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特開2024-54791二次電池の充電方法、および、二次電池の充電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054791
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】二次電池の充電方法、および、二次電池の充電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20240410BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240410BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240410BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 4/583 20100101ALI20240410BHJP
【FI】
H02J7/04 C
H02J7/10 H
H01M10/44 A
H01M10/44 Q
H01M4/133
H01M4/583
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161271
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】516341888
【氏名又は名称】NU-Rei株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝
(72)【発明者】
【氏名】小田 修
(72)【発明者】
【氏名】ノ・ヴァン・ノン
(72)【発明者】
【氏名】小塚 義成
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩一
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA02
5G503CB06
5H030AA02
5H030BB03
5H030DD06
5H030FF43
5H050AA02
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050DA10
5H050EA08
5H050FA12
5H050FA18
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】二次電池の充電時間を短縮できる技術を提供する。
【解決手段】二次電池の充電方法は、前記二次電池に対して、充電中の最大の電流値で充電電流を供給して充電する高電流充電工程と、前記充電電流の電流値を、充電時間の経過に伴って、前記最大の電流値から階段状に低下させていく電流低下工程と、を備える。この充電方法によれば、高電流充電工程による高効率な充電により充電時間を短縮することができる。また、電流低下工程によって、電圧のオーバーシュートの発生を抑制しつつ高効率な充電を行うことができる。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の充電方法であって、
前記二次電池に対して、充電中の最大の電流値で充電電流を供給して充電する高電流充電工程と、
前記充電電流の電流値を、充電時間の経過に伴って、前記最大の電流値から階段状に低下させていく電流低下工程と、
を備える、充電方法。
【請求項2】
請求項1記載の充電方法であって、
前記二次電池は、
集電体と、前記集電体の表層に、前記表層から細長く延びているグラフェンによって構成されたカーボンナノ構造体が全体にわたって配置された活物質層と、を有する第1電極と、
充電の際に、イオン化して前記第1電極に移動する金属原子を含む第2電極と、
を備え、
前記充電方法は、さらに、
前記高電流充電工程の前に、前記二次電池に対して、前記最大の電流値の1/2以下の低電流値の前記充電電流で充電する低電流充電工程を備える、充電方法。
【請求項3】
請求項2記載の充電方法であって、
前記低電流値は、前記活物質層の上に前記金属原子の成長核が形成される電流値以上の値である、充電方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の充電方法であって、
前記電流低下工程では、前記電流値を直前の前記電流値の2/3以下に低下させる、方法。
【請求項5】
請求項4記載の充電方法であって、
前記電流低下工程では、前記二次電池の電圧が所定の閾値に到達するときに、前記電流値を低下させる、充電方法。
【請求項6】
二次電池を充電する充電装置であって、
前記二次電池に充電電流を供給する電源部と、
前記充電電流の大きさを制御する電流制御部と、
前記充電電流の電流値を前記電流制御部に指令する制御部と、
を備え、
前記制御部は、充電中の最大の電流値の前記充電電流で前記二次電池を充電する高電流充電制御を開始した後、充電時間の経過に伴って、前記充電電流の電流値を、前記最大の電流値から階段状に低下させていく電流低下制御を実行する、充電装置。
【請求項7】
請求項6記載の充電装置であって、
前記二次電池は、
集電体と、前記集電体の表層に、前記表層から細長く延びているグラフェンによって構成されたカーボンナノ構造体が全体にわたって配置された活物質層と、を有する第1電極と、
充電の際に、イオン化して前記第1電極に移動する金属原子を含む第2電極と、を備え、
前記制御部は、前記高電流充電制御を開始する前に、前記最大の電流値の1/2以下の低電流値の前記充電電流で前記二次電池を充電する低電流充電制御を実行する、充電装置。
【請求項8】
請求項7記載の充電装置であって、
前記低電流値は、前記活物質層の上に前記金属原子が析出する電流値以上の値である、充電装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の充電装置であって、
前記制御部は、前記電流低下制御において、前記充電電流の電流値を直前の電流値の2/3以下に低下させる、充電装置。
【請求項10】
請求項9記載の充電装置は、さらに、
前記二次電池の電圧を計測する電圧計測部を備え、
前記制御部は、前記電流低下制御において、前記二次電池の電圧が所定の閾値に到達するときに、前記充電電流の電流値を低下させる、充電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池の充電方法、および、二次電池の充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
充放電可能な蓄電デバイスの一態様として、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池が知られている。二次電池の充電は、定電流や定電圧、あるいは、それらを組み合わせた充電制御により実行される場合がある。例えば、下記の特許文献1には、定電流充電から定電圧充電に切り替えられる充電制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-69459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、二次電池に対しては、その充電時間が短縮されることが望まれているが、従来の充電制御では、そうした要望に十分に応えることができていなかった。
【0005】
また、従来の充電制御では、充放電を繰り返したときに、充電容量が低下するなど、その電池性能が低下する場合があった。例えば、本願発明者による研究によれば、活物質層にカーボンナノウォールが適用されたリチウムイオン二次電池の場合、充電の方法によっては、カーボンナノウォールが集電体から脱落し、電池性能が低下してしまう場合があることが見出されている。
【0006】
リチウムイオン二次電池に限らず、二次電池の充電制御については、充電時間の短縮を始めとして、依然として様々な改良の余地がある。本願は、少なくとも充電時間の短縮が可能な二次電池の充電技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
本願発明の一形態は、二次電池の充電方法として提供される。この形態の充電方法は、前記二次電池に対して、充電中の最大の電流値で充電電流を供給して充電する高電流充電工程と、前記充電電流の電流値を、充電時間の経過に伴って、前記最大の電流値から階段状に低下させていく電流低下工程と、を備える。
【0009】
この形態の充電方法によれば、電流低下工程の前に、最大の電流値での高効率の充電により急速な充電が可能である。また、最大の電流値での急速充電の後には、電流低下工程が実行されて、充電電流の電流値が階段状に低下されるため、二次電池の充電量の増加に伴って二次電池の電圧が著しく高くなることを抑制でき、電圧のオーバーシュートの発生を抑制することができる。よって、この形態の充電方法によれば、二次電池の充電状態に合わせた高い電流値での円滑な急速充電が可能であり、二次電池の充電時間を短縮することができる。
【0010】
本願発明は、二次電池の充電方法以外の種々の形態で実現することが可能である。本願発明は、例えば、二次電池を充電する充電装置や、二次電池の充電制御を実行する制御回路・制御装置、二次電池の充電方法を実行する車両や携帯情報端末、その他の二次電池を搭載する器具・装置・システム等の形態で実現することができる。また、コンピュータに二次電池の充電方法を実行させるための制御プログラムや、そのプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】二次電池の充電装置の構成を示す概略図。
図2】二次電池の構成を示す概略図。
図3】カーボンナノ構造体の構成を模式的に示す概略図。
図4】第1実施形態における充電制御の工程フロー図。
図5】第1実施形態の充電制御を説明するための説明図。
図6】参考実験結果としての二次電池の電圧の時間変化を示す説明図。
図7】参考実験結果としての電極の撮影画像を示す第1の説明図。
図8】参考実験結果としての電極の撮影画像を示す第2の説明図。
図9】実施例としての二次電池の電流と電圧の時間変化を示す説明図。
図10】比較例の充電制御を説明するための第1の説明図。
図11】比較例の充電制御を説明するための第2の説明図。
図12】比較例の充電制御を説明するための第3の説明図。
図13】第1実施形態の実施例および比較例の充電時間を示す説明図。
図14】実施例における充放電の繰り返しによる電池性能の変化を示す説明図。
図15】比較例における充放電の繰り返しによる電池性能の変化を示す説明図。
図16】第2実施形態における充電制御の工程フロー図。
図17】第2実施形態の充電制御を説明するための説明図。
図18】第2実施形態の実施例を説明するための説明図。
図19】第2実施形態の比較例を説明するための説明図。
図20】第2実施形態の実施例と比較例の充電時間を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照しながら、本願発明に係る二次電池の充電方法、および、二次電池の充電装置の実施形態を説明する。
【0013】
1.第1実施形態:
1-1.充電装置の構成:
図1は、第1実施形態における二次電池10の充電装置50の構成を示す概略図である。充電装置50は、二次電池10に直流電力を供給して二次電池10を充電する。本実施形態の二次電池10は、充放電にリチウム(Li)イオンが関与するリチウムイオン電池である。二次電池10の構成については後述する。
【0014】
充電装置50は、二次電池10に電気的に接続される充電回路59を備えている。充電回路59は、二次電池10と電極を接触させて導通することにより二次電池10に電力を供給可能であるものとしてもよいし、無線給電方式によって二次電池10に電力を供給可能であるとしてもよい。
【0015】
本実施形態では、充電回路59は、マイクロチップ上に実装された集積回路として構成される。充電回路59には、機能部として、電源部51と、制御部52と、電流制御部53と、スイッチ部54と、電流計測部55と、電圧計測部56とが搭載されている。
【0016】
電源部51は、図示しない外部電源に接続されており、二次電池10に対する充電電流の供給源として機能する。外部電源が交流電源である場合、電源部51は、当該外部電源からACアダプタを介して直流に変換された電力を受け取る。電源部51は、例えば、USBケーブル等を介してパーソナルコンピュータ等の電子機器から充電用の電力を受け取るものとしてもよい。
【0017】
制御部52は、例えば、マイクロプロセッサによって構成される。制御部52は、充電装置50の各構成部を制御して二次電池10の充電制御を実行する。制御部52による充電制御については後述する。また、制御部52は、電流計測部55と電圧計測部56の検出結果を用いて電圧二次電池10の充電状態(SOC;state of charge)を検出する機能を有する。SOCは、二次電池10の充電量を示す指標であり、例えば、満充電の状態が100%として示される。
【0018】
電流制御部53は、例えば、スイッチングレギュレータなど、DC/DCコンバータとしての機能を実現する素子によって構成される。電流制御部53は、電源部51と二次電池10との間の配線に接続されており、電源部51から二次電池10に供給される充電電流の大きさを、制御部52から指令される電流値に応じて制御する。
【0019】
スイッチ部54は、例えば、電流の開閉制御が可能なスイッチ素子によって構成される。スイッチ部54は、電源部51と二次電池10との間の配線に設けられており、制御部52の制御下において開閉する。スイッチ部54は、二次電池10の充電中に閉じられ、二次電池10の充電が完了したときに開かれる。
【0020】
電流計測部55は、例えば、電流センサとしての機能を実現する素子によって構成され、現在の充電電流の大きさを検出する。電流計測部55は、現在の充電電流に比例した信号を制御部52に出力する。制御部52は、充電制御において、電流計測部55の検出結果に基づいて電流制御部53の駆動を制御する。
【0021】
電圧計測部56は、例えば、電圧センサとしての機能を実現する素子によって構成され、二次電池10の現在の電圧を検出する。電圧計測部56は、二次電池10の電圧に比例した信号を制御部52に出力する。制御部52は、電圧計測部56の検出結果に基づいて充電制御を実行する。
【0022】
1-2.二次電池の構成:
図2は、第1実施形態の二次電池10の構成を示す概略図である。二次電池10は、容器11と、電解液12と、セパレータ15と、第1電極20と、第2電極30と、を備える。図1では、便宜上、容器11を一点鎖線で図示し、セパレータ15を破線で図示してある。
【0023】
容器11は、電解液12が満たされた内部空間を有している。容器11は、電解液12に対して反応しにくい材質の材料によって液密に構成されている。電解液12は、充放電に関与する金属イオンを第1電極20と第2電極30との間で伝達可能な性質を有する。本実施形態では、電解液12は、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた溶液によって構成され、第1電極20と第2電極30との間でLiイオンを伝達可能である。電解液12のリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を用いることができる。また、有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)や、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を用いることができる。
【0024】
セパレータ15は、容器11の内部空間を、第1電極20が収容される第1電極室16と第2電極30が収容される第2電極室17とに区画する。セパレータ15は、電気絶縁性とイオン伝導性とを有し、第1電極20と第2電極30とを電気的に絶縁するとともに、電解液12を介して伝達される金属イオン(本実施形態ではLiイオン)を透過する。セパレータ15は、例えば、多孔質構造を有する樹脂フィルムや不織布などによって構成される。
【0025】
第1電極20は、負極を構成する。第1電極20は、第1集電体21と、第1活物質層22と、を備える。第1集電体21は、金属基板によって構成される。本実施形態では、第1集電体21は、銅(Cu)の金属箔によって構成される。
【0026】
なお、第1集電体21は、Cu合金によって構成されてもよく、Cu以外の金属によって構成されてもよい。第1集電体21は、例えば、アルミニウム(Al)や、Al合金によって構成されてもよい。また、第1集電体21は、金属箔によって構成されていなくてもよく、例えば、金属薄板や金属薄膜によって構成されてもよい。第1集電体21は、平板状に構成されていなくてもよく、例えば、表面にミクロン単位の微細な凹凸構造が形成されていてもよいし、筒状や波状など、様々な形状に曲げ加工されていてもよい。
【0027】
第1活物質層22は、第1集電体21の第1面21aと第2面21bの両方に設けられている。第1活物質層22は、活物質としてカーボン(C)を含んでいる。本実施形態では、第1活物質層22は、グラフェンによって構成されたカーボンナノ構造体を有している。カーボンナノ構造体については後述する。
【0028】
第2電極30は、二次電池10の正極を構成する。第2電極30は、第2集電体31と、第2活物質層32と、を有する。第2集電体31は、例えば、Alやチタン(Ti)等の金属箔によって構成される。第2集電体31は、他の金属によって構成されてもよいし、金属箔以外の形態を有していてもよい。第2集電体31は、平坦な形状で構成されていなくてもよく、筒状や波状など、様々な形状に曲げ加工されていてもよい。
【0029】
第2活物質層32は、第2集電体31の第1面31aと第2面31bのそれぞれに形成されている。第2活物質層32は、充放電に関与する金属イオンの原子(本実施形態ではLi原子)を含む活物質と、導電助剤と、結着剤とを含有する。第2活物質層32は、増粘剤を含んでいてもよい。
【0030】
第2電極30の活物質としては、例えば、三元系の物質を用いることができ、コバルト酸リチウム(LiCoO)や、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケル酸リチウム(NCA)を用いることができる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラックやカーボンブラックを用いることができる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やスチレンブタジエンゴム(SBR)を用いることができる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いることができる。
【0031】
図3は、第1電極20の第1活物質層22に含まれるカーボンナノ構造体25の構成を模式的に示す概略図である。図3では、便宜上、カーボンナノ構造体25を構成するグラフェン26を略長方形のシート状に図示してある。
【0032】
第1電極20の第1集電体21の表面には、カーボンナノ構造体25が全体にわたって配置されている。カーボンナノ構造体25は、グラフェン26が第1集電体21側を基端部として細長く延びた構成を有する。グラフェン26は、「グラフェンシート」とも呼ばれ、炭素の六員環構造、つまり、炭素原子を頂点とする六角形格子構造によって構成された、炭素原子1つ分の厚みを有するシート状の物質である。カーボンナノ構造体25は、複数のグラフェン26がその厚み方向に積層された多層構造を有する。カーボンナノ構造体25は導電性を有する。
【0033】
カーボンナノ構造体25は、例えば、CVD(checmical vapor desposition)法によって、第1集電体21の表面に形成することができる。なお、図示は省略するが、第1集電体21の表面は、アモルファスカーボン層によって覆われている。CVD法では、第1集電体21の表面にアモルファスカーボン層が形成された後、そのアモルファスカーボン層を成長の起点として、カーボンナノ構造体25が上方へと細長く延びるように形成される。
【0034】
カーボンナノ構造体25は、針状や、板片状、ひだ状に形成されている。カーボンナノ構造体25は、例えば、カーボンナノウォールや、それに類するカーボンナノフレーク、カーボンナノフラワー等と同種の構造体であると解釈することもできる。カーボンナノ構造体25は、グラファイト様の物質であるため、活性炭等の炭素材料に比べて高い電気伝導率を備える。
【0035】
カーボンナノ構造体25は、炭素の六員環の全面単結晶によって構成されていなくてもよい。カーボンナノ構造体25を構成するグラフェン26は、完全なグラフェン構造でなく、六員環構造の炭素を主成分とする薄膜であってもよい。グラフェン26は、六員環構造の炭素を主成分とするモザイク構造を有していてもよい。モザイク構造とは、炭素の六員環構造によって構成された複数の領域が離散的に配置された構成を意味する。
【0036】
1-3.二次電池での電池反応:
二次電池10での充放電の際の化学反応は、例えば、以下のような反応式により表すことができる。正極物質がLiCoOである場合、正極である第2電極30での反応式は、下記の式(1)で表される。xは、反応する原子の割合を表し、0より大きく1未満の実数である。
Li1-xCoO + xLi + xe ⇔ LiCoO …(1)
【0037】
これに対して、負極である第1電極20での反応式は、下記の式(2)で表される。式(2)が示しているように、二次電池10での充電の際には、第1電極20の表面にLiが析出する。
Li + e ⇔ Li …(2)
【0038】
上記の式(2)で示されているように、本実施形態の二次電池10によれば、理論的には、第1電極20においてLiを析出させることができる限り、充電が可能であり、高い充電容量を得ることができる。
【0039】
1-4.二次電池の充電方法:
図4および図5を参照して、第1実施形態の充電方法が適用された充電装置50で実行される充電方法を説明する。図4には、充電装置50による充電制御の工程フロー図が図示されている。図5には、充電装置50の充電制御が実行されている間の充電電流の電流値と、二次電池10の電圧の時間変化の一例を示すグラフが図示されている。
【0040】
充電装置50の充電制御では、二次電池10は、制御部52が電流制御部53に指令した電流値での定電流による充電が複数段階に分けて実行される。制御部52は、充電制御において、以下に説明するように、その充電電流の電流値を期間ごとに階段状に変化させる。つまり、充電装置50の充電制御では、充電電流の電流値は期間ごとに離散的な値をとる。
【0041】
制御部52は、事前の準備工程として、二次電池10に対する充電を開始するときに、スイッチ部54が開かれている場合には、まず、スイッチ部54を閉じた状態にする。制御部52は、スイッチ部54が閉じられているときには、閉じたままにする。
【0042】
工程1では、制御部52は、低電流充電制御を実行する。低電流充電制御では、予め定められた低電流値の充電電流による充電が実行される。低電流充電制御は、本願発明の発明者が、自身の研究において見出した、第1活物質層22にカーボンナノ構造体25が適用された二次電池10の充電開始直後の特有の傾向に基づく制御である。
【0043】
後述するように、本願発明の発明者は、第1実施形態の二次電池10では、充電開始直後には、供給される電流に応じて電圧が急峻に上昇しやすい傾向があることを見出した。そのため、工程1の低電流充電制御では、制御部52は、充電開始直後に二次電池10の電圧が急上昇して電圧のオーバーシュートの発生を抑制できる低い電流値での充電を実行する。
【0044】
低電流充電制御での充電電流の電流値である低電流値は、工程2で実行される高電流充電制御での充電電流の電流値の1/2以下であることが好ましい。低電流値は、例えば、高電流充電制御での充電電流が、6.0mA/cm以上の電流密度に相当する電流値の場合、3.0mA/cmの電流密度に相当する電流値以下であることが好ましい。また、この場合に、低電流値は、2.0mA/cmの電流密度に相当する電流値以下であることがより好ましい。
【0045】
低電流充電制御の低電流値は、上述したオーバーシュートの発生を抑制できる範囲内において大きい値であるほど好ましい。これにより、二次電池10の充電速度を高めることができるためである。
【0046】
また、後述するように、第1実施形態の二次電池10では、充電開始直後の充電電流の流値が低すぎると、充放電に関与する金属イオン(本実施形態ではLiイオン)が、第1集電体21と第1活物質層22との間や第1活物質層22の中で、金属原子として析出しやすくなる。第1集電体21と第1活物質層22との間や第1活物質層22の中に析出する金属原子の量が大きくなると、カーボンナノ構造体25がその金属原子から外力を受けて第1集電体21から乖離しやすくなり、第1集電体21から脱落しやすくなる。
【0047】
一方、充電開始直後の充電電流の電流値がある程度高ければ、第1集電体21と第1活物質層22との間や第1活物質層22の中に、充放電に関与する金属イオンがの金属原子として析出する量を低減できる。また、第1活物質層22の上に析出した金属原子の層を形成することもできる。よって、第1集電体21と第1活物質層22との間や第1活物質層22の中にその金属原子が析出することにより、カーボンナノ構造体25が第1集電体21から脱落しやすくなることが抑制される。そのため、そのようなカーボンナノ構造体25の脱落が原因となって、二次電池10の電池性能が低下することを抑制できる。
【0048】
第1集電体21からのカーボンナノ構造体25の脱落を抑制するためには、後述する本願発明の発明者による実験結果によれば、低電流充電制御での低電流値は、0.4mA/cmの電流密度に相当する電流値以上であることが好ましい。また、低電流充電制御での低電流値は、0.8mA/cmの電流密度に相当する電流値以上であることがより好ましく、2.0mA/cmの電流密度に相当する電流値以上であることが、さらに好ましい。低電流充電制御での低電流値を工程2で実行される高電流充電制御での充電電流の電流値を基準として規定する場合には、低電流充電制御での低電流値は、高電流充電制御での充電電流の電流値の1/4以上であることが好ましく、1/3以上であることがより好ましい。
【0049】
低電流充電制御での低電流値は、第1活物質層22の上に、充放電に関与する金属イオンが析出した金属の成長核が形成される値以上であることがより好ましい。これによって、第1活物質層22の上に金属原子が析出して金属原子の層が形成されることが促進される。第1活物質層22の上に金属原子を析出させることができれば、その金属原子によって、カーボンナノ構造体25を上から押さえられるため、第1集電体21からのカーボンナノ構造体25の脱落が、さらに抑制される。よって、二次電池10の充放電が繰り返されたときの電池性能の低下がさらに抑制される。
【0050】
図5に示すように、時刻tにおいて、低電流値Iでの低電流充電制御が開始されると、二次電池10の電圧は急峻に上昇し、第1電圧閾値Vaを瞬間的に超えた後、第1電圧閾値Vaより低下し、その後、充電が進むにつれてわずかずつ上昇していく。第1電圧閾値Vaは、高効率な充電が可能なように実験的に予め定められた電圧値でよい。制御部52は、充電開始直後の二次電池10の電圧の瞬間的な上下変動を検出した後、二次電池10の電圧が再度、第1電圧閾値Vaに到達したときに低電流充電制御を終了し、工程2の高電流充電制御を開始する。
【0051】
工程2の高電流充電制御では、制御部52は、充電中における最大の電流値の充電電流を供給して充電する。高電流充電制御での充電電流の電流値は、二次電池10の電圧のオーバーシュートの発生が抑制できる最大の電流値として、実験結果等に基づいて予め定められた値でよい。高電流充電制御での充電電流の電流値は、例えば、1.0mA/cmの電流密度に相当する電流値以上であることが好ましく、5.0mA/cmの電流密度に相当する電流値以上であることがより好ましい。高電流充電制御での充電電流の電流値は、例えば、6.0mA/cmの電流密度に相当する電流値以上であることが、さらに好ましい。
【0052】
高電流充電制御では、二次電池10は、充電中における最大の電流値で高速に充電される。高電流充電制御での充電電流の電流値が高いほど充電時間の短縮が可能である。
【0053】
図5に示すように、時刻tにおいて、充電中の最大の電流値である電流値Iでの高電流充電制御が開始されると、二次電池10の電圧は、充電が進むにつれて次第に上昇していく。制御部52は、二次電池10の電圧が、予め定められた第2電圧閾値Vbに到達したときに高電流充電制御を終了し、工程3の電流低下制御を開始する。第2電圧閾値Vbは、第1電圧閾値Vaより大きい値であり、オーバーシュートの発生が抑制できる電圧として、実験結果に基づいて予め定められた値でよい。
【0054】
工程3では、制御部52は、電流低下制御によって、充電電流の電流値を、高電流充電制御での高電流値から、充電時間の経過に伴って階段状に複数回、低下させる。本実施形態では、制御部52は、充電電流の電流値を、直前の電流値の2/3以下に低下させる。制御部52は、二次電池10の電圧が第2電圧閾値Vbに到達するたびに、充電電流の電流値を低下させる。
【0055】
電流低下制御の実行中には、充電電流の電流値を低下させるたびに、二次電池10の電圧がいったん低下する。よって、高電流充電制御によって二次電池10の充電がある程度進んだ後に、電流低下制御の実行を開始することにより、二次電池10の電圧が高くなりすぎてオーバーシュートが発生することを抑制しながら、安定して充電を継続することができる。
【0056】
図5の例では、時刻tにおいて、充電電流の電流値が、高電流充電制御での電流値Iから電流値Iに低下されている。また、二次電池10の電圧が、時刻tから次第に上昇していき、第2電圧閾値Vbに到達した時刻tにおいて、電流値Iから電流値Iに低下されている。
【0057】
上記のように、本実施形態では、二次電池10の電圧が第2電圧閾値Vbに到達するときに電流値が低下されており、二次電池10の電圧が、オーバーシュートが発生する可能性が高くなる臨界的な第2電圧閾値Vbを超えることが抑制されている。よって、電圧のオーバーシュートの発生が抑制される電圧を維持したまま高効率な充電を継続することが容易にできる。
【0058】
制御部52は、上述した充電制御の実行中に、二次電池10のSOCを随時検出しており、SOCが所定の閾値に到達したときに、スイッチ部54を開き、二次電池10への充電を終了する。
【0059】
以上のように、本実施形態の二次電池10の充電方法によれば、最大の電流値で高効率な充電を実行した後に、充電電流の電流値が階段状に低下されることにより、電圧のオーバーシュートの発生を抑制しながら二次電池10を短時間で充電することができる。また、本実施形態の二次電池10の方法によれば、充電開始直後に低電流充電制御が実行されていることにより、充電開始直後の電圧のオーバーシュートの発生が抑制されている。また、充電開始直後に、低電流充電制御が実行されることにより、充電中に第1電極20に析出する金属原子によって第1集電体21からカーボンナノ構造体25が脱落することを抑制できる。よって、二次電池10の充放電が繰り返されたときの電池性能の低下を抑制することができる。
【実施例0060】
1-5.充電開始直後の二次電池の電圧変化の実験例:
図6には、参考実験結果として、本発明の発明者の実験によって得られた、2種類の二次電池の電圧の時間変化を示すグラフが図示されている。第1のグラフGaは、第1種の二次電池のグラフであり、第2のグラフGbは、第2種の二次電池のグラフである。第1と第2のグラフGa,Gbはそれぞれ、第1種と第2種の二次電池のそれぞれに対して、同じ定電流での充電を開始した後の電圧の計測値の変化を示している。
【0061】
第1種の二次電池では、負極の活物質層には、カーボンナノ構造体としてのカーボンナノウォールが適用されていた。これに対して、第2種の二次電池では、負極の活物質層が、カーボンナノ構造体ではなく、グラファイトによって構成されていた。第1種と第2種の二次電池は、前記の点以外は、ほぼ同じ構成を有していた。
【0062】
第2のグラフGbが示すように、負極の活物質層にグラファイトが適用された第2種の二次電池の電圧は、充電開始直後直後にほぼ垂直に上昇をした後、緩やかな曲線を描いて3.5V近傍まで到達し、その後、3.8V程度まで漸増した。これは、グラファイトが適用された第2種の二次電池では、充電時にグラファイトの中のグラフェン層の間にLiイオンが挿入されてC原子と反応して化合物が生成される下記の式(3)の化学反応に時間がかかり、電圧の上昇が緩やかになるためであると推察される。
Li + C ⇔ LiCx(x≦6) …(3)
【0063】
これに対して、負極の活物質層にカーボンナノウォールが適用された第1種の二次電池では、充電開始直後の電圧が、上記の第2種の二次電池の電圧の変化とは明らかに異なる挙動を示した。第1種の二次電池の電圧は、第1のグラフGaが示すように、充電開始直後にほぼ垂直に4.0Vを超えるまで急峻に上昇した後、わずかに低下し、4.0Vよりわずかに小さい3.9V付近で維持された。これは、第1種の二次電池では、上述した反応式(2)に示されているように、充電時にLiイオンが負極の活物質層のカーボンナノ構造体上に析出するのみであり、化合物を生成する化学反応を伴わず、電圧が急峻に上昇しやすいためであると考えられる。
【0064】
このような実験結果から、本願発明の発明者は、負極の活物質層にカーボンナノ構造体が適用された二次電池は、電池性能が高い一方で、電圧が、充電開始直後に瞬間的に最大値を超えるほどの急峻な上昇を示す特有の傾向があることを見出した。そして、この傾向に対する考察から、負極の活物質層にカーボンナノ構造体が適用された二次電池の充電の際には、充電開始直後の電圧のオーバーシュートを抑制するために、低電流で充電を開始した方が好ましいとの知見を得るに至った。このように、図6に示されたグラフは、本実施形態の充電装置50の充電制御によれば、工程1の低電流充電制御が実行されていることにより、充電開始直後の電圧のオーバーシュートの発生が抑制されることを示している。
【0065】
1-6.電流値に応じた二次電池の電極の状態変化の実験例:
図7および図8には、参考実験結果として、負極の活物質層にカーボンナノ構造体が適用された同じ構成の二次電池に対して、定電流で充電を行った後の負極を撮影した画像を実験例S1~S6としてまとめた表が示されている。図7および図8において、「正面画像」は、負極の集電体の厚み方向に相当する正面方向から撮影した画像であり、「側面画像」は、負極の集電体の表面に沿った方向に相当する側面方向から撮影した画像である。実験例S1~S6での二次電池のカーボンナノ構造体は、カーボンナノウォールであった。
【0066】
各実験例S1~S6ではそれぞれの充電電流の電流値が異なっている。実験例S1~S6の充電電流の電流値Iおよび電流密度Jは下記の通りである。
【0067】
<実験例S1~S6での充電条件>
・実験例S1:電流値I=0.01[mA]、電流密度J=0.008[mA/cm
・実験例S2:電流値I=0.05[mA]、電流密度J=0.040[mA/cm
・実験例S3:電流値I=0.10[mA]、電流密度J=0.080[mA/cm
・実験例S4:電流値I=0.50[mA]、電流密度J=0.400[mA/cm
・実験例S5:電流値I=1.00[mA]、電流密度J=0.800[mA/cm
・実験例S6:電流値I=2.60[mA]、電流密度J=2.000[mA/cm
【0068】
電流値Iが0.05mA以下であり、電流密度Jが0.040mA/cm以下である実験例S1,S2の撮影画像では、充電により負極に析出したLiの層の上にカーボンナノウォール(CNW)が存在していた。このことから、充電電流の電流値が小さすぎると、Liが集電体とCNWとの間に析出し、CNWが集電体から離れやすいことがわかる。負極がいったんそのような状態になると、その後に充放電が繰り返されたときにCNWが脱落しやすい状態になる。
【0069】
電流値Iが0.10mAであり、電流密度Jが0.080mA/cmである実験例S3の撮影画像では、集電体の上で隆起したCNWの層に亀裂が生じており、その亀裂からLiがはみ出していた。実験例S3のようにCNWの層の亀裂が大きいと、その後に充放電が繰り返されたときにCNWが脱落しやすい。
【0070】
電流値Iが0.50mAであり、電流密度Jが0.400mA/cmである実験例S3の撮影画像では、Liの析出によりCNWの層が局所的に隆起しているものの、CNWの層の亀裂は、内部のLiが露出するほど大きくはなかった。実験例S4の程度のCNWの層の亀裂であれば、その後に充放電が繰り返されたとしても、CNWの脱落は、実験例S3の場合よりも確実に抑制される。
【0071】
実験例S1~S4での電極の状態変化の違いから、充電電流の電流値が大きくなるほど、集電体と活物質層との間や活物質層中にLiが析出することが抑制されることがわかる。また、少なくとも、電流値Iが0.50mA以上であり、電流密度Jが0.400mA/cm以上であれば、Liの析出によるCNWの層の亀裂の発生が抑制されるため、その後に充放電が繰り返されても、CNWが集電体から脱落しにくくなることがわかる。
【0072】
電流値Iが1.00mAであり、電流密度Jが0.800mA/cmである実験例S5の撮影画像では、Liの成長核がCNWの層の上に形成されていた。このことは、充電電流がある程度大きいと、充放電に関与する金属イオンが析出した金属の成長核を、負極の活物質層を構成するカーボンナノ構造体の層の上に形成させることができることを示している。
【0073】
実験例S5のように、充放電に関与する金属イオンが析出した金属の成長核をカーボンナノ構造体の層の上に形成させることができれば、充電が進んだときに、カーボンナノ構造体の層の上にその金属原子の層が形成されやすくなる。よって、その金属原子の層によって、カーボンナノ構造体を上から押さえることができるため、その後に充放電が繰り返されても、集電体から脱落することを、より確実に抑制できる。
【0074】
電流値Iが2.60mAであり、電流密度Jが2.000mA/cmである実験例S6の撮影画像では、CNWの表面がLiによって覆われた状態を観察できる。このように、実験例S6では、Liの層によってCNWの層が覆われており、CNWの層に亀裂は発生しなかった。このことは、充電電流の電流値を、充放電に関与する金属イオンが析出した金属の成長核がカーボン構造体の層の上に形成される値よりもさらに大きくすれば、その成長核を成長の起点として、カーボンナノ構造体を覆う金属の層を形成できることを示している。
【0075】
低電流充電制御において、そのような金属原子の層をいったん形成することができれば、その後に充電が進んだときに、金属原子の層を均一な構造のまま成長させやすい。よって、二次電池の充電効率をさらに高めることができる。加えて、その金属原子の層によってカーボンナノ構造体が保護されるため、充放電の繰り返しにより、カーボンナノ構造体が集電体から剥離して電池性能が低下することを、さらに抑制できる。
【0076】
このように、負極の活物質層にカーボンナノ構造体が適用された二次電池では、電圧のオーバーシュートの発生が抑制される範囲内で、充電開始直後の充電電流の電流値を大きくすれば、電極からのカーボンナノ構造体の脱落を抑制できる。このことから、本実施形態の充電装置50の充電制御によれば、工程1の低電流充電制御が実行されていることにより、電極からのカーボンナノ構造体の脱落を抑制でき、充放電の繰り返しによる二次電池10の電池性能の低下を抑制できることがわかる。
【0077】
1-7.二次電池の充電制御の違いによる充電時間の差:
図9図13を参照して、本実施形態における二次電池10の充電方法の実施例および比較例を説明する。
【0078】
図9図12にはそれぞれ、図2および図3で説明した二次電池10に相当する構成の二次電池に対して、それぞれ異なる充電制御によって二次電池のSOCが100%の満充電の状態になるまで充電を行ったときの電流Iと電圧Vの時間変化を示すグラフが図示されている。
【0079】
図9のグラフは、実施例E1の充電制御をおこなったときに実測値に基づく。図9の実施例E1では、図4および図5を参照して説明した本実施形態の充電制御によって二次電池を充電した。実施例E1では、充電電流の電流値Iおよび電流密度Jは、以下の通りとした。
【0080】
<実施例E1の充電条件>
・低電流充電制御:I=2.6mA、J=2.0mA/cm
・高電流充電制御:I=6.5mA、J=5.0mA/cm
・電流低下制御:電圧5.0Vに到達するときに電流値Iおよび電流密度Jを下記の通り低下させた。
I:6.5mA→4.0mA→2.6mA
J:5.0mA/cm→3.0mA/cm→2.0mA/cm
【0081】
図10(a)のグラフは、比較例C1の充電制御での電流Iと電圧Vの時間変化のモデルを示しており、図10(b)のグラフは、実測値に基づく電流Iと電圧Vの時間変化を示している。図10の比較例C1では、充電電流の電流値を変更することなく、一定の電流値に維持する定電流制御により二次電池を充電した。比較例C1での充電電流の電流値は0.5mAとし、電流密度は0.4mA/cmであった。
【0082】
図11(a)のグラフは、比較例C2の充電制御での電流Iと電圧Vの時間変化のモデルを示しており、図11(b)のグラフは、実測値に基づく電流Iと電圧Vの時間変化を示している。図11の比較例C2では、充電電圧を一定の電圧値で維持する定電圧制御により二次電池を充電した。比較例C2の充電電圧の電圧値は4.5Vとした。
【0083】
図12(a)のグラフは、比較例C3の充電制御での電流Iと電圧Vの時間変化のモデルを示しており、図12(b)のグラフは、実測値に基づく電流Iと電圧Vの時間変化を示している。図12の比較例C3では、二次電池の充電を定電流制御で開始した後、充電途中で定電圧制御に切り替える充電制御を実行した。定電流制御と定電圧制御は、二次電池のSOCが80%に到達した時点で切り替えた。比較例C3での定電流制御での充電電流の電流値は0.5mAとし、電流密度は0.4mA/cmであった。また、比較例C3での定電圧制御での充電電圧の電圧値は4.5Vとした。
【0084】
図13では、実施例E1および比較例C1,C2,C3のそれぞれの充電制御による充電時間の結果を比較可能なように棒グラフによって示してある。また、図13では、実施例E1および比較例C1,C2,C3の計測値から得られた二次電池の比容量の棒グラフを示してある。
【0085】
実施例E1の充電制御によれば、比較例C1,C2,C3に対して、ほぼ1/10以下の充電時間で充電が完了した。また、実施例E1、および、比較例C1,C2,C3の充電制御の違いによって比容量はほぼ変化しなかった。このことから、本実施形態の充電装置50における充電制御によれば、二次電池10の電池性能を維持したまま、二次電池10の充電時間を著しく短縮できることがわかる。
【0086】
1-8.二次電池に対する充放電の繰り返しによる電池性能の変化:
図14および図15を参照して、本実施形態の充電方法の実施例E2および比較例C4について、充放電を繰り返したときの二次電池の電池性能の変化を説明する。実施例E2および比較例C4では、図2および図3で説明した二次電池10に相当する構成を有する同じ二次電池を使用した。
【0087】
図14(a)には、実施例E2の充電制御における充電電流の電流値の時間変化を示すグラフを図示してある。実施例E2では、図14(a)に示す電流値での充電制御によって二次電池を満充電まで充電した後に、二次電池を所定の負荷に接続して放電させる充放電処理を、10回繰り返した。
【0088】
図14(b)には、上記の充電時と放電時の実測値に基づいて得られた二次電池の充電容量と電圧との関係を示すグラフを図示してある。グラフCG#1~CG#10は、充電時における充電容量と電圧との関係を示し、グラフDG#1~DG#10は、放電時における充電容量と電圧との関係を示している。
【0089】
図15には、比較例C4での充電時と放電時の実測値に基づいて得られた二次電池の充電容量と電圧との関係を示すグラフを図示してある。比較例C4では、定電流制御によって二次電池を充電した後、実施例E2と同じ負荷に接続して放電させる充放電処理を5回繰り返した。比較例C4の定電流制御では、充電電流の電流値は0.5mAであり、電流密度は0.4mA/cmであった。グラフCG#11~CG#15は、比較例C4の充電時における二次電池の充電容量と電圧の関係を示し、グラフDG#11~DG#15は、比較例C4の放電時における二次電池の充電容量と電圧との関係を示している。
【0090】
比較例C4では、充放電を繰り返すほど、充電容量の最大値が低下していったのに対して、実施例E2では、充放電を繰り返したときの充電容量の最大値のばらつきは抑制されていた。このことから、本実施形態の充電制御によれば、充放電を繰り返したときの二次電池の電池性能の低下が抑制されることがわかる。
【0091】
以上のように、第1実施形態の二次電池の充電装置および充電方法によれば、二次電池の充電時間を著しく短縮することができる。また、充放電を繰り返したときの二次電池の電池性能の低下を抑制することができる。
【0092】
2.第2実施形態:
図16および図17を参照して、第2実施形態における二次電池の充電方法を説明する。図16には、第2実施形態の充電装置が実行する充電制御の工程フロー図が図示されている。また、図17には、第2実施形態の充電制御が実行されている間の充電電流の電流Iと、二次電池の電圧Vの時間変化の一例を示すグラフが図示されている。
【0093】
第2実施形態の充電装置の構成は、第1実施形態で説明した図1に示す充電装置50とほぼ同じである。ただし、第2実施形態において、充電対象となる二次電池は、負極の活物質層に、第1実施形態で説明したカーボンナノ構造体ではなく、グラファイトが適用されている。第2実施形態の二次電池は、前述の点以外は、第1実施形態で説明した二次電池10の構成とほぼ同じである。
【0094】
図16に示すように、第2実施形態の充電制御は、工程1の定電流充電制御が省略されている点以外は、第1実施形態の充電制御とほぼ同じである。図17に示すように、第2実施形態の充電制御では、時刻tにおいて二次電池に対する充電が開始されると、高電流充電制御が実行され、最大の電流値Iの充電電流の定電流で充電される。
【0095】
時刻tにおいて二次電池の電圧Vが予め定められた閾値Vthに到達すると、電流低下制御が開始され、充電時間の経過に伴って充電電流の電流値が階段状に低下されていく。図17の例では、時刻tにおいて電流値Iに低下され、時刻tにおいて電流値Iに低下され、時刻tにおいて電流値Iに低下されている。
【0096】
第2実施形態の二次電池の充電方法によれば、最大の電流値で高効率な充電を実行した後に、充電電流の電流値が複数回、階段状に低下されることにより、電圧のオーバーシュートの発生を抑制しながら二次電池を短時間で充電することができる。また、第1実施形態と異なり、充電開始後の低電流充電制御が実行される期間がない分だけ、充電時間の短縮が可能である。
【実施例0097】
図18図20を参照して、第2実施形態の充電方法の実施例および比較例を説明する。図18および図19にはそれぞれ、上述した第2実施形態の充電対象である二次電池に対して、それぞれ異なる充電制御によって二次電池のSOCが100%の満充電の状態になるまで充電を行ったときの電流Iと電圧Vの時間変化を示すグラフが図示されている。図18は、実施例E3のグラフであり、図19は、比較例E5のグラフである。
【0098】
図18の実施例E3では、図16および図17を参照して説明した第2実施形態の充電制御によって二次電池を充電した。実施例E3では、充電電流の電流値Iおよび電流密度Jは、以下の通りとした。
【0099】
<実施例E3の充電条件>
・高電流充電制御:I=1.5mA、J=1.1mA/cm
・電流低下制御:電圧4.2Vに到達するときに電流値Iおよび電流密度Jを下記の通り低下させた。
I:1.5mA→1.0mA→0.5mA→0.3mA
J:1.1mA/cm→0.8mA/cm→0.4mA/cm→0.2mA/cm
【0100】
図19の比較例C5では、第1実施形態で図12を参照して説明した比較例C3と同様な充電制御によって二次電池を充電した。比較例C5では、充電開始後、電流値1.0mAの定電流での充電を実行し、SOCが80%に到達したときに、充電電圧4.2Vの定電圧での充電に切り替えた。
【0101】
図20では、上記の実施例E3および比較例C5のそれぞれの充電制御による充電時間の結果を比較可能なように棒グラフによって示してある。また、図20では、実施例E3および比較例C5のそれぞれの計測値から求めた二次電池の比容量の棒グラフを示してある。
【0102】
実施例E3の充電制御によれば、比較例C5に対して、約70%の充電時間で充電が完了した。また、実施例E3と比較例C5とでは、充電制御の違いによって比容量はほぼ変化しなかった。このことから、第2実施形態の充電制御によれば、二次電池の電池性能を維持したまま、二次電池の充電時間を著しく短縮できることがわかる。
【0103】
3.他の実施形態:
本願発明は、上述の実施形態や実施例の構成に限定されることはなく、例えば、以下のような形態で実現することもできる。以下において、他の実施形態として説明する構成はいずれも、上記の実施形態や、上記実施形態中で他の実施形態として説明された構成、実施例と同様に、本願発明を実施するための一形態例として位置づけられる。
【0104】
3-1.他の実施形態1:
上記の各実施形態において、充電対象となる二次電池は、リチウムイオン二次電池以外の二次電池によって構成されていてもよい。例えば、充電対象となる二次電池は、Liイオン以外の金属イオンを充放電に関与させる構成であってもよい。二次電池は、例えば、ナトリウム(Na)イオンや、カリウム(K)イオン、マグネシウム(Mg)イオン等の金属イオンを充放電に関与させる構成であってもよい。また、充電対象となる二次電池は、充放電に関与する金属イオンが固体電解質を介して伝導する全固体電池によって構成されていてもよい。
【0105】
3-2.他の実施形態2:
上記実施形態の充電対象として説明した二次電池10において、第1電極20の第1集電体21は、Cu以外の金属によって構成されてもよい。第1集電体21は、例えば、Cu合金や、Al、Al合金、その他の金属によって構成されてもよい。また、二次電池10において、第1電極20の第1活物質層22は、C原子以外の原子によって構成されていてもよい。第1活物質層22は、省略されてもよい。この場合には、第1電極20の第1集電体21は、表面に、充放電に関与する金属イオンが金属原子として析出することが促進される成長核となる構造や構成を有していることが好ましい。
【0106】
3-3.他の実施形態3:
充電装置50は、マイクロチップ上に実装された集積回路ではなく、上述した、電源部51、制御部52、電流制御部53、スイッチ部54、電流計測部55、および、電圧計測部56の機能を有する機器によって構成された充電システムによって構成されてもよい。充電装置50は、携帯情報端末や二次電池を搭載する家電製品等の充電に用いられるように小型に構成されていてもよいし、車両や大型な移動体に搭載された二次電池の充電にも通られるように大型に構成されていてもよい。
【0107】
3-4.他の実施形態4:
電流低下制御での電流値の低下幅は、直前の2/3以下の値には限定されない。電流低下制御での電流値の低下幅は、充電中における二次電池の電圧のオーバーシュートの発生が抑制できるように適宜定められることが好ましい。
【0108】
3-5.他の実施形態5:
電流低下制御で電流値を低下させるタイミングは、二次電池10の電圧が所定の閾値に到達するタイミングには限定されない。電流低下制御で電流値を低下させるタイミングは、例えば、充電開始後や高電流充電制御の開始後、予め定められた時間が経過したタイミングでもあってもよいし、二次電池10のSOCが所定の閾値に到達したタイミングであってもよい。
【0109】
3-6.他の実施形態6:
上記実施形態において、低電流充電制御では、高電流充電制御での電流値の1/2以下の電流値で充電されなくてもよい。低電流充電制御での電流値は、充電開始直後の電圧のオーバーシュートの発生が抑制されるように適宜、任意の値に定めることができる。
【0110】
4.形態例:
本願発明は、以下のような形態によって実現することが可能である。
【0111】
[第1形態]第1形態は、二次電池の充電方法として提供される。第1形態の充電方法は、前記二次電池に対して、充電中の最大の電流値で充電電流を供給して充電する高電流充電工程と、前記充電電流の電流値を、充電時間の経過に伴って、前記最大の電流値から階段状に低下させていく電流低下工程と、を備える。
第1形態の充電方法によれば、電流低下工程の前に、最大の電流値での高効率の充電により急速な充電が可能である。また、最大の電流値での急速充電の後には、電流低下工程が実行されて、充電電流の電流値が階段状に低下されるため、二次電池の充電量の増加に伴って二次電池の電圧が著しく高くなることを抑制でき、電圧のオーバーシュートの発生を抑制することができる。よって、第1形態の充電方法によれば、二次電池の充電状態に合わせた高い電流値での円滑な急速充電が可能であり、二次電池の充電時間を短縮することができる。
【0112】
[第2形態]上記第1形態の充電方法において、前記二次電池は、集電体と、前記集電体の表層に、前記表層から細長く延びているグラフェンによって構成されたカーボンナノ構造体が全体にわたって配置された活物質層と、を有する第1電極と、充電の際に、イオン化して前記第1電極に移動する金属原子を含む第2電極と、を備え、前記充電方法は、さらに、前記高電流充電工程の前に、前記二次電池に対して、前記最大の電流値の1/2以下の低電流値の前記充電電流で充電する低電流充電工程を備えていてもよい。
本願発明の発明者の研究によれば、カーボンナノ構造体が適用された活物質層が適用された二次電池は、充電が開始された直後に電圧が急上昇する傾向がある。第2形態の充電方法によれば、高電流値での充電が開始される前に、低電流値での充電が実行されるため、充電開始直後に電圧が急上昇してオーバーシュートが発生することを抑制することができる。また、高電流値での充電の前に低電流値での充電が実行されることによって、充電の際に、集電体とカーボンナノ構造体の活物質層との間に金属原子が析出することが抑制される。よって、そのような金属原子の析出によって集電体からカーボンナノ構造体が脱落することを抑制できる。そのため、充放電の繰り返しにより、二次電池の充電性能が低下することが抑制される。
【0113】
[第3形態]上記第2形態の充電方法において、前記低電流値は、前記活物質層の上に前記金属原子の成長核が形成される電流値以上の値でよい。
第3形態の充電方法によれば、低電流値の充電によって金属原子の成長核が形成されることにより、活物質層の上への金属原子の析出が促進される。活物質層の上に析出した金属原子によってカーボンナノ構造体が集電体から剥離することが抑制されるため、集電体からのカーボンナノ構造体の脱落を、さらに抑制することができる。
【0114】
[第4形態]上記第1形態、第2形態、および、第3形態のいずれか1つに記載の充電方法において、前記電流低下工程では、前記電流値を直前の前記電流値の2/3以下に低下させてよい。
第4形態の充電方法によれば、充電中に電圧のオーバーシュートが発生することを、さらに抑制することができる。
【0115】
[第5形態]上記第1形態、第2形態、第3形態、および、第4形態のいずれか1つに記載の充電方法において、前記電流低下工程では、前記二次電池の電圧が所定の閾値に到達するときに、前記電流値を低下させてよい。
第5形態の充電方法によれば、電圧のオーバーシュートの発生が抑制される電圧を維持したまま高効率な充電を継続することが容易にできる。
【0116】
[第6形態]第6形態は、二次電池を充電する充電装置として提供される。第6形態の二次電池は、前記二次電池に充電電流を供給する電源部と、前記充電電流の大きさを制御する電流制御部と、前記充電電流の電流値を前記電流制御部に指令する制御部と、を備え、前記制御部は、充電中の最大の電流値の前記充電電流で前記二次電池を充電する高電流充電制御を開始した後、充電時間の経過に伴って、前記充電電流の電流値を、前記最大の電流値から階段状に低下させていく電流低下制御を実行する。
第6形態の充電装置によれば、電流低下制御の実行前に、高電流充電制御において最大の電流値での高効率の充電が実行されることにより急速な充電が可能である。また、高電流充電制御による急速充電の後には、電流低下制御が実行されて、充電電流の電流値が階段状に低下されるため、二次電池の充電量の増加に伴って二次電池の電圧が著しく高くなることを抑制でき、電圧のオーバーシュートの発生を抑制することができる。よって、第6形態の充電装置によれば、二次電池の充電状態に合わせた高い電流値での円滑な急速充電が可能であり、二次電池の充電時間を短縮することができる。
【0117】
[第7形態]上記第6形態の充電装置において、前記二次電池は、集電体と、前記集電体の表層に、前記表層から細長く延びているグラフェンによって構成されたカーボンナノ構造体が全体にわたって配置された活物質層と、を有する第1電極と、充電の際に、イオン化して前記第1電極に移動する金属原子を含む第2電極と、を備え、前記制御部は、前記高電流充電制御を開始する前に、前記最大の電流値の1/2以下の低電流値の前記充電電流で前記二次電池を充電する低電流充電制御を実行してよい。
第7形態の充電装置によれば、高電流値での充電が開始される前に、低電流値での充電が実行されるため、充電開始直後に電圧が急上昇してオーバーシュートが発生することを抑制することができる。また、低電流値での充電によって集電体とカーボンナノ構造体の活物質層との間に金属原子が析出することが抑制されるため、そのような金属原子の析出によって集電体からカーボンナノ構造体が脱落することを抑制できる。よって、充放電の繰り返しにより、二次電池の充電性能が低下することが抑制される。
【0118】
[第8形態]上記第7形態の充電装置において、前記低電流値は、前記活物質層の上に前記金属原子が析出する電流値以上の値でよい。
第8形態の充電装置によれば、低電流値での充電によって活物質層の上に金属原子が析出することが促進され、その析出した金属原子によってカーボンナノ構造体が集電体から剥離することが抑制される。よって、集電体からのカーボンナノ構造体の脱落を、さらに抑制することができる。
【0119】
[第9形態]上記第6形態、第7形態、および、第8形態のいずれか1つの記載の充電装置において、前記制御部は、前記電流低下制御において、前記充電電流の電流値を直前の電流値の2/3以下に低下させてよい。
第9形態の充電装置によれば、充電中に電圧のオーバーシュートが発生することを、さらに抑制することができる。
【0120】
[第10形態]上記第6形態、第7形態、第8形態、および、第9形態のいずれか1つの記載の充電装置は、さらに、前記二次電池の電圧を計測する電圧計測部を備え、前記制御部は、前記電流低下制御において、前記二次電池の電圧が所定の閾値に到達するときに、前記充電電流の電流値を低下させてよい。
第10形態の充電装置によれば、電圧のオーバーシュートの発生が抑制される電圧を維持したまま高効率な充電を継続することが容易にできる。
【符号の説明】
【0121】
10…二次電池、11…容器、12…電解液、15…セパレータ、20…第1電極、21…第1集電体、22…第1活物質層、25…カーボンナノ構造体、26…グラフェン、30…第2電極、31…第2集電体、32…第2活物質層、50…充電装置、51…電源部、52…制御部、53…電流制御部、54…スイッチ部、55…電流計測部、56…電圧計測部、59…充電回路

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