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特開2024-54840スケール本体をリニアプロファイルレールガイドのガイドレールの表面に形成するための方法、リニアエンコーダのためのスケール本体及びリニアエンコーダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054840
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】スケール本体をリニアプロファイルレールガイドのガイドレールの表面に形成するための方法、リニアエンコーダのためのスケール本体及びリニアエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
G01D5/347 110C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023166300
(22)【出願日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】22199909
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516122151
【氏名又は名称】シュネーベルガー・ホールディング・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ローガー・インファンガー
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103DA12
2F103EA15
2F103EA21
(57)【要約】
【課題】スケール本体をリニアプロファイルレールガイドのガイドレールの表面に形成するための最適化された方法を提供する。
【解決手段】ガイドレール2が、第1側面2.1及び対向する第2側面2.2を有し、スケール本体5が、前後して交互に配置されたミラー領域とマーキング領域とを有する、前記ガイドレール2の長手方向Xに延在する直線状の少なくとも1つのトラックSP1,SP2を含む。前記方法は、レーザビームを形成するためにパルス化されたレーザを提供する方法ステップと、前記ガイドレール2の前記第1側面2.1の少なくとも1つのマーキング領域に相当する第1領域B1内に微細パターンを形成することによって、前記複数のマーキング領域M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14のうちの少なくとも1つのマーキング領域を提供する方法ステップとを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケール本体(15)をリニアプロファイルレールガイド(1)のガイドレール(2)の表面に形成するための方法であって、
前記ガイドレール(2)は、第1側面(2.1)及び対向する第2側面(2.2)を有し、
前記スケール本体(15)は、前後して交互に配置された複数のミラー領域(S;S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15)と複数のマーキング領域(M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14)とを有する、前記ガイドレール(2)の長手方向(X)に延在する直線状の少なくとも1つのトラック(SP1,SP2)を含み、
前記マーキング領域のそれぞれは、前記少なくとも1つのトラック(SP1,SP2)の長手方向(X)に対して横方向に直線状に延在し、
前記方法が、
-レーザビームを形成するためのパルス化されたレーザを提供する方法ステップと、
-前記マーキング領域(M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14)のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つのマーキング領域に相当する、前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)の第1領域(B1)内に微細パターンを形成することによって、提供する方法ステップとを有し、前記方法では、
前記レーザが、連続する複数の光パルスを有するレーザビームを形成し、
前記レーザビームが、前記側面(2.1)の前記第1領域(B1、B2)へ向けられ、
複数の光パルスから成る形成された連続する光パルスのそれぞれ個々の光パルスによって、前記第1領域(B1)の1つの部分領域(TB11、TB15、TB16、TB1n、TB21、TB25、TB26、TB2n)だけが照射され、
前記第1側面(2.1)が、前記第1領域(B1)のそれぞれ個々の光パルスよって照射された部分領域(TB11、TB15、TB16、TB1n、TB21、TB25、TB26、TB2n)において、それぞれ個々の光パルスによる照射に起因して、それぞれ個々の光パルスによる照射後に、前記第1領域(B1)のそれぞれ個々の光パルスよって照射された部分領域(TB11、TB15、TB16、TB1n、TB21、TB25、TB26、TB2n)にわたって延在する第1側面(2.1)の空間変調を当該第1側面(2.1)が有するように、変化され、
前記少なくとも1つのトラックの長手方向(X)での前記第1領域(B1)のそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の空間寸法(D)は、前記少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)の長手方向(X)での前記第1領域(B1)の空間寸法(DBX)よりも小さく、前記少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)の長手方向(X)に対して横方向でのそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の空間寸法(D)は、前記少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)の長手方向(X)に対して横方向での前記第1領域(B1)の空間寸法(DBY)よりも小さく、
前記レーザビームは前記ガイドレール(2)に対して、形成された連続する複数の光パルスのうちの少なくとも複数の光パルスが、前記第1領域の、空間的に互いに分散して配置されている複数の異なる部分領域(TB11、TB15、TB16、TB1n、TB21、TB25、TB26、TB2n)を時間的に連続して照射するように、移動され、
前記照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域(TB15)ごとに、照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも2つの別の部分領域(TB16)が存在し、
前記2つの別の部分領域は、前記照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域(TB15)に対して、前記照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも2つの別の部分領域のうちの1つの部分領域(TB25)が前記照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域(TB15)に対して前記少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)の長手方向(X)にずらされているように、空間的にずらされており、
その結果として、前記照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも2つの別の部分領域のうちの1つの別の部分領域(TB25)と、前記照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域(TB15)とが重複部分(UX)を有し、
前記照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも2つの別の部分領域のうちの1つの別の部分領域(TB16)は、前記照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域(TB15)に対して、前記少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)の長手方向(X)に対して横方向にずらされており、
その結果として、前記照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも2つの別の部分領域のうちの1つの別の部分領域(TB16)と、前記照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域(TB15)とが重複部分(UY)を有し、
前記照射された複数の異なる部分領域は共に、前記第1側面(2.1)の、前記第1領域(B1)に合同である領域を形成する、当該方法。
【請求項2】
前記方法は、
-前記微細パターンをパルス状のレーザビームによって前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)に形成する前に、特に少量の材料が前記ガイドレールの前記第1側面から除去されるように、当該ガイドレールの少なくとも前記第1側面が表面処理される方法ステップと、
-前記微細パターンを前記レーザビームによって前記第1側面形成した後に、前記ガイドレールの少なくとも前記第1側面が表面洗浄される方法ステップとをさらに有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域(TB11、TB1n)と前記照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも1つの別の部分領域(TB21、TB2n)との重複部分(UX)は、前記少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)の長手方向(X)に、前記第1領域のそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の、前記少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)の長手方向(X)での空間寸法(D)の20~50%に当たる空間寸法(DUX)を有し、及び/又は
前記照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域(TB15)と前記照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも1つの別の部分領域(TB16)との重複部分(UY)は、前記少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)の長手方向(X)に対して横方向に、前記第1領域のそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の、前記少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)の長手方向(X)に対して横方向での空間寸法(D)の20~50%に当たる空間寸法(DUY)を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザは、15ナノ秒未満のパルス期間を有する光パルスによってパルス化された光ビームを形成するための短パルスレーザとして、又は20ピコ秒未満のパルス期間を有する光パルスによってパルス化された光ビームを形成するための超短パルスレーザとして構成されており、及び/又は
前記レーザのパルスパラメータ及び/又はレーザ焦点は、表面経路に沿って材料を除去することなしに又は実質的に材料を除去することなしに、前記微細パターンを前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)に形成する際に材料粗度がナノメートルの範囲で形成されるように、選択される請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記微細パターンをパルス化されたレーザビームによって前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)に形成する前に、前記ガイドレールの少なくとも当該第1側面が、研磨処理によって表面処理され、及び/又は
前記微細パターンをパルス化されたレーザビームによって前記ガイドレールの前記第1側面に形成する前に、前記ガイドレール(2)の当該第1側面(2.1)が、最大で0.3μmの平均粗さ値(Ra)、特に最大で0.1μmの平均粗さ値(Ra)を有し、さらに好ましくは約0.007μm~0.1μmの範囲の平均粗さ値(Ra)を有するように、前記ガイドレール(2)の少なくとも当該第1側面(2.1)が表面処理される請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記微細パターンをパルス化されたレーザビームによって前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)に形成する前に、前記ガイドレールの少なくとも当該第1側面が、ポリッシュディスクによって、レーザ研磨処理によって及び/又は電子的研磨処理によって表面処理される請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記微細パターンを前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)に形成した後に、前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)は、前記スケール本体(15)のマーキング領域(M;M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14)のうちの1つのマーキング領域内に、前記スケール本体(15)のミラー領域(S;S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15)のうちの1つのミラー領域内の当該第1側面(2.1)の平均粗さ値よりも10倍大きい平均粗さ値(Ra)を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記微細パターンを前記レーザビームによって前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)に形成した後に、前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)が表面洗浄され、
前記表面洗浄は、レーザ処理及び/又は振動洗浄又は前記第1側面への超音波の適用である請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザビームは、ほぼ円形のビーム束を有し、前記ビーム束が前記ガイドレールの前記第1側面において3.5μm~12μm、特に6μm~9μmの直径を有するように、特に約8μmの直径を有するように選択され、及び/又は
前記レーザは、約60kHzのパルス周波数によって作動される請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
リニアプロファイルレールガイド(1)のガイドレール(2)を含むリニアエンコーダ(11)のためのスケール本体(15)であって、前記ガイドレール(2)は、第1側面(2.1)及び対向する第2側面(2.2)を有し、
前記スケール本体(15)は、前後して交互に配置された複数のミラー領域(S;S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15)と複数のマーキング領域(M;M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14)とを有する、前記ガイドレール(2)の長手方向(X)に延在する少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)を含み、
各マーキング領域(M;M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14)は、前記少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)の長手方向に対して横方向に直線状に延在し、かつ入射する光を吸収し、及び/又は散乱反射させるように構成されており、
前記ミラー領域(S;S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15)は、入射する光をミラー反射させるように構成されている少なくとも実質的に滑らかな表面を有する、当該スケール本体(15)において、
前記スケール本体(15)は、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法にしたがって前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)に形成されていることを特徴とするスケール本体(15)。
【請求項11】
前記ガイドレール(2)は、前記第2側面(2.2)から見て、特に内ねじを有する少なくとも1つの、特に複数の有底孔を備え、
前記ガイドレール(2)の前記第1側面(2.1)は、特に孔なしに設けられている請求項10に記載のスケール本体(15)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのトラック(SP1)は、等間隔に配置された複数のマーキング領域(M)を有するインクリメンタルトラックとして構成されており、又は
前記少なくとも1つのトラック(SP2)は、少なくとも1つの基準位置をコード化するための少なくとも1つのマーキング領域(M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14)を有する基準トラックとして構成されている請求項10又は11に記載のスケール本体(15)。
【請求項13】
-請求項1~12のいずれか1項に記載のスケール本体(15)と、
-前記スケール本体(15)の少なくとも1つのトラック(SP1、SP2)を光学走査するように構成されている少なくとも1つのセンサ装置(20)と、を有するリニアエンコーダ(11)であって、
前記少なくとも1つのセンサ装置(20)は、前記スケール本体(15)に対して相対移動可能な測定ヘッド(21)を含み、当該測定ヘッド(21)は、
前記スケール本体(15)のミラー領域(S;S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15)とマーキング領域(M;M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14)とに光(22.1)を照射するための光源(22)と、
前記光源(22)から照射され、前記スケール本体(15)の前記ミラー領域(S;S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15)で反射された光(RL1,RL2)を検出するように構成されている光センサから成る少なくとも1つのアレイと、を有する、当該リニアエンコーダ(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総じてリニアエンコーダのためのスケール本体、及びスケール本体をリニアプロファイルレールガイドのガイドレールの表面に形成するための最適化された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スケール本体は、基本的に従来の技術から公知である。当該スケール本体は、特にインクリメンタルエンコーダで使用される。当該インクリメンタルエンコーダは、距離及び方向又は角度変化及び回転方向を検出できる、(直線方向の)位置変化又は(回転方向の)角度変化を検出するためのセンサである。インクリメンタルエンコーダの公知のスケール本体は、位置変化を検出するために、センサ装置によって計数される周期的に反復する散乱領域又は複数の吸収領域を有する。
【0003】
したがって、例えば刊行物、独国特許第2515574号明細書から、複数の線状要素からなる散乱領域を有する金属製のスケール本体が公知である。これらの線状要素は、平行であり且つ狭い。この場合、散乱領域の複数の線状要素が、可視光で個別に識別可能であるのではなくて、これらの線状要素の回折像だけによって検出可能であるように、これらの線状要素の幅及び深さが設計されている。
【0004】
換言すれば、独国特許第2515574号明細書から公知のそれぞれの散乱領域が、1μm(特に0.5~1.5μm)のオーダーの幅と、約1.5μmであり、したがって光(公知のスケール本体が、照射方式で、例えば光電子顕微鏡の下で光によって照射される)の波長のオーダーにある深さとを有する、直接に並んで配置された複数の直線状凹部(線状要素)から成る。
【0005】
例えば刊行物、独国特許第102007007311号明細書から分かるように、照射方式では、光ビームが、コリメータによって反射スケール本体を有する表面へ偏向される。その結果、当該表面又は当該スケール本体が、ほぼ平行に集束された光によって照射される。この場合、当該光は、面法線に対して(入射)角度を成して入射する。この場合、当該スケール本体は、回折位相格子パターンによってライン格子状にパターン化されている複数のパターン領域と、平滑(ミラー性の)面によってそれぞれ形成されている複数の非パターン領域とを含む。
【0006】
この場合、表面に入射する光の入射角は、パターン領域内の回折位相格子パターンにおいて光が回折されて、一次の回折次数の回折光がスケール本体を垂直に離れるように選択されている。この状況下では、以下で「ミラー領域」と呼ばれる非パターン領域に入射する光がそれぞれ当該表面で反射され、その結果、光は、面法線に対して入射角に等しい出射角を成して当該非パターン領域を離れる。次いで、当該表面に対してほぼ垂直に当該パターン領域で回折された光が、センサ装置の複数の光センサ上に結像される。この場合、このセンサ装置は有益には、非パターン領域(ミラー領域)で反射された光が、このセンサ装置のこれらの光センサによって検出されないように配置されている。
【0007】
したがって、センサ装置を使用することで、パターン領域は、明視野として検出可能であり、非パターン領域(ミラー領域)は、暗領域として検出可能である。
【0008】
センサ装置が、インクリメンタルトラックに沿って移動されると、このセンサ装置は、特にパターン領域で回折された光を検出する(パターン領域の暗領域測定)。パターン領域と非パターン領域(ミラー領域)とはそれぞれ、互いに交互に列を成して前後して配置されていて、一緒に共通のインクリメンタルトラックを形成する。この場合、複数のパターン領域が、一定の間隔で配置されていて、複数のミラー領域によって互いに分離される。したがって、これらのパターン領域のそれぞれによって、それぞれ1つのいわゆるマーキング領域が形成される。この場合、センサ装置が、マーキング領域に対してインクリメンタルトラックの長手方向に移動される時に、このインクリメンタルトラックのそれぞれのマーキング領域がセンサ装置によって計数され、周期的に変化するセンサ信号に変換され得る。
【0009】
周期的なセンサ信号は、スケール本体に沿った移動量を計算するために、計算ユニットにより使用され得る。当該センサ信号は、センサ装置のインクリメンタルトラックの長手方向への移動時に周期的に変化するので、このセンサ装置のインクリメンタルトラックの長手方向への移動時にこのセンサ装置の異なる位置でそれぞれのセンサ信号を測定し、当該センサ信号に対する異なる測定値をこのセンサ装置の異なる位置に割り当てることが可能である。最終的に、このインクリメンタルトラックを基準にしてこのセンサ装置のそれぞれ異なる所定の位置に割り当てられているセンサ信号に対する種々異なる測定値間を補間することで、このセンサ装置の(このセンサ装置の所定の2つの位置の間にある)任意の位置を高い精度で計算できる。
【0010】
センサ信号を増大するために、並んで配置されている2つの異なる光源からの光によってスケール本体を同時に照射することが可能である。その結果、光が、(面法線に対してそれぞれ角度を成す)2つの異なる方向から表面又はスケール本体に入射する。
【0011】
従来の技術から公知のスケール本体には、センサ装置によって検出されたセンサ信号が、多くの場合に専ら低いコントラストを有するという欠点がある。すなわち、散乱領域又は吸収領域の走査によって生成されたセンサ信号と、ミラー領域の走査によって生成されたセンサ信号とが、比較的僅かしか相違せず、したがって、比較的小さい差(コントラスト)しか有しない程度にしか、このセンサ装置は、散乱領域又は吸収領域及びミラー領域の走査によってセンサ信号をそれぞれ生成しない。
【0012】
また、結果として、個々の散乱領域又は吸収領域が適切に識別されず、スケール本体に対するセンサ装置の移動量が正確に検出されない。さらに、当該従来の技術から公知のスケール本体の場合、スケール本体での反射によって得られるセンサ信号を補間するのが、非常に困難であることが問題であると認識されている。
【0013】
他方では、特に、明視野測定の原理にしたがって作動する変位計測システムを提供するというニーズがある。この場合、位置変化が、「明視野」内に配置された検出器によって確実に検出可能である。明視野測定とは、スケール本体の散乱領域又は吸収領域が変位計測システムの測定領域内に存在しない場合に、ミラー領域で反射したビームが検出器に直接に到達することを意味する。
【0014】
これは、特に、光源が、スケール本体に装着されたスケールをセンサのビーム経路に対して平行に照射することを意味する。これは、スケールが例えば45°の角度を成して照射される暗領域照射とは異なる。この場合、明視野測定の原理にしたがって作動する変位計測システムの使用されたエンコーダの機能機序は、光源から放射された光がスケール本体のミラー領域で規則的に(ミラー状に)反射されることを必要とする。可能ならば、スケール本体の表面に入射するそれぞれのビームが、このスケール本体のそれぞれのミラー領域内で面法線に対して同じ角度で反射されることが望ましい。
【0015】
一般に、リニアプロファイルレールガイドは、1つの(リニア)ガイドレール及び少なくとも1つの可動体を含む。当該可動体がガイドレールの長手方向に移動可能であるように、当該可動体は、ガイドレールにおいて案内される。このようなプロファイルレールガイドの場合、一般に、ガイドレールにおいて案内され、このガイドレールの長手方向に直線状に移動可能な可動体の位置を計量技術的に検出することが要求される。
【0016】
この場合、可動体の位置を計量技術的に検出するため、ガイドレールの長手方向に延在するスケール本体と、このスケール本体のそれぞれのマーキング領域を走査するためにこのスケール本体に対してガイドレールの長手方向に移動可能なセンサ装置とを含むリニアエンコーダが使用され得る。リニアプロファイルレールガイドの可動体の位置の計量技術的に検出を可能にするため、センサ装置が可動体と一緒にガイドレールの長手方向に移動可能であるように、このセンサ装置は、この可動体に配置され得る。
【0017】
リニアプロファイルレールガイドのガイドレールの長手方向に移動可能な可動体の位置を計量技術的に検出するためのリニアエンコーダと組み合わせたリニアプロファイルレールガイドの簡略化された設置を可能にするために、特に、リニアプロファイルレールガイドのガイドレールをスケール本体と一緒に単一のワークピースとして提供し、このためにスケール本体のそれぞれのマーキング領域をガイドレールの表面加工処理によって、例えばレーザビームを用いた表面加工処理によって形成することが提唱された。
【0018】
欧州特許第3060887号明細書から、インクリメンタルエンコーダのためのスケール本体、及びパルス化されたレーザによってスケール本体を金属表面上に製造するための方法が公知である。この場合、この方法は、基本的には対応するスケール本体をリニアプロファイルレールガイドのガイドレールの表面で実現するために適している。刊行物の欧州特許第3060887号明細書に開示されたこの方法は、長手方向に交互に配置された複数の散乱領域及び複数の吸収領域を有するインクリメンタルトラックを備えるスケール本体を持つインクリメンタルエンコーダのために設計されている。この場合、インクリメンタルエンコーダはセンサ装置を含む。このセンサ装置は、インクリメンタルトラックを光学走査するように構成されていて、このためにスケール本体に対して移動可能な、インクリメンタルトラックの画像を生成するための光学画像装置と当該画像を検出するための複数の光センサとを有する測定ヘッドを備える。インクリメンタルトラックの光学走査を可能にするため、当該インクリメンタルトラックを2つの光源によって照射することが提唱されている。当該2つの光源は、スケール本体の散乱領域及び吸収領域に角度を成して入射する光を発生する。この角度は、スケール本体のミラー領域で直接反射された光が光学画像装置に当たらず、したがって光センサによって検出され得ないように選択されている。この代わりに、このセンサ装置は、スケール本体の散乱領域においてこのスケール本体が形成されている金属表面に対してほぼ垂直方向に散乱される光だけを検出するように構成されている(これは、暗領域測定の原理にしたがうスケール本体の散乱領域の光学検出に相当する)。スケール本体の散乱領域が、ミラー領域に比べて可能な限り大きいコントラストでセンサ装置によって検出されることを達成するために、刊行物の欧州特許第3060887号明細書では、複数の散乱領域のそれぞれが少なくとも2つの直線状の凹部を有するようにパルス化されたレーザを用いて表面を処理することによって、スケール本体の散乱領域を金属表面に製造することが提唱される。少なくとも2つの直線状の凹部は、インクリメンタルトラックの長手方向に対してほぼ直角方向に延在し、このインクリメンタルトラックの長手方向に一列に前後して配置されており、且つ入射する光を拡散反射させるように形成されている。この場合、これらの散乱領域の複数の直線状の凹部の個々の凹部が、互いに重なり合って配置されているほぼ円形の複数の凹部からそれぞれ形成されている。刊行物の欧州特許第3060887号明細書では、散乱領域の直線状の凹部のアレイである散乱領域の複数の直線状の凹部同士の寸法に関して、個々の散乱領域の直線状の凹部から散乱反射された光の空間強度分布が比較的均一にされ得るように、インクリメンタルトラックの長手方向の直線状の凹部の幅及び/又は隣接した2つの直線状の凹部間のそれぞれの間隔が適切に選択され得ること、及び、直線状の凹部のそれぞれが、インクリメンタルトラックの長手方向に、3.5μm~12μm、好ましくは6μm~9μm及び特に約7μmの幅を有し、隣接した平行な2つの直線状の凹部間の間隔が、零よりも大きい場合に、スケール本体の散乱領域が、この場合に実現された暗領域測定の原理にしたがう当該スケール本体の散乱領域の光学検出時に、ミラー領域に比べて比較的大きいコントラストでセンサ装置によって検出され得ることが、提唱されている。これに関しては、欧州特許第3060887号明細書では、特に、複数の散乱領域がそれぞれ、インクリメンタルトラックの長手方向に対して直角方向に向けられていて、6~9μm、好ましくは約7.5μmの間隔で互いに離間されている、平行な少なくとも3つの直線状の凹部を有することが提唱される。
【0019】
刊行物、欧州特許第3060887号明細書から公知のスケール本体は、明視野測定の原理にしたがうスケール本体の光学走査時に問題があることが判明している。この場合、スケール本体の散乱領域が、明視野測定の原理にしたがう当該スケール本体の散乱領域の光学検出時に、如何なる場合でもミラー領域に比べて小さいコントラストでしかセンサ装置によって検出され得ないように、スケール本体に入射した光が、ミラー領域で反射され、且つ(直線状で且つ互いに離間した複数の凹部からそれぞれ形成された)個々の散乱領域で散乱される。これは、センサ装置によって生成された測定信号の評価を困難にし、スケール本体の長手方向でのセンサ装置の移動時に、このセンサ装置によって検出された当該スケール本体の長手方向の変位の測定精度を著しく低下させる。
【0020】
それ故に、刊行物、欧州特許第3060887号明細書から公知のスケール本体を有する従来の技術から公知のプロファイルレールガイドは、明視野測定の原理にしたがってスケール本体を光学走査するためには殆ど適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】独国特許第2515574号明細書
【特許文献2】独国特許第102007007311号明細書
【特許文献3】欧州特許第3060887号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明の課題は、スケール本体をリニアプロファイルレールガイドのガイドレールの表面に形成するための最適化された方法を提供することにある。この場合、このスケール本体は、明視野測定の原理にしたがうスケール本体の光学走査に基づき、位置変化の検出を確実に可能にするように構成されているリニアエンコーダの構成要素として使用するために適している。
【0023】
さらに、対応するスケール本体及び対応するリニアエンコーダが提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の方法に関する課題は、独立請求項1に記載の方法によって解決される。本発明のスケール本体に関する課題は、請求項10に記載のスケール本体によって解決され、本発明のリニアエンコーダに関する課題は、請求項13に記載のリニアエンコーダによって解決される。
【0025】
当該方法は、スケール本体をリニアプロファイルレールガイドのガイドレールの表面に形成するために使用される。この場合、当該ガイドレールは、第1側面及び対向する第2側面を有し、
当該スケール本体は、前後して交互に配置された複数のミラー領域と複数のマーキング領域を有する、当該ガイドレールの長手方向に延在する直線状の少なくとも1つのトラックを含み、
複数のマーキング領域のそれぞれが、少なくとも1つのトラックの長手方向に対して横方向(直角方向)に直線状に延在し、
当該方法が、
-レーザビームを形成するためのパルス化されたレーザを提供する方法ステップと、
-第1側面の少なくとも1つのマーキング領域に相当するガイドレールの第1領域内に微細パターンを形成することによって、複数のマーキング領域うちの少なくとも1つを提供する方法ステップとを有し、当該方法では、
レーザが、連続する複数の光パルスを有するレーザビームを形成し、当該レーザビームが第1側面の第1領域へ向けられ、
第1側面が、形成された連続する光パルスのそれぞれ個々の光パルスによって当該第1領域の1つの部分領域だけが照射され、当該第1側面が、第1領域のそれぞれ個々の光パルスよって照射された部分領域において、それぞれ個々の光パルスによる照射に起因して、それぞれ個々の光パルスによる照射後に、当該第1領域のそれぞれ個々の光パルスよって照射された部分領域にわたって延在する第1側面の空間変調を第1側面が有するように、変化され、
少なくとも1つのトラックの長手方向での当該第1領域のそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の空間寸法は、当該少なくとも1つのトラックの長手方向での当該第1領域の空間寸法よりも小さく、当該少なくとも1つのトラックの長手方向に対して横方向でのそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の空間寸法は、当該少なくとも1つのトラックの長手方向に対して横方向での当該第1領域の空間寸法よりも小さく、
レーザビームがガイドレールに対して、形成された連続する複数の光パルスのうちの少なくとも複数の光パルスが、当該第1領域の、空間的に互いに分散して配置されている複数の異なる部分領域を時間的に連続して照射するように、移動される。
【0026】
この場合、照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域ごとに、当該照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも1つの別の部分領域が存在し、当該少なくとも1つの別の部分領域は、照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域に対して、少なくとも1つのトラックの長手方向に及び/又は少なくとも1つのトラックの長手方向に対して横方向にずらされており、その結果として、当該照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域と、当該照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも1つの別の部分領域とが重複部分を有する。この場合、当該照射された複数の異なる部分領域は共に、第1領域に合同である第1側面の領域を形成する。
【0027】
特に、照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域ごとに、照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも2つの別の部分領域が存在し、当該少なくとも2つの別の部分領域は、照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域に対して、照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも2つの別の部分領域のうちの一方の部分領域が照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域に対して少なくとも1つのトラックの長手方向にずらされているように、空間的にずらされており、その結果として、照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも2つの別の部分領域のうちの前記一方の部分領域と、照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域とが(少なくとも1つのトラックの長手方向に)重複部分を有し、照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも2つの別の部分領域のうちの他方の部分領域が、照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域に対して少なくとも1つのトラックの長手方向に対して横方向にずらされており、その結果として、照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも2つの別の部分領域のうちの前記他方の部分領域と、照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域とが(少なくとも1つのトラックの長手方向に対して横方向に)重複部分を有する。
【0028】
本発明の方法の場合、レーザビームが、ガイドレールの第1側面の、形成すべきスケール本体に相当する第1領域のマーキング領域にわたって二次元方向に移動される。その結果、第1側面の第1領域の複数の異なる部分領域が連続的に照射される。複数の光パルスの1つによる部分領域の照射は、ガイドレールの第1側面を形成する材料の僅かな除去及び/又は空間的再分布(raeumliche Umverteilung)を引き起こす。その結果、照射された部分領域の表面の形状が、光パルスによる照射後に変化する。
【0029】
これに関連して、「それぞれ個々の光パルスによって照射された第1領域の部分領域」とは、第1側面のうち照射された部分領域内の表面の形状が、それぞれ個々の光パルスにより照射されたことに起因して、(それぞれ個々の光パルスによる照射前の表面の空間変調に比べて)変化した空間変調を有する部分領域を意味する。留意すべきは、当該第1側面のうちの、照射された部分領域内の表面の形状がそれぞれ個々の光パルスによる照射に起因して変化する部分領域の空間寸法は、それぞれの光パルスの強度に依存し得る点である。
【0030】
レーザビームが、ガイドレールの第1側面の第1領域にわたって、照射された異なる部分領域のそれぞれの部分領域が照射された部分領域の少なくとも1つの別の部分領域と重複するように移動されることによって、このガイドレールの第1側面が第1領域内において、光パルスによる照射後に空間変調される。その結果、第1領域内における第1側面の粗度が、-光パルスによる照射前のこの第1領域の状態に比べて-増大する。光パルスによる第1領域の照射は、第1側面の微細パターン化を、照射前の滑らかな表面が照射後にこの第1領域全体において複数の隆起部分から成るほぼ均一な表面粗度を呈するアレイ(「微細パターン化」)を有するようにすることを可能にする。
【0031】
この表面の粗度は、照射された第1領域における表面の反射率を、表面に対して直角方向に入射する光がこの表面の照射された第1領域においてこの表面に対して直角方向に戻り反射されるのではなくて、当該照射された第1領域内に形成された個々の隆起部分間で多重散乱され吸収されるように、変化させる。
【0032】
個々の光パルスによってそれぞれ照射された第1領域の部分領域は、個々の光パルスによって照射された照射されたそれぞれの部分領域が個々の光パルスによって照射された少なくとも2つの別の部分領域と重複するように、空間的に分散されている。それぞれの部分領域は、光パルスによって照射された部分領域のそれぞれが少なくとも1つのトラックの長手方向にずらされた1つの別の部分領域とそれぞれ重複し、さらに少なくとも1つのトラックの長手方向に対して横方向にずらされた1つの別の部分領域とそれぞれ重複するように、空間的に互いに相対的にずらされている。したがって、個々の光パルスによってそれぞれ照射された第1領域の部分領域は、二次元に(すなわち、少なくとも1つのトラックの長手方向と、少なくとも1つのトラックの長手方向に対して横方向に)重複する。二次元に重複しているので、照射された第1領域における表面の反射率が非常に強く減少される。
【0033】
したがって、本発明の方法によって製造されたスケール本体には、スケール本体のマーキング領域が、表面に対して直角方向に入射する光をほぼ吸収するという利点がある。この場合、光学走査のために提供されたリニアエンコーダのセンサ装置は、この状況において実質的に、ミラー領域で反射した光だけを検出することができる。
【0034】
したがって、スケール本体のマーキング領域は、明視野測定の原理にしたがうマーキング領域の光学走査時に、ミラー領域に比べて比較的大きいコントラストでセンサ装置によって有益に検出され得る。
【0035】
したがって、本発明によれば、特に、微細パターンが、ガイドレールの第1側面のスケール本体のそれぞれのマーキング領域内にパルス化されたレーザによって、暗くて高コントラストの表面が材料を除去することなしに形成されるように、形成される。極端に短い光パルスが、ガイドレールの表面にナノメートル範囲の多数の隆起部分を有するパターンを形成する。微細パターン化された表面では、光の散乱が減少され、スケール本体のそれぞれのマーキング領域において、表面の黒度(Schwaertzburg)が、持続的に深く、黒く安定になる。
【0036】
換言すれば、本発明によれば、吸収領域を金属表面内に形成するために、ガイドレールの高反射性の金属表面が、高エネルギーのビーム(レーザビーム)によって部分的に粗化される。この場合、詳しく言うと、金属表面が、短いレーザパルスによって高エネルギーのレーザビームで溶融される。特に、粗い領域が、15ナノ秒未満の期間の短いレーザパルスによって溶融される。これにより、当該表面が、パルス休止期間中に即座に再凝固する。
【0037】
微細パターンをマーキング領域内に形成するために使用された光パルスが、(20ピコ秒未満のパルス期間を有する)超短である場合、特定のパラメータ範囲内の色彩変化部(Farbaenderung)が、耐腐食性に留まる。超短パルスレーザを使用することによって、熱作用ゾーンが極めて狭く、結果として自己治癒性の酸化膜が、粗い領域内に形成され得ることが、当該耐腐食性の理由である。
【0038】
スケール本体をガイドレールの表面に形成するための本発明の方法の利点は、特に、形成された微細パターンが、いわゆる視野角の安定性を有することにある。全ての視野角に由来するコントラストが非常に高く、均一であることは、微細パターンをガイドレールの第1側面に形成するときに形成され、光を繰り返し散乱反射させて吸収するナノパターンに起因する。
【0039】
さらに、超短パルスレーザを使用すると、非常に小さく且つ細い粗化領域が、第1側面に形成され得る。超短パルスレーザを使用する場合、パルス期間は、他のマーキングレーザの場合よりも約10,000倍短く、したがってより高エネルギーであり、当該粗化領域は、非常に小さいスポットサイズによって施与され得る。それ故に、本発明の方法は、特に、微細な粗化領域をガイドレールの第1側面に形成するために適し、特にガイドレールの第1側面の微細な吸収領域を形成するために適する。
【0040】
超短パルスレーザを使用する際の作用期間が短いので、表面の化学的安定性が確保される。その結果、粗化領域の耐腐食性の形成が可能になり、したがってスケール本体のマーキング領域の耐腐食性の形成が可能になる。
【0041】
したがって、本発明の方法の好適な構成によれば、特に、レーザは、15ナノ秒未満のパルス期間を有する複数の光パルスによってパルス化された光ビームを形成するための短パルスレーザとして、又は20ピコ秒未満のパルス期間を有する複数の光パルスによってパルス化された光ビームを形成するための超短パルスレーザとして構成されている。レーザのパルスパラメータ及び/又はレーザ焦点は、表面経路に沿って材料を除去することなしに又は実質的に材料を除去することなしに、微細パターンをガイドレールの第1側面に形成したときに、ナノメートルの範囲の材料粗度が形成されるように、選択される。
【0042】
超短パルスレーザの使用は、ガイドレールの側面が熱的な影響及び機械的な影響をほとんど受けずに処理され得ることを可能にする。光パルス、すなわち、エネルギー入力の期間は、隣接した原子への熱移動さえも起きない程度に、したがって不適格なパラメータの選択時に発生し得る熱負荷亀裂も回避される程度に、短い。この理由から、微細パターンを超短パルスレーザによってガイドレールの第1側面に形成することは、「冷間処理」とも呼ばれ得る。この冷間処理では、材料が、レーザによってナノメートルの範囲でパターン化される。
【0043】
レーザビームは、例えば、このレーザビームがガイドレールの第1側面に3.5μm~12μm、好ましくは6μm~9μm、特に約8μmの直径を有するように選択される直径を有するほぼ円形のビーム束を提供し得る。
【0044】
微細パターンをマーキング領域に相当するガイドレールの第1側面の第1領域に形成するために、レーザビームを第1側面の第1領域に方向付けて、照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域と照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも1つの別の部分領域との重複部分が、少なくとも1つのトラックの長手方向に、少なくとも1つのトラックの長手方向での当該第1領域のそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の空間寸法の20~50%である空間寸法を有するようにすることができる。これに対応して、レーザビームを第1側面の第1領域に方向付けて、照射された複数の異なる部分領域のうちのそれぞれ個々の部分領域と照射された複数の異なる部分領域のうちの少なくとも1つの別の部分領域との重複部分が、少なくとも1つのトラックの長手方向に対して直角方向に、当該少なくとも1つのトラックの長手方向に対して横方向に、第1領域のそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の空間寸法の20~50%である空間寸法を有するようにすることができる。照射された複数の異なる部分領域が上記のように重複しているので、第1側面の第1領域に形成された微細パターンが、多数の小さい隆起部分を含むことが保証される。これらの隆起部分は、第1領域の全面にわたってほぼ均一に空間的に分散されており、当該第1領域の全面にわたって非常に微細にパターン化されて均一な表面粗度を呈する。こうして、それぞれのマーキング領域に入射する光が、第1領域の全面でほぼ均一に吸収され得ることが達成される。
【0045】
スケール本体によって達成可能なコントラストをさらに最適化するため、微細パターンをパルス化されたレーザビームによりガイドレールの第1側面に形成する前に、特に少量の材料が第1側面から除去されるように、少なくともこの第1側面が表面処理されることが提唱されている。。
【0046】
この代わりに又はこれに加えて、微細パターンをレーザビームによって第1側面形成した後に、ワークピースの少なくとも第1側面が表面処理されることが提唱されている。
【0047】
この対策によって、スケール本体の高反射性のミラー領域が実現可能である。
【0048】
特に、これに関連して、微細パターンをパルス化されたレーザビームによってガイドレールの第1側面に形成する前に、このガイドレールの少なくとも第1側面が、光沢処理によって表面処理されるべきである。これに関連して、この第1側面の処理後のこの第1側面が、最大で0.3μmの平均粗さ値(Ra)、特に最大で0.1μmの平均粗さ値(Ra)を有し、さらに好ましくは約0.007μm~0.1μmの範囲の平均粗さ値(Ra)を有することが有益である。これに関連して、特に、少なくともこの第1側面が、研磨ディスクによって、レーザ研磨によって及び/又は電子研磨によって表面処理されることが考えられる。これにより、第1側面が、研磨処理(光沢処理)後に非常に高い光反射率を有することが達成される。これに応じて、スケール本体をパルス化されたレーザによって研磨処理された第1側面に形成した後に、このスケール本体のミラー領域が、非常に高い光反射率を有することが達成される。
【0049】
ガイドレールの第1側面を研磨処理した後に、微細パターンをレーザパルスによって第1側面に次のように形成することができる。すなわち、この第1側面が微細パターンの形成後に、スケール本体の複数のマーキング領域のうちの1つの領域に、スケール本体の複数のミラー領域のうちの1つの領域における側面の平均粗さ値よりも10倍大きい平均粗さ値を有するように、形成することができる。これにより、スケール本体のマーキング領域は、明視野測定の原理にしたがって当該マーキング領域を光学走査するためのセンサ装置によって、ミラー領域に比べて非常に大きいコントラストで検出され得る。
【0050】
既に説明したように、特にそれぞれの微細パターンをパルス化されたレーザビームによって第1側面に形成した後に、この第1側面が、表面洗浄されなければならない。この表面洗浄は、特にレーザ処理及び/又は振動洗浄又は超音波による洗浄である。このような表面処理は、微細パターンが、ナノ秒の範囲のパルス期間を有する光パルスによってパルス化されたレーザ光を形成する短パルスレーザによってそれぞれのマーキング領域に形成される場合に、特に有益である。第1側面をナノ秒の範囲のパルス期間を有する光パルスによって処理した場合、光パルスを第1側面に当てることには、当該当てられた光パルスによって照射された領域内の側面の熱負荷が局所的であることに起因して、当該当てられた光パルスによって照射された領域内の表面のパターンが、この第1側面を構成する材料の原子から当該当てられた光パルスによって照射された領域内に多数の微粒子が生成されるように変化するという効果があり、これらの微粒子は、第1側面に堅固に結合されるのではなくて、当該第1側面に専ら緩く付着する。第1側面に専ら緩く付着したこれらの粒子の形成は、当てられた光パルスによって照射された領域内においてこの第1側面の機械的安定性及び化学的安定性を局所的に損なう。それぞれの微細パターンをパルス化されたレーザビームによって第1側面に形成した後に、この第1側面を表面処理することによって、光パルスによって照射された領域に発生し、この第1側面に緩く付着した粒子が完全に除去されることが達成され得る。これにより、当てられた光パルスによって照射された領域にある第1側面の機械的安定性及び化学的安定性が向上され得る。
【0051】
本発明の方法によって製造可能なスケール本体に関して、本発明のさらなる構成によれば、特に、ガイドレールが、特に内ねじを有する少なくとも1つの、特に複数の(第2側面から見て)有底孔を備えることが提唱されている。これに関連して、特に、ワークピースの第1側面は、特に孔なしに設けられなければならない。これらの有底孔は、それぞれの有底孔にねじ締めされ得るねじによってガイドレールをパターンに固定するために使用される。これらの有底孔が第2側面に形成されていて、したがって第1側面まで延在していないことによって、第1側面全体が、スケール本体を形成するために使用され得る。これは、スケール本体が設けられた、非常に小さい横断面を有するガイドレールの提供を可能にし、したがってそれぞれのガイドレールの長手方向に対して横方向に比較的小さい寸法を有するプロファイルレールガイドの製造に関して有益である。
【0052】
スケール本体は、ガイドレールの長手方向に延在する少なくとも1つの直線状のトラックが、等間隔に配置された複数のマーキング領域を有するインクリメンタルトラックとして構成されているように形成され得る。
【0053】
代替的に、スケール本体は、ガイドレールの長手方向に延在する少なくとも1つの直線状のトラックが、少なくとも1つの基準位置をコード化するために少なくとも1つのマーキング領域を有する基準トラックとして構成されているか、又は複数の異なる基準位置をコード化するためにガイドレールの長手方向に前後して配置された複数のマーキング領域を有する基準トラックとして構成されているように形成され得る。
【0054】
別の実施の形態によれば、本発明のスケール本体は、ガイドレールの長手方向に延在する第1トラックであって、等間隔に配置された複数のマーキング領域を有するインクリメンタルトラックとして構成されている第1トラックと、第1インクリメンタルトラックと平行に並んで配置されていて、1つ以上の基準位置をコード化するための1つ以上のマーキング領域を有する基準トラックとを備える。この場合、当該基準トラックは、特に、スケール本体に沿った測定ヘッドの絶対位置を指示するように構成されている。任意の場所にある測定ヘッドのそれぞれの絶対位置を測定するために、例えば、基準トラックの特定の1つの基準マークに対する測定ヘッドの(第1インクリメンタルトラックにわたって測定された)相対位置の変化が測定され得る。したがって、リニアエンコーダが、測定ヘッドの位置変化を検出するだけではなくて、スケール本体又はガイドレールの長手方向を基準にする測定ヘッドの絶対位置も検出することが、当該基準トラックによって可能である。
【0055】
既に説明したように、本発明のスケール本体は、特に、スケール本体の光学走査を可能にするリニアエンコーダに関連して使用するように構成されている。このようなリニアエンコーダは、少なくとも1つの本発明のスケール本体と、当該スケール本体の少なくとも1つのトラックを光学走査するように構成されているセンサ装置とを有する。
【0056】
この場合、リニアエンコーダの少なくとも1つのセンサ装置が、少なくとも1つのトラックの画像を生成するための光学画像装置を有する測定ヘッドであって、スケール本体に対して移動可能な測定ヘッドと、画像を検出するための複数の光センサとを有する。この場合、特に、当該センサ装置は、これらの光センサが、画像の検出時に出力信号を生成するように構成され得る。ガイドレールの長手方向を基準にして測定ヘッドの位置が変化すると、これらの光センサによって生成された出力信号が、このガイドレールの長手方向におけるスケール本体の複数の異なるマーキング領域のそれぞれの配置に応じて変化する。
【0057】
以下に、本発明の特徴を、添付図面を参照して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】リニアプロファイルレールガイドのガイドレールの長手方向に推移する(このガイドレールの長手方向に対して直角方向の横断面で示された)変位を測定するための明視野測定の原理にしたがって動作するリニアエンコーダを有する変位計測システムの作動形態を概略的に示す。
図2】プロファイルレールガイドのガイドレールの表面に形成された図1によるリニアエンコーダ用のスケール本体の複数のマーキング領域の配置の例示的な実施形態を概略的に示す。
図3A】第1マーキング領域を本発明によるガイドレールの表面に提供することを可能にするための、図2によるスケール本体の第1マーキング領域と、パルス化されたレーザビームの光パルスによって照射されるべきガイドレールの複数の表面領域の配置とを概略的に示す。
図3B】第2マーキング領域を本発明によるガイドレールの表面に提供することを可能にするための、図2によるスケール本体の第2マーキング領域と、パルス化されたレーザビームの光パルスによって照射されるべきガイドレールの複数の表面領域の配置とを図3Aと同様に概略的に示す。
図4】本発明の方法によってプロファイルレールガイドのガイドレールの表面に形成されたスケール本体の顕微鏡による平面図である。
図5】表面を洗浄する前の、本発明の方法によってプロファイルレールガイドのガイドレールの側面に形成された複数のマーキング領域を概略的に示す。
図6】表面を洗浄した後の、図5による複数のマーキング領域を概略的に示す。
図7】マーキング領域の領域内のガイドレールの表面を拡大して表示するため、図4による平面図の一部を拡大して示し、表示されたマーキング領域において当該ガイドレールの表面の粗さ(Aufrauubg)が目視可能になっている。
【発明を実施するための形態】
【0059】
特に言及しない限り、図中の同じ構成要素に対しては、それぞれ同じ符号が使用される。
【0060】
図1及び2には、リニアプロファイルレールガイド1のガイドレール2の長手方向での、このガイドレール2において案内されるリニアプロファイルレールガイド1の可動体3の変位を測定するための変位計測システム10の作動形態が概略的に示されている。この場合、プロファイルレールガイド1の可動体3は、これがガイドレール2の長手方向に直線状に移動可能であるように、ガイドレール2において案内される。プロファイルレールガイド1の可動体3は、この目的のために、例えば(図示しない)ドラム体を介してガイドレール2上に支持することができる。図1及び2による図示では、直交する3つの軸X、Y及びZ(X軸、Y軸及びZ軸)を有する図1及び2に示されたデカルト座標系のX軸が、ガイドレール2の長手方向に延在し、したがって可動体3が、X軸方向に直線状に移動可能であることが前提である。
【0061】
図1及び2による変位計測システム10は、明視野測定の原理にしたがって作動する光学式リニアエンコーダを有する。この光学式リニアエンコーダは、ガイドレール2の長手方向に可動体3が推移した変位を測定することができる。このため、リニアエンコーダ11は、ガイドレール2の長手方向に延在するスケール本体15と、スケール本体15の少なくとも1つのトラックを光学走査するように構成されている少なくとも1つのセンサ装置20とから構成されおり、スケール本体15は、複数のミラー領域と複数のマーキング領域とが前後して交互に配置された少なくとも1つのトラックを備え、このトラックは、ガイドレール2の長手方向に直線状に延在する。
【0062】
図1に示されているように、スケール本体15は、ガイドレール2の第1側面2.1に形成されている。スケール本体15の光学走査を可能にするために、センサ装置20は、ガイドレール2の長手方向に移動可能な測定ヘッド21を有する。測定ヘッド21は可動体3に、この測定ヘッド21がスケール本体15の設けられたガイドレール2の側面2.1に対向して配置されていて、ガイドレール2の長手方向での可動体3の移動時に可動体3と一緒に移動されるように、固定されている。
【0063】
図1及び2に示されているように、スケール本体15は、第1側面2.1に配置されていて、かつガイドレール2の長手方向に互いに平行に延在し、複数のミラー領域と複数のマーキング領域とが前後して交互に配置された2つの異なるトラックである第1トラックSP1と第2トラックSP2とを備える。第1トラックSP1は、等間隔に配置された複数のマーキング領域を有するインクリメンタルトラックとして構成されている。第2トラックSP2は、基準トラックとして構成されていて、少なくとも1つの基準位置をコード化するために少なくとも1つのマーキング領域を有し得るか、又は複数の異なる基準位置をコード化するためにガイドレール2の長手方向に前後して配置された複数のマーキング領域を代わりに有してもよい。
【0064】
図2に示されているように、スケール本体15の第1トラックSP1及び第2トラックSP2の複数のマーキング領域のそれぞれが、図1及び2に示されたY軸方向に、すなわちスケール本体15の長手方向に対して横方向に、又はガイドレール2の長手方向に対して横方向にそれぞれ直線状にガイドレール2の第1側面2.1に延在する。
【0065】
図2に示されているように、第1トラックSP1(インクリメンタルトラック)は、複数のマーキング領域を有する。これらのマーキング領域のX軸方向の幾何学形状及び空間寸法並びにY軸方向の空間寸法は等しい。X軸方向に直接に前後して配置された離接する2つのマーキング領域Mの間には、それぞれ1つのミラー領域Sが形成されている。第1トラックSP1の全てのミラー領域SのX軸方向での空間寸法及びY軸方向での空間寸法は等しい。
【0066】
図2にさらに示されているように、この例では、第2トラック(基準トラック)は、ガイドレール2の長手方向に一列に前後して配置されたマーキング領域M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13又はM14を有する。
【0067】
第2トラックSP2の場合でも、X軸方向に直接に前後して配置された隣接する2つのマーキング領域の間に、それぞれ1つのミラー領域が形成されている。したがって上記のマーキング領域M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13又はM14が、ミラー領域S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14又はS15と交互に一列に前後して配置されている。しかしながら、第2トラックSP2の全てのマーキング領域M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13及びM14のX軸方向の空間寸法は互いに等しくなく、同様に、第2トラックSP2の全てのミラー領域S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14及びS15のX軸方向の空間寸法は互いに等しくない。こうして、第2トラックSP2のこれらの異なるマーキング領域及びこれらのミラー領域は、複数の異なる絶対位置をそれぞれ一義的に規定する複数の異なる基準位置のコード化を可能にする。
【0068】
測定ヘッド21は、光源22(例えばLED)を有する。光源22によって光が、ガイドレール2の側面2.1に対してほぼ直角方向へ向けられた光ビーム22.1として放射される。光源22から放射された光の一部が、スケール本体15の第1トラックSP1に入射し、光源22から放射された光22.1の別の一部が、スケール本体15の第2トラックSP2に入射する。リニアエンコーダ11の動作原理は、光源22から放射された光22.1がガイドレール2の側面2.1で規則的に(ミラー状に)反射されることを必要とする。この場合、好ましくは、それぞれの入射ビームが、面法線に対して同じ角度で反射されることが望まれる。
【0069】
図1に示されているように、光源22から放射された光22.1のうちスケール本体15の第1トラックSP1に入射する部分が、第1トラックSP1で反射される。スケール本体15の第1トラックSP1で反射された光は、図1では「RL1」によって示されている光ビームによって示されている。同様に、光源22から放射された光22.1のうちスケール本体15の第2トラックSP2に入射する部分が、第2トラックSP2で反射される。スケール本体15の第2トラックSP2で反射された光は、図1では「RL2」によって示されている光ビームによって示されている。
【0070】
図1にさらに示されているように、測定ヘッド21は、第1トラックSP1で反射した光RL1と第2トラックSP2で反射した光RL2とを検出し、反射した光RL1の強度の空間分布と反射した光RL2の強度の空間分布とを分析するように構成されている電子的光センサチップ25を有する。
【0071】
この目的のために、光センサチップ25が、スケール本体15の第1トラックSP1で反射した光RL1を検出するための複数の光センサから成る第1アレイ25.1と、スケール本体15の第2トラックSP2で反射した光RL2を検出するための複数の光センサから成る第2アレイ25.2とを有し、さらに、複数の光センサから成る第1アレイ25.1の対応する出力信号及び/又は複数の光センサから成る第2アレイ25.2の対応する出力信号を評価するように構成されている(図に示されていない)別の電子要素を有する。
【0072】
本発明によれば、スケール本体15は、個々のマーキング領域、すなわち第1トラックSP1のマーキング領域M及び第2トラックSP2のマーキング領域M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13及びM14が、光源22から放射され、それぞれのマーキング領域に入射する光22.1を実質的に吸収し、光センサから成る第1アレイ25.1の方向に及び/又は光センサから成る第2アレイ25.2の方向に反射させないように設計されている。この場合、スケール本体15の第1トラックSP1で反射された光RL1は、実質的には第1トラックSP1のミラー領域Sで反射された光から成る。同様に、スケール本体15の第1トラックSP2で反射された光RL2は、実質的には第2トラックSP2のミラー領域S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14及びS15で反射された光から成る。
【0073】
上記の状況下では、スケール本体15の第1トラックSP1で反射された光RL1のガイドレール2の長手方向における強度の空間分布が、ガイドレール2の長手方向における第1トラックSP1のミラー領域Sの空間配置に対応する空間変化を有する。同様に、スケール本体15の第2トラックSP2で反射された光RL2のガイドレール2の長手方向における強度の空間分布が、ガイドレール2の長手方向における第2トラックSP2のミラー領域S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14及びS15の空間配置に対応する空間変化を有する。
【0074】
光センサから成る第1アレイ25.1は、ガイドレール2の長手方向に一列に前後して配置されている(図1に示されていない)複数の光センサを有する。同様に、光センサから成る第2アレイ25.2は、ガイドレール2の長手方向に一列に前後して配置されている(図1に示されていない)複数の光センサを有する。
【0075】
可動体3が、ガイドレール2の長手方向に移動されると、測定ヘッド21の光センサから成る第1アレイ25.1及び光センサから成る第2アレイ25.2も、スケール本体15の第1トラックSP1又は第2トラックSP2の長手方向に移動される。この場合、光センサから成る第1アレイ25.1の個々の光センサから検出された第1トラックSP1で反射された光RL1の強度は、可動体3がガイドレール2の長手方向に移動する際に、ガイドレール2の長手方向を基準にした可動体3の位置の関数としての変化を示す。
【0076】
第1トラックSP1は、インクリメンタルトラックとして構成されており、第1トラックSP1の複数のマーキング領域Mは、それぞれ等間隔に前後してガイドレール2の長手方向に配置されているので、光センサから成る第1アレイ25.1の個々の光センサから検出された第1トラックSP1で反射された光RL1の強度は、可動体3がガイドレール2の長手方向に移動する際に、ガイドレール2の長手方向を基準にした可動体3の位置の関数としての周期的な変化を示す。同様に、光センサから成る第1アレイ25.1の個々の光センサは、可動体が3ガイドレール2の長手方向に移動する際に、ガイドレール2の長手方向を基準にした可動体3の位置の関数として周期的に変化する出力信号を生成する。
【0077】
光センサから成る第1アレイ25.1の個々の光センサが、ガイドレール2の長手方向での可動体3の移動の際にそれぞれ出力信号を生成し、当該出力信号の周期的変化が、ガイドレール2の長手方向を基準にする可動体3の位置の関数として数学的な正弦関数又は余弦関数の推移に相当するように、複数の光センサから成る第1アレイ25.1のこれらの光センサを構成することが基本的に可能である。したがって、光センサから成る第1アレイ25.1のこれらの光センサの出力信号を評価することにより、ガイドレール2の長手方向に移動する際に可動体3が推移する変位を決定することができる。
【0078】
上記のように、第2トラックSP2は、基準トラックとして構成されている。この場合、第2トラックSP2の全てのマーキング領域M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13及びM14のX軸方向での空間寸法は互いに等しくなく、同様に、第2トラックSP2の全てのミラー領域S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14及びS15のX軸方向での空間寸法は互いに等しくない。
【0079】
この場合、光センサから成る第2アレイ25.2の個々の光センサから検出された第2トラックSP2で反射された光RL2の強度は、可動体3がガイドレール2の長手方向に移動する際に、ガイドレール2の長手方向を基準にする可動体3の位置の関数としての変化をそれぞれ示す。しかしながら、この変化は、ガイドレール2の長手方向を基準にする可動体3の位置の関数としての周期的な変化を有しない。
【0080】
対応して、光センサから成る第2アレイ25.2の個々の光センサは、可動体3がガイドレール2の長手方向に移動する際に、ガイドレール2の長手方向を基準にする可動体3の位置の関数として非周期的に変化する出力信号をそれぞれ生成する。したがって、複数の光センサから成る第2アレイ25.2のこれらの光センサの出力信号を評価することにより、スケール本体15の第2トラックSP2の複数のマーキング領域及び複数のミラー領域のそれぞれの位置を基準にする可動体3の絶対位置の決定を可能にする。
【0081】
リニアプロファイルレールガイドのガイドレールのための材料としては、一般に、鋼、特にステンレス鋼が使用される。一般に、規格にしたがって研削された(すなわち、研磨されていない(unpolierte))この種のガイドレールの表面は、この表面がむしろ光を散乱反射させるような、平坦な面とは異なり得るプロファイルを有する。
【0082】
光源22から放射された光22.1が、スケール本体15のそれぞれのミラー領域で散乱反射された場合、これは、変位計測システム10の測定精度に影響し得る。
【0083】
それ故に、図1及び2によるガイドレール2の第1側面上にスケール本体15を実現することに関しては、スケール本体15をガイドレール2の側面2.1に形成する前に、本発明の方法によって先ず、特に少量の材料がガイドレール2の第1側面2.1から除去されるように側面2.1を表面処理して、側面2.1の最初に存在する粗度(Rauigkeit)を減少させ、対応して側面2.1を可能な限り滑らかに又は可能な限り平坦に形成することが有益である。
【0084】
プロファイルレールガイドを表面処理するために、ガイドレール2の表面が、側面2.1の領域で特に研磨される。当該研磨処理(Polieren)は、様々な方法で実行されるが、特に、(400以下の)非常に細かい粒度を有するセラミックの研磨ディスク(Schleifscheibe)を用いた予備研磨処理によって実行され、引き続きゴム又は合成樹脂を母材としたポリッシュディスク(Polierscheibe)による研磨処理が実行される。ポリッシュディスクを用いた研磨処理の製造形式の代わりに、レーザ研磨処理又は電子研磨処理又はポリッシュブラシによる研磨処理がある。
【0085】
側面2.1をこのように表面処理した後に、パルス化されたレーザを用いることで、スケール本体15の個々のマーキング領域が、ガイドレール2の第1側面2.1上に最終的に形成される。以下に、本発明の方法にしたがってスケール本体15の個々のマーキング領域を形成するための例を、特に図3A及び3Bを参照して説明する。
【0086】
図3Aは、側面2.1の第1領域B1を(側面2.1を上から見て)示す。第1領域B1では、スケール本体15の第1トラックSP1又は第2トラックSP2の複数のマーキング領域のうちの1つを代表する1つの微細パターンを第1領域B1に形成するために、側面2.1を、パルス化されたレーザによって処理すべきである。
【0087】
スケール本体15の第1トラックSP1又は第2トラックSP2のそれぞれのマーキング領域が、スケール本体15の長手方向に対して横方向に(すなわち、図1及び2ではX軸方向に)それぞれ直線状に延在するので、図3Aによる例では、第1領域B1が、スケール本体15の長手方向に寸法DBXを有し、スケール本体15の長手方向に対して横方向に(すなわち、図1及び2ではY軸方向に)寸法DBYを有する実質的に長方形の形状を成すことが分かる。
【0088】
スケール本体15の第1トラックSP1又は第2トラックSP2の複数のマーキング領域のうちの1つを代表する微細パターンを領域B1内に形成するために、パルス化されたレーザがレーザビームを形成するために提供される。この場合、当該レーザは、連続する複数の光パルスを有するレーザビームを形成する。第1領域B1の1つの部分領域だけが、連続する光パルスのそれぞれ個々の光パルスによって照射されるように、当該レーザビームは、第1側面2.1の領域B1へ向けられる。
【0089】
図3Aによる例では、レーザビームが、このレーザビームの伝搬方向に対して直角方向の面内に、直径DLを有するほぼ円形のビームプロファイルを成すことが前提である。その結果、レーザビームの個々の光パルスが、側面2.1への入射時に円形の形を有するレーザ光によって側面2.1の領域を照射する。この場合、個々の光パルスによって照射されたこの領域の直径は、この例では当該レーザの直径DLにほぼ一致する。
【0090】
この例では、側面2.1への光ビームの個々の光パルスの入射時に、側面2.1が直径Dの円形領域において個々の光パルスにより照射されるので、側面2.1が直径Dの前記円形領域に空間変調の形の変化(それぞれ個々の光パルスによる照射前の表面の形状に比べて)を有するように、照射されることが前提である。したがって、図3Aによる例では、「それぞれ個々の光パルスによって照射された第1領域B1の部分領域」がそれぞれ、直径Dの円によって画定された、側面2.1の領域として示されている。
【0091】
さらに、図3Aによる例では、特に、レーザビームが第1側面2.1の第1領域B1へ、スケール本体15の長手方向(すなわち、X軸方向)での第1領域B1のそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の空間寸法Dが、スケール本体15の長手方向での第1領域B1の空間寸法DBXよりも小さく、且つスケール本体15の長手方向に対して横方向(すなわち、Y軸方向)でのそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の空間寸法Dが、スケール本体15の長手方向に対して横方向の第1領域B1の空間寸法DBYよりも小さくなるように、向けられることが前提である。
【0092】
図3Aによる例では、形成された連続する複数の光パルスのうちの少なくとも複数の光パルスが、空間的に互いに分散して配置されている第1領域B1の複数の異なる部分領域を時間的に連続して照射するように、レーザビームがガイドレール2に対して移動される。この場合、照射された複数の異なる部分領域の個々の部分領域ごとに、照射された複数の異なる部分領域の少なくとも1つの別の部分領域が存在する。当該別の部分領域は、照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域に対して、スケール本体15の長手方向に(すなわち、X軸方向に)及び/又はスケール本体15の長手方向に対して横方向に(すなわち、Y軸方向に)ずらされており、照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域と、当該照射された複数の異なる部分領域の少なくとも1つの別の部分領域とが重複部分を有する。そしてこの場合、照射された複数の異なる部分領域は一緒に、第1領域B1に合同である第1側面の領域を形成する。
【0093】
したがって、レーザビームは、二次元方向に(すなわち、X軸方向及びY軸方向に)ガイドレール2の第1側面2.1の、形成すべきスケール本体15に相当する第1領域B1のマーキング領域上を移動される。その結果、第1領域B1の複数の異なる部分領域が連続的に照射される。
【0094】
複数の光パルスのうちの1つによる1つの部分領域の照射は、ガイドレール2の第1側面2.1を形成する材料(鋼)を局所的に僅かに除去し、及び/又は空間的に再分布させる。その結果、光パルスによる照射後の照射された部分領域の表面の形状が変化する。レーザビームが第1領域B1上を移動され、照射された複数の異なる部分領域のそれぞれが、照射された複数の異なる部分領域の少なくとも1つの別の部分領域との重複部分を必然的に有することによって、ガイドレール2の第1側面2.1が、当該光パルスによる照射後に第1領域B1において空間変調を有することが達成される。その結果、第1領域B1における第1側面2.1の粗度(Rauigkeit)が、当該光パルスによる照射前の状態に比べて、増大する。光パルスによる第1領域の照射は、当該第1側面の微細パターン化を可能にし、照射前の平滑な表面が、照射後に第1領域全体に隆起部分から成るアレイ(「微細パターン」)を有し、このアレイが、ほぼ均一な表面粗度を第1領域B1において呈するようになる。
【0095】
図3Aによる例では、レーザビームの直径DL又は光パルスによって照射された第1領域B1のそれぞれの部分領域の直径Dが、スケール本体15の長手方向での第1領域B1の寸法DBXと、スケール本体15の長手方向に対して横方向の第1領域B1の寸法DBYとに対して、
D<DBX<2D 且つ
D<DBY<nD であり、
ここで、nは、(2以上の)自然数である、
ように、選択されている。
【0096】
さらに、光パルスによって照射されたそれぞれの異なる部分領域が第1領域B1内に、照射された全ての部分領域全体のうち全部でn個の部分領域から成る第1グループが存在するように、配置されていることが前提である。この場合、この第1グループの個々の部分領域が、スケール本体15の長手方向に対して横方向に(すなわち、Y軸方向に)延在する列に配置されていて、当該複数の異なる部分領域の中心点がそれぞれスケール本体15の長手方向に対して横方向に予め設定されている距離だけ互いにずらされているように、互いに配置されている。図3Aに示されているように、上記の複数の部分領域から成る第1グループは全体として、図3Aに符号「L1」によって示された第1領域B1の第1直線区間を形成する。スケール本体15の長手方向に対して横方向のこの第1直線区間の寸法は、第1領域B1の寸法DBYに等しく、スケール本体15の長手方向でのこの第1直線区間の寸法は、光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dに等しい。
【0097】
図3Aでは、上記の複数の部分領域から成る第1グループの第1直線区間L1内に配置された部分領域の全てが示されていないことを述べておく。(より良好に図示する理由から)上記の複数の部分領域から成る第1グループのそれぞれの部分領域のうちの4つの部分領域だけが図示されている。この場合、図3Aのこれらの4つの部分領域は、符号「TB11」、「TB15」、「TB16」及び「TB1n」によって示されている。この場合、部分領域「TB11」が、Y軸を基準にして第1直線区間L1の一方の端部に配置され、部分領域「TB1n」が、第1直線区間L1の他方の端部に(すなわち、部分領域「TB11」に対向して)配置されるように、両部分領域「TB11」及び「TB1n」は、Y軸方向に互いにずらされて配置されている。部分領域「TB16」の中心点が、部分領域「TB15」の中心点に対してY軸方向に距離ΔYだけ相対的にずらされているように、両部分領域「TB15」及び「TB16」は互いに配置されている。この例では、距離ΔYが、光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dの特に半分以上であり、且つ距離ΔYが、光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dの80%未満であるように、選択されている(すなわち、D/2≦ΔY<0.8*D)。したがって、両部分領域「TB15」と「TB16」とは、図3Aでは符号「UY」によって示されている斜線領域として図示されている重複部分を有する。重複部分UYは、Y軸方向に寸法DUYを有する。寸法DUYは、個々の光パルスによって照射されたY軸方向における部分領域の空間寸法Dの20~50%の範囲にある。
【0098】
寸法DUYは、式:DUY=D-ΔYにしたがって、光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dと上記の距離ΔYとに関連している。
【0099】
上記の複数の部分領域から成る第1グループのうちの図3Aに示されていない部分領域に関しては、光パルスによって照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域ごとに、光パルスによって照射された別の1つの部分領域が存在し、この別の部分領域の中心点が、スケール本体15の長手方向に対して直角方向に(すなわち、Y軸方向に)光パルスによって照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域の中心点に対して、図3Aに示された部分領域「TB15」の中心点と部分領域「TB16」の中心点との間の距離ΔYに相当する距離だけずらされているように、複数の異なる部分領域の中心点がそれぞれ、スケール本体15の長手方向に対して直角方向に互いにずらされて相対配置され得ることを述べておく。したがって、上記の複数の部分領域から成る第1グループのそれぞれの部分領域が、上記の複数の部分領域から成る第1グループの別の1つの部分領域との重複部分を有している。当該重複部分は、図3Aに示された部分領域「TB15」と「TB16」との重複部分UYに一致する。
【0100】
図3Aから分かるように、上記の複数の部分領域から成る第1グループに加えて、照射された全ての部分領域のうち全部でn個の部分領域を有する第2グループが存在するように、光パルスによって照射されたそれぞれの異なる部分領域が、第1領域B1内に配置されている。この第2グループの個々の部分領域は、スケール本体15の長手方向に対して直角方向に(すなわち、Y軸方向に)延在する列に配置されており、当該複数の異なる部分領域の中心点がそれぞれスケール本体15の長手方向に対して直角方向に同様に予め設定されている距離だけ互いに相対的にずらされているように、互いに配置されている。図3Aに示されているように、上記の複数の部分領域から成る第2グループは全体として、図3Aに符号「L2」によって示された第1領域B1の第2直線区間を形成する。スケール本体15の長手方向に対して直角方向のこの第2直線区間の寸法は、第1領域B1の寸法DBYに等しく、スケール本体15の長手方向のこの第2直線区間の寸法は、光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dに等しい。
【0101】
図3Aに示されているように、光パルスによって照射された部分領域から成る第2グループの個々の部分領域が、第1領域B1の第2直線区間L2にスケール本体15の長手方向に対して直角方向に、ある程度空間的に分散させて配置されている。当該第2グループは、光パルスによって照射された個々の部分領域の空間分布に類似して、Y軸方向の第1直線区間L1にある部分領域から成る第1グループに対応する。
【0102】
図3Aでは、同様に、上記の複数の部分領域から成る第2グループの第2直線区間L2に配置された部分領域の全てが示されていない。(より良好に図示する理由から)上記の複数の部分領域から成る第2グループのそれぞれの部分領域のうちの4つの部分領域だけが図示されている。この場合、図3Aのこれらの4つの部分領域は、符号「TB21」、「TB25」、「TB26」及び「TB2n」によって示されている。この場合、部分領域「TB21」が、Y軸に対して第2直線区間L2の一方の端部に配置され、部分領域「TB2n」が、第2直線区間L2の他方の端部に(すなわち、部分領域「TB21」に対向して)配置されるように、両部分領域「TB21」及び「TB2n」は、Y軸方向に互いにずらされて配置されている。
【0103】
さらに、光パルスによって照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域ごとに、光パルスによって照射された別の1つの部分領域が存在し、この別の部分領域の中心点が、スケール本体15の長手方向に対して直角方向に(すなわち、Y軸方向に)光パルスによって照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域の中心点に対して、図3Aに示された部分領域「TB15」の中心点と部分領域「TB16」の中心点との間の距離ΔYに相当する距離だけずらされているように、複数の部分領域から成る第2グループの複数の異なる部分領域の中心点がそれぞれ、第1領域B1の第2直線区間L2にスケール本体15の長手方向に対して直角方向に互いにずらされて配置されている。したがって、上記の複数の部分領域から成る第2グループのこれらの部分領域のそれぞれの部分領域が、少なくとも上記の複数の部分領域から成る第2グループの別の1つの部分領域と重複部分を有している。当該重複部分は、図3Aに示された部分領域「TB15」及び「TB16」の重複部分UYに一致する。
【0104】
上記のように、図3Aによる例では、レーザビームの直径DL又は光パルスによって照射された第1領域B1のそれぞれの部分領域の直径Dが、スケール本体15の長手方向の第1領域B1の寸法DBXに対して関係D<DBX<2Dが満たされているように、選択されている。第1領域B1の第1直線区間L1と第1領域B1の第2直線区間L2との双方が、光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dに等しいスケール本体15の長手方向の寸法を有するので、複数の部分領域から成る第1グループのこれらの部分領域の中心点が、Y軸方向に延在する第1直線上に存在し、複数の部分領域から成る第2グループのこれらの部分領域の中心点が、同様にY軸方向に延在する第2直線上に存在するように、複数の部分領域から成る第1グループのこれらの部分領域と複数の部分領域から成る第2グループのこれらの部分領域とが互いに配置されている。この場合、この第1直線とこの第2直線とは、互いに平行に配置されていて、スケール本体15の長手方向に光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dよりも小さい距離ΔXを有する。
【0105】
同様に、第1領域B1の第1直線区間L1と第2領域B1の第2直線区間L2は、重複部分を有し、この重複部分は、Y軸方向の第1領域B1の寸法DBYに相当する長さにわたってY軸方向に延在し、且つ(図3Aに示された)長さDUXにわたってスケール本体15の長手方向に延在する。スケール本体15の長手方向での第1領域B1の第1直線区間L1と第1領域B1の第2直線区間L2との重複部分の寸法DUXは、式:DUX=D-ΔXにしたがって、光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dと上記の距離ΔXとに関連している。
【0106】
同様に、一般に、複数の部分領域から成る第1グループの部分領域と、複数の部分領域から成る第2グループの部分領域とは互いに、複数の部分領域から成る第1グループのそれぞれの部分領域が、複数の部分領域から成る第2グループのうちの少なくとも1つの部分領域との重複部分を有するように配置されている。この重複部分は、スケール本体15の長手方向での第1領域B1の第1直線区間L1と第2領域B1の第2直線区間L2との重複部分の上記の寸法DUXに等しい寸法をスケール本体15の長手方向に有する。
【0107】
図3Aには、同様に、部分領域TB11と部分領域TB21とが、図3Aでは符号「UX」によって示された斜線領域として示されている重複部分を有するように、部分領域TB11と部分領域TB21とは、スケール本体15の長手方向にずらされて配置されていることが例示されている。この重複部分UXは、X軸方向に上記の寸法DUXに等しい寸法を有する。
【0108】
図3Aには、さらに、部分領域TB1nと部分領域TB2nとが、図3Aでは同様に符号「UX」によって示された斜線領域として示されている重複部分を有するように、部分領域TB1nと部分領域TB2nとは、スケール本体15の長手方向にずらされて配置されていることが例示されている。この重複部分UXは、X軸方向に同様に上記の寸法DUXに等しい寸法を有する。
【0109】
図3Aには、さらに、部分領域TB15と部分領域TB25とが、図3Aでは同様に符号「UX」によって示された斜線領域として示されている重複部分を有するように、部分領域TB15と部分領域TB25とは、スケール本体15の長手方向にずらされて配置されていることが例示されている。この重複部分UXは、X軸方向に同様に上記の寸法DUXに等しい寸法を有する。
【0110】
図3Aさらに示されているように、部分領域TB16と部分領域TB26とが、図3Aでは同様に符号「UX」によって示された斜線領域として示されている重複部分を有するように、部分領域TB16と部分領域TB26とは、スケール本体15の長手方向にずらされて配置されていることが例示されている。この重複部分UXは、X軸方向に同様に上記の寸法DUXに等しい寸法を有する。
【0111】
図3Aから分かるように、部分領域「TB26」の中心点が、部分領域TB25の中心点に対してY軸方向に距離ΔYだけ相対的にずらされているように、両部分領域TB25及びTB26は互いに相対配置されている。その結果、両部分領域TB25及び部分領域TB26は、図3Aでは符号「UY」によって示されている斜線領域として示されている重複部分を有する。
【0112】
したがって、図3Aから分かるように、個々の光パルスによって照射された第1領域B1のそれぞれの部分領域TB15,TB16,TB25及びTB26は、重複部分UX及びUYを二次元方向に(すなわち、少なくとも1つのトラックの長手方向と、当該少なくとも1つのトラックの長手方向に対して直角方向に)有する。
【0113】
同様に、個々の光パルスによって照射された第1領域B1の全ての部分領域がそれぞれ、重複部分UX及びUYを二次元方向に(すなわち、少なくとも1つのトラックの長手方向と、当該少なくとも1つのトラックの長手方向に対して直角方向に)有する。
【0114】
距離ΔXは有益には、X軸方向の重複部分UXの寸法DUXが、個々の光パルスによって照射された部分領域のX軸方向の空間寸法の特に20~50%の範囲にあるように、選択される。
【0115】
図3Bは、図3Aと同様に、側面2.1をパルス化されたレーザによって処理すべき、この側面2.1の第1領域B2を(この側面2.1の上から見て)示す。この処理は、スケール本体15の第1トラックSP1又は第2トラックSP2の複数のマーキング領域のうちの1つである微細パターンを第1領域B2に形成するためである。
【0116】
図3Aに例示されているのと同様に、図3Bによる例では、第1領域B2が、スケール本体15の長手方向に寸法DBXを有し、スケール本体15の長手方向に対して直角方向に(すなわち、図1及び2によるY軸方向に)寸法DBYを有するほぼ長方形の形を成すことが前提である。
【0117】
図3Aによる例と同様に、図3Bによる例では、領域B2に形成すべき微細パターンを製造するために、パルス化されたレーザが、レーザビームを形成するために提供される。この場合、当該レーザは、連続する複数の光パルスを形成し、形成された連続する複数の光パルスのそれぞれ個々の光パルスによって、第1領域B2の1つの部分領域だけが照射されるように、当該レーザビームが、第1側面2.1の第1領域B2へ向けられる。
【0118】
図3Aによる例と同様に、図3Bによる例では、レーザビームが、このレーザビームの伝搬方向に対して直角方向の面内に直径DLを有するほぼ円形のビームプロファイルを成すことが前提である。その結果、レーザビームの個々の光パルスが、側面2.1への入射時に円形のるレーザ光によって側面2.1の領域を照射する。この場合、個々の光パルスによって照射されたこの領域の直径は、この例では当該レーザの直径DLにほぼ一致する。
【0119】
図3Aによる例と同様に、図3Bによる例では、側面2.1への光ビームの個々の光パルスの入射時に、この側面2.1が上記直径Dの円形領域において個々の光パルスにより照射されるので、側面2.1が直径Dのこの円形領域に(それぞれ個々の光パルスによる照射前の表面の形状に比べて)空間変調の形態の変化を有するように、照射されることが前提である。したがって、図3Bによる例では、「それぞれ個々の光パルスによって照射された第1領域B2の部分領域」がそれぞれ、直径Dの円によって画定された、側面2.1の領域として示されている。
【0120】
図3Aによる例と同様に、図3Bによる例では、レーザビームが第1側面2.1の第1領域B2へ、スケール本体15の長手方向(すなわち、X軸方向)でのそれぞれ個々の光パルスによって照射された第1領域B2の部分領域の空間寸法Dが、スケール本体15の長手方向での第1領域B2の空間寸法DBXよりも小さく、且つスケール本体15の長手方向に対して直角方向(すなわち、Y軸方向)でのそれぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の空間直径Dが、スケール本体15の長手方向に対して直角方向の第1領域B2の空間寸法DBYよりも小さくなるように、向けられることが前提である。
【0121】
図3Bによる例は、図3Aによる例とは、実質的に次の点で異なる。すなわち、スケール本体15の長手方向に対して直角方向(すなわち、Y軸方向)の図3Bによる第1領域B2の寸法DBYは、スケール本体15の長手方向に対して直角方向の図3Aによる第1領域B1の寸法に等しいものの、スケール本体15の長手方向での第1領域B2の空間寸法DBXは、スケール本体15の長手方向での図3Aによる第1領域B1の寸法よりも遥かに大きい点で異なる。後者は、スケール本体15が第2トラックSP2の領域に複数の異なるマーキング領域を有し、スケール本体15の長手方向でのこれらのマーキング領域の寸法が大きく異なるという要件を考慮している。
【0122】
図3Aによる例では、同様に、スケール本体15の長手方向での第1領域B2の空間寸法DBXが、それぞれ個々の光パルスによって照射された第1領域B2の部分領域のスケール本体15の長手方向での空間寸法Dの2倍よりも遥かに大きいことが前提である(すなわち、DBX>2*D)。
【0123】
図3Bによる例では、レーザビームが同様に、ガイドレール2に対して相対的に、形成された連続する複数の光パルスのうちの少なくとも複数の光パルスが、第1領域B2の空間的に互いにずらされて配置されている複数の異なる部分領域を時間的に連続して照射するように、移動される。この場合、照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域ごとに、照射された複数の異なる部分領域の少なくとも1つの別の部分領域が存在する。当該別の部分領域は、照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域に対してスケール本体15の長手方向に(すなわち、X軸方向に)及び/又はスケール本体15の長手方向に対して横方向に(すなわち、Y軸方向に)、当該照射された複数の異なる部分領域のそれぞれ個々の部分領域と、当該照射された複数の異なる部分領域の少なくとも1つの別の部分領域とが重複部分を有するように、当該ずらされている。この場合、照射された複数の異なる部分領域は一緒に、第1領域B2に合同である第1側面の領域を形成する。
【0124】
したがって、図3Bによる例では、レーザビームは、同様に二次元方向に(すなわち、X軸方向及びY軸方向に)ガイドレール2の第1側面2.1の、形成すべきスケール本体15に相当する第1領域B2のマーキング領域上を移動される。その結果、第1領域B2の複数の異なる部分領域が連続的に照射される。
【0125】
図3Aによる例とは違って、図3Bによる例では、スケール本体15の長手方向での第1領域B2の空間寸法DBXが、それぞれ個々の光パルスによって照射された部分領域の空間寸法Dに比べて比較的大きいため、光パルスによって照射されたそれぞれの異なる部分領域が、照射された全ての部分領域のうちから、複数の部分領域から成る2つ以上の異なるグループが存在するように、第1領域B2に配置されていることが前提である。この場合、複数の部分領域から成る2つ以上の異なるグループのそれぞれのグループが、それぞれ複数の部分領域(図3Aによる例と同様にn個の部分領域)を含み、当該2つ以上の異なるグループのそれぞれのグループの個々の部分領域は、スケール本体15の長手方向に対して直角方向に(すなわち、Y軸方向に)一列に配置されており、同時に、複数の異なる部分領域の中心点がそれぞれスケール本体15の長手方向に対して直角方向に予め設定されている距離だけ互いに相対的にずらされているように互いに配置されている。この場合、複数の部分領域から成る2つ以上の異なるグループは、部分領域から成る異なるグループのうちの1つのグループの部分領域の中心点が、部分領域から成る異なるグループのうちの別のそれぞれのグループの部分領域の中心点に対してスケール本体15の長手方向に(すなわち、X軸方向に)予め設定されている距離だけずらされている点で相違する。
【0126】
図3Bによる例では、複数の部分領域から成る7つの異なるグループが存在することが前提である(代わりに、7つよりも多いか又は7つよりも少ない異なるグループが存在してもよい)。図3に示されているように、部分領域から成る7つの異なるグループの各グループのそれぞれの部分領域が、第1領域B2の1つの直線区間を形成する。スケール本体15の長手方向に対して直角方向でのこの直線区間の寸法は、第1領域B2の寸法DBYに等しく、スケール本体15の長手方向でのこの直線区間の寸法は、光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dに等しい。
【0127】
部分領域から成る7つの異なるグループのうちの1つのグループの部分領域の中心点が、部分領域から成る7つの異なるグループのうちの別のそれぞれのグループの部分領域の中心点に対してスケール本体15の長手方向に(すなわち、X軸方向に)予め設定されている距離だけずらされているので、当該7つの異なるグループの複数の部分領域が、第1領域B2の全部で7つの直線区間を形成する。これらの直線区間は、図3Bでは符号「L1」、「L2」、「L3」、「L4」、「L5」、「L6」又は「L7」によって示されている。
【0128】
図3Bには、第1領域B2の7つの直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7のそれぞれ1つの直線区間に割り当てられている、光パルスによって照射された部分領域は示されていない。これに関連して、7つの直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7の、光パルスによって照射された個々の部分領域の配置は、図3Aによる第1領域B1の第1直線区間L1又は第2直線区間L2内の光パルスによって照射された個々の部分領域の配置に類似することが前提である。
【0129】
図3Bに示されているように、第1領域B2の7つの直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7の各直線区間にある、光パルスによって照射された個々の部分領域の中心点はそれぞれ、Y軸方向に延在する直線上に存在する。図3Bによる例では、直線区間L1に割り当てられている、光パルスによって照射された複数の部分領域の中心点が、直線区間L2に割り当てられている、光パルスによって照射された複数の部分領域の中心点に対してスケール本体15の長手方向に(すなわち、X軸方向に)光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dよりも小さい距離ΔXを有するように、第1領域B2の7つの直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7は互いに配置されている。同様に、直線区間L2に割り当てられている、光パルスによって照射された複数の部分領域の中心点が、直線区間L3に割り当てられている、光パルスによって照射された複数の部分領域の中心点に対してスケール本体15の長手方向に(すなわち、X軸方向に)同様に上記の距離ΔXを有する。第1領域B2の残りの直線区間L4、L5、L6又はL7は、第1領域B2の直線区間L1、L2及びL3と同様に配置されている:7つの直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7の光パルスによって照射された個々の部分領域の中心点はそれぞれ、スケール本体15の長手方向にそれぞれ前後して等間隔に配置されていてY軸方向に延在する異なる直線上に存在する。この場合、これらの直線のそれぞれ2つの隣接した直線同士間の距離が、(図3Bに示されているように)上記の距離ΔXに一致する。
【0130】
距離ΔXが、光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域の直径Dよりも小さいことが前提とされているので、第1領域B2の直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7は、スケール本体15の長手方向に、直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7のそれぞれの直線区間が、直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7の別の1つの直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7との、図3Bでは斜線領域として示され符号「UX」によってそれぞれ示されている重複部分をそれぞれ有するように、ずらされて配置されている。同様に、直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7のそれぞれ2つの直線区間同士間のそれぞれの重複部分UXは、次の方程式:DUX=D-ΔXによる上記の距離ΔXに関連する寸法DUXをX軸方向に有する。
【0131】
同様に、直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7のうちの1つの直線区間に割り当てられている、光パルスによって照射されたそれぞれの部分領域は、直線区間L1、L2、L3、L4、L5、L6又はL7のうちの1つの別の直線区間に割り当てられている、光パルスによって照射された少なくとも1つの別の部分領域との重複部分を、図3Bに示された複数の重複部分UXのうちの1つの重複部分UXの領域に有する。
【0132】
図3Bによる例では、特に距離ΔXが、X軸方向の重複部分UXの寸法DUXが、個々の光パルスによってX軸方向に照射された部分領域の空間寸法Dの20~50%の範囲にあるように、選択される。
【0133】
以下に、(鋼から成る)ガイドレールの側面2.1上のスケール本体15の構成を、図1及び2を参照して説明する。
【0134】
図4-7は、図1及び2に示されたスケール本体15の、プロファイルレールガイドのガイドレールの側面での実現例を示す。これらの実現例では、ガイドレールの側面にあるスケール本体15のそれぞれのマーキング領域内に微細パターンを形成するため、例えば、355nmの波長、300mWの最大出力電力、15ナノ秒未満のパルス期間及び16mmの開口径による短パルスレーザが使用された。当該微細パターンを形成するために、レーザビームを、ガイドレールに対して200mm/秒の走査速度で移動されることができた。この場合、当該レーザは、光パルス列を60kHzの反復率(パルス周波数)によって形成し、レーザ電力に対して、通常通り最大出力電力の90%が選択された。
【0135】
レーザビームは、円形のプロファイルを有し、ガイドレールの側面に、レーザビームの個々の光パルスが、ガイドレールの側面上で約8μmの直径Dを有する部分領域を照射するように適用された。
【0136】
図4は、上記の短パルスレーザを用いた本発明の方法によってガイドレールの側面上に形成された図2によるスケール本体の顕微鏡による平面図である。図4の上半分は、スケール本体15の第1トラックSP1(インクリメンタルトラック)を上から見て示し、図4の下半分は、スケール本体15の第2トラックSP2(基準トラック)を上から見て示す。
【0137】
図4の明るい領域は、スケール本体15のそれぞれのミラー領域に相当する一方で、図4の暗い領域は、上記の短パルスレーザによってガイドレールの側面に形成されたスケール本体15のそれぞれのマーキング領域を示す。
【0138】
図4に示された側面は、スケール本体15を形成する前に研磨処理された。その結果、(レーザ走査顕微鏡によって測定された)この側面の平均粗さ値(Ra)は、Ra=0.007μmであった。図4の上半分に示された第1トラックSP1(インクリメンタルトラック)の個々のマーキング領域は、スケール本体15の長手方向に(すなわち、図4に示された座標系のX軸方向に)約100μmの寸法を有する。
【0139】
図4に示されたスケール本体15のマーキング領域は、図3Bに示された例に対応して提供された。この場合、パラメータD及びΔXは、:D=8μm及びΔX=5μmであるように選択された。
【0140】
図4に示された側面の場合、レーザパルスによる照射は、それぞれのマーキング領域における当該側面が、それぞれのマーキング領域の全面にわたって均一の粗さを有するという効果をもたらした。この場合、(レーザ走査顕微鏡によって測定された)当該マーキング領域内の平均粗さ値(Ra)は、Ra=0.162μmであった。
【0141】
この粗さに起因して、図4に示されたスケール本体のそれぞれのマーキング領域は、当該マーキング領域に(例えば、側面に対して直角方向に)入射する光を直接に反射させず、それ故に図4では側面に対してほぼ直角方向に入射する光においては暗い(黒い)均一な面領域として認識可能である。
【0142】
図5は、図4のように、上記の短パルスレーザを用いた本発明の方法によってガイドレールの側面に形成されたスケール本体15の顕微鏡による平面図であるが、スケール本体15のそれぞれのマーキング領域の外輪郭とそれぞれのミラー領域の外輪郭とがより明確に認識可能であるように、スケール本体15をより大きく拡大して示す。図5では、この図5の上の領域において、スケール本体15の第1トラック(インクリメンタルトラック)のマーキング領域のうちの全部で5つのマーキング領域が認識可能であり、図5の下の縁部では、スケール本体15の第2トラック(基準トラック)のマーキング領域のうちの全部で2つのマーキング領域が認識可能である。短パルスレーザによって形成された複数のマーキング領域を詳しく観察すると、当該短パルスレーザによって形成された光パルスの作用に起因して、マーキング領域の外縁部において隣接する(研磨処理された)それぞれのミラー領域に突出し得る(表面に付着する小さい粒子の形態の)材料残留物が発生することが認識可能である。結果として、図5から見ると、それぞれのマーキング領域がそれらの縁部において、真っすぐな直線で画定されていないように見える。これは、特に、図5によればスケール本体15の長手方向に対して直角方向に(すなわち、図5に示されている座標系のY軸方向に)それぞれ延在するマーキング領域の縁部に該当するものであり、したがってスケール本体15の長手方向でのこのスケール本体15の光学走査に起因する、リニアエンコーダの測定精度に影響を及ぼし得る。
【0143】
上記の短パルスレーザによるマーキング領域の形成時に発生し得る上記の材料残留物は、適切な洗浄剤を用いた表面洗浄工程によって完全に除去され得る。
【0144】
さらに、材料である鋼又はステンレス鋼から成るガイドレールの表面を短パルスレーザによって照射することは、クロム欠乏(すなわち、鋼に含まれているクロム成分の濃度の減少)が引き起こされ得るという効果をもたらし得る点を指摘する。このようなクロム欠乏は、ガイドレールの表面の(特にスケール本体のマーキング領域における)耐腐食性を低下させ得て、それ故にスケール本体の可能な限り長期間の望ましい耐久性に関して不利である。上記の効果に対抗するため、特に、スケール本体をガイドレールの側面に形成した後に、この側面の不動態化処理(パッシベーション)が、適切なパッシベーション剤によって実行される。
【0145】
ステンレス鋼の表面を洗浄するための洗浄剤としては、上記の目的のために、Borer Chemie AG(Gewerbestrasse 13, 4528 Zuchwil)会社によって製造され販売される、例えば「deconex MT 19」の名称で知られている強アルカリ洗浄剤が適している。
【0146】
ステンレス鋼の表面を不動態化処理するためのパッシベーション剤としては、上記の目的のために、同様にBorer Chemie AG(Gewerbestrasse 13, 4528 Zuchwil)会社によって製造され販売される、例えば「deconex MT 41」の名称で知られている強酸性洗浄剤が適している。
【0147】
特に以下の連続する洗浄工程が、スケール本体を上記の種類の短パルスレーザによって側面に形成した後にガイドレールの側面を洗浄し不動態化処理するために適していることが知られている:
1.55℃及び25kHz;15W/Lの条件で、2%の濃度の「deconex MT 19」によって洗浄し、
2.55℃及び40kHz;15W/Lの条件で、8%の「deconex MT 41」によってパッシベーションし、
3.室温及び40kHz;15W/Lの条件で、超純水によって洗い流し、
4.100℃で乾燥する。
【0148】
図6は、上記の超音波洗浄工程の実行後の図5によるスケール本体の平面図である。図5に比べて、上記の洗浄工程の実行後のマーキング領域が、ほぼ直線状に画定されていることを明確に認識することができる。マーキング領域の外縁部では、隣接するそれぞれのミラー領域に突出する材料残留物がもはや認識不可能である。
【0149】
図7は、図6に示されたマーキング領域の一部を拡大して示す。当該拡大図は、上記の超音波洗浄工程の実行後の個々のマーキング領域の表面の構造の詳細を示す。特に、マーキング領域の全面にわたって均一である表面の粗さが目視可能である。
【0150】
既に説明したように、説明した方法にしたがって側面2.1上にスケール本体15を形成する前にガイドレール2の側面2.1が有する粗度は、反射された光RL1又はRL2の強度に多大な影響を及ぼす。光RL1又はRL2は、図1によるリニアエンコーダ11では、説明した方法にしたがって側面2.1上に形成されたスケール本体15の第1トラックSP1のそれぞれのミラー領域又は第2トラックSP2のそれぞれのミラー領域で反射され、複数の光センサから成る第1アレイ25.1のそれぞれの光センサ又は複数の光センサから成る第2アレイ25.2のそれぞれの光センサによって検出される。同様に、説明した方法にしたがって側面2.1上にスケール本体15を形成する前にガイドレール2の側面2.1が有する粗度は、それぞれの出力信号の大きさにも多大な影響を及ぼす。この出力信号を光センサから成る第1アレイ25.1のそれぞれの光センサが、スケール本体15の第1トラックSP1で反射された光RL1の検出時に生成し、スケール本体15の第2トラックSP2で反射された光RL2の検出時に生成する。同様に、説明した方法にしたがって側面2.1上にスケール本体15を形成する前にガイドレール2の側面2.1が有する粗度は、変化の振幅にも多大な影響を及ぼす。当該変化の振幅は、ガイドレール2の長手方向に測定ヘッド21が移動する際に、ガイドレール2の長手方向を基準にする測定ヘッド21のそれぞれの位置に依存して、第1アレイ25.1のそれぞれの光センサの出力信号、及び第2アレイ25.2のそれぞれの光センサの出力信号を示す。
【0151】
説明した方法にしたがって側面2.1上にスケール本体15を形成する前にガイドレール2の側面2.1が有する粗度の上記の影響を実験的に評価するために、複数の異なるガイドレール2の側面2.1上に図2に示されたスケール本体15が、説明した方法にしたがってそれぞれ形成された。この場合、複数のガイドレールのうちの1つの側面2.1が、スケール本体15を形成する前に規格にしたがって研削されたが、(当該規格にしたがった研削後に)研磨処理されず、別のガイドレール2の1つの側面が、まず規格にしたがって研削され、引き続き(当該規格にしたがった研削後に)特に、(400以下の)非常に細かい粒度を有するセラミック研削ディスクを用いた予備研磨処理と、引き続くゴム又は合成樹脂を母材としたポリッシュディスクとによって、又は代わりにポリッシュブラシを用いた研磨処理によってさらに研磨処理された。
【0152】
この場合、スケール本体15は、図4-7に示されたスケール本体15を実現するために使用された同じ短パルスレーザ(短パルスレーザの同じ動作パラメータを使用して)によってそれぞれのガイドレール2の側面2.1にそれぞれ形成された。
【0153】
したがって、レーザビームは、円形のプロファイルを有し、当該レーザビームの個々の光パルスがそれぞれのガイドレールの側面2.1上に約8μmの直径Dを有する部分領域を照射したように、それぞれのガイドレール2の側面2.1に適用された。それぞれのスケール本体15のマーキング領域が、図3Bに示された例にしたがって提供された。この場合、パラメータD及びΔXは、D=8μm及びΔX=5μmであるように選択された。この場合、それぞれのスケール本体15の第1トラックSP1は、スケール本体15の個々のマーキング領域M及び個々のミラー領域Sが、このスケール本体15の長手方向に約100μmのそれぞれ1つの寸法を有するように、それぞれ実現された。
【0154】
図1に示された変位計測システム10を形成するために、異なるガイドレールの側面2.1にこうして提供されたスケール本体15のそれぞれ個々のスケール本体15が、引き続き、図1に示されたセンサ装置20と組み合わせられた。
【0155】
異なるガイドレールの側面2.1にこうして提供された複数のスケール本体15のそれぞれ個々のスケール本体15を特徴付けるために、スケール本体15のそれぞれ個々のスケール本体15が、センサ装置20によって光学走査された。この場合、センサ装置20が、(図1に示されているように)それぞれのスケール本体15の長手方向に移動され、このときにそれぞれのスケール本体15が、光源22から放射された光ビーム22.1によって照射され、第1トラックSP1のそれぞれのミラー領域で反射した光RL1が、電子的光センサチップ25の光センサから成る第1アレイ25.1の光センサによって検出された。
【0156】
この場合、光センサから成る第1アレイ25.1は、光センサから成る第1アレイ25.1の光センサが、それぞれのスケール本体15の長手方向でのセンサ装置20の移動の際に出力信号を生成するように、構成された。当該出力信号は、スケール本体15の長手方向を基準にしたセンサ装置20の位置の関数として最大信号値Smaxと最小信号値Sminとの間で、数学的な正弦関数又は余弦関数の推移に相当する周期的な変化によって周期的に変化する。光センサから成る第1アレイ25.1の光センサのうちの1つの光センサのそれぞれの出力信号のこの周期的な変化を特徴付けるために、光センサから成る第1アレイ25.1の光センサのうちの1つの光センサのそれぞれの出力信号の「信号コントラスト」Kを決定することが有益である。この信号コントラストKは、これに関連して、スケール本体15の長手方向を基準にしたセンサ装置20の位置の関数としてのそれぞれの出力信号の変化の「振幅」(Smax-Smin)/2と、それぞれの出力信号の「平均値」(すなわち、(Smax+Smin)/2)とそれぞれの光センサの「基準出力信号」S0、すなわち光源22がオフにされていて、したがってスケール本体15を照射するための光ビームを形成しないという条件の下で測定されたそれぞれの光センサの出力信号との間の差とから成る比として定義され得る。すなわち、第1アレイ25.1の光センサのうちの1つの光センサのそれぞれの出力信号の信号コントラストKは、
K=(Smax-Smin)/(Smax+Smin-2*S0).
として計算される。
【0157】
一般に、信号コントラストKは、0と1の間の値を取る。
【0158】
説明した方法にしたがって側面2.1にスケール本体15を形成する前にガイドレール2の側面2.1が有する粗度は、センサ装置20の光センサから成る第1アレイ25.1の光センサのうちの1つの光センサのそれぞれの出力信号の上記の「信号コントラスト」Kの大きさに明らかに顕著な影響を及ぼす。
【0159】
スケール本体15を形成する前に規格にしたがって研削されたが、(当該規格にしたがった研削後に)研磨処理されなかったガイドレール2の側面2.1に、説明した方法にしたがってスケール本体15が形成された場合、センサ装置20の光センサから成る第1アレイ25.1の光センサのそれぞれのセンサ出力信号が、スケール本体15の第1トラックSP1の光学走査時に信号コントラストK=0.29を示す。
【0160】
それぞれのスケール本体15を形成する前にまず規格にしたがって研削され、引き続き(当該規格にしたがった研削後に)さらに研磨処理されたガイドレール2の側面2.1に、説明した方法にしたがってスケール本体15が形成された場合、センサ装置20の光センサから成る第1アレイ25.1の光センサのそれぞれの光センサ出力信号は、それぞれのスケール本体15の第1トラックSP1の光学走査時に0.5~0.65の範囲のそれぞれ1つの信号コントラストKを示す(これは、それぞれのガイドレール2の側面2.1を研磨処理するために使用されたそれぞれの方法に依存し、したがってそれぞれのスケール本体15が説明した方法にしたがって形成されたそれぞれの側面2.1の、当該研磨処理によって得られた粗度の減少の程度に依存する)。
【0161】
したがって、それぞれのスケール本体15を形成する前に側面2.1を研磨処理することによって、センサ装置20の光センサから成る第1アレイ25.1の光センサの出力信号の信号コントラストKが、それぞれのスケール本体15の第1トラックSP1の光学走査時に著しく向上され得る。上記の信号コントラストKのそれぞれの大きさは、図1に示された変位計測システム10又は図1に示されたリニアエンコーダ11の測定精度にとって重要である:信号コントラストKが大きいほど、精度はより大きい。センサ装置20の光センサから成る第1アレイ25.1の光センサの出力信号を評価することによって、それぞれのスケール本体15の長手方向でのセンサ装置20のそれぞれの位置が、当該精度をもって算出され得る。
【0162】
説明したように、スケール本体15の上記の実施の形態では、個々の光パルスによって照射されたそれぞれのマーキング領域Mの全ての部分領域がそれぞれ、重複部分UX及びUYを二次元方向に(すなわち、少なくとも1つのトラックの長手方向と、当該少なくとも1つのトラックの長手方向に対して直角方向に)有するように、スケール本体15の個々のマーキング領域が、側面2.1に提供されることがそれぞれ提唱されている。照射された異なる部分領域同士間のそれぞれの重複部分UX及びUYは、個々のミラー領域Sの反射率に比較して、それぞれのマーキング領域Mの反射率に影響を及ぼす。それぞれのマーキング領域Mの反射率は、それぞれの重複部分UX及びUYの大きさを適切に選択することによって特に最小にされ得る。これは、それぞれのスケール本体15の第1トラックSP1の光学走査時に、センサ装置20の光センサから成る第1アレイ25.1の光センサの出力信号のそれぞれの信号コントラストKを向上させることを可能にする。
【0163】
マーキング領域Mの照射された異なる部分領域のそれぞれの重複部分の大きさの影響を特徴付けるために、例えば、それぞれのマーキング領域Mの反射率に及ぼす重複部分UXの大きさの影響が評価された。
【0164】
このために、本発明の方法を用いることで、図2に示された種類のスケール本体15の第1トラックSP1に対して3つの領域例(以下では、「領域例1」、「領域例2」及び「領域例3」)が、側面2.1にそれぞれ並べて製造された。この場合、側面2.1は、異なる第1トラックSP1のマーキング領域Mを提供する前に当該側面の全ての領域で均一に研磨処理された。
【0165】
ここで、レーザビームは、円形のプロファイルを有しており、当該レーザビームの個々の光パルスが側面2.1で部分領域を照射するように、この側面2.1に適用された。それぞれのスケール本体15のマーキング領域が、図3Bに示された例にしたがって提供された。パラメータD及びΔYは、D=15.2μm及びΔY=5μmであるように選択された。この場合、それぞれのスケール本体15の第1トラックSP1は、スケール本体15の個々のマーキング領域M及び個々のミラー領域Sがスケール本体15の長手方向にそれぞれ約100μmの寸法を有するように、それぞれ実現された。
【0166】
したがって、上記の領域例1、領域例2及び領域例3による第1トラックSP1の実施の形態の距離ΔYは等しい。この距離ΔYは、第1トラックSP1のX軸方向に対して直角方向又は長手方向に対して直角方向にレーザパルスによってそれぞれ照射された重複部分UYの寸法DUYを実質的に決定する(本例の場合、DUY=D-ΔY=10.2μm)。
【0167】
上記の領域例1、領域例2及び領域例3による第1トラックSP1の実施の形態の距離ΔYは異なる。この距離ΔXは、第1トラックSP1のX軸方向又は長手方向の重複部分UXの寸法DUXを実質的に決定する。この場合、ΔXは、領域1に対してΔX=5μm;領域2に対してΔX=8μm;領域3に対してΔX=15.2μmであるように選択された。
【0168】
上記の実施の形態の領域例1、領域例2及び領域3による第1トラックSP1が、上記のセンサ装置20によって走査され、これらの実施の形態ごとに、センサ装置20の光センサから成る第1アレイ25.1の光センサのそれぞれの出力信号が、スケール本体15の第1トラックSP1の光学走査時に測定された。この場合、領域例1、領域例2及び領域例3による第1トラックSP1の上記の実施の形態ごとに、センサ装置20の光センサから成る第1アレイ25.1のうちの1つの光センサのそれぞれの出力信号の信号コントラストKがそれぞれ算出された。
【0169】
下記の表1には、上記の領域例1、領域例2及び領域例3による第1トラックSP1の実施の形態ごとに、第1トラックSP1のX軸方向又は長手方向の重複部分UXの信号コントラストK、距離ΔX及び寸法DUXに対して算出されたそれぞれの値が示されている。
【表1】
【0170】
表1から分かるように、領域例3の場合には、異なる部分領域が第1トラックSP1の長手方向に重複部分UXを有しない(すなわち、DUX=0)ように、レーザパルスによって照射された異なる部分領域が、マーキング領域M内に分布している。これに対して、領域例1及び領域例2の場合には、それぞれ1つの重複部分UX(このとき、DUX>0)が存在する。
【0171】
表1から分かるように、領域例1及び2に対する信号コントラストKはそれぞれ、領域例3に対する信号コントラストKに対応する値よりも大きい。したがって、(DUX=0である)領域例3との比較では、第1トラックSP1の長手方向の重複部分UXの寸法DUXが大きくなると、信号コントラストKが向上し、したがってマーキング領域Mの反射率が減少する。
【0172】
スケール本体15をガイドレールの表面に本発明にしたがって形成するため、上記の短パルスレーザの代わりに、ピコ秒の範囲内のパルス期間、例えば10ピコ秒未満のパルス期間を有する超短パルスレーザを使用することも考えられる点を指摘する。このような超短パルスレーザの使用は、光パルスによって照射された表面領域の熱負荷が減少されたスケール本体の形成を可能にする。これは、スケール本体の形成後に、洗浄し不動態化するための上記の方法が省略され得るという効果を奏する。
【0173】
図1に関連して、ガイドレール2が、-第2側面2.2から見て-特に内ねじを有する少なくとも1つの、特に複数の有底孔を備える点を指摘する。この場合、ガイドレール2の第1側面2.1は、特に孔なしに形成され得る。後者は、ガイドレール2を上記の(図1に示されていない)有底孔によって任意の構造体に固定することを可能にする。この場合、第1側面2.1の全面は、専らスケール本体を形成するために提供される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】