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特開2024-5481建築用部材、建築板、及び建築板の施工構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005481
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】建築用部材、建築板、及び建築板の施工構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/10 20060101AFI20240110BHJP
   E04D 13/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E04D13/10 B
E04D13/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105678
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】小池 健文
(72)【発明者】
【氏名】山川 直人
(72)【発明者】
【氏名】中村 真人
(57)【要約】
【課題】施工構造に適用された際に、位置がずれ難い建築用部材、その建築用部材を備える建築板の施工構造、及びその建築板の施工構造が備える建築板を提供する。
【解決手段】建築用部材1Aは、下地20A上に複数の建築板10Aが所定方向に階段状に施工され、隣接する建築板10A同士が一部重なり合う部分において建築板10A同士の間において固定される建築用部材1Aである。隣接する建築板10Aの間で固定される固定部2と、固定部2の一端部に設けられた機能部3と、を備える。固定部2は、建築板10Aを貫通して下地20Aに固定するための固定具40が挿通する挿通孔4と、固定部2の裏側に突出し、建築板10Aに形成された開口12に嵌まる突出部5と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地上に複数の建築板が所定方向に階段状に施工され、隣接する当該建築板同士が一部重なり合う部分において前記建築板同士の間において固定される建築用部材であって、
隣接する前記建築板の間で固定される固定部と、当該固定部の一端部に設けられた機能部と、を備え、
前記固定部は、
前記建築板を貫通して前記下地に固定するための固定具が挿通する挿通孔と、
前記固定部の裏側に突出し、前記建築板に形成された開口に嵌まる突出部と、を有する、
建築用部材。
【請求項2】
前記挿通孔と前記突出部とが別の位置に形成されている、
請求項1に記載の建築用部材。
【請求項3】
前記突出部よりも前記機能部に近い位置に前記挿通孔が位置している、
請求項1又は2に記載の建築用部材。
【請求項4】
前記挿通孔を、二つ以上有し、
前記挿通孔の少なくとも一つが、前記突出部に形成されている、
請求項1又は2に記載の建築用部材。
【請求項5】
下地上に複数の建築板が所定方向に階段状に施工され、隣接する当該建築板同士が一部重なり合う部分において前記建築板同士の間において請求項1又は2に記載の建築用部材が固定された建築板の施工構造であって、
前記建築用部材の前記固定部が前記建築板同士の重なり合う部分において前記建築板同士の間に設けられた状態において、前記突出部が前記建築板の前記開口に嵌まっていると共に、前記挿通孔を挿通する固定具によって前記固定部及び前記建築板が前記下地に固定されている、
建築板の施工構造。
【請求項6】
請求項5に記載の建築板の施工構造に用いられる建築板であって、
前記建築板は、隣接する建築板の一部が表側に重なる非曝露部を有し、
前記非曝露部は、
前記建築用部材の前記突出部が嵌まる開口と、
前記建築板を固定する固定具が挿通される固定用孔と、を有する、
建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用部材、建築板、及び建築板の施工構造に関する。本発明は、より詳しくは、雪止め金具、太陽電池パネル等の設置用金具等として用いられる建築用部材、建築板及び建築用部材と建築板とを備える建築板の施工構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根には機器設置用の部材が設けられることがある。特許文献1には、屋根瓦表面に沿って延出する基板部の一端が前記屋根瓦表面に対し起立するようL字状に折曲されてなる雪止め金具において、前記基板部の他端を前記屋根瓦の瓦尻を抱き込むよう断面コ字状に折曲して成ることを特徴とする雪止め金具が記載されている。特許文献1に記載の雪止め金具は、屋根瓦の瓦尻に引っかかる形状を有しているため、屋根瓦と共に強固に固定され得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3-31634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の雪止め金具は、瓦尻に引っかかる形状であるため、屋根の流れ方向へのずれは生じにくいが、桁方向には位置決めされていないため、ずれが生じやすい問題がある。
【0005】
本発明の課題は、施工構造に適用された際に、位置がずれ難い建築用部材、その建築用部材を備える建築板の施工構造、及びその建築板の施工構造が備える建築板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る建築用部材は、下地上に複数の建築板が所定方向に階段状に施工され、隣接する当該建築板同士が一部重なり合う部分において前記建築板同士の間において固定される建築用部材であって、隣接する前記建築板の間で固定される固定部と、当該固定部の一端部に設けられた機能部と、を備える。前記固定部は、前記建築板を貫通して前記下地に固定するための固定具が挿通する挿通孔と、前記固定部の裏側に突出し、前記建築板に形成された開口に嵌まる突出部と、を有する。
【0007】
本発明の一態様に係る建築板の施工構造は、下地上に複数の建築板が所定方向に階段状に施工され、隣接する当該建築板同士が一部重なり合う部分において前記建築板同士の間において前記建築用部材が固定された建築板の施工構造である。前記建築用部材の前記固定部が前記建築板同士の重なり合う部分において前記建築板同士の間に設けられた状態において、前記突出部が前記建築板の開口に嵌まっていると共に、前記挿通孔を挿通する固定具によって前記固定部及び前記建築板が前記下地に固定されている。
【0008】
本発明の一態様に係る建築板は、前記建築板の施工構造に用いられる建築板である。前記建築板は、隣接する建築板の一部が表側に重なる非曝露部を有する。前記非曝露部は、前記建築用部材の前記突出部が嵌まる開口と、前記建築板を固定する固定具が挿通される固定用孔と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によると、施工構造に適用された際に、位置がずれ難い建築用部材、その建築用部材を備える建築板の施工構造、及びその建築板の施工構造が備える建築板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、本発明の一実施形態に係る建築用部材の斜視図であり、図1Bは、本発明の一実施形態に係る建築板の平面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る建築板の施工構造の一部分の平面図である。
図3図3は、図2のX1-X1切断線における断面が矢印Xの向きから視認されたときの概略の断面図である。
図4図4Aは、本発明の他の実施形態に係る建築用部材の斜視図であり、図4Bは本発明の他の実施形態に係る建築板の平面図である。
図5図5は、本発明の他の実施形態に係る建築板の施工構造の一部分の平面図である。
図6図6は、図5のX2-X2切断線における断面が矢印Xの向きから視認されたときの概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限られない。下記の実施形態は、本発明の様々な実施形態の例に過ぎず、本発明の目的を達成できれば設計に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
[概要]
本発明の建築用部材1Aは、建築板10Aに取り付けられる部材である。この建築用部材1Aは、下地20A上に複数の建築板10Aが所定方向に階段状に施工され、隣接する建築板10A同士が一部重なり合う部分において建築板10A同士の間において固定される。より詳しく説明すると、建築用部材1Aは、固定部2を備えており、この固定部2を一部が重なって隣接する二つの建築板10A、10Aの間に介在させることによって、建築板の施工構造(単に、施工構造ともいう)100Aに設置することができる。ここで、「所定方向」とは、階段状に施工された複数の建築板10Aが並ぶ方向であり、実施形態1及び実施形態2では、「軒棟方向」とも言い換えられる。
【0013】
また、本発明では、建築用部材1Aの固定部2に、突出部5が設けられている。より詳しくは、固定部2は、固定部2の裏側に突出し、建築板10Aに形成された開口12に嵌まる突出部5を有する。この開口12は、建築用部材1Aの突出部5が嵌め込まれるように形成されている。この突出部5が、建築板10Aの開口12に嵌め込まれることによって、建築用部材1Aが施工構造100Aに設けられる。そして、この建築用部材1Aの表側に重なるように別の建築板10Aが重ねられることによって、建築用部材1Aの固定部2が二つの建築板10A、10Aの間に介在しうる。
【0014】
なお、本発明の施工構造100Aは、開口12を有する建築板10Aと、開口12を有さない建築板10Aとを併用することができる。この場合、建築用部材1Aを設置する箇所に対応する建築板10Aが開口12を有し、その他の建築板10Aは開口12を有していなくてもよい。なお、施工構造100Aを構成するすべての建築板10Aが開口12を有していてもよい。
【0015】
また、本発明において、建築板10Aの厚みと平行な方向は「表裏方向」である。建築用部材1Aが施工構造100Aに設けられた際に、その建築用部材1Aの固定部2の表面21が向いている方向は、「表方向(表側)」であり、その反対の裏面22が向いている方向は、「裏方向(裏側)」である。
【0016】
上記のように施工構造100Aに設けられた建築用部材1Aは、いずれの方向においても、その位置がずれ難くなる。言い換えれば、施工構造100Aに設けられた建築用部材1Aは、突出部5が建築板10Aの開口12に嵌めこまれていることにより、突出部5が開口12の縁部に引っ掛かって、所定方向だけではなく、左右方向においても、ずれ難くなる。なお、「左右方向」とは、階段状に施工された複数の建築板10Aが並ぶ所定方向と直交する方向である。また、上記の「左右方向」は、実施形態1及び実施形態2では「桁方向」とも言い換えられる。
【0017】
[実施形態1]
本実施形態に係る建築用部材1A、建築板10A及び施工構造100Aについて、図1図3を参照しながら説明する。
【0018】
実施形態1に係る施工構造100Aは、屋根構造100である。また、実施形態1では、建築用部材1Aは、屋根用部材1であり、建築板10Aは、屋根材10であり、下地20Aは、屋根下地20である。
【0019】
図1Aには、実施形態1に係る屋根用部材1の例が示されており、図1Bには、図1Aの屋根用部材1を取り付けることができる屋根材10の例が示されている。また、図2には、図1Aの屋根用部材1と、図1Bの屋根材10とを備える屋根構造100の例が示されている。そして、図3には、図2のX1-X1切断線における断面が矢印Xの向きから視認されたときの概略の断面図が示されている。
【0020】
屋根構造100が備える複数の屋根材10は、図2及び図3に示すように、屋根下地20に対して、一部が重なるように屋根の流れ方向(以下、「軒棟方向」という)に並んでいる。すなわち、軒棟方向に隣接する二つの屋根材10、10は、それらの一部が重なりあっている。更に言い換えれば、軒棟方向に隣接する屋根材10、10において、軒側の屋根材10(以下、軒側屋根材101ともいう)の一部と、棟側の屋根材10(以下、棟側屋根材102ともいう)の一部とが重なり合っている。この軒側屋根材101と、棟側屋根材102との間には、屋根用部材1の固定部2が固定されている。したがって、屋根用部材1の軒側に位置する屋根材10が軒側屋根材101となり、屋根用部材1の軒側に位置する屋根材10が棟側屋根材102となる。
【0021】
なお、図2及び図3に示されている屋根構造100では、棟側屋根材102を透視する形で示されている。このことを表すために、図2及び図3では、棟側屋根材102は、想像線で示されている。
【0022】
また、本実施形態では、「軒棟方向」とは、上記の通り、屋根構造100において、野地板及び下葺き材等で構成される屋根下地20に対し屋根材10が階段状に施工されて並ぶ方向(所定方向)である。図2及び図3に示されている矢印Yの向いている方向は、棟から軒に向かう方向(軒側)である。その矢印Yの向いている方向とは反対側の方向は、軒から棟に向かう方向(棟側)である。また、本実施形態では、屋根構造100において、「軒棟方向」と直交する方向が、上記の「左右方向」である。図2に示す矢印Xの向いている方向は、左方向(左側)である。その矢印Xの向いている方向とは反対向きの方向は、右方向(右側)である。更に、本実施形態では、屋根構造100において、屋根材10の厚みと平行な方向が、「表裏方向」である。図3に示されている矢印Zの向いている方向が、「表方向(表側)」である。その矢印Zの向いている方向と反対の方向が、「裏方向(裏側)」である。
【0023】
屋根用部材1の材質は、例えば、ステンレス鋼、銅又はガルバリウム鋼板(登録商標)等の金属が挙げられる。
【0024】
屋根用部材1は、図1Aに示すように、屋根構造100において、一部が重なって隣接する屋根材10、10の間に介在する固定部2を備える。言い換えれば、屋根用部材1は、軒側屋根材101と、棟側屋根材102との間に介在する固定部2を備える。
【0025】
屋根用部材1は、図1Aに示すように、固定部2に設けられた機能部3を備える。機能部3は、固定部2の一端部に設けられている。より詳しくは、機能部3は、固定部2の前端23に設けられている。
【0026】
屋根用部材1が、屋根構造100に設けられる場合、機能部3は、図3に示すように、隣接する屋根材10、10の間には介在しない。言い換えれば、この機能部3は、棟側屋根材102よりも軒側に位置している。そして、屋根用部材1は、この機能部3が設けられている側の前端23が軒側を向くようにして屋根構造100に設けられる。
【0027】
機能部3には、種々の機能を有する別の部材が設けられる。具体的には、機能部3には、例えば雪止め機能部、太陽光パネル固定部及び安全具固定部等が設けられる。
【0028】
機能部3は、図1Aに示すように、湾曲した湾曲部6と、湾曲部6の一端部から延出され、直角に折り曲げられた屈曲部7とを有することが好ましい。屋根用部材1は、このような形状を有する機能部3を備えていることにより、機能部3には、種々の機能を有する別の部材がより設けられやすくなる。
【0029】
本実施形態では、固定部2の前端23とは反対側の後端24の形状は、特に限定されない。したがって、後端24は、そのまま平坦状に棟側に向かって延びてもよく、または、軒側屋根材101の棟側端の棟側に対応する位置で屋根下地20側に屈曲していてもよい。
【0030】
屋根用部材1は、図1Aに示すように、挿通孔4を有する。より詳しくは、固定部2は、屋根材10に設けられた固定用孔11と共に固定具40が挿通する挿通孔4を有する。更に言い換えれば、固定部2が有する挿通孔4は、屋根材10を貫通し、かつその屋根材10を屋根下地20に固定するための固定具40が挿通する。なお、屋根材10と、屋根用部材1とを固定するために用いられる固定具40は例えば、釘等を使用することができる。
【0031】
屋根構造100では、図2に示すように、屋根材10に設けられた固定用孔11と、固定部2の挿通孔4とが、一部重なっている。このため、固定用孔11及び挿通孔4に固定具40を打入し、屋根用部材1と、屋根材10とを固定することができる。
【0032】
より詳しく説明すると、屋根構造100において、軒側屋根材101の固定用孔11及び屋根用部材1の挿通孔4に固定具40を打入し、屋根用部材1と、軒側屋根材101とを固定することができる。続いて、その屋根用部材1及び軒側屋根材101に重なるようにして棟側屋根材102が設置される。そして、図3に示すように、この棟側屋根材102は、固定用孔11に、固定具40が打入されることによって、屋根下地20に固定される。このようにして、隣接する軒側屋根材101と、棟側屋根材102とが、施工される。そして、屋根用部材1は、軒側屋根材101と、棟側屋根材102との間に、固定される。また、機能部3は、上記の通り、軒側屋根材101と、棟側屋根材102と、の間には介在せず、図2及び図3に示すように、棟側屋根材102よりも軒側に位置する。また、屈曲部7は、その一部が棟側屋根材102の表面13と接しており、棟側屋根材102よりも軒側に湾曲部6が位置する。
【0033】
なお、上記の固定用孔11が屋根材10に複数設けられている場合、固定用孔11の全てが屋根用部材1の挿通孔4と重なっていなくてもよい。すなわち、固定用孔11は、屋根用部材1を介在させずに固定具40が打入れされてもよい。
【0034】
また、固定部2に設けられる挿通孔4の数は、複数であってもよい。挿通孔4の数が複数である場合、屋根用部材1を、複数の固定具40を使用して、屋根材10に固定することができる。これにより、屋根用部材1が、屋根材10に固定されやすくなる。また、固定部2に設けられる挿通孔4の数は、例えば、1個以上であればよい。この場合、屋根用部材1が、屋根材10に固定されやすくなる。
【0035】
屋根用部材1の固定部2は、図1Aに示すように、突出部5を有する。言い換えると、固定部2は、図1Bに示すような屋根材10の表面13に形成された開口12に嵌まる突出部5を有する。この突出部5は、固定部2の裏側に突出するように形成されている。
【0036】
この屋根用部材1の突出部5は、上記の通り、屋根材10が有する開口12に嵌まる。これにより、屋根用部材1の固定部2が、二つの屋根材10、10の間に介在しやすくなり、屋根用部材1が屋根材10に設けられやすくなる。そして、屋根構造100に設けられた屋根用部材1の位置がずれ難くなる。
【0037】
突出部5の平面視形状は、例えば、円形、楕円形、多角形、線形等である。これらの中で、突出部5の平面視形状は、円形が好ましい。この場合、屋根用部材1が屋根材10に設けられやすくなり、かつ屋根構造100に設けられた屋根用部材1の位置がずれ難くなる。
【0038】
本実施形態では、屋根用部材1の突出部5と、挿通孔4とが、別の位置に形成されていてもよい。この場合、突出部5と、挿通孔4とが別の位置に形成されていることにより、固定部2が、屋根材10に対して、少なくとも2か所で固定される。これにより、屋根構造100に設けられた屋根用部材1が回転することにより生じる位置ずれが抑制されやすくなる。
【0039】
屋根材10の部材としては、スレート板等が挙げられる。スレート板は、例えばセメントと骨材と補強繊維とを含む水硬性無機硬化体である。また、屋根材10の材質は、例えば、プラスチックや金属であってもよい。
【0040】
屋根材10は、図1Bに示すように、固定用孔11を有する。そして、図2及び図3に示すように、この固定用孔11に、固定具40を打入することによって、屋根材10を屋根下地20に固定することができる。
【0041】
屋根材10は、表面13と、その表面13の反対側の裏面14と、を有する。屋根構造100において、屋根材10は、その裏面14が屋根下地20と対向するように設けられる。よって、屋根用部材1が、屋根構造100に設けられた場合、固定部2の表面21と、棟側屋根材102の裏面14とが接し、固定部2の裏面22と、軒側屋根材101の表面13とが接する。
【0042】
本実施形態では、屋根構造100が、図1Bに示すような、開口12が設けられている屋根材10を備えることを特徴とする。上述の通り、屋根用部材1の突出部5が、屋根材10に設けられたこの開口12に嵌まる。これにより、屋根用部材1が、屋根構造100に設けられる。
【0043】
詳しく説明すると、屋根用部材1は、一部が重なって隣接する軒側屋根材101と、棟側屋根材102とのうち、軒側屋根材101の開口12に屋根用部材1の突出部5を嵌めこむことによって、屋根用部材1の固定部2を軒側屋根材101と、棟側屋根材102との間に介在させることができる。したがって、屋根構造100において、屋根用部材1の固定部2の裏面22と接し、かつ軒側に位置する軒側屋根材101には、その固定部2の突出部5が嵌まる開口12が設けられている。
【0044】
また、屋根用部材1を取り付けない棟側屋根材102には、図2に示すように、開口12が設けられていなくてもよい。すなわち、棟側屋根材102は、開口12を有さない屋根材10であってもよい。
【0045】
更に、屋根構造100においては、屋根用部材1を取り付ける屋根材10に突出部5が嵌まる開口12が設けられていればよく、屋根用部材1を取り付けない屋根材10には開口12が設けられていなくてもよい。したがって、屋根構造100は、開口12を有する屋根材10と、開口12を有さない屋根材10とが併用されて施工されていてもよい。なお、屋根構造100は、開口12を有する屋根材10のみで施工されていても構わない。
【0046】
また、この開口12は、屋根材10を貫通するようにして設けられていてもよく、屋根材10の厚みが厚い場合には、開口12は、屋根材10を貫通することなく設けられていてもよい。開口12が、屋根材10に貫通して設けられており、かつその開口12が、屋根材10を、屋根下地20に固定するために設けられている固定用孔11と重なっている場合、貫通する開口12は、固定用孔11の代わりに用いられることができる。この場合、屋根材10に設けられる固定用孔11の数を減らすことができる。
【0047】
図1Bに示すように、屋根材10は、曝露部15と、非曝露部16とを有する。本発明において、屋根材10の曝露部15とは、屋根材10が屋根構造100に設けられた際に、その屋根材10の表面13に、別の屋根材10が重なっていない領域のことを意味する。また、屋根材10の非曝露部16とは、その屋根材10の表面13に、別の屋根材10が重なっている領域のことを意味する。したがって、屋根構造100中、軒側屋根材101の非曝露部16と、棟側屋根材102の曝露部15とが重なり、屋根用部材1の固定部2は、軒側屋根材101の非曝露部16と、棟側屋根材102の曝露部15との間に介在する。そして、その軒側屋根材101が有する開口12は、非曝露部16に設けられることとなる。
【0048】
図1Bに示すように、屋根材10は、縦端部17と、横端部18とを有する。屋根構造100において、横端部18の延びる方向は、上記の「左右方向」である。このため、屋根材10の左側に位置する縦端部17は、左縦端部171であり、右側に位置する縦端部17は、右縦端部172である。また、本実施形態では、屋根構造100において、縦端部17の延びる方向は、上記の「軒棟方向」である。このため、屋根材10の軒側に位置する横端部18は、軒横端部181であり、棟側に位置する横端部18は、棟横端部182である。
【0049】
本実施形態では、屋根用部材1の挿通孔4が、突出部5よりも機能部3に近い位置に位置していてもよい。挿通孔4が、突出部5よりも機能部3に近い位置で形成されている場合、屋根構造100が備える屋根材10の軒横端部181に近い位置に固定具40を打入することができる。これにより、屋根材10が屋根下地20から離れにくくなる。より詳細には、屋根材10が、固定具40により屋根下地20に固定されている場合、屋根材10を屋根下地20から引き剥がそうとする力がかかったとしても、屋根材10が捲れ難い。このため、屋根材10が屋根下地20から離れにくくなる。
【0050】
屋根構造100中、左右方向に隣り合う屋根材10、10において、左方向に位置する屋根材10の右縦端部172と、右方向に位置する屋根材10の左縦端部171とは、突付ける(接する)ように配置されていてもよく、左方向に位置する屋根材10の右縦端部172と、右方向に位置する屋根材10の左縦端部171とが離れるように配置されていてもよい。
【0051】
また、屋根構造100において、屋根用部材1が有する突出部5の数と、その屋根用部材1が取り付けられる屋根材10が有する開口12の数は、同じであることが好ましい。
この突出部5の数が、開口12の数よりも多い場合、開口12に嵌まらない突出部5が生じて、屋根材10の表面13から、屋根用部材1が浮き上がってしまうため、屋根用部材1を二つの屋根材10、10の間に設けることが難しくなる。また、この突出部5の数が、開口12の数よりも少ない場合、突出部5で塞がれない開口12が生じるため、開口12に雨水が浸入しやすくなり、その結果、開口12を有する屋根材10に雨水等が溜まりやすくなってしまう。
【0052】
更に、一部が重なって軒棟方向に隣接する軒側屋根材101と、棟側屋根材102とにおいて、軒側屋根材101の開口12は、その軒側屋根材101の非曝露部16の中でも、更に特定の位置に設けられていることが特に好ましい。より具体的には、図2に示すように、軒側屋根材101の開口12は、その軒側屋根材101に重なっている棟側屋根材102の右縦端部172から左方向にh1離れており、かつその棟側屋根材102の軒横端部181から、軒から棟に向かう方向にh2離れた位置に設けられていることが好ましい。上記の棟側屋根材102を屋根下地20に固定する際に、軒側屋根材101の開口12と、棟側屋根材102の固定用孔11との位置が重なりにくくなる。これにより、棟側屋根材102の固定用孔11から固定具40が打入されやすい。上記のh1は、例えば、50mm以上である。また、上記のh2は、例えば、50mm以上である。
【0053】
[実施形態2]
実施形態2に係る建築用部材1A、建築板10A及び施工構造100Aについて、図4図6を参照しながら説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0054】
実施形態2に係る施工構造100Aは、実施形態1と同様、屋根構造100である。よって、実施形態2では、建築用部材1Aは、屋根用部材1であり、建築板10Aは、屋根材10であり、下地20Aは、屋根下地20である。
【0055】
図4Aには、実施形態2に係る屋根用部材1の例が示されており、図4Bには、図4Aの屋根用部材1を取り付けることができる屋根材10の例が示されている。図5には、図4Aの屋根用部材1と、図4Bの屋根材10とを備える屋根構造100の例が示されている。また、図6には、図5のX2-X2切断線における断面が左右方向から視認されたときの概略の断面図が示されている。
【0056】
実施形態2の屋根構造100が備える複数の屋根材10は、図5及び図6に示すように、屋根下地20に対して、一部が重なるように屋根の流れ方向に並んでいる。なお、図5及び図6に示されている屋根構造100では、棟側屋根材102を透視する形で示されている。このことを表すために、図5及び図6では、棟側屋根材102は、想像線で示されている。
【0057】
実施形態2の屋根材10は、実施形態1の屋根材10と同じものであってもよい。すなわち、実施形態2の屋根材10の材質は、実施形態1の屋根材10の材質と同じであってもよい。
【0058】
実施形態2では、図4Aに示すように、固定部2に設けられる突出部5の数は、例えば複数であってもよい。突出部5の数が複数である場合、屋根構造100に適用された屋根用部材1の位置がよりずれ難くなる。また、固定部2に設けられる突出部5の数が複数である場合、その突出部5の数は、例えば、2個以上である。この場合、屋根構造100に適用された屋根用部材1の位置がずれ難くなり、かつ屋根材10の耐久性を損ないにくくすることができる。
【0059】
また、図4Bに示すように、屋根材10が開口12を有する場合、その開口12の数は、例えば、複数であってもよい。複数の突出部5を有する屋根用部材1は、そのような屋根材10に設けられやすくなる。これにより、屋根用部材1の位置がずれ難くなる。また、屋根材10が有する開口12の数が複数である場合、その開口12の数は、例えば、その屋根材10に設けられる屋根用部材1が有する突出部5と同数である。この場合、屋根構造100における屋根用部材1の位置がよりずれ難く、かつ屋根材10の耐久性を損ないにくくすることができる。
【0060】
更に、固定部2に設けられる突出部5の数が、複数である場合、それらの突出部5は、固定部2に並んで設けられていなくてもよい。言い換えれば、図4Aに示すように、複数の突出部5は、固定部2の延びる方向に沿って一列に位置していなくてもよい。このような屋根用部材1が、屋根構造100に適用された場合、その屋根用部材1の位置はよりずれ難くなる。また、屋根構造100は、図4Bに示すような屋根材10を備えることにより、図4Aに示す複数の突出部5が並んでいない屋根用部材1を適用することができる。なお、図4Bに示す屋根材10は、前記の屋根用部材1を設けることができるものである。すなわち、図4Bに示す屋根材10は、図4Aに示す屋根用部材1を設置することができるように、複数の開口12を有し、かつ複数の開口12は、縦端部17の延びる方向に沿って一列に並んでいないものである。
【0061】
実施形態2では、図5及び図6に示すように、屋根用部材1は、挿通孔4を、二つ以上有し、かつ挿通孔4の少なくとも一つ以上が、突出部5と重なって配置されていてもよい。挿通孔4が、突出部5と重なっており、かつその突出部5が屋根材10を貫通するように形成されている場合、突出部5が、挿通孔4の役割を兼ね備えることができる。この場合、屋根材10が有する固定用孔11の数を減らすことができる。更に、屋根用部材1が、二つ以上の挿通孔4を有し、かつ少なくとも1つ以上の突出部5を有しているため、屋根用部材1は、屋根構造100に適用された際に、特にその位置がずれ難くなり、かつ、その屋根用部材1は、屋根材10に固定されやすくなる。
【0062】
[変形例]
建築用部材1A、建築板10A及び施工構造100Aの変形例について説明する。なお、実施形態1及び実施形態2と同様の構成については、適宜説明を省略する。
【0063】
本発明の建築板10Aにおいて、本発明の建築用部材1Aの固定部2が有する突出部5が嵌まる開口12は、底部を有する凹部に限らず、例えば貫通孔であってもよい。
【0064】
また、施工構造100Aの変形例として、壁構造が挙げられる。すなわち、本発明の施工構造100Aは、壁構造にも適用可能である。また、施工構造100Aが壁構造であった場合、建築用部材1Aは、壁構造に設置され、物品等を固定することができる壁用部材であり、建築板10Aは、壁構造に用いられる壁材であり、下地20Aは、壁下地である。
【0065】
変形例において、壁材は、壁下地上に所定方向に階段状に施工される。そして、壁用部材は、隣接する壁材同士が一部重なり合う部分において、それらの壁材同士の間に設けられるものである。
【0066】
また、変形例において「所定方向」とは、壁下地に壁材が所定方向に階段状に施工される方向である。したがって、変形例において「所定方向」は、「上下方向」とも言い換えることができる。より具体的には、実施形態1における「棟から軒に向かう方向(軒側)」が、変形例における「下方向(下側)」に対応し、実施形態1における「軒から棟に向かう方向(棟側)」が、変形例における「上方向(上側)」に対応する。このため、壁構造に設置される壁用部材の固定部2の端部のうち、機能部3が設けられている固定部2の一端部が、下方向を向く。そして、機能部3が設けられている端部とは反対側の端部が、上方向を向く。
【0067】
また、上記の壁構造に設置される壁用部材の固定部2が有する突出部5は、屋内方向に突出する。ここで、変形例において、壁材の厚みと平行な方向が、「屋内外方向」である。すなわち、「屋内外方向」とは、上記の「表裏方向」が言い換えられたものである。このため、上記の「表方向(表側)」は、「屋外方向」と言い換えられ、上記の「裏方向(裏側)」は、「屋内方向」と言い換えられる。
【0068】
壁構造に設置される壁用部材の材質は、実施形態1及び実施形態2の屋根構造100に用いられる屋根用部材1と同様の材質であってもよく、異なっていてもよい。また、壁材の部材としては、窯業系サイディング等が挙げられる。また、壁材の材質は、例えば、プラスチックや金属であってもよい。
【0069】
[まとめ]
本発明の建築用部材1Aは、施工構造100Aに適用される。そして、この建築用部材1Aは、開口12を有する建築板10Aに取り付けられる。施工構造100Aは、例えば、家屋などの屋根構造100、壁構造等であるが、特に限定されず、種々の構造に適用可能なものである。
【0070】
第1の態様に係る建築用部材1Aは、下地20A上に複数の建築板10Aが所定方向に階段状に施工され、隣接する当該建築板10A同士が一部重なり合う部分において建築板10A同士の間において固定される建築用部材1Aであって、隣接する建築板10Aの間で固定される固定部2と、当該固定部2の一端部に設けられた機能部3と、を備える。固定部2は、建築板10Aを貫通して下地20Aに固定するための固定具40が挿通する挿通孔4と、固定部2の裏側に突出し、建築板10Aに形成された開口12に嵌まる突出部5と、を有する。
【0071】
第1の態様によれば、施工構造100Aに適用された際に、位置がずれ難い建築用部材1Aを提供することができる。
【0072】
第2の態様に係る建築用部材1Aは、第1の態様において、挿通孔4と突出部5とが別の位置に形成されている。
【0073】
第2の態様によれば、施工構造100Aに設けられた建築用部材1Aが回転することにより生じる位置ずれが抑制されやすくなる。
【0074】
第3の態様に係る建築用部材1Aは、第1又は第2の態様において、突出部5よりも機能部3に近い位置に挿通孔4が位置している。
【0075】
第3の態様によれば、建築板10Aを下地20Aから引き剥がそうとする力がかかったとしても、その建築板10Aが下地20Aから離れにくくなる。
【0076】
第4の態様に係る建築用部材1Aは、第1から第3のいずれか一の態様において、挿通孔4を、二つ以上有し、挿通孔4の少なくとも一つが、突出部5に形成されている。
【0077】
第4の態様によれば、建築板10Aが有する固定用孔11の数を減らすことができる。そして、施工構造100Aに適用された建築用部材1Aの位置が特にずれ難くなり、かつ、その建築用部材1Aが、建築板10Aに固定されやすくなる。
【0078】
第5の態様に係る建築板の施工構造100Aは、下地20A上に複数の建築板10Aが所定方向に階段状に施工され、隣接する当該建築板10A同士が一部重なり合う部分において建築板10A同士の間において第1から第4のいずれか一の態様の建築用部材1Aが固定された建築板の施工構造100Aである。建築用部材1Aの固定部2が建築板10A同士の重なり合う部分において建築板10A同士の間に設けられた状態において、突出部5が建築板10Aの開口12に嵌まっていると共に、挿通孔4を挿通する固定具40によって固定部2及び建築板10Aが下地20Aに固定されている。
【0079】
第5の態様によれば、建築用部材1Aと、建築板10Aとを備える施工構造100Aを提供することができる。
【0080】
第6の態様に係る建築板10Aは、第5の態様の建築板の施工構造100Aに用いられる建築板10Aである。建築板10Aは、隣接する建築板10Aの一部が表側に重なる非曝露部16を有する。非曝露部16は、建築用部材1Aの突出部5が嵌まる開口12と、建築板10Aを固定する固定具40が挿通される固定用孔11と、を有する。
【0081】
第6の態様によれば、建築用部材1Aを施工構造100Aに設けることが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1A 建築用部材
2 固定部
3 機能部
4 挿通孔
5 突出部
10A 建築板
11 固定用孔
12 開口
15 曝露部
16 非曝露部
20A 下地
40 固定具
100A 建築板の施工構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6