(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054765
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ユーザーが遠隔で興行の観覧者としてアクティブに参加する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/258 20110101AFI20240410BHJP
A63J 5/00 20060101ALI20240410BHJP
H04N 21/658 20110101ALI20240410BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240410BHJP
H04L 67/131 20220101ALI20240410BHJP
【FI】
H04N21/258
A63J5/00
H04N21/658
H04N7/18 U
H04L67/131
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161208
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】505135380
【氏名又は名称】株式会社ラパンクリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 克
【テーマコード(参考)】
5C054
5C164
【Fターム(参考)】
5C054AA02
5C054CA04
5C054CC02
5C054CG08
5C054DA07
5C164MA03S
5C164MA06S
5C164SC11P
5C164TC11P
5C164YA08
5C164YA11
(57)【要約】
【課題】従来の集客システムとは異なる集客システムであって、顧客体験の向上に対応できるサービスを提供する。
【解決手段】生放送される実空間の興行の会場の中の、中継画像により少なくとも一時的に放映される場所に配置された多数のアバタ端末と、興行を遠隔で中継画像を介して多数のユーザーが観覧可能になる中継システムと、多数のユーザーに対しインターネットを介して多数のアバタ端末の制御を提供するサービス提供システムとを有する興行システムを提供する。サービス提供システムは多数のアバタ端末のいずれかの興行の開催中の操作権をアバタ端末が配置された場所を示す位置情報と共に販売し、ユーザーが遠隔からインターネットを介してアバタ端末を操作できるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生放送される実空間の興行の会場の中の、中継画像により少なくとも一時的に放映される場所に配置された多数のアバタ端末を、前記興行を遠隔で前記中継画像を介して観覧する多数のユーザーによりインターネットを介して制御可能とするサービスを提供する方法であって、
サービス提供システムは、第1のユーザーを識別可能な識別情報に基づき、前記多数のアバタ端末のいずれかの第1のアバタ端末の、前記興行の開催中の少なくとも一時的な操作権を、前記第1のアバタ端末が配置された場所を、前記中継画像を介して特定できる位置情報と共に有償または無償で提供することと、
前記識別情報に基づき、前記第1のユーザーに対し、前記興行の開催中の前記少なくとも一時的な、前記第1のアバタ端末のインターネットを介した操作を開放することとを有し、前記第1のユーザーが前記中継画像を介して、前記第1のユーザーの遠隔からインターネットを介した操作による前記第1のアバタ端末の動作を視認可能とする、方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記会場は観客席を含み、前記多数のアバタ端末は前記観客席の少なくとも一部と共に前記中継画像に放映されるように配置されており、
前記提供することは、前記第1のアバタ端末の前記位置情報として、前記観客席との相対的な関係を示す情報を含む前記位置情報を提供することを含む、方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記多数のアバタ端末は、それぞれが多色の光を選択して発光することができる発光装置を含み、
前記開放することは、前記発光装置を制御するインターフェイスが、前記第1のユーザーのユーザー端末に対しインターネットを介して提供される、方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記会場は観客席を含み、前記多数のアバタ端末は前記観客席の観客が保持する発光装置を含む、方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記多数のアバタ端末は、それぞれが多色の光を選択して発光することができる多数の発光装置を含み、
前記提供することは、前記第1のユーザーに対し、所定の時間、複数の発光装置を協調して操作する権利を無償または有償で提供する、方法。
【請求項6】
請求項1において、
前記多数のアバタ端末は、前記会場に設置された電光掲示板を含む、方法。
【請求項7】
生放送される実空間の興行の会場の中の、中継画像により少なくとも一時的に放映される場所に配置された多数のアバタ端末と、
前記興行を遠隔で前記中継画像を介して多数のユーザーが観覧可能になる中継システムと、
前記多数のユーザーに対しインターネットを介して前記多数のアバタ端末の制御を提供するサービス提供システムとを有する興行システムであって、
サービス提供システムは、第1のユーザーを識別可能な識別情報に基づき、前記多数のアバタ端末のいずれかの第1のアバタ端末の、前記興行の開催中の少なくとも一時的な操作権を、前記第1のアバタ端末が配置された場所を、前記中継画像を介して特定できる位置情報と共に有償または無償で提供する取引装置と、
前記識別情報に基づき、前記第1のユーザーに対し、前記興行の開催中の前記少なくとも一時的な、前記第1のアバタ端末のインターネットを介した操作を開放するアクセスリリース装置とを有する、興行システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記会場は観客席を含み、前記多数のアバタ端末は前記観客席の少なくとも一部と共に前記中継画像に放映されるように配置されており、
前記取引装置は、前記第1のアバタ端末の前記位置情報として、前記観客席との相対的な関係を示す情報を含む前記位置情報を提供する、興行システム。
【請求項9】
請求項7において、
前記多数のアバタ端末は、それぞれが多色の光を選択して発光することができる発光装置を含み、
前記アクセスリリース装置は、前記発光装置を制御するインターフェイスを、前記第1のユーザーのユーザー端末に対しインターネットを介して提供する、興行システム。
【請求項10】
生放送される実空間の興行の会場の中の、中継画像により少なくとも一時的に放映される場所に配置された多数のアバタ端末を、前記興行を遠隔で前記中継画像を介して観覧する多数のユーザーによりインターネットを介して制御可能とするサービスを提供するシステムであって、
第1のユーザーを識別可能な識別情報に基づき、前記多数のアバタ端末のいずれかの第1のアバタ端末の、前記興行の開催中の少なくとも一時的な操作権を、前記第1のアバタ端末が配置された場所を、前記中継画像を介して特定できる位置情報と共に有償または無償で提供する取引装置と、
前記識別情報に基づき、前記第1のユーザーに対し、前記興行の開催中の前記少なくとも一時的な、前記第1のアバタ端末のインターネットを介した操作を開放するアクセスリリース装置とを有する、システム。
【請求項11】
請求項10において、
前記多数のアバタ端末は、それぞれが多色の光を選択して発光することができる発光装置を含み、
前記アクセスリリース装置は、前記発光装置を制御するインターフェイスを、前記第1のユーザーのユーザー端末に対しインターネットを介して提供する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーが遠隔で実空間のライブ、ショー、演劇、スポーツなどの興行に観覧(鑑賞、観劇、観戦)する者としてアクティブに参加できる方法およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コロナ禍などの要因により無観客で興行を行わざるを得ないときは、観客席にファンの写真付きボード人形、自身の分身である“アバタ”を設置し売り上げの補填にしているイベントがある。しかしながら、観客(ユーザー)自身が参加している場合と異なり、ステージなどで行われている興行および/または観客同士の一体感の醸成には程遠い状況であり、売上の増加に結び付きにくい状態となっている。
【0003】
さらに、ウィズ(with)コロナの時代における興行(エンタテインメントビジネス、ショービジネス)を行う事業においては、緊急事態宣言等によるイベント開催の制限、観客数の制限等の影響に柔軟に対応でき、従来の集客システムとは異なる集客システム、収益チャネルの多様化、顧客体験の向上などが要望されている。
【0004】
特許文献1には、コレオグラフィーを行うことが記載されている。コンピュータにより実行されるコレオグラフィー作成支援方法は、所定の領域内に存在する端末から、該端末の位置を特定可能な情報を受信する。また、コレオグラフィー作成支援方法は、所定の領域を2以上に分割した区画群のそれぞれについて、受信した位置を特定可能な情報により算出される端末の台数が、所定の台数よりも多いか否かを判断する。また、コレオグラフィー作成支援方法は、多いと判断した第一の区画に存在する端末のうち、少なくとも一部の端末に対して、多くないと判断した第二の区画への移動依頼を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2016-206311公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
観客数が制限される場合などに、スタジオの観客席にカラーボードなどを使って人文字を形成するコレオグラフィーを無線ペンライトなどにより演出することが考えられている。しかしながら、自動制御によるコレオグラフィーには、観客の能動的な意思はなく、演出側の遠隔制御に過ぎない。
【0007】
従来の集客システムとは異なる集客システム、収益チャネルの多様化、顧客体験の向上に対応できるサービスを提供するための方法およびシステムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、生放送される実空間の興行の会場の中の、中継画像により少なくとも一時的に放映される場所に配置された多数のアバタ端末を、その興行を遠隔で中継画像を介して観覧する多数のユーザーによりインターネットを介して制御可能とするサービスを提供することである。そのため、本サービスを提供するシステム(サービス提供システム)は、第1のユーザーを識別可能な識別情報に基づき、多数のアバタ端末のいずれかの第1のアバタ端末の、興行の開催中の少なくとも一時的な操作権を、第1のアバタ端末が配置された場所を、中継画像を介して特定できる位置情報と共に有償または無償で提供し、興行が開始されると、その識別情報に基づき、第1のユーザーに対し、興行の開催中の少なくとも一時的な、第1のアバタ端末のインターネットを介した操作を開放する。このため、第1のユーザーは、中継画像を介して、第1のユーザーの遠隔からインターネットを介した操作による第1のアバタ端末の動作を視認することができる。
【0009】
このサービスにより、アバタ端末を介して、ユーザーが遠隔で興行の観覧者としてアクティブに参加することができ、新たな集客システムを提供できる。さらに、このサービスにおいて、アバタ端末の一時的な操作権を販売することにより、興行における収益チャネルを多様化でき、興行を中継で見る顧客に対して新たな体験を提供できる。
【0010】
会場は観客席を含んでもよく、多数のアバタ端末は観客席の少なくとも一部と共に中継画像に放映されるように配置されていてもよい。これにより、会場で興行に観覧者として参加しているユーザーと、遠方でアバタ端末を介して観覧者として興行に参加しているユーザーとの協調したパフォーマンスを、会場にいる観覧者は直に、また、遠隔地で参加しているユーザーは中継画像を介して、楽しむことができる。また、遠隔地のユーザーに対しては、操作権を提供する際に、第1のアバタ端末の位置情報として、観客席との相対的な関係を示す情報を含めてもよい。遠隔地で参加しているユーザーは、観客席の中、外、間などの観覧者として参加できる位置を選択でき、能動的に他のユーザーとのパフォーマンスを楽しむことができる。
【0011】
多数のアバタ端末は、それぞれが多色の光を選択して発光することができる発光装置を含み、開放することは、発光装置を制御するインターフェイスが、第1のユーザーのユーザー端末に対しインターネットを介して提供されてもよい。中継で見る観客のアクションの時差を考えると、音で協調を図ることは容易ではなく、雑音となってしまう可能性が高い。これに対し、視覚情報、例えば、発光のタイミング、色による参加は、時差の許容度が高く、興行の内容および/または他のユーザーとの協調したパフォーマンスの可能性を遠隔地のユーザーに提供できる。
【0012】
会場が観客席を含む場合、多数のアバタ端末は観客席またはそれらの間に設置された人型の端末であってもよく、観客席の観客が保持するハンディタイプの発光装置であってもよく、会場の壁などに設置される壁掛け型の端末であってもよく、会場に設置されている電光掲示板またはその一部であってもよい。さらに、多数のアバタ端末は、それぞれが多色の光を選択して発光することができる多数の発光装置を含み、第1のユーザーに対し、所定の時間、複数の発光装置を協調して操作する権利を無償または有償で提供してもよい。
【0013】
本発明の他の態様の1つは、生放送される実空間の興行の会場の中の、中継画像により少なくとも一時的に放映される場所に配置された多数のアバタ端末と、興行を遠隔で中継画像を介して多数のユーザーが観覧可能になる中継システムと、多数のユーザーに対しインターネットを介して多数のアバタ端末の制御を提供するサービス提供システムとを有する興行システムである。サービス提供システムは、第1のユーザーを識別可能な識別情報に基づき、多数のアバタ端末のいずれかの第1のアバタ端末の、興行の開催中の少なくとも一時的な操作権を、第1のアバタ端末が配置された場所を、中継画像を介して特定できる位置情報と共に有償または無償で提供する取引装置と、識別情報に基づき、第1のユーザーに対し、興行の開催中の少なくとも一時的な、第1のアバタ端末のインターネットを介した操作を開放するアクセスリリース装置とを有する。
【0014】
会場は観客席を含み、多数のアバタ端末は観客席の少なくとも一部と共に中継画像に放映されるように配置されており、取引装置は、第1のアバタ端末の位置情報として、観客席との相対的な関係を示す情報を含む位置情報を提供してもよい。多数のアバタ端末は、それぞれが多色の光を選択して発光することができる発光装置を含み、アクセスリリース装置は、発光装置を制御するインターフェイスを、第1のユーザーのユーザー端末に対しインターネットを介して提供してもよい。
【0015】
本発明の他の態様の1つは、生放送される実空間の興行の会場の中の、中継画像により少なくとも一時的に放映される場所に配置された多数のアバタ端末を、興行を遠隔で中継画像を介して観覧する多数のユーザーによりインターネットを介して制御可能とするサービスを提供するシステムである。このシステムは、第1のユーザーを識別可能な識別情報に基づき、多数のアバタ端末のいずれかの第1のアバタ端末の、興行の開催中の少なくとも一時的な操作権を、第1のアバタ端末が配置された場所を、中継画像を介して特定できる位置情報と共に有償または無償で提供する取引装置と、識別情報に基づき、第1のユーザーに対し、興行の開催中の前記少なくとも一時的な、第1のアバタ端末のインターネットを介した操作を開放するアクセスリリース装置とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】興行システムによりユーザーが遠隔で興行の観覧者としてアクティブに参加する過程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本発明に係る興行システムの一例を示している。この興行システム1は、興行、例えば、コンサートを、生放送される実空間の会場、例えばコンサートの会場10に観覧者として遠隔地のユーザー30が能動的に参加できるサービスを提供する。生放送とは、放送のうち、放送番組素材を事前に録音・録画(=収録)することなく、その放送時刻においてスタジオやコンサート会場などの実空間の中継現場等から同時間的に番組を送ることであるが、中継する媒体は、電波に限らず、インターネットであってもよく、また、中継画像を録画して楽しめるものであってもよい。
【0018】
この興行システム1は、ユーザー側の端末33の中継画像34により少なくとも一時的に放映される場所に配置された多数のアバタ端末20を含み、その興行を遠隔で中継画像34を介して観覧する多数のユーザー30によりインターネット9を介して制御可能とするサービスを提供する。ユーザー側の端末33は、電波またはインターネット9を介して番組が提供されるテレビ31であってもよく、パーソナルコンピュータ、携帯電話32またはタブレットなどの端末であってよい。
【0019】
会場10は、イベント(コンサート、ショー、スポーツなど)が開催される中央のステージ11、グラウンドと、それを取り囲む観客席12とを含むイベント会場、スタジアムなどである。会場10には、さらに、複数のアバタ端末20が配置されている。アバタ端末20の一例は、観客席12の空いている席または席同士の間などに配置された人型のアバタ端末21、2階席との間の壁など、観客席として使用されにくい空間に配置された壁掛け型のアバタ端末22、画像やサインなどを表示可能な電光掲示板型のアバタ端末24、さらには、観客が手で持って振ったり、遠隔地のユーザーと機能をシェアーできるハンディータイプのアバタ端末23などの多種多様なものであってもよい。これらのアバタ端末20は、ステージ11からも観客席12からも見える位置に配置されていることが望ましく、さらに、中継システム40を介して、遠隔地から参加しているユーザー30から視認できることが望ましい。
【0020】
興行システム1の中継システム40は、会場10の、1つまたは複数の場所に設置されたテレビカメラ42と、テレビカメラ42からの映像を編集して中継する放映システム44とを含み、電波またはインターネットを介して会場10の映像を放送(中継)する。ユーザー30の端末33に中継される映像34は会場10の全体を含むものであってもよく、ステージ11を中心に含むものであってもよく、観客席12を含むものであってもよいが、全てのアバタ端末20を、一時的にまたは断続的に含む映像34を編集し、ユーザー30のアバタ端末20の操作結果がユーザー30に対してフィードバックできるようにすることが要求される。したがって、ユーザー(第1のユーザー)30は、中継画像34を介して、第1のユーザーの遠隔からインターネット9を介した操作によるアバタ端末(第1のアバタ端末)20の動作を視認することができる。
【0021】
興行システム1は、会場10のアバタ端末20を制御するアバタ端末制御システム50を含む。アバタ端末制御システム50は、所定のアバタ端末20の制御(操作権)をユーザー30に販売し、販売した操作権に応じたアバタ端末20の操作をユーザー30に開放する機能を含む、サービス提供システム51を含む。アバタ端末制御システム50は、サービス提供システム51からの操作信号を無線または有線で供給する制御信号供給装置、例えば、無線LAN装置59を含む。
【0022】
サービス提供システム51は、所定のユーザー(第1のユーザー)30を識別可能な識別情報(ユーザーID)61に基づき、多数のアバタ端末のいずれかの第1のアバタ端末20の、興行の開催中の少なくとも一時的な操作権(操作枠)62を、第1のアバタ端末が配置された場所を、中継画像を介して特定できる位置情報63と共に有償または無償で提供する取引装置(販売機能)52と、識別情報61に基づき、第1のユーザー30に対し、興行の開催中の少なくとも一時的な、第1のアバタ端末20のインターネット9を介した操作を開放する(操作インターフェイスへのアクセスを開放(許可)する)アクセスリリース装置(リモートコントロール装置)53と、ユーザーID61、操作枠62、ユーザーIDとアバタ端末との関連を示す位置情報63などを含むユーザー情報を格納したユーザーライブラリ54と、インターネット9を介してユーザー端末33と通信する通信インターファイル55とを含む。サービス提供システム51は、クラウド上のサーバーシステムであってもよく、CPUやメモリなどのコンピュータ資源を備えており、サービス提供システム51としての機能はプログラムにより提供されてもよい。
【0023】
取引装置52は、インターネット9を介して多数のアバタ端末20のいずれか1つまたは複数の操作権(操作枠)62を、興行の間、特定のユーザー30(1つのユーザーID61)に提供(販売)してもよく、興行の間の限られた時間だけの操作枠62を販売し、1つのアバタ端末20を複数のユーザー30(複数のユーザーID61)が時分割で共有し操作できるようにしてもよい。取引装置52は、アバタ端末20の操作権62を公演中(試合中)は開催者側に設定し、公演の間や、試合の間などの限られた時間だけ、ユーザー30にアバタ端末20の操作を開放するようにしてもよい。取引装置52は、複数のアバタ端末20または複数の画素を含むアバタ端末20の操作枠62を1つのユーザーID62に提供してもよく、ユーザー30が多数のアバタ端末20または画素を用いてメッセージや画像などを表示することで観覧者として興行(公演)に参加できるようにしてもよい。
【0024】
取引装置52は、アバタ端末20の販売可能な操作枠62を公演のプログラムに合わせて事前に販売してもよく、公演中に販売してもよい。また、取引装置52は、アバタ端末20の種類、大きさ、機能、中継画像に映りやすい位置などに応じて、ユーザー30が事前に入札して取得するオークション機能を備えていてもよい。
【0025】
図2にアバタ端末20のいくつかの例を示している。
図2(a)は人型のアバタ端末21の一例であり、空いた観客席12や観客席の間に配置するのに適している。アバタ端末21は、発光装置29を含み、この例では中心および左右の3つの位置に配置された発光装置29a~29cを含み、サービス提供システム51のリモートコントロール装置53は、ユーザー30に対して、アバタ端末21の操作権62として、発光位置の選択を含めて開放してもよい。アバタ端末21は、照明(発光装置)29a~29cを複数個取り付ける代わりに、発光の位置をアームで変えてもよく、アームを左右に振ったり、曲げ伸ばしして発光位置を変えるタイプであってもよい。また、それぞれの発光装置29a~29cは、多色の発光装置であり、リモートコントロール装置53は、ユーザー30に対して、それぞれの発光位置における発光のタイミングと、発色とを制御する操作権62を開放してもよい。また、リモートコントロール装置53は、これらの制御要素の中の限定された要素、例えば、発色のみの制御をユーザー30に対して開放(許可)してもよく、発光位置およびタイミングは興行側が制御してもよい。
【0026】
多数のアバタ端末20は、それぞれが多色の光を選択して発光することができる1つまたは複数の発光装置29を含んでもよい。それぞれの発光装置29の発光のタイミングおよび発光色は、ステージ11における興行を遠隔で、例えばテレビ31に映し出される中継画像34を観覧している(視聴している)多数のユーザー30により視認される。
【0027】
例えば、観客席12のシート毎にスマートホンを設置し、リモート会議のシステムを使って双方向通信でコンサートに参加することを考えた場合、参加人数が50名程度でも、0.5秒程の遅延が発生する。このため、映像・音声の双方でアリーナクラスの観客(2000人以上)をリモートで参加させようとすると、通信が破綻する。さらに、スマートホンから、ユーザーの映像や声をステージに届けることは、スマートホンのサイズ的に困難であり、演者にスマートホン自体を手に取ってもらわないと、個々のユーザーの映像や声は伝わらない。この点でも、スマートホンをアバタとして用いてコンサートなどに参加することには無理がある。さらに、スマートホンが配置された観客席12を中継システム40により映しても、近隣のスマートホンに映し出されたユーザーの映像から、ユーザー同士が一体感を持って観覧を楽しむほどの情報を得ることは難しい。
【0028】
視聴者(ユーザー)30が、ステージ11をライブ中継している中継画像34の前で、歓声をあげたり、歌ったりすることは、ユーザー自身の空間で完結できるので、違和感は発生しない。しかしながら、中継画像34を見ている他のユーザー30や、会場10にいる観客(観覧者)との一体感はない。一方、遠隔にいるユーザー30の歓声などの発音を、通信を介してライブ会場10に届けようとすると、ユーザー同士の一体感を阻害する可能性がある。音の理解には演奏聴取と同じ聴覚を使うため、周囲の発音に遅延があると、その遅延による違和感が大きく一体感の醸成をむしろ阻害する可能性が高い。また、何千回線の音声をミックスして、一体感のある音(音声)とすることは非常に難しい。
【0029】
音声と異なる発光は、聴覚とは異なる視覚を用いる。このため、観客席12やその周りに配置されたアバタ端末20における発光相互の多少のずれは許容できる可能性が高い。事実、ステージとスタンドでは音速と光速の差から映像・照明より音の方が遅れているが、一体感は阻害されていない。発光によるライブ参加については、多少のずれが許容されるとしても、許容される条件としては、遅延の極力少ない方法での発光の生中継が必要である。例えば、ユーザー30は、中継システム40により、地デジを経由したTV画面34で1~2秒程度の遅れた映像を観る。それに合わせ、ユーザー端末33で、コンサート会場10のアバタ端末20の照明(発光装置)29をコントロールする。発光装置29を制御するための色情報通信(発光制御情報)を含む制御情報67のデータ量は非常に小さくて済み、例えば、256色であれば8ビットのデータ量を送ればよい。したがって、映像や音声を送ることと比較し圧倒的にデータ量が少ない。このため、特殊なインフラを設けなくても、インターネット9を経由した通信により、一度に数万の処理が瞬時に可能となる。すなわち、数万のアバタ端末20を数万のユーザー30が一度に、瞬時に、リモートで制御するサービス提供システム51を提供できる。
【0030】
ユーザー30の端末33は、中継画像34の出力とアバタ端末20の操作の入力とを同時に行うことができる端末であってもよく、画像34の出力と操作の入力とを別々の端末で行うものであってもよい。アバタ端末20の操作の入力端末(ユーザー端末、遠隔制御端末)の典型はスマートホン32であり、ローカル、例えば家庭内のゲートウェイ(ルーターなど)39を介してインターネット9に接続されたり、その他、例えばデータ通信サービスを用いてインターネット9に接続されてもよい。アバタ端末20の操作の入力端末は左右それぞれの手で握るコントローラー38であってもよく、アバタ端末20の発光装置29における発光のタイミング、種類(色、強弱、フェードアウト、フェードインなど)、位置などが選択できるユーザーインターフェイス35として機能を提供できるものであればよい。また、ユーザーインターフェイス35は、事前にプログラミングされた複数の発光パターンのいずれかを選択したり、ユーザー独自の発光パターンを事前にプログラミングできるような機能を備えていてもよい。
【0031】
図2(b)に棒状の発光部28aを備えた発光装置29と、発光部28aを左右および/または前後に旋回するよう動かして発光位置を可変する駆動装置28bとを含むアバタ端末22を示している。このアバタ端末22は、会場10の左右の壁面などに配置するのに適しているアバタ端末20の一例である。アバタ端末22はインターフェイス装置27を含んでいてもよく、インターフェイス装置27は、発光色を制御する第1のインターフェイス27aと、駆動装置28bにより発光位置を制御する第2のインターフェイス27bとを含んでいてもよい。インターフェイス装置27は、ユーザー端末32からインターネット9を経由して送信される発光色を含む制御情報67に基づいてアバタ端末22の動きを制御する。
【0032】
図2(c)に、会場10に参加している観客が把持可能なハンディタイプのアバタ端末23の一例を示している。この端末23は、本願の出願人が提供している発光端末(照明端末)の1つであり、ODDRING(オッドリング)と呼ばれている端末(ハンディーライト、光楽器、演色発光楽器、演色端末)である。演色端末23は、片手で制御できる構成となっており、全体が円盤状で中央に片手の指を通す空間23aが設けられており、ボディー23bを片手で握った状態で空間23aに設けられた選択スイッチ23cを指で操作することができる。演色端末23は、選択スイッチ23cにより選択された発光色および/または発光パターンにより発光する発光ユニット23dを含む。したがって、演色端末23は、発光ユニット23dを発光装置29として選択スイッチ23cを操作することにより、観客がハンディライトとして使用し、興行に参加することができる。また、発光装置29の操作権62を遠隔のユーザー30に許可することにより、遠隔のユーザー30のアバタ端末20として機能させることができる。
【0033】
この演色端末23は、ユーザー30が手で持ってアバタ端末23を操作するためのコントローラー38として用いてもよい。ユーザー30のコントローラー38としてアバタ端末20の発光装置29における発光色および/または発光パターンを選択する選択スイッチ23cと、選択スイッチ23cにより選択された発光色および/または発光パターンにより発光する発光ユニット23dとを含み、遠隔のユーザー30により選択スイッチ23cを介して選択された発色または発色パターンが、会場10の観客が把持する演色端末23に伝えられる。したがって、遠隔のユーザー30は、手元で演色端末23をコントローラー38として操作し、会場10の演色端末23を所望の発光パターンで光らせることができると共に、手元のコントローラー38の演色端末23を同じ発光パターンで光らせることができる。このため、ユーザー30は、中継画像34を介して会場10におけるアバタ端末23の操作結果を視認できると共に、会場10における発色とユーザー30自身のコントローラー38の発色とを合わせて楽しむことができる。演色端末23は、発光パターンを内蔵しているアプリケーション23eと、インターネット9を通じて通信できる通信装置23fとを含んでいてもよい。ハンディライト型のアバタ端末23は、本例に示した円盤タイプであってもよく、ペンタイプであってもよく、その他の形状であってもよい。
【0034】
アバタ端末20はこれらの例に限定されることはなく、どのようなタイプの発光装置を含んだ端末であってもよい。また、アバタ端末20は、複数の表示画素を備えた発光装置29を含んでいてもよく、大型の電子掲示板の全部あるいは一部を発光装置29として含んでいてもよい。
【0035】
図3に、この興行システム1において、サービス提供システム51が、会場10に配置されたアバタ端末20の操作権62をユーザー30に販売し、ユーザー30がアバタ端末20を遠隔地から操作して、実空間の興行の会場10に、実空間の観覧者あるいは観客と共に、アバタ端末20を介して参加する過程をフローチャートにより示している。この興行システム1においては、中継システム40と、サービス提供システム51を含むアバタ端末制御システム50とにより、ユーザー30が遠隔で興行の観覧者としてアクティブに参加することを可能とする。
【0036】
サービス提供システム51の取引装置(販売装置)52は、ステップ81において、ユーザー30に対し、操作権62を販売中のアバタ端末20の利用可能時間および会場内の位置を提示する。アバタ端末20は、中継システム40により生放送される実空間の興行の会場10の中の、中継画像(中継画面)34により少なくとも一時的に放映される場所に配置されており、中継画像34にアクセスできるユーザー30であれば、操作権62を取得したアバタ端末20の稼働状態をユーザー自身で見ることができる。しかしながら、会場10には多様な位置にタイプの異なるアバタ端末20が配置されており、ステージ11との関係、観覧席12にいる観客との関係において、アバタ端末20とステージ11または観客との一体感のアピールや、その中継画像中における見え方が異なったりする可能性がある。したがって、ユーザー30に対し、ユーザー30が操作権62を購入しようとしている第1のアバタ端末20が配置された場所を、中継画像34を介して特定できる位置情報63と共にユーザー30に提示し、ユーザー30の満足度が高く、より付加価値の高いアバタ端末20の操作権62を販売できるようにする。アバタ端末20の位置情報63は、会場10内の配置図であってもよく、模擬的な中継画像34にアバタ端末20の位置を適当な方法で示すような情報であってもよい。
【0037】
ステップ82において、ユーザー30は、ユーザー自身を識別できる情報(ユーザーID)61を示すと共に、所望のアバタ端末(第1のアバタ端末)20の操作権62を購入する。これにより、販売対象の興行を、ユーザーは遠隔で中継画像34を介して観覧すると共に、インターネット9を介して所望のアバタ端末20を操作権62の範囲で制御することが可能となる。アバタ端末20の操作権62は、ユーザー30に対し、公演中の間、アバタ端末20が備えた機能の操作を完全に許容するものであってもよく、何らかの制限のもとでユーザー30がアバタ端末20の限られた機能を操作できるようにするものであってもよい。例えば、特定のアバタ端末20の操作権62を公演中の時間単位で複数に分けて販売してもよく、アバタ端末20でユーザー30が選択できる照明の色、パターン、タイミングなどを公演の開催者が制限してもよく、アバタ端末20の配置されている領域および種類、また、公演中の時間により、アバタ端末20でユーザー30が操作できる範囲が限定されていてもよい。販売価格によりいくつかの限定を解除したり、時間単位あるいは領域単位でアバタ端末20の操作権を纏めて購入することにより限定を解除するなどのサービスを、サービス提供システム51を介して提供してもよい。
【0038】
アバタ端末20の操作権62の販売は、サービス提供システム51が、公演が開催される前の所定の期間に、インターネット9を介して行ってもよく、その他の媒体、例えば、郵便、電話などを介して販売を行ってもよい。公演の開催中に、操作権62が未定のアバタ端末20について販売を継続してもよい。サービス提供システム51は、操作権62が未販売のアバタ端末20については、予め決められたプログラムに従ってアバタ端末20を操作してもよく、人工頭脳(AI)を用いてアバタ端末20を操作してもよい。
【0039】
ステップ83において対象となる興行が開演すると、サービス提供システム51は、識別情報(ユーザーID)62に基づき、所定のユーザー(第1のユーザー)30に対し興行の開催中の少なくとも一時的な、第1のアバタ端末20のインターネット9を介した操作を開放する。したがって、操作権62を購入したユーザー(第1のユーザー)30は、ステップ84でインターネット9に接続可能なユーザー端末32または38を介してユーザーID61を入力し、操作権62を購入したアバタ端末(第1のアバタ端末))20の操作インターフェイスにアクセスする。
【0040】
次に、ステップ85において、ユーザー30は、ユーザー端末32または38を用いて、インターネット9を介して遠隔から操作コマンド67を送り、会場10内のアバタ端末20を操作する。同時にユーザー30は中継システム40により中継されている画像から、自身が操作しているアバタ端末20を含めた会場10の様子を見ることができる(ステップ89)。したがって、ユーザーは中継画像34を介して、そのユーザー(第1のユーザー)30の遠隔からインターネット9を介した操作による第1のアバタ端末20の動作を視認できる。公演中の操作権62を購入したユーザー30は、ステップ86で公演が終了するまでアバタ端末20を遠隔から操作し、観客として公演に参加でき、その結果を、中継画像34により確認し、公演と共に、観客としてのパフォーマンスを楽しむことができる。本システム1のアバタ端末20において発せられる情報は、光(多色の発光)なので、ステージ11や、観客席12の遠方からも把握することが可能である。このため、ステージ11の演者、観客席12のライブ参加している他の観客、さらには、他のアバタ端末20を介した他の遠隔から参加しているユーザー30との一体感を醸成できる。
【0041】
また、インターネット9を介してアバタ端末20を制御する対象を照明に限定することにより、大量のアバタ端末20であっても比較的少量のデータで制御できる。各アバタ端末20に固有のIPアドレスを付与して、IPアドレス単位でアバタ端末の操作権62を販売してもよい。複数のユーザー30から提供される操作コマンド67を、適当な領域に含まれる複数のアバタ端末20を一括制御するマッピングデータに変換してアバタ端末20に提供するシステムを採用してもよい。アバタ端末20は電光掲示板またはその一部などの2次元または3次元の画素を有するものであってもよく、ユーザー30は2次元または3次元の画像データを含めた制御コマンド67を提供してもよい。さらに、共通の中継システム40によりテレビ31などに放送される映像(中継画像)34とは別に、個々のアバタ端末20にカメラを装着し、アバタ端末20の目線の画像をユーザー30にフィードバックしてもよい。ライブストリーミングでは、ユーザー端末35との通信に含まれる画像情報のデータ量が大きく、巨大な通信インフラが必要になる可能性がある。その場合は、コマ送りの映像でその場の雰囲気を視覚情報に加えることにより、中継画像34と共にユーザー30の会場10との一体感を伝達する情報をフィードバックでき、ユーザー30の参加をより促進できる。
【0042】
上記においては、本発明の特定の実施形態を説明したが、様々な他の実施形態および変形例は本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者が想到し得ることであり、そのような他の実施形態および変形は以下の請求の範囲の対象となり、本発明は以下の請求の範囲により規定されるものである。
【符号の説明】
【0043】
1 興行システム、 10 興行の会場、 11 ステージ
40 中継システム、 51 サービス提供システム