(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054908
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】シート状部材の巻取装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/44 20060101AFI20240411BHJP
B60J 3/00 20060101ALI20240411BHJP
B60R 5/04 20060101ALI20240411BHJP
E06B 9/56 20060101ALI20240411BHJP
E06B 9/50 20060101ALI20240411BHJP
B65H 18/04 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
E06B9/44
B60J3/00 H
B60R5/04 T
E06B9/56 A
E06B9/50
B65H18/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161365
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】595143333
【氏名又は名称】桑野工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
【テーマコード(参考)】
2E042
3D022
3F055
【Fターム(参考)】
2E042AA06
2E042BA02
2E042CA02
3D022BA03
3D022BB01
3F055CA01
3F055CA24
3F055FA07
(57)【要約】
【課題】バレルと軸受部材との間のガタツキを抑制可能とするとともに、バネ部材と支持部材並びにバネ部材とバネ受部材との連結を迅速かつ確実に行うことを可能とする。
【解決手段】バレルの両端部に挿嵌される軸受部材の嵌入部外周に設けた複数の凸部のうち、少なくとも2箇所の凸部は、規制部側の幅を前記バレル内周に形成した溝の幅よりも僅かに広くするとともに、前記規制部との間に間隙を設け、前記間隙を設けた位置から先端側へ向かう中途位置までスリットを形成した。また、バネ部材の端部に連結されるバネ受部材及び第2の支持部材の支持軸には、前記バネ部材の端部に設けた係止部を挿通可能なスリットを設けるとともに、前記スリットの終端部手前には当該スリットと直交する状態で係止フックと当該係止フックを操作するための操作片とを一体に設け、前記操作片の頭部は、前記バネ受部材及び支持軸の外周から僅かに突出する状態とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に設置されるトノカバーやサンシェード等のシート状部材を巻き取るための巻取装置であって、
外周に前記シート状部材が取付けられるとともに、内周に軸方向に沿って複数の溝が形成された中空円筒状のバレルと、
前記バレル内に収納されるバネ部材と、
前記バレルとバネ部材との間に介挿されるチューブ部材と、
前記バレル内周の溝と係合する複数の凸部が外周に形成され、前記バネ部材の一端を係止した状態で前記バレル内に収納されるバネ受部材と、
前記バレル内周の溝と係合する複数の凸部を外周に形成した円筒状の嵌入部と、当該嵌入部の基端側に設けた径大な規制部とを有し、前記バレルの軸方向両端部に挿嵌される第1,第2の軸受部材と、
前記第1の軸受部材に挿通されて前記バレルの一端を回転可能に支持する支持軸を有する第1の支持部材と、
前記第2の軸受部材に挿通されて前記バレルの他端を回転可能に支持するとともに、前記バネ部材の他端が係止される支持軸を有する第2の支持部材と、を備え、
前記軸受部材の嵌入部外周に形成した複数の凸部のうち、少なくとも2箇所の凸部は、規制部側の幅を前記バレル内周に形成した溝の幅よりも僅かに広くするとともに、前記規制部との間に間隙を設け、前記間隙を設けた位置から先端側へ向かう中途位置までスリットを形成した
ことを特徴とするシート状部材の巻取装置。
【請求項2】
前記バネ受部材及び第2の支持部材の支持軸には、前記バネ部材の端部に挿入される側の端部に、前記バネ部材の端部に設けた係止部を挿通可能なスリットを設けるとともに、前記スリットの終端部手前には当該スリットと直交する状態で係止フックと当該係止フックを操作するための操作片とを一体に設け、前記操作片の頭部は、前記バネ受部材及び支持軸の外周から僅かに突出する状態としたことを特徴とする請求項1記載のシート状部材の巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に設置されるトノカバーやサンシェード等のシート状部材を巻き取るための巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の荷室には、荷物を窓の外から見えないようにしたり、荷物に直射日光が当たるのを防いだりするために、荷室の上部を覆う可撓性のトノカバー(シート状部材)が設けられることがある。
また、自動車のドア等には、防眩のためや車内のプライバシーを確保するため等に、可撓性のサンシェード(シート状部材)が設けられることがある。
前記トノカバーやサンシェードは、一端が巻取装置に固着され、必要に応じて巻取装置から引き出したり、巻取装置に巻き取ったりするように構成されている。
【0003】
自動車に設置されるサンシェード装置としては、例えば、特許文献1に示すようなものがある。
特許文献1に開示されているサンシェード装置は、可撓性のシェードと、前記シェードを巻き取るための中空円筒状のシャフトと、前記シャフトの一端に嵌入される軸受用のブッシュと、前記ブッシュを介して前記シャフトの一端を回転可能な状態で支持する支持部材と、前記シャフトの内部に軸線方向に沿ってスライド可能な状態で嵌合するスライダと、前記スライダに一端が連結され、前記支持部材に他端が連結されるバネ部材と、前記シャフトを収納するとともに前記シェードを引き出すための引出口を有するケースとを備えている。
前記シャフトの内周面には、軸線方向に沿って連続的に延びる複数本の突条が形成されており、また、前記ブッシュ及びスライダの外周面には、軸線方向に沿って延びる複数本の突条が形成されている。前記ブッシュ及びスライダは、前記シャフトの断面形状に対応した異形断面形状を有しており、前記シャフトの内部に回転拘束された状態で嵌合している。
また、前記バネ部材の一端は、前記スライダに形成された連結孔に挿入することで、当該スライダに連結されるとともに、前記バネ部材の他端は、前記支持部材に形成された連結孔に挿入することで、当該支持部材に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然るに、特許文献1に開示されているサンシェード装置においては、シャフトの内周面に形成した複数の突条の間に、ブッシュの外周面に形成した複数の突条を嵌合することにより、前記シャフトの一端に前記ブッシュを保持しているが、前記突条同士の隙間を狭くすると前記ブッシュをシャフトに挿入し難くなるという問題があり、隙間を広くすると回転方向へのガタツキが大きくなるとともに、前記ブッシュがシャフトから脱落し易くなるという問題があった。
また、バネ部材の端部を、支持部材及びスライダに形成した連結孔に挿入することにより、前記バネ部材と支持部材並びにバネ部材とスライダとを連結するようにしているが、前記バネ部材の直径は通常1mm程度であるため、その端部を連結孔へ挿入する作業は手間が掛かり面倒であるとともに、前記バネ部材の端部を単に前記連結孔に挿入しているだけであるため、状況によっては前記連結孔から抜脱するおそれがあった。
なお、前記の問題は、トノカバー装置等、サンシェード装置以外の巻取装置にも存在する。
【0006】
本発明は、前記種々の問題点に鑑み、バレルと軸受部材との間のガタツキや脱落を抑制可能とするとともに、バネ部材と支持部材並びにバネ部材とバネ受部材との連結を迅速かつ確実に行うことを可能としたシート状部材の巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のシート状部材の巻取装置は、外周にシート状部材が取付けられるとともに、内周に軸方向に沿って複数の溝が形成された中空円筒状のバレルと、前記バレル内に収納されるバネ部材と、前記バレルとバネ部材との間に介挿されるチューブ部材と、前記バレル内周の溝と係合する複数の凸部が外周に形成され、前記バネ部材の一端を係止した状態で前記バレル内に収納されるバネ受部材と、前記バレル内周の溝と係合する複数の凸部を外周に形成した円筒状の嵌入部と、当該嵌入部の基端側に設けた径大な規制部とを有し、前記バレルの軸方向両端部に挿嵌される第1,第2の軸受部材と、前記第1の軸受部材に挿通されて前記バレルの一端を回転可能に支持する支持軸を有する第1の支持部材と、前記第2の軸受部材に挿通されて前記バレルの他端を回転可能に支持するとともに、前記バネ部材の他端が係止される支持軸を有する第2の支持部材と、を備え、前記軸受部材の嵌入部外周に形成した複数の凸部のうち、少なくとも2箇所の凸部は、規制部側の幅を前記バレル内周に形成した溝の幅よりも僅かに広くするとともに、前記規制部との間に間隙を設け、前記間隙を設けた位置から先端側へ向かう中途位置までスリットを形成したことを特徴とする。
また、前記バネ受部材及び第2の支持部材の支持軸には、前記バネ部材の端部に挿入される側の端部に、前記バネ部材の端部に設けた係止部を挿通可能なスリットを設けるとともに、前記スリットの終端部手前には当該スリットと直交する状態で係止フックと当該係止フックを操作するための操作片とを一体に設け、前記操作片の頭部は、前記バネ受部材及び支持軸の外周から僅かに突出する状態としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシート状部材の巻取装置においては、バレルの両端部に挿嵌される軸受部材の嵌入部外周に形成した複数の凸部のうち、少なくとも2箇所の凸部は、規制部側の幅を前記バレル内周に形成した溝の幅よりも僅かに広くするとともに、前記規制部との間に間隙を設け、前記間隙を設けた位置から先端側へ向かう中途位置までスリットを形成したので、前記凸部はスリットを利用して内側方向へ押し窄めた状態で前記溝に嵌入され、かつ、元の形状に復帰しようとする力によって前記溝に圧接する結果、バレルと軸受部材との間にガタツキが生じたり、バレルから軸受部材が脱落したりするのを防ぐことができる。
また、バネ受部材及び第2の支持部材の支持軸には、バネ部材の端部に挿入される側の端部に、前記バネ部材の端部に設けた係止部を挿通可能なスリットを設けるとともに、前記スリットの終端部手前には当該スリットと直交する状態で係止フックと当該係止フックを操作するためのレバー体とを一体に設けたので、前記バネ受部材及び支持軸の端部をバネ部材の端部に挿入すると同時に、前記係止部をスリットに挿通してその終端部と係止フックとの間に係止することにより、前記バネ部材はバネ受部材及び支持軸に対して容易にかつ抜脱不能に取付けることができる。
その上、前記係止フックと一体に設けた操作片の頭部は、前記バネ受部材及び支持軸の外周から僅かに突出する状態となっているので、前記バネ受部材をバレルに、前記支持軸を軸受部材にそれぞれ挿通すると、前記操作片の頭部は内側方向へ強制的に押し込まれ、前記係止フックがロック状態となる結果、前記係止部がスリットから抜脱するのを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るシート状部材の巻取装置を示す斜視図である。
【
図3】巻取装置を構成するバレルを示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のA-A線における断面斜視図である。
【
図4】同じく、巻取装置を構成するバネ部材を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図5】同じく、巻取装置を構成するバネ受部材を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は正面図、(e)は背面図、(f)は(d)のB-B線における断面図である。
【
図6】同じく、巻取装置を構成するバネ受部材を示す斜視図である。
【
図7】同じく、巻取装置を構成する軸受部材を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は正面図、(e)は(a)のC-C線における断面図である。
【
図8】同じく、巻取装置を構成する軸受部材を示す斜視図である。
【
図9】同じく、巻取装置を構成する第1の支持部材を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は底面図、(c)は(b)のD-D線における断面図である。
【
図10】同じく、巻取装置を構成する第2の支持部材の支持座を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は底面図、(c)は(b)のE-E線における断面図である。
【
図11】同じく、巻取装置を構成する第2の支持部材の支持軸を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は正面図、(e)は背面図、(f)は(d)のF-F線における断面図である。
【
図12】同じく、巻取装置を構成する第2の支持部材の支持軸を示す斜視図である。
【
図13】第1の軸受部材をバレルに取付ける状態を示す説明図である。
【
図14】第2の支持部材の支持軸にバネ部材の一端を取付ける状態を示す説明図である。
【
図15】第2の支持部材の支持軸を第2の軸受部材に挿通する状態を示す説明図である。
【
図16】バネ受部材にバネ部材の他端を取付ける状態を示す説明図である。
【
図17】バネ受部材をバレル内に嵌合する状態を示す説明図である。
【
図18】第2の支持部材を挿通した第2の軸受部材をバレルに取付ける状態を示す説明図である。
【
図19】巻取装置を組立てた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、
図1ないし
図19を参照しながら具体的に説明する。
図1は本発明に係るシート状部材の巻取装置を示す斜視図、
図2は同じく、巻取装置を示す分解斜視図である。
図1及び
図2において、1は本発明に係るシート状部材の巻取装置(以下、単に巻取装置という)である。前記巻取装置1は、トノカバーやサンシェード等の可撓性のシート状部材2の一端が固着される中空円筒状のバレル3と、前記バレル3内に収納されるバネ部材4と、同じく前記バレル3内に収納され、前記バネ部材4の一端が係止されるバネ受部材5と、前記バレル3の両端部に挿嵌される第1,第2の軸受部材6A,6Bと、前記軸受部材6A,6Bを介して前記バレル3を回転可能に支持する第1,第2の支持部材7,8と、前記バネ部材4とバレル3との間に介挿されるチューブ部材9と、前記軸受部材6と支持部材7,8との間に介挿されるリング状のカラー10とを備えて構成されている。
【0011】
以下、前記巻取装置1を構成する各部材の詳細な構造について、
図1ないし
図12を参照しながら説明する。
はじめに、前記バレル3は、例えばアルミニウム等の金属により中空円筒状に形成され、
図1,2で示すように所定の長さ寸法を有する。前記バレル3の外周には、
図1に示すようにトノカバーやサンシェード等の可撓性のシート状部材2の一端が取付けられるとともに、内周には、
図3に示すように軸方向(長さ方向)に沿って複数の溝31が形成されている。
【0012】
前記バネ部材4は、例えば細長い線状の鋼材を螺旋状に巻回したコイルバネであり、
図2に示すように所定の(前記バレル3よりも短い)長さ寸法を有しているとともに、両端部には
図2,4に示すようにL字状に曲成した係止部41,42を有している。
【0013】
前記バネ受部材5は、例えば合成樹脂から成り、
図5,6に示すように、前記バレル3の内径とほぼ同径の大径部51と、前記大径部51よりも小径な中径部52と、前記中径部52よりも小径な小径部53からなる三段径となっている。
前記大径部51の外周には、
図5(b)に示すように前記バレル3の内周に形成した複数の溝31に嵌合する複数の(例えば90°間隔で4箇所に)凸部54a~54dが形成されており、このうちの2箇所の凸部54a,54cは中径部52の外周まで延設されている。なお、前記凸部54a~54dの先端側は、
図5に示すように先細状に形成されているとともに、後端側(中径部52側)は前記バレル3の内周に形成した溝31とほぼ同じか僅かに狭い幅寸法で形成されている。
前記中径部52及び小径部53には、前記小径部53の先端側に開口部を有するスリット55が、前記中径部52の外周まで延設されている凸部54a,54cと対応する位置に設けられている。また、前記中径部52には、前記スリット55の終端部手前に当該スリット55と直交する状態で係止フック56とこれを操作するための操作片57が一体的に形成されているとともに、前記係止フック56及び操作片57と対向する部位にはそれぞれ窓部58,59が設けられている。なお、前記スリット55はバネ部材4の係止片41を挿通可能な幅寸法を有するとともに、前記係止フック56とスリット55の終端との間には、前記係止片41を係止可能な間隙が設けられている。また、前記操作片57は窓部59を貫通して突出するとともに、頭部は前記大径部51の外周に形成した凸部54dよりも僅かに外側に突出している。
【0014】
前記軸受部材6A,6Bは、例えば合成樹脂製の筒状体から成り、
図7,8に示すように、前記バレル3の内径とほぼ同径の嵌入部61と、前記嵌入部61の基端側に形成された前記バレル3の外径とほぼ同径の規制部62とを備えている。
前記嵌入部61の外周には、
図7,8に示すように、基端側(規制部62側)から先端側へ向けて前記バレル3の内周に形成した複数の溝31と嵌合する複数の凸部63a~63hが形成されており、このうちの2箇所の凸部63a,63eは、基端側と規制部62との間に間隙64が設けられているとともに、前記間隙64を設けた位置から先端側へ向かう中途位置までスリット65が形成されている。また、前記2箇所の凸部63a,63eは、先端側が先細状に形成されているとともに、基端側(規制部62側)は前記バレル3の内周に形成した溝31よりも僅かに広い幅寸法で形成されている。一方、残りの凸部63b~63d,63f~63hは、先端側が先細状に形成されているとともに、基端側(規制部62側)は前記バレル3の内周に形成した溝31とほぼ同じか僅かに狭い幅寸法で形成されている。
【0015】
前記第1の支持部材7は、例えば合成樹脂から成り、
図9に示すように、逆T字状の支持座71と、前記支持座71の垂直部分から水平方向に向けて一体的に突設され、前記軸受部材6Aに挿通される円柱状の支持軸72とを備えている。前記支持座71の裏面には、自動車側に設けられる孔部(図示せず)に嵌合する突起71aが突設されているとともに、当該支持座71を自動車に固定するためのボルト等(図示せず)が螺合されるナット71bが埋設されている。なお、前記支持座71は、例えばL字状に形成してもよい。
【0016】
前記第2の支持部材8は、例えば合成樹脂から成り、
図2及び
図10ないし
図12に示すように、逆T字状の支持座81と、前記支持座81の垂直部分に水平方向へ向けて嵌着される支持軸82とを備えている。
図10に示すように、前記支持座81の垂直部分には、前記支持軸82の基端部(後述する結合部82c)が嵌合する矩形状の孔部81aが形成されている。また、前記支持座81の裏面には、自動車側に設けられる孔部(図示せず)に嵌合する突起81bが突設されているとともに、当該支持座81を自動車に固定するためのボルト等(図示せず)が螺合されるナット81cが埋設されている。なお、前記支持座81は、例えばL字状に形成してもよい。
前記支持軸82は、
図11,12に示すように、前記軸受部材6Bに挿通される円柱状の軸部82aと、前記軸部82aの基端側に同軸で一体形成された前記軸受部材6Bの規制部62とほぼ同径の円板状のフランジ82bと、前記フランジ82bに同軸で一体形成され、前記支持座81の垂直部分に形成した矩形状の孔部81aに嵌合する矩形状の結合部82cとを備えている。前記軸部82aの先端側は、前記バネ部材4の端部に挿入される小径部82dとなっており、前記小径部82dを含む前記軸部82aの先端側には、前記小径部82dに開口部を有するスリット83が、フランジ82b側へ向けて所定位置まで形成されている。また、前記軸部82aには、前記スリット83の終端部手前に、当該スリット83と直交する状態で係止フック84とこれを操作するための操作片85が一体的に形成されているとともに、前記係止フック84及び操作片85と対向する部位には窓部86,87が設けられている。なお、前記スリット83はバネ部材4の係止部42を挿通可能な幅寸法を有するとともに、前記係止フック84とスリット83の終端部との間には、バネ部材4の係止部42を係止可能な間隙が形成されている。また、前記操作片85は窓部87を貫通して突出するとともに、頭部は前記軸部82aの外周よりも僅かに外側に突出している。
【0017】
前記チューブ部材9は、例えばゴムや軟質の樹脂材料等から成り、
図2に示すように前記バネ部材4と同じかやや短い長さ寸法を有するとともに、前記バレル3の内径と同径かやや小さい外径と前記バネ部材の外径と同径かやや大きい内径を有しており、前記バレル3とバネ部材4との間に介挿される。
前記カラー10は、例えば合成樹脂から成り、前記軸受部材6A,6Bの規制部62とほぼ同径の外径と、前記支持部材7,8の支持軸72,82の外径とほぼ同径の内径とを有してリング状に形成されている。
【0018】
つづいて、本発明に係る巻取装置1を組立てる場合について、
図13ないし
図19を参照しながら説明する。
はじめに、バレル3の一端に軸受部材6Aを取付ける。この場合、
図13(a)に示すように、バレル3の内周に形成した複数の溝31と、軸受部材6Aの嵌入部61外周に設けた複数の凸部63a~63hとを合致させた状態で、前記嵌入部61の先端を前記バレル3の端部から差し込むとともに(
図13(b)参照)、規制部62がバレル3の端部と当接するまで挿入する(
図13(d)参照)。この際、前記凸部63a~63hの先端側は先細状に形成されているため、前記溝31への挿入を良好に行うことができる。また、前記凸部63a~63hのうち、凸部63b~63d,63f~63hは、基端側(規制部62側)が前記溝31とほぼ同じか僅かに狭い幅寸法で形成されているので、前記溝31に嵌入されることで、前記軸受部材6Aの周方向への回転が規制される。一方、凸部63a,63eは、基端側(規制部62側)が前記バレル3の内周に形成した溝31よりも僅かに広い幅寸法で形成されているので(
図13(c)参照)、前記溝31への嵌入時には僅かに抵抗を受けることになるが、前記凸部63a,63eの基端側には規制部62との間に間隙64が形成されているとともに、前記間隙64を形成した位置から先端側へ向かう中途位置までスリット65が形成されているため、前記抵抗に抗しながら溝31へ押し込むことにより、前記凸部63a,63eは
図13(e)に示すように内側方向へ押し窄められた状態で前記溝31に嵌入される。この結果、前記凸部63a,63eは元の状態へ復帰しようとする力によって前記溝31に圧接するので、前記軸受部材6Aとバレル3との間にガタツキが生じたり、前記軸受部材6Aがバレル3から抜脱したりするのを防ぐことができる。
【0019】
次に、第2の支持部材8の支持軸82にバネ部材4の一端を取付ける。この場合、
図14(a)に示すように、前記バネ部材4の一端に形成した係止部42を、前記支持軸82の先端側に形成したスリット83に挿通するとともに、前記支持軸82の先端側に設けた小径部82dをバネ部材4の一端に挿入する。そして、
図14(b)に示すように、前記係止部42が、支持軸82に前記スリット83と直交する状態で形成した係止フック84と当接すると、前記係止フック84は窓部87側へ押圧されてスリット83が開放されるため、前記係止部42はスリット83の終端位置まで到達するとともに、
図14(c)に示すように、前記係止フック84が元の状態に復帰して前記スリット83を塞ぐため、前記係止部42がスリット83から抜脱するのを阻止される。なお、前記支持軸82からバネ部材4を取外す場合は、操作片85を操作して、
図14(c)に示すように係止フック84により塞がれているスリット83を、
図14(b)に示すように開放した状態で、前記バネ部材4を支持軸82から引き抜けばよい。
【0020】
この後、前記支持軸82に軸受部材6Bを取付ける。なお、前記支持軸82に軸受部材6Bを取付けるに当っては、前記支持軸82の基端側に、
図15(a)に示すようにフランジ82bと当接する状態で、リング状のカラー10を予め取付けておく。前記支持軸82に軸受部材6Bを取付ける場合は、
図15(a)に示すように、前記軸受部材6Bにその規制部62側からバネ部材4の他端を挿通するとともに、前記バネ部材4の一端に取付けた支持軸82を、
図15(b)に示すように、前記カラー10が軸受部材6Bの規制部62と当接するまで挿入する。この際、前記支持軸82の外周からは、係止フック84を操作するための操作片85の頭部が突出しているので、前記支持軸82を軸受部材6Bに挿入すると、
図15(b)に示すように、前記操作片85は前記支持軸82の内側方向へ強制的に押し込まれるとともに、前記係止フック84も窓部86側へ押圧されてロック状態となる結果、前記バネ部材4の一端に形成した係止片42が前記スリット83から抜脱するのを確実に阻止する。
【0021】
次に、前記バネ部材4の他端にバネ受部材5を取付ける。なお、前記バネ受部材5を取付ける前に、
図15(b)に示すように、前記バネ部材4の他端側から予めチューブ部材9を被着しておく。なお、
図16においては、前記チューブ部材9の図示を省略している。前記のようにバネ部材4の外周にチューブ部材9を被着した後、
図16(a)に示すように、バネ部材4の他端に形成した係止部41を、バネ受部材5に形成したスリット55に挿通するとともに、前記バネ受部材5の小径部53をバネ部材4の他端に挿入する。そして、
図16(b)に示すように、前記係止部41が、バネ受部材5に前記スリット55と直交する状態で形成した係止フック56に当接すると、前記係止フック56は窓部59側へ押圧されて前記スリット55が開放されるため、前記係止部41はスリット55の終端位置まで到達するとともに、
図16(c)に示すように、前記係止フック56が元の状態に復帰して前記スリット55を塞ぐため、前記係止部41がスリット55から抜脱するのを阻止される。なお、前記バネ受部材5からバネ部材4を取外す場合は、操作片57を操作して、
図16(c)に示すように係止フック56により塞がれているスリット55を、
図16(b)に示すように開放した状態で、前記バネ部材4をバネ受部材5から引き抜けばよい。
【0022】
つづいて、前記軸受部材6Bをバレル3の他端に取付ける。前記軸受部材6Bには、バネ部材4の一端が取付けられた支持軸82が挿通されており、また、前記バネ部材4の他端にはバネ受部材5が取付けられているので、前記軸受部材6Bをバレル3の他端に取付ける場合は、まず
図17(a),(b)に示すように、前記バネ受部材5を、その外周に設けた複数(4箇所)の凸部54a~54dと、バレル3の内周に設けた所定の溝31と合致させた状態で、前記バレル3の他端から内部に挿入する。この際、前記凸部54a~54dの先端側は先細状に形成されているため、前記溝31への挿入を良好に行うことができるとともに、前記凸部54a~54dは、後端側(中径部52側)が前記溝31とほぼ同じか僅かに狭い幅寸法で形成されているので、前記溝31に挿入されることで、前記バネ受部材5の周方向への回転が規制される。また、前記バネ受部材5の外周からは、係止フック56を操作するための操作片57の頭部が突出しているので、前記バネ受部材5をバレル3に挿入すると、
図17(c)に示すように、前記操作片57は前記バネ受部材5の内側方向へ強制的に押し込まれるとともに、前記係止フック56も窓部58側へ押圧されてロック状態となる結果、前記バネ部材4の他端に形成した係止片41が前記スリット55から抜脱するのを確実に阻止する。
【0023】
この後、
図18(a),(b)に示すように、前記バネ受部材5につづいてバネ部材4及びその外周に被着したチューブ部材9をバレル3内に挿入するとともに、前記バネ部材4の一端に取付けた支持軸82が挿通されている軸受部材6Bを、その外周に設けた複数の凸部63a~63hと、前記バレル3の内周に設けた複数の溝31とを合致させた状態で、前記バレル3の他端から内部に挿入し、
図18(c)に示すように規制部62を前記バレル3の他端に当接させる。なお、前記軸受部材6Bは、軸受部材6Aと同様の構造をしており、前記のようにバレル3の他端から内部に挿入することで、周方向への回転が規制される。また、前記複数の凸部63a~63hのうちの2箇所の凸部63a,63eは、
図18(d)に示すように、間隙64を設けた位置から先端側へ向かう中途位置まで形成したスリット65を利用して、内側方向へ押し窄められた状態で前記バレル3の内周に形成した溝31に嵌入するとともに、元の状態に復帰しようとする力によって前記溝31に圧接する結果、前記軸受部材6Bとバレル3との間にガタツキが生じたり、前記軸受部材6Bがバレル3から抜脱したりするのを防ぐことができる。
【0024】
前記のようにバレル3の一端に軸受部材6Aを取付けるとともに、前記バレル3の他端から内部にバネ受部材5、バネ部材4及びチューブ部材9を挿入し、かつ、前記他端に軸受部材6B及び支持軸82を取付けたら、
図19に示すように、第1の支持部材7の支持軸72にカラー10を装着し、かつ、当該カラー10を前記軸受部材6Aの規制部62に当接させた状態で、前記支持軸72を軸受部材6Aに回転可能に挿通するとともに、前記軸受部材6Bに挿通した支持軸82に設けられている結合部82cを、第2の支持部材8の支持座81に設けた孔部81aに嵌合することで、巻取装置1の組立てを終了する。
【0025】
以上のように構成した巻取装置1においては、バレル3の両端に取付けられる軸受部材6A,6Bの外周に、前記バレル3の内周に形成した複数の溝31に嵌合する複数の凸部63a~63hを形成し、そのうちの2箇所の凸部63a,63eは、規制部62側の幅を前記溝31の幅よりも僅かに広くするとともに、前記規制部62との間に間隙64を設け、前記間隙64を設けた位置から先端側へ向かう中途位置までスリット65を形成したので、前記凸部63a,63eは、前記溝31に内側方向へ押し窄められた状態で嵌入されるとともに、元の状態に戻ろうとする力によって前記溝31に圧接する結果、前記軸受部材6A,6Bのバレル3に対するガタツキや前記バレル3からの抜脱を良好に防ぐことができる。
また、前記凸部63a,63e以外の凸部63b~63d,63f~63hは、規制部62側の幅が前記溝31の幅と同一もしくはやや狭くなっているので、特に抵抗なく前記溝31に嵌入することができるとともに、前記軸受部材6A,6Bがバレル3に対して周方向へ回動するのを阻止することができる。
【0026】
また、バネ部材4の一端が取付けられるバネ受部材5及び他端が取付けられる支持部材8の支持軸82には、前記バネ部材4の端部に形成した係止部41,42が挿通されるスリット55,83が設けられているとともに、前記スリット55,83の終端部手前には、当該スリット55,83と直交する状態で係止フック56,84と当該係止フック56,84を操作するための操作片57,85が一体的に形成されているので、前記バネ受部材5及び支持軸82をバネ部材4の端部に挿入すると同時に、前記係止部41,42をスリット55,83に挿通してその終端部と係止フック56,84との間に係止することにより、前記バネ部材4はバネ受部材5及び支持軸82に対して容易にかつ抜脱不能に取付けることができる。
しかも、前記操作片57,85の頭部はバネ受部材5及び支持軸82の外周から僅かに突出しているので、前記バネ受部材5をバレル3の内周に、支持軸82を軸受部材6Bの内周にそれぞれ挿通すると、前記操作片57,85はバネ受部材5及び支持軸82の内側方向へ強制的に押し込まれて、前記係止フック56,84がロック状態となる結果、前記スリット55,83からの係止片41,42の抜脱を確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 巻取装置
2 シート状部材
3 バレル
31 溝
4 バネ部材
41,42 係止部
5 バネ受部材
51 大径部
52 中径部
53 小径部
54a~54d 凸部
55 スリット
56 係止フック
57 操作片
58,59 窓部
6A,6B 軸受部材
61 嵌入部
62 規制部
63a~63h 凸部
64 間隙
65 スリット
7 支持部材
71 支持座
72 支持軸
8 支持部材
81 支持座
82 支持軸
82a 軸部
82b フランジ
82c 結合部
82d 小径部
83 スリット
84 係止フック
85 操作片
86,87 窓部
9 チューブ部材
10 カラー