(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005483
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スイッチング回路およびスイッチング回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H02M3/155 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105682
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】久米 正義
(72)【発明者】
【氏名】小宮 基樹
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730EE13
5H730EE57
5H730FD11
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】安定した出力電圧を供給すること。
【解決手段】実施形態に係るスイッチング回路は、HiサイドMOSとLoサイドMOSとを同期して入力電圧を降圧する同期整流降圧型のスイッチング回路であって、LoサイドMOSのゲートをグランドにショートするMOSスイッチと、入力電圧を監視し、入力電圧の状態に応じてMOSスイッチのオンオフを切り替える監視部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HiサイドMOSとLoサイドMOSとを同期して入力電圧を降圧する同期整流降圧型のスイッチング回路であって、
前記LoサイドMOSのゲートをグランドにショートするMOSスイッチと、
前記入力電圧を監視し、前記入力電圧の状態に応じて前記MOSスイッチのオンオフを切り替える監視部と
を備える、スイッチング回路。
【請求項2】
HiサイドMOSとLoサイドMOSとを同期して入力電圧をまで降圧する同期整流降圧型のスイッチング回路であって、
前記LoサイドMOSのソースとグランドとの間に前記LoサイドMOSと直列に接続されたツェナーダイオードと、
前記ツェナーダイオードと並列に接続され、前記LoサイドMOSと前記ツェナーダイオードとの接続状態を切り替えるMOSスイッチと、
前記入力電圧を監視し、前記入力電圧の状態に応じて前記MOSスイッチのオンオフを切り替える監視部と
を備える、スイッチング回路。
【請求項3】
前記監視部は、
前記入力電圧が閾値を下回る場合に、前記MOSスイッチをオフにし、前記入力電圧が前記閾値を超える場合に、前記MOSスイッチをオンにする、
請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項4】
前記監視部は、
前記入力電圧が閾値を超える場合に、前記MOSスイッチをオフにし、前記入力電圧が前記閾値を下回る場合に、前記MOSスイッチをオンにする、
請求項2に記載のスイッチング回路。
【請求項5】
前記HiサイドMOSと前記LoサイドMOSとを制御するパルス信号を前記入力電圧に応じて生成する信号生成部
を備え、
前記信号生成部は、
前記入力電圧と、前記MOSスイッチの状態とに応じた前記パルス信号を生成する、
請求項1または2に記載のスイッチング回路。
【請求項6】
HiサイドMOSとLoサイドMOSとを同期して入力電圧を所定の出力電圧まで降圧する同期整流降圧型のスイッチング回路の制御方法であって、
前記入力電圧を監視し、前記入力電圧の状態に応じて前記LoサイドMOSのゲートをグランドにショートするMOSスイッチのオンオフを切り替える、
スイッチング回路の制御方法。
【請求項7】
HiサイドMOSとLoサイドMOSとを同期して入力電圧を降圧する同期整流降圧型のスイッチング回路の制御方法であって、
前記入力電圧を監視し、前記入力電圧の状態に応じて前記LoサイドMOSのソースとグランドとの間に前記LoサイドMOSと直列に接続されるツェナーダイオードと並列に接続されるMOSスイッチのオンオフを切り替える、
スイッチング回路の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング回路およびスイッチング回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同期整流降圧型のスイッチング回路がある。スイッチング回路に関して、入力電圧と出力電圧との差に応じた負荷状態に応じて、スイッチング周波数を切り替える技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、たとえば、入力電圧が変動した場合に、出力電圧が不安定になる恐れがある。そのため、入力電圧が変動する場合であっても、安定した出力電圧を供給する技術が望まれる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、安定した出力電圧を供給することができるスイッチング回路およびスイッチング回路の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るスイッチング回路は、HiサイドMOSとLoサイドMOSとを同期して入力電圧を降圧する同期整流降圧型のスイッチング回路であって、前記LoサイドMOSのゲートをグランドにショートするMOSスイッチと、前記入力電圧を監視し、前記入力電圧の状態に応じて前記MOSスイッチのオンオフを切り替える監視部とを備える。
【0007】
また、本願発明に係るスイッチング回路は、HiサイドMOSとLoサイドMOSとを同期して入力電圧を降圧する同期整流降圧型のスイッチング回路であって、前記LoサイドMOSのソースとグランドとの間に前記LoサイドMOSと直列に接続されたツェナーダイオードと、前記ツェナーダイオードと並列に接続され、前記LoサイドMOSと前記ツェナーダイオードとの接続状態を切り替えるMOSスイッチと、前記入力電圧を監視し、前記入力電圧の状態に応じて前記MOSスイッチのオンオフを切り替える監視部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定した出力電圧を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るスイッチング回路の回路図である。
【
図2】
図2は、パルス信号とスイッチング電圧と関係を示す模式図である。
【
図3】
図3は、スイッチング回路の制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係るスイッチング回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するスイッチング回路およびスイッチング回路の制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、
図1を用いて、第1の実施形態に係るスイッチング回路の回路構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るスイッチング回路の回路図である。
【0012】
図1に示すスイッチング回路1は、同期整流降圧型のスイッチング回路である。スイッチング回路1は、信号生成部10によって生成したパルス信号によって入力電圧Vinを目標電圧まで降圧させた出力電圧Voutを出力する。
【0013】
信号生成部10は、入力電圧Vinおよび目標電圧の差分に応じたパルス信号を生成し、HiサイドMOS11に入力するとともに、逆位相のパルス信号をLoサイドMOS12に入力することで入力電圧Vinを出力電圧Voutへ変換する。また、後述するように、信号生成部10は、MOSスイッチ13のオン/オフ、あるいは、入力電圧Vinの値に応じて、パルス信号のオンDutyを切り替えることで、出力電圧Voutを適切に保つことができる。
【0014】
たとえば、スイッチング回路1は、車両に搭載され、車両のバッテリ電圧(たとえば、12V)が一旦降圧された中間電位(たとえば、6V)の入力電圧Vinを目標電圧(たとえば、1V)まで降圧させて出力電圧Voutを出力する。
【0015】
近年では、車載用のスイッチング回路では、周辺回路部品(たとえば、コイル素子等)の小型化や、ノイズ回避の観点から、たとえば、2MHz程度のスイッチ周波数で高速スイッチングさせる技術が主流となっている。
【0016】
また、入力電圧Vinは各種の負荷状況等によって変動し、たとえば、入力電圧Vinが高くなると、入力電圧Vinと目標電圧との差分が大きくなるので、パルス信号のオンDuty(パルス幅)をより小さくすることが求められる。
【0017】
また、通常、半導体プロセスや素子特性によって、設定可能なオンDutyの最小値が設定されるが、入力電圧Vinが十分に大きい場合には、狙いのオンDutyで動作できない恐れがある。
【0018】
たとえば、設定可能なオンDutyの最小値よりも短いオンDutyで動作させると、パルス信号を生成できない、あるいは、パルス信号に対してLoサイドMOS12が反応しないなどといった不具合により、オンDutyが欠落するパルススキップが発生する恐れがある。パルススキップが発生すると、Voutが不安定になる。
【0019】
このような課題に対して、スイッチング回路1は、MOSスイッチ13および監視部20の構成を有している。MOSスイッチ13は、ドレインがLoサイドMOS12のゲートに接続され、MOSスイッチ13にゲート電圧が入力された場合に、LoサイドMOS12のゲートをグランドにショートする。
【0020】
そのため、MOSスイッチ13がオンになると、信号生成部10からLoサイドMOS12へ入力されるパルス信号がオンであっても、LoサイドMOS12はオフになる。また、MOSスイッチ13がオフである場合には、信号生成部10からLoサイドMOS12へ入力されるパルス信号に応じて、LoサイドMOS12のオン/オフが制御される。
【0021】
監視部20は、入力電圧Vinを監視するモニタ回路である。たとえば、監視部20は、入力電圧Vinが予め設定された閾値を超えた場合に、MOSスイッチ13のゲートに対してゲート電圧を入力する。
【0022】
すなわち、監視部20は、入力電圧Vinを監視し、パルススキップが生じるような状況であれば、MOSスイッチ13にゲート電圧を入力する。MOSスイッチ13がオンになると、LoサイドMOS12がオフになり、LoサイドMOS12のボディダイオードを通過させる還流経路を形成することになる。そのため、MOSスイッチ13がオンである場合には、ボディダイオードの電圧特性に応じたサージ電圧Vfが発生する。
【0023】
したがって、MOSスイッチ13をオンにすることで、パルス信号のオンDutyをサージ電圧Vfに応じた時間だけ長くすることができる。より具体的には、MOSスイッチ13がオフである場合のオンDutyは「Don=(Vout/Vin)」であるが、MOSスイッチ13がオンである場合のオンDutyは「Don=(Vout+Vf/Vin+Vf)」となる。
【0024】
ここで、
図2を用いて、MOSスイッチ13のオン/オフそれぞれのパルス信号について説明しておく。
図2は、パルス信号とスイッチング電圧Vswと関係を示す模式図である。なお、
図2の上段にMOSスイッチ13がオンである場合のパルス信号の波形を示し、下段にMOSスイッチ13がオフである場合のパルス信号の波形を示す。また、
図2における縦軸は、HiサイドMOS11およびLoサイドMOS12の中間地点におけるスイッチング電圧Vsw(
図1参照)を示し、上段および下段で入力電圧Vinが同じであるものとする。
【0025】
たとえば、
図2の上段に示すように、MOSスイッチ13がオフである場合には、LoサイドMOS12のボディダイオードを通過しない還流経路が形成されるので、スイッチング電圧Vswは0Vおよび入力電圧Vinの間で変化する。
【0026】
そして、この場合には、0Vを基準として入力電圧Vinに応じたパルス幅(オンDuty)w1のパルス信号が生成される。
【0027】
これに対して、
図2の下段に示すように、MOSスイッチ13がオンである場合には、LoサイドMOS12のボディダイオードを通過する還流経路が形成されるので、スイッチング電圧Vswは、-Vf(<0V)と入力電圧Vinとの間で変化する。
【0028】
そして、この場合には、-Vfを基準として入力電圧Vinに応じたパルス幅w2(>w1)のパルス信号が生成されることになる。つまり、MOSスイッチ13がオンにすることで、サージ電圧Vfの分だけ、電位差を嵩増しすることができるので、MOSスイッチ13がオンである場合のパルス幅w2をMOSスイッチ13がオンである場合のパルス幅w1よりも長くすることができる。
【0029】
したがって、入力電圧Vinが閾値を超えて、パルススキップが生じるような場合には、MOSスイッチ13をオンにすることで、必要なオンDutyを設定可能なオンDutyの最小値よりも大きな値に設定することが可能となる。そのため、スイッチング回路1は、入力電圧Vinを目標電圧に適切に降圧することができる。
【0030】
これにより、スイッチング回路1では、入力電圧Vinが閾値を超えて、パルススキップが発生するような場合であっても、パルススキップを抑制することができるので、安定した出力電圧Voutを供給することができる。
【0031】
次に、
図3を用いて、スイッチング回路1の制御方法の処理フローについて説明する。
図3は、スイッチング回路1の制御方法の処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理手順は、スイッチング回路1が起動している期間において監視部20によって繰り返し実行される。
【0032】
図3に示すように、スイッチング回路1は、入力電圧Vinが閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS101)。スイッチング回路1は、入力電圧Vinが閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS101;Yes)、MOSスイッチ13をオンにし(ステップS102)、処理を終了する。
【0033】
また、スイッチング回路1は、入力電圧Vinが閾値以下であると判定した場合(ステップS101;No)、MOSスイッチ13をオフにし(ステップS103)、処理を終了する。
【0034】
上述したように、第1の実施形態に係るスイッチング回路1は、HiサイドMOS11とLoサイドMOS13とを同期して入力電圧を所定の出力電圧まで降圧する同期整流降圧型のスイッチング回路であって、LoサイドMOS12のゲートをグランドにショートするMOSスイッチ13と、入力電圧Vinを監視し、入力電圧Vinの状態に応じてMOSスイッチのオンオフを切り替える監視部20とを備える。したがって、第1の実施形態に係るスイッチング回路1によれば、安定した出力電圧Voutを供給することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
ところで、上述の実施形態では、LoサイドMOS12のボディダイオードに応じたサージ電圧Vfによって、オンDutyを増加させることとした。しかしながら、たとえば、入力電圧Vinがさらに大きい場合など、さらに短いオンDutyが求められる場合も想定される。
【0036】
そこで、第2の実施形態に係るスイッチング回路は、ツェナーダイオードによって、サージ電圧をかさ上げすることとした。以下、
図4を用いて、第2の実施形態に係るスイッチング回路について説明する。
図4は、第2の実施形態に係るスイッチング回路の回路図である。なお、以下では、既に説明した部分は、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0037】
図4に示すように、第2の実施形態に係るスイッチング回路100は、LoサイドMOS12とグランドとの間にツェナーダイオードDを備え、MOSスイッチ13はツェナーダイオードDに並列接続される。
【0038】
図4に示すように、ツェナーダイオードDは、アノードがLoサイドMOS12と接続し、カソードがグランドに接続される。MOSスイッチ13がオフである場合には、ツェナーダイオードDを通過する還流経路が形成されるので、ツェナーダイオードDの電圧特性に応じたサージ電圧Vzが発生する。また、MOSスイッチ13がオンである場合には、MOSスイッチ13を通過する還流経路が形成されるので、サージ電圧Vzは発生しない。
【0039】
そのため、監視部20は、入力電圧Vinが閾値を下回る場合に、MOSスイッチ13に対してゲート電圧を入力し、入力電圧Vinが閾値を超える場合には、MOSスイッチ13に対してゲート電圧を入力しないことになる。
【0040】
ここで、第2の実施形態に係るスイッチング回路100は、要求されるオンDutyに応じて任意の電圧特性を有するツェナーダイオードDを用いることができる。そのため、第2の実施形態に係るスイッチング回路100は、ツェナーダイオードDによってオンDutyの最小値を任意に変更することができる。
【0041】
つまり、第2の実施形態に係るスイッチング回路100は、入力電圧Vinに対する許容範囲を第1の実施形態に係るスイッチング回路1に比べて拡張することができる。
【0042】
このように、第2の実施形態に係るスイッチング回路100は、HiサイドMOS11とLoサイドMOS12とを同期して入力電圧を所定の出力電圧まで降圧する同期整流降圧型のスイッチング回路であって、LoサイドMOS12のソースとグランドとの間にLoサイドMOS12と直列に接続されたツェナーダイオードDと、ツェナーダイオードDと並列に接続され、LoサイドMOS12とツェナーダイオードDとの接続状態を切り替えるMOSスイッチ13と、入力電圧Vinを監視し、入力電圧Vinの状態に応じてMOSスイッチ13のオンオフを切り替える監視部20とを備える。したがって、第2の実施形態に係るスイッチング回路100によれば、安定した出力電圧Voutを供給することができる。
【0043】
ところで、上述した実施形態では、スイッチング回路1、100がそれぞれ車載用のスイッチング回路であることを前提として説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、各種電化製品など、任意の製品にスイッチング回路1、100を搭載するようにしてもよい。
【0044】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1、100 スイッチング回路
10 信号生成部
11 HiサイドMOS
12 LoサイドMOS
13 MOSスイッチ
20 監視部
D ツェナーダイオード