(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054782
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】聴覚器調整装置、聴覚器、情報処理装置、聴覚器調整方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20240410BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
H04R25/00 H
H04M1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161237
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】宮本 聡人
【テーマコード(参考)】
5K127
【Fターム(参考)】
5K127BA03
5K127BB02
5K127BB33
5K127CB21
5K127DA15
5K127MA05
(57)【要約】
【課題】ユーザの実際の使用環境における設定情報を利用して自動的に聴覚器の調整を行う。
【解決手段】聴覚器調整装置200は、手動調整された聴覚器の設定値に関する情報及び手動調整日時に関する情報を含む手動調整情報を取得し、取得された手動調整情報に基づいて生成された、自動調整設定値を含む自動調整情報を聴覚器に供給する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動調整された聴覚器の設定値に関する情報及び手動調整日時に関する情報を含む手動調整情報を取得し、
取得された前記手動調整情報に基づいて生成された、自動調整設定値を含む自動調整情報を前記聴覚器に供給する、
聴覚器調整装置。
【請求項2】
前記手動調整情報の分析を行うことによって分析データを生成し、
前記分析データにしたがって前記自動調整情報を生成する、
請求項1に記載の聴覚器調整装置。
【請求項3】
前記分析データは、取得された前記手動調整情報のうち、手動調整された設定値の特性及び設定値の時間帯が共通しているものがグループ化されているデータである、
請求項2に記載の聴覚器調整装置。
【請求項4】
前記手動調整情報は、手動調整された曜日及び祝日の少なくとも一方の情報を含み、
前記分析データは、前記手動調整情報に基づいて分析された平日及び休日の少なくとも一方の情報を含む、
請求項2に記載の聴覚器調整装置。
【請求項5】
前記自動調整情報は、前記自動調整設定値に対応する時間帯に関する情報を含む、
請求項1に記載の聴覚器調整装置。
【請求項6】
現在時刻が前記設定値の切り替えタイミングになると、前記自動調整情報を前記聴覚器に供給する、
請求項1に記載の聴覚器調整装置。
【請求項7】
前記聴覚器の設定値を手動調整するための設定値を取得する操作入力部をさらに備え、
前記操作入力部で取得した前記設定値に関する情報を前記聴覚器に供給する、
請求項1に記載の聴覚器調整装置。
【請求項8】
表示部、記憶部及び通信部をさらに備え、
前記通信部は、前記聴覚器の音入力部が取得した音情報を受信し、
前記記憶部は、前記受信した音情報を含む前記手動調整情報を保存し、
前記表示部は、前記手動調整情報の内容を表す情報を表示する、
請求項1に記載の聴覚器調整装置。
【請求項9】
前記通信部は情報処理装置と通信し、
前記通信部は、前記手動調整情報を前記情報処理装置に送信する、
請求項8に記載の聴覚器調整装置。
【請求項10】
音を出力する音出力部と、
請求項1から9のいずれか1項に記載の聴覚器調整装置と通信する聴覚器通信部と、
を備え、
前記設定値及び前記自動調整設定値に基づいて前記音出力部が出力する音を調整する、
聴覚器。
【請求項11】
時計部を備え、
前記音出力部は、前記自動調整設定値に対応する時間帯に関する情報を含む前記自動調整情報及び前記時計部により取得された日時の情報に基づいて音を出力する、
請求項10記載の聴覚器。
【請求項12】
手動調整された設定値及び手動調整日時に関する情報を含む手動調整情報に基づいて自動調整設定値を含む自動調整情報を生成し、
前記自動調整情報に応じた音を出力する、
聴覚器。
【請求項13】
請求項9に記載の聴覚器調整装置と通信する通信部と、表示部と、制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記通信部を介して前記聴覚器調整装置から送信された前記手動調整情報を受信し、
前記受信した手動調整情報の内容を表す情報を前記表示部に表示する、
情報処理装置。
【請求項14】
制御部が、
手動調整された聴覚器の設定値に関する情報及び手動調整日時に関する情報を含む手動調整情報を取得し、
取得された前記手動調整情報に基づいて生成された、自動調整設定値を含む自動調整情報を前記聴覚器に供給する、
聴覚器調整方法。
【請求項15】
コンピュータに、
手動調整された聴覚器の設定値に関する情報及び手動調整日時に関する情報を含む手動調整情報を取得し、
取得された前記手動調整情報に基づいて生成された、自動調整設定値を含む自動調整情報を前記聴覚器に供給する、
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴覚器調整装置、聴覚器、情報処理装置、聴覚器調整方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
補聴器等の聴覚器を使用する際には、聴覚器のユーザのオージオグラムや使用環境に応じて聴覚器の調整が行われる。例えば、特許文献1には、補聴器が使用されている音環境の情報を表すログデータを収集するとともに補聴器のユーザにアンケートを記入させ、アンケートデータやログデータに基づいて補聴器の調整を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている補聴器の調整方法は、補聴器ユーザの主観的体験に関する多数の質問を含むアンケートをコンピュータベースで実施することにより、従来よりも補聴器を細かく調整できるようにしている。しかし、多数の質問を用意したとしてもユーザが実際に使用している時の環境を再現するのは困難であり、また、多数の質問に回答するのは煩雑である。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、ユーザの実際の使用環境における設定情報を利用して自動的に聴覚器の調整を行うことができる聴覚器調整装置、聴覚器、情報処理装置、聴覚器調整方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る聴覚器調整装置の一態様は、
手動調整された聴覚器の設定値に関する情報及び手動調整日時に関する情報を含む手動調整情報を取得し、
取得された前記手動調整情報に基づいて生成された、自動調整設定値を含む自動調整情報を前記聴覚器に供給する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの実際の使用環境における設定情報を利用して自動的に聴覚器の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1,2に係る聴覚器調整システムの一例を示す図である。
【
図2】実施の形態1,2に係る聴覚器の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態1,2に係る聴覚器調整装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1,2,3に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1,2,3に係る自動調整処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1,2,3に係る自動調整パラメータの一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1,2,3に係る調整情報保存処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1,2,3に係る聴覚器調整装置に保存される設定値ログデータである。
【
図9】実施の形態1,2,3に係る聴覚器調整装置で生成される設定値分析データである。
【
図10】実施の形態1,2,3に係る音情報表示処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態3に係る聴覚器の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る聴覚器調整装置等について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0010】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る聴覚器調整装置200は、ユーザ(聴覚器使用者)が補聴器、集音器等の聴覚器の調整をした時刻と設定内容とをログデータとして保存し、このログデータを分析して聴覚器を自動調整するためのパラメータ(自動調整情報)を生成し、このパラメータに基づいて聴覚器を自動調整するプログラムを備えている装置である。
【0011】
実施の形態1に係る聴覚器調整システム1000は、
図1に示すように、聴覚器100と聴覚器調整装置200とを備え、これらがBluetooth(登録商標)等により通信接続して動作する。また、聴覚器調整システム1000は、
図1に示すように、聴覚器調整装置200と通信接続する情報処理装置300をさらに備えてもよい。情報処理装置300は、主に医師や認定補聴器技能者によって使用され、聴覚器調整装置200で保存されたログデータ等を表示することができる。
【0012】
また、聴覚器調整装置200は、例えば
図1に示すような設定値調整画面231を表示して、聴覚器100における聴覚に関する各種パラメータ(聴覚器100で出力する音を調整する際に用いられる増幅度、音量等の値)が設定されている設定値を調整(再設定)することができる。設定値は、各種のパラメータ値自体であってもいいし、パラメータ値に基づいた音を聴覚器100が出力するために聴覚器100が要する電圧値であってもよい。
図1では、健常者の可聴帯域中の特定の周波数帯(例えば250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHzを中心とする周波数帯)毎の増幅度の調整、全体の音量の調整、聴覚器調整装置200の通知音や聴覚器100の音出力に対するミュートの設定が行える設定値調整画面231の例が示されている。
【0013】
実施の形態1に係る聴覚器100は、
図1に示すようにイヤホン型でユーザの耳に装着される小型のウェアラブル機器である。聴覚器100は、機能構成として、
図2に示すように、制御部110、記憶部120、音入力部130、音出力部140、通信部150を備える。
【0014】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の少なくとも1つのプロセッサで構成される。制御部110は、記憶部120に記憶されているプログラムを実行することにより、聴覚器100を動作させるための各種処理を行う。例えば、制御部110は、音入力部130が取得した音のデータに対して、聴覚器100の調整された設定値(聴覚に関する各種パラメータ)に基づいて増幅等の処理を行い、処理後のデータを用いて音出力部140から音を出力させる。また、例えば、制御部110は、音入力部130で取得した音情報(マイクロフォンの電圧の情報等)を記憶部120に保存したり、保存した音情報を通信部150で聴覚器調整装置200に送信したりする処理を行う。
【0015】
記憶部120は、制御部110が実行するプログラムや、必要なデータを記憶する。記憶部120は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を含み得るが、これらに限られるものではない。なお、記憶部120は、制御部110の内部に設けられていてもよい。制御部110が通信部150を介して聴覚器調整装置200から受信した聴覚器100の設定値に関する情報は記憶部120に調整された設定値として記憶され、この調整された設定値に基づいて聴覚器100は出力する音の調整(増幅等の処理)を行う。
【0016】
音入力部130は、マイクロフォン、A/D(Analog/Digital)コンバータ等を備え、周囲の音を取得する。なお、音入力部130は、周囲の音の情報をA/D変換した値だけでなく、マイクロフォンに時々刻々と生じている電圧の値を取得してもよい。そして、制御部110は、音入力部130が取得したこれらの値(マイクロフォンで取得した音をA/D変換したデジタル値や電圧値)を所定のサンプリング周波数(例えば44.1kHz)で記憶部120内のリングバッファ(音情報リングバッファ)に記録し続ける。リングバッファのサイズは任意だが、本実施の形態1では、音情報保存期間(例えば約10秒間)分のデータを保存できるリングバッファとする。
【0017】
音出力部140は、D/A(Digital/Analog)コンバータ、スピーカ等を備え、制御部110が調整された設定値に基づいて調整した周囲の音を出力する。より詳細には、制御部110は、音入力部130が取得した音のデジタルデータ(ユーザの周囲の音を取得してA/D変換したデータ)を、調整された設定値(各周波数帯の増幅度等の聴覚に関する各種パラメータ)に基づいて増幅等し、それを音出力部140から音として出力させる。
【0018】
通信部150は、Bluetooth(登録商標)により聴覚器100と聴覚器調整装置200との間でデータを送受信するための通信インタフェースである。通信部150で聴覚器調整装置200と通信することにより、聴覚器100は、例えば聴覚器調整装置200から設定値に関する情報を受信したり、聴覚器調整装置200に音情報を送信したりする。ただし、通信部150が対応している通信規格はBluetooth(登録商標)に限られず、無線LAN(Local Area Network)等に対応した無線通信インタフェースでもよい。
【0019】
また、実施の形態1に係る聴覚器調整装置200は、例えばスマートフォンであり、機能構成として、
図3に示すように、制御部210、記憶部220、表示部230、操作入力部240、通信部250を備える。
【0020】
制御部210は、例えばCPU等のプロセッサで構成される。制御部210は、記憶部220に記憶されているプログラムにより、後述する自動調整処理等を実行する。なお、制御部210は、日時の情報を取得することができる時計部を内部に備えている。ただし、聴覚器調整装置200は電波時計又はGPS(Global Positioning System)時計を備えていてもよく、この場合には、制御部210は内部に時計部を備える必要はなく、電波時計又はGPS時計を時計部として日時の情報を取得することができる。
【0021】
記憶部220は、制御部210が実行するプログラムや、必要なデータを記憶する。記憶部220は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を含み得るが、これらに限られるものではない。なお、記憶部220は、制御部210の内部に設けられていてもよい。
【0022】
表示部230は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示デバイスを備える。
【0023】
操作入力部240は、押しボタンスイッチや表示部230と一体化されたタッチパネル等のユーザインタフェースであり、ユーザからの操作入力を受け付ける。制御部210は、タッチパネル上のタップ操作等やスイッチの押下状態等の検出結果に基づいて、ユーザがどのような操作入力を行ったのかを取得することができる。
【0024】
通信部250は、聴覚器調整装置200が聴覚器100、情報処理装置300、外部装置(例えば、他のスマートフォン、タブレット、PC(Personal Computer)等)等とデータ通信したり、インターネットから情報を取得したりするための通信インタフェースである。通信部250は、例えばBluetooth(登録商標)や無線LANで通信するための無線通信インタフェースを含み得る。
【0025】
また、実施の形態1に係る情報処理装置300は、例えばPCであり、機能構成として、
図4に示すように、制御部310、記憶部320、表示部330、操作入力部340、通信部350を備える。
【0026】
制御部310は、例えばCPU等のプロセッサで構成される。制御部310は、記憶部320に記憶されているプログラムにより、後述する音情報表示処理等を実行する。
【0027】
記憶部320は、制御部310が実行するプログラムや、必要なデータを記憶する。記憶部220は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を含み得るが、これらに限られるものではない。なお、記憶部320は、制御部310の内部に設けられていてもよい。
【0028】
表示部330は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示デバイスを備え、通信部350で受信した情報等を表示する。
【0029】
操作入力部340は、キーボード、マウス等のユーザインタフェースであり、ユーザからの操作入力を受け付ける。
【0030】
通信部350は、情報処理装置300が聴覚器調整装置200、外部装置等とデータ通信したり、インターネットから情報を取得したりするための通信インタフェースである。通信部350は、例えばBluetooth(登録商標)や無線LANで通信するための無線通信インタフェースを含み得る。
【0031】
なお、どの装置の制御部110,210,310なのかを区別する場合には、制御部110は聴覚器制御部と呼ばれ、制御部210は聴覚器調整装置制御部又は単に制御部と呼ばれ、制御部310は情報処理装置制御部と呼ばれる。また、どの装置の通信部150,250,350なのかを区別する場合には、通信部150は聴覚器通信部と呼ばれ、通信部250は聴覚器調整装置通信部又は単に通信部と呼ばれ、通信部350は情報処理装置通信部と呼ばれる。記憶部120,220,320や、表示部230,330や、操作入力部240,340についても同様である。
【0032】
次に、聴覚器調整装置200が聴覚器100の設定値の再設定或いは切り替えを自動的に調整する処理である自動調整処理について、
図5を参照して説明する。なお、予め聴覚器100と聴覚器調整装置200とはペアリング接続がされているものとする。そして、聴覚器100の電源が入ると、聴覚器調整装置200は通信部250を介して聴覚器100と接続し、自動調整処理の実行が開始される。通常は、一日の最初にユーザが聴覚器100の電源を入れて聴覚器100を装着した際に自動調整処理の実行が開始される。
【0033】
まず、制御部210は、その日の自動調整パラメータ(自動調整情報)221を取得する(ステップS101)。自動調整パラメータ221は、
図6に示すように、自動調整されることになる時間帯(後述する自動調整設定値に対応する時間帯)と自動調整される際に用いられる設定値(自動調整設定値)とが対応しているデータであり、制御部210は、後述する分析データから生成して取得する。なお、設定値は例えば
図1に示す設定値調整画面231等で設定された設定値であり、複数のパラメータ値(周波数帯毎の増幅度、全体の音量等)を含むが、それらを全て記載すると煩雑になるため、
図6及び後述する
図8、
図9では、少なくとも1つのパラメータ値が互いに異なる複数の設定値を容易に区別できるよう、「設定値A」、「設定値B」等という個別の表記にしている。
【0034】
次に、制御部210は、自動調整パラメータに基づいて聴覚器100の自動調整を行う(ステップS102)。より詳細には、制御部210が自動調整パラメータ221を参照して次に切り替えるべき設定値を呼び出し、現在の時間帯が設定値の切り替えタイミングになると或いは切り替えタイミングが近づくと、現在の時間帯に対応する切り替えるべき設定値に関する情報を聴覚器100に(通信部250を介して)送信(供給)する。聴覚器100の制御部110は(通信部150を介して)当該設定値に関する情報を受信し、当該設定値に基づいて調整された音を音出力部140から出力させる。このため、聴覚器調整装置200から時間帯毎に設定値に関する情報が送信されることにより、聴覚器100は、各時間帯における適切な設定値に自動調整されることになる。この場合、聴覚器100は、設定値に関する情報を受信したタイミングで設定値を調整すればよいので、内部に時計部を備える必要がない。すなわち、本実施の形態1は、聴覚器100の軽量化、簡素化に寄与することができる。
【0035】
そして、制御部210は、聴覚器100の手動調整の入力(通常、操作入力部240で行われる)が存在するか否かを判定する(ステップS103)。この手動調整は、例えば
図1に示す聴覚器調整装置200の設定値調整画面231で行われる。手動調整の入力がないなら(ステップS103;No)、ステップS105に進む。なお、手動調整は、いわゆるマニュアル操作による調整(人為的操作による調整)であり、必ずしも手や指による操作に限らず、人の音声による指示に基づいて操作されるものであってもよい。例えば、聴覚器調整装置200が、操作入力部240としての集音マイク及び音声認識プログラムを備えていれば、音声による手動調整の入力が可能になる。
【0036】
手動調整の入力があるなら(ステップS103;Yes)、制御部210は、手動調整された設定値や手動調整の時刻或いは時間帯を含む手動調整情報を保存したりする処理である調整情報保存処理を行い(ステップS104)、ステップS105に進む。調整情報保存処理の詳細については後述する。
【0037】
ステップS105では、制御部210は、聴覚器100の電源が切れたか否かを判定する。聴覚器調整装置200と聴覚器100とはペアリング接続の設定が済んでいるので、制御部210は、通信部250を介して聴覚器100の電源が切れたことを判定することができる。
【0038】
聴覚器100の電源が切れていないなら(ステップS105;No)、制御部210はステップS102に戻り、自動調整パラメータ221に基づく聴覚器100の自動調整を繰り返す。
【0039】
聴覚器100の電源が切れているなら(ステップS105;Yes)、制御部210は、自動調整処理を終了する。
【0040】
次に、ステップS104で実行される調整情報保存処理について、
図7を参照して説明する。この処理は、手動調整により調整された設定値、調整された日時を示す調整日時情報及び音情報をログデータとして保存し、ユーザの1日の間の音環境の変化を複数日分、分析して分析データを生成する処理である。
【0041】
まず、制御部210は、操作入力部240から手動調整された設定値(手動調整で入力された設定値)を取得するとともに、手動調整の入力が行われた日時の情報を取得する(ステップS201)。具体的には、制御部210は、この手動調整された設定値を、経時的に状況が変化するユーザの周囲の外的環境等に応じて、ユーザが、例えば
図1の設定値調整画面231から操作入力した値として取得する。この手動調整された設定値に関する情報は通信部250を介して聴覚器100に送信(供給)され、聴覚器100の制御部110は送信された手動調整された設定値に関する情報に基づいて音出力部140から出力する音を調整する。
【0042】
上述したように、ユーザの周囲の外的環境等の状況は経時的に変化するため、ユーザは状況の変化に応じて聴覚器100の手動調整を行うと考えられる。したがって、制御部210はステップS201で、手動調整された設定値とその日時の情報とを取得することにより、変化した状況に適合するように調整するための聴覚器100の設定値と、状況が変化した日時の情報(手動調整が行われた日時(手動調整日時)に関する情報)と、を取得することができる。
【0043】
そして、制御部210は手動設定が行われた時の音情報を取得する(ステップS202)。より詳細には、まず制御部210は、通信部250を介して聴覚器100に対し音情報リングバッファの情報の送信を要求する要求信号を送る。するとその要求信号を受信した聴覚器100はその時点の音情報リングバッファのデータを聴覚器調整装置200に送信する。したがって、制御部210はその音情報リングバッファのデータを受信することにより、手動設定が行われた時の音情報を取得する。すなわち、設定が行われた時の直前の音情報保存期間(例えば約10秒間)分の音情報が取得される。
【0044】
音情報は、その時点でのユーザの音の環境が得られるデータであれば任意のデータでよいが、本実施の形態1では、マイクロフォンの電圧の音情報保存期間分の時系列データ(電圧が刻々と変化している様子がわかるデータ)である。マイクロフォンの電圧変化は、マイクロフォンの周囲の音の環境を表す生データと考えることができるので、本実施の形態1では、これを保存することにより、聴覚器100のユーザのその時点の音環境を正確に把握することができる。
【0045】
そして、制御部210は、ステップS202で取得した音情報に基づき、手動設定時にユーザの周囲が実質的に無音だったか否かを判定する(ステップS203)。実質的に無音でないなら(ステップS203;No)、制御部210は、手動設定が行われた日時の情報(調整日時情報)とともに、ステップS201で取得した手動調整された設定値とステップS202で取得した音情報とを、
図8に示すように、記憶部220にログデータ(手動調整情報)222として保存し(ステップS204)、ステップS206に進む。なお、
図8では音情報は「音情報01」等と表記されているが、実際には聴覚器100の音情報リングバッファに保存されていたデータが音情報としてログデータ222に保存される。
【0046】
一方、手動設定時にユーザの周囲が実質的に無音だったなら(ステップS203;Yes)、制御部210は、手動設定が行われた日時の情報(調整日時情報)とともに、ステップS201で取得した手動調整された設定値を記憶部220にログデータ222として保存し(ステップS205)、ステップS206に進む。手動設定時に実質的に無音だった場合は、
図8に示す例では、調整日時情報「2022/02/02(We) 7:03」の列に示すように、音情報が「-」と表記されている。
【0047】
ステップS203及びステップS205の処理により、実質的に無音の音情報をログデータ222に保存せずに済むので、ログデータ222のサイズを節約することができる。ただし、ログデータ222のサイズを節約する必要がない場合には、制御部210は、ステップS203及びステップS205の処理を実行せずに、常にステップS204の処理を実行するようにしてもよい。
【0048】
ステップS206では、制御部210はログデータ222を前回記録した日から日付が変化しているか否かを判定する(ステップS206)。日付が変化していないなら(ステップS206;No)、制御部210は、自動調整処理(
図5)のステップS101で取得した自動調整パラメータ221のデータのうち、現在時刻が含まれる時間帯に対応する設定値をステップS201で取得した手動調整された設定値に上書きすることによって更新し(ステップS207)、調整情報保存処理を終了する。
【0049】
一方、日付が変化していたら(ステップS206;Yes)、制御部210は、取得されたログデータ222をまとめて分析して分析データ223を生成する(ステップS208)。より詳細には、まず制御部210は、同じような生活サイクルを送っていると推定される複数の日の時間毎の設定値をログデータ222に基づいて集計し、その中で手動調整された設定値の特性及びその時間帯が共通しているものをグループ化し、設定の変更が行われる時間とその時の設定値をそれぞれ推定する。そして、制御部210は、
図9に示すような、推定時間帯と推定設定値とを対応させた分析データ223を生成する。なお、
図9に示す分析データ223では、さらに推定時間帯や推定設定値を推定する際に使用されたログデータ222の情報として、音情報も記録されている。また、分析データ223に記録するログデータ222としては、音情報だけでなく、対応する調整日時情報や手動調整された設定値も記録されるようにしてもよい。
【0050】
ステップS208でのログデータ222の分析方法は任意だが、例えば、一日間で手動設定をした時間帯や回数が概ね同じ日同士は同じような音環境の生活サイクルになるはずと想定し、そのような日同士で、調整日時情報と手動調整された設定値とをそれぞれ平均化したデータから推定時間帯及び推定設定値を求めてもよい。また、制御部210は、曜日や祝日の情報を利用し、同じ曜日同士、平日同士、休日同士なら、同じような生活サイクルになるはずと想定し、取得された手動調整日が平日であるか、休日であるかを推定する。制御部210は、そのような日同士で、調整日時情報と手動調整された設定値とをそれぞれ平均化したデータから推定時間帯及び推定設定値を求めてもよい。
【0051】
例えば、
図8に示すログデータ222では、2月1日(火)も2月2日(水)も手動設定が7回行われており、設定した時間帯も同様であり、しかもどちらも平日なので、この2つの日は同じような生活サイクルになっていると推定される。そして、2月1日の最初の手動設定は6:55に行われ、この時に設定値Aに設定されているが、次の手動設定は7:58なので、設定値Aに設定されている時間帯は6:55-7:57となる。また、2月2日の最初の手動設定は7:03に行われ、この時に設定値Aに設定されているが、次の手動設定は8:02なので、設定値Aに設定されている時間帯は7:03-8:01となる。
【0052】
したがって、2月1日で最初に手動設定された時間帯は6:55-7:57で、この時の手動調整された設定値は設定値Aだが、2月2日で最初に手動設定された時間帯は7:03-8:01で、この時の手動調整された設定値は設定値Aである。そして制御部210は、これらの時間帯と手動調整された設定値をそれぞれ平均することで、推定時間帯として6:59-7:59を得ることができ、推定設定値として設定値A(どちらの日も同じ設定値Aだったので平均しても設定値Aになる)を得ることができる。また、これらの時間帯で設定値Aが設定されたときの音情報は、それぞれ「音情報01」と「-」であることも制御部210はログデータ222から得ることができる。
【0053】
なお、上述の例では、例えば時間帯1の終了時刻と次の時間帯2の開始時刻が同一にならないように、表記上は時間帯1の終了時刻は次の時間帯2の開始時刻の1分前としているが、実際の終了時刻はその時刻が終了するタイミングである(例えば終了時刻が7:59となっている場合、本当の終了時刻は7:59:59.999…である)。ログデータ222の記録の仕方は上述の例に限定されず、時間帯1の終了時刻と次の時間帯2の開始時刻を同一にして、時間帯1は終了時刻の直前で終了することにしてもよい(例えば終了時刻が8:00となっている場合、本当の終了時刻は7:59:59.999…である)。
【0054】
また、例えば設定値Aと次に設定が変更された設定値Bとにおいて、音出力の増幅度が高い(感度の強い)方を優先してもよい。具体的には、設定値Aにおける増幅度が設定値Bの増幅度より高い場合、2月1日の設定値Aの時間帯の終了時刻が7:57、設定値Bの時間帯の開始時刻が7:58で、2月2日の設定値Aの時間帯の終了時刻が8:01、設定値Bの時間帯の開始時刻が8:02とすると、次の日に自動調整される設定値Aの時間帯から設定値Bの時間帯への切り替えタイミングは8:02となる。
【0055】
このように、或る設定値に対応する各日の時間帯にばらつきがあっても、当該或る設定値が、隣接する時間帯の他の設定値より増幅度が高ければ、当該或る設定値の時間帯が最長となるよう各日において対応する或る設定値の時間帯から他の設定値に切り替えるタイミングのうち一番遅いものを、次に自動調整される日における当該或る設定値から他の設定値に切り替えるタイミングとすることで、設定による聞き逃しを抑制できる。
【0056】
図9に示す分析データ223の最初の行「推定時間帯「平日 6:59-7:59」、推定設定値「設定値A」、ログデータ「音情報01,-,…」」は、このようにして得られる。
図9に示す他の行も同様にして得られるが、異なる日にまたがる時間帯については、その2つの日のパターンが同じ場合と異なる場合とで最初に手動設定される時刻が異なる可能性が高いことから、「平日-平日 19:03-6:58」と「平日-休日 19:03-7:59のように別の推定時間帯を設けることとしている。
【0057】
図7に戻り、制御部210は、ステップS208で生成した分析データ223から自動調整パラメータ221を取得し(ステップS209)、調整情報保存処理を終了する。ステップS209の処理は、具合的には、その日が平日で翌日も平日なら、制御部210は、分析データ223から推定時間帯が平日のもの(「平日 HH:MM」となっているもの)と平日から平日にかけてのもの(平日-平日 HH:MM」となっているもの)を抽出して自動調整パラメータ221とする。例えば
図6に示す自動調整パラメータ221は、
図9に示す分析データ223から推定時間帯が平日のものと平日から平日にかけてのものを抽出して生成されたものである。
【0058】
なお、サマータイムによって時刻が変動する場合や、ユーザが時差のある2つの地域間を移動した場合には、ログデータ222の調整日時情報に含まれる時刻にずれが生じる。この場合、ユーザが現在いる地域のタイムゾーンにおいて、ユーザの選択によって、それまでのログデータ222をリセットして新たなログデータ222を取り直してもいいし、引き続きそれまでのログデータ222にサマータイムやタイムゾーンの情報を適用して修正した上で分析データ223を生成してもよい。
【0059】
以上の自動調整処理及び調整情報保存処理により、制御部210はログデータ222(ユーザの実際の使用環境における設定情報(調整日時情報及び手動調整された設定値))から分析データ223を生成し、分析データ223から自動調整パラメータ221を取得して時間帯毎に聴覚器100に設定値に関する情報を送信することにより、自動的に聴覚器100の調整を行うことができる。
【0060】
次に、情報処理装置300でログデータ222等を表示する音情報表示処理について、
図10を参照して説明する。この処理は、情報処理装置300のユーザ(主に医師や認定補聴器技能者)が操作入力部340で音情報表示処理の実行を指示する(例えば、音情報表示処理を行うアプリケーションプログラムを起動する)と実行が開始される。
【0061】
まず、制御部310は、聴覚器調整装置200に対し、ログデータ222を要求する(ステップS301)。なお、聴覚器調整装置200では、情報処理装置300からログデータ222を要求されるとログデータ222を情報処理装置300に送信するプログラムが予め記憶されているものとする。したがって、ステップS301で情報処理装置300が聴覚器調整装置200にログデータ222を要求すると、聴覚器調整装置200は要求されたログデータ222を情報処理装置300に送信する。
【0062】
次に、制御部310は、聴覚器調整装置200が送信したログデータ222を受信する(ステップS302)。そして、制御部310が、受信したログデータ222を表示部330に表示した後(ステップS303)、ユーザの操作によって音情報表示処理を終了する。
【0063】
ステップS303でのログデータ222の表示についてより詳細に説明する。まず、制御部310は、ログデータ222に含まれる調整日時情報と手動調整された設定値とに基づいて、時間帯毎における手動設定した各周波数帯の増幅度や音量の値を表示する。また、ログデータ222に含まれる音情報に基づいて、各手動設定をした時点で聴覚器100が音入力部130で取得していた音の周波数スペクトルを表示する。また、情報処理装置300が音出力手段(スピーカ等)を備えている場合には、制御部310は、音情報に基づいて、各手動設定をした時点で聴覚器100が音入力部130で取得していた音を再現させた音を音出力手段から出力させてもよい。
【0064】
上述の音情報表示処理により、制御部310は、ログデータ222の内容を表す情報(時間帯毎の手動調整された設定値や音の周波数スペクトル等)を表示部330に表示する。したがって、情報処理装置300のユーザ(医療従事者、認定補聴器技能者等)は、これらの情報を表示部330で確認することにより、手動設定されている値が適切であるか否かを確認することができ、聴覚器100のユーザに適切なアドバイスをしたり、聴覚器100の設定値をより適切な値に調整したりすることができる。
【0065】
なお、上述した音情報表示処理(
図10)は、情報処理装置300の表示部330にログデータ222の情報(時間帯毎の手動調整された設定値や音の周波数スペクトル等)を表示するための処理であるが、聴覚器調整装置200も表示部230にログデータ222の情報を表示することが可能である。このための処理は、単に
図10に示すフローチャートのうち、ステップS303の処理を制御部210が実行するだけである。この場合も、聴覚器調整装置200が音出力手段(スピーカ等)を備えている場合には、制御部210は、音情報に基づいて、各手動設定をした時点で聴覚器100が音入力部130で取得していた音を再現させた音を聴覚器調整装置200の音出力手段から出力させてもよい。
【0066】
聴覚器100のユーザは、情報処理装置300がなくても、これらの情報を聴覚器調整装置200の表示部230で確認することにより、過去に手動設定した値が適切であるか否かを確認することができる。
【0067】
なお、上述の説明では、情報処理装置300の表示部330や聴覚器調整装置200の表示部230に、ログデータ222の情報(時間帯毎の手動調整された設定値や音の周波数スペクトル等)を表示することを説明したが、表示する対象はログデータ222に限らない。例えば情報処理装置300は、聴覚器調整装置200から分析データ223を受信して、表示部330に分析データ223の情報を表示してもよい。これにより、医師等は聴覚器調整装置200による分析が妥当であるか否かを確認することができる。
【0068】
また、情報処理装置300は、情報を表示するだけでなく、例えば分析データ223の推定時間帯や推定設定値を編集して、編集したデータを聴覚器調整装置200に送信してもよい。これにより、医師等は聴覚器調整装置200による分析が妥当でないと判断した場合には、より適切であると考えられる推定時間帯及び推定設定値を聴覚器調整装置200に与えることができる。なお、分析データ223は通常、日が変わると調整情報保存処理(
図7)のステップS208で新たに生成されたものに更新されるが、医師等が与えた分析データ223には更新禁止を示すフラグを付与する等して、ステップS208で更新されないようにしてもよい。
【0069】
(実施の形態2)
上述の実施の形態1での自動調整処理(
図5)は、聴覚器調整装置200の制御部210が実行し、設定値の調整変更すべきタイミングにステップS102で設定値に関する情報を聴覚器100に送信し、聴覚器100の制御部110は、送信された情報が示す設定値に基づいて調整した音を音出力部140から出力させていた。つまり、聴覚器調整装置200がアクティブに自動調整を行った設定値にしたがって聴覚器調整装置200が指定した切り替えタイミングで聴覚器100がパッシブに音を出力していた。しかし、自動調整処理と同様の処理を聴覚器100の制御部110が実行してもよい。このような実施の形態2について説明する。
【0070】
実施の形態2に係る聴覚器調整システムも、実施の形態1に係る聴覚器調整システムと同様に、聴覚器100とスマートフォン等の聴覚器調整装置200とを備え、聴覚器100及び聴覚器調整装置200の機能構成は概ねそれぞれ
図2及び
図3に示すとおりであるが、聴覚器100は、日時の情報を取得することができる時計部を内部に備えている。実施の形態2に係る聴覚器調整システムも、実施の形態1と同様の情報処理装置300を備えてもよく、情報処理装置300の機能構成は
図4に示す通りである。
【0071】
実施の形態2に係る自動調整処理について、
図5を参照して説明する。まず、制御部110は、その日の自動調整パラメータ221を取得する(ステップS101)。より詳細には、まず制御部110が通信部150を介して、聴覚器調整装置200に自動調整パラメータ221を要求する。すると、聴覚器調整装置200の制御部210は、分析データからその日の自動調整パラメータ221を取得して、取得した自動調整パラメータ221を、通信部250を介して聴覚器100に送信するので、聴覚器100の制御部110は通信部150を介してそれを受信することにより、自動調整パラメータ221を取得する。
【0072】
聴覚器調整装置200が自動調整パラメータ221を送信するタイミング或いは聴覚器100が自動調整パラメータ221を受信するタイミングは、聴覚器調整装置200及び聴覚器100のペアリング接続が確立されていれば、設定値の切り替えタイミングでなくてもよい。また聴覚器調整装置200が送信する自動調整パラメータ221のデータ量或いは聴覚器100が受信して保存する自動調整パラメータ221のデータ量は、記憶部120に記憶できる範囲であれば、例えば24時間分であってもよいし、1週間分であってもよく、またこれらに限らない。
【0073】
次に、制御部110は、自動調整パラメータに基づいて聴覚器100の自動調整を行う(ステップS102)。より詳細には、制御部110は、ステップS101で取得した自動調整パラメータ221を参照して設定値を呼び出し、現在の時間帯が設定値の切り替えタイミングになると、聴覚器100の制御部110が設定値を自動で変更し、変更した設定値に基づいて音出力部140から出力する音を調整する。したがって、制御部110が、設定値の切り替えタイミングになると、自発的にステップS102の処理を行うことにより、聴覚器100は各時間帯における適切な設定値に基づいて自動調整されることになる。よって、設定値の切り替えタイミングに聴覚器調整装置200が完全にオフ状態等のために聴覚器100とのペアリング接続が確立されていなかったとしても、聴覚器100は切り替えタイミングで適切に設定値を切り替えることができる。
【0074】
そして、制御部110は、聴覚器100の手動調整が行われたか否かを判定する(ステップS103)。より詳細には、制御部110は、通信部150を介して、聴覚器調整装置200からの(例えば設定値調整画面231で行われた)手動調整された設定値に関する情報を受信したか否かを判定する。手動調整が行われていないなら(ステップS103;No)、ステップS105に進む。
【0075】
手動調整が行われたなら(ステップS103;Yes)、制御部110は調整情報保存処理を行い(ステップS104)、ステップS105に進む。より詳細には調整情報保存処理は後述するように制御部210で行われ、制御部210は調整情報保存処理のステップ207で更新またはステップS209で取得した自動調整パラメータ221を(通信部250を介して)聴覚器100に送信し、制御部110は(通信部150を介して)当該自動調整パラメータ221を取得する。
【0076】
ステップS105では、制御部110は、聴覚器100の電源を切るか否かを判定する。例えば聴覚器100の電源スイッチが切られると制御部110は聴覚器100の電源を切る処理を行うが、この時、ステップS105での判定はYesになる。
【0077】
聴覚器100の電源を切らないなら(ステップS105;No)、制御部110はステップS102に戻り、自動調整パラメータ221に基づく聴覚器100の自動調整を繰り返す。
【0078】
聴覚器100の電源を切るなら(ステップS105;Yes)、制御部110は、自動調整処理を終了し、聴覚器100の電源を切る処理を行う。
【0079】
次に、ステップS104で実行される実施の形態2に係る調整情報保存処理について、
図7を参照して説明する。この処理は、実施の形態1と同様に、聴覚器調整装置200の制御部210によって実行される処理であるが、聴覚器調整装置200の操作入力部240(設定値調整画面231)で聴覚器100の手動設定の操作入力が行われると起動される。
【0080】
そして、ステップS201からステップS206までの処理とステップS208の処理は、実施の形態1に係る調整情報保存処理での処理と同様であるので説明を省略する。
【0081】
ステップS207では、制御部210は、実施の形態2に係る自動調整処理(
図5)のステップS101で聴覚器100に送信した自動調整パラメータ221のデータのうち、現在時刻が含まれる時間帯に対応する設定値をステップS201で取得した手動調整された設定値に更新し、更新した自動調整パラメータ221を聴覚器100に送信してから、調整情報保存処理を終了する。
【0082】
ステップS209では、制御部210は、ステップS208で生成した分析データ223から自動調整パラメータ221を取得し、取得した自動調整パラメータ221を聴覚器100に送信してから、調整情報保存処理を終了する。
【0083】
なお、上述の説明でわかるように、実施の形態2に係る自動調整処理は、処理の主体が制御部210から制御部110に変わり、制御部110は、最初の時点(ステップS101)および手動調整される度(ステップS104)に自動調整パラメータ221を制御部210から取得する点以外は、実施の形態1に係る自動調整処理と同様である。
【0084】
以上の自動調整処理及び調整情報保存処理により、制御部210はログデータ222から分析データ223を生成し、分析データ223から自動調整パラメータ221を取得する。そして、制御部110は、聴覚器調整装置200から自動調整パラメータ221を取得して時間帯毎の設定値に変更することにより、自動的に聴覚器100の調整を行うことができる。
【0085】
また、実施の形態2に係る音情報表示処理は、実施の形態1に係る音情報表示処理(
図10)と全く同じ処理である。実施の形態2に係る情報処理装置300のユーザも、時間帯毎の手動調整された設定値や音の周波数スペクトルを表示部330で確認することにより、手動設定されている値が適切であるか否かを確認することができ、聴覚器100のユーザに適切なアドバイスをしたり、聴覚器100の設定値をより適切な値に調整したりすることができる。
【0086】
また、実施の形態2に係る聴覚器調整装置200において、表示部230にログデータ222の情報(時間帯毎の手動調整された設定値や音の周波数スペクトル等)を表示することができる点も、実施の形態1と同様である。実施の形態2に係る聴覚器100のユーザは、情報処理装置300がなくても、これらの情報を聴覚器調整装置200の表示部230で確認することにより、過去に手動設定した値が適切であるか否かを確認することができる。
【0087】
(実施の形態3)
上述の実施の形態1,2では、聴覚器100と聴覚器調整装置200とは別の装置であったが、これらが1つの装置にまとまっていてもよい。このような実施の形態3について説明する。
【0088】
実施の形態3に係る聴覚器101は、
図11に示すように、実施の形態1に係る聴覚器100の構成に加えて、表示部160及び操作入力部170を備える。これらは実施の形態1に係る聴覚器調整装置200が備える表示部230及び操作入力部240と同様のものである。聴覚器101は、ユーザの耳に装着する装着部(
図1に示す聴覚器100と同様の外観を持つ)と、表示部160及び操作入力部170からなるUI(User Interface)部(
図1に示す聴覚器調整装置200と同様の外観を持つ)とが、無線または有線で接続されて構成される。
【0089】
実施の形態3に係る自動調整処理及び調整情報保存処理は、処理手順自体は実施の形態1,2と同様であるが、全ての処理を聴覚器101の制御部110が実行する。例えばログデータ222は制御部110によって記憶部120に保存され、分析データ223も制御部110によって生成され、自動調整パラメータ221も制御部110によって分析データ223から取得される。
【0090】
このため、実施の形態3においては、実施の形態1,2で必要だった聴覚器100と聴覚器調整装置200との間のデータ通信(自動調整パラメータや設定値に関する情報の送受信)の処理は不要となり、処理が単純化される。
【0091】
実施の形態3に係る自動調整処理及び調整情報保存処理により、聴覚器101の制御部110は、聴覚器調整装置200を必要とせずに、自動調整パラメータ221を取得することができる。そして、聴覚器101の制御部110は、自動調整パラメータ221に基づいて、時間帯毎の設定値に変更することにより、自動的に聴覚器101の調整を行うことができる。
【0092】
また、実施の形態3に係る音情報表示処理は、情報処理装置300との通信相手が聴覚器調整装置200ではなく、聴覚器101であるということ以外は、実施の形態1,2に係る音情報表示処理(
図10)と同様の処理である。実施の形態3に係る情報処理装置300のユーザも、時間帯毎の手動調整された設定値や音の周波数スペクトルを表示部330で確認することにより、手動設定されている値が適切であるか否かを確認することができ、聴覚器101のユーザに適切なアドバイスをしたり、聴覚器101の設定値をより適切な値に調整したりすることができる。
【0093】
また、実施の形態3に係る聴覚器101では、聴覚器101が表示部160を備えるため、表示部160にログデータ222の情報(時間帯毎の手動調整された設定値や音の周波数スペクトル等)を表示することができる。実施の形態3に係る聴覚器101のユーザは、これらの情報を表示部160で確認することにより、過去に手動設定した値が適切であるか否かを確認することができる。また表示部160の代替手段として、ログデータ222の情報を音声により音出力部140から出力させてユーザに認識させるようにしてもよい。この場合の音声は、その時間帯における設定値にしたがったパラメータに基づいてもよいし、設定値の中でパラメータが最大となるものであってもよい。
【0094】
(その他の変形例)
なお、上述の各処理における制御部110と制御部210との役割分担は、上述の実施の形態1,2で示したような役割分担に限定されず、自由に変更することが可能である。例えば、実施の形態2において、調整情報保存処理(
図7)も制御部110が行い、聴覚器調整装置200無しで(聴覚器100のみで)、聴覚器100の自動調整が行えるようにしてもよい。この場合の聴覚器100は、実施の形態3の聴覚器101とかなり類似するが、手動設定に関しては聴覚器調整装置200で行う必要がある点が聴覚器101と異なる。
【0095】
また、上述の実施の形態では、聴覚器100は、聴覚器調整装置200と無線で接続されるものとして説明したが、聴覚器100と聴覚器調整装置200とが有線で接続されていてもよい。
【0096】
また、上述の各実施の形態では、ステップS206では、制御部210はログデータ222を前回記録した日から日付が変化しているか否かを判定し、日付が変化していた場合にステップS208で分析データ223を生成していた。しかし、分析データ223の生成は必ずしも日付が変化した際に行わなければいけないわけではない。分析データ223を生成する開始時刻をユーザが任意で設定することによって、ステップS206では、設定された時刻になったか否かを判定して、この時刻になったらステップS208に進んでログデータを分析するようにしてもよい。
【0097】
上述の各実施の形態では、自動調整パラメータにしたがって聴覚器100における外的要因の変化等による聴こえ具合を適宜自動で変更したが、自動調整パラメータによる自動調整で聴こえ具合が悪い、或いは良すぎる場合は、ユーザは任意で手動調整することで、自動調整されたパラメータを変更することができることは言うまでもない。
【0098】
なお、聴覚器100,101は、各ユーザに適合するように調整可能な音をユーザの耳に出力可能なウェアラブル機器等のコンピュータによっても実現することができる。また、聴覚器調整装置200は、スマートフォンに限らず、聴覚器100の音入力部130が取得した音のデータ等を取得可能なタブレット、PC等のコンピュータによっても実現することができる。具体的には、上記実施の形態では、聴覚器100,101の制御部110が実行するプログラムが記憶部120に予め記憶され、聴覚器調整装置200の制御部210が実行するプログラムが、記憶部220に予め記憶されているものとして説明した。しかし、プログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optical disc)、メモリカード、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータに読み込んでインストールすることにより、上述の各処理を実行することができるコンピュータを構成してもよい。
【0099】
さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の各処理を実行できるように構成してもよい。
【0100】
また、制御部110及び制御部210は、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ、マルチコアプロセッサ等の任意のプロセッサ単体で構成されるものの他、これら任意のプロセッサと、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられて構成されてもよい。
【0101】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。
【符号の説明】
【0102】
100,101…聴覚器、110,210,310…制御部、120,220,320…記憶部、130…音入力部、140…音出力部、150,250,350…通信部、160,230,330…表示部、170,240,340…操作入力部、200…聴覚器調整装置、221…自動調整パラメータ、222…ログデータ、223…分析データ、231…設定値調整画面、300…情報処理装置、1000…聴覚器調整システム