(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054799
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】塗料及び塗布方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240410BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240410BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240410BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20240410BHJP
A01N 59/20 20060101ALI20240410BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240410BHJP
C09D 191/00 20060101ALI20240410BHJP
C09D 103/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C09D201/00
A01P3/00
A01P1/00
A01N59/16 A
A01N59/20 Z
C09D7/61
C09D191/00
C09D103/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161286
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】722004104
【氏名又は名称】株式会社ナノジャパン
(72)【発明者】
【氏名】高田 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 哲也
【テーマコード(参考)】
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA15
4J038BA122
4J038BA201
4J038HA066
4J038HA436
4J038HA446
4J038JA37
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA04
4J038MA10
4J038NA11
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】優れた抗菌、抗ウイルス、耐摩耗性及び消臭機能並びに居住性の質的改善機能を備えた塗料及び塗料を用いる塗布方法を提供する。
【解決手段】多孔質粒子を含む塗料であって、前記多孔質粒子が、平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ形状が略円筒状である細孔を複数有し、前記細孔が、貫通孔であり、さらに、<111>配向している結晶を含み、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である塗料。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質粒子を含む塗料であって、前記多孔質粒子が、平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ形状が略円筒状である細孔を複数有していることを特徴とする塗料。
【請求項2】
前記細孔が、貫通孔である請求項1記載の塗料。
【請求項3】
前記細孔が、<111>配向している結晶を含む請求項1又は2に記載の塗料。
【請求項4】
前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である請求項1~3のいずれかに記載の塗料。
【請求項5】
前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が90以上である請求項1~4のいずれかに記載の塗料。
【請求項6】
前記多孔質粒子の平均粒径が0.1μm~10μmである請求項1~5のいずれかに記載の塗料。
【請求項7】
前記多孔質粒子が酸化物を主成分として含む請求項1~6のいずれかに記載の塗料。
【請求項8】
前記酸化物がSiO2を含む請求項7に記載の塗料。
【請求項9】
前記酸化物におけるFe2O3の含有量が0.01at%~0.5at%である請求項7又は8に記載の塗料。
【請求項10】
前記多孔質粒子が、前記細孔を5以上含む請求項1~9のいずれかに記載の塗料。
【請求項11】
前記多孔質粒子が、珪藻土を主成分として含む請求項1記載の塗料。
【請求項12】
さらに、銅及び/又は銀を含む請求項1記載の塗料。
【請求項13】
さらに、低級脂肪酸を含む請求項1記載の塗料。
【請求項14】
さらに、デンプン糊及びアマニ油を含む請求項1の塗料。
【請求項15】
塗料中の多孔質粒子を建築物に付着させる方法であって、前記塗料が請求項1~14のいずれかに記載の塗料であることを特徴とする方法。
【請求項16】
塗料を建築物に塗布する方法であって、前記塗料が請求項1~14のいずれかに記載の塗料であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料及び塗料を用いる塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料は住宅、病院、美術館又は博物館等といった各種建築物等に用いられ、これら適用について多くの改良がなされ、種々検討されている。
近年では、多機能性水性塗料、漆喰塗料組成物を用いた塗料等が検討されている。
【0003】
特許文献1では、パイロフィライト及びセピオライトを含有する微粉末状の粘土鉱物と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とし、微粉末状のチキソトロピー補助剤と、珪藻土及びゼオライトの多孔質材を含む水性塗料を用いて消臭を行うことが記載されている。しかしながら、これらはいずれも吸着性はあるものの、一時的に不純物を吸着させたりするものであり、不純物の捕集蓄積機能はなく、また摩耗性もなく、必ずしも満足のいくものではなかった。
特許文献2では、消石灰、小麦ファイバー及びエチレン-酢酸ビニル系またはアクリル系のポリマーを含み、かつ酸化チタンが含まれていない漆喰塗料組成物を用いた塗料が、ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)などの有害ガスなどの発生による室内空気汚染を低減することが検討されている。しかしながら、これらもまたいずれも吸着性はあるものの、一時的に不純物を吸着させたりするものであり、有毒ガス、及び不純物の捕集蓄積機能はなく、また摩耗性もなく、必ずしも満足のいくものではなかった。また、製造工程が煩雑であり、取り扱いに注意が必要であるため使い勝手が悪いといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6836252号公報
【特許文献2】特許第6195401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた抗菌、優れた抗ウイルス、良好な耐摩耗性及び優れた消臭機能並びに居住性の質的改善機能を備えた塗料及び前記塗料を用いる塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、多孔質粒子を含む塗料であって、前記多孔質粒子が、平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ形状が略円筒状である細孔を複数有している塗料が、優れた抗菌、優れた抗ウイルス、良好な耐摩耗性及び優れた消臭機能並びに居住性の質的改善機能を備えていること等を知見し、このような塗料が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 多孔質粒子を含む塗料であって、前記多孔質粒子が、平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ形状が略円筒状である細孔を複数有していることを特徴とする塗料。
[2] 前記細孔が、貫通孔である前記[1]記載の塗料。
[3] 前記細孔が、<111>配向している結晶を含む前記[1]又は[2]に記載の塗料。
[4] 前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である前記[1]~[3]のいずれかに記載の塗料。
[5] 前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が90以上である前記[1]~[4]のいずれかに記載の塗料。
[6] 前記多孔質粒子の平均粒径が0.1μm~10μmである前記[1]~[5]のいずれかに記載の塗料。
[7] 前記多孔質粒子が酸化物を主成分として含む前記[1]~[6]のいずれかに記載の塗料。
[8] 前記酸化物がSiO2を含む前記[7]に記載の塗料。
[9] 前記酸化物におけるFe2O3の含有量が0.01at%~0.5at%である前記[7]又は[8]に記載の塗料。
[10] 前記多孔質粒子が、前記細孔を5以上含む前記[1]~[9]のいずれかに記載の塗料。
[11] 前記多孔質粒子が、珪藻土を主成分として含む前記[1]記載の塗料。
[12] さらに、銅及び/又は銀を含む前記[1]記載の塗料。
[13] さらに、低級脂肪酸を含む前記[1]記載の塗料。
[14] さらに、デンプン糊及びアマニ油を含む前記[1]の塗料。
[15] 塗料中の多孔質粒子を建築物に付着させる方法であって、前記塗料が前記[1]~[14]のいずれかに記載の塗料であることを特徴とする方法。
[16] 塗料を建築物に塗布する方法であって、前記塗料が前記[1]~[14]のいずれかに記載の塗料であることを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗料及び塗料を用いる塗布方法は、優れた抗菌、優れた抗ウイルス、良好な耐摩耗性及び優れた消臭機能並びに居住性の質的改善機能を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に用いられる多孔質粒子の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
【
図2】実施例における顕微鏡像(TEM像)を示す。
【
図3】本発明の塗布方法の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
【
図4】起床時睡眠感覚調査票MA版(以下、OSA睡眠調査票)を引用して示す。
【
図5】OSA睡眠調査票の回答結果より、日々変動する睡眠感を統計的に尺度化した値を算出した結果を示す。
【
図6】検査日の実質睡眠時間( = ( 起床時刻- 就寝時刻) - 入眠までの時間) を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の塗料は、多孔質粒子を含む塗料であって、前記多孔質粒子が、平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ形状が略円筒状である細孔を複数有していれば特に限定されない。
【0011】
前記多孔質粒子は、前記多孔質体を含む粒子であればそれでよく、粒子の形状等は特に限定されないし、他の多孔質体、賦形剤、結着剤又は接着剤等の添加剤などが含まれていてもよい。本発明においては、前記細孔が、貫通孔であるのが好ましい。また、<111>配向している結晶を含むのが好ましい。なお、前記貫通孔は、便宜上、Xe-NMRにて確認できるものであってよい。また、前記結晶はX線回折装置を用いて確認できるものであってよい。また、本発明においては、前記粒子の平均粒径が0.1μm~10μmであるのが好ましい。このような好ましい範囲によれば、水中に含まれる酸の吸着蓄積、放射性物質や不純物の捕集蓄積において、より優れた性能を発揮することができる。なお、前記平均粒径は、任意に抽出した10個の粒子の粒径の平均値をいう。
【0012】
前記多孔質体は、複数の細孔を有するものであって、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状であれば特に限定されないが、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内であるのが好ましく、1:10~1:100の範囲内であるのがより好ましい。前記多孔質体の好適な態様を
図1に示す。
図1の多孔質粒子は、複数の細孔を有している多孔質粒子であり、
図1には、A-A’断面図とともに、前記細孔の形状が円筒状であることが示されている。前記細孔は、平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ形状が略円筒状であることが捕集蓄積機能において肝要である。本発明においては、前記平均孔径が8nm±2nmの範囲内であるのが好ましく、前記形状が円筒状であるのも好ましい。
【0013】
前記平均孔径は、任意に抽出した10個の細孔の孔径の平均値をいう。前記孔径は、前記細孔の直径を意味し、例えば、
図1に示されるw1をいう。前記深さは、前記細孔の深さを意味し、例えば、前記細孔が貫通孔である場合には、便宜上、前記多孔質体粒子の粒径を前記深さとしてもよい。前記深さは、例えば、d1をいう。なお、
図1のw1は、例えば8nmであり、d1は、例えば50nmである。
【0014】
前記多孔質粒子の構成材料は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、本発明においては、酸化物を主成分として含むのが好ましい。前記酸化物は、SiO2を含むのが好ましく、また、Al2O3を含むのも好ましい。また、本発明においては、前記酸化物におけるFe2O3の含有量が組成比で0.5at%以下であるのが好ましく、0.1at%以下であるのがより好ましい。前記酸化物におけるFe2O3の含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.01at%である。このような好ましいFe2O3の含有量の前記酸化物を主成分として含む前記多孔質粒子は、例えば雨季と乾季とを有する熱帯モンスーン気候下の珪藻土層の一定の深さの区画から抽出される珪藻土を焼成及び粒子状に整粒することにより、容易に得ることができる。なお、前記焼成及び前記整粒の手段及び順序等は本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段等が好適に用いられ、これら条件等も適宜設定されてよい。
【0015】
前記多孔質粒子は、前記細孔を5以上含むのが好ましく、このような好ましい範囲によれば、捕集蓄積機能をより優れたものとすることができる。
【0016】
前記多孔質粒子は、例えば、タイや日本等の珪藻土層において、SEM又はTEM等の顕微鏡にて測定される、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状であり、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内となる多孔質体が含まれる珪藻土層の区画から、所定の珪藻土を常法に従い取り出し、ついで公知の手段を用いて焼成及び粒子状に整粒することにより、容易に得ることが可能である。なお、タイや日本(例えば稚内等)などの珪藻土層において、前記区画が存在し、かつ前記区画にて容易に前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状である前記多孔質体を含む前記多孔質粒子を取り出せることは、本発明者らによる新知見である。また、本発明においては、前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が80以上であるのが好ましく、90以上であるのがより好ましい。このような好ましい白色度を有する前記多孔質粒子は、例えば、上記したように、前記多孔質粒子のFe2O3の含有量を0.5at%以下とすることにより、容易に得ることができる。前記多孔質粒子は、珪藻土を主成分として含むのが好ましく、前記主成分とは、前記多孔質粒子全体に対し、前記珪藻土を50重量%以上含むことを意味し、好ましくは、70重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。このような好ましい範囲によると、前記区画から容易に得ることができる。また、タイの前記区画から取り出した珪藻土を、例えば、1200℃以上で焼成しても従来の珪藻土とは異なり、例えば、吸水性等が消失したりせず、さらには、耐摩耗性や強度がより向上するので好ましい。
【0017】
前記多孔質粒子は通常例えばバインダー等の添加剤や溶媒等と混合され、さらに加工され、塗料又は塗料が使用された製品として用いることができる。添加量等の条件は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、溶媒、添加剤及び被塗布物等に応じて適宜設定される。なお、前記塗料は、着色顔料、消泡剤、増粘剤、分散剤等の原料を配合することができる。前記混合手段及び前記加工手段はそれぞれ公知の手段であってよい。なお、このような塗料の製造方法も本発明に包含される。前記多孔質粒子は、塗料又は前記製品において、10重量%以上含まれるのが好ましく、このような好ましい範囲によれば、抗菌、抗ウイルス、耐摩耗性及び消臭機能並びに居住性の質的改善機能をより優れたものとすることができる。
【0018】
本発明の付着方法は、前記多孔質粒子を建築物に付着させる工程を含んでいれば特に限定されない。
前記付着手段としては、例えば、塗布手段が好適な例として挙げられる。本発明の塗布方法は、前記塗装を建築物に塗布する工程を含んでいれば特に限定されない。前記塗布方法に用いる前記塗布手段は公知の塗布手段であってよい。
【0019】
また、前記塗料は、さらに、銅及び/又は銀を含むのが好ましい。前記銅及び銀は本発明の目的を阻害しない限り、限定されないが、前記銅としては、具体的には硫酸銅(CuSO4)又は硝酸銅(CuNO3)であるのが好ましく、前記銀は、具体的には銀コロイド又は硝酸銀(AgNO3)であるのが好ましい。このような好ましい範囲によれば、前記銅及び/又は銀が、前記多孔質粒子に担持されやすく、比表面積を大きくすることができるため、抗菌、抗カビ及び抗ウイルス等といった効果をより優れたものとすることができる。
【0020】
本発明における塗料には、エマルジョンが含まれているのが好ましく、前記エマルジョンは、焼成カオリン、シリカパウダー、アルミナ、炭酸カルシウム、低級脂肪酸又はその塩、デンプン糊及びアマニ油を含んでいるのが好ましい。前記低級脂肪酸又はその塩は、本発明の目的を阻害しない限り、限定されないが、前記低級脂肪酸又はその塩としては、例えば、炭素数が1~4のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類などが挙げられる。前記デンプン糊としては、例えば、メチルセルロースなどが挙げられる。前記アマニ油は、公知のアマニ油であってよい。また、前記エマルジョンには、酸化チタン又はタルクが含まれているのが好ましく、タルクが含まれているのがより好ましい。このような好ましい範囲によれば、塗りがより伸びるようになったり、白色度をより向上させたりすることができる。
【0021】
また、前記塗料は前記多孔質粒子が使用された後の再利用品であってもよい。使用済みの前記多孔質粒子を前記塗料として再利用することにより、より環境に配慮した抗菌、抗ウイルス、耐摩耗性及び消臭機能並びに居住性の質的改善機能等を実現することができる。
【実施例0022】
(実施例1)
タイの一定の深さにある珪藻土層において、
図2に示されるように、顕微鏡(TEM)にて測定される、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が円筒状であり、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内となる多孔質体が得られる珪藻土層の区画から、珪藻土を取り出し、ついで660℃で焼成及び10μmに整粒することにより、本発明の多孔質粒子を得た。なお、得られた多孔質粒子は、Xe-NMRにて細孔解析を実施したところ細孔壁面の形状は真っ直ぐに貫通された形状であり、貫通孔を有していた。また、X線回折装置を用いて多孔質粒子の結晶性につき評価したところ<111>配向している結晶であることがわかった。また、白度計(JIS Z8722)にて10箇所以上の複数地点で計測したところ、いずれも80以上であり、かつ平均で90以上であり、きれいで且つ良好な白色を有していた。また、得られた多孔質粒子のFe
2O
3の含有量を測定したところ、0.5at%以下であった。前記多孔質粒子80重量部に対してエマルジョン20重量部の割合で混合し、本発明の塗料を得た。なお、エマルジョンは、焼成カオリン、シリカパウダー、アルミナ、炭酸カルシウム、酢酸エマルジョン、アマニ油(0.5%)、デンプン糊、タルク及び水を混合して調整された。
【0023】
(参考例)
得られた多孔質粒子に粘土を混ぜ、ついで水を用いて、マカロニ状のろ過材を作製し、ネットに入れ、フィルターを作製した。酸及びセシウムを含有させた試験水を、作製したフィルターに対して流し込み、ろ過材における酸の吸着蓄積機能とセシウムの捕集蓄積機能とを評価した。なお、比較例1としてゼオライトフィルターを用いた。評価したところ、酸の吸着については、実施例1では、アルカリ性を示すまで酸が吸着された。また、比較例1でも酸が少し吸着されていたが、しばらくすると、酸性傾向となり、吸着した酸が放出されたようであった。なお、実施例品では、吸着されたまま、放出は確認されなかった。また、セシウムの場合も同様の傾向を示した。なお、セシウムの評価結果を表1に示す。このような捕集蓄積機能は、ゼオライトフィルターや他のメソポーラスフィルター(平均孔径8nm±2nmの範囲外のもの及び非円柱状細孔のものを含む)では確認できず、本発明特有の効果であると考えられる。
【0024】
【0025】
(試験例1)
表2に示すように、実施例1で得られた多孔質粒子を含む塗料を壁に塗布し、持続力、物体表面への効果、空間への効果、処理可能ウイルス、処理可能細菌、安全性を評価した。また、比較例2としてアルコールによる消毒方法を用い、比較例3としてオゾン又は二酸化塩素による消毒方法を用いた。比較項目は、「持続力」が各効果の持続時間の相対比較であり、「物体表面への効果」が塗布面のウイルス及び菌の数の増減についての相対比較であり、「空間への効果」が塗布面から1m離れた空間におけるウイルス及び菌の数の増減についての相対比較であり、「処理可能ウイルス」がネコカリシウイルス及びA型インフルエンザウイルス等への効果であり、「処理可能菌」が大腸菌及び黄色ブドウ球菌等への効果であり、「人体への安全性」が空気中に浮遊する人体に害のある物質の有無である。比較結果は、「◎」が優れた結果を示しており、「〇」が良好な結果を示しており、「△」があまり結果が出なかったことを示しており、「×」が結果がまったくでなかった又は結果が悪かったことを示している。
その結果、本発明における塗料が「持続力」では長く維持となっており、「処理可能細菌」でもほぼすべてとなっており、ウイルス対応の除去に効力があることを示している。
【0026】
【0027】
(試験例2)
図3に示すように、実施例1で得られた多孔質粒子を含む塗料を壁8に塗布して、多孔質粒子9を、壁8に付着させた。その後、被験者に塗布後の居住空間にて暮らしてもらい、1年間経過を観察した。その結果、被験者大人2人及び子ども3人のうち、子どもについては、年に数回風邪をひいていたが、塗布後は風邪をひくことがまったくなくなった。
【0028】
(試験例3)
OSA睡眠調査票の回答結果より、日々変動する睡眠感を統計的に尺度化した値を算出した。算出は、被検者とは別の母集団(選択、排除を行っていない母集団)の平均点が50点となるようにして行った。この結果を
図5に示す。また、検査日の実質睡眠時間(=(起床時刻-就寝時刻)-入眠までの時間)を
図6に示す。
図5に示すように、実施例1で得られた多孔質粒子を含む塗料を壁に塗布して、被験者に塗布後の居住空間にて寝てもらった。なお、比較例4は、本発明の塗料を塗布していない居住空間を示し、比較例5は、ゼオライトが含まれる塗料を塗布した居住空間を示し、比較例6は、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含む塗料を用いた居住空間を示している。その結果、入眠時間が短くなり、睡眠による疲労回復効果が高まり、起床時の眠気が低減した。また、睡眠時間に大きな変動はないこと(
図6)から、睡眠の質が向上したことがわかった。
【0029】
(試験例4)
表3に示すように、アセトアルデヒド、トリメチルアミン、アンモニア、酢酸エチル等の物質を水に添加して悪臭組成物を調製した。また、実施例1で得られた多孔質粒子を含む塗料を壁に塗布した生活空間に調製した悪臭組成物を、トレイに1cc入れて15分間静置した後、前記生活空間内の臭いを評価した。「◎」は、初期濃度に対して60%以上のガス吸着性能を示し、時間が経過してもガスが脱着しなかったものを示し、「△」は、初期濃度に対して60%以上のガス吸着を示したが、時間が経過するとガスが脱着したものを示し、「×」は、初期濃度に対してガス吸着性能がなかったものを示している。結果を以下の表5に示す。なお、比較例7は、ゼオライトが含まれる塗料を用いた居住空間を示し、比較例8は、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含む塗料を用いた居住空間を示す。
【0030】
【0031】
(試験例5)
図3に示すように、実施例1で得られた多孔質粒子を含む塗料を壁8に塗布して、多孔質粒子9を、壁8に付着させ、乾燥させた。その後、セロハンテープを壁8に付着させて剥がしたところセロハンテープの粘着面に粉が付着していなかった。なお、比較例9として、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含む塗料を壁8に塗布し乾燥後、セロハンテープを壁に付着させて剥がしたところ、セロハンテープの粘着面に粉が付着していた。このような結果から、本発明の塗料には耐摩耗性があることがわかった。