(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005488
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】被覆処理具、及び被覆処理方法
(51)【国際特許分類】
H02G 15/18 20060101AFI20240110BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02G15/18 020
H02G1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105688
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 恒久
【テーマコード(参考)】
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
5G355AA03
5G355BA15
5G355CA09
5G375AA02
5G375BA26
5G375BB47
5G375CA02
5G375CA14
5G375CB04
5G375CB07
5G375DB32
(57)【要約】
【課題】拡径保持部材の強度を低減しつつ、遮水層へのダメージを抑制できる被覆処理具、及び被覆処理方法を提供する。
【解決手段】被覆処理具は、常温収縮チューブと、常温収縮チューブを拡径した状態で保持する拡径保持部材と、常温収縮チューブの外側に設けられる遮水層と、常温収縮チューブの外側に設けられ、遮水層に接着されるクッション層と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温収縮チューブと、
前記常温収縮チューブを拡径した状態で保持する拡径保持部材と、
前記常温収縮チューブの外側に設けられる遮水層と、
前記常温収縮チューブの外側に設けられ、前記遮水層に接着されるクッション層と、
を備える被覆処理具。
【請求項2】
前記常温収縮チューブの外側における少なくとも両端側に設けられるパテ状の防水材を更に備える、請求項1に記載の被覆処理具。
【請求項3】
前記遮水層が金属と樹脂の積層体によって構成される、請求項1に記載の被覆処理具。
【請求項4】
前記クッション層が発泡テープによって構成される、請求項1に記載の被覆処理具。
【請求項5】
被覆処理具を用いて被覆対象物の被覆処理を行う被覆処理方法であって、
前記被覆処理具は、
常温収縮チューブと、
前記常温収縮チューブを拡径した状態で保持する拡径保持部材と、
前記常温収縮チューブの外側に設けられる遮水層と、
前記常温収縮チューブの外側に設けられ、前記遮水層に接着されるクッション層と、を備え、
前記被覆対象物に対して、前記遮水層及び前記クッション層が前記常温収縮チューブの内側に配置されるように、被覆処理を行う、被覆処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被覆処理具、及び被覆処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遮水型常温収縮性チューブが記載されている。遮水型常温収縮性チューブは、解体可能な筒状コアと、筒状コア上に弾性的に拡径された状態で支持される2層の常温収縮性チューブ層と、遮水層と、粘着層とを備える。遮水層は、金属箔を周方向に筒状に巻いて、その相対向する両側縁をオーバーラップさせて形成され、2層の常温収縮性チューブ層の間に介在される。粘着層は、遮水層の内外周面に付着して形成され、遮水層と常温収縮性チューブ層とを密着させる。
【0003】
特許文献2には、遮水チューブが記載されている。遮水チューブは、ゴム又はプラスチックフィルムが積層された金属箔を両側縁がオーバーラップするように円筒状に形成してそのオーバラップ部分を融着又は接着してなる遮水層を備えた遮水チューブである。遮水層の内面にオレフィン系発泡材料からなる非透過性のクッション層が積層され、遮水チューブの端部におけるクッション層の内面に粘着シール層が設けられ、ケーブル接続部の外周に装着されて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-231150号公報
【特許文献2】特開2004-201378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
常温収縮チューブと、金属箔からなる遮水層と、常温収縮チューブを拡径した状態で保持する拡径保持部材と、を備える被覆処理具の場合、遮水層の金属箔の周方向の両端縁においてオーバーラップした部分が形成される。また、遮水層は、外側の常温収縮チューブによって拡径保持部材へ押し付けられる。そのため、拡径保持部材には、周方向に不均一な圧力が付与される。このような不均一な圧力を支えるために、拡径保持部材として強度の高いものを採用しなくてはならないという問題がある。また、遮水層のダメージを低減することも求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る被覆処理具は、常温収縮チューブと、常温収縮チューブを拡径した状態で保持する拡径保持部材と、常温収縮チューブの外側に設けられる遮水層と、常温収縮チューブの外側に設けられ、遮水層に接着されるクッション層と、を備える。
【0007】
本開示に係る被覆処理方法は、被覆処理具を用いてケーブル接続部の被覆処理を行う被覆処理方法であって、被覆処理具は、常温収縮チューブと、常温収縮チューブを拡径した状態で保持する拡径保持部材と、常温収縮チューブの外側に設けられる遮水層と、常温収縮チューブの外側に設けられ、遮水層に接着されるクッション層と、を備え、ケーブル接続部に対して、遮水層及びクッション層が常温収縮チューブの内側に配置されるように、被覆処理を行う。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、拡径保持部材の強度を低減しつつ、遮水層へのダメージを抑制できる被覆処理具、及び被覆処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】(a)は、内側の常温収縮チューブを被覆する被覆処理具の例を示す図である。(b)は、内側の常温収縮チューブを被覆する被覆処理具の例を示す断面図である。
【
図3】ケーブル接続部の例示的な絶縁筒の被覆処理具を示す断面図である。
【
図5】本実施形態に係る被覆処理具の例を示す断面図である。
【
図6】(a)は、被覆処理中の被覆処理具を示す断面図である。(b)は、被覆処理が完了した様子を示す断面図である。
【
図7】(a)は、クッション層を有する場合における遮水層の挙動を模式的に示す図である。(b)は、クッション層を有しない場合における遮水層の挙動を模式的に示す図である。
【
図8】(a)(b)は、被覆処理中の被覆処理具の折り返し部の様子を示す写真である。
【
図9】(a)(b)(c)は、遮水層に発生するシワの様子を示す模式図である。
【
図10】変形例に係る被覆処理具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る被覆処理具、及び被覆処理方法の実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0011】
まず、本開示に係る用語「ケーブル」は、CVTケーブル等の電力ケーブル、絶縁電線、及び、通信用ケーブルを含んでおり、「ケーブル」の種類は多岐にわたる。「ケーブル接続部」は、複数のケーブル同士を接続する接続部とその周辺、ケーブルとコネクタとを接続する接続部とその周辺、及び、ケーブルとコネクタ以外の機器とを接続する接続部とその周辺、を含んでいる。本開示に係る用語「内側」は、ケーブルを被覆する部材におけるケーブル側、すなわち、ケーブルの径方向の内側を示している。「外側」は、ケーブルを被覆する部材におけるケーブルの反対側、すなわち、ケーブルの径方向の外側を示している。
【0012】
まず、本実施形態に係る被覆処理具110を用いたケーブル接続構造1について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係るケーブル接続構造1は、一対のケーブル2と、一対のケーブル2を互いに接続するケーブル接続部10と、ケーブル2を覆う一対の内側の常温収縮チューブ20と、ケーブル接続部10及び内側の常温収縮チューブ20を被覆する一対の外側の常温収縮チューブ30とを備える。ケーブル2は、一例として、定格66kVの電力ケーブルである。しかしながら、ケーブル2は、6kV、22kV又は33kVなどの電力ケーブルであってもよい。ケーブル2は、例えば、導体2bと、導体2bを覆う絶縁層2cと、絶縁層2cを覆う外部半導電層2hと、外部半導電層2hを覆う遮へい銅テープ2fと、遮へい銅テープ2fを覆うケーブルシース2dとを備える。導体2bの断面積は、一例として、80(mm
2)以上且つ600(mm
2)以下であり、ケーブル接続部10の外径(直径)は90(mm)以上である。ケーブル接続部10の外径は、例えば、ケーブル2の外径よりも大きい。なお、導体2bの断面積は、電圧階級によって異なるが、例えば、66kVの場合、3500(mm
2)まで採用可能である。他の電圧階級の場合、導体2bの断面積として、さらに様々な値を採用可能である。
【0013】
また、ケーブル接続部10の外径の下限は、100(mm)、110(mm)、120(mm)又は130(mm)であってもよい。ケーブル接続部10の外径の上限は200(mm)、170(mm)又は150(mm)であってもよい。例えば、ケーブル接続部10の外径は135(mm)以上且つ145(mm)以下である。しかしながら、ケーブル接続部10の外径は、上記の各値に限られず特に限定されない。
【0014】
ケーブル接続部10は、ケーブル2の端部に設けられており、例えば、一対のケーブル2の端部同士を互いに接続する。一方のケーブル2、ケーブル接続部10、及び他方のケーブル2は、ケーブル接続構造1の長手方向Dに沿って並ぶように配置される。本実施形態に係るケーブル接続部材100は、例えば、ケーブル接続部10を構成する絶縁筒11と、ケーブル接続部10に隣接する部分を被覆する内側の常温収縮チューブ20と、ケーブル接続部10及び内側の常温収縮チューブ20を被覆する外側の常温収縮チューブ30とを備える。しかしながら、ケーブル接続部材100は、絶縁筒11、内側の常温収縮チューブ20及び外側の常温収縮チューブ30のうち1つ又は2つを備えるものであってもよい。
【0015】
図2(a)は、例示的な内側の常温収縮チューブ20を備える被覆処理具120の外観を示す斜視図である。
図2(b)は、内側の常温収縮チューブ20を被覆するための被覆処理具120の模式的な断面図である。
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、内側の常温収縮チューブ20は、内側層21と、内側層21を覆う外側層22とを備える。内側層21及び外側層22は、例えば、互いに分離可能とされている。
【0016】
内側の常温収縮チューブ20は、内側層21及び外側層22を拡径した状態で保持する拡径保持部材23を備えていてもよい。拡径保持部材23は、拡径保持部材23の軸線L1が延びる方向(以下では軸線方向と称することもある)にわたって形成された解体線23bを有する。拡径保持部材23は、例えば、円筒形の管状中空の部材である。解体線23bは、拡径保持部材23の軸線L1の周りを周回、又は、周回及び反転しながら、軸線方向に漸進していくように形成されている。
【0017】
拡径保持部材23の材料としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等の樹脂材料が用いられる。拡径保持部材23は、解体線23bに沿って紐状体であるコアリボン23cとして引き抜くことが可能となっている。解体線23bが形成された部分は、その周囲よりも薄くなっており、破断しやすい部分となっている。
【0018】
なお、解体線は、解体線23bのような螺旋状に形成される態様に限られず、例えば、SZ状に形成されていてもよく、引き抜き可能であれば如何なる形状とすることも可能である。コアリボン23cが引っ張られると、拡径保持部材23は、解体線23bに沿って順次破断し、新たなコアリボン23cとして連続的に引き抜かれる。解体線23bは、例えば、一定のピッチで形成されており、この場合、引き抜かれるコアリボン23cの幅は一定となる。但し、コアリボン23cの幅は一定でなくてもよい。
【0019】
解体線23bは、拡径保持部材23の内周面のみに形成されていてもよく、拡径保持部材23の外周面のみに形成されていてもよく、拡径保持部材23の内周面及び外周面の双方に形成されていてもよい。解体線23bを有する拡径保持部材23の製造は、例えば、解体線23bを螺旋状に旋回させると共に、隣接する解体線23b同士を接着、溶着、係合、又はこれらの組み合わせによって固定することにより行われてもよく、円筒状の部材に解体線23bを直接形成することによって行われてもよい。
【0020】
以上のように、引き抜き可能な管状中空の拡径保持部材としては、拡径保持部材23のようにコアリボン23cを引っ張ることによって内側の常温収縮チューブを順次収縮させる態様もあれば、拡径保持部材が内側の常温収縮チューブに対して摺動し内側の常温収縮チューブから引き抜かれることによって離脱する態様もある。拡径保持部材23は、コアリボン23cとして引き抜かれる始端側となる第1端部23dと、コアリボン23cとして引き抜かれる終端側となる第2端部23fとを有する。第1端部23dの付近には、内側の常温収縮チューブ20が装着されず拡径保持部材23の外周面が露出する露出部23gが形成され、第2端部23fの付近にも露出部23gが形成されている。
【0021】
第1端部23dから解体されたコアリボン23cは、拡径保持部材23の内側に通されると共に第2端部23f側から引き抜かれる。第2端部23f側でコアリボン23cが引き抜かれることにより、拡径保持部材23は、第1端部23dから第2端部23fに向かって順次解体されていく。本実施形態では、コアリボン23cが軸線方向の全長にわたって形成されているので、第1端部23dから第2端部23fに至るまで完全に拡径保持部材23を解体することが可能である。但し、拡径保持部材23のうち、少なくとも内側の常温収縮チューブ20を拡径して保持している部分に解体線23bが形成されていればよく、例えば第2端部23f側の所定の領域において、解体線23bが形成されていない部分があってもよい。
【0022】
例えば、内側の常温収縮チューブ20は、拡径保持部材23の外周側に、拡径されて保持された部材である。内側の常温収縮チューブ20は、ケーブル2のケーブル接続部10に隣接する部分を被覆する。例えば、内側層21の内周面、内側層21の外周面、外側層22の内周面、及び外側層22の外周面は、平滑面となっている。「平滑面」とは、尖った部分又は凹凸部分を有しない滑らかな面を示している。
【0023】
内側層21及び外側層22のそれぞれは、例えば、常温で収縮し伸縮特性に優れたゴムによって構成されている。内側層21及び外側層22のそれぞれは、例えば、防水性を有する材料によって構成されている。ここで、「防水性を有する」とは、内側の常温収縮チューブ20が収縮した状態において外部から内部への液体の浸入を防止可能な状態を示している。「防水性を有する」とは、例えば、JIS C 0920における「電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」に規定されているIPX7(水深1mの水に30分間沈めたときに内部への水の浸入がないこと)を示している。内側層21及び外側層22の材料は、例えば、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)である。なお、内側層21の材料と外側層22の材料とは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0024】
内側層21の厚さは、例えば、4.5(mm)以上且つ8.5(mm)以下である。また、内側層21の厚さの下限は5(mm)、5.5(mm)、6(mm)又は6.5(mm)であってもよい。内側層21の厚さの上限は8(mm)、7.5(mm)又は7(mm)であってもよい。なお、内側層21の厚さの数値、及び外側層22の厚さの数値は、上記の各例に限られず、特に限定されない。
【0025】
内側層21は、ケーブル2のケーブル接続部10に隣接する部分を被覆する。例えば、内側層21は、当該隣接する部分を締め付ける。これにより、ケーブル2のケーブル接続部10に隣接する部分における高い締め付け力を発揮できる。外側層22は、ケーブル接続部10の外径に内側の常温収縮チューブ20の外径を近づける。「外径を近づける」とは、内側の常温収縮チューブの外径をケーブル接続部の外径と同程度となるように、内側の常温収縮チューブの外径が設定されること、すなわち、ケーブル接続部の外径と同程度となるように内側の常温収縮チューブの外径の大小が設定されることを示している。
【0026】
図1の例では、外側層22は、内側の常温収縮チューブ20の外径をケーブル接続部10の外径に近づけるように内側の常温収縮チューブ20を太くしている。すなわち、単層の内側の常温収縮チューブと比較して、複数層の内側の常温収縮チューブ20の外側層22の部分が太くなっている。なお、単層の内側の常温収縮チューブは、例えば、外側層22を有しない内側層21のみの内側の常温収縮チューブに相当する。大径であるケーブル接続部10の外径に近づけるためだけの目的であれば、より厚い内側層21のみを有する内側の常温収縮チューブを用いればよい。しかしながら、ケーブル接続部10の外径は、常に大径であるとは限らず、適宜変更される。
【0027】
そこで、本実施形態のように、内側層21と外側層22の2層構造を有する内側の常温収縮チューブ20の場合には、ケーブル接続部10の外径に応じて外側層22を着脱できるので、外側層22の着脱によって内側の常温収縮チューブ20の外径をより確実にケーブル接続部10の外径に近づけることができる。「ケーブル接続部の外径に近づける」方法としては、
図1に例示されるように、外側層22を設けることによってケーブル接続部の外径に近づけてもよいし、外側層22を外すことによってケーブル接続部の外径に近づけてもよい。
図1の例では、外側層22によってケーブル接続部10の外径の大きさに内側の常温収縮チューブ20の外径を近づけることができるので、シュリンクバックの抑制に寄与する。
【0028】
図1に示すように、ケーブル接続部10は、例えば、絶縁筒11と、接続子12と、半導電性テープ13とを備える。絶縁筒11は、ケーブル2の長手方向Dに貫通する中空部11bを有する筒状体として構成されている。絶縁筒11は、例えば、中空部11bを有する絶縁筒本体11cと、遮蔽メッシュ11dと、遮水層14と、常温収縮チューブ15とを有する。絶縁筒本体11cは、例えば、ゴムの一体成形品である。
【0029】
例示的な絶縁筒本体11cは、絶縁性を有するゴム、一例として、エチレンプロピレンゴム又はシリコーンゴムを含んでいてもよい。例えば、絶縁筒本体11cは、絶縁性ゴム11c1と、導電性ゴム11c2とを含む。導電性ゴム11c2は、例えば、絶縁筒本体11cの長手方向Dの両端部のそれぞれ、及び絶縁筒本体11cの長手方向Dの中央、の3箇所に設けられる。遮蔽メッシュ11dは、絶縁筒本体11cの少なくとも一部を被覆している。遮水層14は、遮蔽メッシュ11dを被覆している。例えば、遮蔽メッシュ11dの少なくとも一部が外側の常温収縮チューブ30によって被覆されている。
【0030】
図3は、例示的な絶縁筒11を備える被覆処理具130を示す断面図である。例えば、絶縁筒11は、装着前(使用前)の状態において、拡径保持部材16の外周に拡径された状態で保持されている。拡径保持部材16は、前述した拡径保持部材23と同様、軸線L3が延びる方向にわたって形成された解体線16bを有し、解体線16bに沿って、紐状体であるコアリボン16cとして引き抜くことが可能となっている。
【0031】
拡径保持部材16は、コアリボン16cとして引き抜かれる始端側となる第1端部16dと、コアリボン16cとして引き抜かれる終端側となる第2端部16fとを有する。第1端部16dの付近には、絶縁筒11が装着されず拡径保持部材16の外面が露出する露出部16gが形成され、第2端部16fの付近にも露出部16gが形成されている。このように、拡径保持部材16の形状及び材料は、拡径保持部材23の形状及び材料と同一とすることが可能である。
【0032】
遮水層14は、常温収縮チューブ15の内側に設けられる。常温収縮チューブ15の材料は、例えば、EPDMである。遮水層14は、例えば、金属と樹脂の積層体によって構成されている。遮水層14は、常温収縮チューブ15の外側から内側(絶縁筒11側)への浸水を防ぐ機能を有する。浸水した場合には、例えば絶縁層2cにて水トリー(Water Tree)と呼ばれる現象を引き起こす等の弊害が生じうる。遮水層14は、そのような弊害の発生を抑制する。遮水層14の材料・機能等については、後述の遮水層34と同趣旨である。
【0033】
例えば、絶縁筒11は、遮水層14の内側(一例として、遮蔽メッシュ11dと遮水層14の間)に設けられるクッション層17と、クッション層17の長手方向Dの両端のそれぞれに設けられるパテ材18とを備える。例示的なクッション層17は、常温収縮チューブ15を収縮したときに生じうる遮水層14の折れ曲がりを緩和する(例えば、折れ曲がりの角度を急角度にしすぎない、又は折れ曲がりの曲率を大きくしすぎない)ために設けられる。パテ材18は、一例として、ブチル製である。クッション層17の材料・機能等については、後述のクッション層36と同趣旨である。
【0034】
図4は、
図3の絶縁筒11を示す斜視図である。
図4に示されるように、絶縁筒11は、遮水層14の外側に取り付けられた常温収縮チューブ15から長手方向Dの両側に延び出していた遮蔽メッシュ11dが長手方向Dの中央側に折り返されて形成されている。長手方向Dの中央側に折り返された遮蔽メッシュ11dのそれぞれがテープTの巻き付けによって固定されている。テープTとしては、遮蔽メッシュ11dを固定可能であって且つ剥がすことが可能なものであれば、種々のテープを用いることができる。
【0035】
図5は、例示的な常温収縮チューブ30を備える被覆処理具110を示す断面図である。
図6は、被覆処理具110を用いた被覆処理方法を示す概略断面図である。
図6(a)は、被覆処理具110によって被覆対象物200を被覆処理する途中の様子を示す。
図6(b)は、被覆処理具110による被覆が完了した様子を示す。なお、
図6では、被覆処理具110による被覆態様の理解を容易とするため、シンプルな円柱状の被覆対象物200を示している。
【0036】
図5に示すように、被覆処理具110は、常温収縮チューブ30、拡径保持部材33と、遮水層34と、クッション層36と、パテ材37(防水材)と、を備える。
【0037】
常温収縮チューブ30は、ケーブル接続部10及び内側の常温収縮チューブ20を被覆する(
図1参照)。常温収縮チューブ30の径(外径及び内径)は、内側の常温収縮チューブ20の径よりも大きい。例えば、常温収縮チューブ30の軸線方向(長手方向)の長さは、内側の常温収縮チューブ20の軸線方向の長さよりも長い。
【0038】
例えば、常温収縮チューブ30は、ケーブル接続部10の少なくとも一部、及び内側の常温収縮チューブ20の少なくとも一部、を被覆する。常温収縮チューブ30は、ケーブル接続部10及び内側の常温収縮チューブ20の境界部分Bを含む領域を被覆する。常温収縮チューブ30は、例えば、内側の常温収縮チューブ20と同様、防水性を有する材料によって構成されている。常温収縮チューブ30の材料は、例えば、EPDMである。常温収縮チューブ30の被覆対象物に被覆した状態における厚さは特に限定されないが、例えば、1mm以上且つ15mm以下であってよく、2mm以上且つ10mm以下であってよい。なお、ここでの当該厚さは、被覆処理具120のような多層構造のチューブであっても、1層について着目した値である。
【0039】
例えば、常温収縮チューブ30は、被覆処理具110の状態において、拡径保持部材33の外周に拡径された状態で保持される。拡径保持部材33は、前述した拡径保持部材23と同様、軸線L2が延びる方向にわたって形成された解体線33bを有し、解体線33bに沿って、紐状体であるコアリボン33cとして引き抜くことが可能となっている。拡径保持部材33は、前述した拡径保持部材23と同様、コアリボン33cとして引き抜かれる始端側となる第1端部33dと、コアリボン33cとして引き抜かれる終端側となる第2端部33fとを有する。第1端部33dの付近には、常温収縮チューブ30が装着されず拡径保持部材33の外面が露出する露出部33gが形成され、第2端部33fの付近にも露出部33gが形成されている。このように、拡径保持部材33の形状及び材料は、例えば、拡径保持部材23の形状及び材料と同一とすることが可能である。
【0040】
被覆処理具110の状態では、遮水層34は、常温収縮チューブ30の外側に設けられる。常温収縮チューブ30の材料は、例えば、EPDMである。遮水層34は、例えば、金属と樹脂の積層体によって構成されている。遮水層34は、例えば、金属としてアルミニウムを含んでいる。しかしながら、遮水層34を構成する金属は、ニッケル、鉛又は銅を含んでいてもよく、特に限定されない。遮水層34が樹脂層を含む場合、遮水層34を構成する金属の腐食がより確実に抑制される。
【0041】
被覆処理後において、遮水層34は、常温収縮チューブ30の内側に設けられ、常温収縮チューブ30の外側から内側(被覆対象物200側)への浸水を防ぐ機能を有する(
図6(b)参照)。遮水層34は、例えば、樹脂フィルムと金属箔との積層体(金属ラミネートフィルムとも呼ぶ)によって構成されている。一例として、遮水層34は、アルミニウムを含んでおり、アルミラミネートフィルムによって構成されていてもよい。遮水層34は、金属層と、金属層の主面に樹脂がラミネートされて構成されていてもよい。遮水層34において、金属層の両面に樹脂がラミネートされていてもよいし、金属層の片面に樹脂がラミネートされていてもよい。但し、遮水層34の金属層の両面に樹脂がラミネートされている場合、遮水層34の取扱性を良好にすることができる。
【0042】
被覆処理具110の状態では、クッション層36は、常温収縮チューブ30の外側に設けられ、遮水層34に接着される。本実施形態では、被覆処理具110の状態において、クッション層36は、常温収縮チューブ30と遮水層34との間に配置される。被覆処理後において、クッション層36は、常温収縮チューブ30を収縮したときに生じうる遮水層34の折れ曲がりを緩和するために設けられる(
図7(a)参照)。常温収縮チューブ30を収縮したときに生じうる遮水層34の折れ曲がりを緩和することとは、例えば、折れ曲がりの角度を急角度にしすぎない、又は折れ曲がりの曲率を大きくしすぎないことである。
【0043】
クッション層36は、力がかかった場合に応力を持ちつつ変形するクッション性を有している。変形は例えば圧縮である。これにより、例えば、収縮による皺の折れ曲がりを部分的な変形によって緩和することができる。例えば、クッション層36はパテ材によって構成されていてもよく、一例として、クッション層36はブチル製である。また、クッション層36は、発泡性材料によって構成されている発泡テープでもよい。また、クッション層36は、強接着発泡テープであってもよい。一例として、クッション層36は、アクリルフォームテープである。クッション層36の発泡テープは、単層の粘着性を有する発泡基材によって構成されていてもよく、発泡基材の主面(例えば両面)に粘着剤層が設けられたものであってもよい。クッション層36の粘着剤層は、例えば、アクリル系粘着剤の他、シリコーン系粘着剤であってもよい。
【0044】
また、クッション層36は、発泡テープ等、流動性が高すぎない(屈曲等によりせん断力等がかかったときにも容易に流動していかず、位置関係を保持できる)材料によって構成されていることがより好ましい。この場合、遮水層34の折れ曲がりに対してクッション層36が流動しないことにより、その位置関係でクッション性を発揮させることができ、遮水層34の折れ曲がりをより確実に緩和できる。
【0045】
クッション層36の厚さは、例えば、1mm以上且つ5mm以下である。クッション層36の厚さは、1.1mm以上、又は1.2mm以上であってもよい。クッション層36の厚さは、4mm以下、又は3mm以下であってもよい。クッション層36の厚さが所定値以上であることにより、遮水層34の折れ曲がりを緩和することができる。クッション層36の厚さが所定値以下であることにより、作業性を良好にしたり、コストを抑制したりすることが可能となる。
【0046】
クッション層36の25%圧縮応力は、例えば、30N/cm2以下である。クッション層36の25%圧縮応力は、20N/cm2以下、又は15N/cm2以下であってもよい。これにより、力がかかった場合に応力を持ちつつ変形するクッション性を発揮し、遮水層34の折れ曲がりを緩和することができる。ここで、クッション層36の25%圧縮応力は、1.2mm厚のアクリルフォームからなるクッション層36、及び1.5mm厚のパテ材からなるクッション層36を用意し、それぞれのクッション層36を25mm×25mmの大きさとし、25%圧縮したときの荷重から測定した。
【0047】
クッション層36の基材のせん断強度は、例えば、150N/cm2以上である。せん断強度は、200N/cm2以上、又は300N/cm2以上であってもよい。せん断強度が所定値以上であることにより、遮水層34の折れ曲がりに対してクッション層36の流動を抑制しクッション層36を保持できる点で好ましい。ここで、クッション層のせん断強度とは、以下の方法のせん断力の測定を実施した場合の数値を指す。25mm×50mm(122μm厚)のアルミラミネートフィルム(遮水層34)の両面に25mm×50mm(1.5mm厚)のクッション層36(パテ材)を貼り付けたものをステンレス板で挟み込み、その上から重さ2kgのスチールローラを1往復して圧着したものを室温で24時間養生した後に、30mm/分の引張速度でステンレス板を引っ張ったときの、基材が伸びる際の最大応力(伸びが数%付近の時点)の力をせん断強度として測定した。
【0048】
また、クッション層36の圧縮永久ひずみは、例えば、80%以下である。クッション層36の圧縮永久ひずみは、70%以下、又は60%以下であってもよい。圧縮永久ひずみが所定値以下であることにより、遮水層34の折れ曲がりに対してクッション層36の流動を抑制しクッション層36を保持できる点で好ましい。ここで、クッション層36の圧縮永久ひずみとは、直径29mmのクッション層36(1.2mm厚のアクリルフォームからなるクッション層36、及び1.5mm厚のパテ材からなるクッション層36のそれぞれ)を25%圧縮した状態で室温で24時間放置し、圧縮前後の厚みを測定し、以下の式(1)から圧縮永久ひずみを算出した。
【数1】
式(1)において、CSは圧縮永久ひずみ(%)、h
0は試験片の圧縮前の厚さ(mm)、h
1は圧縮装置から取り出した後の試験片の厚さ(mm)、h
sはスペーサの厚さ(mm)を示している。
【0049】
クッション層36は、遮水層34の全面に接着されてよい。本開示において、「接着」は、物品自体が接着剤である場合の接着(例えばパテ)、物品自体が粘着剤を有している場合の接着(例えばテープ)、又は、物品に別途接着剤が塗布される場合の接着であり、「接着」には、溶着等、接着剤を用いない態様のものも含まれる。本開示において、「遮水層の全面」は、まず、遮水層として機能する領域(例えば製造上の理由によって端部等に発生する余剰領域がある場合は除いた領域)の全面であればよい。また「全面に接着」とは100%だけでなく、遮水層の略全面、及び遮水層の実質全面を含んでいる。例えば、小さなドット状に接着されていない部分がまばらにある程度の状態も「全面に接着」に含まれる。逆に、大きなドット状やストライプ状に接着されてない部分があり遮水層の折れ曲がり等による応力集中が発生する場合は「全面に接着」に含まれない。また例えば遮水層として機能する領域の95%以上の面積が接着している状態も「全面に接着」であってよい。
【0050】
図7(a)は、遮水層34の全面にクッション層36が接着されている場合における遮水層34の折れ曲がりの状態を模式的に示す図である。
図7(b)は、クッション層36が接着されていない遮水層134における遮水層134の折れ曲がりの状態を模式的に示す図である。
図7(b)に示されるように、クッション層36が接着されていない遮水層134の場合、遮水層134の外側に位置する常温収縮チューブの収縮時に遮水層134が折れ曲がり、遮水層134の折れ曲がった部分において遮水層134に穴があくことが懸念される。
図7(a)に示されるように、遮水層34の全面にクッション層36が接着されている場合には、遮水層34の外側に位置する常温収縮チューブ30の収縮時における遮水層34の折れ曲がりが緩和される。すなわち、遮水層34の全面にクッション層36が接着されていることにより、遮水層34の折れ曲がり角度が緩やかになる。従って、クッション層36が遮水層34の全面に接着される場合、遮水層34の折れ曲がりを緩和することができるので、遮水層34に穴があくことを抑制できる。
【0051】
被覆処理具110の状態において、パテ材37は、常温収縮チューブ30の外側における少なくとも両端側に設けられる流動性を有するパテ状の防水材である。パテ材37は、クッション層36の長手方向Dの両端のそれぞれに設けられる。パテ材37は、長手方向Dの両端において、遮水層34の端部を覆うように配置される。クッション層36は、両端側のパテ材37に長手方向Dにおいて挟まれるように配置される。パテ材37として、例えばシリコーンゴムコンパウンド又はブチルゴムコンパウンド等を用いることができる。なお、被覆処理具110の状態において、パテ材37は、離型紙などによって覆われていてよい。被覆処理後において、パテ材37は、常温収縮チューブ30の内側に設けられ、被覆対象物200の外表面と接触する(
図6(b)参照)。これにより、パテ材37は、常温収縮チューブ30の両端側からの浸水を防止する。
【0052】
次に、
図6を参照して、被覆処理具110を用いて被覆対象物200(
図1においてはケーブル接続部)の被覆処理を行う被覆処理方法について説明する。説明のため、長手方向Dにおける一方側を「前側D1」とし、他方側を「後側D2」とする。コアリボン33cを引き抜く方が後側D2である。常温収縮チューブ30の前側D1の端部を端部30aとし、後側の端部を端部30bとする(
図5も参照)。また、被覆対象物200の被覆領域のうち、後側D2の端部を位置P1とし、前側D1の端部を位置P2とする。
【0053】
まず、作業者は、被覆処理具110を被覆対象物200に対してセットする。このとき、拡径保持部材33の内周側に被覆対象物200を挿入させることで、被覆対象物200を被覆処理具110で覆うようにセットする。また、作業者は、拡径保持部材33の解体前における端部30a(
図5参照)を、被覆対象物200の位置P1に合わせる。
【0054】
当該状態にて、作業者がコアリボン33cを引き抜くと、拡径保持部材33の前側D1の端部が解体される。これにより、常温収縮チューブ30の端部30aが収縮することで、被覆対象物200の位置P1を覆う。そして、作業者は、拡径保持部材33全体を前側D1へ移動させながら、コアリボン33cを引き抜く。これにより、常温収縮チューブ30は、端部30a側から順次収縮するとともに、被覆対象物200を後側D2から前側D1へ向かって順次被覆する。このとき、常温収縮チューブ30は、解体中の拡径保持部材33の前側の端部の箇所にて、裏返される(図中、「裏返し部A」参照)。なお、折り返し部Aでの折り返し動作が不十分である場合、作業者はコアリボン33cを引き抜く作業を中断して、拡径保持部材33を前側D1へ移動させる動作のみを行う。また、パテ材37の箇所を収縮させる直前では、作業者はパテ材37の離型紙を剥がす。
【0055】
このように、常温収縮チューブ30が裏返された状態で被覆されるため、被覆処理具110における層構成の順序は、被覆対象物200を被覆した状態では逆になる。すなわち、外周側から順に、常温収縮チューブ30、クッション層36、及び遮水層34の順で積層される。また、長手方向Dの端部では、常温収縮チューブ30の内側にパテ材37が設けられる。
【0056】
作業者が上述のような拡径保持部材33の移動とコアリボン33cの引き抜きを繰り返すと、全てのコアリボン33cが解体される。このとき、
図6(b)に示すように、常温収縮チューブ30の端部30bが被覆対象物200の位置P2に至る。これにより、被覆処理具110による被覆処理が完了する。
【0057】
次に、本実施形態に係る被覆処理具110、及び被覆処理方法の作用・効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係る被覆処理具110は、常温収縮チューブ30と、常温収縮チューブ30を拡径した状態で保持する拡径保持部材33と、常温収縮チューブ30の外側に設けられる遮水層34と、常温収縮チューブ30の外側に設けられ、遮水層34に接着されるクッション層36と、を備える。
【0059】
このような被覆処理具110は、遮水層34を有している。遮水層34は、シート部材の両側縁がオーバーラップするように円筒状に形成され、オーバーラップ部分を融着又は接着することで構成される場合がある。ここで、被覆処理具では、遮水層34は、常温収縮チューブ30の外側に設けられる。そのため、オーバーラップ部分を有する遮水層34が常温収縮チューブ30で拡径保持部材33に押し付けられ、周方向に不均一な圧力が付与されることが回避される。従って、拡径保持部材33は、不均一な圧力に耐える必要がないため、強度を低減することができる。
【0060】
被覆処理具110の状態で遮水層34を常温収縮チューブ30の外側に設けた場合、常温収縮チューブ30を裏返して被覆対象物200に被覆する必要がある。このとき、裏返し部A(
図6(a))においては、常温収縮チューブ30の径が変化するため、遮水層34にシワが生じる。しかし、裏返し部Aでは、常温収縮チューブ30が遮水層34の平面方向に対して伸びることで、一時的に遮水層34から剥離する。そのため、遮水層34に横方向(周方向)に延びるシワが生じることを抑制し、縦方向(径方向)に延びるシワの発生にとどめることができる。例えば、
図9(a)に示すように、横方向のシワと縦方向のシワが生じると、両者の交差部で穴Xが形成されてしまう。これに対し
図9(b)(c)に示すように、縦方向のシワの発生にとどめることで、穴Xの発生を抑制できる。更には、被覆処理具110は、常温収縮チューブ30の外側に設けられ、遮水層34に接着されるクッション層36を備える。そのため、
図7(a)に示すように、クッション層36で支持することで、遮水層34に生じるシワの折れ曲がりを緩和できる。以上により、拡径保持部材33の強度を低減しつつ、遮水層34へのダメージを抑制できる。
【0061】
図8(a)に示すように、被覆処理具110を用いて実際の被覆作業を行った。被覆対象物200の径が小さい箇所に被覆する場合に、生じるシワの大半が縦方向のシワであった。また、
図8(b)に示すように、被覆対象物200の径が大きい箇所に被覆する場合に、生じるシワの大半が縦方向のシワであった。
【0062】
被覆処理具110は、常温収縮チューブ30の外側における少なくとも両端側に設けられるパテ状のパテ材37(防水材)を更に備える。この場合、被覆処理後の常温収縮チューブ30の両端側の防水性を高めることができる。また、パテ材37が外周側に設けられることで、拡径保持部材33との離型性を考慮する必要がなくなり、パテ材37の粘着性を考慮する必要がなくなる。例えば、パテ材37が内周側に設けられていると、拡径保持部材33と常温収縮チューブ30の間にパテ材37が位置することになり、拡径保持部材33を解体・引き抜きができない、または拡径保持部材33の解体・引き抜きとともにパテ材37が外に出てしまう、などの不具合が生じうる。更に、
図6(a)に示される通り、拡径保持部材33は被覆対象物200の外表面に直接接触することがない。そのため、被覆対象物200の外表面にパテ材やグリス等の粘着性や流動性を有する材料の層が形成されている場合であっても、かかる層が、拡径保持部材33の解体・引き抜きによって変形、移動してしまうような不具合を生じることなく被覆処理を行うことができる。
【0063】
遮水層14が金属と樹脂の積層体によって構成されてもよい。この場合、遮水層14の金属が樹脂によって保護されるので、遮水層14の取り扱い性を良好にすることができる。
【0064】
クッション層17が発泡テープによって構成されてもよい。この場合、クッション層17の流動性が低く形状維持性が高い発泡テープがクッション層17として用いられる。従って、遮水層14の折れ曲がりに対するクッション層17の形状変化を抑制できるので、遮水層14に穴があくことをより確実に抑制することができる。
【0065】
本実施形態に係る被覆処理方法は、被覆処理具110を用いて被覆対象物200の被覆処理を行う被覆処理方法であって、被覆処理具110は、常温収縮チューブ30と、常温収縮チューブ30を拡径した状態で保持する拡径保持部材33と、常温収縮チューブ30の外側に設けられる遮水層34と、常温収縮チューブ30の外側に設けられ、遮水層34に接着されるクッション層36と、を備え、被覆対象物200に対して、遮水層34及びクッション層36が常温収縮チューブ20の内側に配置されるように、被覆処理を行う。
【0066】
この被覆処理方法によれば、上述の被覆処理具110と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0067】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0068】
上述の
図1に示すケーブル接続構造1を構成するために、一つの被覆処理具130と、二つの被覆処理具120と、二つの被覆処理具110と、を用いていた。ただし、被覆処理具130では、予め常温収縮チューブ15、遮水層14、クッション層17、及びパテ材18が絶縁筒11に含まれていたが、これらの部材を絶縁筒11から略してもよい。この場合は、絶縁筒11を覆うための被覆処理具110を用いてよい。この前、ケーブル接続構造1を構成するために、一つの被覆処理具130と、二つの被覆処理具120と、三つの被覆処理具110と、を用いればよい。
【0069】
例えば、
図10に示すような被覆処理具140を採用してもよい。この被覆処理具140は、
図3に示す被覆処理具130の遮蔽メッシュ11dの外側に、二つの被覆処理具110A,110Bを備えている。一つ目の被覆処理具110Aは、遮蔽メッシュ11dを途中まで被覆した状態で配置されている。二つ目の被覆処理具110Bは、遮蔽メッシュ11dと被覆処理具110Aの常温収縮チューブ30の一部を途中まで被覆した状態で配置されている。
【0070】
[形態1]
常温収縮チューブと、
前記常温収縮チューブを拡径した状態で保持する拡径保持部材と、
前記常温収縮チューブの外側に設けられる遮水層と、
前記常温収縮チューブの外側に設けられ、前記遮水層に接着されるクッション層と、
を備える被覆処理具。
[形態2]
前記常温収縮チューブの外側における少なくとも両端側に設けられるパテ状の防水材を更に備える、形態1に記載の被覆処理具。
[形態3]
前記遮水層が金属と樹脂の積層体によって構成される、形態1又は2に記載の被覆処理具。
[形態4]
前記クッション層が発泡テープによって構成される、形態1~3の何れか一項に記載の被覆処理具。
[形態5]
被覆処理具を用いて被覆対象物の被覆処理を行う被覆処理方法であって、
前記被覆処理具は、
常温収縮チューブと、
前記常温収縮チューブを拡径した状態で保持する拡径保持部材と、
前記常温収縮チューブの外側に設けられる遮水層と、
前記常温収縮チューブの外側に設けられ、前記遮水層に接着されるクッション層と、を備え、
前記被覆対象物に対して、前記遮水層及び前記クッション層が前記常温収縮チューブの内側に配置されるように、被覆処理を行う、被覆処理方法。
【符号の説明】
【0071】
30…常温収縮チューブ、33…拡径保持部材、34…遮水層、36…クッション層、37…パテ材(防水材)、110,140…被覆処理具。