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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054753
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】検体移送装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20240410BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G01N35/04 G
G01N35/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161186
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB08
2G058CB16
2G058CB20
2G058CF06
2G058GC02
2G058GC05
2G058GC09
(57)【要約】
【課題】ラック内に狭い隙間で収容された検体を確実に取り出すことを可能とした検体移送装置を提供する。
【解決手段】検体移送装置は、検体Wの胴部を把持する複数の開閉爪2を備えた横取り把持部1と、横取り把持部1の開閉爪2を開閉する開閉機構と、横取り把持部1を検体Wの胴部に対して横方向から接離させる第1水平移動機構9と、横取り把持部1を検体Wの長さ方向に昇降させる昇降機構5とを備える。本発明の必須要件ではないが、横取り把持部1が、検体Wの胴部に対して横方向から接離させる第1水平移動機構9に加え、第1水平移動機構9とは異なる方向に水平移動させる第2水平移動機構を有することが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が曲面からなる円筒状の検体の胴部を把持する複数の開閉爪を備えた横取り把持部と、
前記横取り把持部の前記複数の開閉爪を開閉する開閉機構と、
前記横取り把持部を前記検体の胴部に対して横方向から接離させる第1水平移動機構と、
前記横取り把持部を前記検体の長さ方向に昇降させる昇降機構と、
を備えることを特徴とする検体移送装置。
【請求項2】
前記横取り把持部が、前記検体の胴部に対して横方向から接離させる前記第1水平移動機構に加え、前記第1水平移動機構とは異なる方向に水平移動させる第2水平移動機構を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検体移送装置。
【請求項3】
前記複数の開閉爪は、少なくとも一方が開閉方向に移動する左右一対の部材から構成され、その高さ方向の厚さが薄い板状の部材である、
ことを特徴とする請求項2に記載の検体移送装置。
【請求項4】
前記複数の開閉爪は、その対向する内側の縁にV字形の凹部がそれぞれ設けられ、左右一対の開閉爪が閉じて前記検体を把持する場合に、前記V字形の凹部の各辺において、前記検体の外周面と接触する、
ことを特徴とする請求項3に記載の検体移送装置。
【請求項5】
前記横取り把持部の移動経路上に設けられ、前記横取り把持部に把持された検体を下方より保持する保持部と、
前記保持部に支持された前記検体を、その上方から把持して持ち上げる上掴み把持部と、
前記上掴み把持部を前記保持部から上昇させる昇降機構と、
前記上掴み把持部を水平移動させる水平移動機構を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の検体移送装置。
【請求項6】
前記保持部は、前記第2水平移動機構による前記横取り把持部の移動経路上に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の検体移送装置。
【請求項7】
前記保持部は、底部と、その周囲から上方に向けて立ち上がった複数本のガイド部材とから構成され、前記ガイド部材が全体として筒状に配置され、前記ガイド部材の内面によって前記検体の胴部が保持されることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の検体移送装置。
【請求項8】
前記上掴み把持部は、下方に向かって突出した複数の指部を備え、前記複数の指部が全体として筒状に配置され、各指部を上掴み把持部の中心軸側と外周側との間で移動させる開閉機構が設けられていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の検体移送装置。
【請求項9】
前記上掴み把持部を、検体の軸を中心として回転させる回転機構を備えることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の検体移送装置。
【請求項10】
前記上掴み把持部の前記回転機構は、前記検体が前記保持部の移動経路下流側にある画像認識部の画像認識用カメラの正面に移動した際に、360度又は360度以上回転することを特徴とする請求項9に記載の検体移送装置。
【請求項11】
前記横取り把持部は、更に1基備え、画像照合ラベリング装置の各移送部間をつないで多数の検体ラックを循環搬送するコンベヤ上の検体ラックからラベルを貼り終わった検体を取り出し、画像照合ラベリング装置からの排出用の空のラックに移送する部位にも位置して、取り出したラベルを貼り終わった検体を前記空のラックに移動することを特徴とする請求項1に記載の検体移送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や温度により相変化した固相を含む液体を、試験管状の形状で底が曲面である容器に入れた検体を移送する検体移送装置に関する。更には、血液などの検査対象を入れた検体を移送する検体移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液などの検査対象を入れた容器は検体と呼ばれ、有底の筒状容器の上端が蓋で密封されている。医療機関や採取センターなどにおける検査対象の採取時には、検体の表面にバーコードを付した採取時ラベルが貼り付けられ、このラベルに、患者などの被検査者、検査対象の種類、検査目的、採取者、採取日時などの情報が記録される。また、採取時において、手書きのメモなどがラベルに記入されることもある。
【0003】
検体に対する採取時ラベルの貼り付けは、採取者の手作業によって行われることから、検体に貼り付けられた採取時ラベルの位置は検体ごとに異なることが多い。また、採取時ラベルは、各医療機関などで専用のものが使用されることもあり、すべての検体で統一されていない。更に、検査目的によっては、採取する検査対象の量も異なることから、検体の容量が異なり、様々な径や高さの検体が存在する。
【0004】
このような採取時ラベルが貼り付けられた様々な検体は、分析機器を有する検査機関に搬送され、各検体に応じた検査が実施される。この際、検査機関では、各採取者から集められた様々な検体の採取時ラベルに記載された情報を画像処理によって確認し、検査機関に予め用意された所定のフォーマットに従って分類し、整理する必要がある。そして、検査機関用に確認された情報を、新たな検査機関用のラベルに記録し、その検査機関用のラベルを採取時ラベルの上から検体に貼り付ける。また、検査機関用に確認された情報を、個々の検体を搬送する検体ホルダ(検体ラックとも呼ばれる)に設けられたICタグなどに紐づけることも行われる。
【0005】
各医療機関などから集められた検体は、図19に示すような、格子状の仕切りを有するストックラック(以下、ラックと言う)に対して上方から挿入され、検体の下部及び底部が仕切り内で支持される。この場合、各検体の上部は、ラックの上縁から露出した状態になっているが、検査目的などに応じて高さ違いの検体が使用されることから、ラックの上縁からの突出量はすべての検体について同一ではなく、突出量が異なる検体も多数存在する。
【0006】
収集された複数の検体は、ラックの仕切り内から一本ずつ取り出され、前記のような画像認識及び検査機関用の情報の紐づけが行われる。ラックからの検体の取出手段としては、特許文献に示すように、従来から各種のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5525054号公報
【特許文献2】特開2008-093767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載の従来技術は、検体を上から掴む構成である。しかし、これらの従来技術は、高さ違いでかつ上部が蓋で大径になる複数の検体が、ラックの狭い仕切り内に収容されている場合、検体を掴むための把持部の開閉量を大きくする必要があり、どうしてもラックの仕切りを広げざるを得ず、一つのラックで搬送、及び保管する検体の数が少ないという問題がある。
【0009】
また、ラックの仕切り内の検体を掴む場合、把持部の高さ方向の厚さが薄い方がラックの上縁からの突出量が少ない検体でも掴むことができることから、汎用性が高い利点がある。しかし、そのような厚さの薄い把持部を使用した場合、ラックから取り出した検体の垂直度にばらつきが生じやすい。即ち、画像認識に当たっては、採取時ラベルが検体のどの部分に張り付けられているかを確認するため、検体をその軸を中心として360°回転する必要がある。その際、検体の垂直度が確保されていると、検体の軸振れがなく、回転が円滑に行われ、画像認識の精度も向上する。しかし、把持部の高さ方向の厚さが薄い従来技術では、検体の垂直度を保持することが難しく、画像認識時における検体の軸振れに対応できなかった。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、ラック内に狭い隙間で収容された検体を確実に取り出すことを可能とした検体移送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の検体移送装置は、次のような構成を有する。
(1)底部が曲面からなる円筒状の検体の胴部を把持する複数の開閉爪を備えた横取り把持部。
(2)前記横取り把持部の前記複数の開閉爪を開閉する開閉機構。
(3)前記横取り把持部を前記検体の胴部に対して横方向から接離させる第1水平移動機構。
(4)前記横取り把持部を前記検体の長さ方向に昇降させる昇降機構。
【0012】
本発明において、次のような構成を有することができる。
(1)前記横取り把持部が、前記検体の胴部に対して横方向から接離させる前記第1水平移動機構に加え、前記第1水平移動機構とは異なる方向に水平移動させる第2水平移動機構を有する。
(2)前記複数の開閉爪は、少なくとも一方が開閉方向に移動する左右一対の部材から構成され、その高さ方向の厚さが薄い板状の部材である。
(3)前記複数の開閉爪は、その対向する内側の縁にV字形の凹部がそれぞれ設けられ、左右一対の開閉爪が閉じて前記検体を把持する場合に、前記V字形の凹部の各辺において、前記検体の外周面と接触する。
(4)前記横取り把持部の移動経路上に設けられ、前記横取り把持部に把持された前記検体を下方より保持する保持部と、
前記保持部に支持された前記検体を、その上方から把持して持ち上げる上掴み把持部と、
前記上掴み把持部を前記保持部から上昇させる昇降機構と、
前記上掴み把持部を水平移動させる水平移動機構を備える。
(5)前記保持部は、前記第2水平移動機構による前記横取り把持部の移動経路上に設けられている。
(6)前記保持部は、底部と、その周囲から上方に向けて立ち上がった複数本のガイド部材とから構成され、前記ガイド部材が全体として筒状に配置され、前記ガイド部材の内面によって前記検体の胴部が保持される。
(7)前記上掴み把持部は、下方に向かって突出した複数の指部を備え、前記複数の指部が全体として筒状に配置され、各指部を上掴み把持部の中心軸側と外周側との間で移動させる開閉機構が設けられている。
(8)前記上掴み把持部を、検体の軸を中心として回転させる回転機構を備える。
(9)前記上掴み把持部の前記回転機構は、前記検体が前記保持部の移動経路下流側にある画像認識部の画像認識用カメラの正面に移動した際に、360度又は360度以上回転する。
(10)前記横取り把持部は、更に1基備え、画像照合ラベリング装置の各移送部間をつないで多数の検体ラックを循環搬送するコンベヤ上の検体ラックから、ラベルを貼り終わった検体を取り出し、画像照合ラベリング装置からの排出用の空のラックに移送する部位にも位置して、取り出したラベルを貼り終わった検体を前記空のラックに移動する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の検体移送装置を適用した画像照合ラベリング装置を正面側から見た斜視図である。
図2図1の画像照合ラベリング装置を背面側から見た斜視図である。
図3】第1実施形態における横取り把持部全体を示す斜視図である。
図4】第1実施形態における横取り把持部の開閉爪を示す拡大斜視図である。
図5】第1実施形態における横取り把持部、保持部、上掴み把持部を示す斜視図である。
図6】第1実施形態における保持部を上方から見た拡大斜視図である。
図7】第1実施形態における上掴み把持部を示す斜視図である。
図8】第1実施形態における上掴み把持部を下から見た拡大斜視図である。
図9】第1実施形態におけるコンベヤの斜視図である。
図10】第1実施形態における水滴除去部を示す斜視図である。
図11】第1実施形態における水滴除去部側移送装置の斜視図である。
図12】第1実施形態における水滴除去部側移送装置の上掴み把持部を示す拡大斜視図である。
図13】第1実施形態における水滴除去部の縦断面図である。
図14】第1実施形態におけるラベル側移送装置を示す斜視図である。
図15】第1実施形態における水滴除去部とラベル貼付部の正面側を示す斜視図である。
図16】第1実施形態におけるラベル貼付部を水滴除去部側から見た斜視図である。
図17】第1実施形態における搬出リフトの斜視図である。
図18】第1実施形態における搬出リフトの開閉爪部分の拡大斜視図である。
図19】第1実施形態におけるラックから検体を取り出す状態を示す斜視図である。
図20】第1実施形態において個々の検体を収容するホルダ(検体ラック)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
図1及び図2は、第1実施形態の検体移送装置を備えた画像照合ラベリング装置の全体構成を示す図である。本実施形態の検体移送装置は、他の検体処理装置にも適用可能であり、画像照合ラベリング装置は適用例の1つに過ぎない。また、本実施形態の画像照合ラベリング装置において、装置の長手方向を幅と言い、短手方向を奥行と言い、検体を移動させるための機構についても、第1水平移動機構又は第2水平移動機構と言うが、本発明の検体移送装置は、検体の移動方向について幅と奥行きを限定するものではないことから、請求項においては水平移動機構と定義されている。
【0015】
画像照合ラベリング装置は、以下の各部から構成される。
・未処理の検体Wを収容したラックRの供給・排出部A、
・供給・排出部Aから検体Wを取り出して移送する取出移送部B、
・検体W上の採取時ラベルの内容を読み取る画像認識部C、
・画像認識部Cから後段のラベル貼付部Eに検体Wを挿入載置された検体ラックHを移送し、ラベルを貼り終わった検体Wを後述する排出移送部F近傍まで挿入載置された検体ラックHごと移送するコンベヤD、
・検体W表面の水滴を除去する水滴除去部を備えたラベル貼付部E、
・ラベルを貼り終わった検体Wを空のラックRに移送する排出移送部F
第1実施形態の検体移送装置は、図1のラックRの供給・排出部Aから検体Wを取り出して画像認識部Cに移送するための取出移送部Bとして使用される。
【0016】
画像照合ラベリング装置に供給される検体Wはその底部形状から自立できないので、図19に示すようなもたれかかることが可能な多数の仕切り多数の仕切りが格子状に設けられたラックRに収容される。また、画像認識処理が終了した個々の検体Wは、図20に示すようなメスシリンダー形状をした樹脂製などの個別のホルダH(検体ラックH)内に収容されて、ラベル貼付部E及び排出移送部Fへコンベヤにて検体ラックHごと搬送される。ラベル貼りが終了した検体Wは、排出移送部Fによって、別の格子状のラックRに収容され、装置外部に排出される。本実施形態では、個別のホルダである検体ラックHとして、上部が開口した円筒状の収容部と、収容部の下部に円形に突出したフランジHfを有するものを使用する。この形状は、例えばスラットコンベヤで搬送される際に底面積が大きくて倒れにくく、載置する収容部の間隔がフランジで保てるため大切な検体同士が触れることがないこともあり、搬送方向を転換する折り返し部分などではフランジの側面を利用した摩擦による搬送もできるので有利である。検体Wは、取出移送部Bや排出移送部Fにおいては横取り把持部により、また、ラベル貼付部Eにおいては上掴み把持部により、検体ラックであるホルダHの収容部内に上方から出し入れされる。
【0017】
[1-2.ラックRの供給・排出部A]
本実施形態において、ラックRの供給・排出部Aは、3種類のラックRをセットできる。図中左側から、画像認識の対象となる未処理の検体Wを収容した未処理ラックR1、画像認識が適正になされて検査機関用のラベルが貼り付けられた検体Wを回収する処理済ラックR2、画像認識にエラーが生じた検体Wを回収する不良品ラックR3が、画像照合ラベリング装置の外部から供給・排出される。
【0018】
供給・排出部Aに対するこれらのラックRの供給排出手段は、手作業、ロボット、コンベアなど適宜のものが使用できる。本実施形態では、各ラックRの供給・排出位置にターンテーブルを設け、その上に各ラックRを載置している。即ち、移送装置によってラックRの半分から検体Wを取り出した後、ラックRを反転させることで、検体Wを取り出す横取り把持部1の移動ストロークを短縮させ、装置全体の小型化を図っている。このようなラックRの反転装置は、本発明において必須のものではなく、また、前記3種類のラックRの内、横取り把持部1が処理する検体W数の多い未処理ラックR1と処理済ラックR2にのみ適用してもよい。
【0019】
[1-3.取出移送部B]
取出移送部Bには、図3に示すような本実施形態の検体移送装置が採用されている。この検体移送装置は、ラックR1に収容された検体Wの胴部の上部を横方向から把持する横取り把持部1を備える。横取り把持部1には、図4の拡大図(実際の設置とは天地が逆)に示すように、2本の開閉爪2と、これら2本の開閉爪2を開閉する開閉機構が設けられている。即ち、横取り把持部1の下面には直線状のレール3が設けられ、このレール3に2個のスライダ4が間隔を保って摺動可能に支持され、各スライダ4にそれぞれ開閉爪2の基部が固定されている。各スライダ4は、横取り把持部1の内部に設けられた駆動機構(図示せず)によって、レール3に沿って互いに反対方向に移動し、このスライダ4の移動により2本の開閉爪2の間隔が変化する。横取り把持部1内の駆動機構としては、ラック&ピニオン、ボールねじ、電磁プランジャなどを適宜使用することができ、その構成については限定されない。
【0020】
2本の開閉爪2は、必ずしも双方が移動する必要はなく、少なくとも一方が開閉方向に移動するものであれば良い。開閉爪2は、本実施形態では、その高さ方向の厚さが薄い板状の部材から構成され、その対向する内側の縁にV字形の凹部2aがそれぞれ設けられ、左右一対の爪部が閉じて検体Wを把持する場合に、V字形の凹部2aの各辺において、検体Wの胴部上部の円筒外周面と接触する。この横取り把持部1を形成する開閉爪2は、多数の検体をまとめて運搬する用途に製作されているラックRの中から、手前側から1本の検体を切り出すことに特化するために爪は幅方向にも薄く製作されている。これにより、例えば検体が上部開口を栓によって塞がれるために縁補強で上部だけ厚みがある場合はそこを避けて、検体が樹脂製で開口周囲も胴部も同径の場合でも、隣り合う検体から1本を切り分けるのに、横の検体に干渉されずに胴部を掴めるようになっている。
【0021】
図3に示すように、横取り把持部1は、検体Wの長さ方向に昇降させる昇降機構5に支持されている。昇降機構5は、鉛直方向に伸びる垂直レール6と、この垂直レール6上に摺動可能に装着されたブラケット型スライダ7を備え、ブラケット型スライダ7の下端に横取り把持部1が固定されている。垂直レール6の上端にはモータ8が固定され、レール3内部に設けられた図示しないボールねじをモータ8が回転させることにより、ボールねじに装着されたブラケット型スライダ7がレール3に沿って上下動する。
【0022】
昇降機構5は、横取り把持部1を画像照合ラベリング装置の奥行き方向に移動させる第1水平移動機構9に支持されている。第1水平移動機構9は、画像照合ラベリング装置の奥行き方向に沿って伸びる奥行レール9aを備え、奥行レール9aに装着された横スライダ11に固定された支持板11aに昇降機構5が固定されている。第1移動機構における横スライダ11は、昇降機構5と同様にモータ8で回転する図示しないボールねじによって往復動される。
【0023】
第1水平移動機構9は、第2水平移動機構12に支持されている。第2水平移動機構12は、横取り把持部1とそれを支持する第1水平移動機構9を画像照合ラベリング装置の幅方向に沿って移動させる。第2水平移動機構12は、画像照合ラベリング装置の幅方向に伸びる水平な横レール13を備え、横レール13に装着された横スライダ14にガントリークレーン型の支持部材15が横方向に移動可能に支持され、この支持部材15に第1水平移動機構9の奥行レール9aが固定されている。第2水平移動機構12の横スライダ14は、昇降機構5と同様にモータ8で回転する図示しないボールねじによって往復動される。
【0024】
図5に示すように、第2水平移動機構12のコンベヤD側端部近傍の下方には、横取り把持部1の移動経路上に設けられ、横取り把持部1に把持された検体Wをいったん受け取り下方より保持する保持部20が固定されている。保持部20は、底部21とその周囲から上方に向けて立ち上がった3本のガイド部材22とから構成され、ガイド部材22が全体として筒状に配置され、ガイド部材22の内面によって検体Wの胴部が保持される。
【0025】
図6に示すように、3本のガイド部材22は、放射状に配置された3本のレール3上に移動可能に装着されたスライダ4にそれぞれ支持されている。各スライダ4は、図示しない駆動機構により、保持部20の中心軸側と外周側との間で移動し、それによって筒状に配置された3本のガイド部材22の間隔が変化し、太さの異なる検体Wであっても、ガイド部材22に案内されて垂直に保持される。ガイド部材22の間隔は、取り扱う検体に合わせて予め所定の寸法にセットしておいてもよいし、間隔が開いた状態で検体Wをガイド部材22の内側に挿入してから、ガイド部材22の間隔を狭めることで、仮に、横取り把持部1によって移送された検体Wが傾いていても垂直に矯正することも可能である。
【0026】
図5に示すように、保持部20の上方には、保持部20に支持された検体Wを、その上方から把持して持ち上げ、画像認識部C及びコンベヤD側に移動させる上掴み把持部30が、奥行方向に接近離脱可能に設けられている。図7に示すように、上掴み把持部30は、検体Wの長さ方向に昇降させる昇降機構5に対して、回転機構31を介して支持されている。昇降機構5は、画像照合ラベリング装置の奥行方向に沿って設けられた第1水平移動機構9に支持されている。第1水平移動機構9は、保持部20からコンベヤDの上方に渡って設けられ、これにより、上掴み把持部30は保持部20内の検体Wを画像認識部Cを経由してコンベヤD上のホルダH(検体ラックH)に移送する。
なお、上掴み把持部30の昇降機構5及び第1水平移動機構9は、横取り把持部1の昇降機構5及び第1水平移動機構9と同様な構成を有するものであるから、その説明は省略する。
【0027】
上掴み把持部30は、昇降機構5に固定された回転機構31の下部に設けられて、回転機構31により検体Wを把持した際の検体Wの軸を中心として回転する。上掴み把持部30は、下方に向かって突出し、全体として筒状に配置された3本の指部32を備える。図8(実際の設置とは天地が逆)に示すように、上掴み把持部30には、3本の指部32を上掴み把持部30の指部32の移動方向の交点である中心軸側と外周側との間で移動させる開閉機構が設けられている。上掴み把持部30の下面には、放射状に3本のレール3が設けられ、各レール3にそれぞれスライダ4が支持され、各スライダ4にそれぞれ指部32の基部が固定されている。各スライダ4は、上掴み把持部30の内部に設けられた駆動機構(図示せず)によって、レール3に沿って移動し、このスライダ4の移動により3本の指部32の間隔が変化する。上掴み把持部30内の駆動機構としては、横取り把持部1の開閉爪2の駆動機構と同様な構成のものを使用することができる。
【0028】
[1-4.画像認識部C]
画像認識部Cは、上掴み把持部30の移動経路上における保持部20とコンベアDとの間に設けられている。図5に示すように、画像認識部Cは、基台40上に設置された画像認識用のカメラ41と、検体Wを照らすライト42とを備える。カメラ41は、上掴み把持部30がカメラ41の正面に検体Wを移送した状態で、回転機構31により検体Wをその軸を中心として回転させる間に、検体W表面に貼り付けられている採取時ラベルの内容を読み取るものであり、検体Wの胴部周囲を撮影し、採取時ラベルの内容を読み取るものであれば、静止画或いは動画用のカメラ41が使用できる。
【0029】
[1-5.コンベヤD]
コンベヤDは、画像照合ラベリング装置におけるラックRの供給・排出部Aとは奥行方向反対側を検体Wの主たる搬送部として設けられ、画像照合ラベリング装置の所定レベルの平面を画像照合ラベリング装置内周として楕円状に循環可能に設けられて検体ラックを循環搬送する。コンベヤDは画像認識処理が終了した検体Wを、上掴み把持部30から受け取ってホルダHに収容した状態でラベル貼付部E近傍へ搬送する。コンベヤDとしては、個々のホルダH内に1本ずつ収容された検体Wを移送するものであれば、その構成を限定するものではない。本実施形態では、図9に示すように、細長いテーブル50に、両端が半円で中央部が直線形の無端状ガイド溝51が設けられ、そのガイド溝51内にホルダHの下部のフランジHfが案内されて移動する構成のコンベヤDを使用する。
【0030】
ガイド溝51は、ホルダHの収容部が挿入される幅を有し、ガイド溝51の両側の縁がホルダHのフランジHfの上面に係合し、ホルダHがガイド溝51から外れることを防止する。コンベヤDには、ガイド溝51内に挿入されたホルダHを搬送するためのベルト52が設けられている。このベルト52がガイド溝51に装着されたホルダHの底部21を摩擦的に押圧することで、各ホルダHが順次押圧されてコンベヤDの内直線部を搬送される。画像照合ラベリング装置の奥行き方向に検体Wが折り返すところは、ガイド溝51の円弧をなす内周側に駆動プーリがその側面をホルダHのフランジHfの側面を摩擦によって係合しガイド溝51に沿ってホルダHを搬送することで、全体に無端状になったコンベヤDに沿って検体Wを収容するホルダHは循環する。
【0031】
コンベヤDには、検体WをホルダHに出し入れする位置において、ホルダHを所定時間待機させる次のような位置決めストッパが設けられている。
・第1位置決めストッパ53は、画像認識済みの検体Wを上掴み把持部30より空のホルダHに収容する位置に、検体Wが収容されるまで空のホルダHを停止させる。
・第2位置決めストッパ58は、ラベル貼付部Eにおいて、検体W表面の水滴を除去してラベルを貼り付けるため、コンベヤD上のあるホルダHから検体Wを後述する水滴除去部側移送装置61で取り出すまでの間、ホルダHをコンベヤD上で停止させる。
・第3位置決めストッパ54は、ラベル貼付部Eにおいて、検体W表面の水滴を除去後ラベルを貼り付けたあと、コンベヤD上のあるホルダHへ検体Wを後述するラベル側移送装置65でホルダH(検体ラックH)の収容部に戻すまでの間、あるホルダHをコンベヤD上で停止させる。
・第4位置決めストッパ56は、ホルダH内からラベルを貼り終わった検体Wを空のラックR2に移送する際に、排出移送部Fの横取り把持部1が検体Wを把持して上昇させる間、コンベヤD上のホルダHを停止させる。
【0032】
コンベヤDには、3ヶ所のバッファストッパが設けられている。第1バッファストッパ57は第1位置決めストッパ53の前段に、第2バッファストッパ59は第2位置決めストッパ58の前段に設けられ、第3バッファストッパ55は第4位置決めストッパ56の前段に設けられ、ホルダHに検体Wを出し入れする間に、次のホルダHが各位置決めストッパに侵入することを防止する。これらの位置決めストッパ及びバッファストッパの開閉は、ホルダHが所定の位置に達した場合や、検体WをホルダH内に出し入れしたことをセンサスイッチなどで検出することにより実施される。
【0033】
[1-6.ラベル貼付部E]
ラベル貼付部Eは、図1のEに示すように、移送用コンベヤD上から、ホルダH(検体ラックH)に支持されている検体Wを掴み上げて、水滴除去部60に挿入し、検体W周囲の霜や水滴を除去した後、ラベル貼付部に移送するものである。そのため、図10に示すように、Uターンしている移送用コンベヤDの復路側の近傍に水滴除去部60が配置され、水滴除去部60とコンベヤDとの間に検体Wを移送する水滴除去部側移送装置61が設けられている。
【0034】
水滴除去部側移送装置61は、取出移送部Bに設けられた移送装置と同様な構成を有する。即ち、図11及び図12に示すように、水滴除去部側移送装置61は、検体Wを上方から掴んで持ち上げる上掴み把持部30を有し、その下部には、下方に向かって突出して下端が開閉する3本の指部32を備えている。各指部32には、各指部32を上掴み把持部30の中心軸側と外周側との間で移動させる開閉機構が設けられている。上掴み把持部30の中心軸とは各指部32の移動方向の交点を中心とした軸である。上掴み把持部30は、ホルダH(検体ラックH)から検体Wを持ち上げるため、昇降機構5によって上下に移動機能に支持され、また、この昇降機構5全体がコンベヤDの移送方向と直行する方向に配置された第1水平移動機構9に支持され、更に、昇降機構5及び第1水平移動機構9全体がコンベヤDの直線部の移送方向と平行に配置された第2水平移動機構12に支持されている。
【0035】
このような3種類の機構により、上掴み把持部30は、コンベヤD上の位置決めストッパ58がある検体W持上げ位置から、コンベヤDの移送経路の側方に設けられた水滴除去部60の位置、同じくコンベヤDの側方に配置されたラベル貼付装置を経由して、移送経路少し下流のコンベヤD上の位置決めストッパ54がある検体Wの検体ラック収納位置に戻るというコースを移動する。
【0036】
図13に示すように、水滴除去部60は、その上部中央が開口した筒状のケーシング62を備え、このケーシング62内に上掴み把持部30によって持ち上げられた検体Wが上方から挿入される。ケーシング62は上部中央が開口となっているドーナツ型をなしこのドーナツ部分が中空となっている。ケーシング62の中央開口の内側には、リング状に吹出口63が設けられ、この吹出口63に中空のドーナツ部分を介して接続された配管64から圧力空気が送られることで、吹出口63から開口中心軸に向かって高速のエアナイフ状に吹出し、検体Wの表面全周囲に吹き付けられる。上掴み把持部30の昇降機構5により検体Wの長さ方向に往復動することで、検体Wの表面全周に長さを乗じた面積の水滴を全体に吹き飛ばすこととなる。ケーシング62の周囲には飛散防止カバー66が設けられ、ケーシング62及び飛散防止カバー66は箱状の水滴回収部67に支持されている。水滴回収部67は、吹出口63の下部に配置され、吹出口63から検体Wに向けて吹き付けられた圧力空気により除去した水滴を収集する。水滴回収部67とケーシング62の仕切68の中央には、異物除去用のメッシュが張られた排水穴69が開口している。
【0037】
図10に示すように、ラベル貼付部とコンベヤDとの間には、ラベル貼りが終わった検体Wを再びコンベヤD上の空のホルダH内に移送するためのラベル側移送装置65が設けられている。このラベル側移送装置65は、図14に示すように、水滴除去部側移送装置61と同様な構成を有するもので、上掴み把持部30、昇降機構5及び第1水平移動機構9を備えている。ただし、ラベル側移送装置65は、ラベル貼付部とコンベヤDとの間で検体Wを移送するものであり、コンベヤDの移送方向に沿って検体Wを移送する必要はないため、第2水平移動機構12は設けられていない。
【0038】
ラベル貼付装置は、垂直に保持された検体Wの胴部にラベルを貼るものであれば、適宜の構成のものが使用できる。本実施形態では、図15に示すように、一対の回転ローラ70と押え板71の間に上方から検体Wを挿入し、押え板71と検体Wとの隙間にラベルを展開して回転ローラの回転により検体Wに巻き付けるものを使用する。即ち、コンベヤDにおける水滴除去部60の後段には、コンベヤDの移送方向に沿って一対の回転ローラ70が同方向に回転するように配置され、これら回転ローラ70の背後には、回転ローラ70に向かって前後動する押え板71が設けられている。押え板71はその背後に設けられた第1水平移動機構9に支持され、第1水平移動機構9に駆動されて前後動する。図16に示すように、一対の回転ローラ70と押え板71に囲まれた検体挿入部の下部には、挿入された検体Wの底部21を受ける受け部材72が設けられている。この受け部材72は、ラベルを貼り付ける検体Wの高さ方向の寸法に合わせて、検体Wの支持位置を変更できるように、昇降機構5に支持されている。
【0039】
検体Wの胴部に貼り付けるラベルを供給するために、回転ローラ70と押え板71の近傍には、ラベル供給リール73、ラベル裏シート巻取りリール74、ラベル裏シートを鋭角に折り返してラベルを直線的に展開するラベルピックアップ、ラベル抑えなど、ラベルの貼り付けに必要な機器が設けられている。なお、これらの機器は図15に一部見えているもののその詳細は、特に図示し説明しないが、公知のラベル貼付装置に使用されるものである。
【0040】
[1-7.排出移送部F]
ラベル側移送装置65によって、コンベヤD上の空のホルダH内に移送された検体W、及び画像認識装置による読み取りエラーとなった検体Wは、コンベヤD上のホルダHから取り出されて、処理済ラックR2又は不良品ラックR3に送られる。そのため、コンベヤDと処理済ラックR2又は不良品ラックR3との間には、排出移送部Fが設けられている。
【0041】
この排出移送部Fは、取出移送部Bに設けられた本実施形態の検体移送装置と同様な構成を有する。図17及び図18に示すように、排出移送部Fは、検体Wの胴部を横方向から把持する横取り把持部1を備え、横取り把持部1には、2本の開閉爪2と、これら2本の開閉爪2を開閉する開閉機構が設けられている。円筒形の検体Wを、仕切りの間隔が狭い処理済ラックR2又は不良品ラックR3に収容するには、未処理ラックR1と同様に、検体Wを横から掴んで仕切り内に挿入することが必要であることから、本実施形態では、排出移送部Fについても横取り把持部1を有する本実施形態の検体移送装置が採用されている。
【0042】
横取り把持部1は、昇降機構5、第1水平移動機構9及び第2水平移動機構12によって、上下ならびに前後左右に移動する。即ち、横取り把持部1は、第2水平移動機構12に支持された状態でコンベヤDの移送方向に沿って移動し、コンベヤDで移送されてきた検体Wを処理済ラックR2又は不良品ラックR3の位置に合わせてホルダHから持ち上げる。また、横取り把持部1は、第2水平移動機構12に支持された状態でコンベヤDの移送方向に沿って移動し、検体WをコンベヤDから処理済ラックR2又は不良品ラックR3に移動させる。
【0043】
[1-3.実施形態の作用]
(1)未処理ラックR1からの検体Wの取り出し
まず、この画像照合ラベリング装置にて画像照合してラベリングする対象の検体Wは、未処理ラックR1によって運び込まれるが、検体Wごとに採血などする医療機関が保有するラベリング装置の違いによりさまざまな様式や大きさのラベルが貼り付けられている。更に検体Wごとに高さの違う容器である検体Wとなっている場合もある。これらをラックR1にランダムに収容して搬入し、それぞれのラベル情報を画像認識して照合し、この画像照合ラベリング装置を設置し検体Wを集約して処理する施設が集約して扱いやすいラベルを容器にラベリングし、その後の工程の情報処理を助けるためにこの画像照合ラベリング装置は存在している。
【0044】
本実施形態において、画像認識の対象となる未処理の検体Wは、格子状の仕切りを有する未処理ラックR1内に整列した状態で収容されている。この状態で、検体移送装置に設けられた横取り把持部1は、ラックR1に収容された検体Wの胴部を横方向から把持して持ち上げる。即ち、横取り把持部1を、昇降機構5によって検体Wの長さ方向に昇降させ、開閉爪2をラックR1の上縁から突出している検体Wの首の部分に高さに揃える。検体Wごとに高さが異なる容器を使用している場合には、検体Wの首の部分の高さをセンサで見ながら開閉爪2のレベルを検体Wの首の高さに揃える。次に、横取り把持部1を第1水平移動機構9及び第2水平移動機構12を使用してラックR1に向かって移動させ、開閉爪2を取り出し対象の検体Wの首の部分を挟むように、隣接する検体Wの隙間に挿入する。
【0045】
この時、横取り把持部1は、高さ方向の厚さが薄い板状の部材から構成されているので、背が低くラックR1上縁からの突出量が少ない検体Wであっても、その首の部分を両側から把持することができる。また、開閉爪2は検体W上部の蓋を避けて左右に開閉することから、上方から掴み上げる把持部に比較して、少ない開閉量で検体Wを挟むことができ、ラックR1に密に収容された検体Wであってもその狭い隙間に開閉爪2を挿入することができる。更に、開閉爪2は、その対向する内側の縁にV字形の凹部22がそれぞれ設けられ、左右一対の爪部が閉じて検体Wを把持する場合に、V字形の凹部22の各辺において検体Wの外周面と接触するため、検体Wをその胴部の4か所で確実に把持することが可能である。
【0046】
(2)保持部20を用いた検体Wの持ち替え
開閉爪2により検体Wを把持した後、昇降機構5を駆動して横取り把持部1を上方に持ち上げることにより、検体WをラックR1から取り出し、次いで、第1水平移動機構9及び第2水平移動機構12により、横取り把持部1をコンベヤD側に移動させる。横取り把持部1が第2水平移動機構12のコンベヤD側端部近傍の下方に設けられた保持部20の上方に達すると、横取り把持部1は昇降機構5によって下降され、その結果、検体W胴部の下部は筒状に配置された3本のガイド部材22の内側に挿入される。この時、検体Wの上部は、上掴み把持部30の指部32が検体Wの胴部外周に当接することができるように、3本のガイド部材22の上端よりも突出した状態となる。保持部20に検体Wを受け渡した横取り把持部1は、保持部20から上昇し、次の検体Wを移送するために、未処理ラックR1側に戻る。
【0047】
(3)画像認識
検体Wが保持部20にセットされると、水平移動機構により上掴み把持部30が保持部20の上方に移動し、次いで、昇降機構5により上掴み把持部30が下降して、検体Wを上方から把持して持ち上げる。検体Wを把持した上掴み把持部30は、水平移動機構により、画像認識部Cのカメラ41の正面に移動させられる。検体Wがカメラ41の正面に移動した後、上掴み把持部30は、昇降機構5に固定された回転機構31により検体Wをその軸を中心として回転させる。その結果、検体Wの全周囲がカメラ41によって撮影され、検体Wの胴部に張り付けられた採取時ラベルの内容が読み取られる。
【0048】
(4)検体WのホルダHへの移送
画像認識処理が終了した検体Wは、上掴み把持部30によって把持された状態で水平移動機構によりコンベヤD上に移送され、コンベヤDのガイド溝51内で位置決めストッパ53によって側方から当接され待機するホルダH内に収容される。この場合、ホルダHは、第1位置決めストッパ53によって上掴み把持部30からの受け渡し位置に停止しているので、上掴み把持部30によって検体WをホルダHの上方にまで移送し、昇降機構5により上掴み把持部30を下降させることで、検体WをホルダH内に挿入する。
【0049】
(5)霜や水滴の除去
検体Wを収容したホルダHは、第1位置決めストッパ53が解放されることで、コンベヤDのガイド溝51に沿って移動し、第2バッファストッパ59を経由して、第2位置決めストッパ58に達して停止する。すると、水滴除去部側移送装置61の上掴み把持部30がコンベヤD上から、ホルダHに支持されている検体Wを掴み上げ、昇降機構5により検体Wの長さ方向に検体Wを上昇させる。上掴み把持部30によって把持された状態で水平移動機構により検体Wを水滴除去部60まで移動させる。水平移動機構によりケーシング62の上部にまで移動させたところで、昇降機構5を下降させ、検体Wを水滴除去部60のケーシング62に挿入する。検体Wがケーシング62に挿入されると、吹出口63に接続された配管64から圧力空気が検体Wの表面全周囲に吹き付けられる。検体Wに付着した霜や水滴を確実に除去するため、本実施形態では吹出口63から圧力空気の吹き付けは、検体Wがケーシング62を下降及び上昇している間の双方であるが、どちらか一方でもよい。吹出口63からの圧力空気の吹き付けにより飛散した水滴は、水滴回収部67により収集される。上掴み把持部30によって把持された検体W周囲の霜や水滴を除去した後、水平移動機構によりラベル貼付装置に移送する。この場合、筒状をした水滴除去部60の内部に検体Wを上から挿入する必要があることから、水滴除去部側移送装置61は上掴み把持部30を備えている。
【0050】
(6)ラベルの貼り付け
水滴の除去が終了した後は、水滴除去部側移送装置61は、検体Wを掴んだままの状態で、ラベル貼付部の回転ローラ70と押え板71の間に移送する。そして水滴除去部側移送装置61はこの検体Wの把持をリリースして、次の検体Wを迎えに再びコンベヤDの第2位置決めストッパ58の部位へ向かう。この場合、検体Wは、その底部21が受け部材72によって支持された状態で回転ローラ70によって回転され、検体Wの胴部に供給リールから供給されたラベルが貼り付けられる。ラベルの貼り付けが終了した検体Wは、ラベル側移送装置65によって回転ローラ70と押え板71の間から取り出され、第3位置決めストッパ54によってコンベヤD上で停止している元の空ホルダH内に収容される。この場合、画像認識による読み取りエラーになった検体Wについては、貼付装置によるラベルの貼り付けを実施しないか、あるいは、ホルダHから検体Wを持ち上げて水滴除去及びラベル貼り付けを行うことなく、ホルダHに収容したままコンベヤDによって第2位置決めストッパ58の位置から直接排出移送部Fに移送しても良い。
【0051】
(7)検体Wの排出移送
ラベル側移送装置65によって、コンベヤD上の元の空ホルダH内に移送された検体W、及び画像認識装置による読み取りエラーとなった検体Wは、コンベヤD上のホルダHから取り出されて、処理済ラックR2又は不良品ラックR3に送られる。即ち、検体Wは、ホルダH内から水滴除去部側移送装置61で取り出され、ラベルを貼り終わり、ラベル側移送装置65でコンベヤDに戻されている。この戻された検体Wを収容したホルダHは、第4位置決めストッパ56の位置において停止し、停止したホルダH内から排出移送部Fによって検体Wが取り出され、処理済ラックR2又は不良品ラックR3に移動させる。この場合、排出移送部Fに設けられた昇降機構5、第1水平移動機構9及び第2水平移動機構12によって、検体Wは、所定のラックRに移送される。
【0052】
[1-4.実施形態の効果]
(1)本実施形態の検体移送装置は、検体Wを側方から掴むものであり、上部の大径の蓋を避けて、検体Wの胴部を把持することができる。そのため、把持部の開閉量も比較的少なくて済み、ラックRの仕切り間隔を狭くして、検体Wの集積度を向上させることができる。
【0053】
(2)横取り把持部1を第1水平移動機構9と第2水平移動機構12により、画像照合ラベリング装置の幅奥行に移動可能としたので、ラックR内に収容されている多数の検体Wを、ラックRを移動させることなく、ラックRの端の仕切り内から順番に取り出すことができる。しかも、異なる種類のラックRやラックRの一部にしか検体Wが収容されていない場合など、ラックRからの検体Wの取出位置が検体Wごとに異なっていても、第1水平移動機構9と第2水平移動機構12により固定位置にある保持部20へ検体Wを移送することができる。
【0054】
(3)横取り把持部1を第1水平移動機構9と第2水平移動機構12により幅奥行に移動させるため、保持部20の固定位置や上掴み把持部30の移動経路を画像照合ラベリング装置の各部に柔軟に配置することができ、画像照合ラベリング装置全体の小型化を図ることができる。
【0055】
(4)通常、検体Wを横から掴む場合、そのままの状態で画像認識装置に移送すると、把持部によって検体Wの胴部に張り付けられた採取時ラベルが隠れてしまい、情報の読取が不可能になる。本実施形態では、ラックRと画像認識装置との間に、検体Wを下方より保持する保持部20を設け、この保持部20に検体Wを置いて上掴み把持部30で持ち替えることにより、採取時ラベルが把持部で隠れることがなくなり、画像認識によるラベルの読取が確実に行える。
【0056】
(5)上掴み把持部30で把持した検体Wを回転機構31によって回転させることで、ラックRから取り出した検体Wの把持位置にかかわりなく、画像認識時において検体Wの全周囲を確実にカメラ41に対向させることができ、採取時ラベルがカメラ41の死角にならず、画像認識精度が向上する。
【0057】
(6)保持部20にセットされている検体Wを上掴み把持部30によって把持する場合、上掴み把持部30が検体Wの上端側から検体Wを掴むことになるので、異なる高さの検体Wであっても、非接触の高さセンサによる高さ信号を制御に取り入れるだけで、常に検体W上端から一定の位置を把持することが可能となる。その結果、どのような高さの検体Wでも、検体Wの蓋に近い部分を把持することにより、上掴み把持部30の指部32が採取時ラベルを隠すことがない。
【0058】
[3.他の実施形態]
本発明は、実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。具体的には、次のような他の実施形態も包含する。
【0059】
(1)図示の実施形態は、本発明の検体移送装置をラックRから画像認識装置へ移送するために使用したが、単にラックRから検体Wを取り出して他の場所に搬送する装置としても使用することが可能である。例えば、図1に示す装置においては、ラベルを貼り終わった検体Wを空のラックRに移送する排出移送部Fに本実施形態の移送装置を適用しているが、その他の用途に使用することも可能である。
【0060】
(2)複数の開閉爪2を開閉する手段としては、左右の開閉爪2を軸を中心として左右に回動させるものでも、また、少なくとも一方の開閉爪2が開閉方向に直線的に移動するものでも良い。また、検体Wを掴んだ際の滑り止めとして、開閉爪2に検体Wとの接触部分にゴムなどの滑り止めを設けてもよい。図示の実施形態では、開閉爪2として、その高さ方向の厚さが薄い板状の部材を使用したが、高さ方向に一定の幅がある部材を使用することで、開閉爪2と検体Wとの接触面積を増加させ、掴んだ際の安定性を確保するようにしても良い。
【0061】
(3)格子状の仕切りを有するラックR内に縦横に収容された複数の検体Wを取り出すため、横取り把持部1が縦横2方向に移動するように、第1水平移動機構9と第2水平移動機構12を設けたが、直線状に検体Wを収容するラックRを使用した場合には、横取り把持部1は1方向のみ移動すれば良いので、第1水平移動機構9のみで検体Wの横からの取り出しを実施できる。同様に、ラックR自体を移動させることで、装置内における検体Wの取り出し位置を一定個所とすれば、第1水平移動機構9のみで検体Wの横からの取り出しを実施できる。
【0062】
(4)保持部20を固定して上掴み把持部30を昇降させたが、上掴み把持部30を昇降させることなく、保持部20を昇降機構5で支持することにより、上昇した検体Wを上掴み把持部30の指部32内に挿入させて掴むことも可能である。
【0063】
(5)横取り把持部1を第1水平移動機構9によって横方向に、第2水平移動機構12によって縦方向に移動させたが、第1水平移動機構9と第2水平移動機構12の移動方向を入れ替えることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
W…検体、H…ホルダ(検体ラック)、Hf…フランジ、R…ラック、R1…未処理ラック、R2…処理済ラック、R3…不良品ラック
A…供給・排出部、B…取出移送部、C…画像認識部、D…コンベア、E…ラベル貼付装置、F…排出移送部
1…横取り把持部、2…開閉爪、3…レール、4…スライダ、5…昇降機構、6…垂直レール、7…ブラケット型スライダ、8…モータ、9…第1水平移動機構、10…縦レール、11…縦スライダ、12…第2水平移動機構、13…横レール、14…横スライダ、15…支持部材、20…保持部、21…底部、22…ガイド部材
30…上掴み把持部、31…回転機構、32…指部
40…基台、41…カメラ、42…ライト
50…テーブル、51…ガイド溝、52…ベルト、53…第1位置決めストッパ、54…第3位置決めストッパ、55…第3バッファストッパ、56…第4位置決めストッパ、57…第1バッファストッパ、58…第2位置決めストッパ、59…第2バッファストッパ
60…水滴除去部、61…水滴除去部側移送装置、62…ケーシング、63…吹出口、64…配管、65…ラベル側移送装置、66…飛散防止カバー、67…水滴回収部、68…仕切、69…排水穴
70…回転ローラ、71…押え板、72…受け部材、73…ラベル供給リール、74…ガイドローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20