(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054932
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】レゾルバの断線検出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/12 20060101AFI20240411BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G01D5/12 K
G01D5/20 110E
G01D5/20 110Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161409
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】松葉 元
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA04
2F077CC02
2F077CC08
2F077FF34
2F077PP26
2F077TT33
2F077TT82
(57)【要約】
【課題】レゾルバが回転中であれば、断線検出を容易化する手段を提供する。
【解決手段】少なくとも、DC電源1からの主系電源1A及び冗長系電源1Bが主系励磁回路3及び冗長系励磁回路4を介して、主系励磁信号3A及び冗長系励磁信号4Aとして入力されるレゾルバトランス5と、レゾルバトランス5からの主系及び冗長系レゾルバ信号M、Nが主系及び冗長系角度データ12、14として常時出力される主系及び冗長系R/D変換回路11、13と、からなるレゾルバの断線検出装置及び方法において、主系励磁回路3及び冗長系励磁回路4とレゾルバトランス5との間に各々設けられた主系用スイッチA及び冗長系用スイッチBを有し、主系用スイッチAがオンで冗長系用スイッチBがオフの時、レゾルバトランス5の冗長系一次側入力巻線7に断線が生じた場合、主系と冗長系の角度データ12、14変化に差異が生じるようにした構造と方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、DC電源(1)からの主系電源(1A)及び冗長系電源(1B)が主系励磁回路(3)及び冗長系励磁回路(4)を介して、主系励磁信号(3A)及び冗長系励磁信号(4A)として入力されるレゾルバトランス(5)と、前記レゾルバトランス(5)からの主系及び冗長系レゾルバ信号(M,N)が主系及び冗長系角度データ(12,14)として常時出力される主系及び冗長系R/D変換回路(11,13)と、からなるレゾルバの断線検出装置において、
前記主系励磁回路(3)及び前記冗長系励磁回路(4)と前記レゾルバトランス(5)との間に各々設けられた主系用スイッチ(A)及び冗長系用スイッチ(B)を有し、前記主系用スイッチ(A)がオンで前記冗長系用スイッチ(B)がオフの時、前記レゾルバトランス(5)の冗長系一次側入力巻線(7)に断線が生じた場合、前記主系及び前記冗長系の角度データ(12,14)変化に差異が生じる構造であることを特徴とするレゾルバの断線検出装置。
【請求項2】
前記主系励磁回路(3)及び前記冗長系励磁回路(4)には、前記DC電源(1)からの前記主系電源(1A)及び前記冗長系電源(1B)が常時供給される構造であることを特徴とする請求項1記載のレゾルバの断線検出装置。
【請求項3】
前記レゾルバトランス(5)の後段側(E)に設けられた前記主系R/D変換回路(11)及び前記冗長系R/D変換回路(13)には、前記主系電源(1A)及び前記冗長系電源(1B)が常時供給される構造であることを特徴とする請求項1又は2記載のレゾルバの断線検出装置。
【請求項4】
少なくとも、DC電源(1)からの主系電源(1A)及び冗長系電源(1B)が主系励磁回路(3)及び冗長系励磁回路(4)を介して、主系励磁信号(3A)及び冗長系励磁信号(4A)として入力されるレゾルバトランス(5)と、前記レゾルバトランス(5)からの主系及び冗長系レゾルバ信号(M,N)が主系及び冗長系角度データ(12,14)として常時出力される主系及び冗長系R/D変換回路(11,13)と、を用いるレゾルバの断線検出方法において、
前記主系励磁回路(3)及び前記冗長系励磁回路(4)と前記レゾルバトランス(5)との間に各々設けられた主系用スイッチ(A)及び冗長系用スイッチ(B)を有し、前記主系用スイッチ(A)がオンで前記冗長系用スイッチ(B)がオフの時、前記レゾルバトランス(5)の冗長系一次側入力巻線(7)に断線が生じた場合、前記主系及び前記冗長系の角度データ(12,14)変化に差異が生じるようにしたことを特徴とするレゾルバの断線検出方法。
【請求項5】
前記主系励磁回路(3)及び前記冗長系励磁回路(4)には、前記DC電源(1)からの前記主系電源(1A)及び前記冗長系電源(1B)が常時供給されるようにしたことを特徴とする請求項4記載のレゾルバの断線検出方法。
【請求項6】
前記レゾルバトランス(5)の後段側(E)に設けられた前記主系R/D変換回路(11)及び前記冗長系R/D変換回路(13)には、前記主系電源(1A)及び前記冗長系電源(1B)が常時供給されるようにしたことを特徴とする請求項4又は5記載のレゾルバの断線検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバの断線検出装置及び方法に関し、特に、同一コアを用いて主系と冗長系の動作を行う際、非動作系のレゾルバ巻線の健全性を常時確認することができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバの断線検出装置及び方法としては、その装置の内容に関する文献としては、特許文献1、2、3を挙げることはできるが、主系と冗長系の断線検出の方法としては見つからず、
図2に、本出願人が従来開発した主系と冗長系の2つの系を有するレゾルバの断線検出装置及び方法のブロック回路を示すことができる。
すなわち、
図2において、DC電源1からの主系電源1A及び冗長系電源1Bは、主系用及び冗長系用2スイッチA、Bを介して主系励磁回路3及び冗長系励磁回路4に供給されている。
【0003】
前記主系励磁回路3からの主系励磁信号3Aは、レゾルバ(冗長巻線タイプ)10のレゾルバトランス5の一次側入力5Aの主系一次側入力巻線6に入力され、前記冗長系励磁回路4からの冗長励磁信号4Aは、前記レゾルバ10のレゾルバトランス5の一次側入力5Aの冗長系一次側入力巻線7に入力される。
前記主系一次側入力巻線6の一端側6a及び前記レゾルバトランス5の巻線からなる前記冗長系一次側入力巻線7の一端側7aは、各々接地されている。
【0004】
前記レゾルバトランス5の二次側出力8の結線は、周知のように、主系S1-S3/S4-S2及び冗長系S1’-S3’/S4’-S2’とからなり、主系及び冗長系レゾルバ信号M、Nとしての前記レゾルバ10の前記二次側出力8からの主系レゾルバ信号SIN20及び主系レゾルバ信号COS21と冗長系レゾルバ信号SIN22及び冗長系レゾルバ信号COS23とが主系R/D変換回路11及び冗長系R/D変換回路13に各々入力され、主系角度データ12及び冗長系角度データ14として角度データ検出回路15へ出力されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-046376号公報
【特許文献2】特開2012-198055号公報
【特許文献3】特開2014-238390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレゾルバの断線検出装置は以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、
図2の従来構造においては、DC電源1の主系電源1Aがオン状態の主系用スイッチAを介して主系励磁回路3に入力され、前記冗長系電源1Bは冗長系用スイッチBがオフのため冗長系励磁回路4には冗長系電源1Bが供給されていない。
【0007】
すなわち、DC電源の後段側Eには、主系用スイッチAと冗長系用スイッチBがあり、動作をさせる系の主系用スイッチA又は冗長系用スイッチBをオンとして(
図2では、主系用スイッチA)動作させる。
図2では、前記主系用スイッチAをオンとしているため、主系励磁回路3が動作している状態を示している。この状態では、1個の前記レゾルバトランス5に、主系一次側入力巻線6と冗長系一次側入力巻線7とが互いに隣接して設けられているため、主系から冗長系に対して励磁信号及びレゾルバ信号の誘起が発生している。
【0008】
図2の状態において、前記レゾルバトランス5の一次側入力5Aにおける前記冗長系一次側入力巻線7における巻線において断線(×として示されている)が発生した場合、冗長系における励磁信号とレゾルバ信号にも信号が誘起される。
そのため、レゾルバトランス5において、非動作系の健全性を確認するためには、動作系を非通電(主系用スイッチAをオフ)としてから他系を動作させて確認する必要がある。
すなわち、上述のように、非動作系のレゾルバ(冗長系一次側入力巻線7)に断線が発生していたとしても、実際に冗長系用スイッチBをオンとし、
図2に示される断線検出装置の冗長系を動作させてみるまでは断線の状態を確認することができないため、実用上は、迅速な断線検出が不可能であった。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、同一コアを用いて主系と冗長系の動作を行う際、非動作系のレゾルバ巻線の健全性を常時確認することができるようにするための新規な改良に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるレゾルバの断線検出装置及び方法は、少なくとも、DC電源からの主系電源及び冗長系電源が主系励磁回路及び冗長系励磁回路を介して、主系励磁信号及び冗長系励磁信号として入力されるレゾルバトランスと、前記レゾルバトランスからの主系及び冗長系レゾルバ信号が主系及び冗長系角度データとして常時出力される主系及び冗長系R/D変換回路と、からなるレゾルバの断線検出装置及び方法において、前記主系励磁回路及び前記冗長系励磁回路と前記レゾルバトランスとの間に各々設けられた主系用スイッチ及び冗長系用スイッチを有し、前記主系用スイッチがオンで前記冗長系用スイッチがオフの時、前記レゾルバトランスの冗長系一次側入力巻線に断線が生じた場合、前記主系及び前記冗長系の角度データ変化に差異が生じる構造と方法であり、また、前記主系励磁回路及び前記冗長系励磁回路には、前記DC電源からの前記主系電源及び前記冗長系電源が常時供給される構造と方法であり、また、前記レゾルバトランスの後段側に設けられた前記主系R/D変換回路及び前記冗長系R/D変換回路には、前記主系電源及び前記冗長系電源が常時供給される構造と方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるレゾルバの断線検出装置及び方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、少なくとも、DC電源からの主系電源及び冗長系電源が主系励磁回路及び冗長系励磁回路を介して、主系励磁信号及び冗長系励磁信号として入力されるレゾルバトランスと、前記レゾルバトランスからの主系及び冗長系レゾルバ信号が主系及び冗長系角度データとして常時出力される主系及び冗長系R/D変換回路と、からなるレゾルバの断線検出装置及び方法において、前記主系励磁回路及び前記冗長系励磁回路と前記レゾルバトランスとの間に各々設けられた主系用スイッチ及び冗長系用スイッチを有し、前記主系用スイッチがオンで前記冗長系用スイッチがオフの時、前記レゾルバトランスの冗長系一次側入力巻線に断線が生じた場合、前記主系及び前記冗長系の角度データ変化に差異が生じる構造と方法であることにより、同一コアを用いて主系と冗長系の動作を行う際、非動作系のレゾルバ巻線の健全性を常時確認することができる。
また、前記主系励磁回路及び前記冗長系励磁回路には、前記DC電源からの前記主系電源及び前記冗長系電源が常時供給される構造と方法であることにより、両方の系の角度データの変化を常時比較確認することにより、未使用系レゾルバの健全性を常に点検することができる。
また、前記レゾルバトランスの後段側に設けられた前記主系R/D変換回路及び前記冗長系R/D変換回路には、前記主系電源及び前記冗長系電源が常時供給される構造と方法であることにより、前述と同様に、両系の常時検出が可能であると共に、断線検出の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態によるレゾルバの断線検出装置及び方法を示すブロック図である。
【
図2】従来のレゾルバの断線検出装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるレゾルバの断線検出装置及び方法は、同一コアを用いて主系と冗長系の動作を行う際、非動作系の健全性を常時確認することができるようにすることである。
【実施例0014】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバの断線検出装置及び方法の好適な実施の形態について、
図1と共に説明する。
図1は
図2の従来例に対して改良した点を付け加えた状態で説明する。
図1において、DC電源1からの主系電源1A及び冗長系電源1Bは、主系励磁回路3及び冗長系励磁回路4に入力されると共に、前記主系励磁回路3からの主系励磁信号3Aは、1個のみのコアを用いたレゾルバトランス5の一次コイルである一次側入力5Aの主系一次側入力巻線6に入力され、前記冗長系励磁回路4からの冗長系励磁信号4Aは、前記レゾルバトランス5の冗長系一次側入力巻線7に入力されている。
【0015】
前記主系励磁信号3A及び前記冗長系励磁信号4Aは、同一コアに巻線を行う前記冗長巻線タイプ(本実施の形態のレゾルバトランス)の場合、一方の系(主系)に励磁信号を供給すると、他系(冗長系)にも励磁信号及びレゾルバ信号が誘起されることになる。
【0016】
冗長系用スイッチBをオンとして、前述の誘起される信号を利用してもう一方の冗長系を動作させると、結果として、元の主系は動作中であるため、主系と冗長系の両方の系が動作中となり、この状態で、両系から生成される角度データ12、14を角度データ検出回路15によって、各角度データ12、14を常時比較検出でき、両系の各角度データ12、14を最初の電源投入時から、常時検出できる。
また、未使用系レゾルバの健全性も常時点検できる構造である。
【0017】
また、これ以降の説明は、前述の従来構成と同じ構成であるため、従来構成の段落[0004]を援用し、その説明を省略している。
また、本実施の形態の構造について、本実施の形態の
図1と従来構造の
図2における各構造の違いについて以下に説明する。
図2で示す従来構造の場合、DC電源1のすぐ後に主系用及び冗長系用スイッチA、Bがあり、動作させる系のスイッチをオンして動作させる。
図2では主系を動作させた状態を示している。この際、冗長系の励磁信号及びレゾルバ信号にも信号が誘起されて主系と冗長系が動作を行っている。
【0018】
これに対して本実施の形態においては、
図1に示すように、各スイッチA、Bの位置を変更し、各々主系励磁回路3及び冗長系励磁回路4の後段側Eに設けられている。すなわち、主系励磁回路3及び冗長系励磁回路4とレゾルバトランス5との間に主系用スイッチA及び冗長系用スイッチBが各々設けられている。DC電源1は、主系及び冗長系両方の励磁回路3、4、並びに主系及び冗長系両方のR/D変換回路11、13に常時供給されているため、どちらの系からも角度データ12、14が出力されている。
ただし、冗長系用スイッチBは開であるため、冗長系励磁回路4の冗長系励磁信号4Aはレゾルバ10のレゾルバトランス5の一次側入力5Aに供給されず、主系励磁信号3Aと衝突しないようになっている。
【0019】
この際、主系角度データ12だけでなく、冗長系角度データ14をモニタすることにより、本図のようにレゾルバ冗長系の一次側入力巻線7に断線(×印の部分)が生じた場合、主系と冗長系の角度データ変化に差異が生じるため、レゾルバの冗長系に異常があることを見つけることができる。
従って、本発明によるレゾルバの断線検出装置及び方法は、以上のような構造であるため、部品点数を従来構造よりも増加させることなく、励磁トランスの断線をリアルタイムでかつ有効的に検出することができる。
本発明によるレゾルバの断線検出装置及び方法は、部品点数も従来と変わることなく、各スイッチの取付け位置を変えるだけで、主系及び冗長系の検出を行っている最中に断線が発生した場合でも、主系と冗長系から出力される角度データ変化に差異が生じることによって、レゾルバの冗長系に異常があることを簡単に見つけることができ、冗長系を備えたレゾルバの信頼性及び使用範囲を大きく向上させることができる。