(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054860
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】水田用除草機器および水田用除草体
(51)【国際特許分類】
A01M 21/02 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A01M21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023175585
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022170203
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522415092
【氏名又は名称】桐原 均
(72)【発明者】
【氏名】桐原 均
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121BB21
2B121BB32
2B121BB35
2B121EA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水田用除草機器、および水田用除草体において、安価で、水田圃場の大小によらず使用でき、労力も軽微で、稲の条間・株間のいずれにおいても除草効果を発揮する水田用除草機器、および水田用除草体を提供する。
【解決手段】機器本体と、機器本体に取り付けられる水田用除草体と、を備えた水田用除草機器において、水田用除草体は、機器本体から下方に向けて突出するように延在する線状、紐状または帯状の突出部を備え、突出部は、一方の端部が機器本体に保持され、他方の端部が機器本体または水田用除草体自身に保持されてループ状になっており、水田用除草体は、除草する際の機器本体の進行方向、および進行方向に対して交差する幅方向の双方に沿って複数、位置をずらして配置されていることを特徴とし、水田圃場表土への作用跡が面状となり、尚且つ操作時の稲苗への損傷を軽減でき、浮力体の浮力により軽微な労力で圃場内を縦横無尽に除草作業できる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体と、前記機器本体に取り付けられる水田用除草体と、を備えた水田用除草機器において、
前記水田用除草体は、前記機器本体から下方に向けて突出するように延在する線状、紐状または帯状の突出部を備え、
前記突出部は、一方の端部が前記機器本体に保持され、他方の端部が前記機器本体または前記水田用除草体自身に保持されてループ状になっており、
前記水田用除草体は、除草する際の前記機器本体の進行方向、および前記進行方向に対して交差する幅方向の双方に沿って複数、配置されていることを特徴とする水田用除草機器。
【請求項2】
請求項1に記載の水田用除草機器において、
前記突出部は、前記進行方向に沿って複数の列を構成するように配置され、
前記複数の列のうち、前記進行方向で隣り合う列では、前記幅方向における前記突出部の位置がずれていることを特徴とする水田用除草機器。
【請求項3】
請求項2に記載の水田用除草機器において、
1つの前記水田用除草体は前記突出部を1つ形成し、
前記水田用除草体は、前記機器本体に複数、設けられ、
複数の前記水田用除草体は各々、他の前記水田用除草体から独立して交換可能であることを特徴とする水田用除草機器。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の水田用除草機器において、
前記突出部は、除草する際に前記進行方向および前記幅方向に変形可能な可撓性を有することを特徴とする水田用除草機器。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載の水田用除草機器において、
前記突出部は、除草する際に前記進行方向および前記幅方向のいずれにも変形不能な剛性を有することを特徴とする水田用除草機器。
【請求項6】
請求項1から3までの何れか一項に記載の水田用除草機器において、
前記機器本体は、浮力体を備えることを特徴とする水田用除草機器。
【請求項7】
請求項1から3までの何れか一項に記載の水田用除草機器において、
前記突出部の延在方向に対して直交する方向に前記突出部を切断したときの断面が、円形、長円形、楕円形、多角形、または鋭利に尖った形状を有することを特徴とする水田用除草機器。
【請求項8】
請求項1から3までの何れか一項に記載の水田用除草機器において、
前記突出部の下半部を正面からみたときの形状は、U字形、V字形、W字形、円形、長円形、楕円形、多角形、星形、または複数の曲線が不規則に繋がった形状であることを特徴とする水田用除草機器。
【請求項9】
水田用除草機器の機器本体に取り付けられる水田用除草体において、
前記機器本体から下方に向けて突出する線状、紐状または帯状の突出部を備え、
前記突出部は、ループ状となるように、一方の端部が前記機器本体に保持され、他方の端部が前記機器本体または前記水田用除草体自身に保持され、
前記突出部は、除草する際の水田用除草機器の進行方向、および前記進行方向に対して交差する幅方向の双方に沿って複数、配置されることを特徴とする水田用除草体。
【請求項10】
請求項9に記載の水田用除草体において、
前記突出部は、前記進行方向に沿って複数の列を構成するように配置され、
前記複数の列のうち、前記進行方向で隣り合う列では、前記幅方向における前記突出部の位置がずれていることを特徴とする水田用除草体。
【請求項11】
請求項9または10に記載の水田用除草体において、
1つの水田用除草体は、前記突出部を1つ形成し、
前記水田用除草体は、前記機器本体に複数、設けられ、
前記複数の水田用除草体は各々、他の前記水田用除草体から独立して交換可能であることを特徴とする水田用除草体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田用除草機器、および水田用除草機器に用いる水田用除草体に関する。本発明において、水田除草器械は人力で動かす小型で単純な装置を意味し、水田除草機械は動力で動かす大型で複雑な装置を意味し、水田用除草機器とは、水田除草器械および水田除草機械の双方を含む意味である。
【背景技術】
【0002】
米は、日本人の主食であり、その米を作る稲作においては、稲の成長を阻害し、米の収量を減らしてしまう水田雑草との長く苦しい戦いの歴史がある。水田雑草を除去するにあたっては、ぬかるむ水田に入り、田植えして間もない稲の条間や株間の田面に両手の指先を差し込み、細かく土を震わせ、雑草の未発芽種子や発芽したばかりの雑草を水面に浮かせて枯死させる方法や、田車と呼ばれる歩行型除草器具を前後に幾度も繰り返し動かすことにより、発芽した雑草を水田の土中に埋め込む方法等が存在するが、いずれも非常に労力と時間がかかる。かかる労力を軽減するために、除草剤を使用し、雑草を駆除する方法が浸透したが、圃場による個性も多種多様である。また、除草剤への耐性を持つ雑草も出てきて、いまだに完全に駆除できる除草剤は存在しない。このため、初期除草剤を使用した後、中期除草剤を使用し、それでも駆除できなければさらに他の除草剤を使用するなど、稲作従事者の費用的負担が大きくなっている。
【0003】
一方で、除草剤等の薬品を使用することによる人体への影響を懸念する消費者の声も多く、近年では、薬品不使用の有機栽培米や自然栽培米の人気が高まっている。一般的な飲食店でさえ、化学調味料不使用をうたう店があったり、注文の際に化学調味料不使用と指定できる店も大変多くなっていることからもわかるように、今後除草剤等の薬品を使用しない米の需要が高まることは容易に想像できる。
【0004】
このように稲作従事者にとっての水田雑草は、いまだに完全解決できず、稲作の難問となっている。また、昔ながらの除草法では労力がかかる。さらに、労力軽減のために除草剤の使用を採用したのに費用的負担が大きくなってしまう。しかも、消費者の間には除草剤の使用を良しとしない動きがある。
【0005】
一方、除草剤不使用で労力のかからない方法を模索し、アイガモ、コイやフナ、外来種のカブトエビを水田に放したりする生物利用を採用するが後処理に困ってしまう。より具体的には、米の収穫が終わり、水田から水を抜いた時に、その命をどうするか、という大問題が存在し、食用として利用するならば受け手を探さねばならない。受け手がないなら殺処分とし、翌年も費用をかけて生き物を購入し、同じことを繰り返す。また、外来種のカブトエビについては、その卵が、乾燥した土壌内にあっても数十年生き残るという特性を持つため、アメリカザリガニやブラックバスに代表されるのと同様の外来種問題がいずれ発生することが懸念される。このような問題が存在するゆえ、離農という選択をしてしまう農家も少なくない。
【0006】
このように稲作従事者が暗中模索するなか、2021年5月、農林水産省が、化学農薬使用料の50%低減、有機農業の取り組み面積の割合を100万haに拡大、および有機栽培に転換する農業者への補助金の支給という内容を盛り込んだ「みどりの食料システム戦略」を策定した。国は有機栽培へとシフトするよう指示したのである。
【0007】
これにより、農機具メーカー各社の、稲作有機栽培のための水田用除草機器の開発機運が高まり、既に販売もされている。しかしながら、いずれの水田用除草機器も高価であり、また動力付きが主流であることから、小規模農家にとっては費用負担が非常に大きく、購入が困難である。また、山間の棚田等では動力付き大型の水田用除草機器の導入は不可能である。その結果、除草剤が使用不可であるのに機械化、省力化もできないという新たな問題が発生してしまった。
【0008】
この問題を解決するには、圃場の大小によらず使用でき、費用負担、労力ともに軽減でき、除草剤を使用せずとも、効果的に雑草を除去できる水田用除草機器が望まれるが、現存する水田用除草機器においては、いずれもその除草効果が十分とは言えず、解決策はいまだ存在していない。
【0009】
下記に例示した先行技術(特許文献1~7)の水田用除草体は、樹脂あるいは金属により形成されたブラシ様の、直線的あるいは準直線的なものであるか、ワイヤーを使用したものである。しかしながら、樹脂ブラシでは、接地面積が狭小であるため、除草能力が充分とは言えない。また、爪車では硬度が高く、強く掻き出す特性のため、稲苗に損傷を与える可能性があることから、条間のみを作業領域と限定し、一歩歩くごとに爪車を前後運動させねばならない等、労力がかかり、さらには掻き出して埋め込んだ雑草や種子が再び発芽することがある。さらに、ワイヤーでは、水田表土をスライスするような作用であることから、前後方向に複数回往復運動をして表土をかき混ぜねばならず、条間と株間を同時に処理できず、除草効果が不充分であるにもかかわらず、労力も時間もかかるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2022-112585
【特許文献2】特開2012-187073
【特許文献3】特開2007-097410
【特許文献4】特開2006-271354
【特許文献5】特開2005-287366
【特許文献6】特開2020-080712
【特許文献7】特許第5147086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、圃場の大小によらず使用でき、労力も軽微で、稲の条間・株間のいずれにおいても十分な除草効果を発揮する水田用除草機器、および水田用除草体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、機器本体と、前記機器本体に取り付けられる水田用除草体と、を備えた水田用除草機器において、前記水田用除草体は、前記機器本体から下方に向けて突出するように延在する線状、紐状または帯状の突出部を備え、前記突出部は、一方の端部が前記機器本体に保持され、他方の端部が前記機器本体または前記水田用除草体自身に保持されてループ状になっており、前記水田用除草体は、除草する際の前記機器本体の進行方向、および前記進行方向に対して交差する幅方向の双方に沿って複数、配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の別態様は、水田用除草機器の機器本体に取り付けられる水田用除草体において、前記機器本体から下方に向けて突出する線状、紐状または帯状の突出部を備え、前記突出部は、ループ状となるように、一方の端部が前記機器本体に保持され、他方の端部が前記機器本体または前記水田用除草体自身に保持され、前記突出部は、除草する際の水田用除草機器の進行方向、および前記進行方向に対して交差する幅方向の双方に沿って複数、配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る水田用除草体は、設置した水田用除草機器の動作によって、水田用除草体が表土に接触し、表土への作用が直線的平面的ではなく、ループ様の水田用除草体がそれぞれ独立していることで、表土に対し、深さ、幅等が複雑に作用し、雑草や雑草種子を掻き出す。また、作用跡は、田面に対し水平方向では面状となり、垂直方向では作用深さが不均一で幅がある場合でも、水田用除草体を進行方向および幅方向に複数設置したので、所定の幅において前列の水田用除草体での掻き出し残しを後列の水田用除草体が処理する。それ故、本発明の水田用除草機器、および水田用除草体によれば、圃場の大小によらず使用でき、労力も軽微で、稲の条間・株間のいずれにおいても除草効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る水田用除草体の正面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る水田用除草体の斜視図。
【
図3】本発明の実施形態に係る水田用除草体の右側面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る水田用除草体の左側面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る水田用除草体の平面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る水田用除草体の底面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る可撓性の水田用除草体を用いた場合の機器本体への固定構造を示す説明図。
【
図8】本発明の実施形態に係る剛性の水田用除草体を用いた場合の機器本体への固定構造を示す説明図。
【
図9】本発明の実施形態に係る水田用除草体を水田用除草機器の機器本体に千鳥様に複数設置した様子を模式的に示す底面図。
【
図10】本発明の実施形態に係る水田用除草体を水田用除草機器の機器本体に千鳥様に複数設置した様子を模式的に示す説明図。
【
図11】本発明の実施形態に係る水田用除草体を、浮力体を有する機器本体に設置したときの側面図。
【
図12】本発明の実施形態に係る水田用除草体を、浮力体を有する機器本体に設置した水田用除草機器で除草を実施する様子を示す説明図。
【
図13】本発明の実施形態に係る水田用除草体において機器本体が水面に浮いた状態でも、可撓性の水田用除草体が水田表土の凹凸に追従する様子を示す説明図。
【
図14】本発明の実施形態に係る水田用除草体において機器本体が水面に浮いた状態でも、剛性の水田用除草体が水田表土に食い込み、成長して根を張った雑草を除去する様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を適用した水田用除草体および水田用除草機器を説明する。なお、以下の説明において、各実施形態で対応する部分は同一の符号を付して説明する。
【0017】
(水田用除草体の構成例)
図1は、本発明の実施形態に係る水田用除草体の正面図であり、(a)、(b)、および(c)は各々、第1実施形態の正面図、第2実施形態の正面図、および第3実施形態の正面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る水田用除草体の斜視図であり、(a)、(b)、および(c)は各々、第1実施形態の斜視図、第2実施形態の斜視図、および第3実施形態の斜視図である。
図3は、本発明の実施形態に係る水田用除草体の右側面図である。
図4は、本発明の実施形態に係る水田用除草体の左側面図である。
図5は、本発明の実施形態に係る水田用除草体の平面図である。
図6は、本発明の実施形態に係る水田用除草体の底面図である。
【0018】
図1および
図2において、本発明を適用した水田用除草体Pは、後述する水田用除草機器に用いられて水田雑草の除草に用いられる。水田用除草体Pは、線状、紐状または帯状であり、突出部P0を形成する。以下の説明では、水田用除草体Pが帯状である水田用除草体P1、P2、P3を中心に説明する。以下の説明において、水田用除草機器とは、人力で動かす小型で単純な水田除草器械、および動力で動かす大型で複雑な水田除草機の双方を含む意味である。
【0019】
図12等を参照して後述するように、水田用除草機器1は、機器本体と、機器本体に取り付けられた水田用除草体Pとを備える。水田用除草体Pは、水田用除草機器1の機器本体2から下方に突出する突出部P0を有している。
【0020】
図1、
図2、
図3、
図4、
図5、および
図6に示すように、水田用除草体Pにおいて、突出部P0は、一方の端部が機器本体2に保持され、他方の端部は、機器本体2または水田用除草体P自身に保持されている。その結果、突出部P0はループ状になっており、突出部P0の下端部は、水田表土を引っ掻くループ状の作用部となる。より具体的には、
図1(a)および
図2(a)に示す水田用除草体P1において、突出部P0の下端部は長円形となっている。
図1(b)および
図2(b)に示す水田用除草体P2において、突出部P0の下端部は円形となっている。
図1(c)および
図2(c)に示す水田用除草体P3において、突出部P0の下端部では、直線部分の両端を円形の一部(円弧状)で繋げた形状となっている。
【0021】
本実施形態において、水田用除草体Pおよび突出部P0を突出部P0の延在方向に対して直交するように切断したときの断面は、円形、長円形、楕円形、多角形、または鋭利に尖った形状を有する。また、突出部P0の下半部を正面からみたときの形状は、U字形、V字形、W字形、円形、長円形、楕円形、多角形、星形、または複数の曲線が不規則に繋がったアメーバ形状になっている。
【0022】
図7に示すように、突出部P0は、除草する際に進行方向および幅方向に変形可能な可撓性を有する。例えば、樹脂製や金属製の結束バンドを水田用除草体Pとして用いる。この場合、水田用除草体Pの一方の端部Paは、他の部分より太いブロック部P11になっており、機器本体2の板部4に形成した穴41に水田用除草体Pの他方の端部Pbを上方から下方に通した後、他方の端部Pbを穴42に下方から上方に通し、水田用除草体Pの一方の端部Paに形成したブロック部P11を板部4の上部で穴41に引っ掛かった状態とする。また、他方の端部Pbをブロック部P11に形成されている穴P12に通し、締める。その結果、突出部P0の一方の端部Paは機器本体2の板部4に保持され、他方の端部Pbは、水田用除草体P自身を介して機器本体2に保持される。この状態で、突出部P0の下半部を正面からみたときの形状は、U字形となる。この状態で、突出部P0は、除草する際の進行方向および幅方向のいずれにも変形可能な可撓性を発揮する。
【0023】
図8に示すように、突出部P0は、除草する際に進行方向および幅方向に変形不能な剛性を有する態様であってもよい。例えば、U字状に湾曲させた金属板を水田用除草体Pとして用いる。より具体的には、水田用除草体Pとして、管パイプを固定するためのサドルバンド等を用いる。この場合、水田用除草体Pの一方の端部Paおよび他方の端部Pbを外側に折り曲げた部分P21、P22を板部4にねじ7等で止める。その結果、突出部P0の一方の端部Pa、および他方の端部Pbはいずれも、機器本体2の板部4に保持され、突出部P0の下半部を正面からみたときの形状は、U字形となる。この状態で、突出部P0は、除草する際の進行方向Xおよび幅方向Yのいずれにも変形不能な剛性を発揮する。なお、水田用除草体Pの一方の端部Paおよび他方の端部Pbの各々にねじ7を通す穴を予め、形成しておいてもよいが、ねじ7によって水田用除草体Pを貫通させる構成であってもよい。また本発明では、進行方向および幅方向のうち、一方の方向には可撓性を示し、他方の方向には剛性を示す態様であってもよい。さらに、本発明では、ベースの前後方向において、前進する場合および後退する場合のうち、一方の場合には可撓性を示し、他方の場合には剛性を示す態様であってもよい。
【0024】
このように構成した場合、1つの水田用除草体Pは、突出部P0を1つ形成するため、機器本体2に対して、複数の水田用除草体Pが設けられる。かかる構成によれば、複数の水田用除草体Pは各々、他の水田用除草体Pから独立して交換可能である。それ故、破損した水田用除草体Pを容易かつ安価に交換することができる。
【0025】
ここで、水田用除草体Pは、
図9および
図10に示すように、除草する際の機器本体2の進行方向X、および進行方向Xに対して交差する幅方向Yの双方に沿って複数、配置される。また、突出部P0は、進行方向Xに沿って複数の列を構成するように配置され、複数の列のうち、進行方向Xで隣り合う列では、幅方向Yにおける突出部P0の位置がずれている。すなわち、水田用除草体Pは千鳥状に配置される。
【0026】
(水田用除草機器1の構成)
図11は、本発明の実施形態に係る水田用除草体Pを、浮力体8を有する機器本体2に設置したときの側面図である。
図12は、本発明の実施形態に係る水田用除草体Pを、浮力体8を有する機器本体2に設置した水田用除草機器1で除草を実施する様子を示す説明図である。
図13は、本発明の実施形態に係る水田用除草体Pにおいて機器本体2が水面に浮いた状態でも、可撓性の水田用除草体Pが水田表土の凹凸に追従する様子を示す説明図である。
図14は、本発明の実施形態に係る水田用除草体Pにおいて機器本体2が水面に浮いた状態でも、剛性の水田用除草体Pが水田表土に食い込み、成長して根を張った雑草を除去する様子を示す説明図である。
【0027】
図11に示すように、本実施形態に係る水田用除草体Pを水田除草機器に搭載する際、板部4に水田用除草体Pを下向きに設置し、板部4とトッププレート9との間に浮力体8を設ける。また、トッププレート9に操作柄10の下端部を連結する。かかる構成によれば、浮力体8の浮力を利用して、軽い力で移動させることができる。従って、
図12に示すように、操作柄10を操作して、水田用除草体Pを水田において水面13に沿って移動させれば、水田用除草体Pによって水田雑草15を掻き取ることができる。
【0028】
また、トッププレート9に操作柄10と操作柄補助棒11を設置し、2点支持を実現すれば、より安定した操作が得られる無動力の歩行型の除草器具や、手押し式の除草器具等の水田用除草機器1を実現することができる。かかる水田用除草機器1によれば、浮力体8の浮力と安定した操作性によって、水田用除草体Pが水田表土14に深く食い込むことなく、軽い力で操作できる。
【0029】
より具体的には、
図13に示すように、水田用除草体Pが可撓性を有する材質であれば、その可撓性ゆえに、水田表土14への作用部分は、水田表土14の凹凸に追従し、稲苗もしなやかにかわすことができ、作用跡は面状になる。このため、除草漏れがなく、条間及び株間にかかわらず十分な除草効果を得られる。従って、水田では、田植えの1週間後からの初期段階から使用を開始し、その後1週間毎に使用することにより、発芽間もない水田雑草15を水田表土14から効果的に剥ぎ取って、浮かせ、枯死させるので、水田雑草15を成長させない。また、水田表土14の凹凸に追従し、条間株間の区別なく縦横無尽に使用しても、稲苗を損傷することなくしなやかにかわし、従来の水田用除草機器と違って、条間と株間の除草方法は区別しなければならないとの懸案も打破し、条間株間の区別なく除草効果を発揮する。
【0030】
これに対して、
図14に示すように、水田用除草体Pが剛性を有する材質であれば、硬い水田表土14の圃場や、成長し根を張った雑草に対しても、その剛性ゆえに強く掻き出すことができ、同様に十分な除草効果が得られる。従って、水田表土14の硬い圃場、田植えから日数が経過し水田表土14が硬くなってしまった圃場、あるいは水が不足し水田表土14が水面上に露出したこと硬くなってしまった圃場で使用する場合や、発芽から2週間以上経過し成長してしまった水田雑草15をも強力に除去することができる。なお、本実施形態では、稲苗も損傷してしまう懸念があるため、水田用除草体Pを取り付ける部分のサイズを株間に合わせれば、稲苗を損傷させることなく除草することができる。
【0031】
(本実施形態の主な効果)
以上説明したように、本発明を適用した水田用除草機器1および水田用除草体Pでは、ループ様の突出部P0が表土に接触した際、水田用除草体Pの表土への作用が直線的、平面的ではなく、表土に対し、深さ、幅等が複雑に作用するので、雑草や雑草種子を効率よく掻き出す。また、水田用除草体Pを進行方向Xおよび幅方向Yに複数設置したので、作用跡は、田面に対し水平方向では面状となり、垂直方向では作用深さが不均一であり、所定の幅において前列の水田用除草体での掻き出し残しを後列の水田用除草体が処理する。それ故、本発明の水田用除草機器、および水田用除草体によれば、圃場の大小によらず使用でき、労力も軽微で、稲の条間・株間のいずれにおいても除草効果を発揮する。
【0032】
または、機器本体2から突出する水田用除草体Pの長さは、例えば可撓性のある市販の樹脂製結束バンドや金属製結束バンドを水田用除草体として活用する場合等は、使用する圃場条件により、使用者が柔軟に選択することができる、また、使用する田の水深と、水田用除草体Pが作用する土中の雑草の発芽深さとを考慮し、最短3.0cmから最長8.0cm程度を基準とし、この長さとかけ離れた数値でなければ、その可撓性により、田面の凹凸に柔軟に追従し作用する。
【0033】
また、水田用除草体Pに、市販の結束バンドや草刈り機用のナイロンコード、単管パイプ用サドルバンド等、除草機または除草器具本体に設置した姿がループ用になりうる素材を活用する場合、いずれも廉価であり、入手しやすい材料であることから、長さ変更や破損交換も容易に可能であり、維持費を抑えることができ、費用負担を軽減できる。
【0034】
また、田水面に浮く十分な浮力のある浮力体8を設けたので、水田用除草機器1が歩行型手押し式である場合でも、その操作感覚は、大きな腕力を必要とせず、指一本で押してもよいと思えるほどの軽さでよい。従って、水田用除草体Pが田面に作用する抵抗を感じながら、圃場内を自身の歩行速度で前に歩くだけでよく、労力軽減に資する。
【0035】
また、本実施形態で、水田表土へ作用するものだが、これは水田表土を浅く耕すという考え方もでき、この作用跡が、水平方向では面状となり、垂直方向では不均一な深さと幅で耕すことにより、水田表土を平坦化し、耕す際に発生する濁りが新たな雑草の発芽を抑制し、さらには濁りに含まれる細かな土の粒子が、水田表土の小穴等を塞ぎ、漏水を防ぐという優れた効果を発揮する。
【0036】
また、水田用除草体Pの水田表土への雑草掻き出し作用跡が、水田表土に対し水平方向では面状であり、垂直方向では不均一な深さと幅で耕す形状となることにより、除草漏れを軽減するうえ、雑草や雑草の種子を掻き出し水面に浮かせ、枯死させる。従って、雑草の再発芽が発生しにくい、また、可撓性を有する材質を選択した水田用除草体Pでは、その可撓性によって水田表土の凹凸への追従性を向上させ、稲苗の損傷も軽減しつつ、条間及び株間とも同時に除草できる。また剛性を有する材質を選択した水田用除草体Pでは、硬くなった中後期の水田表土にも対応でき、成長し根を張った雑草も除草できるが、掻き出し効果が強く、稲苗を損傷することが懸念されるが、株間サイズに合わせた本体に設置すれば、株間の頑固な雑草も除去できるなど、除草時期、また圃場や雑草毎の異なる様々な条件に柔軟に対応できる画期的な水田用除草体を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明における水田用除草機器および水田用除草体は、大きさや動力の有無に左右されないため、山間の棚田や小規模な水田、変形水田等では小型で無動力の水田除草器械として構成でき、大規模な水田には水田除草機械として構成できる。従って、全国の水田で除草剤に頼らない稲作を可能にするものであるため、農林水産省のみどりの食糧システム戦略に掲げられるような有機農業産地づくり、グリーンな栽培体系への転換、有機農業新規参入者等各施策に合致する。
【0038】
また、本発明における水田用除草機器および水田用除草体を水田除草器械として構成した場合、製造コストを抑え、消費者に安価に提供することができ、その導入のしやすさから、結果的に水田の無農薬化及び雑草除草作業の省力化を推進することができる。従って、農林水産省の指針に対応し、オーガニック食糧を求める消費者傾向にも合致する。また、農薬の使用によって絶滅の危機に瀕してしまった生物を、再び水田で繁栄させることが可能となるので、コウノトリやトキ等に生息域を提供することもでき、美しい日本の原風景を呼び戻すことが可能となるため、全国的な積極活用の可能性がある。
【符号の説明】
【0039】
P 水田用除草体、P0 突出部、Pa 一方の端部、Pb 他方の端部、1 水田用除草機器、2 機器本体、4 板部、7 ねじ、8 浮力体、9 トッププレート、10 操作柄、11 操作柄補助棒、13 水面、14 水田表土、15 水田雑草