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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054737
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/04 20060101AFI20240410BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B32B27/04 A
B32B27/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161160
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】佐野 麻美子
(72)【発明者】
【氏名】木下 一喜
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AC03D
4F100AC03H
4F100AK03A
4F100AK03D
4F100AK07D
4F100AK25E
4F100AK51E
4F100AL09D
4F100AT00
4F100BA05
4F100CA02E
4F100CA02H
4F100CA13D
4F100CA13H
4F100CA18D
4F100CA18H
4F100CB01C
4F100CB01G
4F100EC182
4F100EC18C
4F100GB08
4F100HB01B
4F100HB31B
4F100JK17
4F100JL16
4F100JN01C
4F100JN01G
(57)【要約】
【課題】化粧シートを構成する材料を有効活用することの可能な化粧シートを提供する。
【解決手段】化粧シート10は、ポリオレフィン系樹脂を含む着色熱可塑性樹脂基材シート30上に、印刷絵柄層40と接着剤層50と透明熱可塑性樹脂層60と表面保護層70とがこの順に積層され、透明熱可塑性樹脂層60は、透明のポリプロピレン樹脂及び再生樹脂を含むと共にナノサイズの添加剤としての分散剤が添加されている。工場等で生じた化粧シートの切れ端等から再生樹脂を抽出し、再生樹脂を含む透明熱可塑性樹脂層60を用いて新たに化粧シート10を作成することで、化粧シート10の材料削減を図り、材料の有効活用を行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を含む着色熱可塑性樹脂基材シート上に、印刷絵柄層と接着剤層と透明熱可塑性樹脂層と表面保護層とがこの順に積層され、
前記透明熱可塑性樹脂層は、透明のポリプロピレン樹脂及び再生樹脂を含むと共にナノサイズの添加剤としての分散剤が添加されていることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記再生樹脂は、当該化粧シートと同一構成である他の化粧シート用の前記透明熱可塑性樹脂層を構成していた前記透明のポリプロピレン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂を含む着色熱可塑性樹脂基材シート上に、印刷絵柄層を形成する第1の工程と、
前記印刷絵柄層の上に、接着剤層を介して透明熱可塑性樹脂層を形成する工程であって、新たな透明のポリプロピレン樹脂に再生樹脂を混合すると共に、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加し、押出し成形により前記透明熱可塑性樹脂層を形成する第2の工程と、
前記透明熱可塑性樹脂層の上に表面保護層を形成する第3の工程と、を備えることを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項4】
当該化粧シートと同一構成の他の化粧シート用の、前記透明熱可塑性樹脂層を構成する前記透明のポリプロピレン樹脂を再生樹脂として抽出する抽出工程をさらに備え、
前記第2の工程では、前記抽出工程で抽出した前記再生樹脂と前記新たな透明のポリプロピレン樹脂とを用いて前記透明熱可塑性樹脂層を形成することを特徴とする請求項3に記載の化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧シートは、燃焼時のガスの問題から近年ではオレフィン系材料のものが主に使用されている(特許文献1~3参照)。
表面の摩耗から絵柄を守るために、化粧シートを複層にし、着色オレフィンシート上に印刷したものの上に透明のオレフィンシートを貼り合わせたものが広く使われている(特許文献2の段落[0034]及び図1参照、特許文献3の段落[0059]及び図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-110929号公報
【特許文献2】特開2015-199313号公報
【特許文献3】特開2016-101663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の化粧シートでは、着色オレフィンシートを設けることで下地木質基材の色のバラツキや木目が見えることを防止することができる。また、透明オレフィンシートを設けることにより表面保護層では防ぐことのできない傷や摩耗から絵柄を守ることができる。
建材として利用される化粧シートは、日常生活における強い紫外線やサーマルショック、水分等の厳しい環境下にさらされるため、化粧シートの耐久性を上げるためにラミネートにも高耐久性のある材料や技術が活かされており、経年劣化しにくい耐久性のある化粧シートとなっている。
【0005】
その一方で、最近では地球を取り巻く様々な環境問題から各企業がSDGsへの取り組みやサステナブルへの取り組みを強化している。建材用化粧シートも例外ではなくこれらのことを考える必要があり、材料削減によるCO排出量削減やリサイクルによる材料消費自体の削減などにも取り組んでいかなければならない。
複層構成のオレフィン系建材用化粧シートは既に市場に広く出回っており、現在でも大量に作られているため、原材料削減やリサイクルへの取り組みは重要な課題である。
複層構成のシートは各層が厚ければそれだけ積層されたシートが厚く、費用もかかることになるため、各社では、各層の薄膜化は、現時点でも可能な限りの対応をしているのが現実である。
【0006】
このため、サステナブルへの取り組みとしては、シートを構成している材料の中で再生利用が可能な材料の再生、すなわち熱可塑性樹脂部分の再生が有効な手段となる。
本発明は、化粧シートの再生利用に着目してなされたものであり、化粧シートを構成する材料を有効活用することの可能な化粧シート及び化粧シートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る化粧シートは、ポリオレフィン系樹脂を含む着色熱可塑性樹脂基材シート上に、印刷絵柄層と接着剤層と透明熱可塑性樹脂層と表面保護層とがこの順に積層され、透明熱可塑性樹脂層は、透明のポリプロピレン樹脂及び再生樹脂を含むと共にナノサイズの添加剤としての分散剤が添加されていることを特徴としている。
また、本発明の他の態様に係る化粧シートの製造方法は、ポリオレフィン系樹脂を含む着色熱可塑性樹脂基材シート上に、印刷絵柄層を形成する第1の工程と、印刷絵柄層の上に、接着剤層を介して透明熱可塑性樹脂層を形成する工程であって、新たな透明のポリプロピレン樹脂に再生樹脂を混合すると共に、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加し、押出し成形により透明熱可塑性樹脂層を形成する第2の工程と、透明熱可塑性樹脂層の上に表面保護層を形成する第3の工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、化粧シートを構成する材料を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
図2】実施形態1に係る化粧シートの変形例を模式的に示す断面図である。
図3】実施形態2に係る化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
図4】実施形態3に係る化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
次に、本発明の一実施形態(以下、「実施形態1」という。)について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
図1は、実施形態1に係る化粧シートを模式的に示す断面図である。
図1中、10は、化粧シートであり、図示しないが、例えば室内に使用され、建具(室内ドア、玄関収納)・造作材(見切り、廻り縁、巾木、窓枠、ドア枠)などの表面に貼られ、家や部屋毎に建具・造作材の柄を合わせたりして使用される。
化粧シート10は、次の各層を含み、各層が(1)から順に設けられる。
なお、次の(1)~(6)については後述する。
(1)プライマー層20
(2)着色熱可塑性樹脂基材シート30
(3)印刷絵柄層40
(4)接着剤層50
(5)透明熱可塑性樹脂層60
(6)表面保護層70
このような構成を有する化粧シート10において、透明熱可塑性樹脂層60は、再生樹脂を含んで構成される。ここでいう再生樹脂とは、一旦化粧シートに加工された化粧シート或いは、他の層と積層された樹脂層等、一旦加工が施された後に、透明熱可塑性樹脂層60を構成する透明のポリプロピレン樹脂のみを抽出したものをいう。
【0012】
なお、化粧シート10の各層は、上記した(1)~(6)に限定されず、例えば、図1に示すように、プライマー層20の側に、(7)粘着剤層80と、(8)剥離紙90とを追加し、化粧タックシート11としても良い。また、図2に示すように、化粧シート10は、表面保護層70の表面側に、印刷絵柄層40の絵柄と同調させたエンボス部100を形成しても良いし、図示しないが、プライマー層20の着色熱可塑性樹脂基材シート30とは逆側の面に基板を接着し、化粧板としても良い。
また、上記「(1)プライマー層20」を省略しても良い。すなわち、上記「(2)着色熱可塑性樹脂基材シート30」にプライマー層としての機能がある場合、もしくは着色熱可塑性樹脂基材シート30と基板とを貼合わせる接着剤の密着がよければ、プライマー層20を省略することができる。
(化粧シート10の主な特徴)
実施形態1に係る化粧シート10の主な特徴は、次の通りである。
(1)化粧シート10は、ポリオレフィン系樹脂を含む着色熱可塑性樹脂基材シート上に、印刷絵柄層と接着剤層と透明熱可塑性樹脂層と表面保護層とがこの順に積層され、且つ透明熱可塑性樹脂層は、透明のポリプロピレン樹脂及び再生樹脂を含むと共に、ナノサイズの添加剤としての分散剤が添加されている。そのため、耐傷性及び耐摩耗性を有する化粧シートを実現できると共に、再生樹脂を用いる分だけ、材料削減を図ることができ、コスト削減を図ることができる。
(2)また、化粧シート10と同一構成である他の化粧シート用の透明熱可塑性樹脂層を構成していた透明のポリプロピレン樹脂を再生樹脂として用いている。そのため、例えば、製造工程中に切り落とされたもの、或いは、製品として使用できない部分、或いは返品されたもの等、様々な理由で利用されなかった化粧シート、或いは化粧シートとなる予定であった透明熱可塑性樹脂層から、例えば、研磨、又は、溶剤や植物性アルコール剤等の洗浄液による洗浄により透明のポリプロピレン樹脂のみを抽出し、これを再生樹脂として用いて化粧シートを新たに形成する。そのため、透明熱可塑性樹脂層のポリプロピレン樹脂を有効に活用することができる。
(各層の構成)
(着色熱可塑性樹脂基材シート30)
着色熱可塑性樹脂基材シート30は、下地木質基材の色のバラツキや木目が見えることを防止することができ、さらに緩衝層として機能し、耐摩耗性を向上させるための層である。
【0013】
本実施形態の着色熱可塑性樹脂基材シート30としては、塩化ビニル樹脂以外の種々材質が可能であるが、例えば、無公害性、価格、性能、着色の容易さ等の点から考慮すると、充填剤と着色顔料とを添加したポリオレフィン系樹脂からなるフィルム等が好適に使用できる。
ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、特にポリプロピレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が好ましい。
【0014】
ポリプロピレンを主成分とする単独又は共重合体も好ましく、例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2から20のα-オレフィンが挙げられる。その他、エチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1又はオクテン-1のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等も好ましい。
着色熱可塑性樹脂基材シート30に用いるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントに高結晶性で且つ高融点の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントにガラス転移温度が-70℃以下の非晶性ポリエーテルを使用したブロックポリマーである。特に、アイソタクチックポリプロピレンからなるハードセグメントとアタクチックポリプロピレンからなるソフトセグメントとを重量比80:20で混合したものが好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂は、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりフィルム状にすればよい。
着色熱可塑性樹脂基材シート30の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて設定できるが、通常50μm以上200μm以下の範囲内であれば好ましい。着色熱可塑性樹脂基材シート30の厚さが上記数値範囲内であれば、建具・造作材用途のシートとして必要な色バラツキ防止や加工性を十分に備えることができる。また、床材性能として必要な耐衝撃性、耐キャスター性及び加工性をそれぞれ十分に備えた化粧シートとなる。
着色熱可塑性樹脂基材シート30には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、後述する着色剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0016】
着色剤としては特に限定されず、顔料、染料等の公知の着色剤を使用できる。例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む);アルミニウム、真鍮等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料などが挙げられる。着色熱可塑性樹脂基材シート30の着色態様には、透明着色と不透明着色(隠蔽着色)があり、これらは任意に選択できる。例えば、被着材(化粧シートを接着する基材)の地色を着色隠蔽する場合には、不透明着色を選択すればよい。一方、被着材の地模様を目視できるようにする場合には、透明着色を選択すればよい。
【0017】
着色熱可塑性樹脂基材シート30の片面又は両面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。例えば、コロナ放電処理を行う場合には、基材シート表面の表面張力が30dyne以上、好ましくは40dyne以上となるようにすればよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
着色熱可塑性樹脂基材シート30の片面又は両面には、必要に応じて、プライマー層(例えば、被着材の接着を容易とするための裏面プライマー層、絵柄模様層の形成を容易とするための表面プライマー層)を設けてもよい。プライマー層を設けることにより、隣接層(例えば、被着材)との層間密着力を高めることができる。裏面プライマー層の詳細については後述する。
【0018】
(印刷絵柄層40)
着色熱可塑性樹脂基材シート30の表面には、任意の絵柄が印刷された印刷絵柄層40が設けられる。印刷絵柄層40のなす絵柄の種類は特に限定されず、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、砂目柄、抽象柄、幾何学図形、文字又は記号、或いはそれらの組み合わせ等である。
印刷絵柄層40の形成に使用する印刷インキの種類は特に限定されず、化粧シート10の形成に使用されている公知の印刷インキを使用することができる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂系、ブチラール系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキド系、ポリアミド系等のバインダー樹脂に、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加し、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整した印刷インキであってもよい。
印刷絵柄層40の印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷法が用いられる。
【0019】
印刷絵柄層40の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、施工時の層厚は1μm以上15μm以下であれば好ましい。また、乾燥後の層厚は、0.1μアm以上10μm以下であれば好ましい。
【0020】
(接着剤層50)
印刷絵柄層40の上には接着剤層50が形成されている。接着剤層50は、印刷絵柄層40の上に、接着剤層50を形成するための組成物を塗布して形成してもよい。接着剤層50に含まれる接着剤は、透明性のものであれば特に限定されず、透明熱可塑性樹脂層60に含まれる透明熱可塑性樹脂との組み合わせに応じて、例えば、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の中から任意に選択可能である。
【0021】
(透明熱可塑性樹脂層60)
透明熱可塑性樹脂層60は、例えば、単層からなるシート状の層である。透明熱可塑性樹脂層60は、印刷絵柄層40の絵柄が透けて見えるように、例えば透明な熱可塑性樹脂で形成される。透明熱可塑性樹脂層60に含まれる熱可塑性樹脂は、透明であればよく、例えば、塩化ビニル樹脂以外の種々の樹脂であってもよい。さらに、透明熱可塑性樹脂層60には、再生樹脂が含まれる。
【0022】
透明熱可塑性樹脂層60に用いる透明の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)、エチレン-酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
透明熱可塑性樹脂層60は、さらに、ポリプロピレン樹脂に単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルが添加されている。
以下、この点について詳しく説明する。
【0023】
<ポリプロピレン樹脂>
透明熱可塑性樹脂層60に用いるポリプロピレン樹脂は、柔軟性の高い、エチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や、公知の非晶性ポリプロピレン樹脂をランダムポリプロピレン樹脂や結晶性の高いホモポリプロピレン樹脂に混合したものであってもよい。曲げ加工などの加工性をより重視する用途においては、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に対し、例えば、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合することができる。
【0024】
また、本実施形態においては、透明熱可塑性樹脂層60に用いるポリプロピレン樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上のプロピレン単重合体である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を、全ポリプロピレン樹脂の質量に対して30質量%以上100質量%以下の範囲内で含むものを用いてもよい。高結晶性ホモポリプロピレン樹脂が30質量%未満の場合、結晶性が不足するため、十分な強度が得られないことがある。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量13の炭素C(核種)を用いた13C-NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、樹脂材料を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂材料中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。そして、結晶性ポリプロピレン樹脂のペンタッド分率とは、13C-NMRにより求めたプロピレン単位が5 個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。ペンタッド分率は、主に表面の耐擦傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはペンタッド分率が高いほど結晶化度が高いことを表す。
【0025】
また、本実施形態のポリプロピレン樹脂として、例えば、自由末端長鎖分岐を付与したポリプロピレン樹脂(a)と、自由末端長鎖分岐を付与していないポリプロピレン樹脂(b)との混合物で、その混合物の質量平均分子量/数平均分子量として定義される分子量分布Mw/Mnが1以上5以下の範囲内にあり、かつ、そのポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)の混合樹脂の、沸騰ヘプタン可溶残分率として規定されるアイソタクチック指数が、1%以上90%以下の範囲内にあるものを用いてもよい。これにより、化粧シート10を、例えば木質基材層等に貼り合わせた後の折り曲げ加工において、白化や割れを抑制することができる。
【0026】
ここで、分子量分布は、分子量Miの分子がNi個存在する場合に、数平均分子量Mn=Σ(Mi×Ni)/ΣNi、質量平均分子量Mw=Σ(Ni×Mi2)/Σ(Ni×Mi)の比、Mw/Mnとして定義される値である。1に近いほど分子量の分布が狭く、均一性が高くなる。この分子量分布が5以下になるようにすれば、分子量を必要十分な大きさに揃えることができ、白化や割れの抑制に寄与するようになる。一般的には、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。
また、沸騰ヘプタン可溶残分率として規定されるアイソタクチック指数は、ポリプロピレン樹脂中の結晶化度を調べる指標として有用である。具体的には、試料を沸騰n-ヘプタンで一定時間抽出を行い、抽出されない部分の質量(%)を求めてアイソタクチックインデックスを算出する。詳しくは、円筒濾紙を110±5℃で2時間乾燥し、恒温恒湿の室内で2時間以上放置してから、円筒濾紙中に試料(粉体またはフレーク状)8g以上10g以下を入れ、秤量カップ、ピンセットを用いて精秤する。これをヘプタン約80ccの入った抽出器の上部にセットし、抽出器と冷却器を組み立てる。これをオイルバスまたは電機ヒーターで加熱し、12時間抽出する。加熱は、冷却器からの滴下数が1分間130滴以上であるように調節する。続いて、抽出残分の入った円筒濾紙を取り出し、真空乾燥器にいれて80℃、100mmHg以下の真空度で5時間乾燥する。乾燥後、恒温恒湿中に2時間放置した後、精秤し、(P/Po)×100によりアイソタクチック指数を算出する。ただし、Poは抽出前の試料質量(g)、Pは抽出後の試料質量(g)である。
【0027】
アイソタクチック指数を90%以下にすることで、ポリプロピレン結晶起因によるシート剛性を抑制することができる。アイソタクチック指数を下げる方法としては、例えば、非晶質ポリプロピレン成分( シンジオタクチックポリプロピレンやアダクチックポリプロピレン等)を一部に使う方法や、エチレンやα-オレフィン等のオレフィンモノマーを1種類以上ランダム共重合させる方法、各種ゴム成分( 例えばエチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレンープロピレンージエンゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)等の成分)を添加する方法を用いることができる。
【0028】
また、ポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合樹脂の溶融張力(2.0mm径のノズルキャピラリーレオメーターを用い、温度条件230℃、60mm/分で押し出し、2mm/分で引き取るときの張力)は、100mN以上500mN以下の範囲内にあることが望ましく、300mN以上400mN以下の範囲内にあることが望ましい。500mNを超えると、溶融粘度が高くなりすぎて、安定した成膜ができなくなる。また100mN以下では、長鎖分岐成分が不十分となり、所望の性能を得難い。
また、ポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合物の、JIS-K6760にて規定される230℃におけるメルトフローレートが5g/10min以上50g/10min以下の範囲内にすることで、分子量をある一定値以上で、かつ安定的な製膜状態を保持することができる。より好適なメルトフローレートの範囲は、10g/10min以上30g/10min以下の範囲内であり、更に好ましくは10g/10min以上25g/10min以下の範囲内である。メルトフローレートが50g/10minを超えると、Tダイによる溶融押し出し時に、Tダイから溶融押し出しされた樹脂が、中央に集まろうとする効果(ネックイン)が大きくなり、Tダイから溶融押し出しされた樹脂の端部厚さが増大してしまう。端部の厚さ増大は冷却効率の低下と巾方向の厚さ安定性に影響を与えるため、安定した製膜がしづらくなる。また、5g/10minよりも低いと、溶融樹脂のドローレゾナンスが悪くなり、Tダイから出た直後の溶融樹脂の速度(初速)と冷却ロールに触れた直後の樹脂の速度とのギャップに溶融樹脂が対応できなくなってしまい、安定した製膜がしづらくなる。
【0029】
<造核剤ベシクル>
透明熱可塑性樹脂層60はナノサイズの造核剤を含んでいる。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用される。透明熱可塑性樹脂層60は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート10の耐傷性、耐衝撃性、耐キャスター性等を向上することができる。なお、本実施形態において、透明熱可塑性樹脂層60を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。
【0030】
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下の範囲内であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、ポリプロピレン樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。このため、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度の着色ポリプロピレンフィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した着色ポリプロピレンフィルムを実現することができる。
【0031】
ここで、造核剤を単純添加した場合は、ポリプロピレン樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなると共に添加した造核剤量に対して結晶核の数が、造核剤ベシクルとして添加した場合よりも大幅に少なくなってしまうことがある。このため、ポリプロピレン樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が大きくなってしまい、曲げ加工時の割れや白化が抑制できないことがある。よって、結晶化度を高めることによる弾性率向上と加工性が両立できないことがある。
本実施形態の化粧シート10を構成する透明熱可塑性樹脂層60は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることがより好ましい。造核剤ベシクルの添加量が0.05質量部未満の場合、結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。また、造核剤ベシクルの添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のため球晶成長が逆に阻害され、結果的に結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。
【0032】
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
【0033】
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
【0034】
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製することができる。その中でも特に超臨界逆相蒸発法が好ましい。
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。またその外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本実施形態では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0035】
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ2-ビニルピリジン、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
【0036】
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本実施形態の化粧シート10においては、造核剤ベシクルを、リン脂質を含む外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質で構成することによって、透明熱可塑性樹脂層60の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
【0037】
本実施形態の化粧シート10は、「透明熱可塑性樹脂層60が、ベシクルに内包された造核剤を含有する」ものである。そして、造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち透明熱可塑性樹脂層60中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果を奏するが、その特徴を、完成された化粧シート10の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっていて、作製した化粧シート10の状態においても、造核剤は透明熱可塑性樹脂層60に高分散されている。しかしながら、透明熱可塑性樹脂層60を構成する樹脂組成物に造核剤をベシクルの状態で添加して透明熱可塑性樹脂層60を作製した後の、化粧シート10の作製工程においては、通常、積層体への圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施されるが、このような処理によって、造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕や化学反応して、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高く、その外膜が破砕や化学反応している状態が化粧シート10の処理工程によってばらつくためである。そして、この造核剤が外膜で包含されていないなどの状況は、物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本実施形態は、従来に比して、透明熱可塑性樹脂層60に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート10の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
【0038】
ここで、上記構成の造核剤ベシクルは、後述する表面保護層70に含有させていてもよく、透明熱可塑性樹脂層60の場合と同様に、その特徴を、完成された化粧シート10の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。
また、上記構成の造核剤ベシクルは、表面保護層70にのみ含有されていてもよい。
透明熱可塑性樹脂層60は1層で形成されていてもよく、複数層で形成されていてもよいが、押し出し機の構造が複雑化し作業の煩雑さが大きくなるため、3層までが好ましい。透明熱可塑性樹脂層60が複数層で形成されている場合には、造核剤を全ての層に混合してもよく、いずれか一つ又は複数の層に混合されていてもよい。
【0039】
複数層で形成される透明熱可塑性樹脂層60としては、透明ポリプロピレン層と接着性樹脂層とを組み合わせた2層構成、透明ポリプロピレン層を2層に分け、下層部分にのみ再生樹脂を添加するような2層構成、2層の透明ポリプロピレン層の下層のみに再生樹脂を入れ、その下に接着性樹脂層を組み合わせた3層構成、等がある。
さらに、透明熱可塑性樹脂層60は、前述のように再生樹脂を含み、再生樹脂と新しい透明のポリプロピレン樹脂とで構成される。再生樹脂が、一旦化粧シートに加工された化粧シート或いは、他の層と積層された樹脂層等、一旦加工が施された後に、透明のポリプロピレン樹脂のみが抽出されたものであるのに対し、新しい透明のポリプロピレン樹脂とは何ら加工が施されていないポリプロピレン樹脂のことをいう。
【0040】
新しい透明のポリプロピレン樹脂と再生樹脂とは、例えば1対1の重量割合で混合される。
再生樹脂は、例えば、化粧シート10の製造工場で発生する、切れ端、すなわち、着色熱可塑性樹脂基材シート30側と透明熱可塑性樹脂層60側とを接着する際に、着色熱可塑性樹脂基材シート30側及び透明熱可塑性樹脂層60側それぞれが、貼り合わせるに際して適した状態になるまでの部分、また、端部など商品とならない部分、或いは、売れ残り又は返品された化粧シート等から抽出される。
再生樹脂は、透明熱可塑性樹脂層60となる新しい透明のポリプロピレン樹脂と混合される。具体的には、新しい透明のポリプロピレン樹脂に、ペレット化した再生樹脂を添加し、押出ラミネート法によってフィルム化する。このとき、再生樹脂となるポリプロピレン樹脂を抽出する際に、抽出前に再生樹脂としてのポリプロピレン樹脂に添加されていた造核剤、また、酸化防止剤、耐候剤等が減少していると予測される場合には、押出ラミネート時にそれらの添加剤を適宜添加してもよい。
【0041】
透明熱可塑性樹脂層60には、図2に示すようにエンボス部100が形成されていてもよい。エンボス部100は、印刷絵柄層40が木目の場合には、自然木の持つ導管を凹みで表現してもよく、木目以外の場合でも砂目や幾何学模様の凹凸で意匠性を高めることが可能である。このように、エンボス部100を形成することで、化粧シート10の表面に立体感を与え、意匠性を向上させることができる。また、エンボス部100は、透明熱可塑性樹脂層60のみに留まらず、他の層に及んでもよい。エンボス部100を形成する方法としては、各層を貼り合せた後に全体を加熱してエンボスロールを押し当てる後エンボス方法や、透明熱可塑性樹脂層60をTダイから押し出してエンボスロールに押し当てる押し出し同時エンボス法等を用いることができる。このように、エンボス部100は、表面保護層70を形成する前に形成したものでもよく、あるいは表面保護層70を形成した後に形成したものでもよい。
【0042】
透明熱可塑性樹脂層60の厚さは、60μm以上150μm以下の範囲内であれば好ましく、70μm以上100μm以下の範囲内であればより好ましい。透明熱可塑性樹脂層60の厚さが上記数値範囲内であれば、エンボスによる凹凸を形成することに支障がないことのほか、耐衝撃性や耐キャスター性において十分な効果が得られる。あるいは、意匠性の面でも、透明熱可塑性樹脂層60の存在が印刷絵柄層40と相俟って、より深みや奥行きを感じさせる効果を持つ。具体的には、透明熱可塑性樹脂層60の厚さが60μm未満であると、耐衝撃性や耐キャスター性の各性能が得られないことがある。一方、透明熱可塑性樹脂層60の厚さが150μmを超えると、製造時の生産性が劣りコスト的にも不利となることがある。
【0043】
透明熱可塑性樹脂層60に用いるポリプロピレン樹脂は、吸収剤及び光安定剤のいずれか一方を含んで構成される層であってもよい。
また、透明熱可塑性樹脂層60に添加する紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等から適宜選定する。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール,2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール,2-(2′-ヒドロキシ-5′-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘
導体を用いることができる。
【0044】
また、トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を用いることができる。
【0045】
さらに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、オクタベンゾンや変性物、重合物、誘導体等を用いることができる。イソシアネート添加による架橋による樹脂成分との結合を望めるため、紫外線吸収剤としては、特に、水酸基を有するものが適している。添加部数は、所望の耐候性に応じて設定すればよいが、樹脂固形分に対して0.1%以上50%以下の範囲内、好ましくは1%以上30%以下の範囲内とする。
また、透明熱可塑性樹脂層60に添加する光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ポペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等を用いることができる。
【0046】
添加部数は、所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1質量%以上50質量%以下の範囲内、好ましくは1質量%以上30質量%以下の範囲内とする。
上記以外では、例えば、熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等を添加してもよい。熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3、5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]-プロピオネート、2、4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、2,2′-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトに代表される燐系酸化防止剤等やこれらの混合物、つまり、1種、または2種以上を組み合わせたものを用いることができる。
【0047】
また、難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機系化合物や燐酸エステル系の難燃剤等を用いることができる。さらに、ブロッキング防止剤としては、例えば、珪酸アルミニウム、酸化珪素、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム等の無機系ブロッキング防止剤、脂肪酸アミド等の有機系ブロッキング防止剤等を用いることができる。
(表面保護層70)
表面保護層70は、化粧シート10の最表面にあって、化粧シート10に対する直接の外力、たとえば物がぶつかったり、移動の際に擦ったりといった外力に対して化粧シート10を保護する役割を果たす。つまり、表面保護層70は、化粧シート10の表面物性を向上させるものであり、化粧シート10表面に耐傷性や耐汚染性、滑り性等を付与し、艶、触感等に影響を与えるものである。
【0048】
表面保護層70には、熱硬化型樹脂を用いることができる。更に耐傷性を高めたい場合には紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を含めることや電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。つまり、表面保護層70の材料としては、例えば、熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂、あるいは熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂(UV硬化型樹脂)との混合物(ブレンド樹脂)を用いることもできる。このように、表面保護層70は、熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂、つまり、硬度が高い樹脂を含むため、表面に露出した表面保護層70によって、化粧シート10の耐傷性を向上できる。また、溶剤としては、酢酸エチル、酢酸nブチルを用いることができる。
【0049】
熱硬化型樹脂としては、例えば、化粧シート10の耐傷性等を考慮すれば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を用いるのが好ましい。
2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を用いることができる。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものであって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを用いることができる。
【0050】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートを用いることができる。多価イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートを用いることができる。また、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。なお、上記イソシアネートにおいて脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートは、耐候性、耐熱黄変性も良好にできる点で好ましく、例えば1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを使用できる。
【0051】
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。
表面保護層70は、上述した電離放射線硬化型樹脂に単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを添加して形成された層であってもよい。表面保護層70は、主成分としての電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることがより好ましい。造核剤ベシクルの添加量が0.05質量部未満の場合、結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。また、造核剤ベシクルの添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のため球晶成長が逆に阻害され、結果的に結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。
【0052】
また、電離放射線硬化型樹脂に添加する、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルは、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであってもよいし、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに前記造核剤を内包させてベシクル化したものであってもよい。
(プライマー層20)
着色熱可塑性樹脂基材シート30の印刷絵柄層40側とは反対側の面には、プライマー層20が形成されていてもよい。
プライマー層20としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの混合物等を使用することができる。更に、ポリオールとイソシアネートによる2液タイプにすることで、着色熱可塑性樹脂基材シート30とプライマー層20との密着性及びプライマー層20自体の凝集力が向上する。ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。また、イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′ジフェニルメタンジイソシアネートといった芳香族系、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートといった脂肪族系が挙げられる。反応性の早さの点、耐熱性の点で芳香族系のポリオールが好ましい。
プライマー層20の厚さは、1μm以上が好ましく、10μm以下が好ましい。プライマー層20の厚さは1μm未満となると接着剤の溶剤種によっては溶解してしまい、プライマー層20が消失することから密着性が向上しないことがある。
(化粧シート10の製造方法)
化粧シート10は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第1の工程から第3の工程を有する。
【0053】
(1)第1の工程
第1の工程は、着色熱可塑性樹脂基材シート30の上に、印刷絵柄層40を形成する工程である。
(2)第2の工程
第2の工程は、透明のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂と再生樹脂とを混合した樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加し、この混合した樹脂を押出成形することで、印刷絵柄層40の上に接着剤層50を介して透明熱可塑性樹脂層60を形成する工程である。再生樹脂は、例えば化粧シート10と同一構成の他の化粧シート用の、透明熱可塑性樹脂層60を構成していた透明のポリプロピレン樹脂のみを抽出し、これを再生樹脂として用いる。
(3)第3の工程
第3の工程は、前記第2の工程で形成した透明熱可塑性樹脂層の上に、表面保護層を形成する工程である。
【0054】
なお、再生樹脂を抽出する抽出工程では、化粧シート10に印刷などにより形成された表面保護層70、接着剤層50、印刷絵柄層40等を、溶剤、植物性アルコール剤等の洗浄液による洗浄や、物理的な研磨等による除去等といった処理を行い剥がすことで、透明のポリプロピレン樹脂のみを抽出する。抽出した再生樹脂は、化粧シート10の作成に先立って予め収集しておき、抽出した再生樹脂がある程度の量溜まった時点で、新たな透明のポリプロピレン樹脂と再生樹脂とを混合した透明熱可塑性樹脂層60のポリプロピレン樹脂を用いて化粧シート10の作成を行う。
(化粧タックシート11)
化粧タックシート11は、図1に示すように、上記した構成を有する化粧シート10であって、そのプライマー層20の側に、粘着剤層80と、剥離紙90とを付けたものである。
(化粧板)
化粧板は、図示しないが、上記した構成を有する化粧シート10のプライマー層20の側に接着剤などを使用し、基板を接着したものである。また、化粧板は、図1の化粧タックシート11の剥離紙90を剥がし、粘着剤層80に基板を直接接着することでも形成することができる。
ここで、基板は、木材、鋼材、樹脂材等、種類を問わないが、例えば不燃仕様の鋼板又は建設省告示1400号で定められた不燃材料から構成しても良い。
【0055】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について、図3を用いて説明する。
図3は、本発明の実施形態2に係る化粧シート10を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、実施形態2に係る化粧シート10は、着色熱可塑性樹脂基材シート30上に、着色隠蔽層110、印刷絵柄層40、接着剤層50、透明熱可塑性樹脂層60、及び表面保護層70がこの順に積層されている。
すなわち、実施形態2に係る化粧シートは、着色隠蔽層110を備える点で、実施形態1に係る化粧シートと相違する。
以下、着色隠蔽層110について説明する。なお、実施形態2に係る化粧シートは、実施形態1に係る化粧シート10において、着色隠蔽層110を備えることが異なること以外は、同様であるので同一部には同一符号を付与しその詳細な説明は省略する。
【0056】
(着色隠蔽層)
着色隠蔽層110は、図3に示すように、着色熱可塑性樹脂基材シート30と印刷絵柄層40との間に形成される。着色隠蔽層110は、化粧シート10の表面から被着材の地色を隠蔽したい場合に設けられる。着色熱可塑性樹脂基材シート30が透明性を有する場合は勿論、着色熱可塑性樹脂基材シート30が隠蔽着色されている場合でも、隠蔽性を安定化するために着色隠蔽層110を設けてもよい。更に着色隠蔽層110を、着色熱可塑性樹脂基材シート30の色味を僅かに変える目的で設けることもできる。
【0057】
着色隠蔽層110を形成するインクとしては、印刷絵柄層40を形成するインクであって隠蔽着色が可能なものが使用できる。
着色隠蔽層110の形成方法は、着色熱可塑性樹脂基材シート30全体を被覆(全面ベタ状)するように形成できる方法が好ましい。例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等が好ましいものとして挙げられる。
着色隠蔽層110の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、乾燥後の層厚は0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
以上のような化粧シート10は、着色熱可塑性樹脂基材シート30と印刷絵柄層40との間に着色隠蔽層110を有している。そのため、化粧シート10の表面から被着材の地色を隠蔽することができる。
【0058】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について、図4を用いて説明する。
図4は、本発明の実施形態3に係る化粧シート10を模式的に示す断面図である。
図4に示すように、実施形態23に係る化粧シート10は、着色熱可塑性樹脂基材シート30上に、印刷絵柄層40、接着剤層50、透明熱可塑性樹脂層60、及び表面保護層70がこの順に積層され、透明熱可塑性樹脂層60は、第1の樹脂層61と第2の樹脂層62とで構成される。なお、ここでは、透明熱可塑性樹脂層60を、第1の樹脂層61と第2の樹脂層62との二層で形成した場合について説明するが、三層以上の層で形成されていてもよい。
【0059】
第1の樹脂層61の厚さは、例えば、10μm以上であればよく、透明熱可塑性樹脂層60全体の厚さの20%以下であればよい。また、第1の樹脂層61の厚さは、50μm以上であれば好ましく、透明熱可塑性樹脂層60全体の厚さの10%以下であればより好ましい。第1の樹脂層61の厚さが10μm未満であれば、第1の樹脂層61の密着安定性が低下する傾向がある。また、第1の樹脂層61の厚さが透明熱可塑性樹脂層60全体の厚さの20%超であれば、化粧シート10全体の表面強度が低下する傾向がある。つまり、第1の樹脂層61の厚さが10μm以上であり、且つ透明熱可塑性樹脂層60全体の厚さの20%以下であれば、第1の樹脂層61の密着安定性を維持しつつ、化粧シート10全体の表面強度を維持することができる。また、第1の樹脂層61の厚さは、10μm以上であり、且つ第1の樹脂層61及び第2の樹脂層62の2層のみで構成された透明熱可塑性樹脂層60全体の厚さの20%以下であってもよく、その場合であっても第1の樹脂層61の密着安定性を維持しつつ、化粧シート10全体の表面強度を維持することができる。
【0060】
また、第1の樹脂層61は、例えば、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂で形成され、第2の樹脂層62は、例えば、透明ポリプロピレン樹脂で形成される。第1の樹脂層61に対する透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)は、第2の樹脂層62に対する透明ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)より大きくてもよい。この場合であっても第1の樹脂層61の密着安定性を維持しつつ、化粧シート10全体の表面強度を維持することができる。具体的には、第1の樹脂層61に対する透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)は、80質量%以上であってもよく、第2の樹脂層62に対する透明ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)より大きくてもよい。
【0061】
第1の樹脂層61と第2の樹脂層62とを備えた場合には、第1の樹脂層61が着色熱可塑性樹脂基材シート30との接着性を担保し、第2の樹脂層62が主要部分となって、その他の物性を担うなど、材料の設計の巾を広げることが可能となる。第1の樹脂層61に透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を含めることで、層間の接着性を向上させることができる。また、第2の樹脂層62を、透明ポリプロピレン樹脂を含めた層とすることで、樹脂内部の耐脆化を低減することができる。
なお、第1の樹脂層61と第2の樹脂層62の2層からなる透明熱可塑性樹脂層60を形成する方法としては、2軸押し出し機を用いて第1の樹脂層61と第2の樹脂層62とを2層同時に押し出して貼り合わせる方法が好ましい。
【0062】
また、第2の樹脂層62は、第2の樹脂である透明ポリプロピレン樹脂とともに、紫外線吸収剤及び光安定剤のいずれか一方を含んで構成される層であってもよい。
ここで、透明熱可塑性樹脂層60に含まれる造核剤ベシクルについて、透明熱可塑性樹脂層60のうち、第1の樹脂層61及び第2の樹脂層62の少なくとも一方に含有されていればよい。その場合には、透明熱可塑性樹脂層60を構成する第1の樹脂層61は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることがより好ましい。また、透明熱可塑性樹脂層60を構成する第2の樹脂層62は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることがより好ましい。
【0063】
このように、実施形態3に係る化粧シート10は、透明熱可塑性樹脂層60が透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を含む第1の樹脂層61を有している。そのため、層間の接着性を向上させることができる。また、透明熱可塑性樹脂層60が透明ポリプロピレン樹脂を含む第2の樹脂層62を有している。そのため、樹脂内部の耐脆化を低減することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 化粧シート
11 化粧タックシート
20 プライマー層
30 着色熱可塑性樹脂基材シート
40 印刷絵柄層
50 接着剤層
60 透明熱可塑性樹脂層
70 表面保護層
80 粘着剤層
90 剥離紙
100 エンボス部
110 着色隠蔽層
図1
図2
図3
図4