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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054899
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240411BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240411BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 655B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161345
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 直
(72)【発明者】
【氏名】丸山 祥輝
(57)【要約】
【課題】半導体装置の性能を向上させ、歩留まりの低下を抑制する。
【解決手段】レジストパターンRP2をマスクとして、半導体基板SUBの上面側からイオン注入を行うことで、半導体基板SUB中に、イオン注入層PF1を形成する。続けてイオン注入を行うことで、半導体基板SUB中に、イオン注入層PF2を形成する。次に、半導体基板SUBに対して熱処理を行うことで、イオン注入層PF1およびイオン注入層PF2に含まれる不純物を拡散させて、p型のフローティング領域(PF)を形成する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(b)前記(a)工程後、前記半導体基板の前記上面上に、第1レジストパターンを形成する工程、
(c)前記(b)工程後、前記第1レジストパターンをマスクとして、前記半導体基板の前記上面側から第1イオン注入を行うことで、前記半導体基板中に、第1イオン注入層および第2イオン注入層を形成する工程、
(d)前記(c)工程後、前記第1レジストパターンをマスクとして、前記半導体基板の前記上面側から第2イオン注入を行うことで、平面視で前記第1イオン注入層と重なる位置の前記半導体基板中に第3イオン注入層を形成すると共に、平面視で前記第2イオン注入層と重なる位置の前記半導体基板中に第4イオン注入層を形成する工程、
(e)前記(d)工程後、前記第1レジストパターンを除去する工程、
(f)前記(e)工程後、前記半導体基板に対して第1熱処理を行うことで、前記第1イオン注入層および前記第3イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1不純物領域を形成すると共に、前記第2イオン注入層および前記第4イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第2導電型の第2不純物領域を形成する工程、
(g)前記(f)工程後、前記半導体基板の前記上面側において、前記半導体基板に、第1トレンチおよび第2トレンチを形成する工程、
(h)前記(g)工程後、前記第1トレンチの内部に第1ゲート絶縁膜を形成すると共に、前記第2トレンチの内部に第2ゲート絶縁膜を形成する工程、
(i)前記(h)工程後、前記第1ゲート絶縁膜を介して前記第1トレンチの内部を埋め込むように、前記第1トレンチの内部に第1ゲート電極を形成すると共に、前記第2ゲート絶縁膜を介して前記第2トレンチの内部を埋め込むように、前記第2トレンチの内部に第2ゲート電極を形成する工程、
を備え、
前記第1イオン注入のエネルギーおよび前記第2イオン注入のエネルギーは、互いに異なり、
前記第1トレンチは、第1側面、前記第1側面に対向する第2側面、および、前記第1側面と前記第2側面とを繋ぐ第1底面を有し、
前記第2トレンチは、第3側面、前記第3側面に対向する第4側面、および、前記第3側面と前記第4側面とを繋ぐ第2底面を有し、
前記第1トレンチおよび前記第2トレンチは、前記第2側面と前記第3側面とが隣接するように、離間して設けられ、
前記第1不純物領域は、前記第1側面側の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第2側面を越えるように前記第1底面を覆い、
前記第2不純物領域は、前記第4側面側の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第3側面を越えるように前記第2底面を覆い、
前記第1不純物領域および前記第2不純物領域は、互いに離間している、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1イオン注入のエネルギーは、前記第2イオン注入のエネルギーよりも大きい、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(g)工程では、前記第1底面および前記第2底面の各々の位置が、前記第1イオン注入層および前記第2イオン注入層の各々の不純物濃度ピークの位置よりも浅くなるように、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチを形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(h)工程では、熱酸化法によって酸化シリコン膜を形成し、
前記第1ゲート絶縁膜および前記第2ゲート絶縁膜は、前記酸化シリコン膜を含み、
前記第1熱処理は、前記熱酸化法で行われる熱処理よりも、低い温度および短い時間で行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1熱処理は、700℃以上且つ900℃以下であり、30秒以上且つ150秒以下である条件下で行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程後と前記(b)工程との間、または、前記(e)工程と前記(f)工程との間に、
(j1)前記半導体基板の前記上面上に、第2レジストパターンを形成する工程、
(j2)前記(j1)工程後、前記第2レジストパターンをマスクとして、前記半導体基板の前記上面側から第3イオン注入を行うことで、前記半導体基板中に、第5イオン注入層を形成する工程、
(j3)前記(j2)工程後、前記第2レジストパターンをマスクとして、前記半導体基板の前記上面側から第4イオン注入を行うことで、平面視で前記第5イオン注入層と重なる位置の前記半導体基板中に、第6イオン注入層を形成する工程、
(j4)前記(j3)工程後、前記第2レジストパターンを除去する工程、
を更に備え、
前記第3イオン注入のエネルギーおよび前記第4イオン注入のエネルギーは、互いに異なり、
前記(f)工程では、前記第1熱処理を行うことで、前記第5イオン注入層および前記第6イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第1導電型の第3不純物領域を形成し、
前記第3不純物領域は、前記第2側面と前記第3側面との間の前記半導体基板中に形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3イオン注入のエネルギーは、前記第4イオン注入のエネルギーよりも大きい、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
(k)前記(i)工程後、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチの各々の深さよりも浅くなるように、前記半導体基板の前記上面側において、前記第3不純物領域内に、前記第2導電型のベース領域を形成する工程、
(l)前記(k)工程後、前記ベース領域内に、前記第1導電型のエミッタ領域を形成する工程、
(m)前記(l)工程後、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチを覆うように、前記半導体基板の前記上面上に、層間絶縁膜を形成する工程、
(n)前記(m)工程後、前記層間絶縁膜上に、ゲート配線およびエミッタ電極を形成する工程、
(o)前記(n)工程後、前記半導体基板の前記下面側において、前記半導体基板内に、前記第2導電型のコレクタ領域を形成する工程、
(p)前記(o)工程後、前記半導体基板の前記下面下に、コレクタ電極を形成する工程、
を更に備え、
前記エミッタ領域および前記ベース領域は、前記エミッタ電極に電気的に接続され、
前記第1ゲート電極および前記第2ゲート電極は、前記ゲート配線に電気的に接続され、
前記コレクタ領域は、前記コレクタ電極に電気的に接続される、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程では、前記第1イオン注入を行うことで、前記半導体基板中に、第7イオン注入層を形成し、
前記(d)工程では、前記第2イオン注入を行うことで、平面視で前記第7イオン注入層と重なる位置の前記半導体基板中に、第8イオン注入層を形成し、
前記(f)工程では、前記第1熱処理を行うことで、前記第7イオン注入層および前記第8イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第2導電型の第4不純物領域を形成し、
前記(g)工程では、前記半導体基板の前記上面側において、前記半導体基板に、第3トレンチおよび第4トレンチを形成し、
前記(h)工程では、前記第3トレンチの内部に第3ゲート絶縁膜を形成すると共に、前記第4トレンチの内部に第4ゲート絶縁膜を形成し、
前記(i)工程では、前記第3ゲート絶縁膜を介して前記第3トレンチの内部を埋め込むように、前記第3トレンチの内部に第3ゲート電極を形成すると共に、前記第4ゲート絶縁膜を介して前記第4トレンチの内部を埋め込むように、前記第4トレンチの内部に第4ゲート電極を形成し、
前記第3トレンチは、第5側面、前記第5側面に対向する第6側面、および、前記第5側面と前記第6側面とを繋ぐ第3底面を有し、
前記第4トレンチは、第7側面、前記第7側面に対向する第8側面、および、前記第7側面と前記第8側面とを繋ぐ第4底面を有し、
前記第3トレンチおよび前記第4トレンチは、前記第6側面と前記第7側面とが隣接するように、離間して設けられ、
前記第2不純物領域は、前記第4側面と前記第5側面との間の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第6側面を越えるように前記第3底面を覆い、
前記第4不純物領域は、前記第8側面側の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第7側面を越えるように前記第4底面を覆い、
前記層間絶縁膜は、前記第3トレンチおよび前記第4トレンチも覆うように、前記半導体基板の前記上面上に形成され、
前記第3ゲート電極および前記第4ゲート電極は、前記エミッタ電極に電気的に接続される、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2不純物領域および前記第4不純物領域は、接触している、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(b)前記(a)工程後、前記半導体基板の前記上面側から第1イオン注入を行うことで、前記半導体基板中に、第1イオン注入層および第2イオン注入層を形成する工程、
(c)前記(b)工程後、前記半導体基板に対して第1熱処理を行うことで、前記第1イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1不純物領域を形成すると共に、前記第2イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第2導電型の第2不純物領域を形成する工程、
(d)前記(c)工程後、前記半導体基板の前記上面側において、前記半導体基板に、第1トレンチおよび第2トレンチを形成する工程、
(e)前記(d)工程後、前記第1トレンチの内部に第1ゲート絶縁膜を形成し、前記第2トレンチの内部に第2ゲート絶縁膜を形成する工程、
(f)前記(e)工程後、前記第1ゲート絶縁膜を介して前記第1トレンチの内部を埋め込むように、前記第1トレンチの内部に第1ゲート電極を形成すると共に、前記第2ゲート絶縁膜を介して前記第2トレンチの内部を埋め込むように、前記第2トレンチの内部に第2ゲート電極を形成する工程、
を備え、
前記第1トレンチは、第1側面、前記第1側面に対向する第2側面、および、前記第1側面と前記第2側面とを繋ぐ第1底面を有し、
前記第2トレンチは、第3側面、前記第3側面に対向する第4側面、および、前記第3側面と前記第4側面とを繋ぐ第2底面を有し、
前記第1トレンチおよび前記第2トレンチは、前記第2側面と前記第3側面とが隣接するように、離間して設けられ、
前記第1不純物領域は、前記第1側面側の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第2側面を越えるように前記第1底面を覆い、
前記第2不純物領域は、前記第4側面側の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第3側面を越えるように前記第2底面を覆い、
前記第1不純物領域および前記第2不純物領域は、互いに離間している、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程では、前記第1底面および前記第2底面の各々の位置が、前記第1イオン注入層および前記第2イオン注入層の各々の不純物濃度ピークの位置よりも浅くなるように、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチを形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程では、熱酸化法によって酸化シリコン膜を形成し、
前記第1ゲート絶縁膜および前記第2ゲート絶縁膜は、前記酸化シリコン膜を含み、
前記第1熱処理は、前記熱酸化法で行われる熱処理よりも、低い温度および短い時間で行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1熱処理は、700℃以上且つ900℃以下であり、30秒以上且つ150秒以下である条件下で行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程後と前記(b)工程との間、または、前記(b)工程と前記(c)工程との間に、
(g1)前記半導体基板の前記上面上に、第2レジストパターンを形成する工程、
(g2)前記(g1)工程後、前記第2レジストパターンをマスクとして、前記半導体基板の前記上面側から第3イオン注入を行うことで、前記半導体基板中に、第5イオン注入層を形成する工程、
(g3)前記(g2)工程後、前記第2レジストパターンをマスクとして、前記半導体基板の前記上面側から第4イオン注入を行うことで、平面視で前記第5イオン注入層と重なる位置の前記半導体基板中に、第6イオン注入層を形成する工程、
(g4)前記(g3)工程後、前記第2レジストパターンを除去する工程、
を更に備え、
前記第3イオン注入のエネルギーおよび前記第4イオン注入のエネルギーは、互いに異なり、
前記(c)工程では、前記第1熱処理を行うことで、前記第5イオン注入層および前記第6イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第1導電型の第3不純物領域を形成し、
前記第3不純物領域は、前記第2側面と前記第3側面との間の前記半導体基板中に形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3イオン注入のエネルギーは、前記第4イオン注入のエネルギーよりも大きい、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の半導体装置の製造方法において、
(h)前記(f)工程後、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチの各々の深さよりも浅くなるように、前記半導体基板の前記上面側において、前記第3不純物領域内に、前記第2導電型のベース領域を形成する工程、
(i)前記(h)工程後、前記ベース領域内に、前記第1導電型のエミッタ領域を形成する工程、
(j)前記(i)工程後、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチを覆うように、前記半導体基板の前記上面上に、層間絶縁膜を形成する工程、
(k)前記(j)工程後、前記層間絶縁膜上に、ゲート配線およびエミッタ電極を形成する工程、
(l)前記(k)工程後、前記半導体基板の前記下面側において、前記半導体基板内に、前記第2導電型のコレクタ領域を形成する工程、
(m)前記(l)工程後、前記半導体基板の前記下面下に、コレクタ電極を形成する工程、
を更に備え、
前記エミッタ領域および前記ベース領域は、前記エミッタ電極に電気的に接続され、
前記第1ゲート電極および前記第2ゲート電極は、前記ゲート配線に電気的に接続され、
前記コレクタ領域は、前記コレクタ電極に電気的に接続される、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程では、前記第1イオン注入を行うことで、前記半導体基板中に、第7イオン注入層を形成し、
前記(c)工程では、前記第1熱処理を行うことで、前記第7イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第2導電型の第4不純物領域を形成し、
前記(d)工程では、前記半導体基板の前記上面側において、前記半導体基板に、第3トレンチおよび第4トレンチを形成し、
前記(e)工程では、前記第3トレンチの内部に第3ゲート絶縁膜を形成すると共に、前記第4トレンチの内部に第4ゲート絶縁膜を形成し、
前記(f)工程では、前記第3ゲート絶縁膜を介して前記第3トレンチの内部を埋め込むように、前記第3トレンチの内部に第3ゲート電極を形成すると共に、前記第4ゲート絶縁膜を介して前記第4トレンチの内部を埋め込むように、前記第4トレンチの内部に第4ゲート電極を形成し、
前記第3トレンチは、第5側面、前記第5側面に対向する第6側面、および、前記第5側面と前記第6側面とを繋ぐ第3底面を有し、
前記第4トレンチは、第7側面、前記第7側面に対向する第8側面、および、前記第7側面と前記第8側面とを繋ぐ第4底面を有し、
前記第3トレンチおよび前記第4トレンチは、前記第6側面と前記第7側面とが隣接するように、離間して設けられ、
前記第2不純物領域は、前記第4側面と前記第5側面との間の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第6側面を越えるように前記第3底面を覆い、
前記第4不純物領域は、前記第8側面側の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第7側面を越えるように前記第4底面を覆い、
前記層間絶縁膜は、前記第3トレンチおよび前記第4トレンチも覆うように、前記半導体基板の前記上面上に形成され、
前記第3ゲート電極および前記第4ゲート電極は、前記エミッタ電極に電気的に接続される、半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2不純物領域および前記第4不純物領域は、接触している、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、トレンチの内部に形成されたゲート電極を備えた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体素子を備えた半導体装置が広く使用されている。また、オン抵抗の低いIGBTとして、トレンチの内部にゲート電極を埋め込んだ構造を用いたIGBTが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、IE(Injection Enhancement)効果を利用したGGEE構造のIGBTが開示されている。IE効果とは、IGBTがオン状態の際に、エミッタ電極EE側に正孔が排出され難くすることで、ドリフト領域に蓄積される電荷の濃度を高める技術である。
【0004】
なお、GGEE構造の「G」とは、ゲート電位に接続されたゲート電極が、トレンチの内部に埋め込まれた構造を意味し、ゲートトレンチと呼称される。また、GGEE構造の「E」とは、エミッタ電位に接続されたゲート電極が、トレンチの内部に埋め込まれた構造を意味し、エミッタトレンチと呼称される。従って、GGEE構造とは、一対のゲートトレンチからある程度離れた位置に、一対のエミッタトレンチが形成された構造である。
【0005】
特許文献1にも開示されているように、IE効果を利用するために、一対のゲートトレンチと一対のエミッタトレンチとの間の半導体基板には、p型のフローティング領域が形成されている。このp型のフローティング領域は、一対のゲートトレンチおよび一対のエミッタトレンチの各々の深さよりも深い位置まで形成されている。また、一対のゲートトレンチに挟まれた半導体基板と、一対のエミッタトレンチに挟まれた半導体基板とには、ドリフト領域よりも高い不純物濃度を有するn型のホールバリア領域が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-140885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フローティング領域およびホールバリア領域を形成するためには、イオン注入によって、半導体基板中の比較的浅い位置に不純物を導入し、トレンチを形成した後、熱処理によって不純物を拡散させる手法が一般的である。例えば、特許文献1にもそのような手法が開示されている。しかしながら、フローティング領域用の不純物をトレンチの深さよりも深い位置まで拡散させるためには、高温および長時間の熱処理が要求される。そのような熱処理は、例えば不活性ガスが充満された炉体の内部で行われ、1200℃、30分の条件下で行われる。
【0008】
炉体の内部では、半導体基板(ウェハ)の下面は、ウィングボード等と呼ばれる支持部材によって支持されるが、高温および長時間の熱処理では、ウェハと支持部材との接触点において、ウェハが自重によって傷つき、その傷を起点としてスリップが発生する恐れがある。スリップとは、高温での結晶の塑性変形時に発生する結晶転位欠陥である。多数の結晶転位欠陥が積層すると、ウェハの表面に段差が発生する場合もある。このため、スリップが発生すると、歩留まりが低下し、製造コストが増加するという問題がある。また、近年では、300mmのような大口径のウェハが用いられるので、ウェハの自重が更に重くなる傾向があり、スリップが発生し易くなっている。
【0009】
また、トレンチの底面を覆うようにフローティング領域を形成しようとする場合、深さ方向だけでなく、横方向へも不純物を拡散させる必要がある。しかし、長時間の熱拡散による制御では、制御性が高いとは言えないので、フローティング領域の形成位置を精度良く調整することが難しい。また、不純物濃度のプロファイル設計も困難であるという問題がある。
【0010】
本願の主な目的は、フローティング領域の形成位置を精度良く調整できると共に、熱処理の温度をできるだけ低温化し、熱処理の時間もできるだけ短くできる技術を提供することにある。それにより、半導体装置の性能を向上させ、歩留まりの低下を抑制させる。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
一実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、(b)前記(a)工程後、前記半導体基板の前記上面上に、第1レジストパターンを形成する工程、(c)前記(b)工程後、前記第1レジストパターンをマスクとして、前記半導体基板の前記上面側から第1イオン注入を行うことで、前記半導体基板中に、第1イオン注入層および第2イオン注入層を形成する工程、(d)前記(c)工程後、前記第1レジストパターンをマスクとして、前記半導体基板の前記上面側から第2イオン注入を行うことで、平面視で前記第1イオン注入層と重なる位置の前記半導体基板中に第3イオン注入層を形成すると共に、平面視で前記第2イオン注入層と重なる位置の前記半導体基板中に第4イオン注入層を形成する工程、(e)前記(d)工程後、前記第1レジストパターンを除去する工程、(f)前記(e)工程後、前記半導体基板に対して第1熱処理を行うことで、前記第1イオン注入層および前記第3イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1不純物領域を形成すると共に、前記第2イオン注入層および前記第4イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第2導電型の第2不純物領域を形成する工程、(g)前記(f)工程後、前記半導体基板の前記上面側において、前記半導体基板に、第1トレンチおよび第2トレンチを形成する工程、(h)前記(g)工程後、前記第1トレンチの内部に第1ゲート絶縁膜を形成すると共に、前記第2トレンチの内部に第2ゲート絶縁膜を形成する工程、(i)前記(h)工程後、前記第1ゲート絶縁膜を介して前記第1トレンチの内部を埋め込むように、前記第1トレンチの内部に第1ゲート電極を形成すると共に、前記第2ゲート絶縁膜を介して前記第2トレンチの内部を埋め込むように、前記第2トレンチの内部に第2ゲート電極を形成する工程、を備える。前記第1イオン注入のエネルギーおよび前記第2イオン注入のエネルギーは、互いに異なり、前記第1トレンチは、第1側面、前記第1側面に対向する第2側面、および、前記第1側面と前記第2側面とを繋ぐ第1底面を有し、前記第2トレンチは、第3側面、前記第3側面に対向する第4側面、および、前記第3側面と前記第4側面とを繋ぐ第2底面を有し、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチは、前記第2側面と前記第3側面とが隣接するように、離間して設けられ、前記第1不純物領域は、前記第1側面側の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第2側面を越えるように前記第1底面を覆い、前記第2不純物領域は、前記第4側面側の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第3側面を越えるように前記第2底面を覆い、前記第1不純物領域および前記第2不純物領域は、互いに離間している。
【0013】
一実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、(b)前記(a)工程後、前記半導体基板の前記上面側から第1イオン注入を行うことで、前記半導体基板中に、第1イオン注入層および第2イオン注入層を形成する工程、(c)前記(b)工程後、前記半導体基板に対して第1熱処理を行うことで、前記第1イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1不純物領域を形成すると共に、前記第2イオン注入層に含まれる不純物を拡散させて、前記第2導電型の第2不純物領域を形成する工程、(d)前記(c)工程後、前記半導体基板の前記上面側において、前記半導体基板に、第1トレンチおよび第2トレンチを形成する工程、(e)前記(d)工程後、前記第1トレンチの内部に第1ゲート絶縁膜を形成すると共に、前記第2トレンチの内部に第2ゲート絶縁膜を形成する工程、(f)前記(e)工程後、前記第1ゲート絶縁膜を介して前記第1トレンチの内部を埋め込むように、前記第1トレンチの内部に第1ゲート電極を形成すると共に、前記第2ゲート絶縁膜を介して前記第2トレンチの内部を埋め込むように、前記第2トレンチの内部に第2ゲート電極を形成する工程、を備える。前記第1トレンチは、第1側面、前記第1側面に対向する第2側面、および、前記第1側面と前記第2側面とを繋ぐ第1底面を有し、前記第2トレンチは、第3側面、前記第3側面に対向する第4側面、および、前記第3側面と前記第4側面とを繋ぐ第2底面を有し、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチは、前記第2側面と前記第3側面とが隣接するように、離間して設けられ、前記第1不純物領域は、前記第1側面側の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第2側面を越えるように前記第1底面を覆い、前記第2不純物領域は、前記第4側面側の前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第3側面を越えるように前記第2底面を覆い、前記第1不純物領域および前記第2不純物領域は、互いに離間している。
【発明の効果】
【0014】
一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上でき、歩留まりの低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1における半導体装置を示す平面図である。
図2】実施の形態1における半導体装置を示す要部平面図である。
図3】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
図4】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
図5】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6図5に続く製造工程を示す断面図である。
図7図6に続く製造工程を示す断面図である。
図8図7に続く製造工程を示す断面図である。
図9図8に続く製造工程を示す断面図である。
図10図9の製造工程が終了した時点でのトレンチ周辺の各構成を説明するための断面図である。
図11図10に続く製造工程を示す断面図である。
図12図11に続く製造工程を示す断面図である。
図13図12に続く製造工程を示す断面図である。
図14図13に続く製造工程を示す断面図である。
図15図14に続く製造工程を示す断面図である。
図16】実施の形態2における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0017】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差し、互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する。また、本願で用いられる「平面図」または「平面視」などの表現は、X方向およびY方向によって構成される面を「平面」とし、この「平面」をZ方向から見ることを意味する。
【0018】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
以下に図1図4を用いて、実施の形態1における半導体装置100の構造について説明する。実施の形態1の主な特徴は、p型のフローティング領域FPおよびホールバリア領域の構造およびその製造工程にある。そのような特徴については、後で詳細に説明する。
【0019】
図1は、半導体装置100である半導体チップを示す平面図である。図1に示されるように、半導体装置100の大部分はエミッタ電極EEで覆われている。ゲート配線GWは、平面視においてエミッタ電極EEを囲むように形成されている。フィールドリミッティング配線FLWは、平面視においてゲート配線GWを囲むように形成されている。なお、ここでは、2つのフィールドリミッティング配線FLWを例示するが、フィールドリミッティング配線FLWの数は、少なくとも1つ以上であればよく、3つ以上でもよい。
【0020】
ここでは図示していないが、エミッタ電極EE、ゲート配線GWおよびフィールドリミッティング配線FLWは、ポリイミド膜のような保護膜によって覆われている。エミッタ電極EE上およびゲート配線GW上において、上記保護膜の一部には開口部が設けられ、上記開口部で露出している領域が、エミッタパッドEPおよびゲートパッドGPになる。エミッタパッドEP上およびゲートパッドGP上に、ボンディングワイヤまたはクリップ(銅板)などの外部接続用部材が接続されることで、半導体装置100が、他の半導体チップまたは配線基板などに電気的に接続される。
【0021】
半導体装置100は、セル領域と、上記セル領域を囲む外周領域とを備える。上記セル領域には、IGBTのような主要な半導体素子が形成されている。上記外周領域には、ゲート配線GWおよびフィールドリミッティング配線FLWが形成されている。図1に示される領域1Aは、上記セル領域の一部を示し、領域2Aは、上記外周領域の一部を示している。
【0022】
図2は、図1に示される領域1Aに対応した要部平面図である。図2に示されるIGBTは、IE効果を利用したGGEE構造のIGBTである。半導体装置100は、IGBTの主動作を行うためのアクティブセルACと、アクティブセルAC以外のインアクティブセルIACとを有する。
【0023】
図2に示されるように、複数のトレンチTRは、Y方向に延在し、X方向で互いに隣接している。アクティブセルACのトレンチTRの内部には、ゲート電極GE1が形成されている。インアクティブセルIACのトレンチTRの内部には、ゲート電極GE2が形成されている。アクティブセルACのゲート電極GE1には、ゲート配線GWが電気的に接続され、IGBTの動作時にゲート電位が供給される。インアクティブセルIACのゲート電極GE2には、エミッタ電極EEが電気的に接続され、IGBTの動作時にエミッタ電位が供給される。また、アクティブセルACのベース領域PBおよびエミッタ領域NEと、インアクティブセルIACのベース領域PBには、エミッタ電極EEが電気的に接続され、IGBTの動作時にエミッタ電位が供給される。
【0024】
図3は、図2に示されるA-A線に沿った断面図である。半導体装置100は、上面および下面を有するn型の半導体基板SUBを備える。半導体基板SUBは、n型のドリフト領域NVを有する。ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成している。なお、ドリフト領域NVは、n型のシリコン基板と、シリコン基板上にエピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させた半導体層との積層体であってもよい。本願では、そのような積層体も半導体基板SUBであるとして説明する。
【0025】
半導体基板SUBの下面側において、半導体基板SUB内には、n型のフィールドストップ領域(不純物領域)NSが形成されている。フィールドストップ領域NSの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高い。フィールドストップ領域NSは、IGBTのターンオフ時に、半導体基板SUBの上面側のpn接合から延びる空乏層が、p型のコレクタ領域PCに達することを抑制するために設けられている。
【0026】
半導体基板SUBの下面側において、半導体基板SUB内には、p型のコレクタ領域(不純物領域)PCが形成されている。コレクタ領域PCは、フィールドストップ領域NSの下方に位置している。
【0027】
半導体基板SUBの下面下には、コレクタ電極CEが形成されている。コレクタ電極CEは、コレクタ領域PCに電気的に接続され、コレクタ領域PCにコレクタ電位を供給する。コレクタ電極CEは、例えばAu膜、Ni膜、Ti膜またはAlSi膜のような単層の金属膜であるか、これらを適宜積層させた積層の金属膜である。
【0028】
半導体基板SUBの上面側において、半導体基板SUBには、トレンチTRが形成されている。トレンチTRは、後述するエミッタ領域NEおよびベース領域PBを貫通し、且つ、半導体基板SUBに達している。トレンチTRの深さは、例えば2μm以上且つ5μm以下である。
【0029】
トレンチTRの内部には、ゲート絶縁膜GIが形成されている。ゲート電極GE1、GE2は、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチTRの内部に埋め込まれている。ゲート絶縁膜GIは、絶縁膜であり、例えば酸化シリコン膜である。ゲート電極GE1、GE2は、導電性膜であり、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。ゲート絶縁膜GIの厚さは、例えば70nm以上且つ150nm以下である。
【0030】
アクティブセルACの半導体基板SUBの上面側において、一対のトレンチTR(一対のゲート電極GE1)の間の半導体基板SUB内には、ホールバリア領域(不純物領域)NHBが形成されている。ホールバリア領域NHBの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高い。
【0031】
ホールバリア領域NHB内には、p型のベース領域(不純物領域)PBが形成されている。p型のベース領域PB内には、n型のエミッタ領域(不純物領域)NEが形成されている。エミッタ領域NEの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高い。ベース領域PBは、トレンチTRの深さよりも浅くなるように形成され、エミッタ領域NEは、ベース領域PBの深さよりも浅くなるように形成されている。
【0032】
インアクティブセルIACの半導体基板SUBの上面側において、一対のトレンチTR(一対のゲート電極GE2)の間の半導体基板SUBには、ホールバリア領域NHBが形成されている。また、ゲート電極GE1とゲート電極GE2との間の半導体基板SUBには、p型のフローティング領域(不純物領域)PFが形成されている。ホールバリア領域NHB内およびフローティング領域PF内には、p型のベース領域PBが形成されている。ベース領域PBの不純物濃度は、フローティング領域PFの不純物濃度よりも高い。
【0033】
フローティング領域PFと、フローティング領域PFに形成されているベース領域PBとは、ゲート配線GWおよびエミッタ電極EEに電気的に接続されておらず、電位が供給されていない。フローティング領域PFは、接合耐圧の向上を図るために、トレンチTRの底部よりも深い位置にまで形成され、トレンチTRの底部を覆うように形成されている。
【0034】
半導体基板SUBの上面上には、トレンチTRを覆うように、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜である。層間絶縁膜ILの厚さは、例えば600nm以上且つ1500nm以下である。
【0035】
アクティブセルACにおいて、コンタクトホールCHは、層間絶縁膜ILおよびエミッタ領域NEを貫通し、且つ、ベース領域PBに達している。コンタクトホールCHは、エミッタ領域NEおよびベース領域PBに接するように形成されている。
【0036】
コンタクトホールCHの上部では、層間絶縁膜ILが後退している。すなわち、半導体基板SUBの上面よりも上に位置するコンタクトホールCHの開口の大きさは、半導体基板SUBの上面よりも下に位置するコンタクトホールCHの開口の大きさよりも大きい。このため、エミッタ領域NEの上面の一部が、層間絶縁膜ILから露出している。従って、エミッタ電極EEは、コンタクトホールCHの内部において、エミッタ領域NEの側面に接触するだけでなく、エミッタ領域NEの上面の一部にも接触する。これにより、エミッタ電極EEとエミッタ領域NEとの接触抵抗を低減することができる。
【0037】
インアクティブセルIACにおいて、コンタクトホールCHは、層間絶縁膜ILを貫通し、且つ、ベース領域PBに達している。また、コンタクトホールCHは、平面視においてゲート電極GE2に重なるように形成されている。このため、インアクティブセルIACにおけるコンタクトホールCHは、ゲート電極GE2およびベース領域PBに接するように形成されている。
【0038】
アクティブセルACおよびインアクティブセルIACにおいて、コンタクトホールCHの底部の周囲のベース領域PBには、p型の高濃度拡散領域(不純物領域)PRが形成されている。高濃度拡散領域PRの不純物濃度は、ベース領域PBの不純物濃度よりも高い。高濃度拡散領域PRは、エミッタ電極EEとの接触抵抗を低くするため、および、ラッチアップを防止するために設けられている。
【0039】
コンタクトホールCHの内部には、プラグPGが埋め込まれている。プラグPGは、バリアメタル膜と、上記バリアメタル膜上に形成された導電性膜とを含む。上記バリアメタル膜は、例えばチタン膜と、上記チタン膜上に形成された窒化チタン膜との積層膜である。上記導電性膜は、例えばタングステン膜である。
【0040】
なお、ここでは図示されていないが、コンタクトホールCHは、ゲート電極GE1の一部上にも形成され、このコンタクトホールCHの内部にもプラグPGが形成されている。
【0041】
層間絶縁膜IL上には、エミッタ電極EEが形成されている。エミッタ電極EEは、プラグPGを介して、エミッタ領域NE、ベース領域PB、高濃度拡散領域PRおよびゲート電極GE2に電気的に接続され、これらの領域にエミッタ電位を供給する。
【0042】
なお、ここでは図示されていないが、層間絶縁膜IL上には、エミッタ電極EEと同じ製造工程で形成されたゲート配線GWも形成されている。ゲート配線GWは、プラグPGを介してゲート電極GE1に電気的に接続され、ゲート電極GE1にゲート電位を供給する。このようなエミッタ電極EEおよびゲート配線GWは、例えば、TiW膜と、上記TiW膜上に形成されたアルミニウム膜とからなる。上記アルミニウム膜は、エミッタ電極EEおよびゲート配線GWの主導体膜であり、上記TiW膜よりも十分に厚い。
【0043】
図4は、図1に示される領域2Aに対応した要部断面図である。半導体基板SUBの上面側において、外周領域の半導体基板SUB内には、p型のフィールドリミッティング領域PFRが形成されている。フィールドリミッティング領域PFRは、フローティング領域PFと同じ製造工程で形成された不純物領域である。
【0044】
外周領域の半導体基板SUBの上面上には、各フィールドリミッティング領域PFRを跨ぐように、絶縁膜IF1が形成されている。絶縁膜IF1は、絶縁膜であり、例えば酸化シリコン膜である。絶縁膜IF1の厚さは、例えば200nm以上且つ300nm以下である。
【0045】
フィールドリミッティング領域PFR上および絶縁膜IF1上には、層間絶縁膜ILが形成されている。コンタクトホールCHは、層間絶縁膜ILを貫通し、且つ、フィールドリミッティング領域PFRに達している。このコンタクトホールCHの底部の周囲のフィールドリミッティング領域PFRには、高濃度拡散領域PRが形成されている。また、このコンタクトホールCHの内部にもプラグPGが形成されている。層間絶縁膜IL上には、エミッタ電極EEおよびゲート配線GWと同じ製造工程で形成されたフィールドリミッティング配線FLWが形成されている。
【0046】
フィールドリミッティング配線FLWは、プラグPGを介してフィールドリミッティング領域PFRに電気的に接続されている。フィールドリミッティング配線FLWおよびフィールドリミッティング領域PFRは、エミッタ電極EEおよびゲート配線GWに電気的に接続されておらず、フローティング状態になっている。
【0047】
フィールドリミッティング領域PFRが設けられていることで、セル領域から外周領域へ向かう方向へ空乏層を伸ばせるので、セル領域のIGBTに印加される高電圧に伴って発生する高電界を緩和することができる。また、平面視において、フィールドリミッティング配線FLWは、フィールドリミッティング領域PFRを覆っているだけでなく、フィールドリミッティング領域PFRとドリフト領域NVとの境界も覆っている。これにより、上記境界で発生する電界も緩和される。
【0048】
<半導体装置の製造方法>
以下に図5図15を用いて、実施の形態1における半導体装置100の製造方法に含まれる各製造工程について説明する。
【0049】
図5に示されるように、まず、上面および下面を有するn型の半導体基板SUBを用意する。上述のように、ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成しているが、ドリフト領域NVは、n型のシリコン基板上に、エピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させたn型の半導体層であってもよい。
【0050】
その後、ここでは図示していないが、図4に示される絶縁膜IF1を形成する。例えば熱酸化法によって、半導体基板SUBの上面上に、酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF1を形成する。次に、絶縁膜IF1上に、開口部を有するレジストパターンを形成する。次に、上記レジストパターンをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、上記開口部で露出している絶縁膜IF1を除去し、半導体基板SUBの上面を露出させる。次に、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。このように絶縁膜IF1をパターニングすることで、図4に示されるように、半導体基板SUBの上面上に、絶縁膜IF1が選択的に形成される。
【0051】
図6に示されるように、まず、半導体基板SUBの上面上に、レジストパターンRP1を形成する。レジストパターンRP1は、後にアクティブセルACおよびインアクティブセルIACの各々のホールバリア領域NHBとなる領域を開口するパターンを有する。次に、レジストパターンRP1をマスクとして、半導体基板SUBの上面側から複数回のn型イオン注入を行う。ここでは、3回のn型イオン注入を行う場合を例示する。なお、3回目のn型イオン注入後、アッシング処理によってレジストパターンRP1を除去する。
【0052】
1回目のn型イオン注入は、イオン種を燐(P)とし、エネルギーを1000keVとし、ドーズ量を3.0×1012/cmとした条件で行われる。これにより、半導体基板SUB中に、イオン注入層NHB1が形成される。
【0053】
2回目のn型イオン注入は、イオン種を燐(P)とし、エネルギーを600keVとし、ドーズ量を3.0×1012/cmとした条件で行われる。これにより、半導体基板SUB中に、イオン注入層NHB2が形成される。イオン注入層NHB2は、平面視でイオン注入層NHB1と重なる半導体基板SUB中に形成され、イオン注入層NHB1よりも上方に位置する。
【0054】
3回目のn型イオン注入は、イオン種を燐(P)とし、エネルギーを300keVとし、ドーズ量を4.0×1012/cmとした条件で行われる。これにより、半導体基板SUB中に、イオン注入層NHB3が形成される。イオン注入層NHB3は、平面視でイオン注入層NHB2と重なる半導体基板SUB中に形成され、イオン注入層NHB2よりも上方に位置する。
【0055】
ここで、エネルギーが大きい程に、より深い位置にイオン注入層が形成されるが、イオン注入を行うと、半導体基板SUBに結晶欠陥が発生する。浅い位置から順番にイオン注入層を形成すると、深い位置へのイオン注入を行う際に、浅い位置に発生している結晶欠陥によって不純物プロファイルが乱れる虞がある。従って、より深い位置へのイオン注入を先に行うことが好ましい。
【0056】
すなわち、1回目~3回目のn型イオン注入のエネルギーは、それぞれ異なっているが、エネルギーが大きいn型イオン注入を先に行うことが好ましい。従って、まず、1回目のn型イオン注入を行い、次に2回目のn型イオン注入を行い、次に3回目のn型イオン注入を行うことが好ましい。
【0057】
また、1回目~3回目のn型イオン注入は、半導体基板SUBの上面に対して垂直な角度から行われる。深い位置へのイオン注入では、各イオンが互いに衝突し、散乱される可能性が高くなる。そのため、より深い位置に形成されるイオン注入層は、横方向へ広がり易くなる。従って、イオン注入層NHB1の幅は、イオン注入層NHB2の幅よりも広く、イオン注入層NHB2の幅は、イオン注入層NHB3の幅よりも広くなっている。
【0058】
図7に示されるように、まず、半導体基板SUBの上面上に、レジストパターンRP2を形成する。レジストパターンRP2は、後にフローティング領域FPとなる領域を開口するパターンを有する。次に、レジストパターンRP2をマスクとして、半導体基板SUBの上面側から複数回のp型イオン注入を行う。ここでは、2回のp型イオン注入を行う場合を例示する。なお、2回目のp型イオン注入後、アッシング処理によってレジストパターンRP2を除去する。
【0059】
1回目のp型イオン注入は、イオン種をボロン(B)とし、エネルギーを1250keVとし、ドーズ量を6.0×1012/cmとした条件で行われる。これにより、半導体基板SUB中に、イオン注入層PF1が形成される。
【0060】
2回目のp型イオン注入は、イオン種をボロン(B)とし、エネルギーを300keVとし、ドーズ量を1.6×1013/cmとした条件で行われる。これにより、半導体基板SUB中に、イオン注入層PF2が形成される。イオン注入層PF2は、平面視でイオン注入層PF1と重なる半導体基板SUB中に形成され、イオン注入層PF1よりも上方に位置する。
【0061】
ここでも、1回目および2回目のp型イオン注入のエネルギーは、それぞれ異なっているが、1回目~3回目のn型イオン注入と同様の理由から、エネルギーが大きいp型イオン注入を先に行うことが好ましい。従って、まず、1回目のp型イオン注入を行い、次に2回目のp型イオン注入を行うことが好ましい。また、1回目および2回目のp型イオン注入も、半導体基板SUBの上面に対して垂直な角度から行われる。イオン注入層NHB1~NHB3の各々の幅の関係と同様の理由で、イオン注入層PF1の幅は、イオン注入層PF2の幅よりも広くなっている。
【0062】
なお、イオン注入層PF1、PF2を形成する製造工程は、イオン注入層NHB1~NHB3を形成する製造工程よりも先に行われてもよい。
【0063】
図8に示されるように、イオン注入層NHB1~NHB3およびイオン注入層PF1、PF2を形成した後、半導体基板SUBに対して熱処理を行う。この熱処理は、例えば、窒素ガスのような不活性ガスが充満された雰囲気中で行われ、700℃以上且つ900℃以下であり、30秒以上且つ150秒以下である条件下で行われる。
【0064】
この熱処理によって、イオン注入層PF1、PF2の各々に含まれる不純物(B)を拡散させて、p型のフローティング領域PFを形成する。また、この熱処理によって、イオン注入層NHB1~NHB3の各々に含まれる不純物(P)を拡散させて、n型のホールバリア領域NHBを形成する。また、この熱処理によって、イオン注入時に発生した結晶欠陥が回復する。
【0065】
なお、図4に示されるフィールドリミッティング領域PFRは、p型のフローティング領域PFを形成するための製造工程と同じ製造工程によって形成される。すなわち、外周領域の半導体基板SUB中にもイオン注入層PF1、PF2が形成される。そして、上記熱処理によって、イオン注入層PF1、PF2の各々に含まれる不純物(B)を拡散させることで、フィールドリミッティング領域PFRが形成される。
【0066】
図9に示されるように、半導体基板SUBの上面側において、半導体基板SUB中にトレンチTRを形成する。トレンチTRを形成するためには、まず、半導体基板SUBの上面上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜を形成する。次に、上記酸化シリコン膜上に、開口部を有するレジストパターンを形成する。次に、上記レジストパターンをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、上記酸化シリコン膜をパターニングし、ハードマスクHMを形成する。次に、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。次に、ハードマスクHMをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、半導体基板SUB中にトレンチTRを形成する。その後、例えばフッ酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理によって、ハードマスクHMを除去する。
【0067】
図10は、図9の製造工程が終了した時点でのトレンチTR周辺の各構成を、詳細に説明するための断面図である。
【0068】
図10に示されるように、アクティブセルACに形成されている一対のトレンチTRのうち、一方のトレンチTRは、側面SS1、側面SS1に対向する側面SS2、および、側面SS1と側面SS2とを繋ぐ底面BS1を有する。アクティブセルACの他方のトレンチTRは、側面SS3、側面SS3に対向する側面SS4、および、側面SS3と側面SS4とを繋ぐ底面BS2を有する。一方のトレンチTRおよび他方のトレンチTRは、側面SS2と側面SS3とが隣接するように、離間して設けられている。
【0069】
また、インアクティブセルIACに形成されている一対のトレンチTRのうち、一方のトレンチTRは、側面SS5、側面SS5に対向する側面SS6、および、側面SS5と側面SS6とを繋ぐ底面BS3を有する。インアクティブセルIACの他方のトレンチTRは、側面SS7、側面SS7に対向する側面SS8、および、側面SS7と側面SS8とを繋ぐ底面BS4を有する。一方のトレンチTRおよび他方のトレンチTRは、側面SS6と側面SS7とが隣接するように、離間して設けられている。なお、インアクティブセルIACの一対のトレンチTRの間隔は、アクティブセルACの一対のトレンチTRの間隔よりも狭くなっている。
【0070】
図10には、熱処理前に形成されていたイオン注入層NHB1~NHB3およびイオン注入層PF1、PF2の各々の不純物濃度ピークの位置が、不純物濃度ピークNHB1a~NHB3aおよび不純物濃度ピークPF1a、PF2aとして示されている。
【0071】
実施の形態1では、複数回のイオン注入によって、イオン注入層NHB1~NHB3およびイオン注入層PF1、PF2が、熱処理前の時点で、フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHBが形成される予定の領域の近くに形成されている。特に、イオン注入層NHB1およびイオン注入層PF1が、予め深い位置まで形成されている。例えば、各トレンチTRの底面BS1~BS4の位置が不純物濃度ピークPF1aの位置よりも浅くなるように、トレンチTRは形成される。
【0072】
従来では、高温および長時間(1200℃、30分)の条件下で熱処理が行われていたが、実施の形態1では、低温および短時間の条件下で熱処理を行うことができる。例えば、後述のゲート絶縁膜GIは熱酸化法で形成されるが、実施の形態1の熱処理は、熱酸化法で行われる熱処理よりも、低い温度および短い時間で行われる。従って、炉体内でスリップの発生を抑制でき、フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHBの形成位置を精度良く調整することができる。また、不純物濃度のプロファイル設計も容易に行える。そのため、半導体装置の性能を向上させることができ、歩留まりの低下を抑制することができる。
【0073】
また、このような手法によってフローティング領域PFを形成することで、フローティング領域PFがトレンチTRの底面を覆うだけでなく、更に横方向(X方向)へ伸ばすことが、容易に達成できる。このようにフローティング領域PFを形成することで、トレンチTR直下の電界集中を緩和することができ、接合耐圧を向上させることができる。
【0074】
すなわち、側面SS1側の半導体基板SUB中に形成されているフローティング領域PFは、側面SS2を越えるように底面BS1を覆っている。側面SS4側の半導体基板SUB中に形成されているフローティング領域PFは、側面SS3を越えるように底面BS2を覆っている。これらのフローティング領域PF(アクティブセルACの一対のトレンチTRの底面を覆うフローティング領域PF)は、接触しておらず、互いに離間している。
【0075】
また、側面SS5側(側面SS4と側面SS5との間)の半導体基板SUB中に形成されているフローティング領域PFは、側面SS6を越えるように底面BS3を覆っている。側面SS8側の半導体基板SUB中に形成されているフローティング領域PFは、側面SS7を越えるように底面BS4を覆っている。これらのフローティング領域PF(インアクティブセルIACの一対のトレンチTRの底面を覆うフローティング領域PF)は、接触しているが、互いに離間していてもよい。
【0076】
なお、アクティブセルACのホールバリア領域NHBは、側面SS2と側面SS3との間の半導体基板SUB中に形成され、インアクティブセルIACのホールバリア領域NHBは、側面SS6と側面SS7との間の半導体基板SUB中に形成されている。
【0077】
図11は、図9に続く製造工程を示している。図11に示されるように、まず、トレンチTRの内部および半導体基板SUBの上面上に、熱酸化法によって、ゲート絶縁膜GIを形成する。具体的には、ゲート絶縁膜GIは、例えば950℃、40分の条件下で、酸素ガスおよび水素ガスを用いた熱処理によって形成された酸化シリコン膜である。
【0078】
次に、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチTRの内部を埋め込むように、トレンチTRの内部および半導体基板SUBの上面上に、例えばCVD法によって、導電性膜CF1を形成する。導電性膜CF1は、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。
【0079】
図12に示されるように、まず、異方性エッチング処理によって、トレンチTRの外部に形成されていた導電性膜CF1を除去する。トレンチTRの内部に形成されていた導電性膜CF1が、ゲート電極GE1、GE2として残される。次に、等方性エッチング処理によって、トレンチTRの外部に形成されていたゲート絶縁膜GIを除去する。
【0080】
図13に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、半導体基板SUBの上面側において、半導体基板SUB(フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHB)内に、p型のベース領域PBを形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、アクティブセルACのベース領域PB内に、n型のエミッタ領域NEを選択的に形成する。
【0081】
なお、図示はしていないが、これらのイオン注入を行う前に、半導体基板の上面上に、酸化シリコン膜のような絶縁膜を形成し、この絶縁膜をスルー膜として、イオン注入を行ってもよい。また、このスルー膜は、イオン注入後に除去されてもよいし、層間絶縁膜ILの一部として残されていてもよい。
【0082】
図14に示されるように、まず、トレンチTRを覆うように、例えばCVD法によって、半導体基板SUBの上面上に、層間絶縁膜ILを形成する。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜である。
【0083】
次に、フォトリソグラフィ技術および異方性エッチング処理によって、アクティブセルACにおいて、層間絶縁膜IL、エミッタ領域NEおよびベース領域PBに、コンタクトホールCHを形成する。コンタクトホールCHの底部は、ベース領域PB内に位置する。
【0084】
ここで、インアクティブセルIACにもコンタクトホールCHが形成され、このコンタクトホールCHは、平面視においてゲート電極GE2に重なるように形成されている。このため、インアクティブセルIACにおけるコンタクトホールCHは、ゲート電極GE2およびベース領域PBに接するように形成される。なお、図示はしていないが、コンタクトホールCHは、ゲート電極GE1の一部上にも形成される。
【0085】
次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、コンタクトホールCHの底部において、ベース領域PBに、p型の高濃度拡散領域PRを形成する。次に、層間絶縁膜ILに対して等方性エッチング処理を行うことで、層間絶縁膜ILを後退させる。これにより、半導体基板SUBの上面上に位置するコンタクトホールCHの開口幅は、半導体基板SUBの内部に位置するコンタクトホールCHの開口幅よりも大きくなる。
【0086】
図15に示されるように、コンタクトホールCHの内部にプラグPGを形成する。まず、コンタクトホールCHの内部および層間絶縁膜IL上に、バリアメタル膜を形成する。例えばスパッタリング法によってコンタクトホールCHの内部および層間絶縁膜IL上にチタン膜を形成し、例えばスパッタリング法によって上記チタン膜上に窒化チタン膜を形成することで、上記バリアメタル膜を形成できる。次に、コンタクトホールCHの内部を埋め込むように、例えばCVD法によって、上記バリアメタル膜上に、例えばタングステン膜からなる導電性膜を形成する。次に、異方性エッチング処理によって、コンタクトホールCHの外部に形成されている上記導電性膜および上記バリアメタル膜を除去する。これにより、コンタクトホールCHの内部を埋め込むように、プラグPGが形成される。
【0087】
次に、層間絶縁膜IL上に、エミッタ電極EEを形成する。まず、例えばスパッタリング法によって、層間絶縁膜IL上にTiW膜を形成し、例えばスパッタリング法によって、上記TiW膜上にアルミニウム膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング処理によって、上記TiW膜および上記アルミニウム膜をパターニングすることで、エミッタ電極EEを形成する。なお、ここでは図示していないが、エミッタ電極EEを形成する工程と同じ工程で、ゲート配線GWおよびフィールドリミッティング配線FLWも層間絶縁膜IL上に形成される。
【0088】
その後、以下の製造工程を経て、図3の構造が得られる。まず、半導体基板SUBの下面側からイオン注入を行うことで、n型のフィールドストップ領域NSおよびp型のコレクタ領域PCを形成する。これらのイオン注入の後に、レーザアニールを行うことで、フィールドストップ領域NSおよびコレクタ領域PCに含まれる不純物を活性化させる。次に、半導体基板SUBの下面下に、例えばスパッタリング法によって、例えばAu膜、Ni膜、Ti膜またはAlSi膜のような金属膜を形成する。この金属膜が、コレクタ電極CEとなる。コレクタ電極CEは、上述の金属膜を適宜積層させた積層膜であってもよい。
【0089】
(実施の形態2)
以下に図16を用いて、実施の形態2における半導体装置100の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0090】
実施の形態1では、p型のフローティング領域PFを形成するために、複数回のp型イオン注入を行っていた。実施の形態2では、1回のみのp型イオン注入によってフローティング領域PFを形成する。そのため、実施の形態1の図7の製造工程の代わりに、図16の製造工程を行う。
【0091】
図16に示されるように、レジストパターンRP2をマスクとして、半導体基板SUBの上面側からp型イオン注入を行う。このp型イオン注入は、イオン種をボロン(B)とし、エネルギーを1250keVとし、ドーズ量を2.2×1013/cmとした条件で行われる。これにより、半導体基板SUB中に、イオン注入層PF3が形成される。実施の形態2のドーズ量は、実施の形態1のドーズ量よりも高くなっている。次に、アッシング処理によってレジストパターンRP2を除去する。
【0092】
その後、図8の熱処理によって、イオン注入層PF3に含まれる不純物(B)を拡散させて、p型のフローティング領域PFを形成する。なお、図4に示されるフィールドリミッティング領域PFRは、実施の形態2のフローティング領域PFを形成するための製造工程と同じ製造工程によって形成される。
【0093】
イオン注入層PF3は、不純物濃度ピークPF3aを有している。実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、各トレンチTRの底面BS1~BS4の位置が不純物濃度ピークPF3aの位置よりも浅くなるように、トレンチTRは形成される。イオン注入層PF3が、予め深い位置まで形成されているので、実施の形態2でも、低温および短時間の条件下で熱処理を行うことで、フローティング領域PFを形成することができる。従って、炉体内でスリップの発生を抑制でき、フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHBの形成位置を精度良く調整することができる。
【0094】
また、実施の形態2でも、フローティング領域PFがトレンチTRの底面を覆うだけでなく、更に横方向(X方向)へ伸ばすことが、容易に達成できる。これにより、トレンチTR直下の電界集中を緩和することができ、接合耐圧を向上させることができる。
【0095】
実施の形態2では、実施の形態1と比較して、少ない回数のp型イオン注入によってフローティング領域PFを形成するので、p型イオン注入による結晶欠陥の発生を低減できる。また、製造工程の簡略化を図れる。
【0096】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0097】
100 半導体装置
1A 領域(セル領域の一部)
2A 領域(外周領域の一部)
AC アクティブセル
BS1~BS4 トレンチの底面
CE コレクタ電極
CF1 導電性膜
CH コンタクトホール
EE エミッタ電極
FLW フィールドリミッティング配線
GE1、GE2 ゲート電極
GI ゲート絶縁膜
GW ゲート配線
IAC インアクティブセル
IF1 絶縁膜
IL 層間絶縁膜
NE エミッタ領域
NHB ホールバリア領域
NHB1~NHB3 イオン注入層
NHB1a~NHB3a 不純物濃度ピーク
NS フィールドストップ領域
NV ドリフト領域
PB ベース領域
PC コレクタ領域
PF フローティング領域
PF1~PF3 イオン注入層
PF1a~PF3a 不純物濃度ピーク
PFR フィールドリミッティング領域
PG プラグ
PR 高濃度拡散領域
RP1、RP2 レジストパターン
SS1~SS8 トレンチの側面
SUB 半導体基板
TR トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16