合物(A)/化合物(B)=40/60~5/95である請求項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記ノニオン界面活性剤が、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)を含み、
前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)を合計で70質量%以上の割合で含有する請求項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記平滑剤が、更に含硫黄エステル化合物を含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、イオン界面活性剤を含有する請求項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする合成繊維。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性を向上できるとともにスカムを低減できる合成繊維用処理剤及び該合成繊維用処理剤が付与された合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維の紡糸延伸工程等において、平滑性、制電性等の向上の観点から、合成繊維の表面に合成繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1に開示の合成繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、アルケニル基を持つスルホン酸化合物、ヒドロキシアルキル基を持つスルホン酸化合物、及びスルホ基を有する炭化水素基を持つスルホン酸化合物を含有する合成繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-046647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の合成繊維用処理剤において、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果の両立が不十分であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、合成繊維用処理剤において、所定の平滑剤及びノニオン界面活性剤とを含有する構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決する各態様を記載する。
【0006】
態様1の合成繊維用処理剤は、平滑剤、及びノニオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤であって、前記平滑剤が、炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物を含み、前記ノニオン界面活性剤が、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)、並びに(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)を含み、前記合成繊維用処理剤中に前記完全エステル化合物を30質量%以上70質量%以下、前記化合物(A)を0.1質量%以上22質量%以下含むことを特徴とする。
【0007】
態様2の合成繊維用処理剤は、平滑剤、及びノニオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤であって、前記平滑剤が、炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物、及び含硫黄エステル化合物を含み、前記ノニオン界面活性剤が、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を含み、前記合成繊維用処理剤中に前記完全エステル化合物を30質量%以上70質量%以下、前記化合物(A)を0.1質量%以上22質量%以下含むことを特徴とする。
【0008】
態様3は、態様に記載の合成繊維用処理剤において、前記合成繊維用処理剤中における前記化合物(A)、及び前記化合物(B)の質量比が、化合物(A)/化合物(B)=40/60~5/95である。
【0009】
態様4は、態様又はに記載の合成繊維用処理剤において、前記ノニオン界面活性剤が、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)を含み、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)を合計で70質量%以上の割合で含有する。
【0010】
態様5は、態様1又は3に記載の合成繊維用処理剤において、前記平滑剤が、更に含硫黄エステル化合物を含む。
態様6は、態様1~5のいずれか1態様に記載の合成繊維用処理剤において、更に、イオン界面活性剤を含有する。
【0011】
態様7の合成繊維は、態様1~6のいずれか1態様に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、所定の平滑剤及びノニオン界面活性剤を含有する。処理剤は、さらにイオン界面活性剤を含有してもよい。
【0014】
(平滑剤)
処理剤に供される平滑剤は、多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物を含んで構成される。本発明の完全エステル化合物は、炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物が適用される。
【0015】
多価アルコールとしては、鎖状構造の多価アルコールが好ましく、鎖状構造としては、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0016】
1価脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0017】
1価脂肪酸の具体例としては、例えば、(1)ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等の直鎖の飽和脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐の飽和脂肪酸、(3)クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等の直鎖の不飽和脂肪酸、(4)リシノール酸等のヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。
【0018】
完全エステル化合物の具体例としては、例えばトリメチロールプロパンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸)のトリエステル等のトリメチロールプロパンと脂肪酸のトリエステル、グリセリンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸)のトリエステル等のグリセリンと脂肪酸のトリエステル、及びヤシ油、ナタネ油、菜種白絞油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、パーム油、魚油等の天然油脂等が挙げられる。
【0019】
これらの完全エステル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物の含有割合の下限は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。かかる多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物の含有割合の上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0020】
本発明では、処理剤中において、炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物の完全エステル化合物を30質量%以上70質量%以下含む構成が適用される。
【0021】
本実施形態の処理剤に供される平滑剤は、更に含硫黄エステル化合物を含むことが好ましい。平滑剤が、更に含硫黄エステル化合物を含むことにより、処理剤が付与された合成繊維についてガイド等に発生するスカムをより低減できる。
【0022】
含硫黄エステル化合物の具体例としては、例えばジオクチルチオジプロピオナート、ジイソラウリルチオジプロピオナート、ジラウリルチオジプロピオナート、ジイソセチルチオジプロピオナート、ジイソパルミチルチオジプロピオナート、ジイソテトラコシルチオジプロピオナート、ジイソステアリルチオジプロピオナート、ジオレイルチオジプロピオナート、オクチルチオジプロピオナート、イソラウリルチオジプロピオナート、ラウリルチオジプロピオナート、イソセチルチオジプロピオナート、イソステアリルチオジプロピオナート、オレイルチオジプロピオナート、オクチルメルカプトプロピオナート、ステアリルメルカプトプロピオナート、トリメチロールプロパントリス(メルカプトプロピオナート)等が挙げられる。これらの中でも、処理剤での相溶性の観点から、チオジプロピオン酸と分岐鎖構造を有するアルコール又は不飽和結合を有するアルコールとのエステル化合物が好ましい。
【0023】
これらの含硫黄エステル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、含硫黄エステル化合物の含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含硫黄エステル化合物の含有割合の上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維についてガイド等に発生するスカムをより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0024】
本実施形態の処理剤に供される平滑剤は、上記以外のその他のエステル化合物を配合してもよい。その他のエステル化合物の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート、イソステアリルエルシナート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)ジイソステアリルアジパート、ジオレイルアジパート、ジオレイルアゼラート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(3)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(4)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(5)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物等が挙げられる。
【0025】
これらのその他のエステル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
平滑剤としては、上記エステル化合物以外に鉱物油(動粘度が40℃で5mm/s以上のもの)等を使用してもよい。鉱物油としては、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えばスピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの鉱物油は、市販品を適宜採用することができる。
【0026】
これらの鉱物油は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、平滑剤の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。かかる平滑剤の含有割合の上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、繊維に平滑性を付与しながら、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0027】
(ノニオン界面活性剤)
処理剤に供されるノニオン界面活性剤は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を含む。本発明のノニオン界面活性剤は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)が適用される。
【0028】
2価以上5価以下の多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、イソソルバイド等が挙げられる。これらの中でも、処理剤の安定性の観点から、グリセリン、ソルビタン、ポリエチレングリコール、イソソルバイドが好ましい。
【0029】
(ポリ)オキシアルキレン基を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上250モル以下、より好ましくは1モル以上200モル以下、さらに好ましくは2モル以上150モル以下、特に好ましくは3モル以上40モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0030】
不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸の具体例としては、例えば(1)リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等の不飽和結合を2つ有する1価不飽和脂肪酸、(2)α-リノレン酸、γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸等の不飽和結合を3つ有する1価不飽和脂肪酸、(3)ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸等の不飽和結合を4つ有する1価不飽和脂肪酸、(4)エイコサペンタエン酸、テトラコサペンタエン酸等の不飽和結合を5つ有する1価不飽和脂肪酸、(5)ドコサヘキサエン酸等の不飽和結合を6つ有する1価不飽和脂肪酸等が挙げられる。これらの中でも炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸が好ましい。
【0031】
脂肪酸(A1)としては、不飽和結合を2つ有する1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含むものであることが好ましい。かかる1価不飽和脂肪酸を適用することにより、本発明の効果をより向上できる。
【0032】
化合物(A)は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(A1)と、を所定の仕込み比で混合し、加熱等の条件下でエステル化することにより得られる。また、2価以上5価以下の多価アルコールと脂肪酸(A1)のエステル化合物にアルキレンオキサイドを反応させ、エステル結合部分に(ポリ)オキシアルキレン基を挿入させることにより得てもよい。エステル化反応における(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(A1)との仕込み比(モル比)は、適宜設定される。
【0033】
化合物(A)の具体例としては、例えば混合脂肪酸(リノール酸とオレイン酸の混合物)とポリエチレングリコールとのエステル、リノール酸とポリエチレングリコールとのエステル、リノール酸とグリセリンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、リノール酸とソルビタンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、リノール酸とイソソルバイドのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、リノレン酸とポリエチレングリコールとのエステル、リノレン酸とソルビタンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル等が挙げられる。
【0034】
これらの化合物(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、化合物(A)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。化合物(A)の含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性をより向上できる。かかる化合物(A)の含有割合の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。化合物(A)の含有割合が20質量%以下の場合、処理剤が付与された合成繊維についてガイド等に発生するスカムをより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0035】
本発明では、処理剤中に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸、及び不飽和結合を3つ有する炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1つを含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)を0.1質量%以上22質量%以下含む構成が適用される。
【0036】
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤は、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)を含むことが好ましい。ノニオン界面活性剤が、更に化合物(B)を含むことにより、処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0037】
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。また、好ましい化合物も(A)欄の説明と同様である。
【0038】
(ポリ)オキシアルキレン基を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。
不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの中でも炭素数12以上22以下の1価不飽和脂肪酸が好ましい。なお、脂肪酸(B1)には、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸は含まれないものとする。
【0039】
化合物(B)は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(B1)と、を所定の仕込み比で混合し、加熱等の条件下でエステル化することにより得られる。また、2価以上5価以下の多価アルコールと脂肪酸(B1)のエステル化合物にアルキレンオキサイドを反応させ、エステル結合部分に(ポリ)オキシアルキレン基を挿入させることにより得てもよい。エステル化反応における(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(B1)との仕込み比(モル比)は、適宜設定される。
【0040】
化合物(B)の具体例としては、例えばオレイン酸とポリエチレングリコールとのエステル、オレイン酸とソルビタンのアルキレンオキサイド付加物とのエステル、パルミトレイン酸とポリエチレングリコールとのエステル、エルカ酸とポリエチレングリコールとのをエステル等が挙げられる。
【0041】
これらの化合物(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、化合物(B)の含有割合の下限は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。かかる化合物(B)の含有割合の上限は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0042】
処理剤中において、上述した化合物(A)と化合物(B)の質量比は、化合物(A)/化合物(B)=50/50~5/95であることが好ましく、40/60~5/95であることがより好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0043】
処理剤中において、上述した化合物(A)と化合物(B)の含有割合の合計は、好ましくは10質量%以上40質量%以下である。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果、特に処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0044】
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤は、更に任意選択で、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)を含んでもよい。
【0045】
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。また、好ましい化合物も(A)欄の説明と同様である。
【0046】
(ポリ)オキシアルキレン基を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。
1価飽和脂肪酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。これらの中でも炭素数12以上22以下の1価飽和脂肪酸が好ましい。なお、脂肪酸(C1)には、1価不飽和脂肪酸は含まれないものとする。
【0047】
化合物(C)は、(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(C1)と、を所定の仕込み比で混合し、加熱等の条件下でエステル化することにより得られる。また、2価以上5価以下の多価アルコールと脂肪酸(C1)のエステル化合物にアルキレンオキサイドを反応させ、エステル結合部分に(ポリ)オキシアルキレン基を挿入させることにより得てもよい。エステル化反応における(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、脂肪酸(C1)との仕込み比(モル比)は、適宜設定される。
【0048】
化合物(C)の具体例としては、例えば混合脂肪酸(パルミチン酸とステアリン酸の混合物)とポリエチレングリコールとのエステル、混合脂肪酸(ラウリン酸とミリスチン酸とパルミチン酸の混合物)とポリエチレングリコールとのエステル等が挙げられる。
【0049】
これらの化合物(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、化合物(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる化合物(C)の含有割合の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。化合物(C)の含有割合がかかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0050】
また、処理剤中において、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記化合物(A)、及び前記化合物(B)を合計で好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上の割合で含有する。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。
【0051】
本実施形態の処理剤は、更に上述した化合物(A)~(C)以外のその他のノニオン界面活性剤を配合してもよい。
その他のノニオン界面活性剤としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコール等との部分エステル化合物、アミン化合物とカルボン酸類とを縮合させたアミド化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物等が挙げられる。
【0052】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソトリアコンタノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0053】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)乳酸、クエン酸、リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(6)アジピン酸、セバシン酸、トリカルバリル等の多価カルボン酸等が挙げられる。
【0054】
ノニオン界面活性剤の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、上述した化合物(A)欄の説明と同様である。
ノニオン界面活性剤の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、上述した化合物(A)欄において列挙した多価アルコール、ショ糖、ソルビトール、ポリグリセリン等が例示される。
【0055】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるアミン化合物の具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、オクタデセニルアミン、ヤシアミン、エチレンアミン等が挙げられる。
【0056】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、脂肪酸とジエタノールアミンとのアミド、脂肪酸とエチレンアミンとのアミド等が挙げられる。
【0057】
ノニオン界面活性剤の具体例としては、例えば1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物、ひまし油及びその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、ひまし油及びその誘導体のアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸のエステル化物、炭素数3以上6以下の多価アルコールとカルボン酸の部分エステル、脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加物、一級アルキルアミンのアルキレンオキサイドが挙げられる。さらに、具体的にはイソドデカノールに対しアルキレンオキサイド付加したもの、オレイルアルコールに対しアルキレンオキサイド付加したもの、イソテトラデカノールに対しアルキレンオキサイド付加したもの、硬化ひまし油に対しアルキレンオキサイド付加したもの、硬化ひまし油に対しアルキレンオキサイド付加したものをオレイン酸でエステル化した化合物、硬化ひまし油に対しアルキレンオキサイド付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸でエステル化した化合物、グリセリンジオレアート、トリメチロールプロパンとイソステアリン酸のジエステル、ソルビトールと混合脂肪酸(パルミチン酸とオレイン酸とリノール酸)をエステル化させた化合物、オレイルジエタノールアミドのアルキレンオキサイド付加物、ラウリルアミンのアルキレンオキサイド付加物、ステアリルアミンのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0058】
これらのその他のノニオン界面活性剤は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、全ノニオン界面活性剤の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。かかるノニオン界面活性剤の含有割合の上限は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0059】
(イオン界面活性剤)
本実施形態の処理剤は、更にイオン界面活性剤を配合してもよい。イオン界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0060】
アニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、イソセチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルカンスルホン酸(炭素数13~15)塩、二級アルカンスルホン酸塩(炭素数11~14)、α-オレフィンスルホン酸塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキサン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩、(10)オレオイルサルコシン塩等のN-アシルサルコシン塩等が挙げられる。
【0061】
アニオン界面活性剤を構成する塩としては、金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0062】
ホスホニウム塩を構成するホスホニウムの具体例としては、例えばテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、ジブチルジヘキシルホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等の四級ホスホニウムが挙げられる。
【0063】
有機アミン塩を構成するアミンは、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。
【0064】
カチオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0065】
両性界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
これらのイオン界面活性剤は、一種類のイオン界面活性剤を単独で使用してもよいし、又は二種以上のイオン界面活性剤を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0066】
処理剤中において、イオン界面活性剤の含有割合の下限は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。かかるイオン界面活性剤の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0067】
<第2実施形態>
次に、本発明による合成繊維を具体化した第2実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している合成繊維である。処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、希釈溶媒で希釈した希釈液、例えば有機溶媒溶液、水性液等として付与してもよい。希釈溶媒には、処理剤の繊維への付着性と経済性の観点から炭素数10以上15以下の炭化水素及び/又は水を使用することが好ましい。処理剤と希釈溶媒の混合割合は、処理剤の質量:希釈溶媒の質量=99:1~10:90であることが好ましい。合成繊維は、水性液等の希釈液を、例えば紡糸又は延伸工程等において合成繊維に付着させる工程を経て得られる。合成繊維に付着した希釈液は、延伸工程、乾燥工程により希釈溶媒を蒸発させてもよい。延伸もしくは熱処理工程において、150℃以上のローラーを通過させる工程を有する製造設備、工程での使用により、発明の効果がより期待できる。
【0068】
本実施形態の処理剤が付与される合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。これらの中でポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維に適用されることが好ましい。製造する合成繊維の繊度としては、特に制限はないが、好ましくは150デシテックス以上であり、より好ましくは500デシテックス以上であり、さらに好ましいのは1000デシテックス以上である。また、製造する合成繊維の強度としては、特に制限はないが、好ましくは5.0cN/dtex以上であり、より好ましくは6.0cN/dtex以上、さらに好ましくは7.0cN/dtex以上である。
【0069】
処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤を合成繊維に対し0.1質量%以上5質量%以下の割合(水等の溶媒を含まない割合)となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。また、処理剤を付着させる方法は、特に制限はなく、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等の公知の方法を採用できる。
【0070】
本発明において、合成繊維の用途としては、特に限定されないが、産業資材に用いられる合成繊維が好ましい。例えばエアバッグ用繊維、シートベルト用繊維、タイヤコード用繊維、カーペット用繊維、テント用繊維、広告布用繊維、漁網用繊維、コンベアベルト用繊維、ロープ用繊維等の自動車、建築、商業、農業・水産業、土木等の分野で使用される合成繊維がより好ましい。
【0071】
上記実施形態の処理剤及び合成繊維の効果について説明する。
(1)上記実施形態の処理剤では、上述した平滑剤と、上述したノニオン界面活性剤とを配合して構成した。したがって、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。特に、処理剤が付与された合成繊維を長期保管した場合であっても、ガイド等へのスカムを低減することができる。
【0072】
産業資材用繊維はゴム接着用途で使用されることが多い。ゴム接着性は不飽和結合の増大に伴い増大する傾向がある。しかしながら、不飽和結合の増大は、熱のかかる工程においてタール発生の要因ともなる。さらには、処理剤が紡糸後の保管中に合成繊維上で変質することで、ガイドへのスカム付着、解舒張力変動、繊維の粘着・ネバつき等、後加工に影響を及ぼすことがあった。上述した本発明の構成により、紡糸及び後加工の性能を両立できる。
【0073】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の製造途中又は製造後に、処理剤の品質保持のための上記以外の安定化剤、制電剤、つなぎ剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0074】
・保管時の処理剤の外観の安定性等を高める観点から、処理剤と水を予め混合させてもよく、その場合、処理剤と水の混合比率は、処理剤の質量:水の質量=85:15~99.9:0.1であることが好ましい。
【実施例0075】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0076】
試験区分1(処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、平滑剤としてジイソセチルチオジプロピオナート(ES-1)を10部(%)、トリメチロールプロパンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸、質量比4:6混合物)のトリエステル(E-1)を30部(%)、菜種白絞油(E-2)を20部(%)、ノニオン界面活性剤として後述する表3に示される化合物(A-1)を5部(%)、後述する表4に示される化合物(B-1)を8部(%)、イソドデカノール1モルに対してエチレンオキサイド(以下、「EO」という)10モルプロピレンオキサイド(以下、「PO」という)10モルをランダムに付加したもの(N-3)を5部(%)、硬化ひまし油1モルに対しEO10モル付加したもの(N-5)を10部(%)、硬化ひまし油1モルに対しEO15モル付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸でエステル化した化合物(質量平均分子量7000)(N-7)を5部(%)、ラウリルアミン1モルに対しEO5モル付加したもの(N-12)を2部(%)、イオン界面活性剤として二級アルカンスルホン酸ナトリウム塩(炭素数11~14)(D-1)を3部(%)、オレイルアルコールEO5モル付加物のリン酸エステル-ジブチルエタノールアミン塩(D-5)2部(%)を含む実施例1の処理剤を調製した。
【0077】
(実施例3,4,6~9,11,12,14、参考例2,5,10,13、比較例1~4)
実施例3,4,6~9,11,12,14、参考例2,5,10,13、比較例1~4の処理剤は、実施例1の処理剤と同様にして、平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を表1に示した割合で含むように調製した。
【0078】
平滑剤の種類と含有量、ノニオン界面活性剤の種類と含有量、及びイオン界面活性剤の種類と含有量を、表1の「平滑剤」欄、「ノニオン界面活性剤」欄、及び「イオン界面活性剤」欄にそれぞれ示す。また、ノニオン界面活性剤である化合物(A)と化合物(B)の質量比を「質量比(A)/(B)」欄に示す。また、ノニオン界面活性剤である化合物(A)、化合物(B)、及び化合物(C)の含有割合の合計を100%としたとき、化合物(A)、及び化合物(B)の含有量の合計を「質量比[(A)+(B)]/[(A)+(B)+(C)]」欄に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
表1に記載する平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤の詳細は以下のとおりである。
【0081】
<平滑剤>
(含硫黄エステル化合物)
ES-1:ジイソセチルチオジプロピオナート
ES-2:ジオレイルチオジプロピオナート
ES-3:ジイソステアリルチオジプロピオナート
(多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物)
E-1:トリメチロールプロパンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸、質量比4:6混合物)のトリエステル
E-2:菜種白絞油
E-3:グリセリンと混合酸(パーム核脂肪酸と植物系オレイン酸、質量比4:6混合物)のトリエステル
(その他の平滑剤)
E-4:ジ(イソステアリル)アジパート
E-5:オレイルパルミタート
<ノニオン界面活性剤>
(化合物(A))
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を2つ以上有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(A1)と、をエステル化させた化合物(A)として、以下の表3に示される化合物(A-1)~化合物(A-7)を使用した。また、化合物(A)に近似する化合物として表3に示される化合物(rA-1)及び化合物(rA-2)を使用した。化合物(A)の原料として脂肪酸(A1)及び多価アルコール、並びに脂肪酸(A1)と多価アルコールの仕込み比(モル比)を、表3の「1価不飽和脂肪酸(A1)」欄、「多価アルコール」欄、及び「反応比」欄にそれぞれ示す。なお、化合物(A-1)の液体クロマトグラフィーによる定性分析の結果、化合物(B)に該当する化合物の含有はなかった。「多価アルコール」欄のPEG400は、質量平均分子量400のポリエチレングリコール、PEG600は、質量平均分子量600のポリエチレングリコールを示す。
【0082】
【表3】
(化合物(B))
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、不飽和結合を1つ有する1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(B1)と、をエステル化させた化合物(B)として、以下の表4に示される化合物(B-1)~化合物(B-7)を使用した。また、化合物(B)の原料として脂肪酸(B1)及び多価アルコール、並びに脂肪酸(B1)と多価アルコールの仕込み比(モル比)を、表4の「1価不飽和脂肪酸(B1)」欄、「多価アルコール」欄、及び「反応比」欄にそれぞれ示す。「多価アルコール」欄のPEG400は、質量平均分子量400のポリエチレングリコール、PEG600は、質量平均分子量600のポリエチレングリコール、PEG1000は、質量平均分子量1000のポリエチレングリコールを示す。
【0083】
【表4】
(化合物(C))
(ポリ)オキシアルキレン基を有する2価以上5価以下の多価アルコールと、1価飽和脂肪酸を含む脂肪酸(C1)と、をエステル化させた化合物(C)として、以下の表5に示される化合物(C-1)及び化合物(C-2)を使用した。また、化合物(C)の原料として脂肪酸(C1)及び多価アルコール、並びに脂肪酸(C1)と多価アルコールの仕込み比(モル比)を、表5の「1価飽和脂肪酸(C1)」欄、「多価アルコール」欄、及び「反応比」欄にそれぞれ示す。「多価アルコール」欄のPEG400は、質量平均分子量400のポリエチレングリコール、PEG600は、質量平均分子量600のポリエチレングリコールを示す。
【0084】
【表5】
(その他のノニオン界面活性剤)
N-1:イソドデカノール1モルに対しEO10モル付加したもの
N-2:オレイルアルコール1モルに対しEO10モル付加したもの
N-3:イソドデカノール1モルに対してEO10モルPO10モルをランダムに付加したもの
N-4:イソテトラデカノール1モルに対してPO15モル付加したものにEO15モル付加したもの
N-5:硬化ひまし油1モルに対しEO10モル付加したもの
N-6:硬化ひまし油1モルにEO15モル付加したものをオレイン酸3モルでエステル化した化合物
N-7:硬化ひまし油1モルに対しEO15モル付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸でエステル化した化合物(質量平均分子量7000)
N-8:グリセリンジオレアート
N-9:トリメチロールプロパンとイソステアリン酸のジエステル
N-10:ソルビトールと混合脂肪酸(パルミチン酸とオレイン酸とリノール酸が質量比で、7/75/18)をエステル化させた化合物(反応モル比1:1)
N-11:オレイルジエタノールアミド1モルに対しEO8モル付加したもの
N-12:ラウリルアミン1モルに対しEO5モル付加したもの
N-13:ステアリルアミン1モルに対しEO10モル付加したもの
<イオン界面活性剤>
D-1:二級アルカンスルホン酸ナトリウム塩(炭素数11~14)
D-2:ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩
D-3:α-オレフィンスルホン酸ナトリウム塩
D-4:2-エチルヘキサン酸カリウム塩
D-5:オレイルアルコールEO5モル付加物のリン酸エステル-ジブチルエタノールアミン塩
D-6:イソセチルリン酸エステル-ステアリルアミンEO10モル付加物塩
なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(標準物質はポリスチレン)で求めた。
【0085】
試験区分2(接着)
上記のように調製した各処理剤を希釈溶媒として有機溶剤(ヘキサンとエタノールの混合溶媒)で均一に希釈し、15%希釈液とした。紡糸工程にて1670デシテックス、288フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に、前記希釈液を、オイリングローラー給油法にて、不揮発分として付与量5.0%となるように付与した。その後、希釈溶媒を乾燥させ試験糸を得た。
【0086】
試験糸2本を、下撚40回/10cm、上撚40回/10cmの撚数で撚り、撚糸コードとした。この撚糸コードを、第1接着剤(エポキシ化合物(ナガセケムテックス社製の商品名デナコールEX-512)/ブロックドイソシアネート(第一工業製薬社製の商品名エラストロンBN-27)=5/5(固形分比))に浸漬した後、熱処理した。次に、更に第2接着剤(レゾルシン(キシダ化学社製の商品名レソルシノール)/ホルマリン(キシダ化学社製の商品名ホルムルデヒド液(37%))/ラテックス(日本ゼオン社製の商品名Nipol 2518FS)=1.5/0.5/8(固形分比)のRFL溶液)に浸漬した後、熱処理して、接着剤で処理した補強用コードを得た。この補強コードを、縦2.5cmで横12.5cmの未加硫ゴムに隙間なく並べ、さらにその上に未加硫ゴムを乗せ、これを150℃、4MPaで30分間プレス加硫することで、ゴム接着評価の試験片を作成した。放冷した試験片に対して、剥離速度50mm/minで補強コードとゴム間を剥離させて、補強コードへのゴムの付き具合を目視で観察し、接着を次の評価基準で評価した。結果を表2の「接着」欄に示す。
【0087】
・接着の評価基準
○○(良好):補強コードが見えないほどゴムが付着している場合
○(可):補強コードがわずかに見える程度にゴムが付着している場合
×(不可):補強コードがよく見える場合
試験区分3(スカム)
試験区分2で得られた試験糸を60℃で6週間保管した後、初期張力0.5kg、糸速50m/分で、5分セラミックガイドに接触させた。セラミックガイドに付着したスカムの量を目視で観察し、スカムを次の評価基準で評価した。結果を表2の「スカム」欄に示す。
【0088】
・スカムの評価基準
○○(良好):スカムが観察されない場合
○(可):薄っすらとスカムが観察される場合
×(不可):明らかにスカムが観察される場合
表2の結果からも明らかなように、各実施例の処理剤は、接着及びスカムの評価がいずれも可以上であった。本発明によれば、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のゴム接着性の向上とスカムの低減効果を両立できる。