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  • 特開-温度センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054906
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20210101AFI20240411BHJP
【FI】
G01K1/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161361
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 達雄
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CE01
(57)【要約】
【課題】 配線に力が掛かっても押さえ付け力が変化し難く安定した接触を得ることができる温度センサを提供すること。
【解決手段】 円筒状又は棒状又は棒状の被測定物Bを挟持可能な板バネ部材2と、板バネ部材に先端部が固定されたフレキシブル基板3と、フレキシブル基板の先端部に設けられた感熱素子4とを備え、板バネ部材が、被測定物を挟持する一対の板バネ延出部2aを備え、フレキシブル基板の先端部が、一対の板バネ延出部の少なくとも一方に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状又は棒状又は棒状の被測定物を挟持可能な板バネ部材と、
前記板バネ部材に先端部が固定されたフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の先端部に設けられた感熱素子とを備え、
前記板バネ部材が、前記被測定物を挟持する一対の板バネ延出部を備え、
前記フレキシブル基板の先端部が、前記一対の板バネ延出部の少なくとも一方に固定されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記板バネ部材が、前記一対の板バネ延出部の基端に接続された中間支持部を備え、
前記中間支持部に固定され前記フレキシブル基板の基端部が接続された取付基板と、
前記取付基板に先端が固定され前記フレキシブル基板の基端部に電気的に接続されたリード線とを備えていることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記フレキシブル基板及び前記感熱素子を、それぞれ一対備え、
前記一対の板バネ延出部の両方に、それぞれ前記感熱素子が設けられた前記フレキシブル基板の先端部が固定されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記フレキシブル基板の少なくとも一部が、前記板バネ延出部の内面側に配されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記フレキシブル基板が、前記板バネ延出部に固定された前記先端部以外の少なくとも一部が、前記板バネ延出部に対して隙間を介して撓んで配されていることを特徴とする温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒バッテリーや配管等に取り付け可能な温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
円筒バッテリーに付設する温度センサとして、例えば、特許文献1には、円筒型電池の外周曲面の形状に対応するように湾曲した測温面を有する温度センサと、温度センサを収容する収容部、測温面と外周曲面との当接が可能であるように収容部を構成する壁体に設けられる開口部、及び、当接の際に円筒型電池と温度センサとに挟まれることになる空間に向けて壁体から突出する凸部、を有するセンサ収容体と、を備えた温度センサの収容構造が記載されている。
【0003】
この温度センサの収容構造では、測温素子が、センサ本体内の角筒状ハウジングの後端面の開口から挿入されて、測温素子の後端には、測温素子に接続された一対のリード線が延出しており、一対のリード線はそれぞれ一対の電線の導体部分に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-100952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、円筒バッテリーに温度センサを取り付ける場合、円筒バッテリーの膨張、収縮に対して安定した押し付け力で温度センサの計測面を円筒バッテリーの計測位置に押さえ付ける構造が必要になる。上記特許文献1の技術では、配線の引き回しが難しく、円筒バッテリー等に取り付けた状態で配線に力が掛かると、押さえ付け力が変化したり、組立状態により円筒バッテリーの軸が傾く等により温度センサとの接触が安定しなくなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、配線に力が掛かっても押さえ付け力が変化し難く安定した接触を得ることができる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、円筒状又は棒状の被測定物を挟持可能な板バネ部材と、前記板バネ部材に先端部が固定されたフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の先端部に設けられた感熱素子とを備え、前記板バネ部材が、前記被測定物を挟持する一対の板バネ延出部を備え、前記フレキシブル基板の先端部が、前記一対の板バネ延出部の少なくとも一方に固定されていることを特徴とする。
【0008】
この温度センサでは、フレキシブル基板の先端部が、一対の板バネ延出部の少なくとも一方に固定されているので、被測定物に板バネ部材を取り付ける際や被測定物が膨張、収縮した際に、一対の板バネ延出部が開くなど変形してもフレキシブル基板が柔軟に追従して、配線抵抗が抑制されると共に板バネ部材の挟持力や接触圧を安定して保つことができる。また、薄い板バネ延出部に薄いフレシキブル基板の先端部が固定された構造により被測定物を挟持し保持するため、円筒バッテリー等の被測定物が複数配置された狭いスペースにおいても固定が容易にできる。さらに、感熱素子が薄いフレキシブル基板及び薄い板バネ延出部を介して被測定物に近接でき、測温特性が向上する。また、フレキシブル基板を板バネ延出部に張り付けるのみで感熱素子を板バネ部材に取り付けることができ、組立工程の容易化を図ることができる。
【0009】
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記板バネ部材が、前記一対の板バネ延出部の基端に接続された中間支持部を備え、前記中間支持部に固定され前記フレキシブル基板の基端部が接続された取付基板と、前記取付基板に先端が固定され前記フレキシブル基板の基端部に電気的に接続されたリード線とを備えていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、中間支持部に固定されフレキシブル基板の基端部が接続された取付基板と、取付基板に先端が固定されフレキシブル基板の基端部に電気的に接続されたリード線とを備えているので、取付基板を介してフレキシブル基板とリード線とを容易に接続することができる。また、取付基板を介しているので、たとえリード線に力が加わったとしても、フレキシブル基板に配線抵抗が加わることを防止できる。
【0010】
第3の発明に係る温度センサは、第1又は第2の発明において、前記フレキシブル基板及び前記感熱素子を、それぞれ一対備え、前記一対の板バネ延出部の両方に、それぞれ前記感熱素子が設けられた前記フレキシブル基板の先端部が固定されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、一対の板バネ延出部の両方に、それぞれ感熱素子が設けられたフレキシブル基板の先端部が固定されているので、一対の板バネ延出部の一方に取り付けられたフレキシブル基板の感熱素子を温度測定用とし、一対の板バネ延出部の他方に取り付けられたフレキシブル基板の感熱素子を温度補償用とすることで、より高精度な温度測定が可能になる。
【0011】
第4の発明に係る温度センサは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記フレキシブル基板の少なくとも一部が、前記板バネ延出部の内面側に配されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、フレキシブル基板の少なくとも一部が、板バネ延出部の内面側に配されているので、フレキシブル基板の全体が板バネ延出部の外側に配されている場合に比べて、他の部材等に接触して損傷することを抑制できる。また、フレキシブル基板の板バネ延出部の内面側に配されている部分が、被測定物に近接するため、フレキシブル基板を介して被測定物の熱が感熱素子に伝わり易くなり、熱応答性等が向上する。
【0012】
第5の発明に係る温度センサは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記フレキシブル基板が、前記板バネ延出部に固定された前記先端部以外の少なくとも一部が、前記板バネ延出部に対して隙間を介して撓んで配されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、フレキシブル基板が、板バネ延出部に固定された先端部以外の少なくとも一部が、板バネ延出部に対して隙間を介して撓んで配されているので、板バネ延出部が開いて変形する場合にフレキシブル基板が引っ張られても、撓んで余裕があり、逃げがあることで、フレキシブル基板に強い張力が加わることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、フレキシブル基板の先端部が、一対の板バネ延出部の少なくとも一方に固定されているので、被測定物に板バネ部材を取り付ける際や被測定物が膨張、収縮した際に、一対の板バネ延出部が開くなど変形してもフレキシブル基板が柔軟に追従して、配線抵抗が抑制されると共に板バネ部材の挟持力や接触圧を安定して保つことができる。
したがって、本発明の温度センサでは、円筒バッテリー等が膨張、収縮して配線に力が掛かっても押さえ付け力が変化し難く安定した接触を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る温度センサの一実施形態において、被測定物に取り付けた状態の温度センサを示す基端側から視た斜視図である。
図2】本実施形態において、被測定物及び温度センサを示す基端側から視た分解斜視図である。
図3】本実施形態において、被測定物に取り付けた状態の温度センサを示す先端側から視た斜視図である。
図4】本実施形態において、被測定物及び温度センサを示す先端側から視た分解斜視図である。
図5】本実施形態において、温度センサを示す先端側から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る温度センサの一実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態の温度センサ1は、図1から図5に示すように、円筒状又は棒状の被測定物Bを挟持可能な板バネ部材2と、板バネ部材2に先端部が固定されたフレキシブル基板3と、フレキシブル基板3の先端部に設けられた感熱素子4とを備えている。
上記板バネ部材2は、被測定物Bを挟持する一対の板バネ延出部2aを備えている。
すなわち、板バネ部材2は、一対の板バネ延出部2aを備えた断面略U字状の板バネである。
上記フレキシブル基板3の先端部は、一対の板バネ延出部2aの少なくとも一方に固定されている。
【0017】
上記被測定物Bは、例えば円筒バッテリーや配管等である。
上記感熱素子4は、例えばチップサーミスタ、フレーク型サーミスタ、薄膜サーミスタ等である。
上記板バネ部材2は、ステンレスや銅板等の金属板で形成されている。
上記一対の板バネ延出部2aは、被測定物Bの形状に対応して被測定物Bに密着可能に湾曲した部分を有している。
【0018】
上記板バネ部材2は、一対の板バネ延出部2aの基端に接続された中間支持部2bを備えている。
上記中間支持部2bは、長方形の平板状に形成されている。
また、本実施形態の温度センサ1は、中間支持部2bに固定されフレキシブル基板3の基端部が接続された取付基板5と、取付基板5に先端が固定されフレキシブル基板3の基端部に電気的に接続されたリード線6とを備えている。
上記フレキシブル基板3及び感熱素子4は、それぞれ一対備え、一対の板バネ延出部2aの両方に、それぞれ感熱素子4が設けられたフレキシブル基板3の先端部が固定されている。
【0019】
また、フレキシブル基板3の少なくとも一部は、板バネ延出部2aの内面側(一対の板バネ延出部2aの対向面側)に配されている。
すなわち、フレキシブル基板3は、先端部が板バネ延出部2aの外面にエポキシ樹脂部7によって張り付けられていると共に封止されている。そして、フレキシブル基板3は、板バネ延出部2aの途中に形成された第1スリット8aを通って板バネ延出部2aの内面側に配された後、板バネ延出部2aの基端側に形成された第2スリット8bを通って再び板バネ延出部2aの外面側に配されている。
【0020】
さらに、フレキシブル基板3は、板バネ延出部2aに固定された先端部以外の少なくとも一部が、板バネ延出部2aに対して隙間を介して撓んで配されている。
すなわち、フレキシブル基板3は、図5に示すように、少なくとも第1スリット8aから第2スリット8bまでの板バネ延出部2aの内面側に配されている部分では、板バネ延出部2aに対して隙間を介して湾曲して撓んでいる。
上記第1スリット8aは、板バネ部材2を被測定物Bに取り付けた際に、通したフレキシブル基板3を被測定物Bと板バネ延出部2aとの間に挟まない位置に形成されている。
【0021】
フレキシブル基板3の基端部は、取付基板5の前面にハンダ付けされた状態で、基端封止樹脂部5aで封止されている。
上記リード線6の先端には、リード側コネクタ9aが接続され、リード側コネクタ9aが、基板側コネクタ9bを介して取付基板5の背面に接続されている。
【0022】
なお、基板側コネクタ9bは、取付基板5のスルーホールにハンダで電気的に接続されると共に絶縁のためにコネクタ固定樹脂部5dにより絶縁封止されている。
上記板バネ部材2は、中間支持部2bに形成された一対の貫通孔2cと取付基板5に形成された一対の基板側孔5cとに一対の固定用ファスナー5eを通して、取付基板5の前面に固定されている。
【0023】
このように本実施形態の温度センサ1では、フレキシブル基板3の先端部が、一対の板バネ延出部2aの少なくとも一方に固定されているので、被測定物Bに板バネ部材2を取り付ける際や被測定物Bが膨張、収縮した際に、一対の板バネ延出部2aが開くなど変形してもフレキシブル基板3が柔軟に追従して、配線抵抗が抑制されると共に板バネ部材2の挟持力や接触圧を安定して保つことができる。
【0024】
特に、フレキシブル基板3が、板バネ延出部2aに固定された先端部以外の少なくとも一部が、板バネ延出部2aに対して隙間を介して撓んで配されているので、板バネ延出部2aが開いて変形する場合にフレキシブル基板3が引っ張られても、撓んで余裕があり、逃げがあることで、フレキシブル基板3に強い張力が加わることを防止できる。
【0025】
また、薄い板バネ延出部2aに薄いフレキシブル基板3の先端部が固定された構造により被測定物Bを挟持し保持するため、円筒バッテリー等の被測定物Bが複数配置された狭いスペースにおいても固定が容易にできる。さらに、感熱素子4が薄いフレキシブル基板3及び薄い板バネ延出部2aを介して被測定物Bに近接でき、測温特性が向上する。また、フレキシブル基板3を板バネ延出部2aに張り付けるのみで感熱素子4を板バネ部材2に取り付けることができ、組立工程の容易化を図ることができる。
【0026】
また、中間支持部2bに固定されフレキシブル基板3の基端部が接続された取付基板5と、取付基板5に先端が固定されフレキシブル基板3の基端部に電気的に接続されたリード線6とを備えているので、取付基板5を介してフレキシブル基板3とリード線6とを容易に接続することができる。また、取付基板5を介しているので、たとえリード線6に力が加わったとしても、フレキシブル基板3に配線抵抗が加わることを防止できる。
【0027】
また、一対の板バネ延出部2aの両方に、それぞれ感熱素子4が設けられたフレキシブル基板3の先端部が固定されているので、一対の板バネ延出部2aの一方に取り付けられたフレキシブル基板3の感熱素子4を温度測定用とし、一対の板バネ延出部2aの他方に取り付けられたフレキシブル基板3の感熱素子4を温度補償用とすることで、より高精度な温度測定が可能になる。
【0028】
さらに、フレキシブル基板3の少なくとも一部が、板バネ延出部2aの内面側に配されているので、フレキシブル基板3の全体が板バネ延出部2aの外側に配されている場合に比べて、他の部材等に接触して損傷することを抑制できる。また、フレキシブル基板3の板バネ延出部2aの内面側に配されている部分が、被測定物Bに近接するため、フレキシブル基板3を介して被測定物Bの熱が感熱素子4に伝わり易くなり、熱応答性等が向上する。
【0029】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…温度センサ、2…板バネ部材、2a…板バネ延出部、2b…中間支持部、3…フレキシブル基板、4…感熱素子、5…取付基板、6…リード線、B…被測定物
図1
図2
図3
図4
図5