(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054864
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】光学装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240410BHJP
B32B 37/12 20060101ALI20240410BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240410BHJP
G02F 1/1335 20060101ALN20240410BHJP
B32B 3/24 20060101ALN20240410BHJP
G02F 1/13 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
G09F9/00 342
B32B37/12
B32B7/023
G02F1/1335
B32B3/24
G02F1/13 101
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202518
(22)【出願日】2023-11-30
(62)【分割の表示】P 2019174519の分割
【原出願日】2019-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2018181555
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】長澤 好員
(57)【要約】
【課題】光硬化性樹脂組成物を確実に硬化させることができる光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】光学部材2と、透明パネル4とが、硬化樹脂層3を介して貼り合わされた光学装置1の製造方法において、光学部材2又は透明パネル4の一方に、硬化樹脂層3の形成領域を囲み且つ少なくとも1つの開口部13が設けられた壁部12を形成する工程と、光学部材2と透明パネル4とを貼り合せ、光学部材2と透明パネル4との間に壁部12によって囲まれた樹脂充填空間14が形成された貼合体10を形成する工程と、貼合体10の樹脂充填空間14内に、光硬化性樹脂組成物30を充填する工程と、光硬化性樹脂組成物30を硬化させ、硬化樹脂層3とする工程とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材と、透明パネルとが、硬化樹脂層を介して貼り合わされた光学装置の製造方法において、
上記光学部材又は上記透明パネルの一方に、上記硬化樹脂層の形成領域を囲み且つ少なくとも1つの開口部が設けられた壁部を形成する工程と、
上記光学部材と上記透明パネルとを貼り合せ、上記光学部材と上記透明パネルとの間に上記壁部によって囲まれた樹脂充填空間が形成された貼合体を形成する工程と、
上記貼合体の上記樹脂充填空間内に、光硬化性樹脂組成物を充填する工程と、
上記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、上記硬化樹脂層とする工程とを有する
光学装置の製造方法。
【請求項2】
上記光硬化性樹脂組成物は、上記壁部に中空針を突き通し、中空針を介して樹脂充填空間内へ充填される請求項1に記載の光学装置の製造方法。
【請求項3】
上記壁部は、上記中空針に突き通される部位の厚さが相対的に厚く形成されている請求項2に記載の光学装置の製造方法。
【請求項4】
上記光硬化性樹脂組成物を充填する工程において、上記樹脂充填空間は、上記開口部を介して内部の空気が吸引され減圧されている請求項1~3のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項5】
上記樹脂充填空間内に上記光硬化性樹脂組成物を充填する工程と、
上記樹脂充填空間内に充填された上記光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程を並行して行う請求項1~4のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項6】
上記開口部は、上記光硬化性樹脂組成物を注入する注入孔と、上記樹脂充填空間内の空気を排気する排気孔の2か所が設けられている請求項1に記載の光学装置の製造方法。
【請求項7】
上記開口部を上側に向けて上記光硬化性樹脂組成物を充填する請求項1~6のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項8】
上記開口部が最上位に位置するように上記貼合体を傾けて上記光硬化性樹脂組成物を充填する請求項1~7のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項9】
上記貼合体を水平に戻して上記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、上記硬化樹脂層とする請求項8に記載の光学装置の製造方法。
【請求項10】
上記透明パネルは、上記光学部材の表示領域周縁に対応する領域に遮光部が形成され、
上記壁部は、上記光学部材の表示領域を囲む上記遮光部の上記表示領域側に設けられる請求項1~9のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項11】
上記壁部は、上記遮光部の上面から上記表示領域側にかけて設けられる請求項10に記載の光学装置の製造方法。
【請求項12】
上記壁部及び上記硬化樹脂層は、同一の光硬化性樹脂組成物からなる請求項1~11のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項13】
光学部材と、
上記光学部材に貼り合わされた透明パネルと、
上記光学部材と上記透明パネルとの間に充填された硬化樹脂層とを有し、
上記透明パネルは、上記光学部材の表示領域周縁に対応する領域に遮光部が形成され、
上記遮光部の上記表示領域側に、上記硬化樹脂層の形成領域を規定する壁部が形成されている光学装置。
【請求項14】
複数の光学部材と、
複数の上記光学部材に貼り合わされた一の透明パネルと、
複数の上記光学部材と上記透明パネルとの間にそれぞれ充填された硬化樹脂層とを有し、
上記透明パネルは、上記光学部材の表示領域周縁に対応する領域に遮光部が形成され、
上記遮光部の上記表示領域側に、上記硬化樹脂層の充填領域を規定する壁部が形成されている光学装置。
【請求項15】
一の上記光学部材の表示領域の周縁に形成された上記遮光部は、該一の光学部材に隣接する他の上記光学部材の表示領域の周縁に形成された遮光部と、一辺を共有して形成されている請求項14に記載の光学装置。
【請求項16】
上記壁部は、上記遮光部の上面から上記表示領域側にかけて設けられている請求項13~15のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項17】
上記壁部と上記硬化樹脂層とは同一の樹脂組成物からなる請求項13~16のいずれか1項に記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、液晶表示パネル等の光学部材と、光学部材の表示面側に貼り合わされる保護シート等の透明パネルとが硬化樹脂層を介して貼り合わされた光学装置、及び光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォーンやカーナビゲーション等の情報端末に用いられている液晶表示装置等の光学装置は、薄型化や視認性の向上を目的として、液晶表示パネル等の光学部材と、光学部材を保護する透明パネルとの間に光透過性の硬化樹脂層が設けられている。
【0003】
硬化樹脂層を形成する方法としては、例えば、透明パネルに光硬化性樹脂組成物を塗布して硬化性樹脂層を形成し、この硬化性樹脂層を介して液晶表示パネルや有機ELパネル等の光学部材を積層し、次いで硬化性樹脂層を硬化させる方法が用いられている(特許文献1)。
【0004】
光硬化性樹脂組成物を透明パネルに塗布する方法としては、移動するスリットノズルから透明パネルの表面に全幅にわたって吐出していく方法や、スクリーン印刷により塗布する方法等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の製造方法においては、光学部材や透明パネルが大型化すると、貼り合せる際に大型の真空貼合装置や、貼り合せた後に大型のオートクレーブが必要となる等の問題が生じる。
【0007】
また、透明パネルに設けられた遮光部上に塗布された光硬化性樹脂組成物には、透明パネルの表面側から照射された硬化光が遮光部によって遮光され、硬化が阻害されることから、透明パネルの側面から硬化光を照射する、いわゆるサイドキュアが行われている。
【0008】
ここで、近年では、複数の光学部材を近接して配置するとともに一つの透明パネルを積層させる光学装置も提案されている。
図14に示すように、このような光学装置50では、透明パネル51に、各光学部材52a,52bに応じた遮光部53が隣接して形成される。各遮光部53は、3辺が透明パネル51の側面に臨まされているためサイドキュアが可能であるが、光学部材52a,52bが隣接する部分ではサイドキュアが困難となる。
【0009】
そこで、本技術は、大型の光学装置においても大型の真空貼合装置やオートクレーブ処理またサイドキュア工程が不要となる光学装置、及び光学装置の製造方法を提供することを目的とする。また、本技術は、複数の光学部材が近接して配置された光学装置の製造方法において、光硬化性樹脂組成物を確実に硬化させることができる光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本技術に係る光学装置の製造方法は、光学部材と、透明パネルとが、硬化樹脂層を介して貼り合わされた光学装置の製造方法において、上記光学部材又は上記透明パネルの一方に、上記硬化樹脂層の形成領域を囲み且つ少なくとも1つの開口部が設けられた壁部を形成する工程と、上記光学部材と上記透明パネルとを貼り合せ、上記光学部材と上記透明パネルとの間に上記壁部によって囲まれた樹脂充填空間が形成された貼合体を形成する工程と、上記貼合体の上記樹脂充填空間内に、光硬化性樹脂組成物を充填する工程と、上記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、上記硬化樹脂層とする工程とを有する。
【0011】
また、本技術に係る光学装置は、光学部材と、上記光学部材に貼り合わされた透明パネルと、上記光学部材と上記透明パネルとの間に充填された硬化樹脂層とを有し、上記透明パネルは、上記光学部材の表示領域周縁に対応する領域に遮光部が形成され、上記遮光部の上記表示領域側に、上記硬化樹脂層の形成領域を規定する壁部が形成されている。
【0012】
また、本技術に係る光学装置は、複数の光学部材と、複数の上記光学部材に貼り合わされた一の透明パネルと、複数の上記光学部材と上記透明パネルとの間にそれぞれ充填された硬化樹脂層とを有し、上記透明パネルは、上記光学部材の表示領域周縁に対応する領域に遮光部が形成され、上記遮光部の上記表示領域側に、上記硬化樹脂層の充填領域を規定する壁部が形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、壁部によって形成された樹脂充填空間内に光硬化性樹脂組成物を充填し、硬化させるため、大型の真空貼合装置やオートクレーブ処理、またサイドキュア工程が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一面型光学装置を示す図であり、(A)は平面図、(B)断面図である。
【
図2】
図2は、多面型光学装置を示す図であり、(A)は平面図、(B)断面図である。
【
図3】
図3は、光学部材に、壁部を構成する第1の硬化性樹脂組成物を塗布、硬化させる一工程例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、略枠状に壁部が形成された光学部材を示す平面図である。
【
図5】
図5は、光学部材と透明パネルとの間に壁部によって囲まれた樹脂充填空間が形成された貼合体を示す断面図である。
【
図6】
図6は、開口部から注入ノズルを挿入し、樹脂充填空間内に硬化性樹脂組成物を充填する工程を示す側面図である。
【
図7】
図7は、透明パネル側から硬化光を樹脂充填空間に照射することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂層を形成する工程を示す側面図である。
【
図8】
図8は、一方の光学部材と透明パネルとが硬化樹脂層を介して積層された多面型光学装置を示す平面図である。
【
図9】
図9は、壁部の開口部に、壁部に囲まれた樹脂充填空間外へ延出される突出部を形成した貼合体を示す側面図である。
【
図10】
図10は、透明パネル側に壁部を形成した状態を示す断面図である。
【
図11】
図11は、壁部に中空針を突き通し、樹脂充填空間内へ硬化性樹脂組成物を充填する工程を示す側面図である。
【
図12】
図12は、貼合体を傾けて樹脂充填空間内へ硬化性樹脂組成物を充填し、水平に戻して硬化させる工程を示す側面図である。
【
図13】
図13は、貼合体を傾けて樹脂充填空間内へ硬化性樹脂組成物を充填し、水平に戻して硬化させる工程を示す側面図である。
【
図14】
図14は、遮光部が隣接して形成された透明パネルに、光学部材を貼り合せてサイドキュアを行う工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術が適用された光学装置及び光学装置の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
[光学装置1]
本技術は、硬化樹脂層3を介して光学部材2と透明パネル4とが貼り合わされることにより形成される光学装置1及び光学装置1の製造方法である。透明パネル4と光学部材2の貼り合わせ方法の説明に先立って、光学装置1の構成について説明する。
【0017】
光学装置1は、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、その他の光学装置であり、例えばスマートフォーン、カーナビゲーション、インストルメントパネル等の各種情報端末や情報装置に用いられている。
図1(A)(B)及び
図2(A)(B)に示すように、光学装置1は、薄型化や視認性の向上を目的として、液晶表示パネル等の光学部材2と、光学部材2を保護する透明パネル4との間に光透過性の硬化樹脂層3が設けられている。
【0018】
光学装置1は、
図1に示すように、一の光学部材2と一の透明パネル4とが硬化樹脂層3を介して積層されている一面型光学装置1Aと、
図2に示すように、複数の光学部材2と一の透明パネル4とが硬化樹脂層3を介して積層されている多面型光学装置1Bとを有する。多面型光学装置1Bは、透明パネル4に複数の光学部材2が貼り合わされたものであり、一例として
図2では2つの光学部材2A,2Bが並んで配置されている。
【0019】
[透明パネル4]
透明パネル4は、光透過性を有し、硬化樹脂層3を介して光学部材2と積層されることにより光学部材2の視認性を確保しながら光学部材2の表示面をカバーして保護するものである。
【0020】
透明パネル4の材料としては、光学部材に形成された画像が視認可能となるような光透過性があればよく、ガラスや、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の樹脂材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面ハードコート処理、反射防止処理などを施すことができる。また、後述する光学部材2がタッチパネルの際には、当該タッチパネルの部材の一部を透明パネル4として使用することもできる。
【0021】
また、透明パネル4は、表示画像の輝度やコントラストを向上させるため、光学部材2の表示領域周縁に対応する領域に、所謂ブラック・マトリクスと呼ばれる黒色枠状の遮光部8が形成されている。光学装置1は、光学部材2の表示領域を囲む遮光部8の内側が光学部材2の表示領域を透明パネル4を介して透過させる表示部9となる。
【0022】
遮光部8は、黒色等に着色された塗料をスクリーン印刷法などで塗布し、乾燥・硬化させることにより均一の厚さに形成されている。遮光部8の厚みは、通常5~100μmである。また、
図2に示すように、多面型光学装置1Bに係る透明パネル4は、各光学部材2A,2Bに応じて枠状の遮光部8が形成されることにより、複数の表示部9が設けられる。
【0023】
なお、透明パネル4の形状は特に限定されず、例えば平坦な形状としてもよく、あるいは一方向に湾曲した形状や、回転放物面、双曲放物面、その他の二次曲面形状としてもよく、さらに湾曲した形状及び二次曲面形状の一部に平坦な部分を有していてもよい。
【0024】
なお、カバー部材の湾曲の形状や厚さなどの寸法的な特性、弾性などの物性は、光学装置1の使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0025】
[光学部材2]
光学部材2は、例えば液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル、タッチパネル等の画像表示部材を例示できる。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた画像表示・入力パネルを意味する。このような光学部材2の透明パネル4側の表面形状は特に限定されないが、平坦であることが好ましい。また、光学部材2の表面に偏光板が配置されていてもよい。
【0026】
[壁部12]
本技術が適用された光学装置1は、光学部材2又は透明パネル4の一方の貼り合せ面に、後述する硬化樹脂層3の形成領域を画する壁部12が形成されている。壁部12は、硬化樹脂層3を構成する光硬化性樹脂組成物30の充填領域を画するとともに、光硬化性樹脂組成物30の壁部12の外側へのはみ出しを防止するものである。壁部12は、枠状に形成されている遮光部8の表示領域側に、遮光部8に沿って略枠状に形成されている。これにより、壁部12は、遮光部8の内側に接して設けられる。また、壁部12は、遮光部8の上面から遮光部8によって囲まれた表示領域側にわたって形成してもよい。
【0027】
また、壁部12は、光学部材2又は透明パネル4に形成されるが、全長にわたって略均一の厚さに形成するために平坦面に形成されることが好ましく、一般的に平坦な表示領域を有する光学部材2側に形成されることが好ましい。なお、壁部12は、透明パネル4に形成してもよいことはもちろんである。そして、壁部12は、光学部材2と透明パネル4とが貼り合わされることにより、光学部材2及び透明パネル4とともに光硬化性樹脂組成物30が充填される充填空間を形成する。壁部12は、後述するように弾性及び高粘着性を有し、貼り合せ対象となる透明パネル4又は光学部材2に密着することにより充填された光硬化性樹脂組成物30の液漏れを防止できる。
【0028】
また、壁部12は、後述する硬化樹脂層3と同一の樹脂組成物によって形成されることが好ましい。壁部12は、遮光部8の内側に形成されることにより光学部材2の表示領域を透過させる光学装置1の表示部9内に形成されることから、硬化樹脂層3と同様に光透過性を有する。また、表示部9内において硬化樹脂層3と接することから、同一の樹脂組成物によって形成されることにより、硬化樹脂層3との界面が現れず、表示性を損なうことがない。
【0029】
壁部12の高さは、形成する硬化樹脂層3の厚さに応じて適宜設定できるが、一例としては、光学部材2と透明パネル4との間に挟持された状態で50~100μmに形成される。なお、このような壁部12を形成する工程、及び光硬化性樹脂組成物の充填空間の形成工程等については後に詳述する。
【0030】
[硬化樹脂層]
透明パネル4と光学部材2との間に介在される硬化樹脂層3は、光透過性を有し、画像表示部材等の光学部材2が表示する画像を視認可能とする。
【0031】
硬化樹脂層3を構成する光硬化性樹脂組成物30は、液状であり、一例として、コーンプレート型粘度計で0.01~100Pa・s(25℃)の粘度を示すものである。
【0032】
このような光硬化性樹脂組成物30は、ベース成分(成分(イ))、アクリレート系モノマー成分(成分(ロ))、可塑剤成分(成分(ハ))及び光重合開始剤(成分(ニ))を含有するものを好ましく例示することができる。
【0033】
<成分(イ)>
成分(イ)のベース成分は、光透過性を有する硬化樹脂層3の膜形成成分であり、エラストマー及びアクリル系オリゴマーの少なくともいずれか一方を含有する成分である。両者を成分(イ)として併用してもよい。
【0034】
エラストマーとしては、好ましくはアクリル酸エステルの共重合体からなるアクリル共重合体、ポリブテン、ポリオレフィン等を好ましく挙げることができる。なお、このアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5000~500000であり、ポリブテンの繰り返し数nは好ましくは10~10000である。
【0035】
他方、アクリル系オリゴマーとしては、好ましくは、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリブタジエン等を骨格に持つ(メタ)アクリレート系オリゴマーを挙げることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートとメタクリレートとを包含する。
【0036】
ポリイソプレン骨格の(メタ)アクリレートオリゴマーの好ましい具体例としては、ポリイソプレン重合体の無水マレイン酸付加物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(UC102(ポリスチレン換算分子量17000)、(株)クラレ;UC203(ポリスチレン換算分子量35000)、(株)クラレ;UC-1(分子量約25000)、(株)クラレ)等を挙げることができる。
【0037】
また、ポリウレタン骨格を持つ(メタ)アクリル系オリゴマーの好ましい具体例としては、脂肪族ウレタンアクリレート(EBECRYL230(分子量5000)、ダイセル・サイテック社;UA-1、ライトケミカル社)等を挙げることができる。
【0038】
ポリブタジエン骨格の(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、公知のものを採用することができる。
【0039】
<成分(ロ)>
成分(ロ)のアクリル系モノマー成分は、光学装置の製造工程において、光硬化性樹脂組成物に十分な反応性及び塗布性等を付与するために反応性希釈剤として使用されている。このようなアクリル系モノマーとしては、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0040】
なお、光硬化性樹脂組成物30中の成分(イ)のベース成分と成分(ロ)のアクリル系モノマー成分との合計含有量は、好ましくは25~85質量%である。
【0041】
<成分(ハ)>
成分(ハ)の可塑剤成分は、硬化樹脂層に緩衝性を付与するとともに、光硬化性樹脂組成物の硬化収縮率を低減させるために使用され、紫外線の照射では成分(イ)のアクリレート系オリゴマー成分及び成分(ロ)のアクリレート系モノマー成分と反応しないものである。このような可塑剤成分は、固体の粘着付与剤(1)と液状オイル成分(2)とを含有する。
【0042】
固形の粘着付与剤(1)としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、天然ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン等のロジン樹脂、テルペン系水素添加樹脂を挙げることができる。また、前述のアクリレート系モノマーを予め低分子ポリマー化した非反応性のオリゴマーも使用することができ、具体的には、ブチルアクリレートと2-ヘキシルアクリレートおよびアクリル酸の共重合体やシクロヘキシルアクリレートとメタクリル酸の共重合体等を挙げることができる。
【0043】
液状オイル成分(2)としては、ポリプタジエン系オイル、又はポリイソプレン系オイル等を含有することができる。
【0044】
なお、光硬化性樹脂組成物30中の成分(ハ)の可塑剤成分の含有量は、好ましくは10~65質量%である。
【0045】
<成分(ニ)>
成分(ニ)の光重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、1-ヒドロキシ-シクロへキシルフェニルケトン(イルガキュア184、BASF社)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピロニル)ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア127、BASF社)、ベンゾフェノン、アセトフェノン等を挙げることができる。
【0046】
このような光重合開始剤は、成分(イ)のベース成分及び成分(ロ)アクリル系モノマー成分の合計100質量部に対し、少なすぎると紫外線照射時に硬化不足となり、多すぎると開裂によるアウトガスが増え発泡して不具合が生ずる傾向があるので、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部である。
【0047】
また、光硬化性樹脂組成物30は、分子量の調整のために連鎖移動剤を含有することができる。例えば、2-メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメチルカプト-1-プロパノール、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0048】
また、光硬化性樹脂組成物30は、更に、必要に応じて、シランカップリング剤等の接着改善剤、酸化防止剤等の一般的な添加剤を含有することができる。また、光硬化性樹脂組成物の成分(イ)~(ニ)に関し、成分(ロ)及び(ハ)を工夫すれば、成分(イ)を使用しなくても良い。
[製造工程]
【0049】
[第1の製造工程]
次いで、光学装置1の第1の製造工程について、
図2に示す多面型光学装置1Bの製造方法を例に説明する。光学装置1の第1の製造工程は、光学部材2又は透明パネル4の一方に、硬化樹脂層3の形成領域を囲み且つ少なくとも1つの開口部13が設けられた、第1の硬化性樹脂組成物31からなる壁部12を形成する工程(A)と、光学部材2と透明パネル4とを貼り合せ、光学部材2と透明パネル4との間に壁部12によって囲まれた樹脂充填空間14が形成された貼合体10を形成する工程(B)と、貼合体10の開口部13から、光硬化性樹脂組成物30を充填する工程(C)と、光硬化性樹脂組成物30を硬化させ、硬化樹脂層3とする工程(D)とを有する。
【0050】
[工程A]
先ず、2つの光学部材2及び一つの透明パネル4を用意する。上述したように、透明パネル4は、光学部材2が貼り合わされる一面に遮光部8が形成されている。遮光部8は、隣接して貼り合わされる2つの光学部材2の各表示領域を囲むように形成されるとともに、1辺を共有する2つの矩形枠状をなす。
【0051】
また、各光学部材2には、硬化樹脂層3の形成領域を囲み且つ少なくとも1つの開口部13が設けられた、第1の硬化性樹脂組成物31からなる壁部12が形成されている。
【0052】
壁部12は、
図3に示すように、所定の形状に第1の硬化性樹脂組成物31が塗布、硬化されることにより形成される。壁部12は、透明パネル4に貼り合わされたときに遮光部8の上面から内側にかけて当接するように形成され、例えば
図4に示すように、枠状に形成されている遮光部8に応じて、略枠状に形成される。
【0053】
第1の硬化性樹脂組成物31は、例えば
図3に示すように、ディスペンサーによって略枠状に塗布される。また、第1の硬化性樹脂組成物31として光硬化性樹脂組成物を用いた場合は、塗布後に硬化光が照射され、硬化される。その他、第1の硬化性樹脂組成物31は、印刷等、公知の樹脂供給方法を用いてもよい。
【0054】
硬化後の壁部12は、弾性及び高粘着性を有し、後に透明パネル4に押し付けられると、断面略台形状に押し潰され、透明パネル4の遮光部8の上面及び光学部材2の表示領域側にかけて膨出するとともに密着される。これにより、壁部12は、光学部材2及び透明パネル4との間に光硬化性樹脂組成物30が充填される樹脂充填空間14を形成するとともに、光硬化性樹脂組成物30の液漏れが防止される。なお、第1の硬化性樹脂組成物31の塗布高さは、透明パネル4との貼り合せ厚み分に加え、壁部12が押しつぶされることにより遮光部8の上面及び光学部材2の表示領域側にかけて膨出する分を加えて決定される。
【0055】
ここで、
図4に示すように、略枠状に形成された壁部12は、少なくとも1か所の開口部13が設けられている。開口部13は、樹脂充填空間14に光硬化性樹脂組成物30を注入するための注入孔であり、また、樹脂充填空間14内の空気を排気する排気孔である。開口部13は、光硬化性樹脂組成物30を注入する注入ノズル17(
図6参照)を挿入するとともに、樹脂充填空間14内の空気が排気可能な開口径を有する。また、開口部13は、壁部12の何れの箇所に形成してもよいが、コーナー部付近に形成することにより、開口部13を上側に向けて光硬化性樹脂組成物30を注入するとともに、樹脂充填空間14内の空気の排気が壁部12によって阻害されることを防止でき、確実に樹脂充填空間14内に光硬化性樹脂組成物30を充填できる。
【0056】
[工程B]
次いで、
図5に示すように、光学部材2と透明パネル4とを貼り合せ、光学部材2と透明パネル4との間に壁部12によって囲まれた樹脂充填空間14が形成された貼合体10を形成する。
図5は、貼合体10の上断面図である。透明パネル4及び光学部材2は、貼り合せ面と反対側の裏面に設けられた固定板16によって支持されている。貼合体10は、透明パネル4と光学部材2とを、それぞれ枠状に形成された遮光部8と壁部12とが対向するように配置し、固定板16で挟持することにより形成される。
【0057】
上述したように、壁部12は、弾性及び高粘着性を有し、固定板16を介して透明パネル4に押し付けられると、断面略台形状に押し潰され、透明パネル4の遮光部8の上面及び内側にかけて密着される。これにより、貼合体10は、光学部材2、透明パネル4及び壁部12により光硬化性樹脂組成物30が充填される樹脂充填空間14が形成されるとともに、樹脂充填空間14は、壁部12に設けられた開口部13から光硬化性樹脂組成物30を注入可能とされている。また、樹脂充填空間14は、壁部12が透明パネル4に密着することにより、光硬化性樹脂組成物30の液漏れが防止されている。
【0058】
[工程C]
次いで、
図6に示すように、樹脂充填空間14の開口部13から注入ノズル17を挿入し、樹脂充填空間14内に光硬化性樹脂組成物30を充填する。このとき、開口部13を上側に向けて光硬化性樹脂組成物30を充填することにより、開口部13から樹脂充填空間14内の空気を排気し、ボイドの発生を防止することができる。
【0059】
また、
図6に示すように、光硬化性樹脂組成物30の充填工程は、開口部13が鉛直方向の最上位に位置するように貼合体10を傾けて行うことが好ましい。これにより、樹脂充填空間14内の空気が開口部13側に流れ、樹脂充填空間14の角部などにボイドとして残存することを防止できる。
【0060】
なお、注入ノズル17は、先端部が開口部13内に挿入していれば光硬化性樹脂組成物30を充填可能であるが、先端部を樹脂充填空間14内に充填された光硬化性樹脂組成物30中に浸漬させることで、空気の巻き込みを防止しながら高速に充填することができる。
【0061】
[工程D]
光硬化性樹脂組成物30の充填完了後、注入ノズル17は、樹脂充填空間14より退避する。
【0062】
次いで、
図7に示すように、透明パネル4側から紫外線等の硬化光を樹脂充填空間14に照射することにより、光硬化性樹脂組成物30を硬化させ、硬化樹脂層3とする。また、貼合体10の側面から開口部13に向けて硬化光を照射することにより、開口部13を硬化樹脂層3によって塞ぐ。
【0063】
これにより、
図8に示すように、多面型光学装置1Bの一方の光学部材2と透明パネル4とが硬化樹脂層3を介して積層される。他方の光学部材2も同様の工程により硬化樹脂層3を介して透明パネル4に積層され、多面型光学装置1Bを得る(
図2)。なお、一面型光学装置1Aにおいても同様の工程により製造することができる。また、光硬化性樹脂組成物30への硬化光の照射は、必要に応じて複数回実施してもよい。
【0064】
このような多面型光学装置1Bは、遮光部8の表示領域側が光学部材2の表示領域を透過させる表示部9とされ、表示部9は、光透過性を有する壁部12及び硬化樹脂層3が形成されている。また、表示部9は、壁部12及び硬化樹脂層3が同一の樹脂組成物によって形成されることにより、硬化樹脂層3との界面が現れず、表示性、視認性を損なうことがない。これは、一面型光学装置1Aにおいても同様である。
【0065】
また、多面型光学装置1Bは、壁部12が遮光部8に接して形成され、当該壁部12に囲まれた樹脂充填空間14に光硬化性樹脂組成物30を充填している。すなわち、光硬化性樹脂組成物30が充填された樹脂充填空間14が透明パネル4側に現れ、死角が生じない。そのため、遮光部8の一辺を共有して表示部9が近接配置された場合にも、樹脂充填空間14内の光硬化性樹脂組成物30に対して透明パネル4を介して硬化光を照射することができ、未硬化部分の発生を防止することができる。
【0066】
なお、多面型光学装置1Bにおいては、それぞれ壁部12が形成された複数の光学部材2を同時に透明パネル4に貼り合せた貼合体10を形成してもよい。また、多面型光学装置1Bは、複数の光学部材2が貼り合わされた貼合体10の各樹脂充填空間14に、同時に光硬化性樹脂組成物30を充填、硬化させてもよい。これにより、製造時間の短縮を図ることができる。
【0067】
[変形例1]
また、本技術が適用された光学装置の製造方法は、
図9に示すように、壁部12の開口部13に、壁部12に囲まれた樹脂充填空間14外へ延出される突出部13aを形成してもよい。突出部13aまで光硬化性樹脂組成物30が充填されることにより、壁部12に囲まれた樹脂充填空間14の全域に光硬化性樹脂組成物30を十分に行きわたらせることができる。
【0068】
[変形例2]
また、上記では、光学部材2側に壁部12を形成したが、本技術が適用された光学装置の製造方法は、
図10に示すように、透明パネル4側に壁部12を形成してもよい。この場合、透明パネル4は、平坦に形成されていることが、壁部12を全長にわたって均一な高さで形成する上で好ましい。
【0069】
[変形例3]
また、上記では、開口部13に注入ノズル17を挿入して光硬化性樹脂組成物30を充填したが、本技術が適用された光学装置の製造方法は、
図11に示すように、弾性を有する壁部12に中空針18を突き通し、中空針18を介して樹脂充填空間14内へ光硬化性樹脂組成物30を充填してもよい。中空針18は、注射針のように先端が尖っており、壁部12を突き刺し、樹脂充填空間14内に挿通された先端部から光硬化性樹脂組成物30を注入する。壁部12は弾性及び粘着性を有するため中空針18に密着し、中空針18の穿孔から光硬化性樹脂組成物30が漏れ出すことがない。また、光硬化性樹脂組成物30の充填に伴い、開口部13から樹脂充填空間14内の空気が排気される。
【0070】
これにより、開口部13の開口径を排気に必要な最小径にとどめることができ、開口部13からの光硬化性樹脂組成物30の漏洩を抑制することができる。また、中空針18の先端を樹脂充填空間14内に充填された光硬化性樹脂組成物30内に浸漬させた状態で注入することができ、空気の混入を防止ながら高速に充填することができる。
【0071】
なお、中空針18を突き刺す位置は、壁部12の何れの箇所でもよいが、
図11に示すように、開口部13と反対側の樹脂充填空間14の下部とすることが、中空針18の先端を樹脂充填空間14内に充填された光硬化性樹脂組成物30内に浸漬させた状態で注入するうえで好ましい。
【0072】
また、壁部12は、中空針18を突き刺す部位の厚さを、他の部位よりも相対的に厚く形成することが好ましい。これにより、中空針18の穿孔からの光硬化性樹脂組成物30の漏洩を、より防止することができる。
【0073】
[変形例4]
また、本技術が適用された光学装置の製造方法は、樹脂充填空間14内への光硬化性樹脂組成物30の充填工程と、樹脂充填空間14内に充填された光硬化性樹脂組成物30の硬化工程を並行して行ってもよい。すなわち、樹脂充填空間14内へ光硬化性樹脂組成物30を充填しながら、樹脂充填空間14に充填された光硬化性樹脂組成物30に対して硬化光を照射し、硬化反応を順次進行させていっても良い。
【0074】
光硬化性樹脂組成物30が樹脂充填空間14の全体に充填される前に、順次硬化していくことにより、未硬化の光硬化性樹脂組成物30が樹脂充填空間14内に充填されることによる内圧の上昇を抑制することができ、薄型化の進む透明パネル4や光学部材2への負荷を低減するとともに、硬化樹脂層3を均一な厚さに形成することができる。
【0075】
また、光硬化性樹脂組成物30の充填工程と硬化工程を並行して行うことにより、製造時間の短縮を図ることができる。
【0076】
[変形例5]
また、本技術が適用された光学装置の製造方法は、樹脂充填空間14内への光硬化性樹脂組成物30の充填工程において、開口部13を介して、樹脂充填空間14内の空気を吸引し減圧してもよい。これにより、樹脂充填空間14に充填された光硬化性樹脂組成物30内に空気が混入することを防止し、また、樹脂充填空間14内に光硬化性樹脂組成物30を高速で充填することができ、充填時間を短縮することができる。
【0077】
[変形例6]
また、本技術が適用された光学装置の製造方法は、開口部13として、光硬化性樹脂組成物30を注入する注入孔と、樹脂充填空間14内の空気を排気する排気孔の2か所を設けるようにしてもよい。注入孔と排気孔は近接して設けてもよく、離間して設けてもよいが、光硬化性樹脂組成物30の充填工程において、両方とも鉛直上向きにできる位置に形成することが求められる。
【0078】
[変形例7]
また、本技術が適用された光学装置の製造方法は、
図7に示すように、開口部13を最上位に位置するように貼合体10を傾けて光硬化性樹脂組成物30を充填した場合、
図12に示すように、硬化光を樹脂充填空間14に照射する際に、貼合体10を水平に戻してもよい。これにより、貼合体10の傾斜によって樹脂充填空間14の開口部13付近に光硬化性樹脂組成物30の未充填部分が生じることを防止できる。したがって、開口部13まで光硬化性樹脂組成物30が充填され、表示領域の全域に光硬化性樹脂組成物30が充填された状態で硬化光を照射することができる。
【0079】
同様に、
図9に示すように開口部13に突出部13aを形成した構成においても、開口部13を最上位に位置するように貼合体10を傾けて光硬化性樹脂組成物30を充填した場合、
図13に示すように、硬化光を樹脂充填空間14に照射する際に、貼合体10を水平に戻してもよい。
【実施例0080】
次いで、本技術を用いて多面型光学装置を形成する実施例について説明する。本実施例では、透明パネル4として一つのカバーガラスと、光学部材2として2つの液晶表示ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)を用意し、各液晶表示ディスプレイを紫外線硬化性の硬化樹脂層を介して一のカバーガラスに貼り合せることにより多面型光学装置を形成した。カバーガラスには、各LCDの表示領域の周縁に対応する位置に黒色枠状の遮光部が形成されている。
【0081】
先ず、液晶表示ディスプレイをディスペンサー塗布装置のテーブルに設置した。次いで、壁部12を構成する光硬化性樹脂組成物として、粘度50000mPa・Sの光学弾性樹脂(製品名CA201;デクセリアルズ株式会社製)を注入ノズル(武蔵エンジニアリング社製)にセットした。
【0082】
次いで、注入ノズル~LCD間ギャップ:0.9mm、ディスペンス圧:0.5MPa、塗布速度:30mm/sec、の条件で光学弾性樹脂をLCDの表示面に塗布した。このとき、光学弾性樹脂は、遮光部に対応して略枠状に塗布され、また、カバーガラスに形成されている枠状の遮光部の開口よりも0.5mm外側にオフセットした位置に合わせて塗布される。また、光学弾性樹脂は、一部に開口部を形成する不塗布部が設けられる。
【0083】
光学弾性樹脂は、塗布後直ちに紫外光(4000mJ/cm2)が照射され、硬化される。これにより、高さ:約0.7mm、幅:約2.0mmの壁部を形成した。
【0084】
次いで、カバーガラスを垂直方向に固定板によって固定し、また、表示面側に壁部が形成されたLCDの裏面を固定板に固定し、カバーガラスとLCDとの位置を合わせて、ギャップ0.5mmとなるように貼り合せることにより、樹脂充填空間が形成された貼合体を形成した。さらに、カバーガラスとLCDとを押圧して、壁部を高さ0.2mmほど押しつぶした。これにより、壁部は、上面の凹凸が吸収され、カバーガラスとLCDとに密着するとともに、遮光部の上面から表示領域側に1mmの位置まで膨出する。
【0085】
次いで、開口部より注入ノズルを差し入れ、樹脂充填空間内に硬化樹脂層を構成する光硬化性樹脂組成物を充填した。光硬化性樹脂組成物としては、製品名:18V028、デクセリアルズ株式会社製、粘度:20mPa・Sを使用した。また、注入ノズルとしては、♯22武蔵エンジニアリング社製70ccシリンジを使用した。
【0086】
充填工程は、貼合体を面方向を垂直方向となるように立てるとともに、開口部が最も高い位置になるように傾けた状態で行った。また、充填工程は、開口部まで光硬化性樹脂組成物が充填された時点で注入を完了した。
【0087】
次いで、カバーガラス側から貼合体に対して所定量だけ紫外光(2000mJ/cm2)を照射し、光硬化性樹脂組成物を硬化させた。また、開口部に向けて所定量だけ紫外光(2000mJ/cm2)を照射し、開口部に充填された光硬化性樹脂組成物を硬化させた。これにより、カバーガラスとLCDとが硬化樹脂層を介して貼り合わされた光学装置を得た。その後、LCD側の固定部材の固定を解除した。上述した工程を繰り返し、多面型光学装置を得た。
【0088】
得られた多面型光学装置は、光硬化性樹脂組成物の漏れや、カバーガラスとLCDとの貼り合せ強度も問題なく、遮光部の上面における壁部も硬化が進んでいることが確認できた。
1 光学装置、1A 一面型光学装置、1B 多面型光学装置、2 光学部材、3 硬化樹脂層、4 透明パネル、8 遮光部、9 表示部、10 貼合体、12 壁部、13 開口部、14 樹脂充填空間、16 固定板、17 注入ノズル、18 中空針、30 光硬化性樹脂組成物、31 第1の硬化樹脂組成物
上記光硬化性樹脂組成物を充填する工程において、上記樹脂充填空間は、上記開口部を介して内部の空気が吸引され減圧されている請求項1~3のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
上記樹脂充填空間内に上記光硬化性樹脂組成物を充填する工程と、上記樹脂充填空間内に充填された上記光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程を並行して行う請求項1~4のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
上記開口部は、上記光硬化性樹脂組成物を注入する注入孔と、上記樹脂充填空間内の空気を排気する排気孔の2か所が設けられている請求項1に記載の光学装置の製造方法。