(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005480
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム用組成物及び発泡体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/42 20060101AFI20240110BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240110BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20240110BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C08G18/42 002
C08G18/00 F
C08G18/66 040
C08G18/00 H
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105676
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】末竹 貴雄
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA03
4J034CA17
4J034CB05
4J034CB07
4J034CC05
4J034CC08
4J034DA01
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4J034DB07
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4J034RA15
(57)【要約】
【課題】機械的強度に優れ、低温環境で収縮が抑制される発泡体を与えるポリウレタンフォーム用組成物を提供する。
【解決手段】ポリオールを含むポリオール組成物と、ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物とからなり、これらの組成物を混合して、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させ、発泡・硬化されたポリウレタンフォームの形成に用いるポリウレタンフォーム用組成物であり、ポリオールは、o-フタル酸又はその無水物と、ジオールとから形成された第1ポリエステルポリオール、及び、テレフタル酸と、ジオールとから形成された第2ポリエステルポリオールを含み、第2ポリエステルポリオールの含有割合が第1ポリエステルポリオールの含有割合より高い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含むポリオール組成物と、ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物とからなり、前記ポリオール組成物及び前記ポリイソシアネート組成物を混合して、前記ポリオールと、前記ポリイソシアネートとを反応させ、発泡・硬化されたポリウレタンフォームの形成に用いるポリウレタンフォーム用組成物であって、
前記ポリオールは、o-フタル酸又はその無水物と、ジオールとから形成された第1ポリエステルポリオール、及び、テレフタル酸と、ジオールとから形成された第2ポリエステルポリオールを含み、
前記第2ポリエステルポリオールの含有割合が前記第1ポリエステルポリオールの含有割合より高いポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項2】
前記第1ポリエステルポリオールにおける芳香族部分の含有割合、及び、前記第2ポリエステルポリオールにおける芳香族部分の含有割合が、いずれも5%以上である請求項1に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項3】
前記ポリオールが、更に、自己触媒性ポリオールを含む請求項1に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項4】
前記自己触媒性ポリオールが、エチレンジアミンのアルキレンオキサイド付加物を含む請求項3に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項5】
前記第2ポリエステルポリオールの含有割合が、前記ポリオールの全量に対して35質量%以上である請求項3又は4に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項6】
前記ポリオール組成物が発泡剤を含み、該発泡剤がハロゲン化ハイドロオレフィンを含む請求項1に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項7】
破泡剤を含有しない請求項1に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のポリウレタンフォーム用組成物を発泡させて得られた発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度に優れ、低温環境で収縮が抑制される発泡体(ポリウレタンフォーム)を与えるポリウレタンフォーム用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂発泡体として、ポリウレタンフォーム、フェノールフォーム等が知られている。例えば、ポリウレタンフォームは、断熱性、物体への接着性、防音性等に優れることから、広く利用されている。
ポリウレタンフォームからなる断熱層(断熱材)を形成する場合、一般に、ポリオールと、発泡剤と、必要に応じて、触媒、整泡剤、難燃剤等の各種助剤とを含有するポリオール組成物(プレミックス液)、及び、ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート組成物を混合した後、得られた混合液、即ち、ポリウレタンフォーム用組成物を被着体の表面に塗布し、形成された塗膜においてポリオール及びポリイソシアネートを反応させ、発泡・硬化させる方法が適用される。
【0003】
ポリウレタンフォーム及びその形成に用いられる組成物として、以下の技術が知られている。
特許文献1には、ポリイソシアネートとポリオールとを発泡剤および触媒などの存在下で反応させて得られる硬質ポリウレタンフォームであって、ポリオールが、芳香族濃度17~35wt%のポリエステルポリオールと、非アミン系ポリエーテルポリオールおよび/または芳香族アミン系ポリエーテルポリオールを含み、発泡剤がハロゲン化オレフィンを含むことを特徴とする硬質ポリウレタンフォームが開示されている。
特許文献2には、ポリオール化合物、発泡剤及び整泡剤を含み、ポリイソシアネート成分と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物において、発泡剤はペンタン類を含有し、ポリオール化合物は、水酸基価が200~450mgKOH/g、官能基数が2~3、芳香族濃度が20重量%以上、及びペンタン溶解度が2~18g/ポリオール100gである芳香族ポリエステルポリオールを30~60重量%含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物が開示されている。
また、特許文献3には、ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤及び触媒を含み、ポリイソシアネート成分と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物において、発泡剤はペンタン類を含有し、ポリオール化合物は、水酸基価が200~400mgKOH/g、官能基数が2~3、芳香族濃度が20~30重量%、及びペンタン溶解度が2~15g/ポリオール100gである芳香族ポリエステルポリオールを20~50重量%含有し、水酸基価が600~810mgKOH/gであるエチレンジアミンのエチレンオキサイド付加体を10~30重量%、及び水酸基価が350~500mgKOH/g、粘度が15000~35000mPa・s/25℃であるトルエンジアミンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加体を20~60重量%含有し、触媒がアミン触媒と三量化触媒であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-155905号公報
【特許文献2】特開2006-291101号公報
【特許文献3】特開2008-1805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリウレタンフォームを、断熱用に用いる場合、他の部材が接触することがあるため、その場合には、他の部材との複合体が形成される。このような複合体は、通常、ポリウレタンフォーム部が、部材の表面だけでなく、部材どうしの間、又は、1部材の所定の空間に埋設されたものであることから、ポリウレタンフォーム部に、優れた機械的強度(特に、圧縮強度)が要求されることがあった。また、複合体が、例えば、氷点下の低温環境で用いられる場合には、ポリウレタンフォーム部が収縮しないことが必要となる。
本発明は、機械的強度に優れ、低温環境で収縮が抑制される発泡体(ポリウレタンフォーム)を与えるポリウレタンフォーム用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される。
[1]ポリオールを含むポリオール組成物と、ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物とからなり、上記ポリオール組成物及び上記ポリイソシアネート組成物を混合して、上記ポリオールと、上記ポリイソシアネートとを反応させ、発泡・硬化されたポリウレタンフォームの形成に用いるポリウレタンフォーム用組成物であって、
上記ポリオールは、o-フタル酸又はその無水物と、ジオールとから形成された第1ポリエステルポリオール、及び、テレフタル酸と、ジオールとから形成された第2ポリエステルポリオールを含み、
上記第2ポリエステルポリオールの含有割合が上記第1ポリエステルポリオールの含有割合より高いポリウレタンフォーム用組成物。
[2]上記第1ポリエステルポリオールにおける芳香族部分の含有割合、及び、上記第2ポリエステルポリオールにおける芳香族部分の含有割合が、いずれも5%以上である上記[1]に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
[3]上記ポリオールが、更に、自己触媒性ポリオールを含む上記[1]に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
[4]上記自己触媒性ポリオールが、エチレンジアミンのアルキレンオキサイド付加物を含む上記[3]に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
[5]上記第2ポリエステルポリオールの含有割合が、上記ポリオールの全量に対して35質量%以上である上記[3]又は[4]に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
[6]上記ポリオール組成物が発泡剤を含み、該発泡剤がハロゲン化ハイドロオレフィンを含む上記[1]に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
[7]破泡剤を含有しない上記[1]に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
[8]上記[1]に記載のポリウレタンフォーム用組成物を発泡させて得られた発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリウレタンフォーム用組成物を用いると、機械的強度に優れ、低温環境で収縮が抑制される発泡体(ポリウレタンフォーム)を得ることができる。従って、低温環境で寸法変化が発生することなく所期の性能が維持される用途、例えば、建築物の内外壁材、パネル等における断熱、金属サイディング、冷蔵庫等における断熱、ビル、マンション、冷凍倉庫等の躯体壁面、天井、屋根等における断熱又は結露防止、輸液パイプ等の断熱等に用いられる部材形成に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構成的な詳細を示すことを意図しておらず、本説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0009】
本発明のポリウレタンフォーム用組成物は、特定のポリオールを含有するポリオール組成物と、ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート組成物とからなる。
【0010】
ポリオール組成物を構成するポリオールは、o-フタル酸又はその無水物と、ジオールとから形成された第1ポリエステルポリオール、及び、テレフタル酸と、ジオールとから形成された第2ポリエステルポリオールを含み、必要により、他のポリオール(後述)を含むことができる。
【0011】
第1ポリエステルポリオールは、o-フタル酸又はその無水物と、ジオールとを用いて得られた縮合反応生成物からなるポリエステルポリオールである。ポリオール組成物に含まれる第1ポリエステルポリオールは、1種のみでも、2種以上でもよい。
また、第2ポリエステルポリオールは、テレフタル酸と、ジオールとを用いて得られた縮合反応生成物からなるポリエステルポリオールである。ポリオール組成物に含まれる第2ポリエステルポリオールは、1種のみでも、2種以上でもよい。
【0012】
第1ポリエステルポリオール及び第2ポリエステルポリオールの形成に用いられるジオールは、脂肪族ジオール、脂環式ジオール及び芳香族ジオールのいずれでもよいが、好ましくは脂肪族ジオールである。尚、第1ポリエステルポリオールの形成に用いられるジオールと、第2ポリエステルポリオールの形成に用いられるジオールは、同一でもよいし、異なってもよい。
【0013】
この脂肪族ジオールは、直鎖状及び分岐状のいずれでもよい。直鎖状ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール等が挙げられる。分岐状ジオールとしては、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0014】
本発明に係る第1ポリエステルポリオール及び第2ポリエステルポリオールは、いずれも芳香族化合物である。
第1ポリエステルポリオールにおける芳香族部分の含有割合(以下、「芳香族濃度」ともいう)、即ち、第1ポリエステルポリオールを構成する芳香環の質量比率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10~35質量%、更に好ましくは15~25質量%である。
また、第2ポリエステルポリオールにおける芳香族部分の含有割合(芳香族濃度)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10~35質量%、更に好ましくは15~25質量%である。
【0015】
本発明において、機械的強度に優れ、低温環境で収縮が抑制される発泡体が得られることから、第2ポリエステルポリオールの含有割合は第1ポリエステルポリオールの含有割合より高い。ポリオール組成物を構成するポリオールに含まれる第1ポリエステルポリオール及び第2ポリエステルポリオールの含有割合を、それぞれ、P1及びP2とし、P1及びP2の合計を100質量%とすると、含有割合P1及びP2は、それぞれ、好ましくは20質量%以上50質量%未満及び50質量%を超えて80質量%以下、より好ましくは30~49質量%及び51~70質量%、更に好ましくは40~48質量%及び52~60質量%である。
【0016】
本発明に係るポリオール組成物を構成するポリオールの合計量に対する、第1ポリエステルポリオール及び第2ポリエステルポリオールの含有量の合計量の割合は、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~98質量%、更に好ましくは75~95質量%である。
また、ポリオール組成物を構成するポリオールの合計量に対する、第2ポリエステルポリオールの含有量の割合は、機械的強度に優れ、低温環境で収縮が抑制される発泡体が得られることから、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40~70質量%、更に好ましくは45~65質量%である。
【0017】
本発明に係るポリオール組成物は、ウレタン反応性を有しつつ、ウレタン結合の形成を促進する触媒としても作用する自己触媒性ポリオールを含むことが好ましい。この自己触媒性ポリオールとしては、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール、マンニッヒ系ポリエーテルポリオール、トルエンジアミン系ポリエーテルポリオール等が挙げられる。これらのうち、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0018】
エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールは、好ましくはエチレンジアミンのアルキレンオキサイド付加物であり、このアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。アルキレンオキサイドは、これらのうちの1種のみ又は2種以上が用いられたものとすることができる。アルキレンオキサイドとしては、硬質フォームの物性、及び、原料の価格の観点から、プロピレンオキシドが好ましい。
エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールの水酸基価は、得られる発泡体の機械的強度の観点から、好ましくは400mgKOH/g以上である。
【0019】
本発明に係るポリオール組成物が自己触媒性ポリオールを含む場合、その含有割合の上限は、ポリオールの合計量に対して、好ましくは25質量%、より好ましくは22質量%、更に好ましくは20質量%である。尚、下限は、好ましくは5質量%、より好ましくは8質量%、更に好ましくは10質量%である。
【0020】
本発明に係るポリオール組成物は、必要に応じて、更に、他のポリオールを含有することができる。他のポリオールとしては、多価アルコール、多価フェノール、天然油脂系ポリオール(ヒマシ油等)、ポリエーテルポリオール(グリセリン系ポリエーテルポリオール、芳香族ポリエーテルポリオール、マンニッヒ系ポリエーテルポリオール、シュクロース系ポリエーテルポリオール、ソルビトール系ポリエーテルポリオール等)、ポリエーテルエステルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、ポリジエンポリオール、トルエンジアミン系ポリエーテルポリオール、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0021】
本発明に係るポリオール組成物は、ポリオール以外に、更に、触媒、発泡剤、発泡体のセル構造を均一化する整泡剤、難燃剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、抗菌剤、腐食防止剤、着色剤等の添加剤を含有することができる。但し、独立気泡率の観点から破泡剤を含有しないことが好ましい。
【0022】
触媒としては、ウレタン結合の形成を促進するウレタン化触媒(樹脂化触媒)及びイソシアヌレート環の生成を促進するイソシアヌレート化触媒(三量化触媒)を併用することが好ましい。
【0023】
ウレタン化触媒(樹脂化触媒)としては、有機ビスマス化合物、有機鉛化合物、有機錫化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。用いられるウレタン化触媒は、1種のみでも、2種以上でもよい。
【0024】
有機ビスマス化合物としては、酢酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ジブチルビスマスジアセテート、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等が挙げられる。
有機鉛化合物としては、酢酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛、ジブチル鉛ジアセテート、ジブチル鉛ジラウレート、ジオクチル鉛ジラウレート等が挙げられる。
有機錫化合物としては、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫メルカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫メルカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート等が挙げられる。
有機亜鉛化合物としては、ナフテン酸亜鉛、デカン酸亜鉛、4-シクロヘキシル酪酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、イソ酪酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p-トルエンスルホン酸亜鉛、亜鉛(II)ビス-2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート等が挙げられる。
【0025】
ウレタン化触媒(樹脂化触媒)を用いる場合、ポリウレタンが効率よく形成されることから、その使用量は、ポリオール組成物を構成するポリオールの合計量を100質量部とすると、好ましくは0.5~6質量部、より好ましくは1~5質量部、更に好ましくは2~4質量部である。
【0026】
イソシアヌレート化触媒(三量化触媒)としては、第四級アンモニウム塩、脂肪酸アルカリ金属塩、含窒素芳香族化合物、第三級アンモニウム塩等が挙げられる。用いられるイソシアヌレート化は、1種のみでも、2種以上でもよい。
【0027】
第四級アンモニウム塩のカチオン部である第四級アンモニウム基としては、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ノニルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ウンデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウム基;(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウム等のヒドロキシアンモニウム基;1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム、1-メチルモルホリニウム、1-メチルピペリジニウム等の脂環式アンモニウム基等が挙げられる。
【0028】
第四級アンモニウム塩のアニオン部としては、ギ酸イオン、酢酸イオン、オクタン酸イオン、蓚酸イオン、マロン酸イオン、コハク酸イオン、グルタル酸イオン、アジピン酸イオン、安息香酸イオン、トルイル酸イオン、エチル安息香酸イオン、メチル炭酸イオン、フェノールイオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、リン酸エステルイオン、ハロゲン化物イオン、OH-、CO3
2-、HCO3
-等が挙げられる。
【0029】
脂肪酸アルカリ金属塩としては、オクチル酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
含窒素芳香族化合物としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン等が挙げられる。
第三級アンモニウム塩としては、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0030】
本発明において、イソシアヌレート化触媒として、第四級アンモニウム塩及び脂肪酸アルカリ金属塩を併用すると、難燃性に優れた発泡体を得ることができる。
【0031】
イソシアヌレート化触媒(三量化触媒)を用いる場合、ポリオールのヒドロキシ基と、ポリイソシアネートのイソシアネート基との反応によりイソシアヌレート環の生成が促進されることから、その使用量は、ポリオール組成物を構成するポリオールの合計量を100質量部とすると、好ましくは0.3~6質量部、より好ましくは0.5~5質量部、更に好ましくは1~4質量部である。
【0032】
発泡剤としては、水(発泡剤源)、炭化水素、含ハロゲン化合物等が挙げられる。用いられる発泡剤は、1種のみでも、2種以上でもよい。
【0033】
炭化水素(ハイドロカーボン、HC)としては、プロパン、ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、シクロペンタン等が挙げられる。
【0034】
含ハロゲン化合物としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハロゲン化オレフィン(ハロゲン化アルケン)等が挙げられる。
ハイドロフルオロカーボン(HFC)としては、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)、及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC4310mee)、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等が挙げられる。
ハロゲン化オレフィン(ハロゲン化アルケン)は、好ましくは、ハロゲン原子として、塩素原子、フッ素原子等を含む、炭素原子数が2~6個程度の不飽和炭化水素誘導体であり、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)と称されるハロゲン化ハイドロオレフィンをも含む化合物である。
【0035】
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等のペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)等のテトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1243zf)等のトリフルオロプロペン、テトラフルオロブテン異性体(HFO1354)類、ペンタフルオロブテン異性体(HFO1345)類、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)等のヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)類、ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327)類、ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447)類、オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438)類、ノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)類等が挙げられる。
また、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zb)、2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xe)、2-クロロ-2,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xc)、3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233ye)、3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yc)等が挙げられる。特に、上記したハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、地球温暖化係数が低く、環境に優しい発泡剤として注目を受けていることから、本発明において有利に用いられる。
【0036】
本発明において、ポリイソシアネートと反応して発泡剤としての炭酸ガスが生成される発泡剤源である水と、含ハロゲン化合物とを、発泡剤として併用してもよい。これらの使用量を以下の通りとすることにより、機械的強度に優れ、低温環境で収縮が抑制される発泡体を得ることができる。
水の使用量は、熱伝導率の低減の観点から少ない添加量であると良く、ポリオール組成物を構成するポリオールの合計量を100質量部とすると、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.05~1.2質量部、更に好ましくは0.1質量部以上1質量部未満である。
また、含ハロゲン化合物の使用量は、ポリオール組成物を構成するポリオールの合計量を100質量部とすると、好ましくは10~50質量部、より好ましくは15~45質量部、更に好ましくは20~40質量部である。
【0037】
整泡剤は、ノニオン系、アニオン系及びカチオン系のいずれの化合物でもよいが、ノニオン系整泡剤を含むことが好ましい。用いられる整泡剤は、1種のみでも、2種以上でもよい。
具体的な整泡剤としては、オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体等のシリコーン系化合物や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油脂肪酸エステル、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0038】
本発明において、整泡剤は、シリコーン系化合物を含むことが好ましい。
整泡剤の使用量は、ポリオール組成物を構成するポリオールの合計量を100質量部とすると、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは1~4質量部、更に好ましくは1.5~3質量部である。
【0039】
難燃剤としては、有機リン酸エステル、リン酸塩、スズ酸塩、ハロゲン化合物(有機リン酸エステルを除く)、ホウ素化合物、金属水酸化物、赤リン、リン酸エステルアミド、ホスホニトリル化合物、有機ホスホン酸化合物、有機ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、トリアジン化合物、環状モノウレイド、環状ジウレイド、アミジン化合物等が挙げられる。用いられる難燃剤は、1種のみでも、2種以上でもよい。
【0040】
有機リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスファフェナンスレン、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のモノリン酸エステル;トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート等の縮合リン酸エステル等が挙げられる。
【0041】
リン酸塩としては、モノリン酸(リン酸、亜リン酸、次亜リン酸)、ピロリン酸又はポリリン酸と、周期律表IA族~IV族の金属、アンモニア、脂肪族アミン及び芳香族アミンから選ばれる少なくとも一種とから形成された塩等が挙げられる。
周期律表IA族~IV族の金属としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0042】
モノリン酸塩としては、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩;リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩;リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩;リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩;リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩;リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩;リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩;リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等が挙げられる。
【0043】
ポリリン酸塩としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0044】
本発明において、リン酸塩を含む難燃剤として、リン酸塩に対して、シランカップリング剤処理、メラミン樹脂で被覆する等の耐水性改良処理等が施された複合物を用いることもできる。
【0045】
スズ酸塩としては、スズ酸亜鉛、スズ酸バリウム、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、スズ酸コバルト、スズ酸マグネシウム等が挙げられる。
【0046】
ハロゲン化合物(有機リン酸エステルを除く)は、好ましくは含臭素化合物であり、特に好ましくは含臭素芳香族化合物である。
含臭素芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレン-ビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA、臭素化ビスフェノールAを用いて製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーと、ビスフェノールAとの共重合物、臭素化ビスフェノールAと、エピクロルヒドリンとの反応生成物(ジエポキシ化合物)、臭素化フェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応生成物(モノエポキシ化合物)、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌール及び臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン、架橋又は非架橋臭素化ポリ(α-メチルスチレン)等が挙げられる。
【0047】
ホウ素化合物としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。
酸化ホウ素としては、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は、周期律表第4族、第12族若しくは第13族の金属のホウ酸金属塩、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。ホウ酸金属塩としては、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩;ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩;ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム等が挙げられる。
【0048】
金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。
【0049】
本発明において、難燃剤は、独立気泡率を高める観点から液体の難燃剤のものが好ましく、液体の難燃剤で必要な難燃性が得られるのであれば、固体の難燃剤は添加しないほうが良い。液体の難燃剤としては、有機リン酸エステルを含むことが好ましい。
難燃剤の使用量は、ポリオール組成物を構成するポリオールの合計量を100質量部とすると、好ましくは1~20質量部、より好ましくは2~10質量部、更に好ましくは3~8質量部である。
【0050】
本発明において、ポリオール組成物を製造する方法は、特に限定されない。原料成分を所定の割合で用い、これらを混合することにより、ポリオール組成物を製造することができる。
【0051】
次に、上記のポリオール組成物とともに、本発明のポリウレタンフォーム用組成物を構成するポリイソシアネート組成物について説明する。このポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートを含む一方、ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応しない成分を含んでもよい組成物である。尚、このポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートのみからなるものであってもよい。
【0052】
ポリイソシアネートは、ポリオール組成物中のポリオールと反応することにより、ポリウレタン(樹脂)を生成させるものであり、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。
【0053】
ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体又はカルボジイミド変性体等が挙げられる。ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートは、1種のみでも2種以上でもよい。
【0054】
芳香族ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0055】
本発明において、ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートを含むことが好ましい。
ポリイソシアネート組成物を構成するポリイソシアネートの合計量に対する、芳香族ポリイソシアネートの含有割合の下限は、好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%である。
【0056】
ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート以外に、他の成分を含有することができる。他の成分としては、ポリオール組成物に含まれてもよいとした添加剤のうち、ポリイソシアネートと反応しない成分を用いることができる。
【0057】
本発明に係るポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートは、ポリオール組成物に含まれるポリオールと反応して、圧縮強度に優れ、低温環境において寸法変化が抑制される発泡体を与える成分であり、本発明のポリウレタンフォーム用組成物におけるポリオール及びポリイソシアネートの間には、好ましい含有割合がある。本発明においては、ポリイソシアネートのイソシアネート基と、ポリオールのヒドロキシ基との当量比(NCO/OH)が、好ましくは1~3、より好ましくは1.1~2となるように、ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物が構成される。
【0058】
本発明のポリウレタンフォーム用組成物は、ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物を混合することにより製造することができる。例えば、水を発泡剤の1つとして用いる場合、ポリオールと、水と、触媒と、整泡剤と、他の添加剤とを混合して、ポリオール組成物を調製し、これを、別途、調製したポリイソシアネート組成物とともに、高速撹拌機、衝突混合機等を用いて、混合することにより製造することができる。
【0059】
本発明の発泡体(ポリウレタンフォーム)は、上記本発明のポリウレタンフォーム用組成物を、発泡・硬化させてなる発泡体である。上記のように、特定のポリオールを含むポリオール組成物を用いたことから、圧縮強度に優れ、低温環境において寸法変化が抑制される発泡体である。
【0060】
本発明の発泡体は、独立気泡率の高い硬質発泡体(硬質ポリウレタンフォーム)であり、ASTM D 2856に準ずる方法により測定される独立気泡率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88~100%、更に好ましくは90~99.5%である。独立気泡率が85%以上であるため、低い熱伝導率を有するものとなりやすく、このような発泡体は、断熱性が求められる用途に好適である。
また、本発明の発泡体の密度を、JIS K 7222に準ずる方法により測定した場合、好ましくは30~50kg/m3、より好ましくは32~48kg/m3である。
【0061】
本発明の発泡体を製造する方法は、特に限定されず、用途に応じて、従来、公知の方法を適用することができる。例えば、ポリウレタンフォーム用組成物を面材上に塗布し、板状に発泡・硬化させるラミネート連続発泡法;ポリウレタンフォーム用組成物を所定の構造体の空間部に注入して、発泡・硬化させる注入発泡法;ポリウレタンフォーム用組成物を、スプレーガンを用いて被着体に吹き付けて発泡・硬化させるスプレー発泡法等が挙げられる。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。尚、下記の記載において、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0063】
1.組成物の製造原料
実施例及び比較例で用いたポリウレタンフォーム用組成物の原料を以下に示す。
【0064】
1-1.ポリオール
1-1-1.第1ポリエステルポリオール
(1)無水フタル酸系ポリエステルポリオール(O-芳香族エステル1)
エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製「マキシモールRDK-133」(商品名)を用いた。芳香族濃度は23%である。
(2)無水フタル酸系ポリエステルポリオール(O-芳香族エステル2)
エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製「マキシモールRDK-142」(商品名)を用いた。芳香族濃度は20%である。
【0065】
1-1-2.第2ポリエステルポリオール
(1)テレフタル酸系ポリエステルポリオール(P-芳香族エステル1)
エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製「マキシモールRFK-505」(商品名)を用いた。芳香族濃度は22%である。
(2)テレフタル酸系ポリエステルポリオール(P-芳香族エステル2)
エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製「マキシモールRFK-556」(商品名)を用いた。芳香族濃度は18%である。
(3)テレフタル酸系ポリエステルポリオール(P-芳香族エステル3)
エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製「マキシモールRLK-087」(商品名)を用いた。芳香族濃度は8%である。
【0066】
1-1-3.コハク酸系ポリエステルポリオール(脂肪族ポリエステルポリオール)
エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製「マキシモールSDK-145」(商品名)を用いた。芳香族濃度は0%である。
【0067】
1-1-4.自己触媒性ポリオール
(1)エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール1
旭硝子社製「EXCENOL 750ED」(商品名)を用いた。
(2)エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール2
旭硝子社製「EXCENOL 500ED」(商品名)を用いた。
【0068】
1-2.触媒
1-2-1.三量化触媒
花王社製第四級アンモニウム塩「カオーライザーNo.420」(商品名)を用いた。
【0069】
1-2-2.樹脂化触媒
(1)3級アミン1
花王社製「カオーライザーNo.350」(商品名)を用いた。
(2)3級アミン2
エボニック・ジャパン社製N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン「ポリキャット12」(商品名)を用いた。
(3)有機カルボン酸金属塩1
花王社製オクチル酸ビスマス「ブキャット25」(商品名)を用いた。
(4)有機カルボン酸金属塩2
東栄化工社製オクチル酸鉛「ヘキソエート鉛20%」(商品名)を用いた。
【0070】
1-3.整泡剤
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製シリコーン系整泡剤「NiaxTM Silicone L-6100」(商品名)を用いた。
【0071】
1-4.難燃剤
ワンシャン社製有機リン酸エステル「トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート」(商品名)を用いた。
【0072】
1-5.発泡剤
(1)非フロン系発泡剤1
Honeywell社製1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン「HCFO-1233zd」(商品名)を用いた。
(2)非フロン系発泡剤2
Chemours社製1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン「HFO-1336mzz」(商品名)を用いた。
(3)水
【0073】
1-6.ポリイソシアネート
万華化学ジャパン社製ポリメリックMDI「Wannate PM-130」(商品名)を用いた。
【0074】
2.ポリウレタンフォーム用組成物の製造及び評価
上記の原料を用いて、ポリウレタンフォーム用組成物を製造した。その後、該組成物を用いて発泡体を作製し、各種評価を行った。
【0075】
実施例1
40部のO-芳香族エステル1と、45部のP-芳香族エステル1と、15部のエチレンジアミン系ポリエーテル1と、1.5部の第四級アンモニウム塩と、1.5部の3級アミン1と、1.5部の3級アミン2と、0.5部の有機カルボン酸金属塩1(オクチル酸ビスマス)と、1.5部の整泡剤と、8部の難燃剤と、35部の非フロン系発泡剤1と、0.5部の水とを撹拌、混合し、ポリオール組成物を得た(表1参照)。
その後、得られたポリオール組成物(合計150部)と、ポリイソシアネート131部とを撹拌、混合して、ポリウレタンフォーム用組成物を得た。混合装置として、グラコ社製スプレーフォームプロポーショナー「A-25」(型式名)を用いた。
【0076】
次に、15℃の雰囲気下、このスプレーフォームプロポーショナーに配設したスプレーガンを用いて、ポリウレタンフォーム用組成物を、被着体としてのフレキシブルボードの表面に、下吹き1回及び上吹き2回の吹き付けを行い、ボード上で塗膜中の成分を反応させ、発泡・硬化させることにより、厚さ約60mmの硬質のポリウレタンフォーム層を形成させた。
【0077】
得られたポリウレタンフォーム層から、下記の評価項目に適したサイズの発泡体試験片を作製し、測定・評価を行った。その結果を表1に併記した。
【0078】
(1)密度
密度を、JIS K 7222に準ずる方法により測定した。即ち、製造後、72時間以上経過したポリウレタンフォームであり、且つ、密度測定前に、23℃±2℃で16時間以上静置したポリウレタンフォームを切削加工して、100mm(縦)×100mm(横)×30mm(厚さ)のサイズとした試験片を、5個以上準備した。次いで、各試験片について、ノギスを使用して、縦、横及び厚さの各寸法を測定して、各試験片の体積(平均値:V)を算出した。その後、各試験片の質量(平均値:M)を測定し、試験片の密度(ρ)を、下記式から算出した。
ρ(kg/m3)=[M(g)/V(mm3)]×106
【0079】
(2)独立気泡率
独立気泡率を、ASTM D 2856に準ずる方法により測定した。
【0080】
(3)圧縮強度
50mm×50mm×50mmのサイズとした試験片であって、その中にスキン層が2層存在するようにして作製した試験片を用いて、JIS K 7220に準ずる方法により、10%圧縮強度を測定した。測定装置は、ミネベア社製万能試験機である。
【0081】
(4)寸法変化率
100mm(縦)×100mm(横)×25mm(厚さ)のサイズとした試験片を、-30℃の環境下、48時間静置し、その後、-30℃の試験片の縦、横及び厚さの寸法をノギスで測定し、その測定値を用いて、下記式から平均寸法変化率(収縮率)を算出した。
寸法変化率(%)=〔((試験後の寸法)-(試験前の寸法))/(試験前の寸法)〕
×100
【0082】
実施例2~8及び比較例1~6
原料の種類及び使用量を表1及び表2に示す通りとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリウレタンフォームを製造した。その後、各種評価を行った(表1及び表2参照)。
【0083】
【0084】
【0085】
表1及び表2から以下のことが分かる。
実施例1~8は、第1ポリエステルポリオールより第2ポリエステルポリオールの含有割合が高いポリオール組成物を含むポリウレタンフォーム用組成物を用いた例であり、第1ポリエステルポリオール及び第2ポリエステルポリオールの含有割合が同じであるポリオール組成物を含むポリウレタンフォーム用組成物を用いた比較例1、並びに、第2ポリエステルポリオールより第1ポリエステルポリオールの含有割合が高いポリオール組成物を含むポリウレタンフォーム用組成物を用いた比較例2より、圧縮強度が高く、寸法変化率が小さかった。
本発明のポリウレタンフォーム用組成物は、建築物の内外壁材、パネル等における断熱、金属サイディング、冷蔵庫等における断熱、ビル、マンション、冷凍倉庫等の躯体壁面、天井、屋根等における断熱又は結露防止、輸液パイプ等の断熱に用いる発泡体形成に好適である。