(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054757
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】圧縮空気エネルギ貯蔵装置およびヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F02C 6/16 20060101AFI20240410BHJP
F25B 7/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F02C6/16
F25B7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161195
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小山 昌喜
(72)【発明者】
【氏名】千葉 紘太郎
(72)【発明者】
【氏名】永田 修平
(57)【要約】
【課題】圧縮熱を効率よく回収することで電力回収効率の向上を図ることができる圧縮空気エネルギ貯蔵装置の提供。
【解決手段】圧縮空気エネルギ貯蔵装置は、電動機により駆動され、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気との熱交換により蓄熱媒体を加熱する第1熱交換器と、第1熱交換器で熱交換した後の圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンクと、蓄圧タンクに貯蔵された圧縮空気により駆動される膨張機と、膨張機により駆動される発電機と、第1熱交換器で加熱された蓄熱媒体との熱交換により、膨張機に流入する圧縮空気を加熱する第2熱交換器と、第2熱交換器で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、膨張機を駆動する圧縮空気へ放熱するためのヒートポンプ装置と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機により駆動され、空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された圧縮空気との熱交換により蓄熱媒体を加熱する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器で熱交換した後の圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンクと、
前記蓄圧タンクに貯蔵された圧縮空気により駆動される膨張機と、
前記膨張機により駆動される発電機と、
前記第1熱交換器で加熱された蓄熱媒体との熱交換により、前記膨張機に流入する圧縮空気を加熱する第2熱交換器と、
前記第2熱交換器で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、前記膨張機を駆動する圧縮空気へ放熱するためのヒートポンプ装置と、
を備える圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記ヒートポンプ装置は、前記第2熱交換器で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、前記第2熱交換器に供給される蓄熱媒体に対して放熱する、
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項3】
請求項1に記載の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記ヒートポンプ装置は、冷媒が流れる吸熱器および放熱器を備え、
前記吸熱器は、前記第2熱交換器で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、
前記放熱器は、前記吸熱器で吸熱した熱エネルギを前記第2熱交換器で加熱された圧縮空気に対して放熱する、
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項4】
請求項3に記載の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記第2熱交換器は、
前記第1熱交換器で加熱された蓄熱媒体と、前記放熱器から流出する冷媒と、前記膨張機に供給される圧縮空気とが流入する、三流体熱交換器で構成される、
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項5】
請求項1に記載の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記第1熱交換器で熱交換した後の圧縮空気を貯蔵する前記蓄圧タンクである主蓄圧タンクとは別に、前記第1熱交換器の圧縮空気の入口側に接続され、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を貯蔵する副蓄圧タンクをさらに備え、
前記第2熱交換器は、前記主蓄圧タンクから前記膨張機に流入する圧縮空気を、前記第1熱交換器で加熱された蓄熱媒体との熱交換により加熱し、
前記副蓄圧タンクに貯蔵された圧縮空気により前記膨張機を駆動させると共に前記第1熱交換器で加熱された蓄熱媒体の前記第2熱交換器への流入を開始させ、その後、前記主蓄圧タンクに貯蔵された圧縮空気により前記膨張機を駆動させる制御装置
を備える、
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項6】
請求項5に記載の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記ヒートポンプ装置は、
前記第2熱交換器で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、
前記主蓄圧タンクから前記膨張機に流入する圧縮空気および前記副蓄圧タンクから前記膨張機に流入する圧縮空気の少なくとも一方へ放熱する、
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項7】
請求項6に記載の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記膨張機は第1膨張段と第2膨張段とを有する多段膨張機であって、
前記第2熱交換器は、前記第1膨張段および前記第2膨張段の各々の流入側に個別に設けられ、
前記ヒートポンプ装置は、前記第2熱交換器で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、前記主蓄圧タンクから前記第1膨張段に流入する圧縮空気へ、および、前記第1膨張段から前記第2膨張段に流入する圧縮空気へ放熱する、
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項8】
請求項5に記載の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記ヒートポンプ装置は、
前記第2熱交換器で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、
前記第2熱交換器に供給される蓄熱媒体に対して放熱する、
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項9】
請求項1に記載の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記ヒートポンプ装置は、冷媒を用いた蒸気圧縮サイクルが採用されたヒートポンプ装置である、
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項10】
請求項1に記載の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記蓄熱媒体が加圧水である、
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項11】
圧縮機で空気を圧縮して得られる圧縮空気と圧縮熱とを貯蔵し、熱交換器における前記圧縮空気と前記圧縮熱を吸熱した蓄熱媒体との熱交換により前記圧縮空気を加熱し、加熱後の圧縮空気により膨張機を駆動して発電を行う圧縮空気エネルギ貯蔵装置に用いられるヒートポンプ装置であって、
前記熱交換器で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱する吸熱器と、
前記熱交換器に流入する前記蓄熱媒体に対して放熱する放熱器と、
を備えるヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気エネルギ貯蔵装置およびヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギを利用した発電は、気象条件に依存するため、発電量が変動し安定しないことがある。このような変動に対し、発電出力を平準化するシステムとして圧縮空気エネルギ貯蔵(Compressed Air Energy Storage:CAES)システムが知られている。このCAESシステムを利用した圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)は、電気エネルギを圧縮空気として蓄圧タンクに蓄え、電力が必要な時に圧縮空気により膨張機を駆動して発電機を動作させ、電気エネルギを生成して出力を平準化する。
【0003】
CAES装置では、発電効率を向上させるために、圧縮熱を蓄熱媒体に回収して蓄熱タンク等に貯蔵し、回収した圧縮熱を用いて膨張前の圧縮空気を加熱するシステムが知られている。これにより、蓄圧タンク貯蔵時の放熱を低減するとともに、膨張時の回収動力を増加させる。CAES装置では圧縮空気生成時の入力エネルギに対する、膨張機を駆動させて発電する出力エネルギの比(電力回収効率)が高いことが求められる。そのためには圧縮熱の熱回収、すなわち、蓄熱した圧縮熱の内のどれだけが膨張機を駆動する圧縮空気の加熱に利用できるかが重要となる。一般的に、20℃大気圧の空気を1.0MPa程度に圧縮した際の空気温度は240℃程度であり、蓄熱媒体を介した熱交換にて熱回収するには有効エネルギが小さく、熱回収量は小さい。
【0004】
このような熱回収を行うCAES装置として、例えば、特許文献1に記載のような圧縮空気貯蔵発電装置がある。特許文献1に記載の圧縮空気貯蔵発電装置では、蓄熱媒体により膨張前の圧縮空気を加熱するのみでなく、外部の排熱を利用して圧縮空気を加熱することにより、CAES装置の発電効率を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、外部の排熱を利用することでCAES装置の発電効率を向上させている。そのため、外部に適当な熱源がない場合には発電効率を上げることができず、出力電力と入力電力との比である電力回収効率の向上を図ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による圧縮空気エネルギ貯蔵装置は、電動機により駆動され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気との熱交換により蓄熱媒体を加熱する第1熱交換器と、前記第1熱交換器で熱交換した後の圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクに貯蔵された圧縮空気により駆動される膨張機と、前記膨張機により駆動される発電機と、前記第1熱交換器で加熱された蓄熱媒体との熱交換により、前記膨張機に流入する圧縮空気を加熱する第2熱交換器と、前記第2熱交換器で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、前記膨張機を駆動する圧縮空気へ放熱するためのヒートポンプ装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、CAES装置における圧縮熱を効率よく回収することで、電力回収効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置に対する比較例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置の概略構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置の概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置の概略構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第5の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置の概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第6の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置の概略構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の第7の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置の概略構成を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の第8の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置の概略構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の第9の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置の概略構成を示す図である。
【
図11】
図11は、単段構成の圧縮空気エネルギ貯蔵装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)の概略構成を示す図である。CAES装置1は、圧縮機ユニット2A、膨張機ユニット2B、蓄熱ユニット20、ヒートポンプユニット30および制御装置40により構成される。圧縮機ユニット2A、膨張機ユニット2B、蓄熱ユニット20およびヒートポンプユニット30の各動作は制御装置40によって制御される。
【0012】
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の処理装置、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ、入出力インタフェース、および、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。なお、コントローラは、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。また、処理装置としては、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0013】
不揮発性メモリには、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、不揮発性メモリは、本実施の形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。揮発性メモリは、処理装置による演算結果および入力インタフェースから入力された信号を一時的に記憶する記憶媒体(記憶装置)である。処理装置は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを揮発性メモリに展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入出力インタフェース、不揮発性メモリおよび揮発性メモリから取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0014】
圧縮機ユニット2Aは、モータ(電動機)4,5、圧縮機6,7、蓄圧タンク8およびインバータ装置9を備える。膨張機ユニット2Bは、膨張機10,11、発電機12,13およびパワーコンディショナ14を備える。なお、圧縮機6,7および膨張機10,11には、スクリュ式、スクロール式、ターボ式およびレシプロ式など、いずれの方式のものを用いても良い。蓄熱ユニット20は水などの蓄熱媒体が循環するシステムであり、蓄熱タンク21,22、熱交換器24~27および移送ポンプ28,29を備える。ヒートポンプユニット30は、冷媒を用いた蒸気圧縮サイクルを採用したヒートポンプ装置であり、冷媒圧縮機31、膨張弁32、放熱器34および蒸発器35を備える。
【0015】
CAES装置1は、太陽光発電装置18や風力発電装置19等を備えるグリッド電力3に接続されている。圧縮機ユニット2Aのインバータ装置9は、グリッド電力3から供給される電力によってモータ4,5等を駆動する。また、発電機12,13により発電された電力は、パワーコンディショナ14を介してグリッド電力3へ供給される。
【0016】
1段目圧縮行程を担う圧縮機6は、モータ4により回転駆動される。2段目圧縮行程を担う圧縮機7は、モータ5により回転駆動される。これらの圧縮機6,7により空気の2段圧縮を行う。圧縮機6の吸入口は大気に開口し、圧縮機6の吐出口は蓄熱ユニット20の熱交換器24を介して2段目の圧縮機7の吸入口に接続される。圧縮機7の吐出口は、蓄熱ユニット20の熱交換器25を介して蓄圧タンク8に接続される。
【0017】
一方、膨張機ユニット2Bにおいて、1段目膨張行程を担う膨張機10の吸入口は、蓄熱ユニット20の熱交換器26を介して蓄圧タンク8に接続されている。膨張機10の吐出口は、蓄熱ユニット20の熱交換器27を介して2段目膨張行程を担う膨張機11の吸入口に接続されている。これら膨張機10,11により圧縮空気の2段膨張を行う。発電機12が膨張機10により駆動され、発電機13が膨張機11により駆動されることにより、発電(電力再生)が行われる。発電機12,13はパワーコンディショナ14を介してグリッド電力3に接続され、再生した電力をグリッド電力3に戻す。
【0018】
蓄熱ユニット20は、蓄熱タンク22の蓄熱媒体を並列接続された熱交換器24,25に流通させて蓄熱タンク21へと流入させる蓄熱媒体経路と、蓄熱タンク21の蓄熱媒体を並列接続された熱交換器26,27に流通させて蓄熱タンク22へと流入させる蓄熱媒体経路とを備えている。蓄熱タンク21,22の蓄熱媒体は、移送ポンプ28,29によって移送される。蓄熱タンク21と熱交換器26,27との間の蓄熱媒体経路には、ヒートポンプユニット30の放熱器34が設けられている。また、熱交換器26,27と蓄熱タンク22との間の蓄熱媒体経路には、ヒートポンプユニット30の蒸発器35が設けられている。
【0019】
ヒートポンプユニット30は、冷媒が冷媒圧縮機31により圧縮されて放熱器34で放熱し、その冷媒が膨張弁32により減圧されて蒸発器35で吸熱して冷媒圧縮機31に戻る冷凍サイクルを構成している。モータを内蔵した冷媒圧縮機31は、グリッド電力3からの入力電力により駆動される。上述したように、放熱器34は蓄熱タンク21と熱交換器26,27との間の蓄熱媒体経路に設けられ、放熱器34において冷媒から蓄熱媒体へ放熱される。蒸発器35は熱交換器26,27から蓄熱タンク22へ戻る蓄熱媒体経路に設けられ、蒸発器35において蓄熱媒体から冷媒へと吸熱される。
【0020】
次いで、CAES装置1の動作について説明する。なお、蓄熱媒体には、水、加圧水、鉱物油系またはグリコール系等の蓄熱媒体を用いることができるが、以下では、蓄熱媒体として水を用いる場合を例に説明する。
(充電動作)
まず、圧縮空気を生成して貯蔵する充電動作について説明する。充電動作時には、制御装置40は、モータ4,5および移送ポンプ29を動作させる。移送ポンプ29を動作させると、低温側の蓄熱タンク22に貯蔵されている蓄熱媒体が熱交換器24,25に供給される。前述したように、モータ4により圧縮機6を駆動し、モータ5により圧縮機7を駆動することにより、圧縮機6の吸入口から吸入された大気は2段圧縮されて圧縮機7の吐出口より吐出される。圧縮機6により断熱圧縮された高温の圧縮空気は熱交換器24に流入し、低温側の蓄熱タンク22より供給された蓄熱媒体と熱交換を行う。この熱交換により、低温の蓄熱媒体は約100℃の高温となり、高温側の蓄熱タンク21にて貯蔵される。
【0021】
熱交換器24において熱交換した圧縮空気は常温程度の低温となり、熱交換器24の下流側に設けられた圧縮機7により吸入される。圧縮機7に吸入された常温の圧縮空気は、圧縮機7により2段目の断熱圧縮が行われ、高温でより高圧の圧縮空気となる。圧縮機7から吐出された圧縮空気は熱交換器25に導入され、低温側の蓄熱タンク22より供給される蓄熱媒体と熱交換を行う。この熱交換により、低温の蓄熱媒体は約100℃の高温となり、高温側の蓄熱タンク21にて貯蔵される。熱交換器25において熱交換した圧縮空気は常温程度の低温となり、蓄圧タンク8にて貯蔵される。以上の動作により、充電時における圧縮空気エネルギ貯蔵が行われる。
【0022】
(放電動作)
次に、圧縮空気にて発電機を駆動し発電する放電動作について説明する。放電動作時には、制御装置40は、移送ポンプ28およびヒートポンプユニット30を動作させるとともに、蓄圧タンク8に貯蔵されている低温高圧の圧縮空気を熱交換器26に供給させる。移送ポンプ28を動作させると、高温側の蓄熱タンク21に貯蔵されている蓄熱媒体がヒートポンプユニット30の放熱器34を介して各熱交換器26,27に供給される。蓄熱タンク21から放熱器34に流入する蓄熱媒体の温度は、蓄熱タンク21における貯蔵時間にもよるが、70~90℃程度である。また、放熱器34に流入する冷媒の温度は、例えば120℃程度である。蓄熱媒体が放熱器34を通過すると、冷媒との熱交換により蓄熱媒体の温度は約100℃となる。
【0023】
熱交換器26に流入した圧縮空気は、高温の蓄熱媒体と熱交換することにより90℃程度の高温となる。熱交換器26で約90℃に加熱された圧縮空気は膨張機10に供給され、膨張機10を駆動することにより1段目の断熱膨張を行う。膨張機10により断熱膨張された空気は、膨張機10の吐出口と膨張機11の吸入口との間に設けられた熱交換器27に流入する。一方、熱交換器26に流入した約100℃の蓄熱媒体は、圧縮空気との熱交換により約40℃の低温となり、ヒートポンプユニット30の蒸発器35に流入する。
【0024】
ヒートポンプユニット30の放熱器34で加熱された約100℃の蓄熱媒体は、膨張機11の入り口側に設けられた熱交換器27にも供給される。膨張機10により断熱膨張された空気は、熱交換器27に流入して高温の蓄熱媒体と熱交換することにより90℃程度の高温となる。熱交換器27で約90℃に加熱された空気は膨張機11に吸入され2段目の断熱膨張が行われる。膨張機11により断熱膨張された空気は低温低圧の状態となり、膨張機11の吐出口から大気へと放出される。このように、蓄圧タンク8に貯蔵された低温高圧の圧縮空気を蓄熱タンク21に貯蔵された蓄熱媒体により加熱し、その加熱された圧縮空気により膨張機10,11を駆動することで、発電機12,13による発電が行われる。そして、発電された電力は、パワーコンディショナ14を経てグリッド電力3に供給される。
【0025】
なお、熱交換器27に流入した約100℃の蓄熱媒体は、熱交換により約40℃の低温となり熱交換器27から流出する。熱交換器27から流出した低温の蓄熱媒体は熱交換器26より流出した蓄熱媒体と合流し、その後、ヒートポンプユニット30の蒸発器35に流入する。蒸発器35では、熱交換器26,27から流入する低温(約40℃)の蓄熱媒体と、膨張弁32により減圧されて温度が低下した冷媒(約20℃)との間で熱交換が行われる。蒸発器35での熱交換により約20℃に温度低下した蓄熱媒体は、蓄熱タンク22に流入して貯蔵される。一方、冷媒は、蒸発器35において蓄熱媒体より吸熱して蒸発し、冷媒圧縮機31に戻る。
【0026】
次に、本実施の形態における電力回収効率の向上について説明する。
図2は、本実施の形態のCAES装置1に対する比較例を示す図である。
図2の比較例に示すCAES装置100にはヒートポンプユニット30が設けられておらず、その他の構成は
図1の場合と同様である。
【0027】
CAES装置100では、蓄熱タンク21に貯蔵されている蓄熱媒体は、
図1の構成のように加熱されることなくそのまま熱交換器26,27に供給される。上述したように、蓄熱タンク21に流入する蓄熱媒体の温度が約100℃であっても、蓄熱タンク21に貯蔵されている間の熱散逸により、蓄熱タンク21から熱交換器26,27に供給される蓄熱媒体の温度は約70~90℃程度となる。そのため、蓄熱媒体と熱交換して熱交換器26,27から流出される圧縮空気の温度は、約70℃程度となる。ここで、充電動作時に
図2のインバータ装置9に入力される電力をE1とし、その電力E1で生成される圧縮空気により発電される再生電力をE2とする。この場合の電力回収効率はE2/E1であり、これは1よりも小さな値となる。
【0028】
一方、
図1に示す本実施の形態では、ヒートポンプユニット30により、熱交換器26,27から蓄熱タンク22へ戻る低温側の蓄熱媒体から熱エネルギを吸収して、蓄熱タンク21から熱交換器26,27へ供給される高温側の蓄熱媒体へ熱エネルギを放出するようにしているので、熱交換器26,27に供給される蓄熱媒体の温度は約100℃となる。そのため、膨張機10,11に流入する圧縮空気の温度は約90℃と上昇し、発電機12,13により発電される再生電力は、
図2の構成の場合よりも大きくなる。
【0029】
図1に示す構成では、圧縮空気を生成するための電力E1に加えて、ヒートポンプユニット30の冷媒圧縮機31を駆動するための電力ΔE1が必要となるので、インバータ装置9に入力される電力は「E1+ΔE1」となる。また、
図1の場合には、膨張機10,11を駆動する圧縮空気の温度は約90℃と
図2の場合の約70℃よりも高いので、発電機12,13により発電される再生電力はE2よりも大きな値「E2+ΔE2」となる。よって、この場合の電力回収効率は、(E2+ΔE2)/(E1+ΔE1)と表される。
【0030】
電力回収効率=(E2+ΔE2)/(E1+ΔE1)が
図2の場合の電力回収率=E2/E1よりも大きくなるためには、すなわち[(E2+ΔE2)/(E1+ΔE1)]>(E2/E1)を満たすためには、条件「(ΔE2/ΔE1)>(E2/E1)…(1)」を満足する必要がある。ヒートポンプユニット30で構成される冷凍サイクルのCOP(成績係数)は3.0程度であり、冷媒圧縮機31の駆動のための電力のおよそ3倍のエネルギを蓄熱媒体に投入することができる。このため、蓄熱媒体の有効エネルギが増大し、上述した条件式(1)が満足されることになる。
【0031】
上述のように、第1の実施の形態では、
図1のようにヒートポンプユニット30を設けて低温側の蓄熱媒体から吸熱して高温側の蓄熱媒体へ放熱することにより、蓄熱媒体に蓄熱した圧縮熱をより効率良く回収して膨張前の圧縮空気へ熱移送することができる。その結果、膨張機10,11に供給される圧縮空気をより高温(約90℃)とすることができ、電力回収効率の向上を図ることができる。
【0032】
図2の比較例のように、CAES装置100にヒートポンプユニット30を設けない場合には、膨張機10,11に供給される圧縮空気は70~90℃の蓄熱媒体と熱交換して約70℃に加熱される。一方、本実施の形態では、約100℃の蓄熱媒体と熱交換することで、圧縮空気は約90℃に加熱される。この場合、熱交換器26,27から流出する圧縮空気の昇温速度は、蓄熱媒体の温度が高い方が速い。そのため、放電動作開始時に蓄熱媒体の供給が開始されて熱交換器26,27が温められ、膨張機10,11に供給される圧縮空気の温度が
図2の場合の約70℃となるタイミングは、言い換えると、発電量が
図2の場合の発電量と同じ値に達するタイミングは、
図2の場合よりも早くなる。すなわち、電力需要変動への応答性の向上が図れる。
【0033】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)の概略構成を示す図である。以下では、第1の実施の形態と同様の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
図3に示す第2の実施の形態のCAES装置1Aでは、ヒートポンプユニット30は、冷媒圧縮機31、膨張弁32、2つの放熱器34a,34bおよび蒸発器35を備えている。放熱器34aは、熱交換器26と膨張機10との間の圧縮空気の経路に設けられている。放熱器34bは、熱交換器27と膨張機11との間の圧縮空気の経路に設けられている。蒸発器35は、
図1の場合と同様に、熱交換器26,27と蓄熱タンク22との間の低温側の蓄熱媒体経路に設けられている。
【0035】
ヒートポンプユニット30は、冷媒圧縮機31にて圧縮された冷媒が2つの放熱器34a,34bに分流されてそれぞれ放熱し、その後、再び合流して膨張弁32にて減圧されて蒸発器35に流入し、蒸発器35で吸熱して冷媒圧縮機31に戻る冷凍サイクルを構成している。第2の実施の形態では、放熱器34a,34bに流入する冷媒の温度は約130℃に設定される。その他の構成は
図1のCAES装置1の構成と同様である。
【0036】
次いで、CAES装置1Aの動作について説明する。なお、蓄熱媒体には、水、加圧水、鉱物油系またはグリコール系等の蓄熱媒体を用いることができるが、以下では、蓄熱媒体として水を用いる場合を例に説明する。CAES装置1Aにおける充電動作および放電動作の内、充電動作に関しては
図1のCAES装置1の場合と同様なので、以下では放電動作について説明する。
【0037】
(放電動作)
放電動作時には、制御装置40は、移送ポンプ28およびヒートポンプユニット30を動作させるとともに、蓄圧タンク8に貯蔵されている低温高圧の圧縮空気を熱交換器26に供給する。移送ポンプ28を動作させると、高温側の蓄熱タンク21に貯蔵されている蓄熱媒体が各熱交換器26,27に供給される。蓄熱タンク21から各熱交換器26,27に供給される蓄熱媒体の温度は、約70~90℃程度である。蓄圧タンク8から熱交換器26に供給された低温高圧の圧縮空気は、熱交換器26において蓄熱媒体と熱交換することにより、約70℃に温度が上昇する。一方、熱交換器26で熱交換した後の蓄熱媒体の温度は約40℃となり、ヒートポンプユニット30の蒸発器35に流入する。
【0038】
熱交換器26を通過した圧縮空気は放熱器34aに流入し、高温の冷媒と熱交換することで温度がさらに上昇する。上述したように、放熱器34aに流入する冷媒の温度は約130℃に設定されているので、冷媒と熱交換して膨張機10に流入する圧縮空気の温度は約120℃に上昇する。放熱器34aから流出される冷媒の温度は、圧縮空気との熱交換により約80℃に低下する。放熱器34aから流出された約80℃の冷媒は膨張弁32へ戻る。
【0039】
1段目の膨張機10に流入した約120℃の圧縮空気は、膨張機10で1段目の断熱膨張を行うことで膨張機10を駆動する。その断熱膨張により圧力および温度が低下した圧縮空気は熱交換器27に流入し、蓄熱媒体との熱交換により温度が約70℃に上昇する。一方、熱交換器27で熱交換した後の蓄熱媒体の温度は約40℃となり、熱交換器26からの蓄熱媒体と合流した後にヒートポンプユニット30の蒸発器35に流入する。
【0040】
熱交換器27を通過した圧縮空気は放熱器34bに流入し、高温の蓄熱媒体と熱交換することで温度がさらに上昇する。上述したように、放熱器34bに流入する冷媒の温度は約130℃に設定されているので、冷媒と熱交換して膨張機10に流入する圧縮空気の温度は約120℃に上昇する。2段目の膨張機11に流入した約120℃の圧縮空気は、膨張機11で2段目の断熱膨張を行うことで膨張機11を駆動する。膨張機11により断熱膨張された空気は低温低圧の状態となり、膨張機11の吐出口より大気開放される。このように、放熱器34a,34bにより加熱された圧縮空気により膨張機10,11を駆動することで発電機12,13による発電が行われ、パワーコンディショナ14を経てグリッド電力3に供給される。
【0041】
ヒートポンプユニット30においては、放熱器34bから流出される冷媒は、圧縮空気との熱交換により約80℃に温度が低下し、放熱器34aから流出された冷媒と合流した後に膨張弁32へ戻る。放熱器34a,34bから流出された約80℃の冷媒は、膨張弁32で膨張することにより温度が約20℃に低下して、蒸発器35に流入する。蒸発器35において、約20℃の冷媒は、熱交換器26,27から流入する約40℃の蓄熱媒体との熱交換により蒸発する。蓄熱媒体から吸熱して蒸発した冷媒は、冷媒圧縮機31により圧縮されて高温となり、放熱器34a,34bにおいて圧縮空気へ放熱する。その結果、圧縮空気の温度は上述したように約70℃から約120℃に加熱される。
【0042】
前述した第1の実施の形態では、低温側の蓄熱媒体の熱を高温側の蓄熱媒体に移送し、その高温側の蓄熱媒体により圧縮空気を加熱する構成とされている。蓄熱媒体に水を使用する場合には温度を約100℃までしか昇温させることができないので、圧縮空気を約90℃程度までしか加熱することができない。
【0043】
一方、第2の実施の形態では、低温側の蓄熱媒体から吸熱した熱を、冷媒が流通する放熱器34a,34bにより圧縮空気に直接放熱するようにしている。そのため、膨張機10,11に流入する圧縮空気は放熱器34a,34bにより加熱され、第1の実施の形態の場合よりも高温の約120℃まで加熱されることになる。すなわち、ヒートポンプユニット30で回収した熱エネルギを蓄熱媒体を介して圧縮空気へ放熱する
図1の構成に比べて熱効率が向上し、膨張機10,11に流入する圧縮空気をより高温とすることが可能になり、発電電力の増加による電力回収効率の向上を図ることができる。また、第2の実施の形態では、放熱器34a,34bによる圧縮空気の加熱温度をより高温にできるので、膨張前の圧縮空気の昇温が早く、電力需要の変動への応答性をより向上させることができる。
【0044】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)の概略構成を示す図である。
図4に示すCAES装置1Bは、
図3に示した構成における熱交換器26,27を三流体熱交換器26a,27aで置き換えたものである。そして、放熱器34aから流出した冷媒を三流体熱交換器26aへ流入させ、放熱器34bから流出した冷媒を三流体熱交換器27aへ流入させるようにした。以下では、第2の実施の形態と同様の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0045】
三流体熱交換器26a,27aは、放熱側の流体経路として蓄熱媒体が流れる流路と冷媒が流れる流路とを備え、吸熱側の流体経路として圧縮空気が流れる流路を備えている。すなわち、三流体熱交換器26a,27aでは、蓄熱媒体および冷媒から圧縮空気へ熱が移動することで、圧縮空気が加熱される。そのため、三流体熱交換器26a,27aは蓄熱ユニット20の要素でもあるし、ヒートポンプユニット30の要素でもあると言える。その他の構成は
図3に示す構成と同様である。なお、蓄熱媒体には、水、加圧水、鉱物油系またはグリコール系等の蓄熱媒体を用いることができるが、以下では、蓄熱媒体として水を用いる場合を例に説明する。
【0046】
冷媒圧縮機31で圧縮された高温の冷媒は、分流されて放熱器34a,34bのそれぞれに導かれる。放熱器34aで圧縮空気と熱交換した冷媒は三流体熱交換器26aに流入し、放熱器34bで圧縮空気と熱交換した冷媒は三流体熱交換器27aに流入する。三流体熱交換器26aを通過した冷媒と三流体熱交換器27aを通過した冷媒は、合流した後に膨張弁32で断熱膨張することで温度が低下する。断熱膨張後の冷媒は、蒸発器35で低温側の蓄熱媒体から吸熱して蒸発する。
【0047】
冷媒圧縮機31で圧縮された冷媒の温度は約130℃であり、放熱器34aで圧縮空気と熱交換することで冷媒温度は約80℃に低下し、さらに、三流体熱交換器26aで圧縮空気と熱交換することで冷媒温度は約40℃となる。放熱器34bおよび三流体熱交換器27aを通過した冷媒の温度についても同様で、放熱器34bの出口で約80℃、3流体熱交換器27aの出口で約40℃である。なお、蓄熱媒体の三流体熱交換器26a,27aの入り口および出口での温度は、約80℃(入り口)および約40℃(出口)である。三流体熱交換器26a,27aから流出した約40℃の冷媒は膨張弁32で断熱膨張して温度が低下する。
【0048】
前述した第2の実施の形態の
図3に示す構成おいては、膨張弁32に流入する冷媒の温度は約80℃であったが、
図4に示す構成では約40℃とより低温となっている。そのため、断熱膨張後の冷媒温度をより低温にすることができ、蒸発器35における蓄熱媒体から冷媒への吸熱量(熱回収)をより大きくすることができる。すなわち、放熱器34a,34bで圧縮空気を約120℃に加熱する場合における冷媒圧縮機31への入力電力ΔE1(条件式(1)を参照)を、より小さくすることができる。その結果、電力回収効率をさらに向上させることができる。また、放熱器34a,34bで圧縮空気をさらに加熱することで、膨張機10,11に流入する圧縮空気の温度をより高くできるので圧縮空気の昇温速度が速くなり、電力需要の変動への応答性の向上を図ることができる。
【0049】
(第4の実施の形態)
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)の概略構成を示す図である。
図5に示すCAES装置1Cは、
図1に示したCAES装置1と比較してヒートポンプユニット30の配置が異なる。また、CAES装置1Cでは、蓄熱媒体は100℃以上の高温になることがあるため、鉱物油系またはグリコール系の蓄熱媒体、または加圧水を用いる。その他の構成は
図1に示すCAES装置1と同様であり、同様の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0050】
CAES装置1Cでは、ヒートポンプユニット30の蒸発器35を蓄熱タンク22と熱交換器24,25との間の低温側の蓄熱媒体経路に配置し、放熱器34を熱交換器24,25と蓄熱タンク21との間の高温側の蓄熱媒体経路に配置する。蓄熱タンク22に貯蔵された低温の蓄熱媒体は、ヒートポンプユニット30の蒸発器35を通過してから並列接続された熱交換器24,25に供給される。熱交換器24,25から流出された蓄熱媒体は、ヒートポンプユニット30の放熱器34を通過してから蓄熱タンク21に貯蔵される。
【0051】
次に、CAES装置1Cにおける充電動作および放電動作について説明する。
(充電動作)
充電動作時においては、制御装置40は、モータ4,5、ヒートポンプユニット30および移送ポンプ29を動作させる。モータ4,5の動作により、圧縮機6および圧縮機7による大気の2段圧縮が行われる。また、移送ポンプ29の動作により、低温側の蓄熱タンク22に貯蔵されている約40℃の蓄熱媒体がヒートポンプユニット30の蒸発器35に流入する。蓄熱タンク22から流出した蓄熱媒体はヒートポンプユニット30の蒸発器35において冷媒へと吸熱され、蓄熱媒体の温度は約40℃から約20℃に低下する。蒸発器35を流出した約20℃の蓄熱媒体は、分流されて各熱交換器24,25に流入する。
【0052】
圧縮機6により断熱圧縮された高温の圧縮空気は吐出口より吐出されて熱交換器24に流入し、熱交換器24に供給される約20℃の蓄熱媒体と熱交換を行う。この熱交換により、蓄熱媒体の温度は約100℃となる。熱交換器24において熱交換した圧縮空気は常温程度の低温となり、熱交換器24の下流側に設けられた圧縮機7により吸入される。圧縮機7に吸入された常温の圧縮空気は、圧縮機7により2段目の断熱圧縮が行われ、高温高圧の圧縮空気となる。圧縮機7から吐出された圧縮空気は熱交換器25に導入され、熱交換器25に供給される約20℃の蓄熱媒体と熱交換を行う。この熱交換により、蓄熱媒体の温度は約100℃となる。熱交換器25において熱交換した圧縮空気は常温程度の低温となり、蓄圧タンク8にて貯蔵される。
【0053】
熱交換器24,25から流出された蓄熱媒体は、合流した後にヒートポンプユニット30の放熱器34に流入する。放熱器34では、熱交換により冷媒から蓄熱媒体へと放熱され、蓄熱媒体の温度は約120℃に上昇する。約120℃に加熱された蓄熱媒体は、高温側の蓄熱タンク21に貯蔵される。
【0054】
(放電動作)
放電動作時には、制御装置40は、蓄圧タンク8に貯蔵された低温高圧の圧縮空気を熱交換器26に供給するとともに、移送ポンプ28を駆動して高温側の蓄熱タンク21の蓄熱媒体を熱交換器26,27に供給する。なお、熱交換器26,27に供給される蓄熱媒体の温度は、蓄熱タンク21における熱散逸により120℃よりも若干低くなる。
【0055】
熱交換器26では、高温側の蓄熱媒体と圧縮空気との熱交換により圧縮空気の温度は約100℃に上昇し、蓄熱媒体の温度は約40℃に低下する。熱交換器26で約100℃に加熱された圧縮空気は膨張機10に吸入され、1段目の断熱膨張を行うことで膨張機10を駆動する。膨張機10により断熱膨張された空気は熱交換器27に供給され、そこで蓄熱媒体と熱交換することにより約100℃に加熱される。熱交換器27で加熱された空気は膨張機11に吸入されて2段目の断熱膨張を行い、膨張機11を駆動する。膨張機11により断熱膨張された空気は低温低圧の状態となり、膨張機11の吐出口から大気へと放出される。圧縮空気により膨張機10,11が駆動され、発電機12,13による発電が行われる。発電された電力は、パワーコンディショナ14を経てグリッド電力3に供給される。
【0056】
前述した第1の実施の形態では、蓄熱媒体として沸点が100℃の水を使用し、ヒートポンプユニット30により、熱交換器26,27から流出する低温側の蓄熱媒体から熱交換器26,27に流入する蓄熱媒体へ熱移送することで、膨張機10,11に供給される空気の温度を約90℃に加熱するようにした。一方、第4の実施の形態では、加圧水等の沸点の高い蓄熱媒体を使用するとともに、ヒートポンプユニット30によって低温側の蓄熱媒体から高温側の蓄熱媒体へ熱移送することで、より高温(約120℃)の蓄熱媒体を蓄熱タンク21に貯蔵するようにしている。蓄熱タンク21に貯蔵されたより高温(約120℃)の蓄熱媒体を熱交換器26,27に供給することで、膨張機10,11に供給される圧縮空気の温度を約100℃に加熱するようにした。
【0057】
そのため、膨張機10,11に供給される圧縮空気の温度を第1の実施の形態の場合よりも高温にすることができ、電力回収効率の向上を図ることができる。また、熱交換器26,27に流入する蓄熱媒体の温度をより高温とすることができるので、熱交換による圧縮空気の昇温に要する時間を短縮することができ、電力需要変動への応答性の向上が図れる。
【0058】
(第5の実施の形態)
図6は、本発明の第5の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)の概略構成を示す図である。
図6に示すCAES装置1Dは、
図1に示すCAES装置1と比較した場合、圧縮機ユニット2Aの構成およびヒートポンプユニット30の配置が異なる。その他の構成は
図1に示す構成と同様であり、同様の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0059】
図6に示すCAES装置1Dにおいては、圧縮機ユニット2Aは複数の蓄圧タンク8a,8b,8cを備え、さらに、圧縮空気の流通経路を切り替えるための開閉バルブV1,V2,V3,V4を備える。2段目の圧縮機7の吐出口は、開閉バルブV1を介して熱交換器25に接続されるとともに、開閉バルブV2を介して高温高圧の圧縮空気が貯蔵される蓄圧タンク8aに接続される。蓄圧タンク8aの出口は、開閉バルブV3およびヒートポンプユニット30の放熱器34を介して膨張機10の吸入口に接続される。
【0060】
熱交換器25における圧縮空気の出口は、低温高圧の圧縮空気が貯蔵される蓄圧タンク8bおよび蓄圧タンク8cに接続されている。蓄圧タンク8bと蓄圧タンク8cとは配管により連通されている。蓄圧タンク8cは、開閉バルブV4および膨張機ユニット2Bの熱交換器26を介して、膨張機10の吸入口に接続される。なお、高温高圧の蓄熱媒体が貯蔵される蓄圧タンク8aでは熱が散逸しやすいので、蓄圧タンク8aの容積は、低温高圧の圧縮空気が貯蔵される蓄圧タンク8b,8cの合計の容積よりも小さく設定されている。
【0061】
ヒートポンプユニット30の蒸発器35は、熱交換器26,27から蓄熱タンク22へ戻る低温側の蓄熱媒体経路に設けられている。一方、放熱器34は、蓄圧タンク8aから膨張機10に供給される高温高圧の圧縮空気の経路に設けられている。ヒートポンプユニット30は、蒸発器35で低温側の蓄熱媒体から吸熱して放熱器34により圧縮空気に放熱する。それにより、蓄圧タンク8aから膨張機10に供給される高温高圧の圧縮空気は、放熱器34により加熱されてさらに高温となる。
【0062】
次いで、CAES装置1Dにおける充電動作および放電動作について説明する。なお、蓄熱媒体には、水、加圧水、鉱物油系またはグリコール系等の蓄熱媒体を用いることができるが、以下では、蓄熱媒体として水を用いる場合を例に説明する。
(充電動作)
充電動作においては、制御装置40は、まず、開閉バルブV1,V2を開く。なお、CAES装置1Dの動作停止状態においては、開閉バルブV1~V4は全て閉状態とされている。次いで、制御装置40は、モータ4,5により圧縮機6,7を駆動するとともに、移送ポンプ29を駆動して蓄熱タンク22に貯蔵されている蓄熱媒体を熱交換器24,25に供給する。
【0063】
圧縮機6により断熱圧縮された高温の圧縮空気は吐出口より吐出されて熱交換器24に流入し、熱交換器24に供給される約20℃の蓄熱媒体と熱交換を行う。この熱交換により蓄熱媒体は約100℃と昇温され、熱交換器24から流出される。熱交換器24において熱交換した圧縮空気は常温程度の低温となり、熱交換器24の下流側に設けられた圧縮機7により吸入される。圧縮機7に吸入された常温の圧縮空気は、圧縮機7により2段目の断熱圧縮が行われ、高温高圧の圧縮空気となる。
【0064】
圧縮機7から吐出された高温高圧状態の圧縮空気は、開閉バルブV2を通して蓄圧タンク8aに流入するとともに、開閉バルブV1を通して熱交換器25に流入する。なお、圧縮機7にて2段目の断熱圧縮が行われて吐出される圧縮空気の温度は約130℃程度なので、蓄圧タンク8aに貯蔵される圧縮空気の温度は約120℃程度となる。また、熱交換器25に導入された圧縮空気は、約20℃の蓄熱媒体と熱交換を行い常温程度となり、蓄圧タンク8b、8cに貯蔵される。また、熱交換器25から流出される蓄熱媒体の温度は、圧縮空気との熱交換により約100℃となる。熱交換器25から流出された蓄熱媒体は、熱交換器24から流出された蓄熱媒体と合流した後、蓄熱タンク21に流入して貯蔵される。
【0065】
次いで、蓄圧タンク8aの圧力が予め設定した規定圧力値に達したならば、開閉バルブV2を閉じて蓄圧タンク8aへの圧縮空気の貯蔵を終了する。その結果、圧縮機7から吐出される高温高圧の圧縮空気の全てが開閉バルブV1を通って熱交換器25へ流入する。熱交換器25では高温の圧縮空気から蓄熱媒体へと熱が移動し、蓄熱媒体は約100℃に昇温され、圧縮空気は常温程度の低温となる。熱交換器25から流出される低温高圧の圧縮空気は、蓄圧タンク8bおよび蓄圧タンク8cに流入し、貯蔵される。一方、熱交換器25から流出される高温(約100℃)の蓄熱媒体は、熱交換器24から流出された高温の蓄熱媒体と合流した後、蓄熱タンク21に流入して貯蔵される。そして、蓄圧タンク8b,8cの圧力が規定圧力値に達したならば、制御装置40は、開閉バルブV1を閉じるとともに移送ポンプ28を停止して充電動作を終了する。
【0066】
(放電動作)
放電動作開始により、制御装置40は、移送ポンプ28およびヒートポンプユニット30を動作させ、さらに開閉バルブV3を開く。移送ポンプ28の動作により、蓄熱タンク21に貯蔵されている高温の蓄熱媒体が熱交換器26,27に供給される。開閉バルブV3が開状態とされると、蓄圧タンク8aに貯蔵されている約120℃の圧縮空気が、ヒートポンプユニット30の放熱器34を介して膨張機10に供給される。蓄圧タンク8aからの圧縮空気は、放熱器34における高温の冷媒との熱交換により約150℃程度の高温に加熱された後に、膨張機10に供給される。
【0067】
膨張機10に供給された約150℃の圧縮空気は、膨張機10で断熱膨張されて温度が低下する。温度が低下した圧縮空気は、熱交換器27により約70℃に加熱された後に2段目の膨張機11に供給される。そして、膨張機11により断熱膨張された空気は低温低圧の状態となり、膨張機11の吐出口より大気開放される。圧縮空気により膨張機10,11が駆動され、発電機12,13による発電が行われる。
【0068】
蓄圧タンク8aの圧力が発電に必要な圧力よりも低下したならば、または、所定の暖機時間が経過したならば、開閉バルブV3を閉じるとともに開閉バルブV4を開き、さらにヒートポンプユニット30を停止する。それにより、圧縮空気の供給源が蓄圧タンク8aから蓄圧タンク8b,8cに切り替えられる。蓄圧タンク8b,8cの低温高圧の圧縮空気は、開閉バルブV4を通過して熱交換器26に流入する。なお、蓄圧タンク8aの容積は、圧力が発電に必要な圧力よりも低下するまでの時間が所定の暖機時間よりも十分長くなるように設定されている。
【0069】
熱交換器26に流入した圧縮空気は、蓄熱媒体との熱交換により約70℃に加熱され、膨張機10で断熱膨張して膨張機10を駆動する。膨張機10により断熱膨張されて低温となった空気は、熱交換器27において高温の蓄熱媒体と熱交換することにより、再び70℃程度の高温となり膨張機11に供給される。膨張機11に供給された圧縮空気は、膨張機11において2段目の断熱膨張を行うことにより低温低圧の状態となり、膨張機11の吐出口より大気開放される。
【0070】
上述した暖機時間について説明する。熱交換器26,27においては、蓄熱媒体と圧縮空気との間で熱交換が行われる。その際、蓄熱媒体の供給が開始された直後は熱交換器26,27が十分に温まっていないため、供給される圧縮空気が低温高圧の場合には、熱交換器26,27において圧縮空気を約70℃という高温まで加熱することができない。そのため、膨張機10,11を既定回転数まで回転させることができず、発電機12,13による発電が十分に行えない。ここでは、熱交換器26,27に蓄熱媒体の供給を開始してから、熱交換器26,27が十分に温まって圧縮空気を約70℃に加熱できる状態になるまでの時間を、暖機時間または暖機期間と呼ぶことにする。
【0071】
本実施の形態では、熱交換器26,27への蓄熱媒体の供給は充電動作開始とともに開始され、その後、暖機時間またはそれよりも長い時間が経過してから圧縮空気の供給源を蓄圧タンク8b,8cに切り替えるようにしている。そのため、圧縮空気の供給源を蓄圧タンク8b,8cに切り替えた際に、熱交換器26,27の暖機不十分による発電電力低下が発生するのを、防止することができる。
【0072】
また、暖機期間を含む放電動作開始時から開閉バルブV4が開に切り替わるまでの期間においては、蓄圧タンク8aに貯蔵されている高温高圧の圧縮空気を放熱器34で約150℃に加熱したものを、膨張機10に供給するようにしている。その結果、膨張機10は、放電動作開始とともに素早く「約150℃の圧縮空気を供給した場合の回転数」に立ち上がることができる。すなわち、電力需要の変動への応答性の向上を図ることができる。また、蓄圧タンク8aに貯蔵されている圧縮空気による放電動作期間においては、膨張機10には約150℃の圧縮空気が供給されるので、約70℃の圧縮空気が膨張機10,11に供給される
図2の構成に比べて電力回収効率の向上を図ることができる。
【0073】
なお、上述した充電動作では、充電開始とともに開閉バルブV1,V2を開状態にして、蓄圧タンク8aへの高温高圧の圧縮空気の貯蔵と、蓄圧タンク8b,8cへの低温高圧の圧縮空気の貯蔵とを同時に開始した。しかし、開閉バルブV1を閉じるとともに開閉バルブV2を開いて蓄圧タンク8aへの高温圧縮空気の貯蔵を行った後に、開閉バルブV1を開くとともに開閉バルブV2を閉じて蓄圧タンク8b,8cへの低温圧縮空気の貯蔵を行うようにしても良い。
【0074】
例えば、風力発電での電力平準化を行う場合、風向きの変化等により一日のうちに何回も発電が必要になり、一回の発電動作の運転時間も短時間となる。そのため、立ち上がりの温度が温まるまでの低効率での運転の影響が大きくなる。そのような場合、充電動作時に、開閉バルブV1を閉じるとともに開閉バルブV2を開いて蓄圧タンク8aへの高温圧縮空気の貯蔵を行って、まず、蓄圧タンク8aを規定圧力値まで貯蔵しておくことで、その後に繰り返される発電動作において、蓄圧タンク8aに貯蔵された高温高圧の圧縮空気だけで発電に対応するようにしても良い。このように、電力需要の変動が大きく、比較的短周期となる風力発電の供給割合が大きいグリッド電力での電力平準化に適用すると効果的である。一方、太陽光発電の場合、放電動作は1日に1回程度の頻度であるため、いずれのバルブ開閉パターンであっても運用可能である。
【0075】
(第6の実施の形態)
図7は、本発明の第6の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)の概略構成を示す図である。
図7に示すCAES装置1Eでは、蓄圧タンク8b,8cは、開閉バルブV4を介して熱交換器26に接続されている。熱交換器26の圧縮空気流出側は、開閉バルブV5を介して開閉バルブV3と放熱器34との間の圧縮空気供給ラインに接続されている。その他の構成は
図6に示したCAES装置1Dと同様である。
【0076】
上述したように、
図6に示したCAES装置1Dでは、蓄圧タンク8aから膨張機10に供給される高温高圧の圧縮空気を放熱器34で加熱して、より高温の圧縮空気を膨張機10に供給するようにしている。一方、
図7に示すCAES装置1Eでは、蓄圧タンク8aから膨張機10に供給される高温高圧の圧縮空気だけでなく、蓄圧タンク8b,8cから膨張機10に供給される低温高圧の圧縮空気に関しても、放熱器34で加熱してから膨張機10に供給するようにした。CAES装置1Eの動作については、充電動作は
図6に示したCAES装置1Dの場合と同様であり、以下では、放電動作について説明する。
【0077】
(放電動作)
放電動作開始により、制御装置40は、移送ポンプ28およびヒートポンプユニット30を動作させ、さらに開閉バルブV3を開くとともに開閉バルブV4,V5を閉じる。移送ポンプ28の動作により、蓄熱タンク21に貯蔵されている高温の蓄熱媒体が熱交換器26,27に供給される。開閉バルブV3が開状態とされると、蓄圧タンク8aに貯蔵されている高温高圧の圧縮空気が、ヒートポンプユニット30の放熱器34を介して膨張機10に供給される。蓄圧タンク8aからの高温高圧の圧縮空気は、放熱器34における高温の冷媒との熱交換によりさらに昇温された後に、膨張機10に供給される。その結果、蓄圧タンク8aに貯蔵されている圧縮空気による発電が行われる。
【0078】
次いで、蓄圧タンク8aの圧力が発電に必要な圧力よりも低下したならば、または、所定の暖機時間が経過したならば、制御装置40は、開閉バルブV3を閉じるとともに開閉バルブV4,V5を開く。それにより、圧縮空気の供給源が、蓄圧タンク8aから蓄圧タンク8b,8cに切り替えられる。蓄圧タンク8b,8cの低温高圧の圧縮空気は、開閉バルブV4を通過して熱交換器26に流入する。熱交換器26に流入した圧縮空気は蓄熱媒体との熱交換により昇温された後、開閉バルブV5を介してヒートポンプユニット30の放熱器34に流入する。熱交換器26で昇温された蓄圧タンク8b,8cからの圧縮空気は、放熱器34における高温の冷媒との熱交換によりさらに昇温された後に、膨張機10に供給される。その結果、蓄圧タンク8b,8cに貯蔵されている圧縮空気による発電が行われる。
【0079】
このように、CAES装置1Eでは、蓄圧タンク8aから膨張機10に供給される高温高圧の圧縮空気を放熱器34で加熱するだけでなく、蓄圧タンク8b,8cから膨張機10に供給される低温高圧の圧縮空気に関しても、熱交換器26において蓄熱媒体で加熱した後に放熱器34でさらに加熱するようにした。本実施の形態では、CAES装置1Dの場合と同様に、圧縮空気の供給源を蓄圧タンク8b,8cに切り替えた際に、熱交換器26,27の暖機不十分による発電電力低下が発生するのを防止することができる。また、膨張機10は放電動作開始とともに素早く立ち上がることが可能となり、電力需要の変動への応答性の向上を図ることができる。さらに、蓄圧タンク8aの圧縮空気による放電動作期間だけでなく、蓄圧タンク8b,8cの低温高圧の圧縮空気による放電動作期間においても、電力回収効率の向上を図ることができる。
【0080】
(第7の実施の形態)
図8は、本発明の第7の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)の概略構成を示す図である。
図8に示すCAES装置1Fでは、蓄圧タンク8aは、開閉バルブV3を介して膨張機10に接続されている。蓄圧タンク8b,8cは、開閉バルブV4を介して熱交換器26に接続されている。熱交換器26の圧縮空気流出側は放熱器34に接続されている。放熱器34の圧縮空気流出側は、開閉バルブV6を介して膨張機10に接続されている。その他の構成は
図6に示したCAES装置1Dと同様である。
【0081】
上述したように、
図6に示したCAES装置1Dでは、蓄圧タンク8aから膨張機10に供給される高温高圧の圧縮空気を放熱器34で加熱して、より高温の圧縮空気を膨張機10に供給するようにしている。一方、
図8に示すCAES装置1Fでは、蓄圧タンク8b,8cから膨張機10に供給される低温高圧の圧縮空気に関してのみ、放熱器34で加熱してから膨張機10に供給するようにした。CAES装置1Fの動作については、充電動作は
図6に示したCAES装置1Dの場合と同様であり、以下では、放電動作について説明する。
【0082】
(放電動作)
放電動作開始により、制御装置40は、移送ポンプ28およびヒートポンプユニット30を動作させ、さらに開閉バルブV3を開くとともに開閉バルブV4,V6を閉じる。移送ポンプ28の動作により、蓄熱タンク21に貯蔵されている高温の蓄熱媒体が熱交換器26,27に供給される。開閉バルブV3が開状態とされると、蓄圧タンク8aに貯蔵されている高温高圧の圧縮空気が膨張機10に供給される。その結果、蓄圧タンク8aに貯蔵されている圧縮空気による発電が行われる。
【0083】
次いで、蓄圧タンク8aの圧力が発電に必要な圧力よりも低下したならば、または、所定の暖機時間が経過したならば、制御装置40は、開閉バルブV3を閉じるとともに開閉バルブV4,V6を開く。それにより、圧縮空気の供給源が、蓄圧タンク8aから蓄圧タンク8b,8cに切り替えられる。蓄圧タンク8b,8cの低温高圧の圧縮空気は、開閉バルブV4を通過して熱交換器26に流入する。熱交換器26に流入した圧縮空気は蓄熱媒体との熱交換により昇温された後、ヒートポンプユニット30の放熱器34に流入する。熱交換器26で昇温された蓄圧タンク8b,8cからの圧縮空気は、放熱器34における高温の冷媒との熱交換によりさらに昇温された後に、開閉バルブV6を介して膨張機10に供給される。その結果、蓄圧タンク8b,8cに貯蔵されている圧縮空気による発電が行われる。
【0084】
このように、CAES装置1Fでは、蓄圧タンク8b,8cから膨張機10に供給される低温高圧の圧縮空気に関して、熱交換器26において蓄熱媒体で加熱した後に、放熱器34でさらに加熱してから膨張機10に供給するようにした。そのため、蓄圧タンク8b,8cの低温高圧の圧縮空気を用いた放電動作期間において、電力回収効率の向上を図ることができる。また、圧縮空気の供給源を蓄圧タンク8b,8cに切り替えた際には、既に熱交換器26,27が暖機されているので、切り替え時に発電電力低下が発生するのを防止することができる。さらに、放電開始時に蓄圧タンク8aに貯蔵された高温高圧の圧縮空気が膨張機10に供給されるので、膨張機10は放電動作開始とともに素早く立ち上がることが可能となり、電力需要の変動への応答性の向上を図ることができる。
【0085】
(第8の実施の形態)
図9は、本発明の第8の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)の概略構成を示す図である。
図9に示すCAES装置1Gにおいて、蓄圧タンク8aは、開閉バルブV3を介して膨張機10に接続される。蓄圧タンク8b,8cは、開閉バルブV4を介して放熱器34aに接続される。放熱器34aの圧縮空気流出側は熱交換器26に接続される。熱交換器26の圧縮空気流出側は、開閉バルブV7を介して膨張機10に接続される。膨張機10の吐出側は、開閉バルブV8を介して熱交換器27に接続されると共に、開閉バルブV9を介して放熱器34bに接続される。放熱器34bの圧縮空気流出側は熱交換器27に接続される。
【0086】
ヒートポンプユニット30の冷媒圧縮機31から吐出された冷媒は、分流されて放熱器34a,34bに流入する。放熱器34a,34bから流出した冷媒は、合流した後に膨張弁32に流入する。膨張弁32で断熱膨張された冷媒は、分流されて蒸発器35a,35bに流入する。蒸発器35a,35bから流出された冷媒は、合流した後に冷媒圧縮機31へ戻る。
【0087】
高温側の蓄熱タンク21の蓄熱媒体は、移送ポンプ28によって熱交換器26,27に供給される。熱交換器26,27を流出した蓄熱媒体は、合流した後に蒸発器35a,35bにそれぞれ流入する。蒸発器35a,35bから流出された蓄熱媒体は、合流した後に低温側の蓄熱タンク22に戻る。その他の構成は
図6に示したCAES装置1Dと同様である。CAES装置1Gの動作については、充電動作は
図6に示したCAES装置1Dの場合と同様であり、以下では、放電動作について説明する。
【0088】
(放電動作)
放電動作開始により、制御装置40は、移送ポンプ28およびヒートポンプユニット30を動作させ、さらに開閉バルブV3,V8を開くとともに開閉バルブV4,V7,V9を閉じる。移送ポンプ28の動作により、蓄熱タンク21に貯蔵されている高温の蓄熱媒体が熱交換器26,27に供給され、熱交換器26,27から流出する蓄熱媒体は蒸発器35a,35bを通過して蓄熱タンク22に戻る。開閉バルブV3が開状態とされると、蓄圧タンク8aに貯蔵されている高温高圧の圧縮空気が膨張機10に供給される。膨張機10で断熱膨張した空気は、開閉バルブV8を通って熱交換器27に流入する。熱交換器27において蓄熱媒体により昇温された空気は、膨張機11で2段目の断熱膨張が行われ大気に放出される。その結果、蓄圧タンク8aに貯蔵されている圧縮空気による発電が行われる。
【0089】
次いで、蓄圧タンク8aの圧力が発電に必要な圧力よりも低下したならば、または、所定の暖機時間が経過したならば、制御装置40は、開閉バルブV3,V8を閉じるとともに開閉バルブV4,V7,V9を開く。それにより、圧縮空気の供給源が、蓄圧タンク8aから蓄圧タンク8b,8cに切り替えられる。蓄圧タンク8b,8cの低温高圧の圧縮空気は、開閉バルブV4を通過して放熱器34aに流入する。圧縮空気は、放熱器34aで加熱されて昇温した後に熱交換器26に流入する。圧縮空気は、熱交換器26において蓄熱媒体により加熱されて温度がさらに上昇し、開閉バルブV7を介して膨張機10に供給される。膨張機10で断熱膨張した圧縮空気は、開閉バルブV9を通過して放熱器34bに流入する。放熱器34bで冷媒により加熱されて昇温した圧縮空気は熱交換器27に流入し、熱交換器27において蓄熱媒体により加熱されて温度がさらに上昇する。熱交換器27から流出した圧縮空気は、膨張機11に供給されて2段目の断熱膨張が行われる。このようにして、蓄圧タンク8b,8cに貯蔵されている圧縮空気による発電が行われる。
【0090】
CAES装置1Gでは、放電開始時に蓄圧タンク8aに貯蔵された高温高圧の圧縮空気が膨張機10に供給されるので、膨張機10は放電動作開始とともに素早く立ち上がることが可能となり、電力需要の変動への応答性の向上を図ることができる。また、圧縮空気の供給源を蓄圧タンク8b,8cに切り替えた際には、既に熱交換器26,27が暖機されているので、切り替え時に発電電力低下が発生するのを防止することができる。さらに、蓄圧タンク8b,8cの低温高圧な圧縮空気により放電動作を行う際には、放熱器34aで加熱された空気をさらに熱交換器26で加熱して膨張機10に供給し、同様に、放熱器34bで加熱された空気をさらに熱交換器27で加熱して膨張機11に供給しているので、電力回収効率の向上を図ることができる。
【0091】
(第9の実施の形態)
図10は、本発明の第9の実施の形態に係る圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)の概略構成を示す図である。
図10に示すCAES装置1Hは、前述した
図5に示すCAES装置1Cのようにヒートポンプユニット30を充電動作時に使用する構成において、蓄圧タンク8に代えて複数の蓄圧タンク8a、8b、8cを備える構成に変形したものである。また、蓄熱媒体は100℃以上の高温になることがあるため、蓄熱媒体には加圧水や鉱物油系またはグリコール系等の蓄熱媒体を用いる。
【0092】
(充電動作)
充電動作においては、制御装置40は、まず、開閉バルブV1,V2を開く。そして、グリッド電力3からの入力電力により、モータ4,5、ヒートポンプユニット30および移送ポンプ29を駆動する。それにより、圧縮機6および圧縮機7による大気の2段圧縮が行われる。また、移送ポンプ29の駆動により、低温側の蓄熱タンク22に貯蔵されている約40℃の蓄熱媒体が、蒸発器35を介して熱交換器24,25に供給される。蓄熱タンク22から流出された蓄熱媒体は、ヒートポンプユニット30の蒸発器35において冷媒に吸熱され、温度が約40℃から約20℃に低下する。蒸発器35から流出された約20℃の蓄熱媒体は、分流されて各熱交換器24,25に流入する。
【0093】
圧縮機6により断熱圧縮された高温の圧縮空気は吐出口より吐出されて熱交換器24に流入し、熱交換器24に供給される約20℃の蓄熱媒体と熱交換を行う。この熱交換により蓄熱媒体は約100℃に昇温され、熱交換器24から流出される。また、熱交換器24において熱交換した圧縮空気は常温程度の低温となり、熱交換器24の下流側に設けられた圧縮機7により吸入される。圧縮機7に吸入された常温の圧縮空気は、圧縮機7により2段目の断熱圧縮が行われ、高温でより高圧の圧縮空気となる。
【0094】
圧縮機7から吐出された高温高圧状態の圧縮空気は、開閉バルブV2を介して蓄圧タンク8aに貯蔵されるとともに、開閉バルブV1を介して熱交換器25を通過した後に蓄圧タンク8b、8cに貯蔵される。なお、圧縮機7にて2段目の断熱圧縮が行われて吐出される圧縮空気の温度は約130℃程度なので、蓄圧タンク8aに貯蔵される圧縮空気の温度は約120℃程度となる。熱交換器25に導入された圧縮空気は、約20℃の蓄熱媒体と熱交換を行い常温程度となり、蓄圧タンク8b、8cに貯蔵される。また、熱交換器25から流出される蓄熱媒体の温度は、圧縮空気との熱交換により約100℃となる。
【0095】
熱交換器24,25から流出された蓄熱媒体は、合流した後にヒートポンプユニット30の放熱器34に流入する。放熱器34では、熱交換により冷媒から蓄熱媒体へと放熱され、蓄熱媒体の温度は約120℃に上昇する。約120℃に加熱された蓄熱媒体は、高温側の蓄熱タンク21に貯蔵される。
【0096】
次いで、蓄圧タンク8aの圧力が規定圧力値に達したならば、開閉バルブV2を閉じて蓄圧タンク8aへの圧縮空気の貯蔵を終了する。その結果、圧縮機7から吐出される高温高圧の圧縮空気の全てが開閉バルブV1を通って熱交換器25へ流入する。熱交換器25では高温の圧縮空気から蓄熱媒体へと熱が移動し、蓄熱媒体は約100℃に昇温され、圧縮空気は常温程度の低温となる。熱交換器25から流出される低温高圧の圧縮空気は、蓄圧タンク8bおよび蓄圧タンク8cに流入し、貯蔵される。
【0097】
(放電動作)
放電動作開始により、制御装置40は、移送ポンプ28を動作させるとともに開閉バルブV3を開く。移送ポンプ28の動作により、蓄熱タンク21に貯蔵されている高温の蓄熱媒体が熱交換器26,27に供給される。開閉バルブV3が開状態とされると、蓄圧タンク8aに貯蔵されている約120℃の圧縮空気が、ヒートポンプユニット30の放熱器34を介して膨張機10に供給される。膨張機10に供給された約120℃の圧縮空気は、膨張機10で断熱膨張されて温度が低下する。温度が低下した圧縮空気は、熱交換器27により約100℃に加熱された後に2段目の膨張機11に供給される。そして、膨張機11により断熱膨張された空気は低温低圧の状態となり、膨張機11の吐出口より大気開放される。圧縮空気により膨張機10,11が駆動され、発電機12,13による発電が行われる。
【0098】
蓄圧タンク8aの圧力が発電に必要な圧力よりも低下したならば、または、所定の暖機時間が経過したならば、開閉バルブV3を閉じるとともに開閉バルブV4を開いて、圧縮空気の供給源を蓄圧タンク8aから蓄圧タンク8b,8cに切り替える。蓄圧タンク8b,8cからの低温定圧の圧縮空気は、開閉バルブV4を通過して熱交換器26に流入する。熱交換器26に流入した圧縮空気は、蓄熱媒体との熱交換により約70℃に加熱され、膨張機10で断熱膨張して膨張機10を駆動する。膨張機10により断熱膨張されて低温となった空気は、熱交換器27において高温の蓄熱媒体と熱交換することにより、再び70℃程度の高温となり膨張機11に供給される。膨張機11に供給された圧縮空気は、膨張機11において2段目の断熱膨張を行うことにより低温低圧の状態となり、膨張機11の吐出口より大気開放される。
【0099】
本実施の形態では、
図6のCAES装置1Dの場合と同様に、熱交換器26,27への蓄熱媒体の供給は充電動作開始とともに開始され、その後、暖機時間またはそれよりも長い時間が経過してから開閉バルブV4を開いて圧縮空気の供給源を蓄圧タンク8b,8cに切り替えるようにしている。そのため、圧縮空気の供給源を蓄圧タンク8b,8cに切り替えた際に、熱交換器26,27の暖機不十分による発電電力低下が発生するのを、防止することができる。
【0100】
また、本実施の形態では、
図5のCAES装置1Cの場合と同様に、加圧水等の沸点の高い蓄熱媒体を使用するとともに、ヒートポンプユニット30によって低温側の蓄熱媒体から高温側の蓄熱媒体へ熱移送することで、より高温(約120℃)の蓄熱媒体を蓄熱タンク21に貯蔵するようにしている。蓄熱タンク21に貯蔵されたより高温(約120℃)の蓄熱媒体を熱交換器26,27に供給することで、膨張機10,11に供給される空気の温度を第1の実施の形態の場合よりも高い約100℃に加熱するようにした。その結果、電力回収効率の向上を図ることができる。
【0101】
また、暖機期間を含む放電動作開始時から開閉バルブV4が開に切り替えるまでの期間においては、蓄圧タンク8aに貯蔵されている高温高圧の圧縮空気を膨張機10に供給するようにしている。その結果、膨張機10は、放電動作開始とともに素早く立ち上がることができ、電力需要の変動への応答性の向上を図ることができる。
【0102】
上述した各実施の形態においては、圧縮機6,7および膨張機10,11による2段圧縮/2段膨張型としているが、単段圧縮/単段膨張、または3段以上、更には圧縮と膨張で異なる段数の組み合わせであっても適用可能である。更に、圧縮機、膨張機の台数は共に1台であるが、台数は特に限定されず、2台以上の複数台であってもよい。また、モータと圧縮機、発電機と膨張機の台数も異なる台数の組み合わせでもよい。さらに、各実施の形態では圧縮機6,7と膨張機10,11とを別々の機器としているが、圧縮機と膨張機(モータと発電機)を兼用してもよい。
【0103】
例えば、
図11に示すCAES装置1Jは、
図1に示した2段構成のCAES装置1を単段構成に変更した場合を示す。充電動作時においては、圧縮機6で単段圧縮された圧縮空気は、熱交換器24で蓄熱媒体と熱交換した後に低温高圧の圧縮空気として蓄圧タンク8に貯蔵される。熱交換器24で加熱された蓄熱媒体は蓄熱タンク21に貯蔵される。放電動作時においては、蓄熱タンク21から流出された蓄熱媒体は、ヒートポンプユニット30の放熱器34によって加熱された後に熱交換器26に供給される。蓄圧タンク8から膨張機10に供給される圧縮空気は、熱交換器26における蓄熱媒体との熱交換により加熱されてから膨張機10に供給される。
【0104】
CAES装置1Jにおいても、ヒートポンプユニット30を設けて、熱交換器26から排出される低温側の蓄熱媒体から吸熱し、熱交換器26に流入する高温側の蓄熱媒体へ放熱するようにした。そのため、蓄熱媒体に蓄熱した圧縮熱をより効率良く回収して膨張前の圧縮空気へ熱移送することができ、膨張機10に供給される圧縮空気をより高温とすることができる。その結果、電力回収効率の向上を図ることができるとともに、電力需要の変動への応答性をより向上させることができる。
【0105】
なお、
図11に示した、充電側の単段構成(モータ4、圧縮機6、熱交換器24)および発電側の単段構成(熱交換器26、膨張機10、発電機12)は、
図1~10の各CAES装置に対しても適用することができる。
【0106】
上述した各実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0107】
(C1)
図11に示すように、圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)1Jは、モータ(電動機)4により駆動され、空気を圧縮する圧縮機6と、圧縮機6で圧縮された圧縮空気との熱交換により蓄熱媒体を加熱する第1の熱交換器24と、熱交換器24で熱交換した後の圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンク8と、蓄圧タンク8に貯蔵された圧縮空気により駆動される膨張機10と、膨張機10により駆動される発電機12と、熱交換器(第1熱交換器)24で加熱された蓄熱媒体との熱交換により、膨張機10に流入する圧縮空気を加熱する熱交換器(第2熱交換器)26と、熱交換器26で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、膨張機10を駆動する圧縮空気へ放熱するためのヒートポンプユニット(ヒートポンプ装置)30と、を備える。
【0108】
(C2)上記(C1)において、
図1,11等に示すように、ヒートポンプユニット30により、熱交換器26,27で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、熱交換器26,27に供給される蓄熱媒体に対して放熱するようにしても良い。
【0109】
上記(C1),(C2)に関して、例えば、
図11に示すCAES装置1Jでは、ヒートポンプユニット30を用いて、圧縮空気を昇温する熱交換器26から排出される低温側の蓄熱媒体から吸熱し、熱交換器24で昇温されて熱交換器26に流入する高温側の蓄熱媒体へ放熱するようにした。すなわち、低温側の蓄熱媒体から吸熱した熱エネルギを、熱交換器26に流入する蓄熱媒体を介して膨張機10を駆動する圧縮空気へ放熱するようにした。そのため、蓄熱媒体に蓄熱した圧縮熱(熱エネルギ)をより効率良く回収して膨張前の圧縮空気へ熱移送することができる。その結果、熱交換器26に流入する蓄熱媒体はより高温となり、膨張機10に供給される圧縮空気をより高温とすることができる。すなわち、電力回収効率の向上を図ることができるとともに、電力需要の変動への応答性をより向上させることができる。
【0110】
(C3)上記(C1)において、
図3に示すCAES装置1Aのように、ヒートポンプユニット30は、冷媒が循環する蒸発器(吸熱器)35および放熱器34a,34bを備え、蒸発器35は、熱交換器26で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、放熱器34a,34bは、蒸発器35で吸熱した熱エネルギを熱交換器26,27で加熱された圧縮空気に対して放熱する。
【0111】
熱交換器26で昇温された圧縮空気は放熱器34aによりさらに昇温されて膨張機10に供給され、熱交換器27で昇温された圧縮空気は放熱器34bによりさらに昇温されて膨張機11に供給される。このように、
図3に示すCAES装置1Aでは、蒸発器35により低温側の蓄熱媒体から吸熱した熱エネルギを、放熱器34a,34bにより熱交換器26,27で昇温された圧縮空気に放熱している。その結果、膨張機10,11を駆動する圧縮空気をより高温とすることができ、発電電力の増加によって電力回収効率の向上を図ることができる。また、圧縮空気の温度をより高温にできるので、膨張前の圧縮空気の昇温が早く、電力需要の変動への応答性をより向上させることができる。
【0112】
(C4)上記(C3)において、
図4に示すCAES装置1Bのように、熱交換器(26a,27a)は、熱交換器24,25で昇温された蓄熱媒体と、放熱器34a,34bから流出する冷媒と、膨張機10,11に供給される圧縮空気とが流入する、三流体熱交換器26a,27aで構成される。放熱器34a,34bで圧縮空気に放熱した後の蓄熱媒体を三流体熱交換器26a,27aに流入させて、圧縮空気に放熱させるようにしているので、ヒートポンプユニット30の膨張弁32に戻る冷媒の温度は、
図3の構成の場合と比べてより低温となる。そのため、断熱膨張後の冷媒温度をより低温にすることができ、蒸発器35における蓄熱媒体から冷媒への吸熱(熱回収)をより大きくすることができる。その結果、ヒートポンプユニット30による熱回収効率が高くなり消費電力の低減が可能となり、CAES装置1Bの電力回収効率の向上を図ることができる。
【0113】
(C5)上記(C1)において、
図6に示すように、CAES装置1Dは、熱交換器(第1熱交換器)24,25で熱交換した後の圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンク(主蓄圧タンク)8b,8cとは別に、熱交換器25の圧縮空気の入口側に接続され、圧縮機6,7で圧縮された圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンク(副蓄圧タンク)8aをさらに備え、熱交換器(第2熱交換器)26,27は、蓄圧タンク8b,8cから膨張機10,11に流入する圧縮空気を、熱交換器24,25で加熱された蓄熱媒体との熱交換により加熱し、蓄圧タンク8aに貯蔵された圧縮空気により膨張機10,11を駆動させると共に熱交換器24,25で加熱された蓄熱媒体の熱交換器26,27への流入を開始させ、その後、蓄圧タンク8b,8cに貯蔵された圧縮空気により膨張機10,11を駆動させる制御装置40を備える。
【0114】
例えば、
図6~9に示すCAES装置1D~1Gでは、ヒートポンプユニット30は、熱交換器26,27で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、放熱器34により膨張機10,11に供給される圧縮空気に放熱している。また、
図10、に示すCAES装置1D~1Gでは、ヒートポンプユニット30は、熱交換器26,27で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、熱交換器26,27に供給される蓄熱媒体に対して放熱器34により放熱している。すなわち、低温側の蓄熱媒体から吸熱した熱エネルギを、熱交換器26,27に流入する蓄熱媒体を介して、膨張機10,11を駆動する圧縮空気へ放熱している。
【0115】
上述のように、ヒートポンプユニット30は、熱交換器26,27で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、膨張機10,11を駆動する圧縮空気へ放熱する。そのため、膨張機10,11へ供給される圧縮空気の温度を従来よりも高くすることができ、電力回収効率の向上および応答性のさらなる向上を図ることができる。
【0116】
また、蓄圧タンク8aに貯蔵された高温高圧の圧縮空気により膨張機10,11を駆動させた後に、蓄圧タンク8b,8cの低温高圧の圧縮空気による駆動に切り替えるので、膨張機10,11は、放電動作開始とともに素早く立ち上がることができ、電力需要の変動への応答性の向上を図ることができる。
【0117】
さらに、蓄圧タンク8aに貯蔵された圧縮空気により膨張機10,11を駆動させると共に熱交換器24で昇温された蓄熱媒体の熱交換器26,27への流入を開始し、その後、蓄圧タンク8b,8cに貯蔵された圧縮空気により膨張機10,11を駆動させるので、圧縮空気の供給源を蓄圧タンク8aから蓄圧タンク8b,8cに切り替えた際に、熱交換器26,27の暖機不十分による発電電力低下が発生するのを、防止することができる。
【0118】
(C6)上記(C5)において、ヒートポンプユニット30は、熱交換器26,27で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、蓄圧タンク8b,8cから膨張機10に流入する圧縮空気および蓄圧タンク8aから膨張機10に流入する圧縮空気の少なくとも一方へ放熱する。例えば、
図6に示すCAES装置1Dでは、蓄圧タンク8aから膨張機10に流入する圧縮空気へ放熱し、
図7に示すCAES装置1Eでは、蓄圧タンク8aおよび蓄圧タンク8b,8cから膨張機10に流入する圧縮空気の両方へ放熱し、
図8,9に示すCAES装置1F,1Gでは、蓄圧タンク8b,8cから膨張機10に流入する圧縮空気へ放熱している。そのため、膨張機10,11に供給される圧縮空気の温度を従来よりも高くすることができ、電力回収効率の向上および応答性のさらなる向上を図ることができる。
【0119】
(C7)上記(C6)において、
図9のCAES装置1Gに示すように、膨張機10,11は多段膨張機を構成し、第1膨張段である膨張機10と第2膨張段である膨張機11を有する。そして、熱交換器26,27は、膨張機10および膨張機11の各々の流入側に個別に設けられ、ヒートポンプユニット30は、熱交換器26,27で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、蓄圧タンク8b,8cから膨張機10に流入する圧縮空気へ、および、膨張機10から膨張機11に流入する圧縮空気へ放熱する。そのため、膨張機10により駆動される発電機12による発電量、および、膨張機11により駆動される発電機13による発電量が増加し、電力回収効率の向上を図ることができる。
【0120】
(C8)上記(C5)において、
図10に示すCAES装置1Hのように、ヒートポンプユニット30は、熱交換器26,27で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱し、熱交換器26,27に供給される蓄熱媒体に対して放熱する。そのため、熱交換器26,27で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱した熱エネルギは、熱交換器26,27に供給される蓄熱媒体を介して膨張機10,11に供給される圧縮空気に放熱されることになる。その結果、膨張機10,11へ供給される圧縮空気の温度を従来よりも高くすることができ、電力回収効率の向上および応答性のさらなる向上を図ることができる。
【0121】
(C9)上記(C1)において、ヒートポンプユニット30に、冷媒を用いた蒸気圧縮サイクルが採用されたヒートポンプ装置を用いても良い。
【0122】
(C10)上記(C1)において、蓄熱媒体には加圧水が用いられる。加圧水は沸点が加圧されない水に比べて高いので、蓄熱媒体の温度をより高くまで上昇させることができ、蓄熱媒体によって圧縮空気をより高温に加熱することができ、電力回収効率をより向上させることができる。
【0123】
(C11)
図11に示すように、ヒートポンプユニット30は、圧縮機6で空気を圧縮して得られる圧縮空気と圧縮熱とを貯蔵し、熱交換器26における圧縮空気と圧縮熱を吸熱した蓄熱媒体との熱交換により圧縮空気を加熱し、加熱後の圧縮空気により膨張機10を駆動して発電を行う圧縮空気エネルギ貯蔵装置に用いられるヒートポンプ装置であって、熱交換器26で熱交換した後の蓄熱媒体から吸熱する蒸発器35と、熱交換器26に流入する蓄熱媒体に対して放熱する放熱器34と、を備える。そのため、ヒートポンプユニット30により、蓄熱媒体に蓄熱された熱エネルギを効率よく圧縮空気へ移送することができ、圧縮空気エネルギ貯蔵装置における電力回収効率の向上を図ることができる。
【0124】
以上に記載した各実施の形態において、再生可能エネルギによる発電の対象としては、例えば、風力、太陽光、太陽熱、波力または潮力、流水または潮汐、および地熱等、自然の力で定常的もしくは反復的に補充され、かつ不規則に変動するエネルギを利用したもの全てを対象とすることが可能である。また、工場内の他の大電力を消費する機器によって電力が変動するものであってもよい。また、これらの電力を供給するグリッド電力はグリッド電力だけでなく、地域、あるいは工場内のマイクログリッド電力であってもよい。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。例えば、上述した各実施の形態では、ヒートポンプユニット30に、冷媒を用いた蒸気圧縮サイクルを採用したヒートポンプ装置を用いたが、吸収式ヒートポンプ装置を使用しても良い。また、上述の異なる実施の形態で説明した構成同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0126】
1,1A~1H,1J…圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)、2A…圧縮機ユニット、2B…膨張機ユニット、3…グリッド電力、4,5…モータ(電動機)、6,7…圧縮機、8,8a,8b,8c…蓄圧タンク、9…インバータ装置、10,11…膨張機、12,13…発電機、14…パワーコンディショナ、20…蓄熱ユニット、21,22…蓄熱タンク、24~27…熱交換器、26a,27a…三流体熱交換器、28,29…移送ポンプ、30…ヒートポンプユニット、31…冷媒圧縮機、32…膨張弁、34,34a,34b…放熱器、35…蒸発器、40…制御装置