(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054742
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】光学部品及び車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/47 20180101AFI20240410BHJP
F21S 41/26 20180101ALI20240410BHJP
F21S 41/32 20180101ALI20240410BHJP
F21S 41/39 20180101ALI20240410BHJP
F21S 41/43 20180101ALI20240410BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20240410BHJP
F21S 45/10 20180101ALI20240410BHJP
F21W 102/135 20180101ALN20240410BHJP
【FI】
F21S41/47
F21S41/26
F21S41/32
F21S41/39
F21S41/43
F21S41/663
F21S45/10
F21W102:135
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161165
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】野末 修平
(72)【発明者】
【氏名】黒田 真吾
(57)【要約】
【課題】軽量化が図られた新たな光学部品を提供する。
【解決手段】光学部品は、金属材料で構成されているとともに、光源から出射した光の一部を遮ることで配光パターンのカットラインを形成するためのシェード16eと、樹脂材料で構成されているとともに、光源から出射した光の一部を車両前方へ反射する一対の反射面を有するリフレクタ16と、を備える。シェード16eは、一対の反射面16fの間に配置され、かつリフレクタ16に一体化されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料で構成されているとともに、光源から出射した光の一部を遮ることで配光パターンのカットラインを形成するためのシェードと、
樹脂材料で構成されているとともに、光源から出射した光の一部を車両前方へ反射する一対の反射面を有するリフレクタと、を備え、
前記シェードは、前記一対の反射面の間に配置され、かつ前記リフレクタに一体化されていることを特徴とする光学部品。
【請求項2】
発光素子からなる光源と、
請求項1に記載の光学部品と、
光源から出射した光を車両前方へ投影する投影レンズと、を備え、
前記反射面と前記光源との距離は、前記シェードと前記光源との距離よりも大きいことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
前記シェードは、前記反射面よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光源は、光の出射面が車両前方を向くように配置されており、
主としてロービーム用配光パターンを形成するために水平方向に配列した複数の第1の発光素子と、
主としてハイビーム用配光パターンを形成するために水平方向に配列した複数の第2の発光素子と、を有し、
前記シェードは、前記光源を車両前方から正面に見た場合に、前記第1の発光素子と前記第2の発光素子との間の領域に配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記反射面は、前記第1の発光素子から側方に出た光を反射することを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記第1の発光素子は、前記第2の発光素子の上方に配列していることを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品に関し、例えば、車両用灯具に用いられる光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水平線よりも上側で左右方向に分割された複数の個別照射領域をそれぞれ照射可能に構成された、複数個の半導体発光素子からなる発光素子アレイを備える車両用前照灯が知られている。例えば、ハイビーム用配光パターンを構成する個別照射領域をそれぞれ有する、個別点灯可能に構成された複数の発光素子が基板上に一列に搭載されてなる発光素子アレイと、発光素子アレイの前方に配置される投影レンズと、発光素子アレイの下方に配置されるリフレクタと、を備えた車両用前照灯が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第16/013447号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の車両用前照灯が備えるリフレクタは、全体が金属製の一部品であり、部品重量が増加するとともに材料費も高い傾向にある。一方、外部から太陽光が投影レンズを通じて入射し、灯具内で集光された場合、集光部は高温となるため、集光部となり得る部分には耐熱性が求められる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、配光や耐熱性といった所望の性能を満たしつつ軽量化が図られた新たな光学部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光学部品は、金属材料で構成されているとともに、光源から出射した光の一部を遮ることで配光パターンのカットラインを形成するためのシェードと、樹脂材料で構成されているとともに、光源から出射した光の一部を車両前方へ反射する一対の反射面を有するリフレクタと、を備える。シェードは、一対の反射面の間に配置され、かつリフレクタに一体化されている。
【0007】
この態様によると、光学部品を構成するシェードの耐熱性を向上しつつ、リフレクタを樹脂材料で構成できるため、所望の配光パターンの形成に寄与するシェードを備えた光学部品の軽量化を図れる。
【0008】
本発明の他の態様は、車両用灯具である。この車両用灯具は、発光素子からなる光源と、光学部品と、光源から出射した光を車両前方へ投影する投影レンズと、を備えている。反射面と光源との距離は、シェードと光源との距離よりも大きい。
【0009】
この態様によると、光源からの光がリフレクタの反射面に与える熱の影響を、シェードに与える熱の影響よりも小さくできる。
【0010】
シェードは、反射面よりも下方に配置されていてもよい。
【0011】
光源は、光の出射面が車両前方を向くように配置されており、主としてロービーム用配光パターンを形成するために水平方向に配列した複数の第1の発光素子と、主としてハイビーム用配光パターンを形成するために水平方向に配列した複数の第2の発光素子と、を有してもよい。シェードは、光源を車両前方から正面に見た場合に、第1の発光素子と第2の発光素子との間の領域に配置されていてもよい。これにより、ロービーム用配光パターンのカットラインをシェードで形成できる。
【0012】
反射面は、第1の発光素子から側方に出た光を反射してもよい。
【0013】
第1の発光素子は、第2の発光素子の上方に配列していてもよい。
【0014】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を製造方法、灯具や照明などの装置、発光モジュール、光源などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軽量化が図られた新たな光学部品を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態に係る車両灯具の概略構成を示す側面図である。
【
図2】本実施の形態に係る車両灯具ユニットの主要部の斜視図である。
【
図3】
図2に示す車両灯具ユニットの分解斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係るリフレクタの分解斜視図である。
【
図5】
図4と異なる方向から見た本実施の形態に係るリフレクタの分解斜視図である。
【
図6】リフレクタの要部と光源との位置関係を説明するために車両灯具ユニットを側方から見た模式図である。
【
図7】リフレクタと光源を上方から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る車両灯具の概略構成を示す側面図である。
図2は、本実施の形態に係る車両灯具ユニットの主要部の斜視図である。
図3は、
図2に示す車両灯具ユニットの分解斜視図である。
図2や
図3に示す車両灯具ユニット10は、車両前部に設けられる車両用前照灯であり、ロービーム用及びハイビーム用の配光パターンのいずれも形成できるように構成されている。
【0019】
車両灯具100は、ランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うアウタレンズ4と、ランプボディ2及びアウタレンズ4とで囲まれた灯室6内に設けられた車両灯具ユニット10と、車両灯具ユニット10をエイミング可能に保持するエイミング機構8とを備える。車両灯具ユニット10は、光源から出射した光を車両前方へ投影する投影レンズ12と、レンズホルダ14と、リフレクタ16と、回路基板20と、ヒートシンク22と、ファン24とを備える。
【0020】
レンズホルダ14は、略円筒状のレンズ保持部14aと、レンズ保持部14aから車両後方に向けて突出している3つの脚部14bとを有している。投影レンズ12は、光源から出射した光の光路を制御するレンズ本体部12aと、レンズ本体部12aの外周から外側へ張り出したフランジ状の被取付部12bとが一体に形成されている透明部材である。そして、レンズホルダ14のレンズ保持部14aに投影レンズ12の被取付部12bの位置を合わせてネジ26で固定することで、投影レンズ12がレンズホルダ14に保持される。投影レンズ12は、例えば、アクリルやポリカーボネートといった透明度が高く耐熱性が高い樹脂材料を用いて射出成形によって製造される。
【0021】
本実施の形態に係るリフレクタ16は、コストの低減や軽量化のために一部が樹脂材料で構成され、その他の一部が金属材料で構成された光学部品である。リフレクタ16は、前後方向を向く横長のベース面部16aと、リフレクタ16の中央に形成されている開口部16bの左右両側から前方に突出するように設けられている側方反射部16cと、開口部16bの上側の梁状部分の内面が反射面となる上部リフレクタ16dと、開口部16bの下縁部から前方へ張り出したシェード16eとを有する。
【0022】
回路基板20は、主としてロービーム用配光パターンを形成するための複数の発光素子21aが水平方向に横一列に配列した第1の光源20aと、主としてハイビーム用配光パターンを形成するための複数の発光素子21bが水平方向に横一列に配列した第2の光源20bと、各発光素子を駆動する駆動回路20cとを有する。第2の光源20bは、第1の光源20aに隣接して配置されている。なお、第1の光源20aは上段側に位置し、第2の光源20bは下段側に位置している。換言すると、発光素子21aは、発光素子21bの上方に配列している。また、第1の光源20a及び第2の光源20bは、光の出射面が車両前方を向くように配置されている。
【0023】
駆動回路20cは、コンデンサやコイルといった受動素子、トランジスタやダイオードといった能動素子、ICチップ、メモリ等を組み合わせたものであり、回路基板20の各光源20a,20bが搭載されている領域よりも下方の領域に搭載されている。
【0024】
第1の光源20aから出射した光は、リフレクタ16の開口部16bを通過する。その際、一部の光は、側方反射部16c、上部リフレクタ16d及びシェード16eのそれぞれの反射面で反射され、配光制御が行われた状態で投影レンズ12へ向けて照射される。投影レンズ12は、第1の光源20aから直接到達した光、及び、各反射面で配光制御された光を車両前方に所望の配光パターンとして投影する。これにより、車両前方のスクリーン上において、主に水平線よりも下方の領域がロービーム用配光パターンの光で照射される。
【0025】
シェード16eは、光源を車両前方から正面に見た場合に、発光素子21aと発光素子21bとの間の領域に配置されている。その結果、シェード16eは、第1の光源20aから出射した光の一部を遮ることでロービーム用配光パターンのカットラインを形成するために機能する。
【0026】
同様に、第2の光源20bから出射した光は、リフレクタ16のシェード16eよりも下方を通過する。その際、一部の光は、シェード16eの下側の反射面で反射され、配光制御行われた状態で投影レンズ12へ向けて照射される。投影レンズ12は、第2の光源20bから直接到達した光、及び、各反射面で配光制御された光を車両前方に所望の配光パターンとして投影する。これにより、車両前方のスクリーン上において、主に水平線よりも上方の領域がハイビーム用配光パターンの光で照射される。このように、投影レンズ12は、第1の光源20a及び第2の光源20bの少なくとも一方から出射した光で灯具前方に配光パターンを投影する。
【0027】
上記した各光源の駆動時には、光源、駆動回路20cを構成する部品、配線等から熱が発生する。光源20a,20b等から発生した熱の一部はヒートシンク22に伝達され、ヒートシンク22の各部、特に、フィン22aから外部へ放出される。この際、冷却用のファン24の回転によって発生する冷却風がフィン22aに沿って流れることで、放熱性が向上する。なお、レンズホルダ14は、ヒートシンク22にネジ28で固定されている。
【0028】
次に、リフレクタ16について詳述する。
図4は、本実施の形態に係るリフレクタの分解斜視図である。
図5は、
図4と異なる方向から見た本実施の形態に係るリフレクタの分解斜視図である。本実施の形態に係るリフレクタ16は、金属材料で構成されているシェード16eの第1の部品17aと、樹脂材料で構成されている第2の部品17bとを組み立てたものである。第2の部品17bは、ベース面部16aと、一対の側方反射部16cと、上部リフレクタ16dとからなる。
【0029】
一対の側方反射部16cは、それぞれ反射面16fを有する。一対の反射面16fは互いに対向しており、主に第1の光源20aの発光素子21aから側方に出射した光の一部を車両前方へ反射する。シェード16eは、反射面16fよりも下方に配置されている。また、シェード16eは、一対の反射面16fの間に配置され、かつリフレクタ16に一体化されている。シェード16eのリフレクタへの一体化は、第2の部品17bの下部に設けられた位置決めピン16g及び熱カシメピン16hを、対応する第1の部品17aの孔16j及び孔16kに挿入し、熱カシメピン16hを溶かすことで行われる。
【0030】
これにより、リフレクタ16を構成するシェード16eの耐熱性を向上しつつ、リフレクタ16の一部を樹脂材料で構成できるため、所望の配光パターンの形成に寄与するシェード16eを備えたリフレクタ16の軽量化を図れる。
【0031】
次に、リフレクタ16と各光源との位置関係について説明する。
図6は、リフレクタ16の要部と光源との位置関係を説明するために車両灯具ユニット10を側方から見た模式図である。
図7は、リフレクタと光源を上方から見た模式図である。
【0032】
図6、
図7に示すように、車両灯具ユニット10においては、発光素子21aと反射面16fとの距離D1や、発光素子21aと上部リフレクタ16dの反射面との距離D2は、シェード16eと発光素子21aとの距離D3より大きい。これにより、第1の光源20aからの光がリフレクタ16の各反射面に与える熱の影響を、シェード16eに与える熱の影響よりも小さくできる。その結果、シェード16eの部分が耐熱性のある金属材料やセラミックス材料であれば、リフレクタ16のその他の部分を安価で軽い樹脂材料にできる。
【0033】
また、
図6に示すように、外部から太陽光Sが投影レンズ12を通じて入射した場合に、シェード16eを耐熱性の材料で構成することで、車両灯具ユニット10内の集光しやすい場所にあるシェード16eの先端が溶損することを防止できる。
【0034】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0035】
10 車両灯具ユニット、 12 投影レンズ、 16 リフレクタ、 16a ベース面部、 16c 側方反射部、 16d 上部リフレクタ、 16e シェード、 16f 反射面、 17a 第1の部品、 17b 第2の部品、 20 回路基板、 20a 第1の光源、 20b 第2の光源、 21a 発光素子、 21b 発光素子、 100 車両灯具。