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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054772
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20240410BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B25B21/00 530Z
B25B21/00 B
B25F5/00 C
B25F5/00 B
B25B21/00 520A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161219
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】322003732
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁斗
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA01
3C064AC02
3C064AC03
3C064BA12
3C064BB03
3C064BB21
3C064BB23
3C064BB42
3C064BB52
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA28
3C064CA41
3C064CA53
3C064CB01
3C064CB03
3C064CB07
3C064CB19
3C064CB32
3C064CB62
3C064CB73
3C064DA02
3C064DA25
3C064DA32
3C064DA43
3C064DA91
(57)【要約】
【課題】作業効率を向上する。
【解決手段】電動工具1は、モータ2と、先端工具が取り付けられる出力軸6と、モータ2を制御する制御部7と、クラッチ機構5と、クラッチ操作部52と、工具本体10と、検知部13と、を備える。クラッチ機構5は、モータ2のトルクを出力軸6に伝達する伝達状態と、モータ2のトルクの出力軸6への伝達を遮断する遮断状態とに切り替わる。クラッチ操作部52は、クラッチ機構5を伝達状態と遮断状態とに切り替える。工具本体10は、モータ2、出力軸6の少なくとも一部、クラッチ機構5及びクラッチ操作部52の少なくとも一部を収容する。検知部13は、工具本体10がユーザによって保持されている保持状態であるか否かを検知する。制御部7は、検知部13が保持状態を検知した場合に、モータ2を所定の回転数で回転させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
先端工具が取り付けられる出力軸と、
前記モータを制御する制御部と、
前記モータのトルクを前記出力軸に伝達する伝達状態と、前記モータのトルクの前記出力軸への伝達を遮断する遮断状態とに切り替わるクラッチ機構と、
前記クラッチ機構を前記伝達状態と前記遮断状態とに切り替えるクラッチ操作部と、
前記モータ、前記出力軸の少なくとも一部、前記クラッチ機構及び前記クラッチ操作部の少なくとも一部を収容する工具本体と、
前記工具本体がユーザによって保持されている保持状態であるか否かを検知する検知部と、を備え、
前記制御部は、前記検知部が前記保持状態を検知した場合に、前記モータを所定の回転数で回転させる
電動工具。
【請求項2】
前記工具本体は、前記ユーザによって保持されるグリップ部を含み、
前記検知部は、前記グリップ部に設けられるスイッチを含む
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記スイッチは、プッシュスイッチを含む
請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記工具本体は、前記ユーザによって保持されるグリップ部を含み、
前記検知部は、前記グリップ部に設けられるセンサを含む
請求項1に記載の電動工具。
【請求項5】
前記センサは、感圧センサを含む
請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記センサは、近接センサを含む
請求項4に記載の電動工具。
【請求項7】
前記制御部が、前記検知部が前記保持状態を検知して前記モータの駆動を開始した時点では、前記クラッチ機構は前記遮断状態である
請求項1に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に電動工具に関し、より詳細には、モータを備える電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電動締付機は、電動モータと、電動モータに直結されたはずみ車と、ソケットが取り付けられたドライブ軸と、はずみ車の回転をドライブ軸に伝達するクラッチと、を備えている。特許文献1に記載の電動締付機では、予めはずみ車に蓄積した回転エネルギを、クラッチを瞬時に接続することによりドライブ軸に伝える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-277272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような電動締付機(電動工具)において、ユーザは、クラッチを接続する前に、電動モータを回転させる操作を自ら行う必要があった。このため、ユーザは、電動モータを回転させる操作を行った後に、はずみ車に十分な回転エネルギが蓄積されるまで待つ必要があり、作業効率が低下する可能性があった。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、作業効率を向上する電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動工具は、モータと、先端工具が取り付けられる出力軸と、前記モータを制御する制御部と、クラッチ機構と、クラッチ操作部と、工具本体と、検知部と、を備える。前記クラッチ機構は、前記モータのトルクを前記出力軸に伝達する伝達状態と、前記モータのトルクの前記出力軸への伝達を遮断する遮断状態とに切り替わる。前記クラッチ操作部は、前記クラッチ機構を前記伝達状態と前記遮断状態とに切り替える。前記工具本体は、前記モータ、前記出力軸の少なくとも一部、前記クラッチ機構及び前記クラッチ操作部の少なくとも一部を収容する。前記検知部は、前記工具本体がユーザによって保持されている保持状態であるか否かを検知する。前記制御部は、前記検知部が前記保持状態を検知した場合に、前記モータを所定の回転数で回転させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、作業効率を向上する電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る電動工具の断面図である。
図2図2は、同上の電動工具の外観斜視図である。
図3図3は、同上の電動工具のブロック図である。
図4図4は、同上の電動工具が備えるクラッチ機構を前方から見た斜視図である。
図5図5は、同上の電動工具が備えるクラッチ機構を前方から見た分解斜視図である。
図6図6は、同上の電動工具が備えるクラッチ機構を後方から見た斜視図である。
図7図7は、同上の電動工具が備えるクラッチ機構を後方から見た分解斜視図である。
図8図8は、同上の電動工具が備えるクラッチ機構の遮断状態を説明するための説明図である。
図9図9は、同上の電動工具が備えるクラッチ機構の伝達状態を説明するための説明図である。
図10図10は、同上の電動工具が備えるクラッチ機構の伝達状態を説明するための説明図である。
図11図11は、同上の電動工具が備えるクラッチ機構の遮断状態における動作を説明するための説明図である。
図12図12は、同上の電動工具が備えるクラッチ機構の伝達状態における動作を説明するための説明図である。
図13図13は、変形例1の電動工具のブロック図である。
図14図14は、変形例2の電動工具のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態に係る電動工具1について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。図面中の各向きを示す矢印は一例であり、電動工具1の使用時の向きを規定する趣旨ではない。また、図面中の各向きを示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0010】
(1)概要
まず、本実施形態の電動工具1の概要について、図1及び図2を参照して説明する。
【0011】
本実施形態の電動工具1は、モータ2と、出力軸6と、モータ2を制御する制御部7と、クラッチ機構5と、クラッチ操作部52と、工具本体10と、検知部13と、を備える。
【0012】
出力軸6には、ねじ及びボルト等の締結部品を締め付けるドライバビット等の先端工具11(図2参照)が取り付けられる。
【0013】
クラッチ機構5は、モータ2のトルクを出力軸6に伝達する伝達状態と、モータ2のトルクの出力軸6への伝達を遮断する遮断状態とに切り替わる。
【0014】
クラッチ操作部52は、クラッチ機構5を伝達状態と遮断状態とに切り替える。
【0015】
工具本体10は、モータ2、出力軸6の少なくとも一部、クラッチ機構5及びクラッチ操作部52の少なくとも一部を収容する。
【0016】
検知部13は、工具本体10がユーザによって保持されている保持状態であるか否かを検知する。
【0017】
制御部7は、検知部13が保持状態を検知した場合に、モータ2を所定の回転数で回転させる。
【0018】
ここにおいて、「保持状態」とは、ユーザが工具本体10を完全に保持している状態に限定されず、ユーザの身体の少なくとも一部が工具本体10と接触している状態、及び、ユーザの身体の少なくとも一部と工具本体10との距離が所定距離以下となった状態を含む。
【0019】
また、ここにおいて、「所定の回転数」は、締結部品の締結作業を適切に行うために必要なモータ2の回転数である。つまり、ユーザは、締結部品の締結作業を適切に行うために、モータ2の回転数が所定の回転数となってから、クラッチ操作部52を操作してクラッチ機構5を伝達状態に切り替える必要がある。なお、「所定の回転数」は、締結部品の種類等に応じて、任意の値に設定可能である。
【0020】
本実施形態の電動工具1によれば、ユーザが工具本体10を保持した後に、クラッチ操作部52を操作して締結部品の締結作業を実施しようとする時点では、モータ2の回転数が所定の回転数に到達している可能性が高い。このため、ユーザが工具本体10を保持した後に、自らモータ2を所定の回転数で回転させる操作を行う場合と比べて、クラッチ操作部52を早く操作することができるため、電動工具1による作業の作業効率を向上することができる。
【0021】
(2)詳細
(2.1)電動工具の構成
以下、本実施形態の電動工具1について詳細に説明する。
【0022】
以下の説明では、出力軸6の軸方向に沿って、図1等に示すように、モータ2側から出力軸6側への向きを前方とし、出力軸6側からモータ2側への向きを後方とする。また、前方及び後方と直交する向きに沿って、グリップ部102側から胴体部101への向きを上方とし、胴体部101側からグリップ部102側への向きを下方とする。
【0023】
電動工具1は、ドリルドライバ等の、ユーザ(作業者)が片手で把持可能な可搬型の電動工具である。電動工具1は、図1図3に示すように、モータ2と、工具本体10と、伝達機構3と、第1軸受け8と、出力軸6と、検知部13と、クラッチ操作部52と、制御部7と、記憶部9と、を備えている。
【0024】
工具本体10は、外部ハウジング10A及び外部ハウジング10Aの内側に配置される内部ハウジング10Bを有する。
【0025】
外部ハウジング10Aは、胴体部101と、グリップ部102と、装着部103とを有している。
【0026】
胴体部101の形状は、後端が有底の筒状である。胴体部101は、モータ2と、出力軸6の少なくとも一部と、伝達機構3と、第1軸受け8と、クラッチ操作部52の少なくとも一部と、を収容している。詳細には、胴体部101は内部ハウジング10Bを収容し、出力軸6の少なくとも一部、伝達機構3及び第1軸受け8は内部ハウジング10Bに収容されている。
【0027】
グリップ部102は、胴体部101から下方に突出している。グリップ部102は、電動工具1のユーザによって保持される部位である。電動工具1のユーザは、グリップ部102を保持して、電動工具1を用いた作業を行う。また、グリップ部102は、内部に、制御部7を収容している。
【0028】
装着部103は、グリップ部102の先端部(下端部)に設けられている。言い換えれば、胴体部101と装着部103とが、グリップ部102にて連結されている。装着部103は、電池パック14が取り外し可能に装着されるように構成されている。
【0029】
電動工具1には、充電式の電池パック14が着脱可能に取り付けられる。本実施形態の電動工具1は、電池パック14を電源として動作する。すなわち、電池パック14は、モータ2を駆動する電流を供給する電源部14Aを含む。電池パック14は、電動工具1の構成要素ではない。ただし、電動工具1は、電池パック14を備えていてもよい。電池パック14は、複数の二次電池(例えば、リチウムイオン電池)を直列接続して構成された組電池と、組電池を収容したケースと、を備えている。
【0030】
モータ2は電動工具1における動力源である。モータ2は、例えばブラシレスモータである。特に、本実施形態のモータ2は、同期電動機であり、より詳細には、永久磁石同期電動機(Permanent Magnet Synchronous Motor:PMSM)である。モータ2は、永久磁石を備えた回転子2Aと、3相(U相、V相、W相)分の電機子巻線を備えた固定子2Bとを備える。回転子2Aは駆動軸21を有している。モータ2は、電池パック14から供給される電力を駆動軸21のトルクに変換する。
【0031】
伝達機構3は、モータ2の前方に配置される。伝達機構3には、モータ2の駆動軸21及び出力軸6が機械的に接続されている。伝達機構3は、駆動軸21のトルクを出力軸6に伝達する。
【0032】
第1軸受け8は、胴体部101の先端部に保持され、出力軸6を回転可能に支持する。
【0033】
出力軸6の前端には、図2に示すように、取付部12が固定される。取付部12には、ドライバビット等の先端工具11が固定される。つまり、出力軸6が回転するのに伴い、取付部12に取り付けられた先端工具11が回転する。ドライバビットである先端工具11が取付部12に取り付けられている場合、先端工具11が締結部品にセットされた状態で先端工具11が回転することにより、相手部材に対して締結部品を締め付ける又は緩めるといった作業が可能となる。
【0034】
取付部12及び先端工具11は、電動工具1の構成要素ではない。ただし、電動工具1は、取付部12及び先端工具11のうち少なくとも一方を備えていてもよい。
【0035】
本実施形態の伝達機構3は、図1に示すように、慣性体4と、クラッチ機構5とを有している。
【0036】
慣性体4は、クラッチ機構5とモータ2との間に配置されている。具体的には、慣性体4は、モータ2の前方かつクラッチ機構5の後方に配置されている。慣性体4は、駆動軸21と機械的に接続されており、慣性体4は、駆動軸21と一体となって回転する。慣性体4は、いわゆるフライホイールであり、モータ2(駆動軸21)のトルクの慣性力を増加させる。また、慣性体4はモータ2の冷却用のファンとしての機能も有している。詳細には、慣性体4の後面に複数のファンブレード41が設けられており、慣性体4の回転に伴って複数のファンブレード41からモータ2に向かって冷却風が発生する。
【0037】
クラッチ機構5は、モータ2のトルクを出力軸6に伝達する伝達状態と、モータ2のトルクの出力軸6への伝達を遮断する遮断状態とに切り替わる。
【0038】
クラッチ機構5は、図1図4図7に示すように、押圧部51と、第2軸受け53と、クラッチ板54と、キャリア55と、減速回転部56と、太陽歯車57と、複数(例えば3つ)の遊星歯車58と、を備える。
【0039】
クラッチ板54は、出力軸6と結合した円板状部材である。具体的には、クラッチ板54の中心部に設けられた篏合孔541(図5参照)及び篏合孔541の周縁から前方に突出する円筒部542と、出力軸6とが、クラッチ板54が出力軸6の軸方向(前後方向)に沿って移動可能な状態で結合している。クラッチ板54は、第1位置と、第2位置と、の間で、前後方向に移動可能である。第1位置は、図8に示すようにクラッチ機構5が遮断状態のときのクラッチ板54の位置である。クラッチ板54が第1位置にあるとき、減速回転部56とクラッチ板54とは離間している。第2位置は、図10に示すように、クラッチ機構5が伝達状態のときのクラッチ板54の位置である。クラッチ板54が第2位置にあるとき、減速回転部56とクラッチ板54とは接続している。
【0040】
押圧部51は、図4及び図5に示すように、第2軸受け53を介して、クラッチ板54の円筒部542に固定される円板状部材である。詳細には、第2軸受け53の内輪が円筒部542の外面に固定され、押圧部51は第2軸受け53の外輪に固定されている。これにより、押圧部51とクラッチ板54との間では第2軸受け53を介して前後方向の力は伝達されるが、回転方向の力の伝達は抑制される。すなわち、出力軸6及び出力軸6と結合したクラッチ板54が回転する場合でも、押圧部51には回転方向の力の伝達が抑制される。
【0041】
押圧部51は、下方においてクラッチ操作部52と連結している。クラッチ操作部52は、クラッチ機構5を伝達状態と遮断状態とに切り替える。詳細には、クラッチ操作部52の前後方向の動作と連動して、押圧部51は前後方向に移動可能である。押圧部51とクラッチ板54との間では第2軸受け53を介して前後方向の力は伝達されるため、押圧部51は、クラッチ操作部52の前後方向の動作と連動して、クラッチ板54を第1位置及び第2位置との間で前後方向に移動させる。
【0042】
クラッチ板54の後面には、図7に示すように、後方に突出する例えば3つの爪部543が設けられる。3つの爪部543は、クラッチ板54が第2位置にあるときに、減速回転部56に設けられた3つの係合部561と各々係合する。
【0043】
キャリア55は、クラッチ板54の後方に配置され、出力軸6と結合した円板状部材である。具体的には、キャリア55の中心部に設けられた篏合孔551(図5等参照)と出力軸6とが篏合している。キャリア55は、出力軸6の軸方向に沿った移動が規制された状態で出力軸6と篏合している。また、キャリア55は、出力軸6に対して回転が規制された状態で出力軸6と篏合しているため、キャリア55は出力軸6と一体となって回転又は停止する。
【0044】
図5に示すように、キャリア55の前面において、篏合孔551の周囲に、前方に突出する例えば3つの突起部552が設けられている。3つの突起部552は、クラッチ板54に設けられた3つの保持孔544(図5及び図7参照)と各々篏合している。クラッチ板54は、3つの保持孔544の各々が3つの突起部552の各々と篏合した状態で、前後方向に移動可能である。3つの突起部552と3つの保持孔544とは、クラッチ板54が前後方向において移動可能な範囲におけるいずれの位置でも篏合した状態となっている。つまり、クラッチ板54は、クラッチ板54が前後方向において移動可能な範囲において、キャリア55に対して回転が規制された状態でキャリア55に保持されている。換言すると、クラッチ板54とキャリア55との間では、回転方向の力が伝達され、クラッチ板54及びキャリア55は、クラッチ板54の前後方向の位置に関わらず、常に一体となって回転又は停止する。
【0045】
減速回転部56は、図6及び図7に示すように、内面に歯車(内歯)を有する円筒形状の部材であり、所謂、内歯歯車(インターナルギア)である。減速回転部(内歯歯車)56は、図1に示すように、内部ハウジング10Bの内壁と接触しない状態で、内部ハウジング10Bに収容されている。つまり、内歯歯車56は、内部ハウジング10Bの内部で回転可能な状態で、内部ハウジング10Bに収容されている。
【0046】
内歯歯車56の前端には、図5に示すように、前方に突出する例えば3つの係合部561が設けられる。3つの係合部561は、図9及び図10に示すように、クラッチ板54が第2位置にあるときに、クラッチ板54に設けられた3つの爪部543と各々係合する。つまり、内歯歯車56に設けられた3つの係合部561とクラッチ板54に設けられた3つの爪部543とが各々係合することによって、クラッチ機構5は遮断状態から伝達状態に切り替わる。
【0047】
図1に示すように、内歯歯車56の内側には、キャリア55が、内歯歯車56の内壁に接触しない状態で収納されている。また、内歯歯車56の内側には、キャリア55の後方において3つの遊星歯車58が内歯歯車56の内歯と噛み合った状態で収容されている。
【0048】
太陽歯車57は、図1図5図7に示すように、駆動軸21に固定され、モータ2からの動力によって回転する外歯歯車である。
【0049】
3つの遊星歯車58は、図1図5図7に示すように、太陽歯車57の周囲に配置され、太陽歯車57と噛み合っている外歯歯車である。また、3つの遊星歯車58は、内歯歯車56の内側において、内歯歯車56の内歯と噛み合っている。換言すると、内歯歯車56は、3つの遊星歯車58の周囲に配置され、3つの遊星歯車58と噛み合っている。したがって、3つの遊星歯車58は、太陽歯車57と内歯歯車56との間に、太陽歯車57の外歯及び内歯歯車56の内歯と噛み合った状態で配置されている。
【0050】
3つの遊星歯車58は、太陽歯車57の周囲において、互いに等間隔となるように配置されている。
【0051】
ここで、3つの遊星歯車58は、各々の回転軸581がクラッチ板54に回転可能に支持されている。詳細には、3つの遊星歯車58の各々の回転軸581は、図5図7に示すように、クラッチ板54を保持しているキャリア55に設けられた3つの支持孔553に、軸受け等を介して支持されている。これにより、3つの遊星歯車58の各々は、回転可能な状態で、クラッチ板54に支持される。
【0052】
検知部13は、工具本体10がユーザによって保持されている保持状態であるか否かを検知する。以下に、検知部13について詳細に説明する。
【0053】
検知部13は、例えばグリップ部102に設けられるスイッチ131を含む。図1及び図2に示すように、スイッチ131は、例えばプッシュスイッチを含む。なお、スイッチ131が設けられる場所は、グリップ部102に限定されない。スイッチ131が設けられる場所は、ユーザが工具本体10を保持する状態でユーザの体の一部と接触する位置であればよく、胴体部101又は装着部103であってもよい。
【0054】
さらに詳細には、スイッチ131は、例えば、モーメンタリ動作を行うプッシュスイッチである。つまり、スイッチ131は、ユーザが工具本体10を保持する間のみオンとなり、ユーザが工具本体10の保持を止めるとオフとなる。なお、スイッチ131は、オルタネート動作を行うプッシュスイッチでもよい。また、スイッチ131、プッシュスイッチ以外のスイッチでもよく、ユーザが意図的に操作せずとも、ユーザが工具本体10を保持した場合に、オンとなるようなスイッチであればよい。この種のスイッチとしては、例えば、スライドスイッチ、トグルスイッチ等がある。
【0055】
スイッチ131は、図1及び図2に示すように、グリップ部102から後方に突出している。スイッチ131は、ユーザがグリップ部102を保持したときに、ユーザの身体の一部(例えば掌)がスイッチ131に触れることによってオンになる。
【0056】
スイッチ131は、モータ2を制御するためのスイッチである。具体的には、スイッチ131がオンになるとモータ2がオン(駆動状態)になり、スイッチ131がオフになるとモータ2はオフ(停止状態)となる。つまり、本実施形態では、ユーザによってグリップ部102が保持されると、モータ2はオンとなり、ユーザがグリップ部102を保持している限りモータ2はオンに維持される。また、ユーザがグリップ部102の保持を止めると、モータ2はオフとなる。
【0057】
クラッチ操作部52は、図1に示すように、グリップ部102から前方に突出している。クラッチ操作部52は、ユーザがグリップ部102を保持してスイッチ131がオンになった後に、ユーザによる、内歯歯車56とクラッチ板54とを結合させるための操作を受け付ける操作部である。ユーザは、クラッチ操作部52を引く操作によって、押圧部51を介してクラッチ板54を第1位置から第2位置に移動させ、クラッチ板54と内歯歯車56を接続させることができる。つまり、ユーザは、クラッチ操作部52を引く操作によって、クラッチ機構5を遮断状態から伝達状態に切り替えることができる。クラッチ操作部52は、ばね機構によって前方に反発力を与えられており、ユーザは、ばねの反発力に抗ってクラッチ操作部52を引くことによってクラッチ機構5を遮断状態から伝達状態に切り替えることができる。ユーザがクラッチ操作部52の引き込みを解除すると、クラッチ操作部52はばねの反発力によって前方に押し戻され、クラッチ機構5は伝達状態から遮断状態に切り替わる。
【0058】
記憶部9は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。記憶部9は、制御部7が実行する制御プログラムを記憶する。また記憶部9は、締付トルクの設定値(設定トルク)等を記憶する。
【0059】
制御部7は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、制御部7の少なくとも一部の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0060】
制御部7は、図3に示すように、トルク検出部71及び駆動制御部72を有する。なお、トルク検出部71及び駆動制御部72は、必ずしも実体のある構成を示しているわけではなく、制御部7によって実現される機能を示している。
【0061】
トルク検出部71は、モータ2に流れる電流量に基づいて、出力軸6の締付トルクを検出する。
【0062】
駆動制御部72は、モータ2を制御する。具体的には、駆動制御部72は、スイッチ131が押されると、モータ2をオンに制御する。駆動制御部72は、例えばベクトル制御でモータ2を制御する。駆動制御部72は、モータ2に供給する電流であるモータ電流を、トルクを発生するトルク電流(q軸電流)と磁束を発生させる励磁電流(d軸電流)とに分解し、それぞれの電流成分を独立に制御する。なお、駆動制御部72がモータ2を制御する方法は、ベクトル制御に限定されず、ベクトル制御とは異なる制御方法であってもよい。
【0063】
駆動制御部72は、工具本体10が保持された状態であって、クラッチ機構5が遮断状態に切り替えられた状態では、所定の回転数で回転するようにモータ2を制御(回転数制御)する。
【0064】
駆動制御部72は、クラッチ機構が伝達状態に切り替えられた状態では、トルク検出部71によって測定された締付トルクが、予め記憶部9に記憶されている設定トルクに一致するようにモータ2を制御する。例えば、トルク検出部71によって検出された締付トルクと設定トルクとの誤差が所定の許容範囲(例えば設定トルクの±20%)に収まると、駆動制御部72はモータ2を制御して駆動軸21の回転を停止させる。
【0065】
(2.2)動作の説明
以下に、電動工具1の動作について、図1図8図12を参照して詳細に説明する。
【0066】
まず、ユーザは、作業を行うために、電動工具1のグリップ部102を保持する。ユーザがグリップ部102を保持すると、スイッチ131がオンになる。つまり、ユーザがグリップ部102を保持すると、検知部13は、グリップ102がユーザによって保持されている保持状態を検知する。
【0067】
駆動制御部72は、検知部13が、保持状態を検知した場合に、モータ2を所定の回転数で回転させる。なお、駆動制御部72が、検知部13が保持状態を検知してモータ2の駆動を開始した時点では、クラッチ機構5は遮断状態である。つまり、検知部13が保持状態を検知して、駆動制御部72がモータ2の回転(駆動)を開始させた場合に、出力軸6が回転する可能性を低減することができる。
【0068】
詳細には、クラッチ機構5が遮断状態において、スイッチ131がオンになると、駆動制御部72は、モータ2をオンにして、駆動軸21を所定の回転数(第1回転数)で回転させる。第1回転数の値は、例えば記憶部9に記憶されている。
【0069】
駆動軸21が第1回転数で回転すると、駆動軸21に固定された太陽歯車57も第1回転数で回転する。また、太陽歯車57と噛み合っている3つの遊星歯車58は、太陽歯車57が回転することによって、各々の回転軸581を中心に回転する。このとき、3つの遊星歯車58の各々の回転軸581は、回転可能な状態で、キャリア55を介してクラッチ板54に支持されている。
【0070】
このとき、上述したように、クラッチ機構5は遮断状態であり、クラッチ板54は図8に示すように、第1位置にあり、内歯歯車56と離間している。また、クラッチ板54は第1位置にあるとき、クラッチ操作部52に前方への反発力を与えるばね機構により、クラッチ操作部52と結合した押圧部51を介して内部ハウジング10Bの接触面S1(図1参照)に押し当てられる。つまり、クラッチ板54は遮断状態において、内部ハウジング10Bによって回転が抑制されている。なお、クラッチ板54と内部ハウジング10Bとは互いに篏合する篏合部を有してもよく、クラッチ板54が第1位置にあるとき、クラッチ板54の篏合部と内部ハウジング10Bの篏合部とが篏合することで、クラッチ板54の回転が抑制されてもよい。
【0071】
これらにより、キャリア55を介してクラッチ板54に支持されている3つの遊星歯車58は、太陽歯車57に対する回転(公転)が抑制される。つまり、3つの遊星歯車58の各々は、太陽歯車57に対する位置が固定されたまま、回転軸581を中心として回転する。このとき、3つの遊星歯車58の周囲に配置され、3つの遊星歯車58と噛み合っている内歯歯車56は、内部ハウジング10Bの内部で回転可能な状態で内部ハウジング10Bに収容されている。図11に示すように、遮断状態において、内歯歯車56は、太陽歯車57の回転が3つの遊星歯車58の各々の回転軸581を中心とした回転によって伝達されることにより、太陽歯車57の回転方向(第1方向DR1)と逆方向(第2方向DR2)に第2回転数で回転する。ここで、本実施形態では、第1方向DR1は電動工具1を後方から見た場合の時計回りの回転方向であり、第2方向DR2は反時計回りの回転方向である。なお、第1方向DR1は反時計回りでもよく、この場合は、第2方向DR2は時計回りとなる。また、第2回転数は、太陽歯車57の歯数を内歯歯車56の歯数で除した値を第1回転数に乗じた値である。ここで、太陽歯車57の歯数は内歯歯車56の歯数よりも小さいため、第2回転数は第1回転数よりも小さい値となる。
【0072】
次にユーザは、グリップ部102を保持した保持状態、かつ、先端工具11の先端をねじ等の締結部品に接触させた状態で、クラッチ操作部52を引き、クラッチ板54を前後方向に沿って第1位置(図8参照)から第2位置(図9参照)に移動させる。ここにおいて、ユーザがグリップ部102を保持した時点で駆動軸21は回転を開始しているため、ユーザがクラッチ操作部52を引き操作しようとするときには、駆動軸21の回転数及び内歯歯車56の回転数は、第1回転数及び第2回転数に各々達している可能性が高い。つまり、ユーザは、クラッチ操作部52を引き操作しようとしたとき、駆動軸21の回転数及び内歯歯車56の回転数が、第1回転数及び第2回転数に各々達するのを待つ必要がない。
【0073】
クラッチ板54が第2位置に移動すると、図9に示すように、3つの爪部543の前後方向の位置と、3つの係合部561の前後方向の位置が重なる。そして、図10に示すように、第2方向DR2に回転する3つの係合部561の各々の側面S2と、3つの爪部543の各々の側面S3とが係合する。以下、3つの係合部561の各々の側面S2と、3つの爪部543の各々の側面S3との係合によって、クラッチ機構5に発生する力について、図12等を参照して説明する。
【0074】
3つの爪部543が設けられたクラッチ板54は、伝達状態においては、内部ハウジング10Bの接触面S1から離間しているため、内部ハウジング10Bに対して回転可能な状態になっている。したがって、第2方向DR2に回転する3つの係合部561の各々の側面S2が、3つの爪部543の各々の側面S3と係合する(図10参照)と、クラッチ板54及びクラッチ板54を保持するキャリア55は第2方向DR2に回転しようとする。また、回転軸581を中心として回転可能な状態でキャリア55に支持されている3つの遊星歯車58も第2方向DR2に回転(公転)しようとする。3つの遊星歯車58が第2方向DR2に公転しようとした場合、3つの遊星歯車58の各々には、回転軸581を中心として第1方向DR1に回転(自転)しようとする力F1(図12参照)が働く。一方、3つの遊星歯車58の各々には、第1方向DR1に回転する太陽歯車57から、第2方向DR2に回転する力F2(図12参照)が働いている。力F1及び力F2はともに太陽歯車57の第1方向DR1への回転によって発生する力であるため、力F1及び力F2は拮抗し、3つの遊星歯車58の各々は、回転軸581を中心とした回転を停止する。これにより、内歯歯車56も第2方向DR2の回転を停止する。つまり、伝達状態において、内歯歯車56とクラッチ板54とが接続することによって、内歯歯車56と、クラッチ板54と、3つの遊星歯車58と、太陽歯車57と、が互いに対して回転を停止する。換言すると、伝達状態において、内歯歯車56とクラッチ板54とが結合することによって、内歯歯車56と、クラッチ板54と、3つの遊星歯車58と、太陽歯車57と、が互いに固定される。内歯歯車56と、クラッチ板54と、3つの遊星歯車58と、太陽歯車57と、が互いに固定されると、内歯歯車56と、クラッチ板54と、3つの遊星歯車58と、太陽歯車57と、が一体となって、第1方向DR1に第1回転数で回転する。これにより、クラッチ板54及びキャリア55と結合している出力軸6が第1方向DR1に第1回転数で回転する。これにより、ユーザは出力軸6に取り付けられた先端工具11によって締結部品の締結作業を実施することができる。
【0075】
駆動制御部72は、トルク検出部71によって測定された締付トルクと設定トルクとの誤差が所定の許容範囲(例えば設定トルクの±20%)に収まると、モータ2を制御して駆動軸21の回転を停止させる。
【0076】
ユーザは、駆動軸21の回転が停止すると、クラッチ操作部52の操作を停止しクラッチ機構5を伝達状態から遮断状態に切り替える。
【0077】
次にユーザは、グリップ部102を保持したまま先端工具11の先端を締結部品から外す。このとき、グリップ部102は保持状態に維持されているので、モータ2はオンに維持されている。具体的には、グリップ部102は保持状態に維持されているので、モータ2の駆動軸21は第1回転数での回転を維持している。
【0078】
これにより、例えば、締結部品の締結作業の完了後に、グリップ部102を保持状態に維持したまま、他の締結部品の締結作業を行う場合に、ユーザはすぐにクラッチ操作部52を引くことができるため、作業効率が向上する。
【0079】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0080】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0081】
(3.1)変形例1
変形例1の電動工具1を図13に基づいて説明する。なお、上記実施形態と共通する構成要素には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0082】
検知部13は、グリップ部102に設けられるセンサを含んでもよい。一例として、グリップ部102に設けられるセンサは、図13に示すように、感圧センサ132を含む。なお、グリップ部102に設けられるセンサは、感圧センサ132以外のセンサでもよく、ユーザの体温を検知する感熱センサ、工具本体10にかかる加速度の変化を検知する加速度センサ等であってもよい。また、検知部13は、上記実施形態におけるスイッチ131及びセンサの両方を含んでもよい。この場合、スイッチ131及びセンサのいずれか一方によって保持状態を検知してもよいし、スイッチ131及びセンサの両方によって保持状態を検知してもよい。
【0083】
感圧センサ132は、ユーザがグリップ部102を保持したことによる圧力の増大を検知するセンサであって、例えば、静電容量式の圧力センサ、ピエゾ抵抗効果を利用したピエゾ抵抗式圧力センサ等から適宜選択されればよい。
【0084】
感圧センサ132が保持状態を検知することによって、上記実施形態におけるスイッチ131と比較して、検知感度が向上する、という利点がある。
【0085】
(3.2)変形例2
変形例2の電動工具1を図14に基づいて説明する。なお、上記実施形態と共通する構成要素には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0086】
検知部13は、図14に示すように、グリップ部102に設けられる近接センサ133を含んでもよい。
【0087】
近接センサ133は、ユーザの身体の少なくとも一部(例えば手)を非接触で検知するセンサであって、例えば、静電容量式の近接センサ、レーザ光又は赤外光などの光を利用する近接センサ等から適宜選択されればよい。
【0088】
近接センサ133がユーザの身体の少なくとも一部(例えば手)とグリップ部102との距離が所定距離以下となった状態を保持状態として検知することにより、ユーザがグリップ部102に触れる前に、モータ2をオンに制御することができる。これにより、上記実施形態におけるスイッチ131と比較して、検知感度が向上する、という利点がある。また、これにより、上記実施形態におけるスイッチ131及び上記変形例1の感圧センサ132と比較して、早い時点で保持状態を検知するため、作業効率が向上する、という利点がある。
【0089】
(3.3)その他の変形例
本開示における電動工具1は、制御部7にコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御部7としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1又は複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なる。IC又はLSI等の集積回路は、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスも、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1又は複数の電子回路で構成される。
【0090】
電動工具1には、ドライバビットの代わりにソケットが先端工具11として取り付けられてもよい。さらに、電動工具1は、電池パック14を電源とする構成に限らず、交流電源(商用電源)を電源とする構成であってもよい。
【0091】
また、電動工具1は、締付トルクを測定するトルクセンサを備えていてもよい。トルクセンサは、例えば、ねじり歪みの検出が可能な磁歪式歪センサである。磁歪式歪センサは、出力軸6にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた透磁率の変化を検出し、歪みに比例した電圧信号を出力するセンサである。電動工具1がトルクセンサを備える場合、トルク検出部71は、トルクセンサによって測定される締付トルクを検出してもよい。
【0092】
スイッチ131を押す強さによって、駆動軸21の回転速度を調整可能であってもよく、例えばスイッチ131を押す強さが強いほど、駆動軸21の回転速度が速くなるように構成されてもよい。つまり、ユーザがグリップ部102を強い力で保持するほど、駆動軸21の回転速度が速くなるように構成されてもよい。
【0093】
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様の電動工具(1)は、モータ(2)と、先端工具(11)が取り付けられる出力軸(6)と、モータ(2)を制御する制御部(7)と、クラッチ機構(5)と、クラッチ操作部(52)と、工具本体(10)と、検知部(13)と、を備える。クラッチ機構(5)は、モータ(2)のトルクを出力軸(6)に伝達する伝達状態と、モータ(2)のトルクの出力軸(6)への伝達を遮断する遮断状態とに切り替わる。クラッチ操作部(52)は、クラッチ機構(5)を伝達状態と遮断状態とに切り替える。工具本体(10)は、モータ(2)、出力軸(6)の少なくとも一部、クラッチ機構(5)及びクラッチ操作部(52)の少なくとも一部を収容する。検知部(13)は、工具本体(10)がユーザによって保持されている保持状態であるか否かを検知する。制御部(7)は、検知部(13)が保持状態を検知した場合に、モータ(2)を所定の回転数で回転させる。
【0094】
この態様によれば、ユーザが工具本体(10)を保持した後に、自らモータ(2)を所定の回転数で回転させる操作を行う場合と比べて、クラッチ操作部(52)を早く操作することができるため、電動工具(1)による作業の作業効率を向上することができる。
【0095】
第2の態様の電動工具(1)では、第1の態様において、工具本体(10)は、ユーザによって保持されるグリップ部(102)を含む。検知部(13)は、グリップ部(102)に設けられるスイッチ(131)を含む。
【0096】
この態様によれば、ユーザがグリップ部(102)を保持するとスイッチ(131)がオンとなり、検知部(13)は保持状態を検知することができる。
【0097】
第3の態様の電動工具(1)では、第2の態様において、スイッチ(131)は、プッシュスイッチを含む。
【0098】
この態様によれば、ユーザがグリップ部(102)を保持するとスイッチ(131)がオンとなり、検知部(13)は保持状態を検知することができる。
【0099】
第4の態様の電動工具(1)では、第1~第3のいずれかの態様において、工具本体(10)は、ユーザによって保持されるグリップ部(102)を含む。検知部(13)は、グリップ部(102)に設けられるセンサを含む。
【0100】
この態様によれば、検知部(13)の検知感度を向上することができる。
【0101】
第5の態様の電動工具(1)では、第4の態様において、センサは、感圧センサ(132)を含む。
【0102】
この態様によれば、検知部(13)の検知感度を向上することができる。
【0103】
第6の態様の電動工具(1)では、第4の態様において、センサは、近接センサ(133)を含む。
【0104】
この態様によれば、早い時点で保持状態を検知するため、作業効率を向上することができる。
【0105】
第7の態様の電動工具(1)では、第1~第6のいずれかの態様において、制御部(7)が、検知部(13)が保持状態を検知してモータ(2)の駆動を開始した時点では、クラッチ機構(5)は遮断状態である。
【0106】
この態様によれば、検知部(13)が保持状態を検知して、モータ(2)の駆動を開始させた場合も、出力軸(6)が回転する可能性を低減することができる。
【0107】
なお、第2~第7の態様は電動工具(1)に必須の構成ではなく、適宜省略が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 電動工具
2 モータ
5 クラッチ機構
6 出力軸
7 制御部
10 工具本体
11 先端工具
13 検知部
52 クラッチ操作部
102 グリップ部
131 スイッチ
132 感圧センサ
133 近接センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14