(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005486
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】離床検出装置と離床検出方法と機械学習装置
(51)【国際特許分類】
A61G 12/00 20060101AFI20240110BHJP
A61G 7/05 20060101ALI20240110BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240110BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61G12/00 Z
A61G7/05
A61B5/11 100
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105686
(22)【出願日】2022-06-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月9日に、第38回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム(オンライン開催)にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
(71)【出願人】
【識別番号】593008427
【氏名又は名称】日本電子精機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502041059
【氏名又は名称】学校法人森ノ宮医療学園
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【弁理士】
【氏名又は名称】老田 政憲
(72)【発明者】
【氏名】岩田 史郎
(72)【発明者】
【氏名】今若 直人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安部 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】栗崎 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】丸野 正徳
(72)【発明者】
【氏名】中村 英夫
(72)【発明者】
【氏名】藤江 建朗
【テーマコード(参考)】
4C038
4C040
4C341
5C086
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB01
4C038VB24
4C038VB28
4C040AA18
4C040DD03
4C040GG15
4C341JJ03
4C341LL10
4C341MR17
4C341MR18
4C341MS12
5C086AA22
5C086AA49
5C086BA01
5C086BA07
5C086BA17
5C086CA06
5C086CB27
5C086EA40
5C086EA45
5C086FA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象者のベッド離床時の転倒を未然に防ぐことができる離床検出装置と離床検出方法と機械学習装置を提供する。
【解決手段】複数のアンテナ部10と、アンテナ部10と接続される信号線12と、信号線12と接続される接続部13と、を有するセンサーユニット20と、接続部13と接続され、アンテナ部10からの信号を測定する信号測定部14と、信号測定部14を制御する制御部15と、を有する制御ユニット21と、を含み、複数のアンテナ部10が、2列以上、2行以上で格子状に配列された離床検出装置22を用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ部と、前記アンテナ部と接続される信号線と、前記信号線と接続される接続部と、を有するセンサーユニットと、
前記接続部と接続され、前記アンテナ部からの信号を測定する信号測定部と、前記信号測定部を制御する制御部と、を有する制御ユニットと、
を含み、
前記複数のアンテナ部が、2列以上、2行以上で格子状に配列される、離床検出装置。
【請求項2】
前記センサーユニットは、対象者の失禁対策などを目的として、対象者の臀部から腰部周辺に敷設される防水シーツと併設、又は一体型として敷設される請求項1に記載の離床検出装置。
【請求項3】
前記配列は、少なくとも2行6列で配列される請求項1に記載の離床検出装置。
【請求項4】
ベッドのリクライニングの可動帯で区切られる前記ベッドの座面の複数の領域に対し、前記配列は、前記可動帯にまたがって1つの前記アンテナ部が配置されない請求項1に記載の離床検出装置。
【請求項5】
前記配列のいずれかの1行は、ベッド上の使用者の臀部が位置する臀部領域に配置される請求項1に記載の離床検出装置。
【請求項6】
前記配列のいずれかの1行は、前記臀部領域以外で、前記臀部領域よりも頭部側の領域に配置される請求項5に記載の離床検出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記格子状に配列された複数のアンテナ部から、対象者の姿勢ならびに動作のピクセルデータを導出し、
予め設定された報知判定部を用いて、離床についての姿勢又は動作を判別し、判別結果に応じて報知出力を行う請求項1に記載の離床検出装置。
【請求項8】
前記報知判定部に、前記対象者ごとに基準を設定し、報知出力する請求項7記載の離床検出装置。
【請求項9】
前記報知判定部として、予め機械学習された判別器を用いる請求項7に記載の離床検出装置。
【請求項10】
2列以上、2行以上で格子状に配列されている複数のアンテナ部の信号を受信する受信工程と、
前記信号を受け、処理をする処理工程と、
前記処理された信号から、対象者の姿勢を判別する判別工程と、を有する離床検出方法。
【請求項11】
前記判別工程で、複数の連続する時間での前記処理された信号から、前記対象者の動作を判別する請求項9記載の離床検出方法。
【請求項12】
離床検出装置において、前記センサーユニットからの信号により前記対象者の姿勢又は動作を判別する機械学習装置であって、
前記センサーユニットからの信号を受ける信号測定部と、
前記信号を処理する信号処理部と、
前記信号と前記対象者の姿勢又は動作との教師データにより学習する学習部と、
を含む機械学習装置。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の離床検出装置において、前記センサーユニットからの信号により前記対象者の姿勢又は動作を判別する機械学習装置であって、
前記センサーユニットからの信号を受ける信号測定部と、
前記信号を処理する信号処理部と、
前記信号と前記対象者の姿勢又は動作との教師データにより学習する学習部と、
を含む機械学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離床検出装置と離床検出方法と機械学習装置に関する。特に、対象者の姿勢ならびに動作がわかる離床検出装置と離床検出方法と機械学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療施設、介護施設あるいは一般家庭において、高齢者などの対象者のベッド離床時の転倒事故が数多く報告されており、医療施設においては、入院期間の長期化や患者死亡の起因となりうるため、重大なインシデントと捉えられている。
現在、対象者のベッド離床時の転倒を未然に防ぐことを目的として,対象者の離床を、検出し、発報を行う装置があった(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-140157号公報
【特許文献2】特開2005-028059号公報
【特許文献3】特開2004-105416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の離床検出装置では、単に対象者が在か、不在かのみしかわからず、対象者のベッド離床時の転倒を未然に防ぐことができなかった。
【0005】
よって、本願の課題は、対象者のベッド離床時の転倒を未然に防ぐことができる離床検出装置と離床検出方法と機械学習装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、複数のアンテナ部と、上記アンテナ部と接続される信号線と、上記信号線と接続される接続部と、を有するセンサーユニットと、
上記接続部と接続され、上記アンテナ部からの信号を測定する信号測定部と、上記信号測定部を制御する制御部と、を有する制御ユニットと、
を含み、
上記複数のアンテナ部が、2列以上、2行以上で格子状に配列された離床検出装置を用いる。
【0007】
また、2列以上、2行以上で格子状に配列されている複数のアンテナ部の信号を受信する受信工程と、
上記信号を受け、処理をする処理工程と、
上記処理された信号から、対象者の姿勢ならびに動作を判別する判別工程と、を有する離床検出方法を用いる。
【0008】
さらに、離床検出装置において、上記センサーユニットからの信号により上記対象者の姿勢ならびに動作を判別する機械学習装置であって、
上記センサーユニットからの信号を受ける信号測定部と、
上記信号と上記対象者の姿勢又は動作の教師データにより学習する学習部と、
を含む機械学習装置を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本願の離床検出装置と離床検出方法と機械学習装置では、対象者のベッド離床を検知し、離床時の転倒を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)実施の形態1の離床検出装置の構成図、(b)実施の形態1の離床検出装置の外観図
【
図2】実施の形態1の離床検出装置の使用方法を説明する図
【
図4】(a)~(d)実施の形態2のベッドの側面図、(e)~(h)実施の形態2のベッドの使用状態の一例を示す側面図、(i)(b)および(f)のベッドの上面図
【
図5】(a)~(d)
図4(a)~
図4(d)に対応する側面図であり、センサーユニットの配置を示す図、(e)~(h)
図4(e)~
図4(h)に対応する側面図であり、センサーユニットの配置を示す図
【
図6】(a)実施の形態2のベッドのプレート51a~51dの配置を示す上面図、(b)~(d)(a)のベッドでのセンサーユニットのアンテナ部の位置を示す上面図
【
図8】(a)実施の形態2のセンサーユニットからのRAWデータであり、信号測定部が受けるデータ、(b)RAWデータを信号処理部で処理したデータ、(c)実施の形態2のセンサーユニットでのアンテナ部の番号23を示す図、(d)~(g)、(b)の結果を示すセンサーユニットの平面図
【
図9】(a)実施の形態2の学習済判別器を完成させるプロセスを示す図、(b)実施の形態2の学習済の姿勢判別器と学習済の動作判別器とを用いたプロセスを示す図
【
図10】実施の形態2の機械学習部61の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
<構造>
図1(a)は、離床検出装置22の構成図である。離床検出装置22は、センサーユニット20と制御ユニット21とを含む。
図1(a)では、センサーユニット20の構成と、制御ユニット21の構成とを示している。制御ユニット21では、各要素が電気回路で繋がっている。
図1(b)は、離床検出装置22の外観図である。
【0012】
センサーユニット20は、対象者31の在床姿勢ならびに動作を測定するセンサーを有する部分である。対象者31は、高齢者、患者、その他、体が不自由な方などである。対象者としては、子供や赤ん坊などでもよい。
【0013】
制御ユニット21は、センサーユニット20を制御する部分である。
【0014】
センサーユニット20は、絶縁性があり、防水性があるカバー41で覆われているのが好ましい。カバー41は、対象者31の失禁対策などを目的とした帯状の防水シーツが好ましい。センサーユニット20と防水シーツは併設もしくは一体型として敷設されるのが好ましい。カバー41とともに、センサーユニット20も廃棄できるのが好ましい。センサーユニット20が、臀部の周辺に少なくとも配置されるので、センサーユニット20は、対象者の失禁対策のシートの一部としても活用することができる。
<センサーユニット20>
センサーユニット20は、基材25、アンテナ部10、アンテナ接続部11、信号線12、接続部13を含む。
【0015】
基材25は、柔軟な絶縁シートであり、その上にアンテナ部10、アンテナ接続部11、信号線12を有する。基材25は、例えば、樹脂フィルム、布、紙などである。
アンテナ部10は、自己容量式静電容量測定用の信号測定部14により、アンテナ部10と対象者31の間の静電容量を測定することで両者の接近度合いを測定する。アンテナ部10に対象者31が接近すると測定される静電容量は増加する。
【0016】
アンテナ接続部11は、アンテナ部10と信号線12とを接続する部分である。
【0017】
信号線12は、接続部13を介して、アンテナ部10と信号測定部14とを電気的に接続する。
【0018】
接続部13は、センサーユニット20の一部で、制御ユニット21と接続する部分である。接続部13は、ワンタッチで制御ユニット21に接続できるのが好ましく、ピンコネクタ方式などが好ましい。
【0019】
センサーユニット20は、柔軟性材料で作製され、全体として薄く、軽量で、柔軟性があるのが好ましい。
【0020】
<制御ユニット21>
制御ユニット21は、信号測定部14と、制御部15と、記録部16と、表示部17と、通信部18と、電源部19とを含む。
【0021】
信号測定部14は、複数のアンテナ部10の信号から、アンテナ部10の各々での静電容量を測定する部分である。
【0022】
制御部15は、離床検出装置22の各構成要素を制御するIC、マイクロコンピュータなどである。
【0023】
記録部16は、信号測定部14での測定結果や各構成要素の設定値などを保存するICメモリなどである。外部へデータ送信を行わない場合、記録部16はSDカード、USBメモリなどの取外し可能な記録媒体としても良い。
【0024】
表示部17は、液晶、ELなどのデイスプレイやLEDなどのインジケータである。操作ボタンなどがあり、離床検出装置22への稼働の指示、動作状況などが入力される。また、測定結果の表示もできる。その他、表示部17は、構成要素の設定、指示をする部分である。
【0025】
通信部18は、記録部16のデータなどを外部へ送る部分である。Bluetooth(商標)、無線LANなどでパーソナルコンピュータ、スマートホン、携帯機器などへデータを無線通信で送れる。有線通信の場合は、通信部18は、外部コネクタ部分を有する。
【0026】
<動作>
図2で、離床検出装置22の使用方法を説明する。
【0027】
図2は、ベッド30上に、離床検出装置22を配置し、その上に対象者31が仰臥位で在床している姿勢を示す平面図である。
【0028】
図2の離床検出装置22は、センサーユニット20が、12個のアンテナ部10を有する。
図2では、それぞれのアンテナ部10にアンテナ部の番号23を表示している。制御ユニット21は、センサーユニット20を制御し、各々のアンテナ部10のデータを記録部16に保存する。データの例を下記で説明する。制御ユニット21はセンサーユニット20内の複数のアンテナ部10を制御する。
【0029】
<アンテナ部10>
図3にアンテナ部10周辺の断面図を示す。アンテナ部10は、平板状の基材10cの上に電極10aが形成され、その上にカバー10bが配置されている。
【0030】
なお、基材10cを、全体の基材25(
図1(a))とし、直接、基材25に、電極10aを形成してもよい。同様に、カバー10bも、全体のカバー41(
図1(b))としてもよい。
【0031】
アンテナ部10への対象物10d(対象者31)の接近度合いを電極10aでの静電容量の変化によって測定する。
【0032】
電極10aは、例えば、金属箔である。金属箔は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、カーボンなどの箔体であり、軽量で薄く柔軟性がある。金属箔は、スパッタ、蒸着など薄膜工法で形成してもよく、別途作製したものを接着してもよい。
【0033】
または、電極10aは、導電ペーストを用いて、印刷工法、スピンコートなどで形成されてもよい。
【0034】
または、電極10aは、一部もしくは全部が導電糸で形成されてもよい。金糸、銀糸、銅糸、アルミニウム糸、カーボン糸などの導電性糸を用いて、平板状に形成してもよい。導電糸は、樹脂繊維に各金属を被覆したものでもよい。導電糸を用いた電極10aは、軽量で薄く柔軟性があり、耐久性が優れていて好ましい。
【0035】
金属箔、導電性糸、導電ペーストを組み合わせて、電極10aを形成してもよい。
【0036】
カバー10bは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PEI(ポリエーテルイミド)、PI(ポリイミド)など絶縁性かつ防水性の樹脂シートである。また、絶縁性があり、防水処理が施された布や紙を用いてもよい。基材10cもカバー10bと同様の材質でよい。
【0037】
電極10aを含むアンテナ部10の形状は、
図1(a)および
図2では方形であるが、円形、台形、多角形、線形状などでもよい。実施の形態2でアンテナ部10のより好ましい形状(配置)を説明する。
【0038】
アンテナ部10は、複数あり、制御ユニット21によって、それぞれのアンテナ部10への対象物10d(対象者31)の接近度合いを測定できる。
【0039】
<信号線12>
信号線12は、アンテナ接続部11と接続部13とを電気的に接続する。信号線12は、基材25上に印刷工法などによりパターン形成された金属材料、または、導電性ワイヤー、導電糸などでもよい。
【0040】
<自己容量式静電容量センサー>
アンテナ部10は、静電容量の測定方式として自己容量式である。このため、アンテナ部10の構造は、
図3のように電極10aが複極でなく単極で、電極間の中間層を必要としない単層の簡易な構造である。アンテナ部10への対象物10d(対象者31)の接近度合いはアンテナ部10での静電容量の変化によって測定される。この静電容量の変化を、信号線12を介して、制御ユニット21で測定する。
【0041】
さらに、信号線12に被覆33(
図3)を設けるのが好ましい。この被覆33は導電性があり、被覆33を制御ユニット21に接地接続することで外部からの電磁ノイズを遮断できる。信号線12と被覆33が同軸構造となっているいわゆるシールド線を用いることもできる。
【0042】
電極10aでの静電容量の変化に基づく対象物10d(対象者31)の接近度合いを定量的に測定するために、複数の信号線12の長さを合わせてもよい。
【0043】
<静電容量の変化の測定方法>
実施の形態1のアンテナ部10は、電極10aが単極構造であるため、以下の2つの測定方法がある。
(1)絶対値で測定
電極10aでの静電容量の絶対値の経時変化によって対象物10d(対象者31)の、アンテナ部10への接近度合いを測定する。アンテナ部10と対象物10d(対象者31)が接近するほど、静電容量の絶対値が増える。
【0044】
対象物10d(対象者31)が接近していない状態のそれぞれの電極10aでの初期静電容量を等しくし、予め、静電容量の絶対値をレベル分けし、そのレベルで接近度合いを測定する。たとえば、上記信号線12の被覆33、複数の信号線12の長さを合わせることで、それぞれの電極10aでの初期静電容量を等しくできる。
【0045】
結果、この方法では、定量的に、対象物10d(対象者31)の、アンテナ部10への接近度合いを測定できる。
(2)差分を測定
電極10aでの初期静電容量を等しくしない場合、電極10aでの静電容量の変化量の経時変化によって対象物10d(対象者31)の、アンテナ部10への接近度合いを測定する。アンテナ部10と対象物10d(対象者31)が接近するほど、静電容量の変化量が増える。
【0046】
それぞれの電極10aでの初期静電容量が等しくないため、測定前のそれぞれの電極10aでの静電容量(測定前の一定時間の平均)を基準に、その基準に対して、静電容量がどれだけ変化したか(経時変化)をそれぞれの電極に対して計算し、その変化量を閾値判定し、その判定で接近を検出する。
【0047】
結果、この方法では、定性的に、対象物10d(対象者31)の、アンテナ部10への接近を検出できる。
【0048】
離床検出装置22により、対象者31の姿勢ならびに動作をモニターできる。しかし、より高い精度で対象者31の姿勢ならびに動作を検出するため、以下の装置、方法を説明する。
【0049】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1の離床検出装置、離床検出方法の変形例である。特に、ベッド30の構造およびリクライニング等の動きに応じた離床検出装置、離床検出方法である。説明しない事項は、実施の形態1と同様である。
【0050】
<ベッド30>
ベッド30の例を
図4で説明する。
図4(a)~
図4(d)は、ベッド30の側面図である。
図4(e)~
図4(h)は、ベッド30の使用状態の一例を示す側面図である。
図4(i)は、
図4(b)、
図4(f)のベッド30の上面図である。
【0051】
ベッド30によりプレート51の数が異なる。それぞれのベッド30は、このプレート51のいずれかが傾斜することで、使用している対象者31の姿勢を変えることができる。
【0052】
これらのベッド30に、離床検出装置22を配置する場合に、ベッド30の全面に、離床検出装置22を配置し、全面に複数のアンテナ部10を設計すれば、その上の対象者31の姿勢ならびに動作が正確にわかる。
【0053】
しかし、コストが高くなる点、また、処理すべきデータ量が多くなり、処理時間がかかる点から、必要な部分、つまり、ベッド30の全面の一部にのみセンサーユニット20を設けることを考えた。
【0054】
【0055】
図5(a)~
図5(d)は、それぞれ
図4(a)~
図4(d)に対応する側面図であり、センサーユニット20の配置を示す。
【0056】
図5(e)~
図5(h)は、それぞれ
図4(e)~
図4(h)に対応する側面図であり、センサーユニット20の配置を示す。
【0057】
図6(a)は、ベッド30のプレート51a~51dの配置を示す上面図である。
図6(b)~
図6(d)は、
図6(a)のベッド30でのセンサーユニット20のアンテナ部10の位置を示す上面図を示す。
図6(b)~
図6(d)では、アンテナ部10の配置が異なる。センサーユニット20は、2つ以上に分割されていない方がよい。
【0058】
アンテナ部10の配列は、ベッド30の長手方向を行、長手方向でない方向(垂直方向)を列とするとき、少なくとも2行以上、2列以上で配列されるのがよい。2行以上、2列以上のアンテナ部10は、1つのセンサーユニット20に格子上に配列されるのがよい。以下で説明するが、少なくとも2行6列のアンテナ部10があればさらによい。
【0059】
2行以上、2列以上のアンテナ部10は、ベッド30のいずれかのプレート51の内に配置されるのがよい。アンテナ部10は、ベッド30のリクライニングの可動帯(可屈帯)であるいずれかのプレート51の間には配置されないのがよい。アンテナ部10がプレート51の間で折れ曲がると、アンテナ部10が屈曲変形して、信号応答するので好ましくない。
【0060】
図5(e)では、プレート51cに対象者31の臀部が位置する。
図5(f)では、プレート51bに対象者31の臀部が位置する。
図5(g)では、プレート51bに対象者31の臀部が位置する。
図5(h)では、プレート51bに対象者31の臀部が位置する。
アンテナ部10の配列のいずれかの1行は、ベッド30上の使用者(対象者31)の臀部に位置される臀部領域に配置される。対象者31は、臀部を中心として重心を移動するので、対象者31の姿勢ならびに動作を検出できる。
【0061】
アンテナ部10の配列のいずれかの1行は、臀部領域以外の、臀部領域よりも頭部側のいずれかの領域に配置される。
図5(e)では、プレート51bに、
図5(f)では、プレート51aに、
図5(g)では、プレート51aに、
図5(h)では、プレート51aに、アンテナ部10の配列のいずれかの1行が位置する。
これにより、臀部だけでなく、臀部領域よりも頭側のいずれかの領域の対象者31の姿勢ならびに動作を把握することができ、対象者31の離床に関する姿勢ならびに動作を高い精度で検出することができる。
【0062】
結果、センサーユニット20のアンテナ部10は、対象者31の臀部が位置する領域(プレート51)と、ベッド30の長手方向(行方向)の対象者31の臀部より頭部側の部位が位置する別の領域(別のプレート51)に少なくとも2行分が配置する。対象者31の臀部より頭部側の部位とは、たとえば対象者31の肩部、背中部、腰部、腹部である。
【0063】
アンテナ部10は、頭部、脚部、足の膝部には、無くともよい。
【0064】
<離床検出装置22>
図7は、離床検出装置22の構成図である。離床検出装置22は、センサーユニット20と制御ユニット21とを含む。
図7では、センサーユニット20の構成と、制御ユニット21の構成とを示している。制御ユニット21では、各要素が電気回路で繋がっている。
【0065】
制御ユニット21は、信号測定部14と、制御部15と、記録部16と、表示部17と、通信部18と、電源部19と、信号処理部52と、姿勢判別部53aと、動作判別部53bと、報知判定部54と、報知選択部56と、を含む。
【0066】
信号測定部14は、複数のアンテナ部10の信号から、アンテナ部10の各々での静電容量を測定する部分である。
【0067】
制御部15は、離床検出装置22の各構成要素を制御するICなどである。
【0068】
記録部16は、信号測定部14での測定結果や各構成要素の設定値などを保存するICメモリなどである。外部へデータ送信を行わない場合、記録部16はSDカード、USBメモリなどの取外し可能な記録媒体としても良い。
【0069】
表示部17は、液晶、ELなどのデイスプレイやLEDなどのインジケータである。操作ボタンなどがあり、離床検出装置22への稼働の指示などが入力される。また、測定結果の表示もできる。その他、表示部17は、構成要素の設定、指示をする部分である。
【0070】
通信部18は、報知判定部54からの指示で信号を外部へ送る部分である。Bluetooth(商標)、無線LANなどでパーソナルコンピュータ、スマートホン、携帯機器などへデータを無線通信で送れる。有線通信の場合は、通信部18は、外部コネクタ部分を有する。
【0071】
電源部19は、他の部へ電力を供給する部分である。電池または、外部から電力を受ける部分である。太陽電池を用いて自分で電力を製造してもよい。
【0072】
信号処理部52は、信号測定部14のデータを処理する。例えば、ある基準を設け、それ以上であると、信号あり、基準より小さいと、信号なしにするなどのバイナリーデータに処理する。実施の形態1での<静電容量の変化の測定方法>に従いデータを処理できる。アンテナ部10の種類、構造により、処理は異なる。
【0073】
姿勢判別部53aは、記録部16に保存された信号処理部52のデータから、対象者31の姿勢を判別する。たとえば、1~2秒間の平均データで判別する。記録部16にデータを保存するのは、必須ではない。平均データは、少なくとも2個分の変化を使用する。
【0074】
動作判別部53bは、記録部16に保存された信号処理部52のデータから、対象者31の動作を判別する。たとえば、1~2秒間の平均データの3個分の変化、つまり、3つのデータの変化で動作を判別する。平均データは、少なくとも2個分の変化を使用する。
【0075】
報知判定部54は、姿勢判別部53a、又は、動作判別部53bからの判定の結果によって、報知するかどうかを判定する。
【0076】
報知選択部56は、報知判定部54に対して、事前に、どのような判定の結果によって、報知するかを選択する部分である。つまり、報知判定部54は、報知する条件を予め設定されている。
例えば、転倒リスクの高い対象者に対しては、ベッドの中央付近からの移動を検出した時に発報を行う。また、転倒リスクの低い対象者に対しては、ベッドからの離床姿勢を検出した時に発報を行うようにするのがよい。つまり、対象者31ごとに、報知判定部54に基準を設け、報知するかを設定するのが好ましい。対象者31に適した離床検出装置となる。
【0077】
図7のセンサーユニット20は、1つの基材25上に8つのアンテナ部10を有する。
図6(b)
図5(b)、
図5(f)のように配置している。
【0078】
<センサーユニット20からのデータ(信号)>
図8を用いて、センサーユニット20からのデータ(信号)を説明する。
図8(a)は、センサーユニット20からのRAWデータで信号測定部14が受けるデータである。時間の経過とともに、各アンテナ部10からの信号が変化している。
図8に記載の在床期間は、対象者31が、ベッド30上で静止している時間帯、離床動作期間は、対象者31が、ベッド30から外へでるため動いている時間帯、離床期間は、対象者31が、ベッド30から離れた期間である。
【0079】
図8(b)は、RAWデータを信号処理部52で処理したデータである。この場合は、1と0、または、ONとOFFとしている。設定された閾値より高いとON(1)、低いとOFF(0)としている。
【0080】
図8(c)は、センサーユニット20上のアンテナ部の番号23を示す平面図である。
アンテナ部10の信号のすべてがOFFのとき、対象者31はベッド30から離床している。
アンテナ部10の信号のいずれかがONのとき、対象者31はベッド30の上にいずれかの姿勢で在床している。
【0081】
図8(d)~
図8(g)は、
図8(b)の結果を示すセンサーユニット20の平面図である。複数のアンテナ部10からの信号を処理(一定以上をON,それより低いとOFF)して、対象者31の姿勢のピクセルデータを導出した。
【0082】
図8(d)では、アンテナ部の番号23の3,4,10がONで、対象者31がベッド30の中央付近において横臥位でいる。
【0083】
図8(e)では、アンテナ部の番号23の10のみがONで、対象者31がベッド30の中央付近において坐位でいる。
【0084】
図8(f)では、アンテナ部の番号23の2,10がONで、対象者31がベッド30の中央付近から移動しようとする姿勢でいる。
【0085】
図8(g)では、アンテナ部の番号23の3,4,9、10がONで対象者31がベッド30の中央付近において横臥位でいる。
【0086】
<プロセス>
プロセスを説明する。
(1)受信工程:アンテナ部10の信号を、接続部13を介して信号測定部14が受ける(
図8(a))。
【0087】
(2)処理工程:信号処理部52は、信号測定部14から信号を受け、処理をする(
図8(b))。
【0088】
(3)記録工程:記録部16は、信号処理部52で処理された信号を記録する。
【0089】
(4a)判別工程1:姿勢判別部53aは、ある時点での記録された信号、たとえば、
図8(d)~(g)のピクセルデータから、対象者31の姿勢を判別する。たとえば、
図8(d)では、対象者31がベッド30の中央付近において横臥位でいると判別する。
【0090】
(4b)判別工程2:動作判別部53bは、連続する3つの時点での記録された信号から、対象者31の動作を判別する。たとえば、
図8(d)の次に
図8(e)、その次ぐに
図8(f)とすると、対象者31がベッド30の中央付近に横臥位でいる姿勢から、坐位の姿勢を経て、ベッド30の端方向へ移動しようとする姿勢でいると判別する。
【0091】
(5)報知判定部54は、上記(4a)又は上記(4b)の結果のいずれか、あるいは両方を受ける。報知判定部54は、報知選択部56から事前に設定されたどのような判定の結果なら報知を行うかという条件から報知するかを判定し、通信部18へ指示する。
例えば、対象者31が立ち上がったと判別した場合に、報知するよう報知選択部56で事前に設定される場合、上記(4a)から立ち上ったとする結果を受けたとき、ナースコールシステムなどにその情報を通信で知らせる。
例えば、対象者31がベッドの端に座った(端坐位になった)と判別した場合に、報知するよう報知選択部56で事前に設定される場合、上記(4a)から端坐位になったとする結果を受けたとき、ナースコールシステムなどにその情報を通信で知らせる。
例えば、対象者31がベッドの中央から移動しようとしていると判別した場合に、報知するよう報知選択部56で事前に設定される場合、(4b)で、
図8(d)、
図8(e)、
図8(f)と変化した場合、対象者31がベッド30の中央から移動しようとしていると判別し、ナースコールシステムなどにその情報を通信で知らせる。
【0092】
(6)通信部18は、報知判定部54からの指示に従い、外部へ信号を発信する。たとえば、ナースコールシステムや、見守りシステムなどへ、情報、命令などを送る。
【0093】
<AI技術>
上記の信号から対象者31の姿勢または動作を判別するために、AI技術が利用できる。
図9で説明する。まず、
図9(a)で、学習データセットを準備し、学習プログラムへ入力する。学習プログラムは、結果として、学習済判別器を完成させる。
次に、
図9(b)で、
図7で説明した記録部16から処理済みの信号を学習済の姿勢判別器と学習済の動作判別器とに入力する。姿勢判別器と動作判別器とは、それぞれ、信号を判別し、その結果を姿勢ラベル、動作ラベルとして出力する。それぞれのラベルを報知判定部54へ送る。報知判定部54は、報知選択部56から事前に設定されたどのような判定の結果なら報知を行うかという条件から報知するかを判定し、通信部18へ指示する。
【0094】
学習データセットは、教師データである。例えば、姿勢判別用には、教師データは、
図8(d)~
図8(g)のデータと、それぞれの姿勢とを対応させたデータである。動作判別用には、教師データは、
図8(d)~
図8(f)の連続したデータとその動作とを対応させたデータである。
【0095】
学習プログラムは、線形モデル、ニューラルネットワークモデル、サポートベクタマシンモデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデルの内のいずれかである。特に、学習プログラムとしては、ニューラルネットワークモデルあるいはランダムフォレストモデルがよい。
【0096】
<機械学習部61>
学習プログラムとして、機械学習部61があってもよい。
図10で説明する。
図10は、機械学習部61の構成である。信号測定部14、信号処理部52は、上記と同様である。学習部62は、学習プログラムを有し、上記モデルにより、センサーユニット20からのデータと、姿勢または動作とを関係づけ、学習済判別器(
図9(a))を完成させる。
機械学習部61は、制御ユニット21に存在しなくともよい。別途、機械学習部61を設け、結果の学習済判別器(
図9(a))を、制御ユニット21に移設してもよい。
なお、実施の形態の場合、アンテナ部10の数が少ないので、姿勢の方は、すべてのパターン(
図8(d)~
図8(g)のようなパターン)も多くない。そのため、機械学習部61を用いずに、事前にパターンを記録部16に記録して、姿勢を判別してもよい。
【0097】
<センサーユニット20>
センサーユニット20の上記のアンテナ部10の具体的構造(特に、
図3)は一例であり、別の構造のものでもよい。各種の圧力センサーでもよい。その場合は、電圧などの信号となる。個数や配列に特徴があり、アンテナ部10の構造自体は上記に限定されない。
【0098】
<効果>
実施の形態の離床検出装置と離床検出方法と機械学習装置は、以下の効果を有する。
【0099】
(1)医療施設、介護施設あるいは一般家庭において、認知能力もしくは身体能力が低下した対象者、あるいはせん妄(意識障害)の恐れなどがある対象者のベッドからの立ち上がり(離床)について、対象者の姿勢ならびに動作を判別し、判別結果に応じて、ナースコールシステム、見守りシステム、音声出力器などへ報知出力を行うことができる。
【0100】
(2)基本機能として、センサーユニット20は、離床に関する姿勢ならびに動作を高い精度で検出可能となるように、必要な数のアンテナを、必要な配置としているため、離床検出の誤発報および未検出が少ない。
【0101】
(3)高度機能として、離床に至る前の事前検出ができる。
【0102】
(4)経済性として、センサーユニット20が簡単な構造、安価な材料で構成しているため安価である。またアンテナ部10の数が少ないためデータ容量・計算負荷が少ない。
【0103】
(5)運用性として、カメラなど映像または画像を使用しないため、プライバシー情報を取り扱わず、高い情報管理が求められない。
【0104】
(6)作業性として、センサーユニット20は安価であり、制御ユニット21と分離できるため、不要(汚染)時に直ちに撤去(交換)可能である。またベッド30の全面ではなく、ベッド30の必要な一部、ベッド30の縦方向の中央付近に配置するだけなので、離床検出が求められる時に簡易かつ迅速に設置可能であり、かつリクライニング動作による位置ズレが生じない。
【0105】
(全体として)
実施の形態の各要素は組み合わせができる。
離床検出装置、離床検出方法、機械学習装置は、姿勢の判別と動作の判別の両方でなく、少なくとも一方を有すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本願発明の離床検出装置と離床検出方法と機械学習装置は、病院、介護施設だけでなく、自宅、宿泊施設などでも使用できる。
【符号の説明】
【0107】
10 アンテナ部
10a 電極
10b カバー
10c 基材
10d 対象物
11 アンテナ接続部
12 信号線
13 接続部
14 信号測定部
15 制御部
16 記録部
17 表示部
18 通信部
19 電源部
20 センサーユニット
21 制御ユニット
22 離床検出装置
23 アンテナ部の番号
25 基材
30 ベッド
31 対象者
33 被覆
41 カバー
51 プレート
51a、51b、51c、51d プレート
52 信号処理部
53a 姿勢判別部
53b 動作判別部
54 報知判定部
56 報知選択部
61 機械学習部
62 学習部