(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054831
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】接合方法、接合体及び接合システム
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
B23K20/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140029
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022161259
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人溶接学会 2023年度秋季全国大会 業界セッション「自動車(FSSW/FSW)」の講演概要、掲載年月日:2023年8月14日、ウェブサイトのアドレス:https://jweld.jp/tournament/ https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jwstaikai/list/-char/ja
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真三樹
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA22
4E167BF15
(57)【要約】
【課題】被接合部材に対して、液体の流路を構成するための接合部材を容易に接合することができ、高い水密性を保持することができる接合方法を提供する。
【解決手段】まず、一対の主面を有する板材(被接合部材)11に対して、第1穴12を設ける。次に、軸部22と、軸部22から円周方向外方に延出するフランジ部21と、軸部22に軸方向に貫通する第2穴23と、を有するリベット(接合部材)20を、第1穴12と第2穴23との位置を合わせるように、フランジ部21と板材11を接触させて配置する。その後、接合用ツール30を用いて、フランジ部21を板材11の一方の主面に押し付けるとともに、接合用ツール30とフランジ部21との間に摩擦熱を発生させ、リベット20と板材11とを接合する。接合する工程において、リベット20と板材11とが接触している領域のうち、第1穴12を囲むように接合部50を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の主面を有する被接合部材に対して、前記一対の主面を貫通する第1穴を設ける工程と、
軸部と、前記軸部から円周方向外方に延出するフランジ部と、前記軸部に軸方向に貫通する第2穴と、を有する接合部材を、前記第1穴の位置と前記第2穴の位置とを合わせるように、前記フランジ部と前記被接合部材の一方の主面とを接触させて配置する配置工程と、
接合用ツールを用いて、前記フランジ部を前記被接合部材の前記一方の主面に押し付けるとともに、前記接合用ツールと前記フランジ部との間に摩擦熱を発生させ、前記接合部材と前記被接合部材とを接合する接合工程と、を有し、
前記接合工程において、前記接合部材と前記被接合部材とが接触している領域のうち、前記第1穴を囲むように接合部を形成することを特徴とする、接合方法。
【請求項2】
前記配置工程において、前記軸部を前記第1穴に挿入する工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記接合工程において、さらに、前記接合部材と前記被接合部材との間に摩擦熱を発生させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記接合用ツールは、軸を中心として円周方向に回転する回転部を有し、前記接合工程において、前記回転部を回転させつつ、前記フランジ部から前記被接合部材の方向に向けて押し付けることを特徴とする、請求項1又は2に記載の接合方法。
【請求項5】
前記配置工程は、空洞部を有する支持台を使用し、前記支持台の前記空洞部と、前記被接合部材の第1穴と、前記接合部材の第2穴と、の位置を合わせて、前記被接合部材及び前記接合部材を前記支持台で支持する支持工程を有し、
前記支持台における前記空洞部を構成する内壁面は、前記接合部材の前記軸部を挿入可能な内径を有し、
前記支持工程において、前記内壁面のうち、前記被接合部材側における領域と、前記接合部材の軸部との間に、周方向に空隙部が形成されるように、前記軸部を、前記第1穴を介して前記空洞部に挿入することを特徴とする、請求項1に記載の接合方法。
【請求項6】
前記支持台の前記内壁面は、前記支持台と前記被接合部材との接触面から離隔するにつれて内径が小さくなるテーパ形状の切欠きを有することを特徴とする、請求項5に記載の接合方法。
【請求項7】
前記配置工程は、空洞部を有する支持台と、前記空洞部内に配置され、前記軸部の位置を制御する位置制御部材とを使用し、前記支持台の前記空洞部と、前記被接合部材の第1穴と、前記接合部材の第2穴と、の位置を合わせて、前記被接合部材及び前記接合部材を前記支持台で支持する支持工程を有し、
前記支持工程において、前記空洞部内に前記軸部の位置を制御する位置制御部材を配置した後に、前記軸部を、前記第1穴を介して前記空洞部に挿入し、
前記接合工程において、前記位置制御部材により、前記軸部が前記フランジ部側に押圧されることを特徴とする、請求項1に記載の接合方法。
【請求項8】
前記位置制御部材は、前記接合工程において、前記フランジ部を前記被接合部材の前記一方の主面に押し付けるとともに、前記接合用ツールと前記フランジ部との間に摩擦熱を発生させ、前記軸部が前記空洞部の内部に向かって移動した場合に、前記軸部に対して前記フランジ部側に反発力を与えるものであることを特徴とする、請求項7に記載の接合方法。
【請求項9】
前記位置制御部材は、ばねであることを特徴とする、請求項8に記載の接合方法。
【請求項10】
前記接合用ツールの前記回転部は、円柱形状の円柱部と、前記円柱部の先端面に設けられ、前記円柱部と同一の軸中心を有する突起部と、を有し、
前記突起部は、前記第2穴に嵌合する外径を有するものであり、
前記接合工程において、前記接合部材の前記第2穴に前記突起部を挿入しつつ、前記接合用ツールを用いて、前記フランジ部を前記被接合部材の前記一方の主面に押し付けることを特徴とする、請求項4に記載の接合方法。
【請求項11】
前記接合用ツールの前記回転部は、円柱形状の円柱部と、前記円柱部の先端面に設けられ、前記円柱部と同一の軸中心を有する突起部と、を有し、
前記突起部の先端側の外径は、前記接合部材の前記第2穴の内径よりも小さく、前記突起部の前記円柱部側の外径は、前記接合部材の前記第2穴の内径と等しいか又は前記第2穴の内径よりも大きいものであり、
前記接合工程において、前記接合部材の前記第2穴に前記突起部を挿入しつつ、前記接合用ツールを用いて、前記フランジ部を前記被接合部材の前記一方の主面に押し付けることを特徴とする、請求項4に記載の接合方法。
【請求項12】
一対の主面と、前記一対の主面を貫通する第1穴と、を有する被接合部材と、
軸部と、前記軸部から円周方向外方に延出するフランジ部と、前記軸部に軸方向に貫通する第2穴と、を有する接合部材と、が接合されてなる接合体であって、
前記第2穴、又は、前記第1穴及び前記第2穴により構成された貫通穴を有し、
前記軸部は、前記一対の主面のうち、少なくとも一方の主面から突出し、
前記接合部材と前記被接合部材とが接触している領域のうち、前記第1穴を囲むように接合部が形成されており、前記接合部は、前記接合部材と前記被接合部材とが攪拌されることにより形成されたものであることを特徴とする、接合体。
【請求項13】
前記フランジ部は、前記接合部によって、前記一対の主面のうち一方の主面に接合されていることを特徴とする、請求項12に記載の接合体。
【請求項14】
前記被接合部材は、前記フランジ部側の主面と前記第1穴を構成する内側面とにより構成される角部を有し、前記接合部材は、前記フランジ部と前記軸部との間に隅部を有するものであり、
前記軸部が前記第1穴に挿入されており、
前記角部と前記隅部とが前記接合部によって接合されていることを特徴とする、請求項13に記載の接合体。
【請求項15】
前記被接合部材における前記フランジ部側に対して反対側の主面と、前記軸部の外周面との間に、前記軸部の周方向に沿って形成された傾斜面を有することを特徴とする、請求項14に記載の接合体。
【請求項16】
前記被接合部材は、金属製又は樹脂製であることを特徴とする、請求項12~15のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項17】
前記接合部材と前記被接合部材とは、同一の材料又は互いに異なる材料により構成されることを特徴とする、請求項12~15のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項18】
前記被接合部材は、板材及び中空型材のいずれか一方であることを特徴とする、請求項12~15のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項19】
前記接合部材は、リベット及び配管のいずれか一方であることを特徴とする、請求項12~15のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項20】
一対の主面と、前記一対の主面を貫通する第1穴と、を有する被接合部材と、
軸部と、前記軸部から円周方向外方に延出するフランジ部と、前記軸部に軸方向に貫通する第2穴と、を有する接合部材と、を、
前記第1穴の位置と前記第2穴の位置とを合わせるように、前記フランジ部と前記被接合部材の一方の主面とを接触させて配置し、摩擦熱により接合するための接合システムであって、
前記フランジ部を前記被接合部材の前記一方の主面に押し付けるとともに、前記接合部材との間に摩擦熱を発生させる接合用ツールと、
少なくとも前記接合用ツールにより前記フランジ部を前記一方の主面に押し付ける領域に対して、前記被接合部材の他方の主面側から支持する支持台と、
を有し、
前記接合用ツールは、軸を中心として円周方向に回転する回転部を有し、前記回転部を回転させつつ、前記フランジ部から前記被接合部材の方向に向けて押し付けることにより前記摩擦熱を発生させて、前記接合部材と前記被接合部材とを接合するものであることを特徴とする、接合システム。
【請求項21】
前記支持台は空洞部を有し、
前記空洞部を構成する内壁面のうち、前記被接合部材側における領域と、前記接合部材の軸部との間に、周方向に空隙部が形成されるように、前記軸部を、前記第1穴を介して前記空洞部に挿入した後に、摩擦熱により、前記接合部材と前記被接合部材とを接合することを特徴とする、請求項20に記載の接合システム。
【請求項22】
前記支持台の前記内壁面は、前記支持台と前記被接合部材との接触面から離隔するにつれて内径が小さくなるテーパ形状の切欠きを有することを特徴とする、請求項21に記載の接合システム。
【請求項23】
前記支持台は、空洞部と、前記空洞部内に配置され、前記軸部の位置を制御する位置制御部材とを有し、
前記軸部を、前記第1穴を介して前記空洞部に挿入した後に、前記接合用ツールによって、前記フランジ部を前記被接合部材の方向に向けて押し付けた際に、前記位置制御部材により、前記軸部が前記フランジ部側に押圧されることを特徴とする、請求項20に記載の接合システム。
【請求項24】
前記位置制御部材は、前記軸部が前記空洞部の内部に向かって移動した場合に、前記軸部に対して前記フランジ部側に反発力を与えるものであることを特徴とする、請求項23に記載の接合システム。
【請求項25】
前記位置制御部材は、ばねであることを特徴とする、請求項24に記載の接合システム。
【請求項26】
前記接合用ツールの前記回転部は、円柱形状の円柱部と、前記円柱部の先端面に設けられ、前記円柱部と同一の軸中心を有する突起部と、を有し、前記突起部は、前記接合部材の前記第2穴に嵌合する外径を有することを特徴とする、請求項20に記載の接合システム。
【請求項27】
前記接合用ツールの前記回転部は、円柱形状の円柱部と、前記円柱部の先端面に設けられ、前記円柱部と同一の軸中心を有する突起部と、を有し、
前記突起部の先端側の外径は、前記接合部材の前記第2穴の内径よりも小さく、前記突起部の前記円柱部側の外径は、前記接合部材の前記第2穴の内径と等しいか又は前記第2穴の内径よりも大きいことを特徴とする、請求項20に記載の接合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦熱により接合部材を被接合部材に接合する接合方法、該接合方法により得られる接合体、及び該接合方法により接合部材と被接合部材とを接合するための接合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、2つの部材を接合する方法としては、溶接による接合、機械的締結による接合、接着による接合の他に、摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)が挙げられる。摩擦撹拌接合法には、回転する攪拌ピンを平面状に移動させて、線状の接合部を形成する方法と、回転する攪拌ピンの移動を上下方向のみとして、重ねた材料に挿入した後、抜去して、点状の接合部を形成する方法がある。点状の接合部を形成する方法は、一般的に、FSJ(Friction Spot Joining)、FSSW(Friction Stir Spot Welding)とよばれる。線状及び点状のいずれの接合部を形成する方法においても、ツールと部材間の摩擦および材料の塑性流動による入熱と攪拌により、部材同士が接合される。
【0003】
また、摩擦熱を利用する他の接合方法として、摩擦圧接法も挙げられる。摩擦圧接法を利用した技術として、例えば、特許文献1には、回転摩擦圧接によって第1の物体と第2の物体とを接合物体を介して接合する接合方法が提案されている。
【0004】
自動車や電車等の輸送機の分野においても、種々の接合方法により接合された接合部材が搭載されている。このような接合部材について、燃費改善及びそれに伴うCO2削減効果や、操舵性の向上などを目的として、軽量化に対する要求がより一層高まっている。上記特許文献1に記載の回転摩擦圧接による接合方法は、高強度の接合を得ることができるが、大規模な鋼材の接合に適用されるものであり、軽量化を目的とした部材の溶接に使用することは困難である。
【0005】
そこで、接合部材の軽量化を実現するための手段として、薄い金属シートやパネルを使用して部材を製造するための方法が検討されている。例えば、非特許文献1には、エレメントとベースプレートとの間の回転摩擦によって接合部が塑性変形し、これにより、エレメントヘッドとベースプレートの間にカバープレートを固定する方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、高いトルク抵抗及び引き抜き抵抗を有し、変形可能な金属シートに取り付けることができるピアスナットが提案されている。さらに、特許文献3には、被取付部材に簡単に締結することができるブラインドナットも開示されている。ブラインドナットとは、薄板に対してねじ穴を設けることができるナットであるため、ブラインドナットを利用することにより、接合部材の薄肉化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-111128号公報
【特許文献2】特表2009-534612号公報
【特許文献3】特開2003-301828号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“EJOT-Multi-material-and-lightweight-design-Brochure-07.18”、[online]、EJOT Gmbh & Co.KG、[令和4年10月5日検索]、インターネット<https://www.ejot.co.jp/medias/sys_master/Industry_Flyer/Industry_Flyer/h24/h23/9051738931230/EJOT-Multi-material-and-lightweight-design-Brochure-07.18.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、電気自動車(EV:Electric Vehicle)の分野においても、軽量化が進められており、例えば、電気自動車に搭載される電池パックを冷却させるための冷却流路についても、薄肉化するための種々の検討がなされている。
【0010】
しかしながら、薄板に冷却流路を構成するための管状部材を接合する場合に、薄板と管状部材との水密性が低いと、冷却液が漏出して電池の短絡等を引き起こす可能性がある。上記非特許文献1に記載の接合方法は、2枚のプレート状の部材を接合することができるが、管状部材の接合に適用することが困難である。
また、上記特許文献2に記載のピアスナット、及び特許文献3に記載のブラインドナットを利用すると、薄板に管状部材を接合することはできるが、高い水密性を得ることができない。
【0011】
さらに、ピアスナットを使用した接合方法は、板厚が薄くなると、板厚に対するかしめ深さの割合が大きくなることにより、強度が低下しやすい。また、ゴム付きのブラインドナットを使用すると、水密性が保持されるが、ゴムの劣化によって冷却液が漏出するおそれがある。さらに、ゴムのように、配管や板材と異なる材料が使用された場合に、リサイクルの際に異なる材料を分解することは労力を要するため、リサイクル性が悪くなる。
【0012】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、被接合部材に対して、液体の流路を構成するための接合部材を容易に接合することができ、高い水密性を保持することができる接合方法、該接合方法により得られる接合体、及び該接合方法により接合するための接合システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、接合方法に係る下記(1)の構成により達成される。
【0014】
(1) 一対の主面を有する被接合部材に対して、上記一対の主面を貫通する第1穴を設ける工程と、
軸部と、上記軸部から円周方向外方に延出するフランジ部と、上記軸部に軸方向に貫通する第2穴と、を有する接合部材を、上記第1穴の位置と上記第2穴の位置とを合わせるように、上記フランジ部と上記被接合部材の一方の主面とを接触させて配置する配置工程と、
接合用ツールを用いて、上記フランジ部を上記被接合部材の上記一方の主面に押し付けるとともに、上記接合用ツールと上記フランジ部との間に摩擦熱を発生させ、上記接合部材と上記被接合部材とを接合する接合工程と、を有し、
上記接合工程において、上記接合部材と上記被接合部材とが接触している領域のうち、上記第1穴を囲むように接合部を形成することを特徴とする、接合方法。
【0015】
また、接合方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(2)~(11)に関する。
【0016】
(2) 上記配置工程において、上記軸部を上記第1穴に挿入する工程を有することを特徴とする、(1)に記載の接合方法。
【0017】
(3) 上記接合工程において、さらに、上記接合部材と上記被接合部材との間に摩擦熱を発生させることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の接合方法。
【0018】
(4) 上記接合用ツールは、軸を中心として円周方向に回転する回転部を有し、上記接合工程において、上記回転部を回転させつつ、上記フランジ部から上記被接合部材の方向に向けて押し付けることを特徴とする、(1)~(3)のいずれか1つに記載の接合方法。
【0019】
(5) 上記配置工程は、空洞部を有する支持台を使用し、上記支持台の上記空洞部と、上記被接合部材の第1穴と、上記接合部材の第2穴と、の位置を合わせて、上記被接合部材及び上記接合部材を上記支持台で支持する支持工程を有し、
上記支持台における上記空洞部を構成する内壁面は、上記接合部材の上記軸部を挿入可能な内径を有し、
上記支持工程において、上記内壁面のうち、上記被接合部材側における領域と、上記接合部材の軸部との間に、周方向に空隙部が形成されるように、上記軸部を、上記第1穴を介して上記空洞部に挿入することを特徴とする、(1)~(4)のいずれか1つに記載の接合方法。
【0020】
(6) 上記支持台の上記内壁面は、上記支持台と上記被接合部材との接触面から離隔するにつれて内径が小さくなるテーパ形状の切欠きを有することを特徴とする、(5)に記載の接合方法。
【0021】
(7) 上記配置工程は、空洞部を有する支持台と、上記空洞部内に配置され、上記軸部の位置を制御する位置制御部材とを使用し、上記支持台の上記空洞部と、上記被接合部材の第1穴と、上記接合部材の第2穴と、の位置を合わせて、上記被接合部材及び上記接合部材を上記支持台で支持する支持工程を有し、
上記支持工程において、上記空洞部内に上記軸部の位置を制御する位置制御部材を配置した後に、上記軸部を、上記第1穴を介して上記空洞部に挿入し、
上記接合工程において、上記位置制御部材により、上記軸部が上記フランジ部側に押圧されることを特徴とする、(1)~(6)のいずれか1つに記載の接合方法。
【0022】
(8) 上記位置制御部材は、上記接合工程において、上記フランジ部を上記被接合部材の上記一方の主面に押し付けるとともに、上記接合用ツールと上記フランジ部との間に摩擦熱を発生させ、上記軸部が上記空洞部の内部に向かって移動した場合に、上記軸部に対して上記フランジ部側に反発力を与えるものであることを特徴とする、(7)に記載の接合方法。
【0023】
(9) 上記位置制御部材は、ばねであることを特徴とする、(8)に記載の接合方法。
【0024】
(10) 上記接合用ツールの上記回転部は、円柱形状の円柱部と、上記円柱部の先端面に設けられ、上記円柱部と同一の軸中心を有する突起部と、を有し、
上記突起部は、上記第2穴に嵌合する外径を有するものであり、
上記接合工程において、上記接合部材の上記第2穴に上記突起部を挿入しつつ、上記接合用ツールを用いて、上記フランジ部を上記被接合部材の上記一方の主面に押し付けることを特徴とする、(4)に記載の接合方法。
【0025】
(11) 上記接合用ツールの上記回転部は、円柱形状の円柱部と、上記円柱部の先端面に設けられ、上記円柱部と同一の軸中心を有する突起部と、を有し、
上記突起部の先端側の外径は、上記接合部材の上記第2穴の内径よりも小さく、上記突起部の上記円柱部側の外径は、上記接合部材の上記第2穴の内径と等しいか又は上記第2穴の内径よりも大きいものであり、
上記接合工程において、上記接合部材の上記第2穴に上記突起部を挿入しつつ、上記接合用ツールを用いて、上記フランジ部を上記被接合部材の上記一方の主面に押し付けることを特徴とする、(4)に記載の接合方法。
【0026】
また、本発明の上記目的は、接合体に係る下記(12)の構成により達成される。
【0027】
(12) 一対の主面と、上記一対の主面を貫通する第1穴と、を有する被接合部材と、
軸部と、上記軸部から円周方向外方に延出するフランジ部と、上記軸部に軸方向に貫通する第2穴と、を有する接合部材と、が接合されてなる接合体であって、
上記第2穴、又は、上記第1穴及び上記第2穴により構成された貫通穴を有し、
上記軸部は、上記一対の主面のうち、少なくとも一方の主面から突出し、
上記接合部材と上記被接合部材とが接触している領域のうち、上記第1穴を囲むように、接合部が形成されており、上記接合部は、上記接合部材と上記被接合部材とが攪拌されることにより形成されたものであることを特徴とする、接合体。
【0028】
また、接合体に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(13)~(19)に関する。
【0029】
(13) 上記フランジ部は、上記接合部によって、上記一対の主面のうち一方の主面に接合されていることを特徴とする、(12)に記載の接合体。
【0030】
(14) 上記被接合部材は、上記フランジ部側の主面と上記第1穴を構成する内側面とにより構成される角部を有し、上記接合部材は、上記フランジ部と上記軸部との間に隅部を有するものであり、
上記軸部が上記第1穴に挿入されており、
上記角部と上記隅部とが上記接合部によって接合されていることを特徴とする、(12)又は(13)に記載の接合体。
【0031】
(15) 上記被接合部材における上記フランジ部側に対して反対側の主面と、上記軸部の外周面との間に、上記軸部の周方向に沿って形成された傾斜面を有することを特徴とする、(14)に記載の接合体。
【0032】
(16) 上記被接合部材は、金属製又は樹脂製であることを特徴とする、(12)~(15)のいずれか1つに記載の接合体。
【0033】
(17) 上記接合部材と上記被接合部材とは、同一の材料又は互いに異なる材料により構成されることを特徴とする、(12)~(16)のいずれか1つに記載の接合体。
【0034】
(18) 上記被接合部材は、板材及び中空型材のいずれか一方であることを特徴とする、(12)~(17)のいずれか1つに記載の接合体。
【0035】
(19) 上記接合部材は、リベット及び配管のいずれか一方であることを特徴とする、(12)~(18)のいずれか1つに記載の接合体。
【0036】
また、本発明の上記目的は、接合システムに係る下記(20)の構成により達成される。
【0037】
(20) 一対の主面と、上記一対の主面を貫通する第1穴と、を有する被接合部材と、
軸部と、上記軸部から円周方向外方に延出するフランジ部と、上記軸部に軸方向に貫通する第2穴と、を有する接合部材と、を、
上記第1穴の位置と上記第2穴の位置とを合わせるように、上記フランジ部と上記被接合部材の一方の主面とを接触させて配置し、摩擦熱により接合するための接合システムであって、
上記フランジ部を上記被接合部材の上記一方の主面に押し付けるとともに、上記接合部材との間に摩擦熱を発生させる接合用ツールと、
少なくとも上記接合用ツールにより上記フランジ部を上記一方の主面に押し付ける領域に対して、上記被接合部材の他方の主面側から支持する支持台と、
を有し、
上記接合用ツールは、軸を中心として円周方向に回転する回転部を有し、上記回転部を回転させつつ、上記フランジ部から上記被接合部材の方向に向けて押し付けることにより上記摩擦熱を発生させて、上記接合部材と上記被接合部材とを接合するものであることを特徴とする、接合システム。
【0038】
また、接合システムに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(21)~(27)に関する。
【0039】
(21) 上記支持台は空洞部を有し、
上記空洞部を構成する内壁面のうち、上記被接合部材側における領域と、上記接合部材の軸部との間に、周方向に空隙部が形成されるように、上記軸部を、上記第1穴を介して上記空洞部に挿入した後に、摩擦熱により、上記接合部材と上記被接合部材とを接合することを特徴とする、(20)に記載の接合システム。
【0040】
(22) 上記支持台の上記内壁面は、上記支持台と上記被接合部材との接触面から離隔するにつれて内径が小さくなるテーパ形状の切欠きを有することを特徴とする、(21)に記載の接合システム。
【0041】
(23) 上記支持台は、空洞部と、上記空洞部内に配置され、上記軸部の位置を制御する位置制御部材とを有し、
上記軸部を、上記第1穴を介して上記空洞部に挿入した後に、上記接合用ツールによって、上記フランジ部を上記被接合部材の方向に向けて押し付けた際に、上記位置制御部材により、上記軸部が上記フランジ部側に押圧されることを特徴とする、(20)~(22)のいずれか1つに記載の接合システム。
【0042】
(24) 上記位置制御部材は、上記軸部が上記空洞部の内部に向かって移動した場合に、上記軸部に対して上記フランジ部側に反発力を与えるものであることを特徴とする、(23)に記載の接合システム。
【0043】
(25) 上記位置制御部材は、ばねであることを特徴とする、(24)に記載の接合システム。
【0044】
(26) 上記接合用ツールの上記回転部は、円柱形状の円柱部と、上記円柱部の先端面に設けられ、上記円柱部と同一の軸中心を有する突起部と、を有し、上記突起部は、上記接合部材の上記第2穴に嵌合する外径を有することを特徴とする、(20)~(25)のいずれか1つに記載の接合システム。
【0045】
(27) 上記接合用ツールの上記回転部は、円柱形状の円柱部と、上記円柱部の先端面に設けられ、上記円柱部と同一の軸中心を有する突起部と、を有し、
上記突起部の先端側の外径は、上記接合部材の上記第2穴の内径よりも小さく、上記突起部の上記円柱部側の外径は、上記接合部材の上記第2穴の内径と等しいか又は上記第2穴の内径よりも大きいことを特徴とする、(20)~(25)のいずれか1つに記載の接合システム。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、被接合部材に対して、液体の流路を構成するための接合部材を容易に接合することができ、高い水密性を保持することができる接合方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記接合方法により得られ、高い水密性を有する接合体を提供することができる。さらに、本発明によれば、上記接合方法により被接合部材と接合部材とを接合し、高い水密性を有する接合体を得るための接合システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る接合方法を工程順に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2実施形態に係る接合方法において使用した支持台を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る接合方法において、
図1に示すStep4を示す模式的断面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る接合方法において、
図1に示すStep6を示す模式的断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施形態に係る接合方法において使用した支持台及び位置制御部材を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る接合方法において、
図1に示すStep6を示す模式的断面図である。
【
図7】
図7は、接合用ツールの突起部の外径が、リベットの第2穴の内径よりも小さい場合の接合時の様子について示す模式的断面図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の第4実施形態に係る接合方法を示す模式的断面図である。
【
図8B】
図8Bは、
図8Aに示す第4実施形態に係る接合方法の変形例を示す模式的断面図である。
【
図9】
図9は、
図8Bに示す接合方法を使用した場合の、第2穴の形状を示す模式的断面図である。
【
図10A】
図10Aは、本発明の第1実施形態に係る接合体を裏面側から示す斜視図である。
【
図10B】
図10Bは、本発明の第1実施形態に係る接合体を上面側から示す斜視図である。
【
図11A】
図11Aは、リベットの代わりに配管を用いた接合体の例を示す斜視図である。
【
図11B】
図11Bは、板材の代わりに中空型材を用いた接合体の例を示す斜視図である。
【
図11C】
図11Cは、接合部材としてねじ付きリベットを用いた接合体の例を示す図である。
【
図12】
図12は、水密性の評価方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、接合体No.1の断面を示す図面代用写真である。
【
図14】
図14は、接合体No.2の断面を示す図面代用写真である。
【
図15】
図15は、接合体No.3の断面を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態に係る接合方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0049】
[接合方法]
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る接合方法を工程順に示す断面図である。
【0050】
(Step1)
まず、板材(被接合部材)11と、後述するリベット(接合部材)20とを準備する。板材11は、板厚に直交する一対の主面11a、11bを有するものである。また、リベット20は、軸部22と、この軸部22の一端部から円周方向外方に延出するフランジ部21と、軸部22に軸方向に貫通する第2穴23と、を有する。さらに、リベット20は、フランジ部21と軸部22との間に、隅部20aが形成されている((Step3)参照)。
【0051】
(Step2)
次に、板材11に、主面11a、11bを貫通するように第1穴12を設ける。これにより、板材11には、一方の主面11aと第1穴12を構成する内側面とにより角部11cが形成される。なお、第1穴12の直径は、リベット20の軸部22の外径よりも大きく、リベット20のフランジ部21の外径よりも小さくなるように設計する。
【0052】
(Step3)
その後、第1穴12の位置と第2穴23の位置とを合わせるように、板材11にリベット20を配置する。具体的には、板材11の一方の主面11a側から、リベット20の軸部22を第1穴12に挿入する(配置工程)。第1実施形態においては、板材11の第1穴12の直径を、軸部22の外径に整合するように設計しているため、フランジ部21が板材11の一方の主面11aに接触するまで軸部22を第1穴12に挿入すると、板材11の角部11cと、リベット20の隅部20aとが接触する。
【0053】
(Step4)
その後、板材11の下に支持台40を配置し、板材11の他方の主面11b側を支持する。支持台40の配置は、Step3のリベット20を配置する工程の前に実施してもよい。その後、接合用ツール30をフランジ部21の上部から板材11の一方の主面11aに向かって押し付ける。接合用ツール30は、軸を中心として円周方向に回転する円柱形状の円柱部31を有する。第1実施形態においては、接合用ツール30として摩擦撹拌接合用のツールを使用しているため、円柱部31の先端面には、円柱部31と同一の軸中心を有する突起部32が設けられており、円柱部31及び突起部32により回転部を構成している。なお、突起部32の直径は、リベット20の第2穴23よりも小さいため、突起部32をリベット20の第2穴23に挿入することにより、円柱部31における円環状の先端面を、ずれることなくフランジ部21に押し付けることができる。
【0054】
その後、接合用ツール30の回転部を回転させることにより、接合用ツール30の円柱部31とフランジ部21の上面との間に摩擦熱を発生させる。なお、回転の初期においては、円柱部31の回転に伴って、リベット20も回転することがある。この場合に、リベット20と板材11の一方の主面11aとの間にも摩擦熱が発生する。なお、第1実施形態においては、板材11の第1穴12と同程度の径を有する空洞部41が形成された支持台40を使用し、空洞部41にリベット20の軸部22が挿入されるように支持台40を配置しているが、支持台40の形状は特に限定されない。少なくとも接合用ツール30によってフランジ部21を一方の主面11a側に押し付ける領域に対して、板材11の他方の主面11b側から支持するように支持台40を配置すれば、板材11を変形させることなく、効率よく摩擦熱を発生させることができる。
【0055】
(Step5)
引き続き、接合用ツール30の回転部を回転させつつ、フランジ部21に向けて押し付けると、Step4において発生した摩擦熱により、フランジ部21が高温となって軟化し、その厚さが薄くなるとともに、外径が拡がる。また、フランジ部21は高温となるため、板材11の一方の主面11aの一部も高温となって軟化し、フランジ部21と板材11との接合部50が形成される(接合工程)。
【0056】
(Step6)
リベット20と板材11の一方の主面11aとが接触している領域のうち、第1穴12を囲む円環状の領域に接合部50が確実に形成された後、接合用ツール30の回転部の回転を停止する。
【0057】
(Step7)
その後、接合用ツール30及び支持台40を取り外す。このようにして、接合体10が製造される。
【0058】
第1実施形態に係る接合方法においては、フランジ部21を有するリベット20を使用して、フランジ部21側から摩擦熱を発生させる接合用ツール30を押し付けることにより、リベット20と板材11とを接合し、接合部50を形成する。接合部50は、リベット20と板材11の表面とが撹拌されることにより形成されたものであるとともに、第1穴12を囲む円環状の領域に形成されるため、リベット20と板材11との間において、高い水密性を保持することができる。また、かしめ等の機械的な力を付与しないため、板材11が薄板であっても強度の低下を防止することができる。さらに、水密性を確保するためのゴム等の異素材を使用する必要がないため、リサイクル性を高めることができる。
【0059】
本発明においては、接合用ツール30として、摩擦撹拌接合用ツールを使用する必要はなく、接合用ツール30と接合部材(リベット20)との間に摩擦熱を発生させることができる種々のツールを使用することができる。例えば、回転する軸(円柱部)のみを有するツールや、振動により摩擦熱を発生させるツールを用いてもよい。この場合に、回転または振動する軸をフランジ部21に押当て、フランジ部21の任意の1箇所において摩擦熱を発生させて、ツールそのものをフランジ部21に沿って周方向に移動させると、板材11の第1穴12を囲むように円環状の接合部50を形成することができる。
【0060】
また、上記Step3の配置工程において、第1穴12とリベット20の第2穴23との位置を合わせるために、リベット20の軸部22を第1穴12に挿入したが、本発明において、リベット20を配置する向きは特に限定されない。リベット20の軸部22を板材11側とは反対側の方向に向けて、第1穴12とリベット20の第2穴23との位置を合わせるように配置してもよい。このような場合に、例えば回転する軸のみを有するツールを使用すると、
図1で示す第1実施形態と同様に、板材11とリベット20とを高い水密性で接合することができる。
【0061】
なお、リベット20を、その軸部22を上方に向けて、板材11上に配置する場合に、板材11の第1穴12の内径は、フランジ部21の外径よりも小さければよく、軸部22を挿入できる大きさである必要はない。ただし、第1穴12の内径がフランジ部21の外径に近づくにしたがって、接合部50を形成可能な領域が減少して、接合が困難となる。また、第1穴12が小さすぎると、板材11とリベット20とを接合することにより得られる貫通穴が小さくなり、冷媒等の流路が狭くなってしまう。したがって、板材11の第1穴12の大きさは、リベット20のサイズを考慮して適切に設計することが好ましい。
【0062】
さらに、接合工程において、接合用ツール30の回転部の回転に伴って、リベット20も回転すると、リベット20と板材11の一方の主面11aとの間にも摩擦熱が発生するため、接合部50が形成されるまでの時間が短縮化される。ただし、後述するように、本発明においては、接合部材としてリベット20以外の部材も使用することができ、接合部材が回転されない場合もある。このような場合であっても、接合用ツール30とフランジ部21との間のみに摩擦熱を発生させることにより、接合部材と被接合部材とを接合することができる。
【0063】
<第2実施形態>
次に、第1実施形態と異なる形状を有する支持台40を用いた場合の接合方法について、第2実施形態として以下に説明する。
図2は、本発明の第2実施形態に係る接合方法において使用した支持台を示す斜視図である。
図3は、第2実施形態に係る接合方法において、
図1に示すStep4を示す模式的断面図であり、
図4は、
図1に示すStep6を示す模式的断面図である。
図2~
図4に示す第2実施形態において、
図1に示すものと同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。なお、
図4において、接合用ツール30の記載を省略している。
【0064】
図2及び
図3に示すように、第2実施形態において使用する支持台40は、第1実施形態と同様に、軸方向に延びる空洞部41が形成されており、空洞部41を構成する内壁面40bは、リベット20の軸部22を挿入可能な内径を有している。また、支持台40の内壁面40bには、支持台40と板材11との接触面から離隔するにつれて内径が小さくなるテーパ形状の切欠き40aが形成されている。(Step4)においては、支持台40の空洞部41と、板材11の第1穴12と、リベット20の第2穴23と、の位置を合わせて、板材11及びリベット20を支持台40で支持する(支持工程)。具体的には、リベット20の軸部22を、板材11の第1穴12と、支持台40の空洞部41に挿入する。なお、この支持工程は、第1実施形態における配置工程に含まれる。
【0065】
上記のとおり、第2実施形態においては、支持台40の内壁面40bに切欠き40aが形成されている。したがって、上記支持工程において、リベット20の軸部22を、第1穴12と空洞部41に挿入した際に、空洞部41を構成する支持台40の内壁面と、リベット20の軸部22の外壁面との間に、周方向に空隙部43が形成される。
【0066】
その後、(Step5)として、
図4に示すように、接合用ツール30の回転部を回転させつつ、フランジ部21に向けて押し付ける接合工程を実施する。ここで、第1実施形態に示すように、支持台40に切欠きが設けられていない場合に、接合用ツール30によってリベット20のフランジ部21が押し付けられることにより、第1穴12の周縁部は径方向の内方に延出しようとする。その結果、第1穴12の周縁部が、リベット20の軸部22の外周面の上方を押圧し、軸部22の肉厚が部分的に薄くなることがある。
【0067】
図4に示すように、第2実施形態においては、板材11の第1穴12の周縁部が、支持台40の切欠き40aに沿って湾曲するため、リベット20の軸部22の外周面への押圧力が低減する。したがって、軸部22の肉厚が減少することを抑制することができる。このため、特に軸部22の強度が要求される接合体を製造する場合に、第2実施形態に係る接合方法を好適に利用することができる。
【0068】
なお、接合用ツール30をリベット20側に押し付ける力や、フランジ部21及び板材11の厚さ等によって、第1穴12の周縁部が、リベット20の軸部22を押圧する力も変化する。したがって、切欠き40aの角度や大きさ等は、その他の種々の条件によって調整することが好ましい。
【0069】
図2~
図4に示す第2実施形態においては、支持台40と板材11との接触面から離隔するにつれて内径が小さくなるテーパ形状の切欠き40aを有する支持台40を用いる例について説明したが、支持台40の形状はこれに限定されない。接合工程において、板材11の第1穴12の周縁部が、リベット20の軸部22の外周面に対して押圧する力を低減できるような構造であればよい。すなわち、軸部22を、第1穴12を介して支持台40の空洞部41に挿入した際に、支持台40の内壁面40bのうち、板材11側(板材11の近傍)における領域と、リベット20の軸部22との間に、周方向に空隙部43が形成されていればよい。
【0070】
<第3実施形態>
次に、支持台40と、リベット20の位置を制御する位置制御部材とを使用した接合方法について、第3実施形態として以下に説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る接合方法において使用した支持台及び位置制御部材を示す斜視図である。
図6は、第3実施形態に係る接合方法において、
図1に示すStep6を示す模式的断面図である。
図5及び
図6に示す第3実施形態において、
図1に示すものと同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。なお、
図6において、接合用ツール30の記載を省略している。
【0071】
第3実施形態においては、第2実施形態と同様に、支持台40の空洞部41と、板材11の第1穴12と、リベット20の第2穴23と、の位置を合わせて、板材11及びリベット20を支持台40で支持する支持工程を有する。ただし、本実施形態では、支持台40の空洞部41にばね(位置制御部材)42を配置する。本実施形態においては、有底円筒形状の支持台40を使用し、底部にばね42を配置した後に、リベット20の軸部22を、板材11の第1穴12を介して、空洞部41に挿入する。
【0072】
その後、(Step5)として、接合用ツール30の回転部を回転させつつ、リベット20のフランジ部21に向けて押し付ける接合工程を実施する。このとき、リベット20は、接合用ツール30によって、空洞部41の内部に向かって下方に押圧される。しかし、空洞部41の底部にはばね42が配置されており、このばね42が軸部22に対してフランジ部21側に反発力を与える。したがって、リベット20は所定の位置から下がることがないように構成されている。
【0073】
上記のように構成された第3実施形態においては、リベット20のフランジ部21及び軸部22の一部が、接合用ツール30の回転部の回転によって軟化している状態で、リベット20がばね42によって上方に持ち上げられる。したがって、板材11における第1穴12の周縁部とリベット20との間の隙間に、軟化した部分が入り込むため、軸部22の肉厚が薄くなることを抑制することができる。また、第2実施形態に示すように、支持台40の空洞部41を構成する内壁面40bに切欠き40aを設けるとともに、支持台40の空洞部41にばね42等を配置する構成とすると、軸部の肉厚の減少をより一層防止することができ、軸部の強度を向上させることができる。
【0074】
なお、本発明において、リベット20の位置を制御する方法として、必ずしもばねを使用する必要はなく、リベット20が空洞部41内の所定の位置よりも内部に押圧されることを抑制することができればよい。すなわち、何らかの位置制御部材によって、軸部22がフランジ部21側に押圧されればよく、例えば、空洞部41の内部に形成された段差のようなものでもよい。また、軸部22が空洞部41の内部に向かって移動した場合に、軸部22に対して、フランジ部21側に反発力を与えるものを使用することが好ましく、例えば、金属製のばね42のように、耐熱性及び弾性を有するものであることが好ましい。
【0075】
<第4実施形態>
次に、リベット20の第2穴23に冷媒等の液体を流通させる場合に好適である接合体を製造するための接合方法について、第4実施形態として以下に説明する。
図7は、接合用ツール30の突起部32の外径が、リベット20の第2穴23の内径よりも小さい場合の接合時の様子について示す模式的断面図である。
図8Aは、本発明の第4実施形態に係る接合方法を示す模式的断面図であり、
図8Bは、
図8Aに示す第4実施形態に係る接合方法の変形例を示す模式的断面図である。さらに、
図9は、
図8Bに示す接合方法を使用した場合の、第2穴23の形状を示す模式的断面図である。
図7~
図9において、
図1に示すものと同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0076】
図7に示すように、突起部32の外径が、リベット20の第2穴23の内径よりも小さい場合に、円柱部31によって押し付けられたフランジ部21の一部が軟化すると、その一部がリベット20の軸中心方向に流れることがある。このとき、突起部32の外径が、第2穴23の外径よりも小さいと、軟化した材料は、突起部32の周囲を埋めるように移動する。その結果、接合用ツール30を取り除いた際に、リベット20の上部には突起部32の外径と同じ大きさ、すなわち、第2穴23よりも小さい穴34が形成される。したがって、得られた接合体のリベット20の部分を液体等の流路として使用する場合に、穴34によって流量が低下するおそれがある。
【0077】
図8Aに示すように、接合用ツール30の回転部は、円柱形状の円柱部31と、円柱部31の先端面に設けられ、円柱部31と同一の軸中心を有する突起部32aと、を有する。第4実施形態において、突起部32aは、第2穴23に嵌合する外径を有する。具体的には、突起部32aは、リベット20の第2穴23とほぼ同じ大きさであるか、わずかに小さい大きさであり、突起部32aが第2穴23にちょうど嵌るように形成されている。そして、接合工程において、リベット20の第2穴23に突起部32aを挿入しつつ、接合用ツール30を用いて、フランジ部21を板材11の一方の主面に押し付ける。
【0078】
また、変形例として、
図8Bに示すように、接合用ツール30の回転部が、円柱部31と、上記突起部32aとは異なる形状を有する突起部32bを有していてもよい。この場合に、突起部32bの先端側の外径Wfは、リベット20の第2穴23の内径Wsよりも小さく、突起部32bの円柱部31側の外径Wbは、リベット20の第2穴23の内径Wsと等しいか又は第2穴23の内径Wsよりも大きくする。
【0079】
上記第4実施形態に係る接合方法によると、突起部32a又は突起部32bが存在することによって、軟化したフランジ部21を構成する材料の一部が、リベット20の軸中心方向に流れることを抑制することができる。したがって、
図9に示すように、リベット20のフランジ部21側の開口部29が広く形成され、流量が低下することを防止することができる。
【0080】
[接合体]
<第1実施形態>
次に、本発明の実施形態に係る接合体について、図面を参照して具体的に説明する。
図10Aは、本発明の第1実施形態に係る接合体を裏面側から示す斜視図であり、
図10Bは、本発明の第1実施形態に係る接合体を上面側から示す斜視図である。
図10A及び
図10Bにおいて、
図1に示すものと同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0081】
図1の(Step7)、並びに
図10A及び
図10Bに示すように、本実施形態に係る接合体10は、一対の主面11a、11bを有する板材(被接合部材)11に、リベット20が接合されることにより形成されたものである。本実施形態においては、板材11の第1穴12にリベット20の軸部22が挿入され、リベット20と板材11とが接触している領域のうち、第1穴12を囲むように、撹拌による接合部50が形成されている。また、軸部22は、他方の主面11bから突出している。さらに、接合体10には、リベット20の第2穴23により、接合体10の上面側から下面側に貫通する貫通穴18が構成されている。
【0082】
なお、板材(被接合部材)11が金属製である場合に、接合部50の平均結晶粒度は、撹拌により、板材11の平均結晶粒度よりも小さくなる。平均結晶粒度は、例えば、JIS G 0551:2013の鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法に準拠して測定することができる。
【0083】
上記のように構成された接合体10においては、第1穴12を囲むように、撹拌によって生じた摩擦熱による接合部50が形成されているため、貫通穴18に冷却液等の液体を流通させた場合に、接合部50から外部に液体が漏出することを防止することができる。したがって、本実施形態に係る接合体10は、貫通穴18を液体の流路として好適に利用することができる。
【0084】
なお、本発明においては、板材11の少なくとも一方の主面から軸部22が突出しており、接合体10が貫通穴18を有していれば、板材11の第1穴12にリベット20の軸部22が挿入されている必要はない。例えば、上記接合方法の欄で説明したように、リベット20の軸部22を、板材11側とは反対側の方向に向けて、板材11とリベット20のフランジ部21とが接合されていてもよい。このような場合に、接合体には、板材11の第1穴12及びリベット20の第2穴23により貫通穴が形成される。
【0085】
接合部50が形成される領域は特に限定されず、接合部材であるリベット20と、被接合部材である板材11とが接触している領域のうち、板材11に形成された第1穴12を囲むように形成されれば、優れた水密性を得ることができる。具体的に、リベット20のフランジ部21が、接合部50によって板材11のいずれか一方の主面に接合されていてもよい。また、
図1の(Step3)で示すように、板材11が角部11cを有し、リベット20が隅部20aを有する場合に、角部11cと隅部20aとが接合部50によって接合されていてもよい。さらに、リベット20のフランジ部21及び隅部20aが、それぞれ板材11の一方の主面11a及び角部11cに接合されていてもよい。
【0086】
本発明において、接合部材としては、被接合部材に接合するためのフランジ部と、液体用の配管やホース等への接続を容易にするための軸部と、接合体の貫通穴を構成し、液体を通流させる第2穴を有していれば、詳細な形状等は限定されない。また、被接合部材の形状も限定されず、種々の形状のものを採用することができる。接合部材及び被接合部材の変形例について、図面を参照して以下に説明する。
【0087】
(変形例1)
図11Aは、リベットの代わりに配管を用いた接合体の例を示す斜視図である。接合体15は、被接合部材となる板材11と、接合部材となる配管25とが接合されたものである。配管25は、軸部24と、軸部24の一方の端部に形成されたフランジ部21とを有する。配管25の軸部24は、任意の位置で屈曲し、リベット20よりも長い形状とすることができる。このように、接合部材として、フランジ部21を有する配管25を用いた場合であっても、上記
図10A及び
図10Bに示す接合体10と同様に、優れた水密性を得ることができる。
【0088】
(変形例2)
図11Bは、板材11の代わりに中空型材を用いた接合体の例を示す斜視図である。接合体16は、被接合部材となる中空型材13と、接合部材となるリベット20とが接合されたものである。中空型材13は、断面が矩形の中空材である。また、リベット20を取り付ける所望の領域において一方の主面13a及び他方の主面13bを有し、一方の主面13aから他方の主面13bに向けて貫通する不図示の第1穴が設けられている。このように、被接合部材として中空型材13を使用した場合であっても、上記
図10A及び
図10Bに示す接合体10と同様に、優れた水密性を得ることができる。
【0089】
(変形例3)
図11Cは、接合部材としてねじ付きリベットを用いた接合体の例を示す図である。ねじ付きリベット26は、フランジ部21と軸部22とを有し、軸部22を貫通するように形成された第2穴27の内壁面には、雌ねじ加工が施されている。そして、接合体10と同様に、板材11には、ねじ付きリベット26が接合されている。ただし、本実施形態においては、板材11の上に、第2穴27と同程度のサイズの穴を有する他の板材63を、穴同士の位置が合うように重ね、板材63の上から第2穴27にボルト60を挿入している。ボルト60は外周面に雄ねじ加工が施されたねじ軸部62と頭部61とを有しており、ねじ軸部62が第2穴27に挿入されて螺合されることにより、板材11と他の板材63とがボルト60により締結された接合体17が形成されている。
【0090】
上記接合体10、15、16はいずれも、撹拌により形成される接合部が、被接合部材に設けられた第1穴を囲むように形成されているため、接合部材を利用して液体の流路を構成した場合に、優れた水密性を得ることができる。ただし、変形例3で示すように、必ずしも接合部材を利用して液体の流路を形成する必要はなく、板材11が薄板であってもフランジ部21を利用して高い接合強度が得られるため、他の部材と被接合部材とが高強度で接合された接合体17を形成することができる。
【0091】
接合部材の形状としては、上記変形例1~変形例3に示す形状の他に、軸部の軸方向両端部の間にフランジ部を有する接合部材も使用することができる。このような形状の接合部材を使用した場合に、得られる接合体は、被接合部材の一方の主面側及び他方の主面側から軸部が突出した形状となる。
【0092】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る接合体について、
図4を参照して説明する。第2実施形態に係る接合体は、上記第2実施形態に係る接合方法により得られるものである。
図4に示すように、接合体51は、板材11におけるフランジ部21と反対側の主面11bと、軸部22の外周面との間に、軸部22の周方向に沿って形成された傾斜面51aを有する。
【0093】
上述のとおり、接合体51は、内壁部に切欠き40aを有する支持台40を使用して作成されたものであり、切欠き40aの表面に沿って、傾斜面51aが形成されている。このように、傾斜面51aが形成されていると、軸部22の上方における最も肉厚が薄くなる可能性が高い領域において、軸部22の肉厚を確保することができ、第1実施形態と比較して、軸部22の強度を向上させることができる。
【0094】
なお、接合部材としては、接合用ツールとの溶着等を考慮して、金属製のものを使用することができる。一方、被接合部材を構成する材料は特に限定されず、金属製であっても樹脂製であってもよい。必要とされる性能に応じて、種々の材料を選択することができる。また、接合部材は、上記被接合部材と同一の材料により構成されていても、接合部材と被接合部材とが互いに異なる材料により構成されていてもよい。
【0095】
[接合システム]
さらに、本発明の実施形態に係る接合システムについて、具体的に説明する。本実施形態は、上記接合方法を用いて被接合部材と接合部材とを接合する接合システムであるため、
図1を参照して、本実施形態に係る接合システムを説明する。なお、
図1に記載された各部材については、詳細な説明を省略する。
【0096】
本実施形態に係る接合システムは、リベット(接合部材)20と板材(被接合部材)11とを摩擦熱により接合するためのものであり、接合用ツール30と支持台40とを有する。接合用ツール30は、軸を中心として円周方向に回転する円柱部(回転部)31を有し、円柱部31を回転させつつ、リベット20のフランジ部21側から板材11の方向に向けて押し付けることにより摩擦熱を発生させて、リベット20と板材11とを接合するものである。
【0097】
本実施形態に係る接合システムを使用し、上記本実施形態に係る接合方法でリベット20と板材11とを接合することにより、高い水密性を有する接合体を得ることができる。
【0098】
図2~
図4を用いて、上記第2実施形態に係る接合方法の欄で説明したように、支持台40は空洞部41を有し、空洞部41を構成する内壁面40bと、リベット20の軸部22との間に、周方向に空隙部43が形成されることが好ましい。したがって、本実施形態に係る接合システムは、上記空隙部43が形成されるように、軸部22を、第1穴12を介して空洞部41に挿入した後に、摩擦熱により、リベット20と板材11とを接合するものであることが好ましい。
【0099】
さらに、上記接合システムで使用する支持台40において、空洞部41を構成する内壁面40bは、支持台40とリベット20との接触面から離隔するにつれて内径が小さくなるテーパ形状の切欠き40aを有することが好ましい。
【0100】
また、
図5及び
図6を用いて、上記第3実施形態に係る接合方法の欄で説明したように、支持台40は、空洞部41と、この空洞部41内に配置され、軸部22の位置を制御する位置制御部材(ばね42)とを有することが好ましい。そして、本実施形態に係る接合システムは、軸部22を、第1穴12を介して空洞部41に挿入した後に、接合用ツール30によって、フランジ部21を板材11の方向に向けて押し付けた際に、位置制御部材により、軸部22がフランジ部21に押圧されることが好ましい。
【0101】
さらに、位置制御部材(ばね42)は、軸部22が空洞部41の内部に向かって移動した場合に、軸部22に対してフランジ部21側に反発力を与えるものであることが好ましい。
【0102】
さらにまた、
図8A及び
図8Bを用いて、上記第4実施形態に係る接合方法の欄で説明したように、接合用ツール30の回転部は、円柱形状の円柱部31と、円柱部31の先端面に設けられ、円柱部31と同一の軸中心を有する突起部32と、を有し、突起部32は、リベット20の第2穴23に嵌合する外径を有することが好ましい。また、突起部32の先端側の外径Wfは、リベット20の第2穴23の内径Wsよりも小さく、突起部32の円柱部31側の外径Wbは、リベット20の第2穴23の内径Wsと等しいか、又は第2穴23の内径Wsよりも大きいことが好ましい。
【実施例0103】
<第1実施例>
以下、本発明に係る接合方法を使用して接合体を形成し、水密性の評価を実施した。
図12は、水密性の評価方法を説明するための図である。
【0104】
(接合体の製造)
まず、アルミニウム製の板材11に設けた不図示の第1穴に、アルミニウム製のリベット20の軸部22を挿入し、リベット20のフランジ部21と板材11の一方の主面11aとを接触させて配置した。その後、接合用ツールを用いて、フランジ部21を板材11の一方の主面11aに押し付け、接合用ツールとフランジ部21との間に摩擦熱を発生させた。接合用ツールとしては、摩擦撹拌接合用ツールを利用した。このようにして、リベット20と板材11とが接触している領域のうち、第1穴を囲むように接合部を形成することにより、リベット20と板材被接合部材とを接合した。
【0105】
(水密性評価用装置への接合体の設置)
下板65の上に、円環状のゴムパッキン66を配置し、ゴムパッキン66の上に、リベット20の軸部22を上方に向けて接合体を配置した。次に、板材11の他方の主面11b上に、軸部22の外径よりも大きい穴を有する上板64を配置して、上板64の穴を介して軸部22を上方に突出させた。下板65及び上板64には、それぞれ4角付近にボルト穴65a、ボルト穴64aが形成されており、ボルト穴65aとボルト穴64aに不図示のボルトを螺合し、上板64と下板65とを締結することにより、板材11、ゴムパッキン66及び下板65に囲まれた空洞部67を形成した。
【0106】
(水密性評価試験)
軸部22の上方の開放端面に、水を送出する不図示のノズルを接続して、ノズルから矢印Aの方向に水を注入し、0.5MPaの水圧で1分間保持した。そして、このときの様子を観察することにより、水密性を評価した
【0107】
(評価結果)
上記水密性評価試験により、軸部22の第2穴23及び空洞部67の内部には水が充填され、0.5MPaの水圧が印加された状態で保持されたが、板材11とリベット20との間の接合部からの水の漏出は観察されなかった。したがって、本発明によると、水密性が優れた接合体を得ることができた。
【0108】
<第2実施例>
次に、種々の接合方法を使用して、アルミニウム製の板材11とアルミニウム製のリベット20を接合した接合体を製造し、断面写真を撮影して断面を観察するとともに、フランジ部21の近傍の軸部22の肉厚を測定した。
図13は、接合体No.1の断面を示す図面代用写真である。
図14は、接合体No.2の断面を示す図面代用写真である。
図15は、接合体No.3の断面を示す図面代用写真である。なお、
図13~
図15は、それぞれの接合体の一部を拡大して示している。
【0109】
接合体No.1は、
図8Bに示す台形状の突起部32bを有する接合用ツール30を用いて、板材11とリベット20とを接合した接合体であり、切欠きを形成していない支持台40を用いている。
図13において、破線35は、突起部32bが存在した位置を表している。接合体No.2は、
図8Bに示す台形状の突起部32bを有する接合用ツール30と、
図2~
図4に示す切欠き40aを有する支持台40を用いて、板材11とリベット20とを接合した接合体である。接合体No.3は、
図8Bに示す台形状の突起部32bを有する接合用ツール30と、
図2~
図4に示す切欠き40aを有する支持台40を使用し、支持台40の空洞部41内にばね42を配置して、板材11とリベット20とを接合した接合体である。
図14及び
図15において、破線35は、突起部32bの表面の位置を表し、破線36は、切欠き40aを有する支持台40が存在した位置を表している。なお、接合用ツール30の突起部32bは、全て同一の形状としている。
【0110】
図13~
図15に示すように、接合体No.1~接合体No.3についてはいずれも、板材11の第1穴12の周縁部、リベット20のフランジ部21、及び軸部22の上方において、金属の結晶粒が微細化していた。このことから、接合用ツール30の回転部の回転により発生した摩擦熱によって、アルミニウム製の板材11とリベット20とが軟化し、摩擦撹拌圧接されていることがわかる。
【0111】
また、
図13に示すように、接合体No.1においては、リベット20の軸部22の肉厚T0は、8.90mmであるのに対し、板材11の第1穴12の周縁部近傍における軸部22の肉厚T1は、8.49mmであった。これは、板材11の第1穴12の周縁部が、軸部22を押圧したため、接合部分以外の通常部の肉厚T0と比較して、肉厚T1が薄くなったと考えられる。これに対して、
図14に示すように、接合体No.2においては、リベット20の軸部22の肉厚T0は、接合体No.1と同様に、8.90mmであり、板材11の第1穴12の周縁部近傍における軸部22の肉厚T2は、8.87mmとなった。このように、接合体No.2において、軸部22の肉厚の低減を抑制することができた理由としては、板材11の第1穴12の周縁部が、支持台40の切欠き40aに沿って湾曲し、軸部22に対する押圧力が低減したためであると考えられる。
【0112】
さらに、
図15に示すように、接合体No.3においては、リベット20の軸部22の肉厚T0は、接合体No.1と同様に、8.90mmであり、板材11の第1穴12の周縁部近傍における軸部22の肉厚T3は、9.30mmとなった。接合体No.3においては、ばね42によってリベット20が持ち上げられており、肉厚が薄くなった領域を軟化したアルミニウムで充填するように作用している。したがって、接合体No.2と比較して、より一層軸部22の肉厚の低減を抑制することができた。