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特開2024-549液晶/高分子複合電気制御調光膜及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000549
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】液晶/高分子複合電気制御調光膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1334 20060101AFI20231225BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20231225BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20231225BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20231225BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20231225BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231225BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20231225BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20231225BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20231225BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20231225BHJP
   C09K 19/24 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G02F1/1334
C08F2/44 B
C08F20/00 510
C08L33/14
C08K5/10
G02F1/13 505
G02F1/1337
C09K19/30
C09K19/18
C09K19/20
C09K19/24
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100942
(22)【出願日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】202210696701.8
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】楊槐
(72)【発明者】
【氏名】王孝
(72)【発明者】
【氏名】張蘭英
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H290
4H027
4J002
4J011
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA02
2H088GA03
2H088GA04
2H088GA10
2H088HA02
2H088KA26
2H088MA09
2H189AA04
2H189BA04
2H189CA07
2H189CA08
2H189HA12
2H189LA03
2H290AA85
2H290BF54
2H290CB32
2H290DA01
2H290DA03
4H027BA01
4H027BA02
4H027BA03
4H027BD05
4H027BD24
4J002BG071
4J002EH146
4J002FD206
4J002GQ00
4J011AA05
4J011AC04
4J011PA30
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA12
4J011QA22
4J011TA10
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J011WA07
4J011XA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本明細書は、液晶/高分子複合電気制御調光膜を提供する。
【解決手段】この液晶/高分子複合電気制御調光膜は、液晶材料と、重合体基体と、二層の導電基板とを含む。重合体基体は、二層の導電基板の間に挟んで設置され、重合体基体は、多孔質微細構造を有する。液晶材料は、重合体基体に分散して液晶微滴を形成し、液晶微滴には垂直配向した高分子ネットワークを有する。
【効果】この液晶/高分子複合電気制御調光膜は、独特な複合ミクロ構造を有し、このような複合ミクロ構造において、多孔質微細構造の重合体基体は、フィルムに良好な機械的加工性能を与え、なお、液晶微滴における垂直配向した高分子ネットワークは、液晶分子の配向の難しさをさらに低減させ、液晶/高分子複合電気制御調光膜の駆動電圧の低減に有利であり、且つ大面積の加工生産に適する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶/高分子複合電気制御調光膜であって、液晶材料と、重合体基体と、二層の導電基板とを含み、
前記重合体基体は、前記二層の導電基板の間に挟んで設置され、前記重合体基体は、多孔質微細構造を有し、
前記液晶材料は、前記重合体基体に分散して液晶微滴を形成し、前記液晶微滴には垂直配向した高分子ネットワークを有することを特徴とする、液晶/高分子複合電気制御調光膜。
【請求項2】
前記重合体基体は、第1の重合性モノマーから光重合によって製造され、前記第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーであり、前記高分子ネットワークは、第2の重合性モノマーから熱重合によって製造され、前記第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、前記第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーであり、又は前記第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせであることを特徴とする
請求項1に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜。
【請求項3】
前記重合体基体は、第1の重合性モノマーから光重合によって製造され、前記第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーであり、前記高分子ネットワークは、第2の重合性モノマーから光重合によって製造され、前記第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、前記第2の重合性モノマーは、
棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つであることを特徴とする
請求項1に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜。
【請求項4】
前記重合体基体は、第1の重合性モノマーから熱重合によって製造され、前記第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーであり、前記高分子ネットワークは、第2の重合性モノマーから光重合によって製造され、前記第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、前記第2の重合性モノマーは、
棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つであることを特徴とする
請求項1に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜。
【請求項5】
前記重合体基体は、第1の重合性モノマーから熱重合によって製造され、前記第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーであり、前記高分子ネットワークは、第2の重合性モノマーから熱重合によって製造され、前記第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、前記第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーであり、又は前記第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせであることを特徴とする
請求項1に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜。
【請求項6】
前記ラジカル光重合性モノマーは、紫外線の照射によりラジカル重合可能なアクリレートモノマー又はオレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、
前記カチオン光重合性モノマーは、紫外線の照射によりカチオン重合可能なオレフィン系モノマー、ビニルエーテルモノマー、エポキシモノマーのうちの一種又は複数種であり、
前記棒状ラジカル光重合性モノマーは、紫外線の照射によりラジカル重合可能な棒状アクリレートモノマー又は棒状オレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、
前記棒状カチオン光重合性モノマーは、紫外線の照射によりカチオン重合可能な棒状エポキシモノマー、棒状ビニルエーテルモノマー、棒状オレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、
前記熱重合性モノマーは、加熱条件下で熱重合可能なエポキシモノマーとメルカプタン又はアミン系モノマーの混合物であり、又はアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はメルカプト基などを含有するモノマーとイソシアネートモノマーの混合物であり、
前記棒状熱重合性モノマーは、加熱条件下で熱重合可能な棒状エポキシモノマーと棒状メルカプタン系又は棒状アミン系モノマーの混合物であり、又はアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はメルカプト基を含有する棒状モノマーと棒状イソシアネートモノマーの混合物であることを特徴とする
請求項2から5のいずれか一項に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜。
【請求項7】
前記液晶材料は、正の誘電率異方性を有するコレステリック液晶材料であり、又はネマチック、スメクチック及びスメクチック-コレステリック相転移特性を有する液晶材料であることを特徴とする
請求項1に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜。
【請求項8】
前記液晶材料は、分子構造(1)の一種又は複数種を含み、
ただし、M、Nは、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数1~20のシロキサン基、シアノ基、エステル基、ハロゲン、イソチオシアノ基又はニトロ基であり、A、Bは、芳香族環又は脂環アルキルであり、ベンゼン環、六員環、六員複素環、五員環、五員複素環、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン環のうちの少なくとも一つを含み、AとBは、共有結合又は連結基Zを介して連結され、A、Bは、ペンダント基を含有するか又はペンダント基を含有せず、前記ペンダント基は、ハロゲン、シアノ基又はメチル基であり、x、yはそれぞれ0~4であり、Zは、エステル基、アルキニル基、アルカン基、窒素二重結合又はエーテル結合であることを特徴とする
請求項1に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜。
【請求項9】
前記重合体基体における微細孔の孔径寸法は、0.1-100ミクロンであることを特徴とする
請求項1に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜。
【請求項10】
前記導電基板は、ITO、銀、アルミニウムなどの金属化合物を含有する導電性フィルム又はガラス基板を含むことを特徴とする
請求項1に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜。
【請求項11】
液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法であって、
1)液晶材料、第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマー、第1の開始剤、第2の開始剤、スペーサ粒子を混合し、均一な混合物を得るステップと、
2)前記混合物を積層された二層の導電基板の間に充填してフィルムを製造し、第1の反応により多孔質微細構造の重合体基体を形成し、前記液晶材料を液晶微滴の形態で前記重合体基体中に分散させるステップと、
3)フィルムに電界を印加し、前記液晶材料分子と前記第2の重合性モノマー分子を垂直配向させ、第2の反応により液晶微滴において垂直配向した高分子ネットワークを形成することで、前記液晶/高分子複合電気制御調光膜を製造するステップとを含むことを特徴とする、液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法。
【請求項12】
前記第1の反応は、前記第1の開始剤が前記第1の重合性モノマーの光重合反応を開始することを含み、前記第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーであり、前記第2の反応は、前記第2の開始剤が前記第2の重合性モノマーの熱重合反応を開始することを含み、前記第2の重合性モノマーは、前記液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、前記第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーであり、又は前記第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせであることを特徴とする
請求項11に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法。
【請求項13】
前記第1の反応は、前記第1の開始剤が前記第1の重合性モノマーの光重合反応を開始することを含み、前記第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーであり、前記第2の反応は、前記第2の開始剤が前記第2の重合性モノマーの光重合反応を開始することを含み、前記第2の重合性モノマーは、前記液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、前記第2の重合性モノマーは、
棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つであることを特徴とする
請求項11に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法。
【請求項14】
前記第1の反応は、前記第1の開始剤が前記第1の重合性モノマーの熱重合反応を開始することを含み、前記第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーであり、前記第2の反応は、前記第2の開始剤が前記第2の重合性モノマーの光重合反応を開始することを含み、前記第2の重合性モノマーは、前記液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、前記第2の重合性モノマーは、
棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つであることを特徴とする
請求項11に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法。
【請求項15】
前記第1の反応は、前記第1の開始剤が前記第1の重合性モノマーの熱重合反応を開始することを含み、前記第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーであり、前記第2の反応は、前記第2の開始剤が前記第2の重合性モノマーの熱重合反応を開始することを含み、前記第2の重合性モノマーは、前記液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、前記第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーであり、又は前記第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせであることを特徴とする
請求項11に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法。
【請求項16】
前記ラジカル光重合性モノマーは、紫外線の照射によりラジカル重合可能なアクリレートモノマー又はオレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、
前記カチオン光重合性モノマーは、紫外線の照射によりカチオン重合可能なオレフィン系モノマー、ビニルエーテルモノマー、エポキシモノマーのうちの一種又は複数種であり、
前記棒状ラジカル光重合性モノマーは、紫外線の照射によりラジカル重合可能な棒状アクリレートモノマー又は棒状オレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、
前記棒状カチオン光重合性モノマーは、紫外線の照射によりカチオン重合可能な棒状エポキシモノマー、棒状ビニルエーテルモノマー、棒状オレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、
前記熱重合性モノマーは、加熱条件下で熱重合可能なエポキシモノマーとメルカプタン系又はアミン系モノマーの混合物であり、又はアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はメルカプト基などを含有するモノマーとイソシアネートモノマーの混合物であり、
前記棒状熱重合性モノマーは、加熱条件下で熱重合可能な棒状エポキシモノマーと棒状メルカプタン系又は棒状アミン系モノマーの混合物であり、又はアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はメルカプト基を含有する棒状モノマーと棒状イソシアネートモノマーの混合物であることを特徴とする
請求項12から15のいずれか一項に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法。
【請求項17】
前記液晶材料、前記第1の重合性モノマー、前記第2の重合性モノマーの原料は、重量部の比で、
前記液晶材料:10.0~95.0重量部、
前記第1の重合性モノマー:5.0~80.0重量部、
前記第2の重合性モノマー:0.1~40.0重量部であることを特徴とする
請求項11に記載の液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本明細書は、2022年6月20日に提出された中国特許出願202210696701.8の優先権及び2022年7月7日に提出された国際特許出願PCT/CN2022/104274の優先権を主張し、その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、光学フィルム分野に関し、具体的には液晶/高分子複合電気制御調光膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶の実際の応用分野では、二つの主な分野があり、一つは、表示スクリーンであり、もう一つは、光学フィルムである。ここで、光学フィルムの製造中、ロールツーロールの大規模加工を実現するために、一般的には、液晶と高分子材料とを組み合わせて複合材料フィルムを製造することで、このフィルムが液晶の優れた外場応答性と高分子の優れた機械的性能とを両立し得る。現在では、電界により駆動可能な電気制御調光膜は、主に二種類があり、一種は、高分子分散液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal:PDLCと略称)フィルムであり、別の一種は、高分子安定化液晶(Polymer Stabilized Liquid Crystal:PSLCと略称)フィルムである。
【0004】
PDLCフィルムおいて、液晶は、微滴の形態で高分子基体中に分散する。このようなフィルムは、調光膜の形態で数年間市販されており、米国、日本及びわが国には生産と販売をしている会社がある。フィルムが製造された後に、一般的には光散乱の状態を呈し、これは、高分子基体と配向していない液晶の屈折率の不整合と、液晶分子自体の屈折率の不整合によるものである。フィルムに適当な大きさの電界を印加すると、その時にフィルムは光が透過した状態、即ち透明な状態を呈する。これは、電界の作用下で液晶分子が垂直配向を形成し、液晶マイクロ領域が透明であり、同時に液晶分子の長軸に沿った方向から観察すると、液晶分子と高分子基体の屈折率も整合することによって実現される。このようなフィルムの製造方式では、非液晶性重合性モノマーと液晶を混合し、均一な混合物溶液を得た後に、混合物溶液を二層のITO導電性プラスチックフィルムに挟み、続いて紫外線照射又は加熱により光又は熱重合モノマーの重合を開始することで製造することが多く、重合が完了した後に高分子基体と液晶マイクロの相分離構造が形成され、具体的には液晶は、微滴の形態で高分子基体中に分散し、その高分子基体は、多孔質状の微細構造を有する(図1に示すように)。現在では、PDLCフィルムは、例えば、建築と自動車のドアと窓、建築の仕切り、スマート覗き見防止、投影スクリーンとタッチパネルなどの多くの分野で広い応用見通しを持っている。
【0005】
PDLCのシステムにおいて一般的には比較的高い高分子基体含有量を有し、少なくとも10%よりも大きく、ひいては40%よりも高いものがあり、この割合の特徴も、PDLCフィルムの二つの基板の間に高い剥離強度を持たせ、フィルムのロールツーロールの連続化加工を実現できる。しかしながら、高分子基体の境界が液晶分子に対して比較的強い拘束作用を持つため、PDLCの駆動電圧は比較的に高く、市販されているPDLCフィルムの駆動電圧は一般的には60ボルト以上であり、これは、PDLCフィルムの表示などの分野への更なる応用を制限する。
【0006】
高分子安定化液晶フィルム材料は、液晶分子のある配向状態を安定させるフィルム材料であり、又は、液晶分子をある配向にする傾向があるフィルム材料であり、それは、一般的には、液晶性重合性モノマーと液晶を混合し、紫外線照射又は加熱などの方式で液晶性光重合性モノマーの重合を開始し、重合前の液晶分子の配向方向と同じである配列方式の高分子ネットワークを形成することによって、重合前の液晶分子のある配向状態を安定させ、又は液晶分子をある配向にする傾向がある。例えば、液晶性重合性モノマーとコレステリック液晶を混合し、平面配向処理を行った後に重合し、重合後に平面配向高分子ネットワークを備えたPSLCフィルムを得ることができる。液晶性重合性モノマーとネマチック液晶を混合し、垂直配向処理を行った後に重合し、重合後に垂直配向高分子ネットワーク(図2に示すように)を備えたPSLCフィルムを得ることができる。
【0007】
PSLCフィルムの駆動電圧は比較的に低く、一般的には数ボルトの電圧で駆動可能である。従って、PSLCフィルムは、いくつかの機能液晶性デバイスの分野において広く応用されている。しかしながら、PSLCフィルムにおいて、高分子ネットワークの含有量が比較的に低く、一般的には10%以下であることにより、PSLCフィルムの二つの基板の剥離強度が比較的に低くなり、このようなフィルムが面積の大きいフレキシブル基板において製作されにくく、PSLCフィルムの応用範囲を制限した。PSLC材料の中には高分子ネットワーク含有量が高くできるものもあるが、このような高分子ネットワーク含有量が極めて高い材料について、機能の点で単一化が起こり、例えば、電界などの方式で駆動できず、これは、その応用が制限されることを引き起こしてしまう。
【0008】
従って、PDLCフィルムの機械的加工性能とPSLCフィルムの低駆動電圧を兼ね備えた液晶/高分子複合電気制御調光膜及びその製造方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本明細書の実施例の一態様は、液晶/高分子複合電気制御調光膜(液晶高分子複合電気制御調光膜)を提供する。この液晶/高分子複合電気制御調光膜は、液晶材料と、重合体基体と、二層の導電基板とを含む。重合体基体は、二層の導電基板の間に挟んで設置され、重合体基体は、多孔質微細構造を有する。液晶材料は、重合体基体に分散して液晶微滴を形成し、液晶微滴には垂直配向した高分子ネットワークを有する。
いくつかの実施例では、重合体基体は、第1の重合性モノマーから光重合によって製造され、第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーであり、高分子ネットワークは、第2の重合性モノマーから熱重合によって製造され、第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーであり、又は第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせである。
【0010】
いくつかの実施例では、重合体基体は、第1の重合性モノマーから光重合によって製造され、第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーであり、高分子ネットワークは、第2の重合性モノマーから熱重合によって製造され、第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、第2の重合性モノマーは、棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つである。
【0011】
いくつかの実施例では、重合体基体は、第1の重合性モノマーから熱重合によって製造され、第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーであり、高分子ネットワークは、第2の重合性モノマーから光重合によって製造され、第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、第2の重合性モノマーは、棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つである。
【0012】
いくつかの実施例では、重合体基体は、第1の重合性モノマーから熱重合によって製造され、第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーであり、高分子ネットワークは、第2の重合性モノマーから熱重合によって製造され、第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーであり、又は第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせである。
【0013】
いくつかの実施例では、ラジカル光重合性モノマーは、紫外線の照射によりラジカル重合可能なアクリレートモノマー又はオレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、カチオン光重合性モノマーは、紫外線の照射によりカチオン重合可能なオレフィン系モノマー、ビニルエーテルモノマー、エポキシモノマーのうちの一種又は複数種であり、棒状ラジカル光重合性モノマーは、紫外線の照射によりラジカル重合可能な棒状アクリレートモノマー又は棒状オレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、棒状カチオン光重合性モノマーは、紫外線の照射によりカチオン重合可能な棒状エポキシモノマー、棒状ビニルエーテルモノマー、棒状オレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、熱重合性モノマーは、加熱条件下で熱重合可能なエポキシモノマーとメルカプタン系又はアミン系モノマーの混合物であり、又はアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はメルカプト基などを含有するモノマーとイソシアネートモノマーの混合物であり、棒状熱重合性モノマーは、加熱条件下で熱重合可能な棒状エポキシモノマーと棒状メルカプタン系又は棒状アミン系モノマーの混合物であり、又はアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はメルカプト基を含有する棒状モノマーと棒状イソシアネートモノマーの混合物である。
【0014】
いくつかの実施例では、液晶材料は、正の誘電率異方性を有するコレステリック液晶材料であり、又はネマチック、スメクチック及びスメクチック-コレステリック相転移特性を有する液晶材料である。
【0015】
いくつかの実施例では、液晶材料は、分子構造(1)の一種又は複数種を含み、
ただし、M、Nは、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数1~20のシロキサン基、シアノ基、エステル基、ハロゲン、イソチオシアノ基又はニトロ基であり、A、Bは、芳香族環又は脂環アルキルであり、ベンゼン環、六員環、六員複素環、五員環、五員複素環、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン環のうちの少なくとも一つを含み、AとBは、共有結合又は連結基Zを介して連結され、A、Bは、ペンダント基を含有するか又はペンダント基を含有せず、ペンダント基は、ハロゲン、シアノ基又はメチル基であり、x、yはそれぞれ0~4であり、Zは、エステル基、アルキニル基、アルカン基、窒素二重結合又はエーテル結合である。
【0016】
いくつかの実施例では、重合体基体における微細孔の孔径寸法は、0.1-100ミクロンである。
【0017】
いくつかの実施例では、導電基板は、ITO、銀、アルミニウムなどの金属化合物を含有する導電性フィルム又はガラス基板を含む。
【0018】
本明細書の実施例の一態様は、液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法を提供する。この方法は、1)液晶材料、第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマー、第1の開始剤、第2の開始剤、スペーサ粒子を混合し、均一な混合物を得るステップと、2)混合物を積層された二層の導電基板の間に充填してフィルムを製造し、第1の反応により多孔質微細構造の重合体基体を形成し、液晶材料を液晶微滴の形態で重合体基体中に分散させるステップと、3)フィルムに電界を印加し、液晶材料分子と第2の重合性モノマー分子を垂直配向させ、第2の反応により液晶微滴において垂直配向した高分子ネットワークを形成することで、液晶/高分子複合電気制御調光膜を製造するステップとを含む。
【0019】
いくつかの実施例では、第1の反応は、第1の開始剤が第1の重合性モノマーの光重合反応を開始することを含み、第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーであり、第2の反応は、第2の開始剤が第2の重合性モノマーの熱重合反応を開始することを含み、第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーであり、又は第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせである。
【0020】
いくつかの実施例では、第1の反応は、第1の開始剤が第1の重合性モノマーの光重合反応を開始することを含み、第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーであり、第2の反応は、第2の開始剤が第2の重合性モノマーの光重合反応を開始することを含み、第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、第2の重合性モノマーは、棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つである。
【0021】
いくつかの実施例では、第1の反応は、第1の開始剤が第1の重合性モノマーの熱重合反応を開始することを含み、第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーであり、第2の反応は、第2の開始剤が第2の重合性モノマーの光重合反応を開始することを含み、第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、第2の重合性モノマーは、棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つである。
【0022】
いくつかの実施例では、第1の反応は、第1の開始剤が第1の重合性モノマーの熱重合反応を開始することを含み、第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーであり、第2の反応は、第2の開始剤が第2の重合性モノマーの熱重合反応を開始することを含み、第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができ、第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーであり、又は第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせである。
【0023】
いくつかの実施例では、ラジカル光重合性モノマーは、紫外線の照射によりラジカル重合可能なアクリレートモノマー又はオレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、カチオン光重合性モノマーは、紫外線の照射によりカチオン重合可能なオレフィン系モノマー、ビニルエーテルモノマー、エポキシモノマーのうちの一種又は複数種であり、棒状ラジカル光重合性モノマーは、紫外線の照射によりラジカル重合可能な棒状アクリレートモノマー又は棒状オレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、棒状カチオン光重合性モノマーは、紫外線の照射によりカチオン重合可能な棒状エポキシモノマー、棒状ビニルエーテルモノマー、棒状オレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、熱重合性モノマーは、加熱条件下で熱重合可能なエポキシモノマーとメルカプタン系又はアミン系モノマーの混合物であり、又はアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はメルカプト基などを含有するモノマーとイソシアネートモノマーの混合物であり、棒状熱重合性モノマーは、加熱条件下で熱重合可能な棒状エポキシモノマーと棒状メルカプタン系又は棒状アミン系モノマーなどの混合物であり、又はアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はメルカプト基を含有する棒状モノマーと棒状イソシアネートモノマーの混合物である。
いくつかの実施例では、液晶材料、第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマーの原料は、重量部の比で、
液晶材料:10.0~95.0重量部、
第1の重合性モノマー:5.0~80.0重量部、
第2の重合性モノマー:0.1~40.0重量部である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術のPDLCの多孔質状の高分子基体の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】従来技術のPSLCの垂直配向した高分子ネットワークの走査型電子顕微鏡写真である。
図3】本明細書のいくつかの実施例による光重合により重合体基体を製造し且つ熱重合により高分子ネットワークを製造する概略図である。
図4】本明細書のいくつかの実施例によるアクリレートモノマー構造式であり、それぞれヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ラウリルメタクリレート(LMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA600)、ビスフェノールAエトキシレートジメタクリレート(Bis-EMA15)である。
図5】本明細書のいくつかの実施例によるエポキシモノマーとメルカプタンモノマー構造式であり、それぞれN,N'-ジ(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン(NDGA)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(PGDE)、ビスフェノールAエポキシ樹脂(E44)、メルカプタンモノマー(Capure3800)である。
図6】本明細書のいくつかの実施例による棒状エポキシモノマー構造式:2-メチル-1,4-フェニレンビス(4- (4- (エポキシ-2-イル)ブトキシ)ベンゾエート)であり、E4Mと略称される。
図7】本明細書のいくつかの実施例による棒状メルカプタンモノマー構造式:2-メチル-1,4-フェニレンビス(4- (4-メルカプトブトキシ)安息香酸)であり、S4Mと略称される。
図8】本明細書のいくつかの実施例による光開始剤651、熱開始剤DMP-30、カチオン開始剤UV6976の分子構造式である。
図9】本明細書のいくつかの実施例による液晶/高分子複合電気制御調光膜の電気-光学曲線図である。
図10】本明細書のいくつかの実施例による液晶/高分子複合電気制御調光膜の多孔質状の重合体基体と垂直配向した高分子ネットワークを兼ね備えたマイクロ構造の電子顕微鏡写真である。
図11】本明細書のいくつかの実施例による液晶/高分子複合電気制御調光膜の多孔質状の重合体基体と垂直配向した高分子ネットワークを兼ね備えたマイクロ構造の電子顕微鏡写真である。
図12】本明細書のいくつかの実施例による液晶/高分子複合電気制御調光膜の多孔質状の重合体基体と垂直配向した高分子ネットワークを兼ね備えたマイクロ構造の電子顕微鏡写真である。
図13】本明細書のまたいくつかの実施例による液晶/高分子複合電気制御調光膜の電気-光学曲線図である。
図14】本明細書のいくつかの比較例による液晶/高分子複合電気制御調光膜の多孔質状の重合体基体と垂直配向した高分子ネットワークを兼ね備えたマイクロ構造の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書は例示的な実施例の方式でさらに説明され、これらの例示的な実施例は、図面によって詳細に説明される。これらの実施例は限定されるものではなく、これらの実施例において、同じ番号は同じ構造を表す。
【0026】
本明細書の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下では、実施例の記述に使用される必要のある図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の記述における図面は本明細書のいくつかの例又は実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を払うことなく、これらの図面に基づいて本明細書を他の類似したシナリオに適用することもできる。理解すべきこととして、これらの例示的な実施例は、本明細書に記載の技術的解決手段を当業者がよりよく理解して実現できるようにするためだけのものであり、本明細書の範囲をいかなる方式でも制限ものではない。言語環境から自明でない限り又は別途説明しない限り、図面における同じ符号は同じ構造又は操作を代表する。
【0027】
本明細書のいくつかの実施例は、液晶/高分子複合電気制御調光膜を提供し、これは、二層の積層された導電基板を含み、この導電基板は、ITO、銀、アルミニウムなどの金属化合物を含有する導電性フィルム又はガラス基板を含み、二層のこの導電基板の間に多孔質微細構造の重合体基体が挟まれて設置され、多孔質微細構造における孔径の寸法は、0.1-100ミクロンであり、重合体基体の微細孔隙間中に、液晶微滴の形態で液晶材料が分散しており、且つこの液晶材料が分散している液晶微滴において、垂直配向した高分子ネットワークが形成されている。垂直配向とは、導電基板に垂直な配向を指す。
【0028】
本明細書のいくつかの実施例では、ステップ1は、第1の反応を表すためのものであってもよく、第1の反応は、第1の開始剤が第1の重合性モノマーの光重合反応又は熱重合反応を開始することを含み、ステップ2は、第2の反応を表すためのものであってもよく、第2の反応は、第2の開始剤が第2の重合性モノマーの光重合反応又は熱重合反応を開始することを含む。前述した表現方式は、二つの処理に優先順位関係があることを制限するものではない。
【0029】
重合体基体は、第1の重合性モノマーからステップ1の光重合又は熱重合によって製造され、高分子ネットワークは、第2の重合性モノマーからステップ2の光重合又は熱重合によって製造され、且つ第2の重合性モノマーは、液晶材料分子に伴って電界方向に沿って配向して配列することができる。
【0030】
いくつかの実施例では、ステップ1で光重合を用いて重合体基体を製造すると、第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーである。
【0031】
いくつかの実施例では、ステップ1で熱重合を用いて重合体基体を製造すると、第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーである。
【0032】
いくつかの実施例では、第2の重合性モノマーは、棒状モノマーを含んでもよい。いくつかの実施例では、棒状モノマーの幾何学的形状は棒状であり、即ち縦横が異なりが異なり、棒状モノマー分子のアスペクト比は1.1~10であり、棒状モノマー分子は一定の剛性を有し、一般的にはモノマー分子の中央部に剛性構造を有し、且つモノマー分子の末端に分極しやすい基又はフレキシブルな鎖を含有する。いくつかの実施例では、剛性構造は、二重結合、三重結合又はベンゼン環からなる共役系であってもよい。いくつかの実施例では、剛性構造は、六員環、六員複素環、五員環、五員複素環、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン環又はアントラセン環を含んでもよい。いくつかの実施例では、剛性構造は、六員環、六員複素環、五員環、五員複素環、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン環又はアントラセン環などのうちの少なくとも二種を共有結合又は連結基によって連結してなる大アスペクト比構造を含んでもよく、連結基は、ジメチル基、エステル基、ビニル基、エチニル基、アゾ又はシッフ塩基などを含んでもよい。いくつかの実施例では、棒状モノマーは、ペンダント基をさらに有してもよく、シアノ基、メトキシ基、フッ素又は塩素を含んでもよい。いくつかの実施例では、棒状モノマー分子の両側のフレキシブルな鎖(又はフレキシブルな尾鎖と呼ばれる)は、奇数又は偶数個の炭素原子の炭素鎖であってもよい。いくつかの実施例では、棒状モノマーは、棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー又は棒状熱重合性モノマーを含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施例では、ステップ2で光重合を用いて高分子ネットワークを製造すると、第2の重合性モノマーは、棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つである。
【0034】
いくつかの実施例では、ステップ2で熱重合を用いて高分子ネットワークを製造すると、第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーであり、又は第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせである。
【0035】
いくつかの実施例では、ラジカル光重合性モノマーは、アクリレートモノマー又はオレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、且つ紫外線の照射によりラジカル重合可能である。
【0036】
いくつかの実施例では、カチオン光重合性モノマーは、ビニルエーテルモノマー、エポキシモノマー及びオレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、且つ紫外線の照射によりカチオン重合可能である。
【0037】
紫外線の好ましい照射強度と照射時間は、材料系によって異なる。いくつかの実施例では、光重合の紫外線強度は、0.01~100 mw/cmを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線強度は、0.1~90 mw/cmを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線強度は、1~200 mw/cmを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線強度は、5~70 mw/cmを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線強度は、10~60 mw/cmを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線強度は、20~50 mw/cmを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線強度は、30~40 mw/cmを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線の照射時間は、0.1~60 minを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線の照射時間は、1~50 minを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線の照射時間は、10~40 minを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線の照射時間は、20~30 minを含んでもよい。いくつかの実施例では、光重合の紫外線強度は5.0 mw/cmであってもよく、照射時間は、10 minである。
【0038】
いくつかの実施例では、熱重合性モノマーは、加熱条件下で熱重合可能なエポキシモノマーとメルカプタン系又はアミン系モノマーの混合物であり、又はアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はメルカプト基などを含有するモノマーとイソシアネートモノマーの混合物である。
【0039】
いくつかの実施例では、棒状ラジカル光重合性モノマーは、棒状アクリレートモノマー、棒状オレフィン系モノマーのうちの一種又は複数種であり、且つ紫外線の照射によりラジカル重合可能である。
【0040】
いくつかの実施例では、棒状カチオン光重合性モノマーは、棒状エポキシモノマー、棒状ビニルエーテルモノマー、棒状ビニルモノマーのうちの一種又は複数種であり、且つ紫外線の照射によりカチオン重合可能である。
【0041】
いくつかの実施例では、棒状熱重合性モノマーは、棒状エポキシモノマーと棒状メルカプタン系モノマーの混合物であり、又はアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はメルカプト基を含有する棒状モノマーと棒状イソシアネートモノマーの混合物であり、且つ加熱条件下で熱重合可能である。
【0042】
本明細書のいくつかの実施例では、棒状ラジカル光重合性モノマーとして以下の構造式のうちの一種又は複数種を選択してもよく、
ただし、m、nは、1~20であり、x、yは、1~2であり、E、Qは、アクリレート又はエポキシアクリレート又はオレフィン系官能基である。
【0043】
本明細書のいくつかの実施例では、棒状カチオン光重合性モノマーとして以下の構造式のうちの一種又は複数種を選択してもよく、
ただし、m、nは、1~20であり、x、yは、1~2であり、E、Qは、ビニルエーテル又はエポキシ官能基である。
【0044】
本明細書のいくつかの実施例では、棒状熱重合性モノマーとする棒状エポキシと棒状メルカプタンモノマーは、以下の構造式のうちの一種又は複数種を選択してもよく、
ただし、m、nは、1~20であり、x、yは、1~2である。
【0045】
いくつかの実施例では、液晶材料は、正の誘電率異方性を有するコレステリック液晶材料であり、又はネマチック、スメクチック及びスメクチック-コレステリック相転移特性を有する液晶材料である。ネマチック液晶材料は、市販されている液晶材料、例えば、永生華清液晶材料有限公司のSLC-1717、SLC-7011、TEB30Aなど、ドイツメルク液晶材料社のE7、E44、E48、ZLI-1275などを含んでもよいが、それらに限らない。前述した材料とキラル化合物を混合することでコレステリック液晶材料を得ることができ、ここで、キラル化合物は、コレステリルノナノエート、CB15、C15、S811、R811、S1011、R1011などのうちの一種又は複数種を含むが、それらに限らない。
【0046】
いくつかの実施例では、液晶材料は、分子構造(1)の一種又は複数種を含んでもよく、
ただし、M、Nは、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数1~20のシロキサン基、シアノ基、エステル基、ハロゲン、イソチオシアノ基又はニトロ基であり、A、Bは、芳香族環又は脂環アルキルであり、環、六員環、六員複素環、五員環、五員複素環、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン環のうちの少なくとも一つを含み、AとBは、共有結合又は連結基Zを介して連結され、A、Bは、ペンダント基を含有するか又はペンダント基を含有せず、ペンダント基は、ハロゲン、シアノ基又はメチル基であり、x、yはそれぞれ0~4であり、Zは、エステル基、アルキニル基、アルカン基、窒素二重結合又はエーテル結合である。
【0047】
本明細書のいくつかの実施例は、液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法をさらに提供し、この方法は、1)液晶材料、第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマー、第1の開始剤、第2の開始剤、スペーサ粒子を混合し、均一な混合物を得るステップと、2)混合物を積層された二層の導電基板の間に充填してフィルムを製造し、第1の反応により多孔質微細構造の重合体基体を形成し、液晶材料を液晶微滴の形態で重合体基体中に分散させるステップと、3)フィルムに電界を印加し、液晶材料分子と第2の重合性モノマー分子を垂直配向させ、第2の反応により液晶微滴において垂直配向した高分子ネットワークを形成することで、液晶/高分子複合電気制御調光膜を製造するステップとを含む。
【0048】
第1の反応は、重合体基体を製造するための反応である。いくつかの実施例では、第1の反応は、第1の開始剤が第1の重合性モノマーの光重合反応又は熱重合反応を開始することを含む。
【0049】
第2の反応は、高分子ネットワークを製造するための反応である。いくつかの実施例では、第2の反応は、第2の開始剤が第2の重合性モノマーの光重合反応又は熱重合反応を開始することを含む。
【0050】
本明細書のいくつかの実施例は、第1の反応と第2の反応による二段階重合法(即ち、ステップ1とステップ2からなる二段階重合法)を用いて、PDLCフィルムの良好な機械的加工性能とPSLCフィルムの低い駆動電圧を兼ね備えた液晶/高分子複合電気制御調光膜を構築することを提案し、その特徴は、二段階重合法を用いて、重合体基体において垂直配向高分子ネットワークのミクロな形態を形成することである。ここで、微細構造を有する重合体基体は、液晶/高分子複合電気制御調光膜の良好な機械的加工性能を確保し、なお、孔中に存在する垂直配向した高分子ネットワークは、電界作用下での液晶分子の配向の難しさを低減させることによって、液晶/高分子複合電気制御調光膜の駆動電圧を低減させる。理解できるように、第1の反応は、重合体基体を製造するために用いられ、即ち、ステップ1により重合体基体を製造し、第2の反応は、高分子ネットワークを製造するために用いられ、即ち、ステップ2により高分子ネットワークを製造する。
【0051】
本明細書のいくつかの実施例に関わる二段階重合法は、四つの製造ルートを含んでもよく、それぞれ、光-光二段階重合、光-熱二段階重合、熱-光二段階重合及び熱-熱二段階重合を含む。
【0052】
光-光二段階重合とは、ステップ1で光重合を用いて重合体基体を製造し、ステップ2で光重合を用いて高分子ネットワークを製造することを指す。いくつかの実施例では、光-光二段階重合を用いると、第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーであり、第2の重合性モノマーは、棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つである。
【0053】
光-熱二段階重合とは、ステップ1で光重合を用いて重合体基体を製造し、ステップ2で熱重合を用いて高分子ネットワークを製造することを指す。いくつかの実施例では、光-熱二段階重合を用いると、第1の重合性モノマーは、ラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーであり、第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマー、又は棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせである。
【0054】
熱-光二段階重合とは、ステップ1で熱重合を用いて重合体基体を製造し、ステップ2で光重合を用いて高分子ネットワークを製造することを指す。いくつかの実施例では、熱-光二段階重合を用いると、第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーであり、第2の重合性モノマーは、棒状ラジカル光重合性モノマー、棒状カチオン光重合性モノマー、ラジカル光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、ラジカル光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせ、カチオン光重合性モノマーと棒状ラジカル光重合性モノマーの組み合わせ、又はカチオン光重合性モノマーと棒状カチオン光重合性モノマーの組み合わせのうちの一つである。
【0055】
熱-熱二段階重合とは、ステップ1で熱重合を用いて重合体基体を製造し、ステップ2で熱重合を用いて高分子ネットワークを製造することを指す。いくつかの実施例では、熱-熱二段階重合を用いると、第1の重合性モノマーは、熱重合性モノマーであり、第2の重合性モノマーは、棒状熱重合性モノマー、又は棒状熱重合性モノマーと熱重合性モノマーの組み合わせである。
【0056】
前記四つの製造ルートにおいて、光-熱二段階重合により複合材料フィルムを製造する技術的ルートは、図3に示すとおりである。なお、光-光二段階重合、熱-光二段階重合及び熱-熱二段階重合により複合材料フィルムを製造する技術的ルートの原理は、図3と類似しており、ここで例を逐一挙げない。
いくつかの実施例では、ステップ1)で混合物の製造に用いられる液晶材料、第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマーの原料は、重量部の比で、
液晶材料:10.0~95.0重量部、
第1の重合性モノマー:5.0~80.0重量部、
第2の重合性モノマー:0.1~40.0重量部である。
【0057】
垂直配向した高分子ネットワークは、多孔質微細構造の孔径寸法に制限されているため、液晶材料、第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマーのうちの各材料の種類と配合比を変えることで、重合体基体における微細孔の孔径寸法に対する調整と制御を実現でき、さらに、垂直配向した高分子ネットワークの含有量と密度に対する調整と制御を実現し、このように、異なる駆動電圧、電光性能を有する液晶/高分子複合電気制御調光膜を製造することができ、それにより様々な使用需要を満たす。
【0058】
実際の応用では、微細構造を有する重合体基体の孔径の大きさとして、様々な範囲値、例えば、0.1-1ミクロン、1-10ミクロン、10-20ミクロン、20-40ミクロン、40-60ミクロン、60-80ミクロン、80-100ミクロンなどを選択してもよく、該当する垂直配向した高分子ネットワークもこれらの孔径内に限られる。いくつかの実施例では、微細構造を有する重合体基体の孔径として、好ましくは、10ミクロン未満である。
【0059】
本明細書のいくつかの実施例による液晶/高分子複合電気制御調光膜について、その液晶材料は、液晶微滴の形態で重合体基体中に分散し、即ち、重合体基体は、複数の微細孔の微細構造を有する。液晶微滴の位置するマイクロ領域に高分子ネットワークがあり、このような微細構造によれば、液晶/高分子複合電気制御調光膜は、優れた剥離強度と大面積のフレキシブル加工というPDLCフィルムの利点を有するだけでなく、優れた電気-光学性能というPSLCフィルムの利点も有する。
【0060】
当業者に本明細書のいくつかの技術的解決手段をより理解させるために、以下、本明細書の液晶/高分子複合電気制御調光膜を製造する技術的解決手段を具体的な実施例によりさらに詳細に説明する。
【0061】
以下の実施例1-3及び比較例1においていずれもコレステリック液晶材料である市販液晶SLC1717とキラル化合物S811の混合物を選択し、その割合は、94:6である。なお、以下の実施例1-3及び比較例1はいずれも室温環境で実施され、用いられる重合性モノマー(第1の重合性モノマーと第2の重合性モノマー)、開始剤(第1の開始剤と第2の開始剤)の略称及び構造式は、図4~8を参照する。
【0062】
実施例1
実施例1において光-熱二段階重合を用いる。用いられる液晶材料、第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマー、第1の開始剤、第2の開始剤、スペーサ粒子の名称及び配合比は、表1に示され、混合物の総質量は、15 gであり、表1における材料を室温で撹拌して等方性液体を形成し、均一に混合し、酸化インジウム錫メッキされた2枚のITO導電性プラスチックフィルムの間に挟み、ITO導電性プラスチックフィルムの大きさは、0.4*0.4 mであり、ロールで均一にプレスしてフィルムを形成し、このフィルムを室温で波長365 nmの紫外線で照射し、紫外線強度は、5.0 mw/cmであり、照射時間は、10 minであり、一回目の重合(光重合)を行った。続いてフィルムに対して100 Vの電圧を印加し、そして70℃のオーブン中に5 h放置して二回目の重合(熱重合)を行うことで、本明細書の実施例の液晶/高分子複合電気制御調光膜を得た。
【0063】
実施例1で製造した液晶/高分子複合電気制御調光膜に対して、液晶テスターを用いて試験を行ったところ、得られた電気-光学曲線は図9における中実の正三角曲線に示すとおりである。液晶/高分子複合電気制御調光膜について、シクロヘキサンを用いて液晶材料を浸漬除去した後に、乾燥し、得られた走査型電子顕微鏡写真は、図10に示すとおりである。
【0064】
図9において、横座標は、電圧値であり、縦座標は、液晶/高分子複合電気制御調光膜の透過率である。図9における中実の正三角曲線に示すものは、実施例1で得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜の電気-光学曲線であり、実施例1に対応する電気-光学曲線の駆動電圧は約25Vであり、電圧が100Vである場合、液晶/高分子複合電気制御調光膜の透過率は94%である。実施例1で得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜は、比較的低い駆動電圧を有する。
【0065】
図10から分かるように、実施例1で光-熱二段階重合を用いることで得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜は、多孔質微細構造の孔において垂直配向した高分子ネットワークを構築することができ、高分子ネットワークの垂直配向効果が高く、且つ重合体のメッシュに大量存在する。
【0066】

実施例2
実施例2において光-光二段階重合を用いる。用いられる液晶材料、第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマー、第1の開始剤、第2の開始剤、スペーサ粒子の名称及び配合比は、表2に示され、混合物の総質量は、15 gである。表2における原料を室温(25℃)で撹拌して等方性液体を形成し、均一に混合し、酸化インジウム錫メッキされた2枚のITO導電性プラスチックフィルムの間に挟み、ITO導電性プラスチックフィルムの大きさは、0.4*0.4 mであり、ロールで均一にプレスしてフィルムを形成し、このフィルムを室温(25℃)で波長365 nmの紫外線で照射し、紫外線強度は、5.0 mw/cmであり、照射時間は、3~5 minであり、一回目の重合(光重合)を行い、続いて、フィルムに100 Vの電圧を印加し、そして25℃の条件下で、波長254 nmの紫外線で照射し、紫外線強度は、5.0 mw/cmであり、照射時間は、30 minであり、二回目の重合(光重合)を行うことで、本明細書の実施例の液晶/高分子複合電気制御調光膜を得た。
【0067】
実施例2で製造した液晶/高分子複合電気制御調光膜に対して、液晶テスターを用いてその電気-光学曲線を試験し、図9における中実の円形曲線に示す。液晶/高分子複合電気制御調光膜における液晶材料を浸漬除去した後に、乾燥し、得られた走査型電子顕微鏡写真は、図11に示すとおりである。
【0068】
図9における中実の円形曲線に示すものは、実施例2で得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜の電気-光学曲線であり、実施例2に対応する電気-光学曲線の駆動電圧は約25Vであり、電圧が100Vである場合、液晶/高分子複合電気制御調光膜の透過率は90%である。実施例2で得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜は、比較的低い駆動電圧を有するが、同じ電圧でその透過率は、実施例1で得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜の透過率よりも低く、これは、実施例1で光-熱重合を用いることで得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜が、実施例2で光-光重合を用いることで得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜よりも良い光電性能を有することを示した。
【0069】
図11から分かるように、実施例2で光-光二段階重合を用いることで得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜は、多孔質微細構造の孔において垂直配向した高分子ネットワークを構築することができる。
【0070】

実施例3
実施例3において熱-熱二段階重合を用いる。用いられる液晶材料、第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマー、開始剤、スペーサ粒子の名称及び配合比は、表3に示され、混合物の総質量は、15 gである。表3における原料を室温(25℃)で撹拌して等方性液体を形成し、均一に混合し、酸化インジウム錫メッキされた2枚のITO導電性プラスチックフィルムの間に挟み、ITO導電性プラスチックフィルムの大きさは、0.4*0.4 mであり、ロールで均一にプレスしてフィルムを形成し、このフィルムを50℃のオープン中に1 h放置し、一回目の重合(熱重合)を行い、続いて、フィルムに100 Vの電圧を印加し、80℃のオープン中に3 h放置し、二回目の重合(熱重合)を行うことで、本明細書の実施例の液晶/高分子複合電気制御調光膜を得た。
実施例3で製造した液晶/高分子複合電気制御調光膜に対して、液晶テスターを用いてその電気-光学曲線を試験し、図9における中実の逆三角曲線に示す。液晶/高分子複合電気制御調光膜における液晶材料を浸漬除去した後に、乾燥し、得られた走査型電子顕微鏡写真は、図12に示すとおりである。
図9における中実の逆三角曲線に示すように、実施例3で得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜に対応する電気-光学曲線の駆動電圧は約21Vであり、電圧が100Vである場合、液晶/高分子複合電気制御調光膜の透過率は97%である。実施例3で得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜は、比較的低い駆動電圧を有し、その駆動電圧は、実施例1と実施例2で得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜の駆動電圧よりも低く、これは、実施例3で熱-熱重合を用いることで得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜が、良好な光電性能を有することを示した。しかしながら、実際の生産中、光重合のステップは、熱重合のステップの操作よりも便利かつ簡単であり、総合的に考えると、光-熱重合を用いる実施例1は、熱-熱重合を用いる実施例3よりも実際の工業生産に適する。
図12から分かるように、実施例3で熱-熱二段階重合を用いることで得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜は、多孔質微細構造の孔において垂直配向した高分子ネットワークを構築することができる。

ここで説明すべきこととして、本実施例3の製造ルートは、熱-熱二段階重合であり、二段階で重合を熱開始するために用いられる第1の開始剤と第2の開始剤は、同一の開始剤である。
【0071】
比較例1
用いられる液晶材料、アクリレートモノマー、開始剤、ガラスビーズについて、名称及び配合比は、表4に示され、混合物の総質量は、35 gである。表における試料を室温(25℃)で撹拌して等方性液体を形成し、均一に混合し、酸化インジウム錫(ITO)メッキされた2枚のITO導電性プラスチックフィルムの間に挟み、ITO導電性プラスチックフィルムの大きさは、1*1 mであり、ロールで均一にプレスしてフィルムを形成した。このフィルムを室温(2525℃)で波長365 nmの紫外線で照射し、紫外線強度は、5.0 mW/cmであり、照射時間は、10 minであり、複合材料フィルムを得た。
【0072】

液晶テスターを用いて比較例1で製造した複合材料フィルムの電気-光学曲線を試験し、図9における中実の正方形曲線に示す。
【0073】
図9における正方形曲線に示すものは、比較例1で得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜の電気-光学曲線であり、比較例1に対応する電気-光学曲線の駆動電圧は約27Vであり、電圧が100Vである場合、液晶/高分子複合電気制御調光膜の透過率は75%である。図9に示すように、実施例1、2及び3を比較例1と比較することで、実施例1、2及び3の駆動電圧が比較例1の駆動電圧よりも明らかに小さいことが分かり、これは、本明細書のいくつかの実施例の材料が複合電気制御調光膜の駆動電圧に対してより良好な低減効果を有することを示した。
【0074】
比較例2
比較例2において光-熱二段階重合を用いる。用いられる液晶材料、第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマー、第1の開始剤、第2の開始剤、スペーサ粒子の名称及び配合比は、表1に示され、混合物の総質量は、15 gであり、表1における材料を室温で撹拌して等方性液体を形成し、均一に混合し、酸化インジウム錫メッキされた2枚のITO導電性プラスチックフィルムの間に挟み、ITO導電性プラスチックフィルムの大きさは、0.4*0.4 mであり、ロールで均一にプレスしてフィルムを形成し、このフィルムを室温で波長365 nmの紫外線で照射し、紫外線強度は、5.0 mw/cmであり、照射時間は、10 minであり、一回目の重合(光重合)を行った。続いてフィルムに対して100 Vの電圧を印加し、そして70℃のオーブン中に5 h放置して二回目の重合(熱重合)を行うことで、本明細書の実施例の液晶/高分子複合電気制御調光膜を得た。
【0075】
比較例2で製造した液晶/高分子複合電気制御調光膜に対して、液晶テスターを用いて試験を行ったところ、得られた電気-光学曲線は図13における中実の正方形曲線に示すとおりである。液晶/高分子複合電気制御調光膜について、シクロヘキサンを用いて液晶材料を浸漬除去した後に、乾燥し、得られた走査型電子顕微鏡写真は、図14に示すとおりである。
【0076】
図13において、横座標は、電圧値であり、縦座標は、液晶/高分子複合電気制御調光膜の透過率である。図13における中実の正方形曲線に示すように、実施例1に対応する電気-光学曲線の駆動電圧は約25Vであり、電圧が100Vである場合、液晶/高分子複合電気制御調光膜の透過率は94%である。図13における中実の円形曲線に示すように、比較例2で得られた電気-光学曲線の駆動電圧は約43Vであり、電圧が100Vである場合、液晶/高分子複合電気制御調光膜の透過率は80%である。
【0077】
実施例1と比較例2を比較して分析し、図13から分かるように、実施例1で得られた複合電気制御調光膜の駆動電圧は、比較例2で得られた複合電気制御調光膜の駆動電圧よりも明らかに小さい。従って、比較例2で第2の重合性モノマーの一部のみとして棒状モノマーを用いる(即ち、棒状エポキシモノマーと非棒状メルカプタンモノマーを用いる)ことに比べて、実施例1における第2の重合性モノマーの全ては、棒状モノマー(即ち、棒状エポキシモノマーと棒状メルカプタンモノマー)を用いることで、複合電気制御調光膜の駆動電圧の低減に対してより高い効果を有する。
【0078】
実施例2に対応する図14と実施例1に対応する図10を比較することで分かるように、比較例2における第2の重合性モノマーとして棒状エポキシモノマーと非棒状メルカプタンモノマーを用いることで得られた液晶/高分子複合電気制御調光膜は、大量の垂直配向した高分子ネットワークを良好に構築することができず、光-熱重合反応を用いる場合、棒状エポキシモノマーと棒状メルカプタンモノマーを第2の重合性モノマーとして用いる(即ち全ての第2の重合性モノマーが全て棒状モノマーを用いる)ことで、配向性が良好であり、数の多い垂直高分子ネットワークを形成することができ、且つこの垂直高分子ネットワークは、複合電気制御調光膜に比較的低い駆動電圧を持たせ、比較的良好な電光性能を持たせることができる。
【0079】
上記から分かるように、比較例2においてステップ2の重合の時に棒状エポキシモノマーと非棒状メルカプタンモノマーを用いると、形成した垂直配向した高分子ネットワークが比較的に少なく、液晶分子の配向への支援作用が低減し、それにより駆動電圧を良好に低減させることができず、その駆動電圧が実施例1の駆動電圧よりも高い。実施例1において、ステップ2の重合の時に棒状エポキシモノマーと棒状メルカプタンモノマーの組み合わせを用い、これら二種のモノマーは、ステップ1の紫外線重合時に反応が開始されないが、ステップ2の加熱重合の時に十分に反応でき、それにより配向性が比較的に良好であり、数の多い垂直高分子ネットワークを形成する。これらの垂直高分子ネットワークは、調光膜の通電過程において、液晶分子が電界方向に配向して配列する際に、液晶分子が受ける高分子集団のアンカリング力の軽減に役立ち、それにより、低い駆動電圧で、実施例1で得られた複合電気制御調光膜に比較的に良好な電光性能を持たせることができる。
【0080】
従来の液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造技術では、単独した一段階重合、例えば紫外線重合又は熱重合により製造することがある。一段階法は、PDLC多孔質状重合体基体を構築し、一方では、液晶分子の配向に対して大きなアンカリング力を加え、それによりフィルムの光学状態の変換時に必要な駆動電圧を増加させ、実際の使用に有利ではない。他方では、単独した一段階法は、相対的には製造プロセスと調整制御手段が比較的に単一であり、これは、複合調光膜のミクロな形態の調整と制御にも不利である。
【0081】
本明細書のいくつかの実施例の液晶/高分子複合電気制御調光膜の製造方法では、二段階重合法を用い、まず、ステップ1の重合反応により、従来技術におけるPDLCと類似した多孔質微細構造の重合体基体を構築し、さらにステップ2の重合反応により多孔質微細構造の孔において垂直配向した高分子ネットワークを構築することによって、独特な複合ミクロ構造を実現する。まず、このような複合微細構造は、高分子基体による液晶分子の配向へのアンカリング力を効果的に低下させることができ、それによってフィルムの駆動電圧を低減させる効果を果たす。他方では、二段階重合法の製造プロセスと調整制御手段がより豊であり、重合条件と重合プロセスをより詳細かつ効果的に変えることができ、それによってフィルムの複合微細構造を調整制御する。
【0082】
これに加えて、本明細書のいくつかの実施例の液晶/高分子複合調光膜の二段階重合法におけるステップ1の重合反応とステップ2の重合反応は、それぞれ異なる重合体モノマー系を使用してもよく、例えば、光-熱二段階重合の時、前者の第1の重合性モノマーとしてラジカル光重合性モノマー又はカチオン光重合性モノマーを使用し、後者の第2の重合性モノマーは、棒状熱重合モノマーである。従って、ステップ1の光重合プロセスでは、第2の重合性モノマーは、反応に参加しないため、ステップ1とステップ2の重合反応の分離を確保することができる。この上で、ステップ1の重合条件(紫外線強度、照射時間など)を制御ことにより、体系内に小分子モノマーが残存してフィルムの各方面の性能を損なうことなく、第1の重合性モノマーを十分に反応させることができる。それと同時に、第2の重合性モノマーもステップ1の重合反応に参加することがなく、ステップ1の重合後に構成される多孔質状重合体基体に棒状又は液晶性モノマーを含ませないことを確保し、即ち、液晶分子に対してより低いアンカリング力を有し、駆動電圧の低減に対してより高い効果を有する。
【0083】
以上では、基本的な概念について説明したが、上述の発明の開示は、当業者にとっては単なる例示であり、本明細書の限定を構成するものではないことは明らかである。ここでは明示されていないが、当業者は本明細書に対して様々な変更、改良及び修正を加える可能性がある。このような変更、改良及び修正は、本明細書において提案されているため、このような変更、改良、修正は依然として本明細書の例示的な実施形態の精神と範囲に属する。
図1
図2
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図7
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図10
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