(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054878
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20240411BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20240411BHJP
F24F 1/0067 20190101ALI20240411BHJP
【FI】
F28F1/32 P
F28F1/32 X
F28F1/32 D
F28F1/02 A
F24F1/0067
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157840
(22)【出願日】2022-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】豊山 起洋剛
(72)【発明者】
【氏名】織谷 好男
(72)【発明者】
【氏名】田村 文
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 智彦
(72)【発明者】
【氏名】関谷 将仁
(72)【発明者】
【氏名】小田 貴也
(72)【発明者】
【氏名】堤 良広
【テーマコード(参考)】
3L051
【Fターム(参考)】
3L051BE06
(57)【要約】
【課題】扁平管とフィンを備える熱交換器において、フィンピッチを確保する際に生じる熱交換効率の低下を抑制する。
【解決手段】1つ以上のフィンピッチ規定部340は、隣接するフィン30に接してフィンピッチを規定する。フィンピッチ規定部340は、各フィン30において、N本(Nは2以上の整数)の扁平管に対して1つ設けられている。各フィン30のフィンピッチ規定部340は、連通部320以外の場所に位置する各フィン30の伝熱部330を、2方向以上に切り起こしてなる2以上の立上部341を含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィン(30)と複数の扁平管(20)とを備え、前記複数の扁平管と前記複数のフィンの間を第1方向に通過する空気の熱交換を行う熱交換器(1)であって、
前記各フィンは、
前記複数の扁平管が貫通している複数の貫通部(310)と、
前記複数の扁平管を貫通させずに前記第1方向と交差する第2方向に延びる連通部(320)と、
隣接するフィンに接してフィンピッチを規定する1つ以上のフィンピッチ規定部(340)と、
を有し、
前記フィンピッチ規定部は、前記各フィンにおいて、N本(Nは2以上の整数)の扁平管に対して1つ設けられ、
前記各フィンの前記フィンピッチ規定部は、前記連通部以外の場所に位置する前記各フィンの伝熱部(330)を2方向以上に切り起こしてなる2以上の立上部(341)を含む、熱交換器(1)。
【請求項2】
前記フィンピッチ規定部は、前記連通部以外の場所に位置する前記各フィンの前記伝熱部を3方向に切り起こしてなる3つの前記立上部を含む、
請求項1に記載の熱交換器(1)。
【請求項3】
前記フィンピッチ規定部は、前記連通部以外の場所に位置する前記各フィンの前記伝熱部を4方向に切り起こしてなる4つの前記立上部を含む、
請求項1に記載の熱交換器(1)。
【請求項4】
扁平管の数が4本以上であり、
前記フィンピッチ規定部は、扁平管4本に対して1つ設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項5】
扁平管の数が6本以上であり、
前記フィンピッチ規定部は、扁平管6本に対して1つ設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項6】
前記各フィンにおける前記フィンピッチ規定部の数が3つ以上であり、
前記各フィンの3つ以上の前記フィンピッチ規定部は、互いに隣り合う前記フィンピッチ規定部の間の扁平管の数が同じになるように配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項7】
前記各フィンの前記各貫通部は、対応する扁平管に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィンと接している第1起立部(316)と、前記対応する扁平管に沿って立ち上がっており且つ前記隣接するフィンと接しない第2起立部(317)とを有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項8】
前記第1方向に通過する空気が、室内の空調を行う室内機の中で熱交換される室内空気である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項9】
複数の扁平管(20)と複数のフィン(30)とを備える熱交換器(1)であって、
前記各フィンは、前記複数の扁平管が貫通している複数の貫通部(310)を有し、
前記各貫通部は、対応する扁平管に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィンと接している第1起立部(316)を有する、熱交換器(1)。
【請求項10】
前記第1起立部は、前記各フィンの長手方向における前記各扁平管の2つの側面のうちの片側のみに対して設けられている、
請求項9に記載の熱交換器(1)。
【請求項11】
前記各貫通部は、前記第1起立部以外の部分として、前記対応する扁平管に沿って立ち上がっており且つ前記隣接するフィンと接しない第2起立部(317)を有し、
前記第1起立部が前記第2起立部よりも高く立ち上がっている、
請求項9または請求項10に記載の熱交換器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のフィンと複数の扁平管とを備える熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の扁平管と複数のフィンを備える熱交換器は、空気調和機の室外機などに用いられている。特許文献1(特開2012-163318号公報)には、空気調和機の室外機で用いられる室外熱交換器が、扁平管とフィンを備える例が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されている室外熱交換器では、フィンに設けられているスペーサが、隣のフィンに当接して互いに隣り合うフィンの間を所定の間隔に保持している。このフィンの間の所定の間隔がフィンピッチである。しかし、フィンピッチの確保のために、スペーサをフィンに配置すると熱交換効率の低下に繋がる。特に、熱交換器が、室内機に用いられるなど、小型化を要求される場合には、スペーサによる熱交換効率の低下が問題となる。
【0004】
扁平管とフィンを備える熱交換器においては、フィンピッチを確保する際に生じる熱交換効率の低下を抑制するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の熱交換器は、複数のフィンと複数の扁平管とを備え、複数の扁平管と複数のフィンの間を第1方向に通過する空気の熱交換を行う熱交換器である。各フィンは、複数の貫通部と連通部と1つ以上のフィンピッチ規定部を有する伝熱部とを備える。複数の貫通部には、複数の扁平管が貫通している。連通部は、複数の扁平管を貫通させずに第1方向と交差する第2方向に延びている。1つ以上のフィンピッチ規定部は、隣接するフィンに接してフィンピッチを規定する。フィンピッチ規定部は、各フィンにおいて、N本(Nは2以上の整数)の扁平管に対して1つ設けられている。各フィンのフィンピッチ規定部は、連通部以外の場所に位置する各フィンの伝熱部を、2方向以上に切り起こしてなる2以上の立上部を含む。
【0006】
第1観点の熱交換器では、フィンピッチ規定部の2以上の立上部が2方向以上に切起されているので、2以上の立上部の間に隙間ができ、通風経路及び排水経路のうちの少なくとも一方がフィンピッチ規定部で狭まるのを抑制することができる。
【0007】
第2観点の熱交換器は、第1観点の熱交換器であって、フィンピッチ規定部は、連通部以外の場所に位置する各フィンの伝熱部を、3方向に切り起こしてなる3つの立上部を含む。
【0008】
第2観点の熱交換器では、3つの立上部の間に3つの隙間が形成されるので、通風経路及び排水経路のうちの少なくとも一方がフィンピッチ規定部で狭まるのを抑制しつつフィンピッチを安定的に規定することができる。
【0009】
第3観点の熱交換器は、第1観点の熱交換器であって、フィンピッチ規定部は、連通部以外の場所に位置する各フィンの伝熱部を、4方向に切り起こしてなる4つの立上部を含む。
【0010】
第3観点の熱交換器では、4つの立上部の間の4つの隙間が形成されるので、通風経路及び排水経路がフィンピッチ規定部で狭まるのを抑制することができる。
【0011】
第4観点の熱交換器は、第1観点から第3観点のいずれかの熱交換器であって、扁平管の数が4本以上であり、フィンピッチ規定部は、扁平管4本に対して1つ設けられている。
【0012】
第4観点の熱交換器では、フィンピッチ規定部を伝熱部に設けることによる熱伝達率の低下を抑制することができる。
【0013】
第5観点の熱交換器は、第1観点から第3観点のいずれかの熱交換器であって、扁平管の数が6本以上であり、フィンピッチ規定部は、扁平管6本に対して1つ設けられている。
【0014】
第5観点の熱交換器では、フィンピッチ規定部を伝熱部に設けることによる熱伝達率の低下を抑制することができる。
【0015】
第6観点の熱交換器は、第1観点から第5観点のいずれかの熱交換器であって、各フィンにおけるフィンピッチ規定部の数が3つ以上である。各フィンの3つ以上のフィンピッチ規定部は、互いに隣り合うフィンピッチ規定部の間の扁平管の数が同じになるように配置されている。
【0016】
第6観点の熱交換器では、フィンピッチ規定部が配置されて熱伝達率の低下する箇所が規則正しく配置され、不規則に配置される場合に比べて全体の熱伝達率の低下を抑制することができる。
【0017】
第7観点の熱交換器は、第1観点から第6観点のいずれかの熱交換器であって、各フィンの各貫通部は、対応する扁平管に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィンと接している第1起立部と、対応する扁平管に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィンと接しない第2起立部とを有する。
【0018】
第7観点の熱交換器では、貫通部の第1起立部が隣接するフィンに接触するので、扁平管挿入時に座屈が生じるのを抑制することができる。
【0019】
第8観点の熱交換器は、第1観点から第7観点のいずれかの熱交換器であって、第1方向に通過する空気が、室内の空調を行う室内機の中で熱交換される室内空気である。
【0020】
第9観点の熱交換器は、複数の扁平管と複数のフィンとを備える熱交換器である。各フィンは、複数の扁平管が貫通している複数の貫通部を有する。各貫通部は、対応する扁平管に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィンと接している第1起立部を有する。
【0021】
第9観点の熱交換器では、フィンピッチを規定する別の部分が第1起立部以外にある場合に、第1起立部によって、扁平管挿入の際の座屈およびフィンつぶれを抑制し、フィンピッチを規定する別の部分によるフィンピッチの確保を補助することができる。
【0022】
第10観点の熱交換器は、第9観点のいずれかの熱交換器であって、第1起立部は、各フィンの長手方向における各扁平管の2つの側面のうちの片側のみに対して設けられている。
【0023】
第10観点の熱交換器では、第1起立部が扁平管の2つの側面のうちの片側のみに対して設けられることから、両側に設ける場合に比べて、第1起立部の高さを、扁平管の厚みに近い高さまで高くすることができる。
【0024】
第11観点の熱交換器は、第9観点または第10観点の熱交換器であって、各貫通部は、第1起立部以外の部分として、対応する扁平管に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィンと接しない第2起立部を有する。第1起立部が第2起立部よりも高く立ち上がっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】空気調和機の構成の概要を示す概念図である。
【
図2】空気調和機の室内機と室外機の外観を示す図である。
【
図4】
図3のI-I線で切断した室内機の断面図である。
【
図5】室内熱交換部の第1熱交換部の斜視図である。
【
図6】
図5の第1熱交換部をB平面で切断した断面を示す部分拡大断面図である。
【
図7】第1熱交換部を扁平管の厚み方向に見た平面図である。
【
図9】フィンピッチ規定部が形成されていないフィンの一部を示す部分拡大斜視図である。
【
図10】フィンピッチ規定部が形成されているフィンの一部を示す部分拡大斜視図である。
【
図11】複数種類のフィンの空気側熱伝達率を示すグラフである。
【
図12】
図11のグラフの対応するフィンの一構成例を示す部分拡大平面図である。
【
図13】
図11のグラフの対応するフィンの他の構成例を示す部分拡大平面図である。
【
図14】
図11のグラフの対応するフィンの構成の他の例を示す部分拡大平面図である。
【
図15】
図11のグラフの対応するフィンの構成の他の例を示す部分拡大平面図である。
【
図19】変形例Bに係るフィンの構成を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1)全体構成
図1に示されているように、実施形態に係る熱交換器は、例えば、空気調和機100の室内機110に適用される室内熱交換器1である。空気調和機100には、室内機110と室外機120が含まれている。室内機110は、連絡管131,132によって室外機120と接続されている。
【0027】
図2に示されているように、室内機110は、室内熱交換器1以外に、ケーシング111と、室内ファン112とを備えている。室内機110は、部屋RMにおいて壁WLに掛けて設置される壁掛け型である。室内機110は、略直方体状の外観を呈する。ケーシング111は、主に、室内機110の外面を構成する。ケーシング111は、室内熱交換器1と室内ファン112を内部に収容する。ケーシング111は、室内の空気をケーシング111の内部に流入させる吸込口113と、室内熱交換器1において冷媒と熱交換を行った空気が吹き出す吹出口114とを有する。フラップ115は、姿勢(回転角度)が制御される。フラップ115が姿勢を変えることにより、吹出口114の開度及び吹出口114から吹き出される気流の風向が調整される。
【0028】
室外機120は、例えば、建物の屋上や建物の外壁面近傍等の部屋RMの外部(室外)に設置される。室外機120は、圧縮機122と、四方弁123と、室外熱交換器124と、膨張弁125と、室外ファン126とを有している。
【0029】
圧縮機122は、低圧の冷媒を吸入口から吸入して、高圧になるまで圧縮した後、吐出口から吐出する。圧縮機122は、例えば、内蔵するモータの回転速度を変えることにより容量を変えることができる容積式圧縮機である。四方弁123は、第1ポートP1と、第2ポートP2と、第3ポートP3と、第4ポートP4とを有する。
【0030】
四方弁123は、第1状態(
図2において破線で示す状態)と第2状態(
図2において実線で示す状態)を切り換えることにより、冷媒の流れの方向を切り換える。第1状態では、第1ポートP1と第4ポートP4が互いに連通して第2ポートP2と第3ポートP3が互いに連通する。第2状態では、第1ポートP1と第2ポートP2が互いに連通して第3ポートP3と第4ポートP4が互いに連通する。第1ポートP1は、圧縮機122の吐出口に接続されている。第2ポートP2は、室外熱交換器124のガス側の出入口に接続されている。第3ポートP3は、圧縮機122の吸入口に接続されている。第4ポートP4は、連絡管132に接続されている。
【0031】
室外熱交換器124は、冷媒と外気との熱交換を行う熱交換器である。室外熱交換器124の液側の出入口は、膨張弁125に接続されている。室外熱交換器124のガス側の出入口は、四方弁123の第2ポートP2に接続されている。
【0032】
膨張弁125は、冷媒を減圧する。膨張弁125は、連絡管131と、室外熱交換器124の液側との間に設けられている。膨張弁125は、例えば、開度制御が可能な電動膨張弁である。
【0033】
圧縮機122と四方弁123と室外熱交換器124と膨張弁125と室内熱交換器1は、冷媒回路200を形成している。冷媒回路200では、圧縮機122と四方弁123と室外熱交換器124と膨張弁125と室内熱交換器1を冷媒が循環して、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが実施される。空気調和機100による空気調和は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルの実施により行われる。四方弁123が第1状態(破線で示す状態)に切り換えられると、圧縮機122、室内熱交換器1、膨張弁125、室外熱交換器124を巡った冷媒が圧縮機122に戻るように循環して、暖房運転が行われる。四方弁123が第2状態(実線で示す状態)に切り換えられると、圧縮機122、室外熱交換器124、膨張弁125、室内熱交換器1を巡った冷媒が圧縮機122に戻るように循環して、冷房運転が行われる。
【0034】
室内ファン112は、室内熱交換器1を通過する室内空気の気流を生成する。室内の空気が室内熱交換器1を通過することにより、室内熱交換器1の中を通過する冷媒と室内の空気との熱交換が促される。室内ファン112は、内蔵するモータの回転速度を変えることにより、室内熱交換器1を通過する風量を変えることができる。
【0035】
室外ファン126は、室外熱交換器124を通過する外気の気流を生成する。室外ファン126が外気を室外熱交換器124に送ることにより、室外熱交換器124の中を通過する冷媒と外気との熱交換が促される。室外ファン126は、内蔵するモータの回転速度を変えることにより、室外熱交換器124を通過する風量を変えることができる。
【0036】
(1-1)暖房運転
室内機110が例えばリモートコントローラ150から暖房運転の実行指示についての信号を受信すると、空気調和機100は暖房運転を開始する。暖房運転に際して、空気調和機100は、四方弁123を第1状態へ切り換える。空気調和機100は、例えばリモートコントローラ150から受信した設定温度に室温を一致させるため、圧縮機122の回転速度、膨張弁125の開度、室外ファン126の回転速度を調節する。また、空気調和機100は、例えばリモートコントローラ150から受信した設定風量になるように、室内ファン112の回転速度を調節する。暖房運転では、室外熱交換器124が冷媒の蒸発器として機能し、かつ、室内熱交換器1が冷媒の放熱器として機能する。
【0037】
暖房運転の間、冷媒回路200で、圧縮機122から吐出された高温高圧の冷媒は、室内熱交換器1で、室内ファン112によって送られる室内の空気と熱交換して放熱する。室内熱交換器1で加熱された室内の空気は、調和空気として室内に吹出される。室内熱交換器1で放熱した冷媒は、膨張弁125を通過して減圧される。減圧により膨張した冷媒は、室外熱交換器124で、室外ファン126によって送られる外気と熱交換して蒸発する。冷媒回路200では、室外熱交換器124を通過した冷媒が、圧縮機122へ吸入されて圧縮される。
【0038】
(1-2)冷房運転
室内機110は、リモートコントローラ150から冷房運転の実行指示についての信号を受信すると冷房運転を開始する。冷房運転に際して、空気調和機100は、四方弁123を第2状態へ切り換える。空気調和機100は、例えばリモートコントローラ150から受信した設定温度に室温を一致させるため、圧縮機122の回転速度、膨張弁125の開度、室内ファン112の回転速度を調節する。また、空気調和機100は、例えばリモートコントローラ150から受信した設定風量になるように、室内ファン112の回転速度を調節する。冷房運転では、室外熱交換器124が冷媒の放熱器として機能し、かつ、室内熱交換器1が冷媒の蒸発器として機能する。
【0039】
冷房運転の間、冷媒回路200は、圧縮機122から吐出された高温高圧の冷媒は、室外熱交換器124で、室外ファン126によって送られる外気と熱交換して放熱する。室外熱交換器124で冷やされた冷媒は、膨張弁125を通過して減圧される。減圧により膨張した冷媒は、室内熱交換器1で、室内ファン112によって送られる室内の空気と熱交換して蒸発する。室内熱交換器1で冷却された室内の空気は、調和空気として室内に吹出される。冷媒回路200では、室内熱交換器1を通過した冷媒が、圧縮機122へ吸入されて圧縮される。
【0040】
(2)詳細構成
(2-1)室内熱交換器1
本実施形態では、室内熱交換器1は、第1熱交換部11と、第2熱交換部12と、第3熱交換部13の3つの熱交換部により構成されている。第1熱交換部11と、第2熱交換部12と、第3熱交換部13との相違点は、ケーシング111の内部における配置位置である。本実施形態では、第1熱交換部11と、第2熱交換部12と、第3熱交換部13との構造が同一である場合について説明する。このため、以下では、第1熱交換部11を例にその構造を説明し、第2熱交換部12及び第3熱交換部13の構造の説明は省略する。ただし、第1熱交換部11と第2熱交換部12と第3熱交換部13の構造が同一でない場合にも、本開示に係る熱交換器を適用することができる。なお、第1熱交換部11と第2熱交換部12と第3熱交換部13のケーシング111の内部における配置については後述する。なお、第1熱交換部11、第2熱交換部12及び第3熱交換部13を総称する場合は、熱交換部10と呼ぶ。
【0041】
図5には、第1熱交換部11を斜め上方から見た状態が示されている。
図6には、第1熱交換部11を
図5のB平面で切断して拡大した断面が示されている。
図7には、扁平管20の厚み方向に沿って見た第1熱交換部11が示されている。以下の説明で用いる扁平管20の幅方向(第1方向)、厚み方向(第2方向)、長手方向の各方向は、
図5、
図6、
図7に矢印で示された方向に従う。扁平管20の幅方向は、室内熱交換器1で熱交換される空気が通過する方向である第1方向と一致する。扁平管20の厚み方向は、第1方向と交差する第2方向に一致する。
【0042】
第1熱交換部11は、複数の扁平管20と、複数のフィン30と、第1ヘッダ41と、第2ヘッダ42と、第3ヘッダ43とを有する。第1熱交換部11は、複数のフィン30によって複数の扁平管20が扁平管20の厚み方向へ所定の間隔を空けて積層された積層型熱交換器である。本実施形態では、室内熱交換器1は、内側熱交換部10iと、外側熱交換部10oとを有する。
【0043】
扁平管20は、内部に冷媒が流れる伝熱管である。扁平管20は、横断面が扁平の長円形状に形成される。扁平管20は、横断面に直交するように形成された冷媒流路201を複数有する多穴管である。複数の冷媒流路201は、扁平管20の幅方向に並べて配置されている。扁平管20は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金を用いて押し出し成形により形成される。本実施形態の扁平管20は、室内機110の長手方向に沿うように配置される。扁平管20は、2つの側面211,212を有している。2つの側面211,212の幅方向及び長手方向に広がっている。
【0044】
フィン30は、複数の扁平管20が一定の間隔をおいて貫通している帯状の板材である。フィン30は、扁平管20を挿入するためのスリット状の切り欠きの周縁部である貫通部310を複数有している。貫通部310の切り欠きは、フィン30の厚み方向から見て、フィン30長手方向に延びる端縁の一方から、当該端縁と直交しながら他方の端縁に向かって延びるように形成されている。複数の貫通部310は、フィン30の長手方向に一定間隔で形成されている。フィン30は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金を用いて形成される。
【0045】
扁平管20は、幅方向が貫通部310の切り欠きへの挿入方向に一致するように、貫通部310に挿入される。複数のフィン30は、扁平管20の長手方向に所定の間隔を空けて並べられる。言い換えると、所定の間隔とは、フィンピッチである。フィン30と扁平管20とは、貫通部310においてロウ付けにより接合される。複数の扁平管20は、端部が扁平管20の厚み方向に並ぶようにフィン30に接合される。言い換えると、複数段に複数の扁平管20が並ぶようにフィン30に接合されるということである。
図5及び
図7は、扁平管20の長手方向に並べられた複数のフィン30により形成される外縁と、複数のフィン30の一部とを図示している。
【0046】
内側熱交換部10iと、外側熱交換部10oとはどちらも、所定の数の扁平管20を所定の数のフィン30に接合して、略同一の形状に形成されている。内側熱交換部10iは、外側熱交換部10oよりも室内ファン112に近い位置に配置される。内側熱交換部10iと、外側熱交換部10oとは、扁平管20の厚み方向に重ねて配置される。言い換えると、第1熱交換部11は、内側熱交換部10iと外側熱交換部10oの2列からなるということである。それに対して、各列の扁平管20の数が、第1熱交換部11の段数になる。内側熱交換部10i及び外側熱交換部10oそれぞれの隣り合う扁平管20の間の隙間及び隣り合うフィン30の隙間によって、室内ファン112が生成する気流の流れる流路が形成される。
図6に破線の矢印で、この流路に流れる気流の流れが示される。
【0047】
第1ヘッダ41、第2ヘッダ42、及び第3ヘッダ43は、複数の扁平管20の端部において複数の扁平管20の冷媒流路201を互いに連通する筒状の部材である。
【0048】
第1ヘッダ41は、内側熱交換部10iが有する扁平管20の長手方向の一端において、複数の扁平管20の冷媒流路201を互いに連通するように設けられる。具体的には、内側熱交換部10iが有する複数の扁平管20の長手方向の一端は、第1ヘッダ41の側面に形成された開口を通して第1ヘッダ41に挿入され、ロウ付け等を用いて第1ヘッダ41に固定される。
【0049】
第2ヘッダ42は、内側熱交換部10iが有する扁平管20の長手方向の他端及び外側熱交換部10oが有する扁平管20の長手方向の他端において、内側熱交換部10iの複数の扁平管20の冷媒流路201と、外側熱交換部10oの複数の扁平管20の冷媒流路201とを互いに連通するように設けられる。具体的には、内側熱交換部10iが有する扁平管20の長手方向の他端及び外側熱交換部10oが有する扁平管20の長手方向の他端は、第2ヘッダ42の側面に形成された開口を通して第2ヘッダ42に挿入され、ロウ付け等を用いて第2ヘッダ42に固定される。
【0050】
第3ヘッダ43は、外側熱交換部10oが有する扁平管20の長手方向の一端において、複数の扁平管20の冷媒流路201を互いに連通するように設けられる。具体的には、外側熱交換部10oが有する複数の扁平管20の長手方向の一端は、第3ヘッダ43の側面に形成された開口を通して第3ヘッダ43に挿入され、ロウ付け等を用いて第3ヘッダ43に固定される。第3ヘッダ43は、分岐管431を介して連絡管132に接続されている。
【0051】
連絡管131を通って第1ヘッダ41に流入した冷媒は、内側熱交換部10iの扁平管20に形成された複数の冷媒流路201を通過して第2ヘッダ42に流入する。第2ヘッダ42に流入した冷媒は、外側熱交換部10oに形成された複数の冷媒流路201を通過して第3ヘッダ43を通って連絡管132に流入する。また、連絡管132を通って第1ヘッダ41に流入した冷媒は、外側熱交換部10oの扁平管20に形成された複数の冷媒流路201を通過して第3ヘッダ43に流入する。第3ヘッダ43に流入した冷媒は、内側熱交換部10iに形成された複数の冷媒流路201を通過して第1ヘッダ41を通って連絡管131に流入する。
【0052】
第1熱交換部11は、室内機110を側面から見て(壁WLに沿った水平方向に見て)、扁平管20の厚み方向が上下方向(鉛直方向)に対して後方に傾斜するように設けられる。その結果、第1熱交換部11の上端が下端よりも壁WLに近くなるように配置される。第2熱交換部12は、室内機110を側面から見て、扁平管20の厚み方向が上下方向(鉛直方向)に対して前方に傾斜するように設けられる。その結果、第2熱交換部12の下端が上端よりも壁WLに近くなるように配置される。第3熱交換部13は、室内機110を側面から見て、扁平管20の厚み方向が上下方向(鉛直方向)に対して前方に傾斜するように設けられる。その結果、第3熱交換部13の下端が上端よりも壁WLに近くなるように配置される。
【0053】
(2-1-1)フィン30
図8には、1枚のフィン30の一部が示されている。各フィン30は、複数の貫通部310と1つの連通部320と複数の伝熱部330とを有する。連通部320は、第2方向に連続的に続く部分である。
図8に示した、第2方向に延びている一点鎖線が伝熱部330と連通部320の境界線である。貫通部310は、切り欠きの周囲の周縁部である。周縁部には、扁平管20に沿って立ち上がるカラー311が形成されている。この実施形態では、カラー311が貫通部310に相当する。扁平管20に沿う方向は、第1方向及び第2方向に対して交差する方向である。伝熱部330は、貫通部310及び連通部320以外の部分である。
【0054】
各フィン30は、また、フィンピッチ規定部340と、ブリッジ形状の切起部350と、凸部360とを有する。フィンピッチ規定部340と切起部350と凸部360は、伝熱部330に形成された構造である。フィンピッチ規定部340は、隣接するフィン30に接してフィンピッチを規定する。隣接するフィン30のフィンピッチは、フィンピッチ規定部340の高さh1(
図10参照)によって決まる。フィンピッチ規定部340は、連通部320以外の場所に位置する各フィン30の伝熱部330を、2方向以上に切り起こしてなる2以上の立上部341を含むものである。そのため、立上部341の間には隙間342が形成される。フィンピッチ規定部340は、各フィン30において、N本(Nは2以上の整数)の扁平管20に対して1つ設けられる。各フィン30におけるフィンピッチ規定部340の数が3つ以上である場合には、各フィン30の3つ以上のフィンピッチ規定部340は、互いに隣り合うフィンピッチ規定部340の間の扁平管20の数が同じになるように配置されることが好ましい。例えば、各フィン30のフィンピッチ規定部340の数が4つで且つN=4であれば、1つ目に
図10の構造が配置され、次に3つ
図9の構造が続き、次に
図10の構造が配置され、また3つ
図9の構造が続き、次に
図10の構造が配置され、さらに3つ
図9の構造が続き、次に
図10の構造が配置される。
【0055】
貫通部310のカラー311は、第1起立部316と第2起立部317とに分けることができる。第1起立部316は、カラー311において、貫通する扁平管20に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィン30と接する部分である。それに対し、第2起立部317は、貫通する扁平管20に沿って立ち上がっており且つ前記隣接するフィン30と接しない部分である。第1起立部316は、切り欠きの互いに対向する二辺318,319(
図8参照)のうちの一辺にのみ配置される。
【0056】
第1起立部316は、フィンピッチ規定部340によって規定されるフィンピッチを維持する補助を行う。また、第1起立部316は、扁平管20を挿入する際のフィン30の座屈を抑制する。座屈を抑止し易くするために、第1起立部316は、貫通部310の切り欠きの入口に設けることが好ましい。また、第1起立部316の長さL2は、フィン30の第1方向の長さL1の50%以下であることが好ましい。第1起立部316が隣接するフィン30に接する面は、安定してフィン30を支えるために、長方形であることが好ましい。
【0057】
(2-1-2)フィンピッチ規定部340の具体的構成
図8には、Nが4である場合のフィン30の一部が示されている。
図9には、互いに隣接する扁平管20の間にフィンピッチ規定部340が形成されていないフィン30の箇所が示されている。
図10には、互いに隣接する扁平管20の間にフィンピッチ規定部340が形成されているフィン30の箇所が示されている。N=4の場合、フィンピッチ規定部340は、4本の扁平管20に対して1つ設けられる。言い換えると、N=4の場合、各フィン30において、互いに隣接する2つのフィンピッチ規定部340の間には、4本の扁平管20が配置される。
【0058】
図9に示されている、フィンピッチ規定部340が形成されていないフィン30の伝熱部330には、ブリッジ形状の切起部350が3つ形成されている。それに対し、
図10に示されている、フィンピッチ規定部340が形成されている伝熱部330には、ブリッジ形状の切起部350が1つしか形成されていない。ブリッジ形状の切起部350は、伝熱部330の切起されていない平坦な部分を通過した気流は、切起部350の両面に沿って通過する。このようなブリッジ形状の切起部350をスリットと呼ぶ場合がある。ブリッジ形状の切起部350が3つ形成されている伝熱部330の方が、ブリッジ形状の切起部350が1つ形成されている伝熱部330よりも効率良く熱交換を行うことができる。
【0059】
フィンピッチ規定部340の4つの立上部341の間には、4つの隙間342がある。4つの隙間342のうちの2つが第1方向に並ぶように配置され、残りの2つが第2方向に並ぶように配置される。立上部341は、平坦な伝熱部330に十字の切断線を形成して折り曲げ線が円になるように切り起すことにより形成される。それにより、第1方向に流れる気流が2つの隙間342を通過して容易に流れる。また、第2方向に他の2つの隙間342を通過して結露水が容易に流れる。
【0060】
(2-1-3)フィンピッチ規定部と熱伝達率
フィンピッチ規定部340と熱伝達の関係を示すグラフが
図11に示されている。
図11に示されているグラフは、
図12に示されたフィン30を用いた構成X1、
図13に示されたフィン530を用いた構成Y1、
図14に示されたフィン630を用いた構成Y2、及び
図14に示されたフィン730を用いた構成Y3の空気側熱伝達率(W/m
2)を示すものである。これらのグラフは、同じ面積のフィン30,530,630,730の温度と空気の温度を同じ条件とした場合に、フィン30,530,630,730から空気に伝わる熱量の差を比較するためのグラフである。空気側熱伝達率が高いフィンを用いるほど、熱交換効率の良い熱交換器を得られることになる。グラフは、3列フィンについて、列ピッチが10mm、段ピッチが9.7mmの条件で測定した結果を示している。空気の流れの向きは、矢印AFで示された向きである。
【0061】
グラフの横軸の「N」は、構成X1,Y1の各フィンにおける、1つのフィンピッチ規定部340,540に対する扁平管20の本数に対応している。N=1の場合は、フィンピッチ規定部340,540が全ての伝熱部330に形成されている場合である。言い換えると、N=1の場合は、各フィン30,530において、
図9に示されている構造が現れない場合である。N=2の場合は、隣接するフィンピッチ規定部340,540の間に2つの扁平管20が配置される場合である。言い換えると、N=2の場合は、例えば各フィン30において、
図9に示されている構造と
図10に示されている構造が交互に現れる場合である。N=3の場合は、隣接するフィンピッチ規定部340,540の間に3つの扁平管20が配置される場合である。言い換えると、N=3の場合は、例えば各フィン30において、
図9に示されている構造が2回続けて現れた後に
図10に示されている構造が1回現れる場合である。
【0062】
図12に示されている構成X1は、上記実施形態に係るフィン30を用いた構成であり、伝熱部330にフィンピッチ規定部340と1つのブリッジ型の切起部350と凸部360が設けられ、貫通部310に第1起立部316が設けられている。
図12に示されている構成X1と
図13に示されている構成Y1とが異なる点は、フィンピッチ規定部340,540の構造に違いである。フィンピッチ規定部340には隙間342が存在するが,フィンピッチ規定部540には隙間342に相当する構造が存在しない。
図12のフィンピッチ規定部340には4つの立上部341があるが、
図13のフィンピッチ規定部540には円形状に立ち上がった部分が一つだけ存在する。
図14に示されている構成Y2には、特許文献1に開示されていたスペーサ640が伝熱部330に2つ設けられている。そのため、ブリッジ型の切起部350が伝熱部330に一つしか設けられない。そのため、
図14に示されている構成Y2は、
図11に破線のグラフで示されているように、低い空気側熱伝達率を有する。
図15に示されている構成Y3には、貫通部710にフィンピッチ規定部740が設けられている。このような貫通部710のみにフィンピッチ規定部740が設けられる構成Y3は、製造が難しく実用的ではないが、全ての伝熱部330にブリッジ型の切起部350を3つずつ設けることができる。そのため、
図15に示されている構成Y3は、
図11に一点鎖線のグラフで示されているように、良好な空気側熱伝達率を有している。
【0063】
図12及び
図13に示された構成X1,Y1のN=1の空気側熱伝達率は、いずれも、構成Y2の空気側熱伝達率よりも劣る。しかし、
図12及び
図13に示された構成X1,Y1のN=2以上の空気側熱伝達率は、構成Y2の空気側熱伝達率よりも良くなる。さらに、N=4、N=6のように、Nが大きくなるにつれて、
図15に示された構成Y3の空気側熱伝達率に近づく。また、
図12に示された構成X1と
図13に示された構成Y1とを比較すると、Nの値が幾つであっても、構成X1の空気側熱伝達率が構成Y1の空気側熱伝達率よりも高い値になる。
【0064】
(3)変形例
(3-1)変形例A
上記実施形態では、室内機110が壁掛け型である場合について説明した。しかし、上記実施形態で説明した室内熱交換器1が適用できる室内機は、壁掛け型には限られない。本開示に係る室内熱交換器1は、例えば、天井に埋め込まれてダクトにより調和空気を分配する、
図16に示されているようなダクト型の室内機に適用できる。
図16においては、室内ファン112によって、室内熱交換器1に気流が発生する。
図16の室内ファン112には、例えば遠心ファンを用いることができる。遠心ファンには、例えばシロッコファンを用いることができる。
図16に示された室内熱交換器1の形状は、側面から見てI字形であるが、例えば
図17に示されているように側面から見た形状が楔形に折れ曲がっていてもよい。この場合、
図17に示されているように室内ファン112には、例えばクロスフローファンを用いてもよく、クロスフローファンに代えて遠心ファンを用いてもよい。
図17において、二点鎖線の矢印AFが空気が流れる方向を表している。
図18に示されているように、側面から見てN字形に熱交換器1を配置することもできる。
図18の室内機110では、矢印AFで示されているように、室内ファン112により、重力方向の下から上に空気が流れるように構成されている。
図18の室内機110の構成で、上から下に空気が流れるように構成することもできる。
【0065】
(3-2)変形例B
上記実施形態では、フィンピッチ規定部340の立上部341が4つである場合について説明した。しかし、1つのフィンピッチ規定部340の立上部341の個数は、
図19に示されているように、3つであってもよい。この場合、
図19に示されているように、互いに隣接する立上部341の間の隙間342は、空気流れ方向(第1方向)にずれて配置されることで、気流の抵抗を小さくし易くなる。また、互いに隣接する立上部341の間の隙間342は、結露水が流れる方向(第2方向)に並んで配置されることで、結露水を流れ易くすることができる。
【0066】
また、フィンピッチ規定部340の立上部341の個数を2つにすることができる。立上部341の個数を2つにする場合に、2つの隙間342を、空気の流れ方向(第1方向)に並んで配置すると、気流を流れ易くすることができる。立上部341の個数を2つにする場合に、2つの隙間342を、結露水が流れる方向(第2方向)に並んで配置すると、結露水を流れ易くすることができる。なお、2つ以上ある立上部341の大きさは、上記実施形態のように互いに同じ大きさであってもよいが、
図19に示したように、同じ大きさでなくてもよい。
【0067】
(3-3)変形例C
上記実施形態では、フィンピッチ規定部340と第1起立部316とを組み合わせる場合について説明した。しかし、フィンピッチ規定部340と第1起立部316とを組み合わせなくてもよい。例えば、フィンピッチ規定部340を設けて、第1起立部316を設けないように構成することもできる。また、第1起立部316は、フィンピッチ規定部340以外のフィンピッチ規定部と組み合わせてもよい。
【0068】
(3-4)変形例D
上記実施形態では、貫通部310にカラー311を設ける場合について説明した。しかし、カラー311を設けずに、貫通部310において第1起立部316のみが立ち上がるように構成することもできる。
【0069】
(3-5)変形例E
上記実施形態では、伝熱部330にブリッジ型の切起部350を形成する場合について説明した。しかし、熱交換を促進するための構造は、ブリッジ型の切起部350(スリット)には限られない。例えば、熱交換を促進するための構造は、伝熱部330の平面に対して斜めに切り起されたルーバー型の切起部でもよい。
【0070】
(4)特徴
(4-1)
上記実施形態または変形例では、各フィン30は、複数の貫通部310と連通部320と1つ以上のフィンピッチ規定部340とを有している。複数の貫通部310には、複数の扁平管20が貫通している。連通部320は、複数の扁平管20を貫通させずに第1方向と交差する第2方向に延びている。1つ以上のフィンピッチ規定部340は、隣接するフィン30に接してフィンピッチを規定する。フィンピッチ規定部340は、各フィン30において、N本(Nは2以上の整数)の扁平管20に対して1つ設けられている。各フィン30のフィンピッチ規定部340は、連通部320以外の場所に位置する各フィン30の伝熱部330を、2方向以上に切り起こしてなる2以上の立上部341を含む。フィンピッチ規定部340の2以上の立上部341が2方向以上に切起されているので、2以上の立上部341の間に隙間342ができ、通風経路及び排水経路のうちの少なくとも一方がフィンピッチ規定部340で狭まるのを抑制することができる。その結果、熱交換効率または排水性がフィンピッチ規定部340によって低下するのを抑制することができる。
【0071】
(4-2)
変形例Bで説明した
図19のフィンピッチ規定部340のように3方向に切り起こしてなる3つの立上部341を含む場合に、フィンピッチ規定部340は、3つの立上部341で隣接するフィン30を三点で支持できる。その結果、フィンピッチ規定部340が、隣接するフィン30をしっかりと支えられ、フィンピッチを安定的に規定することができる。また、3つの立上部341を含むフィンピッチ規定部340は、3つの隙間342を有するので、通風経路及び排水経路のうちの少なくとも一方がフィンピッチ規定部340で狭まるのを、隙間342の配置により抑制することができる。
【0072】
(4-3)
上記実施形態のフィンピッチ規定部340は、4方向に切り起こしてなる4つの立上部341を含んでいる。フィンピッチ規定部340の4つの立上部341が4方向に切起されているので、2つの隙間342を第1方向に並べて配置することができ、他の2つの隙間342を第2方向に並べて配置することができる。第1方向に並べて配置された2つの隙間342によって、通風経路が狭まるのを抑制することができる。また、第2方向に並べて配置された2つの隙間342によって、排水経路が狭まるのを抑制することができる。その結果、通風経路及び排水経路がフィンピッチ規定部340で狭まるのを、隙間342の配置により抑制することができる。
【0073】
(4-4)
図11の構成X1のグラフにあるように、フィンピッチ規定部340は、扁平管4本に対して1つ設けたり、扁平管6本に対して1つ設けたりするように、各フィン30において、フィンピッチ規定部340の設けられている部分の割合を減らすことで、熱伝達率の低下を抑制することができる。フィンピッチ規定部340の設けられている部分の割合を減らすとは、Nを増やすことであり、換言すると、各フィン30における(
図10の構成の数/
図9の構成の数)の値を減らすということである。
【0074】
(4-5)
上記実施形態では、各フィン30におけるフィンピッチ規定部340の数が3つ以上である場合に、各フィン30の3つ以上のフィンピッチ規定部340は、互いに隣り合うフィンピッチ規定部340の間の扁平管20の数が同じになるように配置されることが好ましい。このように配置されると、フィンピッチ規定部340が配置されて熱伝達率の低下する箇所が規則正しく配置され、不規則に配置される場合に比べて全体の熱伝達率の低下を抑制することができる。
【0075】
(4-6)
上記実施形態の各フィン30の各貫通部310は、対応する扁平管20に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィン30と接している第1起立部316と、対応する扁平管20に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィン30と接しない第2起立部317とを有する。貫通部310の第1起立部316が隣接するフィン30に接触するので、扁平管20への挿入時に座屈が生じるのを抑制することができる。また、第1起立部316は、フィンピッチの確保を補助することができる。
【0076】
(4-7)
上記実施形態の各フィンの各貫通部310は、対応する扁平管20に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィン30と接している第1起立部316を有する。フィンピッチを規定する別の部分が第1起立部316以外にある場合に、第1起立部316によって、扁平管20の挿入の際の座屈およびフィンつぶれを抑制し、フィンピッチを規定する別の部分によるフィンピッチの確保を補助することができる。上記実施形態では、フィンピッチを規定する別の部分がフィンピッチ規定部340であるが、フィンピッチを規定する別の部分は、フィンピッチ規定部340には限られない。
【0077】
(4-8)
上記実施形態の第1起立部316は、各フィン30の長手方向における各扁平管20の2つの側面211,212(
図6参照)のうちの片側のみに対して設けられている。言い換えると、貫通部310の切り欠きの互いに対向する二辺318,319(
図8参照)のうちの一辺のみに配置されている。第1起立部316が扁平管20の2つの側面のうちの片側のみに対して設けられることから、両側に設ける場合に比べて、第1起立部316の高さを、扁平管20の厚みに近い高さまで高くすることができる。
【0078】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0079】
1 室内熱交換器 (熱交換器の例)
20 扁平管
30 フィン
310 貫通部
316 第1起立部
317 第2起立部
320 連通部
330 伝熱部
340 フィンピッチ規定部
341 立上部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【手続補正書】
【提出日】2023-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィン(30)と複数の扁平管(20)とを備え、前記複数の扁平管と前記複数のフィンの間を第1方向に通過する空気の熱交換を行う熱交換器(1)であって、
前記各フィンは、
前記複数の扁平管が貫通している複数の貫通部(310)と、
前記複数の扁平管を貫通させずに前記第1方向と交差する第2方向に延びる連通部(320)と、
隣接するフィンに接してフィンピッチを規定する1つ以上のフィンピッチ規定部(340)と、
を有し、
前記フィンピッチ規定部は、前記各フィンにおいて、N本(Nは2以上の整数)の扁平管に対して1つ設けられ、
前記各フィンの前記フィンピッチ規定部は、前記連通部以外の場所に位置する前記各フィンの伝熱部(330)を2方向以上に切り起こしてなる2以上の立上部(341)を含み、
前記フィンピッチ規定部は、上側の扁平管側を向いている隙間を有する、熱交換器(1)。
【請求項2】
前記フィンピッチ規定部は、前記連通部以外の場所に位置する前記各フィンの前記伝熱部を3方向に切り起こしてなる3つの前記立上部を含む、
請求項1に記載の熱交換器(1)。
【請求項3】
前記フィンピッチ規定部は、前記連通部以外の場所に位置する前記各フィンの前記伝熱部を4方向に切り起こしてなる4つの前記立上部を含む、
請求項1に記載の熱交換器(1)。
【請求項4】
扁平管の数が4本以上であり、
前記フィンピッチ規定部は、扁平管4本に対して1つ設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項5】
扁平管の数が6本以上であり、
前記フィンピッチ規定部は、扁平管6本に対して1つ設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項6】
前記各フィンにおける前記フィンピッチ規定部の数が3つ以上であり、
前記各フィンの3つ以上の前記フィンピッチ規定部は、互いに隣り合う前記フィンピッチ規定部の間の扁平管の数が同じになるように配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項7】
前記各フィンの前記各貫通部は、対応する扁平管に沿って立ち上がっており且つ隣接するフィンと接している第1起立部(316)と、前記対応する扁平管に沿って立ち上がっており且つ前記隣接するフィンと接しない第2起立部(317)とを有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項8】
前記第1方向に通過する空気が、室内の空調を行う室内機の中で熱交換される室内空気である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】