IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005475
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】表面実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H05K13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105665
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 紳也
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353EE53
5E353EE71
5E353JJ01
5E353JJ29
5E353JJ43
5E353JJ44
5E353KK01
5E353KK11
5E353QQ12
(57)【要約】
【課題】複数の実装ヘッドによる、同時吸着の安定化を図る。
【解決手段】
表面実装機1は、ヘッドユニット60と、制御部100と、を備える。前記ヘッドユニット60は、複数の実装ヘッドH1~H5を一列状に配置したインライン型である。前記制御部100は、複数の前記実装ヘッドH1~H5で複数の電子部品を同時吸着する場合、複数の前記実装ヘッドH1~H5のうち、一部の実装ヘッドH1~H5を軸回りに回転させて、各実装ヘッドH1~H5の吸着中心のズレ方向を一致させる又は各実装ヘッドH1~H5の吸着中心のズレ量の広がりを小さくする。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装機であって、
ヘッドユニットと、
制御部と、を備え、
前記ヘッドユニットは、複数の実装ヘッドを一列状に配置したインライン型であり、
前記制御部は、複数の前記実装ヘッドで複数の電子部品を同時吸着する場合、
複数の前記実装ヘッドのうち、一部の実装ヘッドを軸回りに回転させて、各実装ヘッドの吸着中心のズレ方向を一致させる又は各実装ヘッドの吸着中心のズレ量の広がりを小さくする、表面実装機。
【請求項2】
請求項1に記載の表面実装機であって、
複数の実装ヘッドは、第1グループ又は第2グループのいずれかに属し、
前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドは、グループ毎に設置された回転駆動機構により、別々に回転し、
前記制御部は、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドで2つの電子部品を同時吸着する場合、
2つのグループのうち、いずれかの一方のグループの前記実装ヘッドを回転することにより、2つのグループの前記実装ヘッドの吸着中心のズレの方向を一致させる、表面実装機。
【請求項3】
請求項1に記載の表面実装機であって、
複数の実装ヘッドは、第1グループ又は第2グループのいずれかに属し、
前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドは、グループ毎に設置された回転駆動機構により、別々に回転し、
前記制御部は、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドで複数の電子部品を同時吸着する場合、
前記制御部は、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドについて、吸着中心のズレ量の情報を取得し、
2つのグループのうち、いずれかの一方のグループについて、前記実装ヘッドの吸着中心のズレ量の符号を反転し、
符号反転の結果、2つのグループの前記実装ヘッドの吸着中心のズレ量の広がりが小さくなった場合、符号反転したグループの前記実装ヘッドを180度回転し反転させる、表面実装機。
【請求項4】
請求項1に記載の表面実装機であって、
複数の実装ヘッドは、第1グループ又は第2グループのいずれかに属し、
前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドは、グループ毎に設置された回転駆動機構により、別々に回転し、
前記制御部は、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドで複数の電子部品を同時吸着する場合、
2つのグループのうち、いずれかの一方のグループについて、前記実装ヘッドの吸着中心のズレ量の符号を反転し、
符号反転の結果、2つのグループの前記実装ヘッドについて同時吸着可能な前記実装ヘッドの本数が増加した場合、符号反転したグループの前記実装ヘッドを180度回転し反転させる、表面実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の実装ヘッドによって電子部品を同時吸着する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装機はヘッドユニットを有している。ヘッドユニットの一つに、複数の実装ヘッドを昇降可能に支持したものがある。特許文献1は、複数の実装ヘッドを用いて複数の電子部品を同時に吸着すること、を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-71711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実装ヘッドの吸着中心は、設計上の基準点に一致していることが望ましい。しかし、吸着中心のズレは少なからず生じるものであり、例えば、ノズルやシャフトに偏心等がある場合、吸着中心のズレ量が大きくなりやすい。複数の実装ヘッドに偏心している実装ヘッドが含まれていた場合、複数の実装ヘッドにおける吸着中心のズレ量の広がり(ズレ量の最大値と最小値の差)が大きくなり、同時吸着が不安定になる可能性がある。
【0005】
この発明の課題は、吸着中心のズレ量の広がりを抑え、複数の実装ヘッドによる、同時吸着の安定化を図る点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
表面実装機は、ヘッドユニットと、制御部と、を備え、前記ヘッドユニットは、複数の実装ヘッドを一列状に配置したインライン型である。前記制御部は、複数の前記実装ヘッドで複数の電子部品を同時吸着する場合、複数の前記実装ヘッドのうち、一部の実装ヘッドを軸回りに回転させて、各実装ヘッドの吸着中心のズレ方向を一致させる又は各実装ヘッドの吸着中心のズレ量の広がりを小さくする。
【0007】
本構成では、複数の実装ヘッドで複数の電子部品を同時吸着する際に、吸着中心のズレ量の広がり(最大値と最小値)を抑えることが出来る。そのため、同時吸着の安定化を図ることができる。
【0008】
本明細書で開示される表面実装機の一実施態様として、以下の構成でもよい。
【0009】
表面実装機の一実施形態として、複数の前記実装ヘッドは、第1グループ又は第2グループのいずれかに属し、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドは、グループ毎に設置された回転駆動機構により、別々に回転してもよい。
【0010】
前記制御部は、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドで2つの電子部品を同時吸着する場合、2つのグループのうち、いずれかの一方のグループの前記実装ヘッドを回転することにより、2つのグループの前記実装ヘッドの吸着中心のズレの方向を一致させてもよい。この構成は、複数の実装ヘッドが独立して回転せず、グループ単位で回転するタイプの装置について、2グループの実装ヘッドで2つの電子部品を同時吸着する際に、吸着中心のズレ量の広がり(最大値と最小値)を抑えることが出来る。
【0011】
表面実装機の一実施形態として、複数の実装ヘッドは、第1グループ又は第2グループのいずれかに属し、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドは、グループ毎に設置された回転駆動機構により、別々に回転してもよい。
【0012】
前記制御部は、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドで複数の電子部品を同時吸着する場合、前記制御部は、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドについて、吸着中心のズレ量の情報を取得し、2つのグループのうち、いずれかの一方のグループについて、前記実装ヘッドの吸着中心のズレ量の符号を反転し、符号反転の結果、2つのグループの前記実装ヘッドの吸着中心のズレ量の広がりが小さくなった場合、符号反転したグループの前記実装ヘッドを180度回転し反転させてもよい。
【0013】
この構成は、複数の実装ヘッドが独立して回転せず、グループ単位で回転するタイプの装置について、2グループの複数の実装ヘッドを使用して複数の電子部品を同時吸着する際に、吸着中心のズレ量の広がり(最大値と最小値)を抑えることが出来る。
【0014】
表面実装機の一実施形態として、複数の実装ヘッドは、第1グループ又は第2グループのいずれかに属し、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドは、グループ毎に設置された回転駆動機構により、別々に回転してもよい。
前記制御装置は、前記第1グループの前記実装ヘッドと前記第2グループの前記実装ヘッドで複数の電子部品を同時吸着する場合、2つのグループのうち、いずれかの一方のグループについて、前記実装ヘッドの吸着中心のズレ量の符号を反転し、符号反転の結果、2つのグループの前記実装ヘッドについて同時吸着可能な前記実装ヘッドの本数が増加した場合、符号反転したグループの前記実装ヘッドを180度回転し反転させてもよい。
【0015】
この構成は、複数の実装ヘッドが独立して回転せず、グループ単位で回転するタイプの装置について、2グループの複数の実装ヘッドを使用して複数の電子部品を同時吸着する際に、吸着中心のズレ量の広がり(最大値と最小値)を抑えることが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本明細書で開示される技術によれば、複数の実装ヘッドによる同時吸着の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】表面実装機の平面図である。
図2】ヘッドユニットの支持構造を示す図である。
図3】実装ヘッドの支持構造を示す図である。
図4】表面実装機の電気的構成を示す図である。
図5】実装ヘッドの配列を示す図
図6】実装ヘッドの配列を示す図
図7】実装ヘッドの吸着中心のズレを示す図
図8A】実装ヘッドの偏心と吸着中心の関係を示す図である。
図8B】実装ヘッドの偏心と吸着中心の関係を示す図である。
図9】電子部品の認識動作の説明図
図10】部品認識位置のズレ量を示す図である。
図11】同時吸着安定化処理のフローチャートである。
図12】実装ヘッドの認識動作の説明図
図13】回転前後の吸着中心の位置関係を示す図である。
図14】ヘッドユニットの模式図
図15】吸着中心のズレ量を示す図である。
図16】同時吸着安定化処理のフローチャートである。
図17】吸着中心のズレ量を示す図である。
図18】同時吸着安定化処理のフローチャートである。
図19】吸着中心のズレ量を示す図である。
図20】同時吸着安定化処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
1.表面実装機の全体構成
表面実装機1は、図1に示すように、基台11と、プリント基板Pを搬送する搬送コンベア20と、ヘッドユニット60と、ヘッドユニット60を基台11上にて平面方向(X軸-Y軸方向)に移動させる駆動装置30とを備えている。尚、以下の説明において、基台11の長手方向(図1の左右方向)をX軸方向と呼ぶものとし、基台11の奥行方向(図1の上下方向)をY軸方向とする。
【0019】
搬送コンベア20は、基台11の中央に配置されている。搬送コンベア20はX軸方向に循環駆動する一対の搬送ベルト21を備えており、搬送ベルト21上の二点鎖線で示したプリント基板Pを、ベルトとの摩擦によりX軸方向に搬送する。
【0020】
表面実装機1は、図1に示す左側が入り口であり、プリント基板Pは、図1に示す左側より、搬送コンベア20を通じて機内へと搬入される。搬入されたプリント基板Pは、搬送コンベア20により基台中央の作業位置まで運ばれ、そこで停止する。
【0021】
一方、基台11上には、作業位置の周囲を囲むようにして、部品供給部13が4箇所設けられている。これら各部品供給部13には、電子部品Eを供給するフィーダ80が横並び状に多数設置されている。
【0022】
そして作業位置では、上記フィーダ80を通じて供給された電子部品Eを、プリント基板P上に搭載する搭載処理が、ヘッドユニット60に搭載された複数本の実装ヘッドHにより行われるとともに、その後、搭載処理を終えたプリント基板Pはコンベア20を通じて図1における右方向に運ばれ、機外に搬出される。
【0023】
駆動装置30は、大まかには一対の支持脚41、ヘッド支持体51、Y軸ボールネジ45、Y軸モータ47、X軸ボールネジ55、X軸モータ57から構成される。具体的に説明してゆくと、図1に示すように基台11上には一対の支持脚41が設置されている。両支持脚41は作業位置の両側に位置しており、共にY方向にまっすぐに延びている。
【0024】
両支持脚41にはY方向に延びるガイドレール42が支持脚上面に設置されると共に、これら左右のガイドレール42に長手方向の両端部を嵌合させつつヘット支持体51が取り付けられている。
【0025】
また、右側の支持脚41にはY方向に延びるY軸ボールねじ45が装着され、更にY軸ボールねじ45にはボールナット(不図示)が螺合されている。そして、Y軸ボールねじ45にはY軸モータ47が付設されている。
【0026】
Y軸モータ47を通電すると、Y軸ボールねじ45に沿ってボールナットが進退する結果、ボールナットに固定されたヘッド支持体51、ひいては次述するヘッドユニット60がガイドレール42に沿ってY方向に移動する(Y軸サーボ機構)。
【0027】
ヘッド支持体51は、X方向に長い形状である。ヘッド支持体51には、図2に示すように、X方向に延びるガイド部材53が設置され、更に、ガイド部材53に対してヘッドユニット60が、ガイド部材53の軸に沿って移動自在に取り付けられている。このヘッド支持体51には、X方向に延びるX軸ボールねじ55が装着されており、更にX軸ボールねじ55にはボールナットが螺合されている。
【0028】
そして、X軸ボールねじ55にはX軸モータ57が付設されており、同モータ57を通電すると、X軸ボールねじ55に沿ってボールナットが進退する結果、ボールナットに固定されたヘッドユニット60がガイド部材53に沿ってX方向に移動する(X軸サーボ機構)。
【0029】
従って、X軸モータ57、Y軸モータ47を複合的に制御することで、基台11上においてヘッドユニット60を平面方向(X軸-Y軸方向)に移動操作出来る構成となっている。
【0030】
ヘッドユニット60は、電子部品Eを基板に搭載する作業を行う実装ヘッドHを一列状に複数本搭載したインライン型である。この例では、5本の実装ヘッドH1~H5をX軸方向に、一列状に搭載している。
【0031】
各実装ヘッドHは、上下方向に長い軸状の実装シャフト64と、吸着ノズル65を有している。吸着ノズル65は、実装シャフト64の先端に取り付けられている。各実装シャフト64には、図外の負圧手段から負圧が供給されるように構成されており、ヘッド先端(吸着ノズル65の先端)に吸引力を生じさせるようになっている。
【0032】
各実装ヘッドHは、図3に示すように、Z軸モータ67を駆動源とする直動作機構(例えば、ネジ機構)68によりヘッドユニット60に対して独立して昇降可能な構成となっている。
【0033】
また、各実装ヘッドH1~H5には、R軸モータ69がそれぞれ設けられている。各実装ヘッドH1~H5は、R軸モータ69の駆動により、各ヘッドH1~H5が独立して、R軸周りに回転可能できるようになっている。R軸は、実装ヘッドH1~H5の中心軸(上下方向の軸)Lzである。図3において、R軸回りの回転を符号Fで示す。
【0034】
このような構成とすることで、X軸モータ57、Y軸モータ47、Z軸モータ67を所定のタイミングで作動させることにより、フィーダ80を通じて供給される電子部品Eを実装ヘッドH1~H5により取り出して、プリント基板P上の所定の搭載位置に搭載する処理を実行することが出来る。
【0035】
尚、図1に示す符号「17」は部品認識カメラ、図2に示す符号65は基板認識カメラである。部品認識カメラ17は基台11上において撮像面を上に向けて固定されている。
【0036】
部品認識カメラ17は、実装ヘッドH1~H5により取り出された電子部品Eの画像(下面画像)を撮像して、実装ヘッドH1~H5による電子部品Eの吸着姿勢を検出するものである。基板認識カメラ62はヘッドユニット60に撮像面を下に向けた状態で固定されており、ヘッドユニット60とともに一体的に移動する構成とされている。
【0037】
これにより、上述のX軸サーボ機構、Y軸サーボ機構を駆動させることで、プリント基板P上の任意の位置の画像を、基板認識カメラ62により撮像することが出来る。
【0038】
図4は、表面実装機1の電気的構成を示すブロック図である。表面実装機1は、コントローラ100を有している。コントローラ100は、演算部101とメモリ103を備える。演算部101は、後述する同時吸着安定化処理において、5つの実装ヘッドH1~H5の吸着中心OのX軸方向のズレ量の広がりの算出する処理、及びズレ量の広がりを閾値と比較する処理等を行う(S20)。
【0039】
コントローラ100には、バスBSを介して、X軸モータ57、Y軸モータ47、Z軸モータ67、R軸モータ69、部品認識カメラ17、基板認識カメラ62などが接続されている。
【0040】
コントローラ100は、メモリ103に記憶された実装プログラムに従って、X軸モータ57、Y軸モータ47、Z軸モータ67を制御することで、基台上において、ヘッドユニット60の位置制御を行う。また、各R軸モータ69を制御することで、各実装ヘッドH1~H5を、R軸回りに回転させることが可能である。コントローラ100は、本願発明の「制御部」に相当する。
【0041】
2.同時吸着と吸着中心のズレ
一列状に配置された実装ヘッドH1~H5は、ヘッドユニット60に対して、所定ピッチPXで、一定間隔でX軸方向に配置されている(図5図6参照)。X軸方向に一列状に配置されたフィーダ80のピッチが実装ヘッドH1~H5のピッチPXと等しい場合、隣接配置される複数のフィーダ80から、複数本の実装ヘッドH1~H5で複数個の電子部品Eを同時に取り出すことが出来る。
【0042】
しかし、一列状に配置された複数本の実装ヘッドH1~H5のうち、一部の実装ヘッドHが、シャフトの湾曲等により偏心(軸ズレ)している場合がある。つまり、図7に示すように、実装ヘッドHの吸着中心Oが、基準点Osからずれている場合がある。ここで、吸着中心Oは、吸着ノズル65の吸着孔66の中心であり、基準点Osは、偏心のない実装ヘッドHの理想的な吸着中心(吸着孔66の中心)の位置である。図5図6の例では、5本の実装ヘッドH1~H5のうち、左から2番目の実装ヘッドH2が偏心したヘッド(図中において白抜きで示す)である。
【0043】
偏心した実装ヘッドH2は、図8Aに示すように、電子部品Eの端を吸着し易くなる。また、吸着する際に、電子部品Eが偏心方向にズレ易く、図8Bに示すように、基準点Osから吸着位置がズレ易い。図8Bに示すDは、実装ヘッドH2に吸着された電子部品の吸着位置のズレ量(基準点Osに対する部品中心EOのズレ量)を示している。基準点Osは、偏心のない実装ヘッドHの理想的な吸着中心である(図7参照)。
【0044】
表面実装機1は、フィーダ80から電子部品Eを取り出した後、図9に示すように、ヘッドユニット60を一定の速度でX軸方向に移動し、各実装ヘッドH1~H5が部品認識カメラ17の真上を横切るタイミングに合わせて、各実装ヘッドH1~H5に吸着した電子部品Eを部品認識カメラ17により下方から撮影する。
【0045】
この時、実装ヘッドHに吸着された電子部品Eの部品中心EOが実装ヘッドHの基準点Osと一致している場合(偏心なしの場合)、部品中心EOは画像中心GOにほぼ一致した画像P1となる。一方、電子部品Eの部品中心EOが実装ヘッドHの基準点Osからずれている場合(偏心ありの場合)、部品中心EOが画像中心GOからずれた画像P2となる。
【0046】
以上のことから、部品認識カメラ17による電子部品Eの認識結果から、実装ヘッドHの偏心の方向や大きさ(基準点Osに対する吸着中心Oのズレ方向とその大きさ)を知ることが出来る。
【0047】
図10は、5本の実装ヘッドH1~H5を使用して5つの電子部品Eを同時吸着した場合について、部品認識カメラ17による電子部品Eの認識結果を示している。
【0048】
具体的には、各実装ヘッドH1~H5について、部品認識位置のズレ量(X軸方向)を示している。部品認識位置のズレ量は、画像中心GOに対する部品中心EOのズレ量である。ズレ量の単位は[mm]である。
【0049】
H1X:+0.02
H2X:+0.04
H3X:-0.02
H4X:+0.05
H5X:-0.01
【0050】
この場合、ズレ量の最大値は+0.05、最小値は-0.02であることから、ズレ量の広がり(最大値と最小値の差)は、0.07[mm]である。
【0051】
部品認識位置のズレ量=実装ヘッドHの吸着中心Oのズレ量とみなすことが出来るので、5本の実装ヘッドH1~H5の吸着中心Oのズレ量の広がりは、0.07[mm]である。
【0052】
複数ヘッドによる電子部品Eの同時吸着を安定化させるには、同時吸着する実装ヘッドH1~H5について、実装ヘッドHの吸着中心Oのズレ量の広がりを小さくすることが好ましい。
【0053】
そこで、本実施形態では、複数ヘッドHで電子部品Eを同時吸着する場合、以下の(A)及び(B)の2つを実行する。
【0054】
(A)吸着中心Oのズレ方向を一致させる
(B)ヘッドユニットの位置補正
【0055】
(A)について説明する。図10の認識結果より、H1、H2、H4の3本の実装ヘッドは、吸着中心OのX軸方向のズレはプラス傾向、H3、H5の2本の実装ヘッドは、マイナス傾向である。
【0056】
各実装ヘッドH1~H5は、R軸モータ69により、R軸を中心として、独立した回転が可能である。H3、H5の2本の実装ヘッドは、吸着中心OのX軸方向のズレがマイナス傾向であり、これを180度回転させると、方向が反転してプラスになり、5本の実装ヘッドH1~H5は、吸着中心OのX軸方向のズレ方向が一致する。尚、ズレ方向は「プラス方向」か「マイナス方向」かの意味である。
【0057】
H1X:+0.02
H2X:+0.04
H3X:+0.02
H4X:+0.05
H5X:+0.01
【0058】
5本の実装ヘッドH1~H5について、吸着中心Oのズレ方向を一致させることで、吸着中心OのX軸方向のズレは、プラスに偏るので、ズレ量の広がりを小さくすることが出来る。
【0059】
この場合、ズレ量の最大は+0.05、最小は+0.01であることから、吸着中心OのX軸方向のズレ量の広がりは、0.08[mm]から0.04[mm]に半減する。
【0060】
(B)のヘッドユニットの位置補正について説明する。
この実施形態では、ヘッドユニット60をフィーダ80の上方に移動して電子部品Eを同時吸着する際に、吸着中心OのX軸方向のズレ量の絶対値が小さくなるように、ヘッドユニット60の停止位置を、位置補正(オフセット)する。具体的には、実装ヘッドHの吸着中心OはX軸方向のプラスに偏っているので、X軸方向の停止位置をマイナス方向に位置調整する。この例では、補正値は-0.01mmである。位置補正後、吸着中心OのX軸方向のズレ量は、以下の通りである。
【0061】
H1X:+0.01
H2X:+0.03
H3X:+0.01
H4X:+0.04
H5X:+0.00
【0062】
位置補正により、各実装ヘッドH1~H5の吸着中心OのX軸方向のズレ量の絶対値は、それぞれ0.01減少する。補正値は、吸着中心OのX軸方向のズレ量の絶対値を小さくする、つまり、この場合、マイナスの値であれば、別の数値でもよい。例えば、補正値を-0.03mmにした場合、補正後の各実装ヘッドH1~H5のズレ量は、-0.02から+0.02となり、プラスマイナス同じ範囲に収まる。
【0063】
尚、上記の例では、吸着中心OのX軸方向のズレ量に着目して、X軸方向についてズレの方向を一致させることで、X軸方向のズレ量の広がりを抑える内容について説明した。吸着中心OのY軸方向のズレ量に着目して、Y軸方向についてズレの方向を一致させることで、Y軸方向のズレ量の広がりを抑えるようにしてもよい。
【0064】
X軸方向のズレ量と、Y軸方向のズレ量のどちらの広がりを抑えるかは、電子部品Eの形状により選択してもよい。例えば、図9に示すように、電子部品EがX軸方向を短辺、Y軸方向を長辺とする形状の場合、X軸方向のズレ量とY軸方向のズレ量が同じであれば、短辺であるX軸の方が、電子部品Eの吸着姿勢に影響が出やすい。そのため、短辺側のズレ量の広がりを抑えるとよい。
【0065】
図11は、同時吸着安定化処理のフローチャートである。同時安定化処理は、複数ヘッドで複数部品を同時吸着する場合に実行され、S10~S60の6つのステップから構成されている。
【0066】
S10において、コントローラ100は、各実装ヘッドH1~H5に吸着保持された電子部品Eの画像認識結果より、各実装ヘッドH1~H5の吸着中心Oのズレの傾向を取得する。
【0067】
電子部品Eの撮影は、基板の生産を行っていないオフライン中に行ってもよいが、この実施形態では、基板生産中において、電子部品Eの吸着姿勢認識用に撮影した認識結果を利用する。
【0068】
S20において、コントローラ100は、5つの実装ヘッドH1~H5の吸着中心OのX軸方向のズレ量の広がりを算出する。ズレ量の広がりは、すでに説明したように、ズレ量の最大値と最小値の差により、算出する。そして、コントローラ100は、吸着ヘッドH1~H5のズレ量の広がりを、許容値(閾値)と比較する。
【0069】
ズレ量の広がりが許容値未満の場合、S60に移行して、通常の同時吸着動作を実行する。ズレ量の広がりが許容値を超えている場合、S30に移行する。
【0070】
S30において、コントローラ100は、R軸モータ69を駆動して、吸着中心Oのズレがマイナス方向である2本の実装ヘッドH3、H5をR軸回りに180度回転し、5本の実装ヘッドH1~H5の吸着中心OのX軸方向のズレをプラス方向に一致させる。
【0071】
その後、S40にて、コントローラ100は、ヘッドユニット60をフィーダ上方に移動する際に、ヘッドユニット60の停止位置を補正する。この例では、実装ヘッドH1~H5の吸着中心OはX軸方向のプラスに偏っているから、X軸方向の位置をマイナス調整する。
【0072】
その後、S50に移行し、5本の実装ヘッドH1~H5を使用して、X軸方向に並ぶ5本のフィーダ80から5つの電子部品Eを同時吸着する。
【0073】
3.効果説明
各実装ヘッドH1~H5の吸着中心Oのズレ量の広がりを抑えることが出来るため、複数ヘッドによる同時吸着の安定化を図ることができる。
【0074】
<実施形態2>
実施形態1では、実装ヘッドH1~H5に吸着保持された電子部品Eの認識結果から、各実装ヘッドH1~H5の吸着中心Oのズレ方向、ズレ量を類推した。
【0075】
実施形態2では、実装ヘッドH1~H5の吸着中心Oのズレ方向、ズレ量を実測し、そのデータを使用して、吸着中心Oのズレ量の広がりを抑える。
【0076】
具体的には、図12に示すように、生産開始前に、ヘッドユニット60を一定の速度でX軸方向に移動し、各実装ヘッドH1~H5が部品認識カメラ17の真上を横切るタイミングに合わせて、各実装ヘッドH1~H5を部品認識カメラ17により下方から撮影する。
【0077】
そして、各実装ヘッドH1~H5の画像から、各実装ヘッドH1~H5の吸着中心Oのズレを取得する。偏心がなく吸着中心Oが基準点Osに一致している実装ヘッドHは、画像中心GOに吸着中心Oが重なる画像P1となり、偏心があり吸着中心Oが基準点Osに一致していない実装ヘッドHは、画像中心GOに対して吸着中心Oがズレた画像P2となる。
【0078】
従って、実装ヘッドHの認識結果から、基準点Osに対する吸着中心Oのズレ方向とズレ量を取得することが出来る。5本の実装ヘッドH1~H5の吸着中心OのX軸方向のズレは、以下の通りである。
【0079】
H1X:+0.02
H2X:+0.04
H3X:-0.02
H4X:+0.05
H5X:-0.01
【0080】
この場合、実装ヘッドH1、H2、H4は、吸着中心OのX軸方向のズレはプラス、実装ヘッドH3、H5は、マイナスである。そのため、R軸モータ69を駆動して、2本の実装ヘッドH3、H5をR軸回りに180度回転させることで、各実装ヘッドH1~H5の吸着中心OのX軸方向のズレをプラスに一致させることが出来る。
【0081】
尚、吸着中心Oのズレ方向を一致させる場合、以下の制御を行ってもよい。
X軸方向について吸着中心Oのズレ方向を一致させる場合、図13に示すように、まず、吸着中心OのY軸方向のズレがゼロになるように、各実装ヘッドH1~H5を、R軸回りに回転させる。図の例では、所定角度、時計回りに回転させる。
【0082】
そして、全ての実装ヘッドHについて、吸着中心OのY軸方向のズレがゼロになった後、一部の実装ヘッドHをR軸回りに180度回転させることで、実装ヘッドH1~H5の吸着中心OのX軸方向のズレを一致させる。
【0083】
このようにすることで、各実装ヘッドH1~H5について、吸着中心OのY軸方向のズレをゼロにしつつ、X軸方向のズレの方向(正負)を一致させることが出来る。
【0084】
<実施形態3>
実施形態1では、5本の実装ヘッドH1~H5は、独立してR軸回りに回転する構造であった。実施形態3では、5本の実装ヘッドH1~H5は、H1、H3、H5のグループと、H2、H4のグループに分かれており、同じグループの実装ヘッドは、1つのR軸モータで同期回転する。
【0085】
具体的に説明すると、図14に示すように、ヘッドユニット160は、H1~H5の5本の実装ヘッドに加え、これらヘッドをR軸方向に回転する手段として、2つのR軸モータ121A、121B及び2本の伝達ベルト125A、125Bを有している。R軸モータ121A、121B、伝達ベルト125A、125Bが、本願発明の「回転駆動機構」に相当する。
【0086】
H1、H3、H5の3本の実装ヘッドからなる第1グループは、第1伝達ベルト125Aを介して、第1R軸モータ121Aの動力が伝達される。また、H2、H4の2本の実装ヘッドからなる第2グループは、第2伝達ベルト125Bを介して、第2R軸モータ121Bの動力が伝達される。尚、こうした動力の伝達機構は公知であり、例えば、特開H08-330791等に開示がある。
【0087】
以上の構成より、第1R軸モータ121Aの駆動により、第1グループの3本の実装ヘッドH1、H3、H5が同じ方向に同期して回転し、また、第2R軸モータ121Bの駆動により、第2グループの2本の実装ヘッドH2、H4が同じ方向に同期して回転する。
【0088】
実施形態3では、電子部品Eを同時吸着する実装ヘッドHが2つのグループに跨っている場合、いずれかのグループの実装ヘッドHをR軸回りに回転させることにより、同時吸着に使用される実装ヘッドHの吸着中心Oのズレの方向を一致させる。
【0089】
例えば、図15は、実装ヘッドHの配列を示す図であり、奇数番目の実装ヘッド(白抜きで示す)H1、H3、H5は第1グループ、偶数番目の実装ヘッドH2、H4(ハッチングで示す)は、第2グループである。
【0090】
この場合において、第1グループの実装ヘッドH4と第2グループの実装ヘッドH5を使用して、2つの電子部品Eを同時吸着する場合において、2つの実装ヘッドH4、H5の吸着中心OのX軸方向のズレの方向が異なる場合、第2R軸モータ121Bを駆動して、第2グループH5の実装ヘッドをR軸回りに180度回転し、2つの実装ヘッドH4、H5の吸着中心OのX軸方向のズレの方向(プラス、マイナス)を一致させる。
【0091】
2つの実装ヘッドH4、H5の吸着中心OのX軸方向のズレの方向(プラス、マイナス)を一致させることで、同時吸着する2本の実装ヘッドH4、H5の吸着中心Oのズレ量の広がり(ズレ量の差)を抑えることが出来る。
【0092】
図16は、同時吸着安定化処理のフローチャートである。安定化処理は、S110~S170の7つのステップから構成されている。
【0093】
S110において、コントローラ100は、同時吸着に使用する実装ヘッドH1~H5の情報を、メモリ103から読み出して取得する。実装ヘッドH1~H5の情報には、実装ヘッドHのグループ、実装ヘッドHの吸着中心Oのズレ量が含まれている。
【0094】
S120において、コントローラ100は、同時吸着に使用する実装ヘッドHの本数が2本か、判定する。同時吸着に使用する実装ヘッドHが3本以上の場合、S120では、NO判定される。この場合、S170に移行して、通常の同時吸着動作を実行する。実装ヘッドHの本数が2本の場合、S130に移行する。
【0095】
S130において、コントローラ100は、同時吸着に使用する実装ヘッドHのR軸が異なるか、判断する。グループが同じ場合、R軸は同じと判断され、S130では、NO判定される。この場合、S170に移行して、通常の同時吸着動作を実行する。
【0096】
グループが異なる場合、2つの実装ヘッドHのR軸は異なると判断され、S140に移行する。
【0097】
S140において、コントローラ100は、同時吸着に使用する2本の実装ヘッドH4、H5のうち、第2グループ側の実装ヘッドH5をR軸回りに180度回転させて、2本の実装ヘッドH4、H5の吸着中心OのX軸方向のズレの方向(プラス、マイナス)を一致させる。尚、第1グループ側の実装ヘッドH4をR軸回りに180度回転させて、ズレの方向を一致させてもよい。
【0098】
その後、S150に移行し、コントローラ100は、ヘッドユニット160をフィーダ上方に移動し、2本の実装ヘッドHで電子部品Eを同時吸着する際に、ヘッドユニット160のX軸座標の補正を行う。S150の処理は、実施形態1のS40と同じ処理である。
【0099】
その後、S160に移行し、コントローラ100は、2つのグループの2本のヘッドH4、H5を使用して、X軸方向に並ぶ2本のフィーダ80から2個の電子部品Eを同時吸着する。
【0100】
<実施形態4>
実施形態4は、実施形態3と同様に、5本の実装ヘッドH1~H5は、H1、H3、H5のグループと、H2、H4のグループに分かれており、同じグループの実装ヘッドHは、1つのR軸モータ121で同期回転する。
【0101】
図17は、5本の実装ヘッドH1~H5の吸着中心OのX軸方向のズレ量を示している。ズレ量の広がり(最大値と最小値の差分)は、0.08である。
【0102】
<反転前のズレ量>
H1X:+0.02
H2X:+0.04
H3X:-0.03
H4X:+0.05
H5X:-0.01
【0103】
この状態から、H2、H4の2本の実装ヘッドのみR軸回りに180度させると、2本の実装ヘッドH2、H4のズレ量の符号が反転する。符号反転後、ズレ量の広がり(最大値と最小値の差分)は、0.07であり、反転前に比べて、0.01減少する。
【0104】
<反転後のズレ量>
H1X:+0.02
H2X:-0.04
H3X:-0.03
H4X:-0.05
H5X:-0.01
【0105】
実施形態4では、同時吸着に使用する実装ヘッドのズレ量を取得後、同じグループの実装ヘッドについてX軸方向のズレ量の符号を反転し、反転前に比べて、同時吸着に使用する全実装ヘッドのズレ量の広がりが小さくなった場合、そのグループの実装ヘッドHを、R軸回りに180度回転する。
【0106】
このようにすることで、同時吸着に使用する実装ヘッドH1~H5について、吸着中心Oのズレ量の広がりを抑えることが出来るので、同時吸着の安定化を図ることが出来る。
【0107】
図18は、同時吸着時安定化処理のフローチャートである。安定化処理は、S210~S270の7つのステップから構成されている。
【0108】
S210において、コントローラ100は、同時吸着に使用する実装ヘッドH1~H5の情報を、メモリ103から読み出して取得する。実装ヘッドH1~H5の情報には、実装ヘッドHのグループ、実装ヘッドHの吸着中心Oのズレ量が含まれている。
【0109】
コントローラ100は、各実装ヘッドHの吸着中心Oのズレ量のデータを取得すると、X軸方向のズレ量の広がり(最大値と最小値の差)を、計算する。その後、S220に移行する。
【0110】
S220において、コントローラ100は、第2グループの2本の実装ヘッドH2、H4を対象として、X軸方向のズレ量の符号を、正負反転する。そして、X軸方向のズレ量の広がり(最大値と最小値の差)を、算出する。その後、S230に移行する。
【0111】
S230において、コントローラ100は、符号の反転により、X軸方向のズレ量の広がりが減少したか、判定する。ズレ量の広がりが減少しない場合、S230では、NO判定される。この場合、S270に移行して、通常の同時吸着動作を実行する。
【0112】
符号の反転により、X軸方向のズレ量が減少した場合、S240に移行する。
【0113】
S240において、コントローラ100は、第2グループの実装ヘッドH2、H4をR軸回りに180回転させて、吸着中心OのX軸方向のズレの方向を反転させる。
【0114】
その後、S250に移行し、コントローラ100は、ヘッドユニット160をフィーダ上方に移動し、5本の実装ヘッドH1~H5で電子部品を同時吸着する際に、ヘッドユニット160のX軸座標の補正を行う。S250の処理は、実施形態1のS40と同じ処理である。
【0115】
その後、S260移行し、コントローラ100は、5本の実装ヘッドH1~H5を使用して、X軸方向に並ぶ5本のフィーダ80から5つの電子部品を同時吸着する。尚、この実施形態では、第2グループの実装ヘッドH2、H4の符号を反転させてX軸方向のズレ量の広がりを調整したが、第1グループの実装ヘッドH1、H3、H5の符号を反転させてX軸方向のズレ量の広がりを調整してもよい。
【0116】
<実施形態5>
実施形態5は、実施形態3、4と同様に、5本の実装ヘッドH1~H5は、H1、H3、H5のグループと、H2、H4のグループに分かれており、同じグループの実装ヘッドHは、1つのR軸モータ121で同期回転する。
【0117】
図19は、5本の実装ヘッドH1~H5の吸着中心Oのズレ量を示している。実装ヘッド全5本のズレ量の広がり(最大値と最小値の差分)は、0.08である。ズレ量の広がりの許容値が0.03である場合、ズレ量の広がりが許容値以下の条件を満たす、H1、H2、H4の3本しか同時吸着することが出来ない。
【0118】
<反転前のズレ量>
H1:+0.02
H2:+0.04
H3:-0.03
H4:+0.05
H5:-0.02
【0119】
しかし、この状態から、H1、H3、H5の3本の実装ヘッドのみR軸回りに180度させると、3本の実装ヘッドH1、H3、H5のズレ量の符号が反転する。
【0120】
符号反転後、4本の実装ヘッドH2~H5は、X軸方向のズレ量の方向が一致した状態となる。4本の実装ヘッドH2~H5のX軸方向のズレ量の広がり(最大値と最小値の差分)は、0.03であり、許容値と等しいことから、4本の実装ヘッドH2~H5による同時吸着が可能となる。
【0121】
<反転後のズレ量>
H1:-0.02
H2:+0.04
H3:+0.03
H4:+0.05
H5:+0.02
【0122】
実施形態5では、同時吸着に使用する実装ヘッドHのズレ量を取得後、同じグループの実装ヘッドHについてX軸方向のズレ量の符号を反転し、反転前に比べて、同時吸着可能な実装ヘッドHの本数が増加した場合、そのグループの実装ヘッドを、R軸回りに180度回転する。
【0123】
図20は、同時吸着時安定化処理のフローチャートである。安定化処理は、S310~S370の7つのステップから構成されている。
【0124】
S310において、コントローラ100は、同時吸着に使用する実装ヘッドH1~H5の情報を、メモリ103から読み出して取得する。実装ヘッドH1~H5の情報には、実装ヘッドHのグループ、実装ヘッドHの吸着中心Oのズレ量が含まれている。
【0125】
コントローラ100は、各実装ヘッドHの吸着中心Oのズレ量のデータを取得すると、X軸方向のズレ量の広がり(最大値と最小値の差)を計算する。そして、ズレ量の広がりを許容値と比較して、同時吸着可能な実装ヘッドHの本数を計算する。その後、S320に移行する。
【0126】
S320において、コントローラ100は、第1グループの3本の実装ヘッドH1、H3、H5を対象として、X軸方向のズレ量の符号を、正負反転する。そして、ズレ量の広がり(最大値と最小値の差)及び、同時吸着可能な実装ヘッドHの本数を再計算する。その後、S330に移行する。
【0127】
S330において、コントローラ100は、符号の反転により、同時吸着可能なヘッドの本数が増加したか、判定する。本数が増加しない場合、S330では、NO判定される。この場合、S370に移行して、通常の同時吸着動作を実行する。
【0128】
符号の反転により、同時吸着可能な実装ヘッドHの本数が増加した場合、S340に移行する。
【0129】
S340において、コントローラ100は、第1グループの実装ヘッドH1、H3、H5をR軸回りに180度回転させて、吸着中心OのX軸方向のズレの方向を反転させる。
【0130】
その後、S350に移行し、コントローラ100は、ヘッドユニット160をフィーダ上方に移動し、同時吸着する際に、ヘッドユニット160のX軸座標の補正を行う。S250の処理は、実施形態1のS40と同じ処理である。
【0131】
その後、S360に移行し、コントローラ100は、同時使用可能な実装ヘッドH2~H5を使用して、X軸方向に並ぶ4本のフィーダ80から4つの電子部品Eを同時吸着する。尚、この実施形態では、第1グループの実装ヘッドH1、H3、H5の符号を反転させて同時使用可能な実装ヘッドの本数を調整したが、第2グループの実装ヘッドH2、H4の符号を反転させて、同時使用可能な実装ヘッドHの本数を調整してもよい。
【0132】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記既述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0133】
上記実施形態では、ヘッドユニット60に5本の実装ヘッドH1~H5を搭載した例を示した。搭載する実装ヘッドHの本数は5本に限定されない。複数本であれば、5本以外でもよい。
【0134】
上記実施形態では、吸着ノズルの形状を円形とした。吸着ノズルの形状は、円形以外でもよい。例えば、正方形でもよい。吸引孔の形状も同様である。
【0135】
上記実施形態では、モータとベルトからなる機構を用いて、複数の実装ヘッドを同期して回転させる構成とした。これ以外に、モータとギヤからなる機構を用いて、複数の実装ヘッドを同期して回転させる構成とした。
【符号の説明】
【0136】
1 表面実装機
60 ヘッドユニット
H1~H5 実装ヘッド
100 コントローラ(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20