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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054936
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータおよび充電装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
H02M3/28 H
H02M3/28 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161413
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅史
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB62
5H730BB82
5H730BB88
5H730CC02
5H730CC04
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD13
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730FD31
5H730FD61
5H730FG01
5H730FG10
(57)【要約】
【課題】高出力化に対応可能で、かつ高コスト化や制御の複雑化を招くことなく出力波形のリップルを低減することが可能な3相LLC方式のDC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】1次側スイッチング回路11と、2次側整流回路12と、各トランス部が2並列のトランスで構成されたトランス回路13と、1次側共振回路14と、制御部15と、を備える3相LLC方式のDC/DCコンバータ10Aであって、トランス回路13は、2個のトランス群を形成し、各トランス群は、各トランス部の各1個のトランスを1組として形成されたものであり、1次側コイルが平衡結線接続され、かつ2次側コイルが平衡結線接続されたものであることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランス部、第2トランス部および第3トランス部を含み、各トランス部がN個のトランス(Nは2以上の整数)で構成されたトランス回路と、
並列接続された第1レグ、第2レグおよび第3レグを含み、各レグが直列接続された1組のスイッチング素子を含み、前記トランス回路の1次側に設けられた1次側スイッチング回路と、
前記第1レグと前記第1トランス部との間に設けられた第1共振部、前記第2レグと前記第2トランス部との間に設けられた第2共振部、および前記第3レグと前記第3トランス部との間に設けられた第3共振部を含み、各共振部が共振コイルおよび共振コンデンサを含む1次側共振回路と、
複数の整流素子を含み、前記トランス回路の2次側に設けられた2次側整流回路と、
前記第1レグ、前記第2レグおよび前記第3レグ間に所定の位相差を設けて所定の駆動周波数で駆動させて電流共振を生じさせる制御部と、
を備える3相LLC方式のDC/DCコンバータであって、
前記トランス回路は、N個のトランス群を形成し、
前記N個のトランス群の各トランス群は、前記各トランス部の各1個のトランスを1組として形成されたものであり、1次側コイルが平衡結線接続され、かつ2次側コイルが平衡結線接続されたものである
ことを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御部は、記憶部を含み、
前記記憶部には、
前記位相差に関する第1位相差と、
前記位相差に関し、前記第1位相差とは異なる第2位相差と、
前記2次側整流回路から出力される出力電流および/または出力電力の出力値に関する第1閾値と、が記憶されており、
前記制御部は、
前記出力値と前記第1閾値とを比較し、前記出力値が前記第1閾値未満の場合は前記位相差を前記第1位相差に設定する一方、前記出力値が前記第1閾値以上の場合は前記位相差を前記第2位相差に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
第1トランス部、第2トランス部および第3トランス部を含み、各トランス部がN個のトランス(Nは2以上の整数)で構成されたトランス回路と、
並列接続された第1レグ、第2レグおよび第3レグを含み、各レグが直列接続された1組のスイッチング素子を含み、前記トランス回路の1次側に設けられた1次側スイッチング回路と、
並列接続された第4レグ、第5レグおよび第6レグを含み、各レグが直列接続された1組のスイッチング素子を含み、前記トランス回路の2次側に設けられた2次側スイッチング回路と、
前記第1トランス部を介して前記第1レグと前記第4レグとの間に設けられた第1共振部、前記第2トランス部を介して前記第2レグと前記第5レグとの間に設けられた第2共振部、および前記第3トランス部を介して前記第3レグと前記第6レグとの間に設けられた第3共振部を含み、各共振部が前記各トランス部の1次側および2次側の双方に設けられた共振コイルおよび共振コンデンサを含む共振回路と、
前記1次側スイッチング回路から前記2次側スイッチング回路への電力伝送を行わせる順方向制御と、前記2次側スイッチング回路から前記1次側スイッチング回路への電力伝送を行わせる逆方向制御とを行う制御部と、
を備える3相CLLC方式のDC/DCコンバータであって、
前記制御部は、
前記順方向制御において、前記第1レグ、前記第2レグおよび前記第3レグ間に所定の位相差を設けて所定の駆動周波数で駆動させて電流共振を生じさせ、
前記逆方向制御において、前記第4レグ、前記第5レグおよび前記第6レグ間に所定の位相差を設けて所定の駆動周波数で駆動させて電流共振を生じさせ、
前記トランス回路は、N個のトランス群を形成し、
前記N個のトランス群の各トランス群は、前記各トランス部の各1個のトランスを1組として形成されたものであり、1次側コイルが平衡結線接続され、かつ2次側コイルが平衡結線接続されたものである
ことを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記制御部は、記憶部を含み、
前記記憶部には、
前記順方向制御時の前記位相差に関する第1位相差と、
前記順方向制御時の前記位相差に関し、前記第1位相差とは異なる第2位相差と、
前記順方向制御時において、前記2次側スイッチング回路から出力される出力電流および/または出力電力の第1出力値に関する第1閾値と、
前記逆方向制御時の前記位相差に関する第3位相差と、
前記逆方向制御時の前記位相差に関し、前記第3位相差とは異なる第4位相差と、
前記逆方向制御時において、前記1次側スイッチング回路から出力される出力電流および/または出力電力の第2出力値に関する第2閾値と、が記憶されており、
前記制御部は、
前記順方向制御時において、前記第1出力値と前記第1閾値とを比較し、前記第1出力値が前記第1閾値未満の場合は前記位相差を前記第1位相差に設定する一方、前記第1出力値が前記第1閾値以上の場合は前記位相差を前記第2位相差に設定し、
前記逆方向制御時において、前記第2出力値と前記第2閾値とを比較し、前記第2出力値が前記第2閾値未満の場合は前記位相差を前記第3位相差に設定する一方、前記第2出力値が前記第2閾値以上の場合は前記位相差を前記第4位相差に設定する
ことを特徴とする請求項3に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータの前段に設けられたAC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータの後段に設けられた出力フィルタと、を備える
ことを特徴とする充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相LLC方式(3相CLLC方式を含む。)のDC/DCコンバータおよび充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車に搭載されるバッテリーの大容量化に伴い、急速充電器の大容量化が進み、現在の急速充電器の主流は50[kW]から200[kW]程度になっている。急速充電器の電源部は複数の電源ユニットで構成され、各電源ユニットも12.5[kW]から30[kW]程度の出力が要望され、さらに、小型化、高効率化、低コスト化が要望されている。
【0003】
電源ユニットは、例えば、AC/DCコンバータ、DC/DCコンバータおよび出力フィルタで構成される。AC/DCコンバータはDC/DCコンバータの前段に設けられ、出力フィルタはDC/DCコンバータの後段に設けられる。また、DC/DCコンバータには、入力電圧や出力電圧の変動、および出力先の負荷の変動に対する制御の複雑さにもかかわらず、小型化、高効率化、低コスト化に対応できる電流共振型のDC/DCコンバータが使用されている。
【0004】
電流共振型のDC/DCコンバータとしては、3相駆動の3相LLC方式のDC/DCコンバータが知られている(例えば、特許文献1参照)。3相LLC方式のDC/DCコンバータは、3相駆動になるため部品点数が増加するものの、電流が3相に分散されるため、単相フルブリッジ方式に比べて高出力化に向いている。また、出力波形のリップルが単相フルブリッジ方式に比べて1/10程度に抑えられるので、後段の出力フィルタを構成する部品(電解コンデンサやフィルムコンデンサ、チョークコイル等の大型部品)の小型・軽量・低コスト化が可能となる。さらに、電力変換効率も向上するため注目されている。
【0005】
図9に、従来の一般的な3相LLC方式のDC/DCコンバータ30Aの主回路を示す。DC/DCコンバータ30Aの主回路は、高周波絶縁トランス(以下、トランス)T10~T30と、スイッチング素子Q1~Q6を含む1次側スイッチング回路と、整流ダイオードD1~D6および平滑コンデンサCoを含む2次側整流回路と、1次側共振回路とで構成される。
【0006】
1次側共振回路は、共振コイルL1~L3、トランスT10~T30の励磁コイル(図示せず)およびトランスT10~T30の1次側コイル、共振コンデンサC1~C3により、3相のLLC共振回路を構成する。トランスT10~T30の1次側コイルはY結線(スター結線)接続され、1次側コイルの他端はP点で中性点による平衡結線接続がされている。同様に、トランスT10~T30の2次側コイルはY結線接続され、2次側コイルの他端はS点で中性点による平衡結線接続がされている。
【0007】
DC/DCコンバータ30Aは、3相で電力を分担するため容易に高出力化できるが、一方で、共振に寄与する上記3つの部品(共振コイルL1~L3、トランスT10~T30、共振コンデンサC1~C3)の特性のばらつきにより、各相の共振電流が不平衡状態になる。共振電流が不平衡状態になると、例えば、3波の共振電流の波高値に高低差が生じて、特定の共振コイルやトランスが発熱したり、2次側整流回路から出力される出力波形のリップルが大きくなるという問題が生じる。
【0008】
また、DC/DCコンバータ30Aの小型化のためには、スイッチング素子Q1~Q6の駆動周波数を上げることが有効であるが、スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング損失や、トランスT10~T30や共振コイルL1~L3のコア損失(鉄損)および巻き線の表皮効果と近接効果による損失(銅損)の影響を考慮する必要がある。スイッチング素子Q1~Q6については、スイッチング時間が短く、低オン損失であるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)等のワイドバンドギャップ半導体を使用することができる。一方で、トランスT10~T30や共振コイルL1~L3等の磁気部品については、スイッチング素子Q1~Q6の駆動周波数を100[kHz]程度以上に上げるとコア損失が大きくなり、発熱の問題が生じる。また、巻き線の銅損に対応するために高価なリッツ線を使用する必要が生じるが、効果は限定的である。このため、むやみに駆動周波数を上げることができない。
【0009】
上記のとおり、DC/DCコンバータ30Aの小型化は、トランスT10~T30や共振コイルL1~L3等の磁気部品による制約を受ける。特に、DC/DCコンバータ30Aの出力が10[kW]を超える場合、図9に示すように各相のトランスT10~T30を各1個のトランスで構成すると、他の部品に比べてトランスT10~T30の体積が大きく、重量が重くなり、それに伴い製品サイズが大きくなり、コスト的にも高価なものになるという問題が生じる。
【0010】
図10に、各相のトランスを2個のトランス(T11とT12、T21とT22、T31とT32)で構成した3相LLC方式のDC/DCコンバータ30Bを示す。各相のトランスを並列化することで、トランスに流れる電流を抑えてトランスを小型化することができ、DC/DCコンバータ30Bでは、部品高さを抑えて製品サイズを小型化することができる。
【0011】
DC/DCコンバータ30Bでは、トランスT11~T32の1次側コイルを並列接続し、2次側コイルを直列接続している。トランスT11~T32の2次側コイルを直列接続することで、トランスT11~T32の2次側電流が均一化される(同一になる)ため、共振に寄与する部品(共振コイルL1~L3、トランスT11~T32、共振コンデンサC1~C3)の特性にばらつきがあっても、DC/DCコンバータ30Bの出力波形のリップルを低減することができる。しかしながら、DC/DCコンバータ30Bでは、図9の構成と比較すると、トランスT11~T32の2次側電流が2倍に増加し、トランスT11~T32の発熱量が増加するため、高出力化の実現が難しいという問題が生じる。
【0012】
図11に、トランスT11~T32の1次側コイルを並列接続し、2次側コイルも並列接続した3相LLC方式のDC/DCコンバータ30Cを示す。トランスT11~T32の2次側コイルを並列接続することで、トランスT11~T32の1次側に加え2次側電流は低減するが、共振に寄与する部品の特性にばらつきがあると、その影響がそのまま出力に反映されるため、出力波形のリップルが大きくなってしまうという課題が生じる。
【0013】
非特許文献1では、3相LLC方式のDC/DCコンバータにおいて、各相の駆動周波数は同じで、1次側スイッチング回路からLLC共振回路に入力される各相の入力電圧の位相差を120°から変化させることで、各相の共振電流を均一化し、出力波形のリップルを低減する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、各相の共振電流を検出する電流センサが必要になるため、部品点数の増加により高コスト化を招くという問題や、DC/DCコンバータの動作状態に応じて各相の入力電圧の位相差を変化させる必要があるため、制御の複雑化を招くという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】中国実用新案第212935783号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】'Unbalanced Three-Phase LLC Resonant Converters: Analysis and Trigonometric Current Balancing'. IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS, VOL. 34, NO. 3, MARCH 2019. Retrieved from the Internet: <URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/8379448>.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、高出力化に対応可能で、かつ高コスト化や制御の複雑化を招くことなく出力波形のリップルを低減することが可能な3相LLC方式のDC/DCコンバータおよび充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第1態様に係るDC/DCコンバータは、
第1トランス部、第2トランス部および第3トランス部を含み、各トランス部がN個のトランス(Nは2以上の整数)で構成されたトランス回路と、
並列接続された第1レグ、第2レグおよび第3レグを含み、各レグが直列接続された1組のスイッチング素子を含み、前記トランス回路の1次側に設けられた1次側スイッチング回路と、
前記第1レグと前記第1トランス部との間に設けられた第1共振部、前記第2レグと前記第2トランス部との間に設けられた第2共振部、および前記第3レグと前記第3トランス部との間に設けられた第3共振部を含み、各共振部が共振コイルおよび共振コンデンサを含む1次側共振回路と、
複数の整流素子を含み、前記トランス回路の2次側に設けられた2次側整流回路と、
前記第1レグ、前記第2レグおよび前記第3レグ間に所定の位相差を設けて所定の駆動周波数で駆動させて電流共振を生じさせる制御部と、
を備える3相LLC方式のDC/DCコンバータであって、
前記トランス回路は、N個のトランス群を形成し、
前記N個のトランス群の各トランス群は、前記各トランス部の各1個のトランスを1組として形成されたものであり、1次側コイルが平衡結線接続され、かつ2次側コイルが平衡結線接続されたものであることを特徴とする。
【0018】
前記DC/DCコンバータにおいて、
前記制御部は、記憶部を含み、
前記記憶部には、
前記位相差に関する第1位相差と、
前記位相差に関し、前記第1位相差とは異なる第2位相差と、
前記2次側整流回路から出力される出力電流および/または出力電力の出力値に関する第1閾値と、が記憶されており、
前記制御部は、
前記出力値と前記第1閾値とを比較し、前記出力値が前記第1閾値未満の場合は前記位相差を前記第1位相差に設定する一方、前記出力値が前記第1閾値以上の場合は前記位相差を前記第2位相差に設定するよう構成できる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第2態様に係るDC/DCコンバータは、
第1トランス部、第2トランス部および第3トランス部を含み、各トランス部がN個のトランス(Nは2以上の整数)で構成されたトランス回路と、
並列接続された第1レグ、第2レグおよび第3レグを含み、各レグが直列接続された1組のスイッチング素子を含み、前記トランス回路の1次側に設けられた1次側スイッチング回路と、
並列接続された第4レグ、第5レグおよび第6レグを含み、各レグが直列接続された1組のスイッチング素子を含み、前記トランス回路の2次側に設けられた2次側スイッチング回路と、
前記第1トランス部を介して前記第1レグと前記第4レグとの間に設けられた第1共振部、前記第2トランス部を介して前記第2レグと前記第5レグとの間に設けられた第2共振部、および前記第3トランス部を介して前記第3レグと前記第6レグとの間に設けられた第3共振部を含み、各共振部が前記各トランス部の1次側および2次側の双方に設けられた共振コイルおよび共振コンデンサを含む共振回路と、
前記1次側スイッチング回路から前記2次側スイッチング回路への電力伝送を行わせる順方向制御と、前記2次側スイッチング回路から前記1次側スイッチング回路への電力伝送を行わせる逆方向制御とを行う制御部と、
を備える3相CLLC方式のDC/DCコンバータであって、
前記制御部は、
前記順方向制御において、前記第1レグ、前記第2レグおよび前記第3レグ間に所定の位相差を設けて所定の駆動周波数で駆動させて電流共振を生じさせ、
前記逆方向制御において、前記第4レグ、前記第5レグおよび前記第6レグ間に所定の位相差を設けて所定の駆動周波数で駆動させて電流共振を生じさせ、
前記トランス回路は、N個のトランス群を形成し、
前記N個のトランス群の各トランス群は、前記各トランス部の各1個のトランスを1組として形成されたものであり、1次側コイルが平衡結線接続され、かつ2次側コイルが平衡結線接続されたものであることを特徴とする。
【0020】
前記DC/DCコンバータにおいて、
前記制御部は、記憶部を含み、
前記記憶部には、
前記順方向制御時の前記位相差に関する第1位相差と、
前記順方向制御時の前記位相差に関し、前記第1位相差とは異なる第2位相差と、
前記順方向制御時において、前記2次側スイッチング回路から出力される出力電流および/または出力電力の第1出力値に関する第1閾値と、
前記逆方向制御時の前記位相差に関する第3位相差と、
前記逆方向制御時の前記位相差に関し、前記第3位相差とは異なる第4位相差と、
前記逆方向制御時において、前記1次側スイッチング回路から出力される出力電流および/または出力電力の第2出力値に関する第2閾値と、が記憶されており、
前記制御部は、
前記順方向制御時において、前記第1出力値と前記第1閾値とを比較し、前記第1出力値が前記第1閾値未満の場合は前記位相差を前記第1位相差に設定する一方、前記第1出力値が前記第1閾値以上の場合は前記位相差を前記第2位相差に設定し、
前記逆方向制御時において、前記第2出力値と前記第2閾値とを比較し、前記第2出力値が前記第2閾値未満の場合は前記位相差を前記第3位相差に設定する一方、前記第2出力値が前記第2閾値以上の場合は前記位相差を前記第4位相差に設定するよう構成できる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明に係る充電装置は、
前記いずれかのDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータの前段に設けられたAC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータの後段に設けられた出力フィルタと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高出力化に対応可能で、かつ高コスト化や制御の複雑化を招くことなく出力波形のリップルを低減することが可能な3相LLC方式のDC/DCコンバータおよび充電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(A)第1実施形態の充電装置のブロック図である。(B)第1実施形態の3相LLC方式のDC/DCコンバータの回路図である。(C)1次側スイッチング回路の第1レグの構成例を示す図である。
図2】第1実施形態のDC/DCコンバータにおける入力電圧ベクトルおよび出力電流ベクトルを示す図であって、(A)は位相差120°の入力電圧ベクトル、(B)は(A)に対応した出力電流ベクトル、(C)は位相差を120°から変化させた入力電圧ベクトル、(D)は(C)に対応した出力電流ベクトルを示す図である。
図3】第1実施形態の制御部による制御フローの例を示す図である。
図4】第1実施形態のDC/DCコンバータの第1変形例を示す図である。
図5】第1実施形態のDC/DCコンバータの第2変形例を示す図である。
図6】第1実施形態のDC/DCコンバータの第3変形例を示す図である。
図7】第1実施形態のDC/DCコンバータの第4変形例を示す図である。
図8】第2実施形態の3相CLLC方式のDC/DCコンバータの回路図である。
図9】3相LLC方式のDC/DCコンバータの第1従来例を示す図である。
図10】3相LLC方式のDC/DCコンバータの第2従来例を示す図である。
図11】3相LLC方式のDC/DCコンバータの第3従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る3相LLC方式(3相CLLC方式を含む。)のDC/DCコンバータおよび充電装置の実施形態について説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1(A)に、本発明の第1実施形態に係る充電装置1Aを示し、図1(B)に、本発明の第1実施形態に係る3相LLC方式のDC/DCコンバータ10Aを示す。
【0026】
充電装置1Aは、AC/DCコンバータ2、DC/DCコンバータ10Aおよび出力フィルタ3で構成される電源ユニットと、電源ユニットを制御する制御ユニット4とを備える。充電装置1Aは、例えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の電動車の充電を行う急速充電器である。なお、図1(A)では、1つの電源ユニットのみを示しているが、充電装置1Aは、並列接続された複数の電源ユニットを備えていてもよい。
【0027】
AC/DCコンバータ2は、交流電源5から入力された交流電力の力率を改善しつつ、当該交流電力を直流電力に変換してDC/DCコンバータ10Aに出力する。DC/DCコンバータ10Aは、AC/DCコンバータ2から入力された直流電力を所望の直流電力に変換し、出力フィルタ3を介してバッテリー6に供給する。バッテリー6は、例えば、電動車の車載バッテリーである。なお、説明上AC/DCコンバータ2、DC/DCコンバータ10A、出力フィルタ3の3つの部分に分けて説明するが、3つの部分は機能上の分類であり、1体となった基板構成でもよい。
【0028】
出力フィルタ3は、電解コンデンサやフィルムコンデンサ、チョークコイル等の部品で構成されるノイズフィルタである。出力フィルタ3は、DC/DCコンバータ10Aの出力波形のリップルを低減するためのものであるが、DC/DCコンバータ10Aにおいてリップルを低減することができれば、出力フィルタ3の上記部品の小型・軽量・低コスト化が可能となる。
【0029】
図1(B)に示すように、DC/DCコンバータ10Aは、端子T1~T4と、1次側スイッチング回路11と、2次側整流回路12と、トランス回路13と、1次側共振回路14と、制御部15と、を備える3相LLC方式のDC/DCコンバータである。
【0030】
端子T1、T2は、AC/DCコンバータ2の直流端に接続され、端子T3、T4は、出力フィルタ3を介してバッテリー6に接続される。端子T1、T2には、直流の入力電圧V1が印加され、端子T3、T4からは、直流の出力電圧V2(または出力電圧V2に対応する直流電流)が出力される。
【0031】
1次側スイッチング回路11は、並列接続された第1レグ、第2レグおよび第3レグを含む。第1レグは直列接続された1組のスイッチング素子Q1、Q2を含み、第2レグは直列接続された1組のスイッチング素子Q3、Q4を含み、第3レグは直列接続された1組のスイッチング素子Q5、Q6を含む。ここで、各組を構成するスイッチング素子Q1~Q6は1個のスイッチング素子でもよいが、電流分散のため2個以上の並列接続されたスイッチング素子で構成するのが好ましい。例えば、図1(C)に示すように、スイッチング素子Q1を2個の並列接続されたスイッチング素子Q11とQ12で構成し、スイッチング素子Q2を2個の並列接続されたスイッチング素子Q21とQ22で構成してもよい。スイッチング素子Q3~Q6についても同様である。
【0032】
スイッチング素子Q1~Q6の各電流路にはダイオードが逆方向に並列接続されている。また、スイッチング素子Q1~Q6として、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を使用したMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などのパワー半導体を用いることができる。なお、スイッチング素子Q1~Q6の逆並列ダイオードはスイッチング素子の内蔵ダイオードでも個別ダイオードでもよい。また、各スイッチング素子Q1~Q6に並列に部分共振コンデンサを設けてもよく、各スイッチング素子Q1~Q6の寄生容量を利用してもよい。
【0033】
2次側整流回路12は、並列接続された第4レグ、第5レグおよび第6レグと、平滑コンデンサCoとを含む。第4レグは直列接続された2個の整流ダイオードD1、D2を含み、第5レグは直列接続された2個の整流ダイオードD3、D4を含み、第6レグは直列接続された2個の整流ダイオードD5、D6を含む。整流ダイオードD1~D6は、本発明の整流素子に相当する。平滑コンデンサCoは、出力リップル除去用のコンデンサであり、端子T3、T4間に接続される。なお、各整流ダイオードは電流分散のため複数のダイオードで構成してもよい。たとえば、整流ダイオードD1を2個の並列接続したダイオードで構成し、整流ダイオードD2を2個の並列接続したダイオードで構成してもよい。他の整流ダイオードD3~D6についても同様である。
【0034】
2次側整流回路12は、整流回路であればよく、整流ダイオードD1~D6で構成された3相フルブリッジ整流回路の代わりに、複数のスイッチング素子で構成された同期整流回路を用いることができる。同期整流回路は、複数のスイッチング素子を3相フルブリッジ接続したものであり、各スイッチング素子は、例えば、同期整流制御によりオン/オフされる。この場合、各スイッチング素子が本発明の整流素子に相当する。
【0035】
トランス回路13は、高周波絶縁トランス(以下、トランス)T11~T32を含む。トランス回路13では、トランスT11とトランスT12とが並列接続されて第1トランス部を構成し、トランスT21とトランスT22とが並列接続されて第2トランス部を構成し、トランスT31とトランスT32とが並列接続されて第3トランス部を構成する。上記のとおり、各トランス部は、2個のトランスを並列接続した2並列のトランスで構成されているが、3個以上のトランスを並列接続した3並列以上のトランスで構成されていてもよい。
【0036】
トランスT11の1次側コイルの一端は、トランスT12の1次側コイルの一端に接続されるとともに、1次側共振回路14の第1共振部(共振コイルL1および共振コンデンサC1)を介してスイッチング素子Q1、Q2の接続点X1に接続される。トランスT21の1次側コイルの一端は、トランスT22の1次側コイルの一端に接続されるとともに、1次側共振回路14の第2共振部(共振コイルL2および共振コンデンサC2)を介してスイッチング素子Q3、Q4の接続点X2に接続される。トランスT31の1次側コイルの一端は、トランスT32の1次側コイルの一端に接続されるとともに、1次側共振回路14の第3共振部(共振コイルL3および共振コンデンサC3)を介してスイッチング素子Q5、Q6の接続点X3に接続される。
【0037】
トランスT11、トランスT21およびトランスT31の1次側コイルはY結線(スター結線)接続(平衡結線接続)され、1次側コイルの他端がP1点で中性点接続される。同様に、トランスT12、トランスT22およびトランスT32の1次側コイルはY結線接続(平衡結線接続)され、1次側コイルの他端がP2点で中性点接続される。
【0038】
トランスT11の2次側コイルの一端は、トランスT12の2次側コイルの一端に接続されるとともに、整流ダイオードD1、D2の接続点X4に接続される。トランスT21の2次側コイルの一端は、トランスT22の2次側コイルの一端に接続されるとともに、整流ダイオードD3、D4の接続点X5に接続される。トランスT31の2次側コイルの一端は、トランスT32の2次側コイルの一端に接続されるとともに、整流ダイオードD5、D6の接続点X6に接続される。
【0039】
トランスT11、トランスT21およびトランスT31の2次側コイルはY結線接続(平衡結線接続)され、2次側コイルの他端がS1点で中性点接続される。同様に、トランスT12、トランスT22およびトランスT32の2次側コイルはY結線接続(平衡結線接続)され、2次側コイルの他端がS2点で中性点接続される。
【0040】
すなわち、トランス回路13では、トランスT11、トランスT21およびトランスT31を1組として第1トランス群が形成され、トランスT12、トランスT22およびトランスT32を別の1組として第2トランス群が形成される。
【0041】
本実施形態では、1次側コイルおよび2次側コイルをY結線接続しているが、平衡結線接続であれば、1次側コイルをΔ結線(デルタ結線)接続またはΔ-Cr結線接続してもよく、2次側コイルをΔ結線接続してもよい。Δ-Cr結線とは、例えば、トランスT11、トランスT21およびトランスT31の1次側コイルの他端同士を接続するとともに、共振コンデンサC1をトランスT11の1次側コイルの他端とトランスT21の1次側コイルの他端との間に介装し、共振コンデンサC2をトランスT21の1次側コイルの他端とトランスT31の1次側コイルの他端との間に介装し、共振コンデンサC3をトランスT31の1次側コイルの他端とトランスT11の1次側コイルの他端との間に介装した構成の結線である。トランスT12、トランスT22およびトランスT32の1次側コイルも、同様の構成の結線になる。
【0042】
1次側共振回路14は、第1共振部、第2共振部および第3共振部を含み、トランス回路13とともに3相のLLC共振回路を構成する。具体的には、共振コイルL1、トランスT11、T12の励磁コイルおよび1次側コイル、共振コンデンサC1は、第1のLLC共振回路を構成する。共振コイルL2、トランスT21、T22の励磁コイルおよび1次側コイル、共振コンデンサC2は、第2のLLC共振回路を構成する。共振コイルL3、トランスT31、T32の励磁コイルおよび1次側コイル、共振コンデンサC3は、第3のLLC共振回路を構成する。
【0043】
なお、トランスT11~T32の励磁コイルはトランスT11~T32に含め、図示は省略している。また、共振コイルL1~L3はトランスT11~T32とは別部品としているが、トランスT11~T32の漏れ磁束だけで構成してもよいし、トランスT11~T32の漏れ磁束と個別のコイルとで構成してもよい。
【0044】
制御部15は、スイッチング素子Q1~Q6をオン/オフさせるためのスイッチング素子Q1~Q6の各駆動回路と、各駆動回路に制御信号を送るための制御回路(検出回路を含む)と、後述する共振部品の特性を記憶した記憶部とを含む。制御部15は、アナログ回路で構成されてもよいし、ロジック回路の組み合わせ、マイクロコントローラやDSP等のデジタル回路で構成されてもよいし、アナログ回路とデジタル回路とを組み合わせた回路で構成されてもよい。記憶部は、アナログ回路の場合は、閾値を構成する規定電圧、電流回路でよく、デジタル回路の場合は、上記処理部内のメモリ等で構成されていてもよいし、上記処理部とは別に設けられた不揮発性メモリ等で構成されていてもよい。
【0045】
制御部15は、例えば、図示しない検出器で出力電圧V2および端子T3、T4から出力される出力電流を周期的に(または常時)検出しつつ、出力電流の電流値(以下、出力電流値)が所定の目標電流値と一致するように、スイッチング素子Q1~Q6の駆動周波数を変化させる。
【0046】
具体的には、制御部15は、第1レグを構成するスイッチング素子Q1、Q2を所定のデッドタイムを設けて180°の位相差で交互にオンオフさせ、第2レグを構成するスイッチング素子Q3、Q4を所定のデッドタイムを設けて180°の位相差で交互にオンオフさせ、第3レグを構成するスイッチング素子Q5、Q6を所定のデッドタイムを設けて180°の位相差で交互にオンオフさせる。スイッチング素子Q1、Q3、Q5のオンデューティは、例えば、50%に設定される。
【0047】
また、制御部15は、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間に一定の位相差を設けて、スイッチング素子Q1~Q6を駆動させる(インターリーブ駆動)。例えば、制御部15は、第1レグと第2レグ間の位相差を120°とし、第2レグと第3レグ間の位相差を120°とし、第3レグと第1レグ間の位相差を120°とする。この場合、スイッチング素子Q1、Q3、Q5間のオンタイミングの位相差がそれぞれ120°となり、オフタイミングの位相差もそれぞれ120°となる。同様に、スイッチング素子Q2、Q4、Q6間のオンタイミングの位相差がそれぞれ120°となり、オフタイミングの位相差もそれぞれ120°となる。
【0048】
さらに、制御部15は、スイッチング素子Q1~Q6の各駆動周波数を同一の駆動周波数とし、同一の駆動周波数を同時に同程度変化させることで、出力電流値を所定の目標電流値と一致させる(周波数変調制御)。例えば、DC/DCコンバータ10Aの電流ゲイン(=出力電流/端子T1、T2に入力される入力電流)を1より低下させる場合は、共振コイルL1~L3と共振コンデンサC1~C3で決まる第1共振周波数より高い駆動周波数で、スイッチング素子Q1~Q6を駆動させる。一方、電流ゲインを1より増加させる場合は、第1共振周波数より低く、共振コイルL1~L3、トランスT11~T32の励磁コイルおよび共振コンデンサC1~C3で決まる第2共振周波数より高い駆動周波数で、スイッチング素子Q1~Q6を駆動させる。
【0049】
上記の制御により、第1のLLC共振回路の電流共振により生じた第1共振電流がトランスT11、T12を介して2次側整流回路12に流れ、第2のLLC共振回路の電流共振により生じた第2共振電流がトランスT21、T22を介して2次側整流回路12に流れ、第3のLLC共振回路の電流共振により生じた第3共振電流がトランスT31、T32を介して2次側整流回路12に流れる。2次側整流回路12の出力は、第1共振電流、第2共振電流および第3共振電流の3相の電流が合成された出力となる。
【0050】
DC/DCコンバータ10Aは、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間に一定の位相差を設けて駆動する3相LLC方式であるため、単相フルブリッジ方式に比べて出力波形のリップルを低減することができる。さらに、DC/DCコンバータ10Aでは、トランスT11、トランスT21およびトランスT31を1組として第1トランス群が形成され、トランスT12、トランスT22およびトランスT32を別の1組として第2トランス群が形成され、各トランス群の1次側コイルの他端および2次側コイルの他端がそれぞれY結線接続により中性点接続(平衡結線接続)される。
【0051】
このため、DC/DCコンバータ10Aでは、共振コイルL1~L3、共振コンデンサC1~C3、トランスT11~T32の1次側コイルおよび2次側コイル等の共振に寄与する部品(以下、共振部品)の特性にばらつきがあっても、第1共振電流、第2共振電流および第3共振電流の不平衡状態を緩和し、DC/DCコンバータ10Aの出力波形のリップルを低減することができる。
【0052】
表1に、DC/DCコンバータ10Aにおいて、共振コイルL1~L3、トランスT11~T32の励磁コイル、1次側コイルおよび2次側コイルの特性にばらつきがない場合の数値の例を示し、表2に、上記特性にばらつきがある場合の数値の例を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表1および表2において、第1のLLC共振回路のL、Lm1、Lm2、Lp1、Lp2、Ls1、Ls2は、それぞれ共振コイルL1、トランスT11の励磁コイル、トランスT12の励磁コイル、トランスT11の1次側コイル、トランスT12の1次側コイル、トランスT11の2次側コイル、トランスT12の2次側コイルの各インダクタンスである。第2のLLC共振回路のL、Lm1、Lm2、Lp1、Lp2、Ls1、Ls2は、それぞれ共振コイルL2、トランスT21の励磁コイル、トランスT22の励磁コイル、トランスT21の1次側コイル、トランスT22の1次側コイル、トランスT21の2次側コイル、トランスT22の2次側コイルの各インダクタンスである。同様に、第3のLLC共振回路のL、Lm1、Lm2、Lp1、Lp2、Ls1、Ls2は、それぞれ共振コイルL3、トランスT31の励磁コイル、トランスT32の励磁コイル、トランスT31の1次側コイル、トランスT32の1次側コイル、トランスT31の2次側コイル、トランスT32の2次側コイルの各インダクタンスである。共振コンデンサC1~C3のキャパシタンス(静電容量)は、いずれも264[nF]としている。
【0056】
なお、表2では、共振部品の特性ばらつきを一般的な製造管理ばらつきを考慮して設定した例である。具体的には、共振コイルL1~L3およびトランスT11~T32の1次側コイルおよび2次側コイルの特性(インダクタンス)のばらつきを7%程度に設定し、トランスT11~T32の励磁コイルの特性のばらつきを20%程度に設定している。共振コンデンサC1~C3の特性(キャパシタンス)については、一般に5%程度のばらつきがあるが、ここでは考慮せず、ばらつきがないものとする。
【0057】
表3に、表2の特性のばらつきがある場合であって、トランスT11~T32の構成(1次側コイルおよび2次側コイルの接続態様)を変えた場合における、第1共振電流、第2共振電流、第3共振電流およびその平均値のシミュレーション結果を示す。シミュレーションでは、スイッチング素子Q1~Q6の駆動周波数を、共振コイルL1~L3、トランスT11~T32の励磁コイルおよび1次側コイル、共振コンデンサC1~C3で決まる第2共振周波数より高い周波数付近の値に設定している。
【0058】
【表3】
【0059】
表3において、Aは、本実施形態のトランス回路13の構成である。Bは、1次側コイルが図11に示すように6個まとめてY結線接続され、2次側コイルがトランス回路13のように3個ずつを1組としてY結線接続された構成である。Cは、1次側コイルのみがトランス回路13のように3個ずつを1組としてY結線接続され、2次側コイルは6個まとめてY結線接続された構成である。Dは、1次側コイルおよび2次側コイルの双方が6個まとめてY結線接続された図11の従来のトランス回路の構成である。
【0060】
表3において、第1共振電流、第2共振電流および第3共振電流の割合は、2次側整流回路12で整流された後(平滑コンデンサCoを通過する前)の電流の最大値に対する最小値の割合である。例えば、第1共振電流の割合=(第1共振電流の最小値/第1共振電流の最大値)×100[%]である。平均値は、第1共振電流の割合、第2共振電流の割合および第3共振電流の割合の平均値である。
【0061】
表3の結果から、Dの従来の構成(図11)が出力電流の最小値と最大値の差が最も大きくなり、Cの構成、Bの構成の順に、出力電流の最小値と最大値の差が徐々に小さくなり、本実施形態のトランス回路13の構成であるAの構成が、出力電流の最小値と最大値の差が最も小さくなることが分かる。すなわち、本実施形態のDC/DCコンバータ10Aは、トランス回路13の構成により、各相の電流不平衡を緩和する特別な制御をすることなく第1共振電流、第2共振電流および第3共振電流の不平衡状態を緩和し、出力波形のリップルを低減できることが分かる。
【0062】
ところで、共振部品の特性のばらつきによる共振電流の不平衡の影響は、出力電流または出力電力の状況によって変わり、出力電流または出力電力が最大となる時に、一番問題となることが知られている。例えば、1次側共振回路14やトランス回路13に大きな共振電流が流れている状態で、特定の相の共振電流が想定以上に大きくなると、共振コイルL1~L3やトランスT11~T32で異常発熱が発生し、インダクタンス等の特性が急激に変化する。その結果、共振電流がさらに大きくなり、最悪の場合、DC/DCコンバータ10Aを構成する部品が損傷するおそれがある。
【0063】
上記問題の対策について、図2を用いて説明する。図2は、共振部品の特性にばらつきがある場合の、入力電圧ベクトルおよび出力電流ベクトルを示す図である。
【0064】
図2(A)に、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間に120°の位相差を設けて駆動した場合の接続点X1、X2、X3における入力電圧ベクトルv1、v2、v3を示す。入力電圧ベクトルv1、v2、v3は大きさが等しく、入力電圧ベクトルv1と入力電圧ベクトルv2の位相差θ11、入力電圧ベクトルv2と入力電圧ベクトルv3の位相差θ21、および入力電圧ベクトルv3と入力電圧ベクトルv1の位相差θ31は、いずれも120°である。
【0065】
図2(B)に、図2(A)の場合に2次側整流回路12で整流された後(平滑コンデンサCoを通過する前)の各共振電流に対応する出力電流ベクトルi1、i2、i3を示す。共振部品の特性にばらつきがあるため、出力電流ベクトルi1、i3が大きくなる一方、出力電流ベクトルi2が小さくなり、出力電流ベクトルi1、i2、i3は不平衡状態になっている。出力電流ベクトルi1、i2、i3間の位相差φ11、φ21、φ31は、120°からずれている。
【0066】
ここで、共振部品の特性は、部品単位で容易に測定することができる。コイルやトランスの特性は検査等で予め判明している場合も多い。また、コンデンサの特性は、コイルやトランスの特性に比べてばらつきが小さく、製造ロットによってばらつきの偏りに一定の傾向があるため、容易に測定することができる。一方、既に知られているように、3相LLC方式の出力電流に不平衡がある場合、各相の位相を120°からずらすことで、出力電流を平衡化できることが知られている(非特許文献1)。このため、シミュレーションまたは実回路(実際のDC/DCコンバータ)を用いて、出力電流または出力電力が最大となる状態で、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間の位相差を120°から徐々に変化させることにより、出力電流ベクトルi1、i2、i3が平衡状態になる時の位相差を求めることができる。
【0067】
図2(C)に、出力電流ベクトルi1、i2、i3が平衡状態になる接続点X1、X2、X3における入力電圧ベクトルv1、v2、v3を示す。図2(C)では、位相差θ12を120°よりαだけ広げる一方、位相差θ32を120°よりβだけ狭くしている。位相差θ22は、θ22=120°-α+βとなる。α、βは、0°よりも大きく、120°よりも小さい角度である。
【0068】
図2(D)に、図2(C)の場合に2次側整流回路12で整流された後(平滑コンデンサCoを通過する前)の各共振電流に対応する出力電流ベクトルi1、i2、i3を示す。図2(B)と比較すると、出力電流ベクトルi1、i3が小さくなり、出力電流ベクトルi2が大きくなって、出力電流ベクトルi1、i2、i3は平衡状態になっている。また、出力電流ベクトルi1、i2、i3の位相差φ12、φ22、φ32は、いずれも120°となっている。
【0069】
次に、図3の制御フローを参照して、制御部15によるスイッチング素子Q1~Q6の制御方法について説明する。制御部15は、第1位相差、第2位相差、第1閾値(電流閾値および電力閾値)を予め記憶しているものとする。
【0070】
第1位相差は、共振部品の特性のばらつきによる共振電流の不平衡の影響が比較的小さい低中出力領域(低中出力電流領域かつ低中出力電力領域)における、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間の位相差である。本実施形態では、第1位相差を、図2(A)に示す入力電圧ベクトルv1、v2、v3の位相差(θ11、θ21、θ31)とし、θ11=θ21=θ31=120°とする。
【0071】
第2位相差は、共振部品の特性のばらつきによる共振電流の不平衡の影響が比較的大きい高出力領域(高出力電流領域または高出力電力領域)における、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間の位相差である。本実施形態では、第2位相差を、図2(C)に示す入力電圧ベクトルv1、v2、v3の位相差(θ12、θ22、θ32)とし、θ12=120°+α、θ22=120°-α+β、θ32=120°-βとする。
【0072】
電流閾値は、制御部15が低中出力電流領域か高出力電流領域かを判別するための閾値である。電力閾値は、制御部15が低中出力電力領域か高出力電力領域かを判別するための閾値である。電流閾値および電力閾値は、適宜設定することができ、例えば、DC/DCコンバータ10Aの定格出力値を閾値に設定してもよい。
【0073】
制御を開始した制御部15は、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間の位相差を第1位相差(θ11、θ21、θ31)に設定する(S1)。制御部15は、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間の位相差が第1位相差(θ11、θ21、θ31)となるように、スイッチング素子Q1~Q6を同一の駆動周波数でオンオフさせ、かつ出力電流値が所定の目標電流値と一致するように、スイッチング素子Q1~Q6の駆動周波数を制御する。
【0074】
スイッチング素子Q1、Q3、Q5間のオンオフタイミングの位相差はそれぞれ120°となり、スイッチング素子Q2、Q4、Q6間のオンオフタイミングの位相差もそれぞれ120°となる。また、スイッチング素子Q1、Q2はデッドタイムを設けた180°の位相差で交互にオンオフし、スイッチング素子Q3、Q4およびスイッチング素子Q5、Q6もデッドタイムを設けた180°の位相差で交互にオンオフする。スイッチング素子Q1、Q3、Q5のオンデューティは、例えば、50%に設定される。
【0075】
スイッチング素子Q1~Q6の駆動を開始した制御部15は、図示しない検出器から、出力電流値および出力電圧V2の電圧値を取得し、端子T3、T4から出力される出力電力の電力値(以下、出力電力値)を算出して取得する(S2)。
【0076】
次いで、制御部15は、ステップS2で取得した出力電流値と、記憶部に予め記憶されている電流閾値との比較を行う(S3)。出力電流値が電流閾値以上の場合(S3でYES)、制御部15は、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間の位相差を第2位相差(θ12、θ22、θ32)に設定する(S4)。
【0077】
位相差を第2位相差(θ12、θ22、θ32)に設定した制御部15は、第1レグと第2レグ間の位相差がθ12=120°+α、第2レグと第3レグ間の位相差がθ22=120°-α+β、第3レグと第1レグ間の位相差がθ32=120°-βとなるように、スイッチング素子Q1~Q6を同一の駆動周波数でオンオフさせ、かつ出力電流値が所定の目標電流値と一致するように、スイッチング素子Q1~Q6の駆動周波数を制御する。
【0078】
ステップS3の比較において、出力電流値が電流閾値未満の場合(S3でNO)、制御部15は、ステップS2で取得した出力電力値と、記憶部に予め記憶されている電力閾値との比較を行う(S5)。出力電力値が電力閾値以上の場合(S5でYES)、制御部15は、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間の位相差を第2位相差(θ12、θ22、θ32)に設定する(S4)。一方、出力電力値が電力閾値未満の場合(S5でNO)、制御部15は、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間の位相差を第1位相差(θ11、θ21、θ31)に設定する(S6)。
【0079】
次いで、制御部15は、制御継続か否かの判断を行う(S7)。制御部15は、上位系(例えば、図1(A)に示す制御ユニット4)からの処理終了指示に基づいて、ステップS7の判断を行う。制御部15は、処理終了指示を受信していない場合に制御を継続すると判断して(S7でYES)、ステップS2の処理に移行する一方、処理終了指示を受信した場合に制御を継続しないと判断して(S7でNO)、制御を終了させる。
【0080】
上記のとおり、制御部15は、低中出力領域では各レグ間の位相差を第1位相差(θ11、θ21、θ31)に設定する一方、高出力領域では各レグ間の位相差を第2位相差(θ12、θ22、θ32)に設定する。第2位相差(θ12、θ22、θ32)は、共振部品の特性のばらつきがあっても各共振電流に対応する出力電流ベクトルの不平衡状態を緩和する位相差である。
【0081】
このため、DC/DCコンバータ10Aは、共振部品の特性のばらつきによる共振電流の不平衡の影響が比較的大きい高出力領域であっても、共振電流の不平衡状態を緩和し、出力波形のリップルを低減することができる。また、非特許文献1の方法(各相の共振電流を検出しつつ、DC/DCコンバータの動作状態に応じて各相の入力電圧の位相差を変化させる方法)と比較すると、部品点数を削減でき、制御の複雑化を回避できる。なお、各相の共振電流あるいは負荷電流を検出し、各相の位相は変えずに、各相個別に駆動周波数を調整して、共振電流の不平衡状態を緩和する方法と比較しても同様である。
【0082】
すなわち、DC/DCコンバータ10Aによれば、トランスT11~T32の並列化による高出力化に対応可能で、かつ高コスト化や制御の複雑化を招くことなく、共振部品の特性のばらつきによる共振電流の不平衡状態を緩和して出力波形のリップルを低減することできる。
【0083】
本実施形態では、第1位相差(θ11、θ21、θ31)をθ11=θ21=θ31=120°としたが、120°以外の角度に設定してもよい。例えば、第2位相差と同様に、シミュレーションまたは実回路を用いて、出力電流および出力電力が低中出力領域に含まれる状態で、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間の位相差を120°から徐々に変化させることにより、各共振電流に対応する出力電流ベクトルが平衡状態になる位相差を求め、求めた位相差を第1位相差としてもよい。
【0084】
本実施形態では、制御部15は、低中出力領域における第1位相差と、高出力領域における第2位相差との2つの領域の2つ位相差を記憶して、制御を行ったが、3つ以上の領域に分けて、3つ以上の位相差を記憶して制御を行ってもよい。例えば、制御部15は、低出力領域における第1の第1位相差(第1位相差A)と、中出力領域における第2の第1位相差(第1位相差B)と、高出力領域における第2位相差とを記憶して制御を行ってもよい。あるいは、制御部15は、低中出力領域における第1位相差と、高出力電流領域における第1の第2位相差(第2位相差A)と、高出力電力領域における第2の第2位相差(第2位相差B)とを記憶して制御を行ってもよい。
【0085】
また、制御部15は、バッテリー6の種類や制御目的に応じて、出力電流値の比較(図3のS3)または出力電力値の比較(図3のS5)の一方だけの処理を行い、各レグ間の位相差を設定してもよい。
【0086】
[第1実施形態の第1変形例]
図4に、第1変形例に係る3相LLC方式のDC/DCコンバータ10Bを示す。DC/DCコンバータ10Bは、1次側共振回路14Bを除いて、第1実施形態のDC/DCコンバータ10Aと同じ構成である。
【0087】
1次側共振回路14Bでは、第1共振部の共振コイルが、トランスT11の1次側コイルに接続された共振コイルL11とトランスT12の1次側コイルに接続された共振コイルL12とで構成され、第2共振部の共振コイルが、トランスT21の1次側コイルに接続された共振コイルL21とトランスT22の1次側コイルに接続された共振コイルL22とで構成され、第3共振部の共振コイルが、トランスT31の1次側コイルに接続された共振コイルL31とトランスT32の1次側コイルに接続された共振コイルL32とで構成される。
【0088】
上記構成によれば、第1実施形態と比較して、各共振コイルL11~L32に流れる共振電流を低減することができるため、共振コイルL11~L32の小型・軽量・低コスト化が可能となる。さらに、共振コイルL11~L32の発熱量を低減することもできる。
【0089】
なお、1次側共振回路14Bにおいて、共振コイルと共振コンデンサを入れ替えてもよい。すなわち、第1共振部の共振コンデンサを、トランスT11の1次側コイルに接続された共振コンデンサC11とトランスT12の1次側コイルに接続された共振コンデンサC12とで構成し、第2共振部の共振コンデンサを、トランスT21の1次側コイルに接続された共振コンデンサC21とトランスT22の1次側コイルに接続された共振コンデンサC22とで構成し、第3共振部の共振コンデンサを、トランスT31の1次側コイルに接続された共振コンデンサC31とトランスT32の1次側コイルに接続された共振コンデンサC32とで構成し、各共振コイルL11~L32を第1実施形態と同様に共振コイルL1~L3で構成してもよい。
【0090】
[第1実施形態の第2変形例]
図5に、第2変形例に係る3相LLC方式のDC/DCコンバータ10Cを示す。DC/DCコンバータ10Cは、1次側共振回路14Cを除いて、第1変形例のDC/DCコンバータ10Bと同じ構成である。
【0091】
1次側共振回路14Cは、第1変形例の1次側共振回路14Bにおいて、第1共振部の共振コンデンサを、共振コイルL11に接続された共振コンデンサC11と共振コイルL12に接続された共振コンデンサC12とで構成し、第2共振部の共振コンデンサを、共振コイルL21に接続された共振コンデンサC21と共振コイルL22に接続された共振コンデンサC22とで構成し、第3共振部の共振コンデンサを、共振コイルL31に接続された共振コンデンサC31と共振コイルL32に接続された共振コンデンサC32とで構成したものである。
【0092】
上記構成によれば、第1実施形態と比較して、各共振コイルL11~L32および各共振コンデンサC11~C32に流れる共振電流を低減することができるため、共振コイルL11~L32および共振コンデンサC11~C32の小型・軽量・低コスト化が可能となる。さらに、共振コイルL11~L32および共振コンデンサC11~C32の発熱量を低減することもできる。
【0093】
[第1実施形態の第3変形例]
図6に、第3変形例に係る3相LLC方式のDC/DCコンバータ10Dを示す。DC/DCコンバータ10Dは、1次側共振回路14Dを除いて、第2変形例のDC/DCコンバータ10Cと同じ構成である。
【0094】
1次側共振回路14Dは、第2変形例の1次側共振回路14Cにおいて、共振コンデンサC11~C32の位置をトランスT11~T32の各1次側コイルの他端側に移動させたものである。共振コンデンサC11、C21、C31は、それぞれトランスT11、T21、T31の各1次側コイルの他端とP1点との間に介装され、共振コンデンサC12、C22、C32は、それぞれトランスT12、T22、T32の各1次側コイルの他端とP2点との間に介装されている。
【0095】
なお、第1共振部において、共振コイルL11、L12および共振コンデンサC11、C12の位置は、第1共振部の等価回路が同じになるのであれば、スイッチング素子Q1,Q2の接続点X1からP1、P2点までの間において、任意に変更することができる。第2共振部および第3共振部についても同様である。
【0096】
また、1次側共振回路14Dでは、各共振部の等価回路が同じになるのであれば、共振コイルL11~L32および共振コンデンサC11~C32を分割して配置してもよい。例えば、共振コンデンサC11を2分割して、共振コイルL11の1次側コイルの一端側と他端側に配置してもよい。
【0097】
[第1実施形態の第4変形例]
図7に、第4変形例に係る3相LLC方式のDC/DCコンバータ10Eを示す。DC/DCコンバータ10Eは、2次側整流回路12Eを除いて、第1実施形態のDC/DCコンバータ10Aと同じ構成である。
【0098】
2次側整流回路12Eは、トランス回路13の各トランス部に対応した3個のフルブリッジ整流回路(整流ダイオードD11~D62)を備える。第1トランス部に対応したフルブリッジ整流回路は、整流ダイオードD11~D22で構成され、整流ダイオードD11、D21の接続点X41にトランスT11の2次側コイルの一端が接続され、整流ダイオードD12、D22の接続点X42にトランスT12の2次側コイルの一端が接続される。第2トランス部に対応したフルブリッジ整流回路は、整流ダイオードD31~D42で構成され、整流ダイオードD31、D41の接続点X51にトランスT21の2次側コイルの一端が接続され、整流ダイオードD32、D42の接続点X52にトランスT22の2次側コイルの一端が接続される。第3トランス部に対応したフルブリッジ整流回路は、整流ダイオードD51~D62で構成され、整流ダイオードD51、D61の接続点X61にトランスT31の2次側コイルの一端が接続され、整流ダイオードD52、D62の接続点X62にトランスT32の2次側コイルの一端が接続される。
【0099】
上記構成によれば、第1実施形態と比較して、各整流ダイオードD11~D62に流れる共振電流による負荷電流を低減することができるため、整流ダイオードD11~D62の小型・軽量・低コスト化が可能となる。さらに、整流ダイオードD11~D62の発熱量を低減することもできる。
【0100】
[第2実施形態]
図8に、本発明の第2実施形態に係る3相双方向CLLC方式のDC/DCコンバータ20を示す。DC/DCコンバータ20は、端子T1~T4と、1次側スイッチング回路21と、2次側スイッチング回路22と、トランス回路23と、本発明の「共振回路」に相当する1次側共振回路24および2次側共振回路24’と、制御部25とを備え、双方向の電力伝送を行う。
【0101】
1次側スイッチング回路21は、端子T1、T2間に接続された平滑コンデンサCo1を備える点を除いて、第1実施形態の1次側スイッチング回路11と同じ構成である。
【0102】
2次側スイッチング回路22は、並列接続された第4レグ、第5レグおよび第6レグと、端子T3、T4間に接続された平滑コンデンサCo2とを含む。第4レグは直列接続された1組のスイッチング素子Q7、Q8を含み、第5レグは直列接続された1組のスイッチング素子Q9、Q10を含み、第6レグは直列接続された1組のスイッチング素子Q11、Q12を含む。スイッチング素子Q7~Q12の各電流路にはダイオードが逆方向に並列接続されている。すなわち、2次側スイッチング回路22は、1次側スイッチング回路21と同じ回路構成である。
【0103】
トランス回路23は、第1実施形態のトランス回路13と同じ構成であり、1次側共振回路24は、第1実施形態の1次側共振回路14と同じ構成である。
【0104】
2次側共振回路24’は、1次側共振回路24と同じ構成であり、共振コイルL4および共振コンデンサC4からなる第1共振部と、共振コイルL5および共振コンデンサC5からなる第2共振部と、共振コイルL6および共振コンデンサC6からなる第3共振部とを含む。
【0105】
トランスT11、T12の2次側コイルの一端は、第1共振部(共振コイルL4および共振コンデンサC4)を介して、スイッチング素子Q7、Q8の接続点X4に接続される。トランスT21、T22の2次側コイルの一端は、第2共振部(共振コイルL5および共振コンデンサC5)を介して、スイッチング素子Q9、Q10の接続点X5に接続される。トランスT31、T32の2次側コイルの一端は、第3共振部(共振コイルL6および共振コンデンサC6)を介して、スイッチング素子Q11、Q12の接続点X6に接続される。
【0106】
1次側共振回路24および2次側共振回路24’は、トランス回路23とともに3相の双方向CLLC共振回路を構成する。具体的には、共振コンデンサC1、共振コイルL1、トランスT11、T12(励磁コイル、1次側コイルおよび2次側コイル)、共振コイルL4、共振コンデンサC4は、第1のCLLC共振回路を構成する。共振コンデンサC2、共振コイルL2、トランスT21、T22(励磁コイル、1次側コイルおよび2次側コイル)、共振コイルL5、共振コンデンサC5は、第2のCLLC共振回路を構成する。共振コンデンサC3、共振コイルL3、トランスT31、T32(励磁コイル、1次側コイルおよび2次側コイル)、共振コイルL6、共振コンデンサC6は、第3のCLLC共振回路を構成する。
【0107】
なお、トランスT11~T32の励磁コイルはトランスT11~T32に含め、図示は省略している。また、共振コイルL4~L6はトランスT11~T32とは別部品としているが、トランスT11~T32の漏れ磁束だけで構成してもよいし、トランスT11~T32の漏れ磁束と個別のコイルとで構成してもよい。
【0108】
制御部25は、スイッチング素子Q1~Q12をオン/オフさせるためのスイッチング素子Q1~Q12の各駆動回路と、各駆動回路に制御信号を送るための制御回路(検出回路を含む)と、共振部品の特性を記憶した記憶部とを含む。各駆動回路、制御回路および記憶部は、第1実施形態と同じ構成を含む。
【0109】
制御部25は、端子T1、T2側から端子T3、T4側への電力伝送を行わせる制御を順方向制御とすれば、当該順方向制御と、端子T3、T4側から端子T1、T2側への電力伝送を行わせる逆方向制御とを行う。
【0110】
順方向制御時の制御部25は、スイッチング素子Q1~Q6については第1実施形態と同様の制御を行い、スイッチング素子Q7~Q12については常時オフさせるダイオードブリッジ整流制御を行うか、または第1共振電流~第3共振電流に同期させてスイッチング素子Q7~Q12をオンオフさせる同期整流制御を行う。以下では、逆方向制御について説明する。
【0111】
逆方向制御時におけるスイッチング素子Q7~Q12の制御は、順方向制御時におけるスイッチング素子Q1~Q6の制御と同じである。逆方向制御時におけるスイッチング素子Q1~Q6の制御は、順方向制御時におけるスイッチング素子Q7~Q12の制御と同じであり、上記のとおりダイオードブリッジ整流制御または同期整流制御である。
【0112】
逆方向制御時の制御部25は、図示しない検出器で出力電圧V1および端子T1、T2から出力される出力電流を検出しつつ、出力電流値が所定の目標電流値と一致するように、スイッチング素子Q7~Q12の駆動周波数を変化させる。スイッチング素子Q7~Q12の各駆動周波数は、同一の駆動周波数である。
【0113】
具体的には、制御部25は、第4レグを構成するスイッチング素子Q7、Q8を所定のデッドタイムを設けて180°の位相差で交互にオンオフさせ、第5レグを構成するスイッチング素子Q9、Q10を所定のデッドタイムを設けて180°の位相差で交互にオンオフさせ、第6レグを構成するスイッチング素子Q11、Q12を所定のデッドタイムを設けて180°の位相差で交互にオンオフさせる。スイッチング素子Q7、Q9、Q11のオンデューティは、例えば、50%に設定される。
【0114】
また、制御部25は、第4レグ、第5レグおよび第6レグ間に一定の位相差を設けて、スイッチング素子Q7~Q12を駆動する。例えば、制御部25は、第4レグと第5レグ間の位相差を120°とし、第5レグと第6レグ間の位相差を120°とし、第6レグと第4レグ間の位相差を120°とする。この場合、スイッチング素子Q7、Q9、Q11間のオンタイミングの位相差がそれぞれ120°となり、オフタイミングの位相差もそれぞれ120°となる。同様に、スイッチング素子Q8、Q10、Q12間のオンタイミングの位相差がそれぞれ120°となり、オフタイミングの位相差もそれぞれ120°となる。
【0115】
上記の制御により、第1のCLLC共振回路の電流共振により生じた第1共振電流と、第2のCLLC共振回路の電流共振により生じた第2共振電流と、第3のCLLC共振回路の電流共振により生じた第3共振電流とが、1次側スイッチング回路21に流れる。1次側スイッチング回路21の出力は、第1共振電流、第2共振電流および第3共振電流の3相の電流が合成された出力となる。
【0116】
トランスの2次側にある共振コンデンサと共振コイルは、トランスの1次側に等価変換可能で、トランスの1次側にある共振コンデンサと共振コイルは、トランスの2次側に等価変換可能である。このため、本実施形態における2次側共振回路24’および1次側共振回路24の等価回路は、第1実施形態の1次側共振回路14の等価回路と同じになり、共振部品の特性のばらつきによる共振電流の不平衡の影響は、本実施形態と第1実施形態とで共通する。その結果、第1実施形態の表3の結果が本実施形態においても適用され、本実施形態のトランス回路23の構成により、第1共振電流、第2共振電流および第3共振電流の不平衡状態を緩和し、出力波形のリップルを低減できることが分かる。
【0117】
また、逆方向制御時の制御部25は、図3の制御フローと同様の制御フローを実行する。制御部25は、第1位相差、第2位相差、第1閾値に加えて、さらに第3位相差、第4位相差、第2閾値(電流閾値および電力閾値)を予め記憶しているものとする。
【0118】
第3位相差は、共振部品の特性のばらつきによる共振電流の不平衡の影響が比較的小さい低中出力領域(低中出力電流領域かつ低中出力電力領域)における、第4レグ、第5レグおよび第6レグ間の位相差である。本実施形態では、第3位相差を、第4レグ、第5レグおよび第6レグ間に120°の位相差を設けて駆動した場合の接続点X4、X5、X6における入力電圧ベクトルv4、v5、v6の位相差(θ41、θ51、θ61)とし、θ41=θ51=θ61=120°とする。
【0119】
第4位相差は、共振部品の特性のばらつきによる共振電流の不平衡の影響が比較的大きい高出力領域(高出力電流領域または高出力電力領域)における、第4レグ、第5レグおよび第6レグ間の位相差である。本実施形態では、第4位相差は、共振部品の特性のばらつきがあっても各共振電流に対応する出力電流ベクトルの不平衡が緩和される入力電圧ベクトルv4、v5、v6の位相差(θ42、θ52、θ62)とし、θ42=120°+α、θ52=120°-α+β、θ62=120°-βとする。α、βは、0°よりも大きく、120°よりも小さい角度である。
【0120】
電流閾値は、制御部25が低中出力電流領域か高出力電流領域かを判別するための閾値である。電力閾値は、制御部25が低中出力電力領域か高出力電力領域かを判別するための閾値である。電流閾値および電力閾値は、適宜設定することができ、例えば、DC/DCコンバータ20の逆方向制御時の定格出力値を閾値に設定してもよい。
【0121】
逆方向制御時の制御部25は、低中出力領域では各レグ間の位相差を第3位相差(θ41、θ51、θ61)に設定する一方、高出力領域では各レグ間の位相差を第4位相差(θ42、θ52、θ62)に設定する。このため、DC/DCコンバータ20は、共振部品の特性のばらつきによる共振電流の不平衡の影響が比較的大きい高出力領域であっても、各相の電流不平衡を測定し、緩和する複雑な制御をすることなく共振電流の不平衡状態を緩和し、出力波形のリップルを低減することができる。
【0122】
すなわち、DC/DCコンバータ20によれば、トランスT11~T32の並列化による高出力化に対応可能で、かつ高コスト化や制御の複雑化を招くことなく、共振部品の特性のばらつきによる共振電流の不平衡状態を緩和して出力波形のリップルを低減することできる。
【0123】
本実施形態では、第3位相差(θ41、θ51、θ61)をθ41=θ51=θ61=120°としたが、120°以外の角度に設定してもよい。例えば、第4位相差と同様に、シミュレーションまたは実回路を用いて、出力電流または出力電力が低中出力領域に含まれる状態で、第4レグ、第5レグおよび第6レグ間の位相差を120°から徐々に変化させることにより、各共振電流に対応する出力電流ベクトルが平衡状態になる位相差を求め、求めた位相差を第3位相差としてもよい。
【0124】
本実施形態では、制御部25は、低中出力領域における第3位相差と、高出力領域における第4位相差との2つの領域の2つ位相差を記憶して、逆方向制御を行ったが、3つ以上の領域に分けて、3つ以上の位相差を記憶して制御を行ってもよい。例えば、制御部25は、低出力領域における第1の第3位相差(第3位相差A)と、中出力領域における第2の第3位相差(第3位相差B)と、高出力領域における第4位相差とを記憶して制御を行ってもよい。あるいは、制御部25は、低中出力領域における第1位相差と、高出力電流領域における第1の第4位相差(第4位相差A)と、高出力電力領域における第2の第4位相差(第4位相差B)とを記憶して制御を行ってもよい。
【0125】
また、制御部25は、バッテリー6の種類や制御目的に応じて、出力電流値の比較(図3のS3に相当)または出力電力値の比較(図3のS5に相当)の一方だけの処理を行い、各レグ間の位相差を設定してもよい。
【0126】
以上、本発明に係る3相LLC方式のDC/DCコンバータおよび充電装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0127】
本発明に係るDC/DCコンバータは、第1トランス部、第2トランス部および第3トランス部を含み、各トランス部がN個のトランス(Nは2以上の整数)で構成されたトランス回路と、並列接続された第1レグ、第2レグおよび第3レグを含み、各レグが直列接続された1組のスイッチング素子を含み、トランス回路の1次側に設けられた1次側スイッチング回路と、第1レグと第1トランス部との間に設けられた第1共振部、第2レグと第2トランス部との間に設けられた第2共振部、および第3レグと第3トランス部との間に設けられた第3共振部を含み、各共振部が共振コイルおよび共振コンデンサを含む1次側共振回路と、複数の整流素子を含み、トランス回路の2次側に設けられた2次側整流回路と、第1レグ、第2レグおよび第3レグ間に所定の位相差を設けて所定の駆動周波数で駆動させて電流共振を生じさせる制御部と、を備える3相LLC方式のDC/DCコンバータであって、トランス回路は、N個のトランス群を形成し、N個のトランス群の各トランス群は、各トランス部の各1個のトランスを1組として形成されたものであり、1次側コイルが平衡結線接続され、かつ2次側コイルが平衡結線接続されているのであれば、適宜構成を変更することができる。
【0128】
例えば、第2実施形態の1次側共振回路24および2次側共振回路24’に対して、第1実施形態の第1変形例~第3変形例の構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0129】
1A 充電装置
2 AC/DCコンバータ
3 出力フィルタ
4 制御ユニット
5 交流電源
6 バッテリー
10A~10E DC/DCコンバータ
11 1次側スイッチング回路
12、12E 1次側整流回路
13 トランス回路
14、14B~14D 1次側共振回路
15 制御部
20 DC/DCコンバータ
21 1次側スイッチング回路
22 2次側スイッチング回路
23 トランス回路
24 1次側共振回路
24’ 2次側共振回路
25 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11