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特開2024-54913スピーカーボックスの製造方法およびスピーカー装置
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  • 特開-スピーカーボックスの製造方法およびスピーカー装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054913
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】スピーカーボックスの製造方法およびスピーカー装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
H04R1/02 101Z
H04R1/02 101A
H04R1/02 101B
H04R1/02 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161374
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】522394317
【氏名又は名称】球体技研合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 全宣
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AD02
5D017AD12
5D017AD32
(57)【要約】
【課題】 本発明は球殻状のスピーカーボックスにおいて、スピーカーボックスの内面と外面との間の厚みを均一にすることができ、音の再現性への影響を抑制できるスピーカーボックスの製造方法およびスピーカー装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のスピーカーボックスの製造方法は、球殻状のスピーカーボックス3であって、スピーカーボックスの外面を構成する曲面形状Aと、スピーカーボックスの内面を構成する曲面形状Bとを含む木片6を作成する木片作成工程と、木片6を貼り合わせ球殻状集合体60を作成する木片貼り合わせ工程と、球殻状集合体60にスピーカーユニット2を取り付けるための開口部20を形成する開口部形成工程と、を含むことを特徴し、本発明のスピーカーボックスは、このスピーカーボックス3にスピーカーユニット2が取り付けられていることを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球殻状のスピーカーボックスであって、
スピーカーボックスの外面を構成する曲面形状と、スピーカーボックスの内面を構成する曲面形状とを含む木片を作成する木片作成工程と、
前記木片を貼り合わせ球殻状集合体を作成する木片貼り合わせ工程と、
を含むことを特徴するスピーカーボックスの製造方法。
【請求項2】
前記木片貼り合わせ工程で作成された前記球殻状集合体にスピーカーユニットを取り付けるための開口部を形成する開口部形成工程と、
を含むことを特徴する請求項1に記載のスピーカーボックスの製造方法。
【請求項3】
前記開口部形成工程には、
前記スピーカーユニットを取り付けるための開口部の反対側にバスレフダクトを取り付けるためのバスレフ開口部を形成する工程が更に含まれていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカーボックスの製造方法。
【請求項4】
前記木片作成工程は、
第1スピーカーボックスを構成する第1木片の外面曲面が形成される第1曲面形状切り出し工程と、
前記第1木片の内面曲面および第2スピーカーボックスを構成する第2木片の外面曲面が形成される第2曲面形状切り出し工程と、
前記第2木片の内面曲面が形成される第3曲面形状切り出し工程と、を含み、
前記第2木片からなる前記第2スピーカーボックスは、前記第1木片からなる前記第1スピーカーボックスよりもサイズが小さいことを特徴とする請求項1に記載のスピーカーボックスの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のスピーカーボックスにスピーカーユニットが取り付けられていることを特徴とするスピーカー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー装置を構成しているスピーカーボックスの製造方法およびスピーカー装置に関し、特に球殻状のスピーカーボックスの製造方法およびスピーカー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカーボックスやスピーカー装置としては、特許文献1にあるような球殻状のものが知られており、このような球殻状とすることにより、ボックス強度、回折、反射、指向性等音響特性で有利となり、非常に高音質な音楽再生等が実現できる。
【0003】
この特許文献1では、スピーカーボックスの製造方法に関して、まず木材の集成材からなる木製ブロックの中央を半球状にくりぬき、次に外側を削って半球状とし、次にこの半球状の分割体を2つ接合することで、積層状に木片を積み重ねて球殻状としたスピーカーボックスが開示されている。
【0004】
一方、本願の発明者は、特許文献1に開示された積層状に木片を積み重ねて球殻状としたスピーカーボックスの課題を解決する目的で、特許文献2のような球殻状のスピーカーボックスについて出願を行った。
【0005】
そして、この特許文献2には、スピーカーボックスの製造方法に関して、断面が二等辺三角形の三角柱状の木片から、まず木目が流れる高さ方向の一方の側(内面)について円弧を描くように切断し、次にこの一方の側が円弧形状の三角柱状の木片を集合させた柱状の集合体を形成し、次にこの柱状の集合体の外面を球状に切削することで、球殻状に形成されたスピーカーボックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2946412号公報
【特許文献2】実用新案登録第3207568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に開示されているようなスピーカーボックスの製造方法によると、集合体の状態から切削するので、スピーカーボックスの内面側の曲面形状が見えない状態で、スピーカーボックスの外面側を削る必要があり、内面側の曲面形状と同じように外面形状を形成することが非常に難しく、内面と外面との間の厚みを均一にすることが難しかった。つまり、内面側の曲面により形成される仮想的な円の中心と、外面側の曲面により形成される仮想的な円の中心とを合わせることが難しく、この中心がずれることで厚みに大きなムラが生じていた。したがって、不均一な厚みの場所が生じると、音の再現性に影響を与えるおそれがあった。
【0008】
また、スピーカーボックスは、開口部を設け、開口部にスピーカーユニットを取り付けることになるが、スピーカーユニットの大きさも様々なサイズがあり、例えば、音質にこだわる場合には大きなスピーカーユニットを使用し、コストを抑えたい場合には小さなスピーカーユニットを使用するということがある。このような場合、特許文献2のような製造方法によれば、最初にスピーカーユニットの大きさにあわせてボックスの開口を作ってしまうため、一度ボックスを作ってしまった後でサイズの異なるスピーカーユニットを取り付けることができない。
また、特許文献1や特許文献2の製造方法は、スピーカーボックスの形成において、不要な部分も多く、材料となる木材を有効に利用することができない。
【0009】
本発明は、球殻状のスピーカーボックスにおいて、スピーカーボックスの内面と外面との間の厚みを均一にすることができ、音の再現性への影響を抑制できるスピーカーボックスの製造方法およびスピーカー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様に係るスピーカーボックスの製造方法は、球殻状のスピーカーボックスであって、スピーカーボックスの外面を構成する曲面形状と、スピーカーボックスの内面を構成する曲面形状とを含む木片を作成する木片作成工程と、前記木片を貼り合わせ球殻状集合体を作成する木片貼り合わせ工程と、を含むことを特徴する。
【0011】
このような構成によれば、スピーカーボックスを構成する木片で、外面を構成する曲面形状および内面を構成する曲面形状を対応させて形成することが容易であり、スピーカーボックスの内面と外面との間の厚みを容易に均一に形成することが可能である。つまり、木片作成工程において内面側の曲面により形成される仮想的な円の中心と、外面側の曲面により形成される仮想的な円の中心とを一致させて形成できる。
【0012】
また、本発明のスピーカーボックスの製造方法は、前記木片貼り合わせ工程で作成された前記球殻状集合体にスピーカーユニットを取り付けるための開口部を形成する開口部形成工程と、を含むことが好ましい。これにより、球殻状集合体となってから、スピーカーボックスに取り付けるスピーカーユニットの大きさにあわせて、スピーカーボックスを製造することができる。
【0013】
なお、スピーカーユニットを取り付けるための開口部は、この開口部形成工程を経ないで、上記の木片作成工程における木片の段階で、木片の外面を構成する曲面形状と内面を構成する曲面形状に加え、スピーカーユニットを取り付ける開口部を形成する開口形状を備えた木片を作成することによって形成することも可能である。
【0014】
また、本発明のスピーカーボックスの製造方法は、前記開口部形成工程には、前記スピーカーユニットを取り付けるための開口部の反対側にバスレフダクトを取り付けるためのバスレフ開口部を形成する工程が更に含まれていることが好ましい。これにより、バスレスダクト付のバスレフ型スピーカー装置を容易に実現できる。
【0015】
また、本発明のスピーカーボックスの製造方法は、前記木片作成工程が、第1スピーカーボックスを構成する第1木片の外面曲面が形成される第1曲面形状切り出し工程と、前記第1木片の内面曲面および第2スピーカーボックスを構成する第2木片の外面曲面が形成される第2曲面形状切り出し工程と、前記第2木片の内面曲面が形成される第3曲面形状切り出し工程と、を含み、前記第2木片からなる前記第2スピーカーボックスは、前記第1木片からなる前記第1スピーカーボックスよりもサイズが小さいことが好ましい。これにより、一つの木片からサイズの異なる複数の木片を作成することができるので、異なるサイズのスピーカーボックスを容易に作ることができ、木材をより有効に活用できる。
【0016】
また、本発明のスピーカー装置は、このようなスピーカーボックスにスピーカーユニットが取り付けられていることを特徴とする。このようなスピーカー装置により、音の再現性への影響を抑制したものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るスピーカー装置を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るスピーカーボックスの製造工程を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るスピーカーボックスを構成する木片を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る木片作成工程を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る木片貼り合せ工程を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る開口部形成工程を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るスピーカーボックスを示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る木片作成工程の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0019】
本発明の実施形態の構成を、図1から図8を用いて説明する。図1は、スピーカー装置1を示す斜視図(写真)である。図1(a)は、前方右上方よりの斜視図であり、図1(b)は、後方左上方よりの斜視図である。
スピーカー装置1は、前方に位置し音を出力するスピーカーユニット2、スピーカーユニット2が収納され木片6の集合体で構成される球殻状のスピーカーボックス3、および、外部からの音声信号をスピーカーユニット2に伝達するスピーカー端子4を備える。また、図1(b)に示すように、スピーカー装置1には、スピーカーユニット2の反対側となる後方にバスレフダクト5が設けられており、本実施形態のスピーカー装置1は、いわゆる密閉型ではなく、バスレフ型となっている。
なお、本実施形態においては、球殻状のスピーカー装置1が安定して設置されるために、スピーカーボックス3の下部に別体の載置台10が配置されている。
【0020】
図2は、このスピーカーボックス3およびスピーカー装置1の製造工程を示す図である。
木片作成工程では、スピーカーボックス3のボックス外面を構成する曲面形状Aおよびボックス内面を構成する曲面形状Bを有する図3に示す木片6が、図4に示す三角柱木片7から切り出される。
【0021】
より具体的に説明する。図3は、スピーカーボックス3を構成する木片6を示す斜視図である。この木片6は、スピーカーボックス3のボックス外面を構成する曲面形状Aと、ボックス内面を構成する曲面形状Bを備える。
【0022】
図4は、この木片6が切り出される三角柱木片7を示す図である。図4(a)は、三角柱木片7の上面図であり、図4(b)は三角柱木片7の側面図であり、図4(c)は木片6の別角度からの斜視図ある。
【0023】
三角柱木片7は、本実施形態では、図4(a)にて破線で示すように頂点角度が15度の二等辺三角形が上面、下面および断面となり、二等辺三角形の底辺の長さが約29mm、また図4(b)における高さ方向に木目が流れる形状となっている。なお、三角柱木片7としているが、図4(a)の実線部分や図4(c)からもわかるように先端は鋭角とはなっておらず、実際には三角柱木片7は図4(a)にて面61と示すように断面が台形となっている四角柱からなる。
【0024】
そして、この三角柱木片7を図4(b)に示す点線に沿って、アーチ状の円弧を描くように切断することにより、スピーカーボックス3の外面を構成する曲面形状Aおよび内面を構成する曲面形状Bを有する木片6が作成される。具体的には、切断装置の台に三角柱木片7を載せて、曲面形状Aで形成される仮想的な円の中心を固定し、その位置を中心にして三角柱木片7を回転させながら切断していく。そして、この切断した物に対して次に曲面形状Bで形成される仮想的な円の中心を固定し、その位置を中心にして回転させながら切断することで木片6が完成する。このような木片作成工程により、この木片6を複数作成する。
【0025】
この時、木片6が作成される木片作成工程では、三角柱木片7を用い曲面形状Aおよび曲面形状Bを対応させて形成できることから、高性能で高価な加工装置を用いることなく、スピーカーボックスの内面と外面との間の厚みを容易に均一に形成することが可能となる。
そして次の木片貼り合わせ工程では、複数の木片6の側面同士を接着剤等で接合し球体となるように集合させた球殻状集合体60が形成される。
【0026】
より具体的に説明すると、図5は、木片6を集合させて形成した球殻状集合体60を示す図である。図5(a)は、球殻状集合体の上面図であり、図5(b)は球殻状集合体60の側面図である。図5(b)に示すように、別体の木製円柱状の芯棒80を用い、この芯棒80の側面に木片6の両端にある面61を当てながら、木片6の側面に接着剤を塗布して、24個の木片により球殻を作り、この球殻を紐、バンド等で縛り上げて固定することで球殻状集合体60が形成されている。
【0027】
なお、この木片貼り合せ工程で芯棒80を用いて球殻状集合体60を形成しているが、芯棒80を用いないで形成することも可能である。しかしながら、芯棒80を用いることで、紐やバンドで強く縛り上げた際などに、木片6同士のズレを防止することができる。また、この芯棒80は木片6同士の接着が完了した後に取り除かれる。
【0028】
また、木片6からなる球殻状集合体60は、実際には隣り合う木片6同士の接合箇所において外面となる曲面形状Aに角ができるため、見た目などの理由で最終的には削って仕上げることが好ましいが、この角は非常に小さく、音質等へ影響するものではない。また、内面となる曲面形状Bにも厳密には角ができているが、こちらについても非常に小さなものなので音質等へ影響するものではない。したがって、本実施形態のように球殻状集合体60を形成する木片6の数としては24個程度が好ましい。木片6の数があまり少なくなってしまうと、そもそも球殻状とはならず、またあまり多くなってしまうと製造が非常に煩雑となってしまう。
【0029】
なお、本実施形態においては、図5(a)の上面図の中心や図5(b)の側面図の上方が、スピーカー装置1における後方となっている。また、本実施形態においては、球殻状集合体60の直径は大体220mmの大きさであり、また芯棒80の直径は大体40mmとなっている。
そして次の開口部形成工程では、球殻状集合体60の下部、および上部の一部が切断され、開口部が形成される。
【0030】
より具体的に説明すると、図6は、図5の球殻状集合体60の上下に開口部が形成されたスピーカーボックス3を示す図である。図6(a)は上面図であり、図6(b)は側面図である。
【0031】
球殻状集合体60の下部の開口は、スピーカーユニット2を取り付けるための開口部20であり、図6(b)に示すように水平方向に切断して形成されたものである。
上部の開口は、バスレフダクト5を取り付けるためのバスレフ開口部50であり、図6(b)に示すように水平方向に切断して形成されたものである。
なお、スピーカーボックス3に形成された開口部20とバスレフ開口部50については、図7を用いて後述する。
【0032】
そして、最後の取り付け工程では、開口部20にスピーカーユニット2を、バスレフ開口部50にバスレフダクト5を取り付け、また、図1(b)に示すように、工法のバスレフダクト5の上方に、スピーカー端子4を取り付けることで、スピーカー装置1が完成される。なお、図示していなが、スピーカー端子4からスピーカーボックス3内には配線が伸びており、この配線はスピーカーユニット2へと接続される。
【0033】
図7は、スピーカーボックス3に形成された開口部20およびバスレフ開口部50を示す斜視図であり、開口部20はサイズの異なるものを示したものである。図7(a)および(b)は、前方よりの斜視図であり、図7(c)は、後方よりの斜視図である。なお、図7の前方および後方は、それぞれ、図6に示したスピーカーボックス3の下部および上部に対応する。
【0034】
図7(a)に示すスピーカーボックス3の開口部20は、図7(b)の開口部より大きくなっている例を図示している。このため、図7(a)のスピーカーボックス3に取り付けるスピーカーユニット2は、図7(b)のものよりもサイズの大きいものが取り付け可能である。具体的には、図7(a)の開口部20には10cm径のスピーカーユニット2が取り付けられるサイズであり、図7(b)の開口部20には7cm径のスピーカーユニット2が取り付けられるサイズとなっている。
【0035】
例えば、音質に拘ったスピーカー装置1を希望する場合には、大きなサイズのスピーカーユニット2の選択が可能であり、コストや外観を重視したスピーカー装置1を希望する場合には、小さなサイズのスピーカーユニット2の選択が可能となる。
【0036】
そして、このように異なるサイズのスピーカーユニット2を取り付ける場合に、従来であればスピーカーユニット2のサイズに合わせてスピーカーボックスを製造することになるが、本実施形態のようなスピーカーボックス3の製造方法であれば、開口部形成工程において切断位置を調整することで対応することが可能となる。また、開口部20を形成してしまった後であっても、その開口部20よりも大きなものであれば形成することも可能であり、具体的には、図7(b)の開口部を形成した後でも、図7(a)の開口部に変更することが可能となる。
【0037】
なお、スピーカーユニット2のスピーカーボックス3への取り付けは、開口部形成工程において球殻状集合体60を水平方向に切断して開口部20を形成することで現れる木片6の複数の断面で構成された円形の取付面30に、ネジを用いて固定することにより行われている。
【0038】
図7(c)に示すスピーカーボックス3のバスレフ開口部50は、前述したようにバスレフダクト5を取り付けるためのものである。本実施形態のバスレフダクト5は、スピーカーボックス3の内部に挿入される円筒状のダクトと、ダクトの端の周辺に設けられた取付代とからなる。
【0039】
そして、このバスレフダクト5のスピーカーボックス3への取り付けは、開口部形成工程において球殻状集合体60を水平方向に切断することで木片6の複数の断面で構成された円形のバスレフ取付面31に、取付代をネジで固定することにより行われている。
【0040】
また、本実施形態におけるバスレフ開口部50は、開口部形成工程において球殻状集合体60を水平方向に切断して形成されたバスレフ取付面31だけではなく、木片6の面61により形成されたダクト支持面32も備えている。そしてこのダクト支持面32は、内部に挿入されるダクトの側面に沿うように位置している。したがって、このダクト支持面32によりバスレフダクト5がより安定して固定されることになる。なお、木片6の面61により形成されたダクト支持面32の大きさが、バスレフダクト5よりも小さければ、別途大きなダクト支持面32を形成するために、垂直方向へ切断するようにくり抜いても構わない。
【0041】
次に、木片作成工程の変形例について説明する。図8は、木片作成工程の変形例を示す図である。図8に示す木片作成工程の変形例は、図3で示した三角柱木片7から第1の木片6に加え、更に第2の木片6aが切り出されることを示した側面図である。
【0042】
具体的には、図8に示す点線に沿って、三角柱木片7が切断され、第1の木片6および第2の木片6aが形成される。これは木片作成工程において、まず第1の木片である木片6の外面曲面AAが形成される第1曲面形状切り出し工程を行うことで半円形状の第1部材を作る。次にこの半円形状の第1部材に対して、木片6の内面曲面BBと共に第2の木片である木片6aの外面曲面Aaが形成される第2曲面形状切り出し工程を行う。この工程により、アーチ状の円弧となる第1の木片6ができあがるとともに、第1部材よりも小さな半円形状の第2部材が残る。次にこの残った半円形状の第2部材に対して、木片6aの内面曲面Baが形成さる第3曲面形状切り出し工程を行う。この工程により、アーチ状の円弧となる第2の木片6aができあがることになる。
【0043】
そして、第1の木片6よりも小さい第2の木片6aを用いることで、第1の木片6により作成される第1のスピーカーボックス3よりもサイズの小さい第2のスピーカーボックスを作成することが可能となる。したがって、本実施形態のようなスピーカーボックス3の製造方法であれば、木片形成工程において、第1のスピーカーボックス3を構成する第1木片6の外面曲面AAが形成される第1曲面形状切り出し工程と、第1木片6の内面曲面BBおよび第2のスピーカーボックスを構成する第2木片6aの外面曲面Aaが形成される第2曲面形状切り出し工程と、第2木片6aの内面曲面Baが形成される第3曲面形状切り出し工程と、を含むため、三角柱木片7の無駄となる部分を抑えて有効に利用することができる。
【0044】
なお、第1曲面形状切り出し工程と、第3曲面形状切り出し工程の順番については、逆にしても構わない。また、第2木片6aよりも更に小さな第3木片を作り、第2のスピーカーボックスよりも小さな第3のスピーカーボックスを作成しても構わない。
【0045】
このような構成からなるスピーカーボックス3の製造方法は、木片作成工程において、木片6を作成する段階で、外面と内面との間の厚みを均一にしてしまうことができるので、厚みのそろったスピーカーボックス3を簡単に提供することができる。
【0046】
また、スピーカーユニット2を取り付ける開口部20は、木片貼り合わせ工程で球殻状集合体60を作成した後の開口部形成工程でこの球殻状集合体60に対して形成するため、スピーカーユニット2のサイズにあわせて、球殻状集合体60の一部を切断すればよい。このため、切断する位置を調整することでサイズの違うスピーカーユニット2の取り付けを容易に対応することができる。
【0047】
また、木片作成工程において、一つの三角柱木片7からサイズの異なる複数の木片6、6aを作成することができるので、異なるサイズのスピーカーボックス3を容易に作ることができ、木材をより有効に活用できる。
【0048】
なお、本実施形態のスピーカーボックス3の製造方法においては、開口部形成工程を有していたが、開口部形成工程は必ずしも必要ではなく、開口部形成工程を経ることなく、スピーカーボックス3を製造することもできる。具体的には、木片作成工程において、木片6の外面を構成する曲面形状Aと内面を構成する曲面形状Bに加え、スピーカーユニット2を取り付ける開口部20を形成する開口形状を備えた木片を作成する。これにより、開口部形成工程を経ることなくスピーカーボックス3を製造することができる。
【0049】
また、本実施形態では、開口部形成工程において、スピーカーユニット2を取り付けるための開口部20の反対側にバスレフダクト5を取り付けるためのバスレフ開口部50を形成する工程が更に含まれおり、スピーカー装置1は、スピーカーユニット2の反対側となる後方にバスレフダクト5が設けられた構成となっていた。しかしながら、バスレフダクト5は必ずしも必要ではなく、コスト等を考慮して、バスバスレフ開口部50を形成する工程を含まない製造方法や、バスレフダクト5を有しないいわゆる密閉型のスピーカー装置とすることもできる。なお、この時、バスレフダクト5の位置、つまり、スピーカーユニット2の反対側に、スピーカー端子4を取り付けても構わない。
【0050】
また、本実施形態の木片作成工程においては、三角柱木片7が実際には図4(a)にて面61と示すように断面が台形となっている四角柱からなっていたが、頂点角度が15度の二等辺三角形が上面、下面および断面とからなる三角柱木片7を用いて木片6を形成することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1:スピーカー装置
2:スピーカーユニット
3:スピーカーボックス
4:スピーカー端子
5:バスレフダクト
50:バスレフ開口部
6、6a:木片
60:球殻状集合体
7:三角柱木片
A:外面を構成する曲面形状
B:内面を構成する曲面形状
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8