(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054942
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】配線・配管材収容治具及び配線・配管材収容装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/08 20060101AFI20240411BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20240411BHJP
F16L 11/11 20060101ALI20240411BHJP
F16L 21/00 20060101ALI20240411BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H02G1/08
F16L1/00 J
F16L11/11
F16L21/00 D
H02G3/04 068
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161422
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】北村 祐介
【テーマコード(参考)】
3H111
5G352
5G357
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111CA12
3H111CA42
3H111CB18
5G352CK07
5G352DA05
5G357DA06
5G357DB01
5G357DB02
5G357DB10
5G357DD01
5G357DD05
5G357DD10
5G357DD12
5G357DG05
5G357DG10
(57)【要約】
【課題】
スリット付管の連結部において、次のスリット付管のスリットを先行して拡開することで、治具によるスリットの拡開を連続して行えるようにすることである。
【解決手段】
スリット付管PのスリットSを拡開して、その拡開状態を維持するスリット拡開体D
1 と、前記スリット付管Pの拡開されたスリットSの間から配線・配管材Aを、当該スリット付管Pの内部に送り込むための管送り込みローラ22とを備えた配線・配管材収容治具Tであって、直列連結された次のスリット付管Pに到達する直前に、前記次のスリット付管P自体又はスリット付管Pどうしを連結する継手Cに当接させて、前記スリット拡開体D
1 に対して先行して次のスリット付管Pを拡開する先行スリット拡開体D
2 を具備した構成とする。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のスリット付管が直列に連結され、当該スリット付管は、長手方向に連続するスリットが設けられて、当該スリットの形成により管壁の両端縁が近接又は密着した状態で対向配置され、当該スリットを拡開させることで、前記両端縁間から内部に配線・配管材を収容可能であり、直列連結された複数本のスリット付管の前記スリットに沿って移動されて、前記配線・配管材を当該スリット付管の内部に収容するための配線・配管材収容治具であって、
前記スリット付管の前記対向配置された両端縁間に配置されて、先端割り込み部が近接又は密着した前記両端縁間に割り込むことで当該両端縁間を離間拡開させて、その離間状態を維持するスリット拡開部と、
前記スリット付管の離間された前記両端縁間から前記配線・配管材を、当該スリット付管の内部に送り込むための管送り込み部と、を備え、
前記配線・配管材収容治具の移動中において、前記スリット拡開部の先端割り込み部が、直列連結された次のスリット付管に到達する直前に、前記次のスリット付管自体又はスリット付管どうしを連結する継手に当接して、前記スリット拡開部の先端割り込み部が、次のスリット付管のスリットの両端縁間に円滑に入り込むことを可能とする先行位置合せ部が、前記スリット拡開部よりも前記移動方向に沿って前方に設けられていることを特徴とする配線・配管材収容治具。
【請求項2】
前記先行位置合せ部は、前記移動方向に沿って前方側から後方側に向けて広くなる傾斜案内部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線・配管材収容治具。
【請求項3】
長手方向に連続するスリットが設けられて、当該スリットの形成により管壁の両端縁が近接又は密着した状態で対向配置され、当該スリットを拡開させることで、前記両端縁間から内部に配線・配管材を収容可能であって、各スリットが同一直線上に配置されるように直列に連結された複数本のスリット付管と、
前記複数本のスリット付管に各スリットに沿って直列方向に順に移動されて、前記スリットを介して複数本のスリット付管の内部に配線・配管材を送り込む請求項1に記載の配線・配管材収容治具と、
から成ることを特徴とする配線・配管材収容装置。
【請求項4】
複数本の前記スリット付管は、継手を介して連結されており、
前記継手は、
前記配線・配管材を通過させて内部に収容可能な管通過開口を備え、
2本のスリット付管の連結部の内部に配置されて、スリット付管のスリットと前記継手の管通過開口とを管周方向に沿って一致させた状態で、前記スリットと前記管通過開口とが管周方向に沿って大きくずれない状態で連結可能であり、
前記先行位置合せ部は、前記継手の内面に当接する構成であることを特徴とする請求項3に記載の配線・配管材収容装置。
【請求項5】
前記継手は、前記管通過開口の幅が広がるように変形可能であり、
前記先行位置合せ部は、前記継手の内面を押圧することで、当該継手を介して次のスリット付管のスリットの両端縁を離間させる先行スリット拡開部からなることを特徴とする請求項4に記載の配線・配管材収容装置。
【請求項6】
前記スリット付管は、矩形筒状であり、
前記スリットは、1つの特定面の中央に設けられ、前記継手は、前記特定面と対向する対向面に沿って延びる基部と、当該基部における前記スリットと直交する方向の両端から立設して、前記特定面及び対向面の双方に対して隣接する2つの隣接面の内側に沿って延びる一対の腕部と、を備え、前記一対の腕部は、前記2つの隣接面の中間を超える立設長を有し、各腕部の先端間に前記管通過開口が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の配線・配管材収容装置。
【請求項7】
前記配線・配管材収容治具の移動方向及び前記スリット付管のスリット部分の内外方向の双方に直交するスリット付管の幅方向において、
前記先行スリット拡開部の最大幅は、前記スリット拡開部によりスリットが拡開されている部分の前記スリット付管の前記幅方向の内幅よりも狭いことを特徴とする請求項5又は6のいずれかに記載の配線・配管材収容装置。
【請求項8】
前記複数のスリット付管は、両端部に連結部を有し、全長に亘ってスリットが形成され、一端の連結部が直列状に隣接した別のスリット付管の他端の連結部に内嵌されることで直列状に連結可能であり、
前記スリット付管の一端に向けて移動された配線・配管材収容治具の前記スリット拡開部が前記別のスリット付管のスリットの両端縁間に円滑に入り込み可能とすべく、前記先行位置合せ部が、前記スリット付管の一端の連結部の内側に当接して、前記スリット拡開部と、前記別のスリット付管のスリットの両端縁間との相対位置を調整可能となるように、
互いに連結された各スリット付管の各スリットの相対位置が管周方向に沿って過剰にずれない状態で連結可能であることを特徴とする請求項3に記載の配線・配管材収容装置。
【請求項9】
前記配線・配管材収容治具の移動方向及び前記スリット付管のスリット部分の内外方向の双方に直交する方向において、
前記別のスリット付管の他端の連結部に内嵌された前記スリット付管の一端の連結部は、他の部分よりも内側の幅の狭い狭幅部が形成され、
前記先行位置合せ部には、前記狭幅部よりも外側幅が広く、当該外側幅が広い箇所が前記スリット付管の連結部の狭幅部を外側に向けて押圧する押圧部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の配線・配管材収容装置。
【請求項10】
前記配線・配管材収容治具の移動方向及び前記スリット付管のスリット部分の内外方向の双方に直交する方向において、
前記別のスリット付管の他端の連結部に内嵌されたスリット付管の前記一端の連結部の内側に被当接部が形成され、
前記先行位置合せ部は、前記スリット付管の一端の連結部の被当接部に当接して、当該連結部の対向する各管壁を外側に押圧することで、当該スリット付管の一端の連結部に外嵌されている別のスリット付管の連結部の対向する各管壁を外側に押圧して、当該別のスリット付管の連結部のスリットを連続して拡開可能であることを特徴とする請求項8に記載の配線・配管材収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリット付管の内部に配線・配管材を収容するための配線・配管材収容治具及び配線・配管材収容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スリット付管は、その内部に配線・配管材を収容して保持するための管であって、その一つであるスリット付きの波付管として、特許文献1に開示のものが知られている。スリット付管は、所定長(例えば、3~4m)に製作されて、施工現場において、スリット付管に一体に設けられた連結部又は独立した連結具を用いて直列に接続して使用される。特許文献1に開示のスリット付きの波付管では、その端部に、他の部分よりも僅かにサイズの大きな連結部が一体に形成されていて、当該連結部を用いて2本の波付管を接続している。
【0003】
一方、スリット付管の内部に配線・配管材を収容するには、スリットの部分を、配線・配管材が収容可能な大きさ(内幅)まで拡開可能な治具を用いており、この治具の一つとして、特許文献2に開示のものが知られている。この治具は、一対一組の拡開ローラの間隔が順次大きくした複数組の拡開ローラを用いることで、スリット付管のスリットを拡開させ、スリット付管における拡開状態を維持している部分から配線・配管材を収容している。ここで、単一のスリット付管では、スリットの拡開は、その先の所定長の部分まで及ぶことで、支障なく拡開可能であるが、2本のスリット付管の接続部においては、治具による一方のスリット付管の拡開力は、その端部で遮断されて、他方のスリット付管に及ばず、当該他方のスリット付管は、新規に拡開させる必要があり、2本のスリット付管の接続部において、次のスリット付管をスムーズに拡開できない問題があった。
【0004】
また、特許文献3に開示の治具は、先端部が鋭角状に形成されたブレードを、スリット付管のスリットの部分に挿入して引っ張ることで、当該スリットを拡開させる構造である。複数本のスリット付管を接続部又は接続具で接続した状態では、複数のスリット付管の各スリットは、長手方向(形成方向)に連続するように接続されるが、各スリットが管周方向に微妙にずれて接続される場合があり、しかも、上記と同様に、治具による一方のスリット付管の拡開力は、その端部で遮断されて、他方のスリット付管に及ばない。このため、スリット付管の接続部において、前記ブレードが次のスリット付管の端面に当たって、そのスリットに円滑に入り込まないことがあり、円滑な配線・配管材の収容を阻害している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-141099号公報
【特許文献2】特開2015-130715号公報
【特許文献3】実開平1-93907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、連結された複数のスリット付管の各スリットを治具により拡開して内部に配線・配管材を収容する際に、スリット付管の連結部において、次のスリット付管のスリットを先行して拡開することで、治具によるスリットの拡開を連続して行えるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、
複数本のスリット付管が直列に連結され、当該スリット付管は、長手方向に連続するスリットが設けられて、当該スリットの形成により管壁の両端縁が近接又は密着した状態で対向配置され、当該スリットを拡開させることで、前記両端縁間から内部に配線・配管材を収容可能であり、直列連結された複数本のスリット付管の前記スリットに沿って移動されて、前記配線・配管材を当該スリット付管の内部に収容するための配線・配管材収容治具であって、
前記スリット付管の前記対向配置された両端縁間に配置されて、先端割り込み部が近接又は密着した前記両端縁間に割り込むことで当該両端縁間を離間拡開させて、その離間状態を維持するスリット拡開部と、
前記スリット付管の離間された前記両端縁間から前記配線・配管材を、当該スリット付管の内部に送り込むための管送り込み部と、を備え、
前記配線・配管材収容治具の移動中において、前記スリット拡開部の先端割り込み部が、直列連結された次のスリット付管に到達する直前に、前記次のスリット付管自体又はスリット付管どうしを連結する継手に当接して、前記スリット拡開部の先端割り込み部が、次のスリット付管のスリットの両端縁間に円滑に入り込むことを可能とする先行位置合せ部が、前記スリット拡開部よりも前記移動方向に沿って前方に設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、配線・配管材収容治具が、複数本のスリット付管の連結部を除く一般部を走行する場合には、配線・配管材収容治具のスリット拡開部の先端に設けられた先端割り込み部がスリットを構成する管壁の両端縁間に割り込んで、当該スリットを拡開させて、その拡開が維持された状態で、当該配線・配管材収容治具は、スリット付管のスリットに沿って移動し、その間に、拡開されたスリットの間に導入された配線・配管材は、前記先端割り込み部の後方に配置された管送り込み部によりスリット付管の内部に順次送り込まれる。
【0009】
一方、配線・配管材収容治具が、複数本のスリット付管の連結部を走行する場合には、スリット拡開部の先端割り込み部が、直列連結された次のスリット付管に到達する直前に、前記先行位置合せ部が、前記次のスリット付管自体又はスリット付管どうしを連結する継手の内面に当接して、スリット付管自体又は継手の幅が拡げられる場合には、次のスリット付管の端部のスリットが拡開される。これにより、配線・配管材を収容中のスリット付管のスリットを拡開させるスリット拡開部の拡開力が当接スリット付管で遮断されて、次のスリット付管に及ばなくても、スリット拡開部の先端の先端割り込み部は、次のスリット付管のスリットに割り込むことが可能となって、連結されたスリット付管の連結部において、次のスリット付管のスリットを連続して拡開させられて、配線・配管材を連結された異なるスリット付管に対して連続して収容できる。また、スリット拡開部の先端割り込み部が、直列連結された次のスリット付管に到達する直前に、前記先行位置合せ部が、前記次のスリット付管自体又はスリット付管どうしを連結する継手の内面に当接するのみで、スリット付管自体又は継手の幅が拡げられない場合においても、前記先行位置合せ部の当接により、拡開作業中のスリット拡開部は、次のスリット付管のスリットに対して先端割り込み部が切割り可能な位置に案内されて、連結された2本のスリット付管の各スリットの連続拡開が可能となる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記先行位置合せ部は、前記移動方向に沿って前方側から後方側に向けて広くなる傾斜案内部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明によれば、先行位置合せ部は、傾斜案内部の形成により、スリット付管の連結部において、スリット付管自体の内面又はスリット付管どうしを連結する継手の内面に対してくさびのように押し込まれるので、次のスリット付管のスリットを拡開し易くなる。また、先行位置合せ部の傾斜案内部がスリット付管の連結部において、スリット付管自体の内面又はスリット付管どうしを連結する継手の内面に当接して、配線・配管材収容治具のスリット拡開部を、次のスリット付管のスリットの両端縁に対して正対して(両スリットの管周方向に沿った位置を合致させるように)位置するように徐々に案内するため、次のスリット付管のスリットに対する前記スリット拡開部の位置合せが円滑に行われる。
【0012】
請求項3の発明は、長手方向に連続するスリットが設けられて、当該スリットの形成により管壁の両端縁が近接又は密着した状態で対向配置され、当該スリットを拡開させることで、前記両端縁間から内部に配線・配管材を収容可能であって、各スリットが同一直線上に配置されるように直列に連結された複数本のスリット付管と、
前記複数本のスリット付管に各スリットに沿って直列方向に順に移動されて、前記スリットを介して複数本のスリット付管の内部に配線・配管材を送り込む請求項1に記載の配線・配管材収容治具と、
から成ることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の発明を、複数本のスリット付管と、配線・配管材収容治具との組み合せの面から把握したものであり、実質的な作用効果は、請求項1の発明と同等である。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、複数本の前記スリット付管は、継手を介して連結されており、
前記継手は、
前記配線・配管材を通過させて内部に収容可能な管通過開口を備え、
2本のスリット付管の連結部の内部に配置されて、スリット付管のスリットと前記継手の管通過開口とを管周方向に沿って一致させた状態で、前記スリットと前記管通過開口とが管周方向に沿って大きくずれない状態で連結可能であり、
前記先行位置合せ部は、前記継手の内面に当接する構成であることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明は、複数本のスリット付管は、配線・配管材を通過させて内部に収容可能な管通過開口を備えていて、2本のスリット付管の連結部の内部に配置される継手を介して接続され、配線・配管材収容治具の先行位置合せ部が前記継手の内面に当接して、次のスリット付管のスリットが拡開されることで、2本のスリット付管の連結部において、配線・配管材収容治具のスリット拡開部は、一方のスリットから次のスリットに向けてスムーズに入り込んで、当該次のスリットが拡開されて、配線・配管材がスリット付管の内部にスムーズに収容される。
【0016】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記継手は、前記管通過開口の幅が広がるように変形可能であり、
前記先行位置合せ部は、前記継手の内面を押圧することで、当該継手を介して次のスリット付管のスリットの両端縁を離間させる先行スリット拡開部からなることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明によれば、配線・配管材収容治具のスリット拡開部の先端の先端割り込み部が、各スリット付管の連結部、即ち、継手の部分に近付くと、先行スリット拡開部が、各スリット付管を内側で連結している継手の内面を外側に向けて押圧することで、当該押圧力は、当該継手における次のスリット付管に配置されている部分まで及んで、当該次のスリット付管が外側に押圧される。これにより、次のスリット付管の端部は、内側に配置されている継手が管通過開口が広くなるように外側に押圧されることで、当該次のスリット付管のスリット端が拡開される。よって、配線・配管材収容治具のスリット拡開部の先端の先端割り込み部は、既に(予め)拡開されている次のスリット付管のスリットの間(スリットの両端縁間)にスムーズに割り込むことで、連結された2本のスリット付管の連結部において、スリット拡開部は、2本のスリット付管の一方のスリット付管のスリットに入り込んでいるスリット拡開部は、次のスリット付管のスリットにスムーズに割り込んで移行する。
【0018】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記スリット付管は、矩形筒状であり、
前記スリットは、1つの特定面の中央に設けられ、前記継手は、前記特定面と対向する対向面に沿って延びる基部と、当該基部における前記スリットと直交する方向の両端から立設して、前記特定面及び対向面の双方に対して隣接する2つの隣接面の内側に沿って延びる一対の腕部と、を備え、前記一対の腕部は、前記2つの隣接面の中間を超える立設長を有し、各腕部の先端間に前記管通過開口が形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項6の発明によれば、スリット付管は、矩形筒状であって、2本のスリット付管を連結する継手は、その内部に配置されて、基部の両端に立設されて、前記隣接面の中間よりも前記特定面の側に先端が配置される立設長を有する一対の腕部の間に管通過開口が形成されていて、配線・配管材収容治具の先行スリット拡開部は、前記一対の腕部の先端部の内側を外側に向けて押圧して管通過開口を広くするように変形する。一対の腕部の当該変形により、継手により連結されている次のスリット付管の端部の幅が広くなるように変形されて、当該次のスリット付管の端部のスリットが拡開され、先行スリット拡開部が継手の腕部を外側に押圧している間に、スリット拡開部の先端の先端割り込み部が次のスリット付管の拡開状態のスリットに割り込むことで、当該スリットにスリット拡開部が導かれる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項5又は6のいずれかの発明において、前記配線・配管材収容治具の移動方向及び前記スリット付管のスリット部分の内外方向の双方に直交するスリット付管の幅方向において、
前記先行スリット拡開部の最大幅は、前記スリット拡開部によりスリットが拡開されている部分の前記スリット付管の前記幅方向の内幅よりも狭いことを特徴としている。
【0021】
請求項7の発明によれば、先行スリット拡開部の最大幅は、前記スリット拡開部によりスリットが拡開されている部分の前記スリット付管の前記幅方向の内幅よりも狭いので、配線・配管材収容治具の走行により、先行スリット拡開部が継手を通過して、当該スリット付管の一般部に入り込んだ場合に、先行スリット拡開部とスリット付管の内面とが非接触となって、当該先行スリット拡開部の通過によって、スリット付管の内面が損傷されない。
【0022】
請求項8の発明は、請求項3の発明において、前記複数のスリット付管は、両端部に連結部を有し、全長に亘ってスリットが形成され、一端の連結部が直列状に隣接した別のスリット付管の他端の連結部に内嵌されることで直列状に連結可能であり、
前記スリット付管の一端に向けて移動された配線・配管材収容治具の前記スリット拡開部が前記別のスリット付管のスリットの両端縁間に円滑に入り込み可能とすべく、前記先行位置合せ部が、前記スリット付管の一端の連結部の内側に当接して、前記スリット拡開部と、前記別のスリット付管のスリットの両端縁間との相対位置を調整可能となるように、
互いに連結された各スリット付管の各スリットの相対位置が管周方向に沿って過剰にずれない状態で連結可能であることを特徴としている。
【0023】
請求項8の発明は、スリット付管の一端の連結部は、直列状に隣接した別のスリット付管の他端の連結部に内嵌されることで、複数本のスリット付管は直列状に連結されている。よって、配線・配管材収容治具の先行位置合せ部が、当該スリット付管の一端の連結部を内側から押圧することで、当該押圧力が、前記別のスリット付管の連結部に及んで、当該別のスリット付管の連結部のスリットが拡開される。この結果、スリット付管に一般部のスリットを拡開させている配線・配管材収容治具のスリット拡開部は、両スリット付管の連結部において、別のスリット付管の連結部の既に拡開されているスリットにスムーズに割り込んで、各スリット付管の連結部において各スリットが連続して拡開可能となる。
【0024】
請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記配線・配管材収容治具の移動方向及び前記スリット付管のスリット部分の内外方向の双方に直交する方向において、
前記別のスリット付管の他端の連結部に内嵌された前記スリット付管の一端の連結部は、他の部分よりも内側の幅の狭い狭幅部が形成され、
前記先行位置合せ部には、前記狭幅部よりも外側幅が広く、当該外側幅が広い箇所が前記スリット付管の連結部の狭幅部を外側に向けて押圧する押圧部が設けられていることを特徴としている。
【0025】
請求項9の発明によれば、配線・配管材収容治具の先行位置合せ部が、直列連結された各スリット付管の連結部を通過する際には、前記スリット付管の連結部の内側の狭幅部よりも外側幅の広い先行位置合せ部が当該狭幅部を外側に押圧して、内側に配置された当該スリット付管の連結部を外側に向けて変形させることで、当該スリット付管の内側の連結部のスリットが拡開されると共に、当該内側の連結部に外嵌されている前記別のスリット付管の連結部も外側に変形されて、そのスリットは、管周方向に沿った位置が内側の連結部のスリットと一致するように調整されながら拡開される。これにより、配線・配管材収容治具のスリット拡開部は、各スリット付管の連結部分においては、互いに重なり合った上下の各スリットに割り込んで、当該連結部分を通過することで、当該連結部分において、各スリット付管の各スリットを連続して拡開させることが可能となる。
【0026】
請求項10の発明は、請求項8の発明において、前記配線・配管材収容治具の移動方向及び前記スリット付管のスリット部分の内外方向の双方に直交する方向において、
前記別のスリット付管の他端の連結部に内嵌されたスリット付管の前記一端の連結部の内側に被当接部が形成され、
前記先行位置合せ部は、前記スリット付管の一端の連結部の被当接部に当接して、当該連結部の対向する各管壁を外側に押圧することで、当該スリット付管の一端の連結部に外嵌されている別のスリット付管の連結部の対向する各管壁を外側に押圧して、当該別のスリット付管の連結部のスリットを連続して拡開可能であることを特徴としている。
【0027】
請求項10の発明によれば、スリット付管の連結部の内側に被当接部が形成されることで、先行位置合せ部により当該スリット付管の連結部の対向管壁の外側への変形が、当該スリット付管の連結部に外嵌された前記別のスリット付管の連結部に及んで、当該別のスリット付管の連結部のスリットが拡開されるので、前記スリット付管のスリットを拡開中の配線・配管材収容治具のスリット拡開部は、両スリット付管の連結部において、前記別のスリット付管のスリットを連続して拡開可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、配線・配管材収容治具が、複数本のスリット付管の連結部を走行する場合には、スリット拡開部の先端割り込み部が、直列連結された次のスリット付管に到達する直前に、先行位置合せ部が、前記次のスリット付管自体又はスリット付管どうしを連結する継手の内面に当接して、スリット付管自体又は継手の幅が拡げられることで、次のスリット付管の端部のスリットが拡開される。これにより、配線・配管材を収容中のスリット付管のスリットを拡開させる拡開力が当接スリット付管で遮断されて、次のスリット付管に及ばなくても、スリット拡開部の先端の先端割り込み部は、次のスリット付管のスリットに割り込むことが可能となって、連結されたスリット付管の連結部において、次のスリット付管のスリットを連続して拡開させられて、配線・配管材を連結された異なるスリット付管に対して連続して収容できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】(a),(b)は、それぞれ継手Cにより連結される2本のスリット付管Pの非連結状態及び連結状態の斜視図である。
【
図2】(a),(b)は、それぞれ継手Cにより連結された2本のスリット付管Pの一方のスリットSの閉状態及び拡開状態における一部を破断した斜視図である。
【
図3】(a),(b)は、それぞれ継手Cにより連結された2本のスリット付管Pの連結部の中央縦断面図及び平面断面図である。
【
図4】(a),(b)は、
図3(a)のX
1 -X
1 線及びX
2 -X
2 線の各断面図である。
【
図5】本発明に係る配線・配管材収容治具Tの全体斜視図である。
【
図6】(a),(b)は、それぞれ配線・配管材収容治具Tを構成するスリット拡開ユニットUを異なる方向から見た斜視図である。
【
図7】(a),(b),(c)は、それぞれ配線・配管材収容治具Tを構成するスリット拡開ユニットUの平面図、側面図及び底面図である。
【
図8】(a),(b),(c)は、それぞれ
図7(b)のY
1 -Y
1 線、Y
2 -Y
2 線及びY
3 -Y
3 線の各断面図である。
【
図9】配線・配管材収容治具Tの第1及び第2の各フレーム21,23に対する管送り込みローラ22の組付けを示す分解斜視図である。
【
図10】配線・配管材収容治具Tの第2フレーム23に対するスリット拡開ユニットUの組付けを示す分解斜視図である。
【
図11】配線・配管材収容治具Tを用いてスリット付管PのスリットSを拡開させながら、当該スリット付管Pの内部に配線・配管材Aを収容する作業を示す斜視図である。
【
図12】
図11の配線・配管材収容治具Tの部分の拡大斜視図である。
【
図14】継手Cの一対の腕部13を外側に弾性変形させて、先行スリット拡開体D
2 により次のスリット付管PのスリットSを拡開している状態の一部を破断した斜視図である。
【
図15】配線・配管材収容治具Tの先行スリット拡開体D
2 の一対の先行拡開板単体26が2本のスリット付管Pを連結している継手Cの部分に達した状態の平面断面図である。
【
図16】同じく先行スリット拡開体D
2 の一対の先行拡開板単体26により継手Cの一対の腕部13が外方に弾性変形されて、次のスリット付管PのスリットSが拡開された状態の平面断面図である。
【
図17】同じく先行スリット拡開体D
2 により先行して拡開された次のスリット付管PのスリットSにスリット拡開体D
1 が入り込んだ状態の平面断面図である。
【
図18】矢印Qの方向から見た
図16のZ-Z線断面図である。
【
図19】(a),(b)は、いずれも端部に連結部P
1a,P
2aが一体に形成されたスリット付管P
1 ,P
2 の連結状態の模式的平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。最初に、
図1~
図4を参照して、複数本のスリット付管Pが別体の継手Cにより直列状に連結される構造について説明し、その後に、直列連結された複数本のスリット付管Pの各スリットSを連続して拡開して配線・配管材を収容可能な配線・配管材収容治具(以下、単に「治具」と略称する)Tについて説明する。
【0031】
スリット付管Pは、
図1~
図4に示されるように、樹脂の射出成形により形成されて、所定の肉厚を有する横断面が矩形状であって、その内外面に凹部と凸部が一定ピッチで交互に形成されることで、外面側には、外面凸部1と外面凹部2とが交互に設けられ、内面側には、外面凸部1及び外面凹部2に対応する部分に、それぞれ内面凹部3及び内面凸部4が交互に形成されて、全体として可撓性を有する角筒状をなし、内部の空間は、配線・配管材Aの収容空間5となっている。このような、スリット付管Pは、コルゲート管の一種であって、波付構造のために豊かな可撓性を有し、業界では「波付管」と称されることが多い。スリット付管Pの計4面のうち対向する2面の一方に管壁6の中間部に全長に亘ってヒンジ部7が直線状に形成されていると共に、その他方の管壁6の中間部が全長に亘って切り割られてスリットSが形成されている。
図4に示されるように、前記ヒンジ部7は、外面凹部2の管壁6の一部が外方に突出することで形成されているため、外面凸部1の部分では、管壁6と、当該管壁6よりも内方に配置されたヒンジ部7とは、左右一対の連結壁部9で連結されている。この構造により、スリット付管Pは、前記ヒンジ部7を変形支点として前記スリットSの部分を強制的に拡開させると、前記一対の連結壁部9〔
図4(a)参照〕の部分が互いに接近するように弾性変形されることで、配線・配管材Aの管挿入開口10〔
図2(b)参照〕が形成可能であると共に、当該拡開を生じさせている強制力を解除すると、前記一対の連結壁部9の弾性復元力により拡開されていた前記スリットSは閉じられて、当該スリットSの形成により長手方向に連続して形成された管壁6の各切割り端縁6aは、近接又は当接する。ここで、「管壁」とは、樹脂で成形された角筒状のスリット付管Pを構成している所定板厚の波板状の任意の部分を指し、後述の「平面状管壁部」とは、波付構造の角筒状のスリット付管Pの有する計4面の波付平面状の部分を指す。
【0032】
次に、
図1~
図4を参照して、複数本のスリット付管Pを直列に連結する継手Cについて説明する。継手Cは、2本のスリット付管Pにおける対向端部に最も近い各内面凹部3を利用して、当該2本のスリット付管Pを連結するもので、当該スリット付管Pの内面形状に対応していて、周方向に沿ってスリット付管PのスリットSが設けられた管壁平面部に対応する部分に、配線・配管材Aを通過可能にする管通過開口11が設けられている。当該管通過開口11の幅は、スリット付管Pの内面凸部4の対向間隔よりも僅かに狭い寸法である。即ち、継手Cは、周方向に沿って前記管通過開口11と対向する部分に配置される板状の基部12と、当該基部12における前記治具Tの移動方向であるスリット付管Pの長手方向及び前記スリットSの部分の内外方向の双方に対して直交する方向の各端部に相対向して立設される板状の一対の腕部13とを備え、当該一対の腕部13の先端部の間に、前記管通過開口11が形成されている。一対の腕部13は、外側に向けて弾性変形可能である。一対の腕部13の各先端部は、スリット付管PにおけるスリットSが形成された管壁平面部に近い部分に達している。板状の一対の腕部13の外面には、連結される2本のスリット付管Pの対向端部に最も近い各内面凹部3に係合される一対の係合部14が、スリット付管Pの内面凹部3の形成ピッチと同一間隔をおいて形成されている。一対の係合部14は、対向配置状態において各中実体の外側の肉部が欠落されることで断面L字形をなしていて、互いに背中合せの状態となって配置されている。一対の腕部13の内面の各平面部は、後述の治具Tを構成する先行スリット拡開体D
2 を構成する先行拡開板単体26の最突出部が当接することで、当該一対の腕部13を外側に弾性変形させる被当接面部15となっている。なお、基部12の上面(内面)には、スリット付管Pの収容空間5に収容された配線・配管材Aを支持し易くするための管支持部16が一対の腕部13の対向方向に沿って形成されている。
【0033】
2本のスリット付管Pを継手Cを介して連結するには、接続予定の2本のスリット付管Pの連結端部を近接させ、しかも当該連結端部のスリットSを拡開させた状態で、2本のスリット付管PのスリットSの拡開部と、当該2本のスリット付管Pの間に配置された継手Cの管通過開口11との各開口方向が合致するようにして、当該継手Cに設けられた一対の係合部14を、当該2本のスリット付管Pの各対向端部に最も近い内面凹部3にそれぞれ嵌入させて、当該2本のスリット付管PのスリットSの拡開を閉じると、
図2及び
図3に示されるように、当該2本のスリット付管Pは継手Cを介して接続される。継手Cは、接続された2本のスリット付管Pの各対向端面の間には、僅かの管端隙間17〔
図3(b)参照〕が形成されるが、
図1及び
図2に示されるように、2本のスリット付管Pの連結状態では、継手Cは全く又は殆ど認識されないので、恰も「1本管」のように見える。
【0034】
次に、
図5~
図10を参照して、前記スリット付管PのスリットSを連続して拡開させて、その内部の収容空間5に配線・配管材Aを収容するための治具Tについて説明する。当該治具Tは、コの字形の第1フレーム21に回転可能に支持される管送り込みローラ22と、前記第1フレーム21の前方に、同じくコの字形の第2フレーム23を介して連結されるスリット拡開ユニットUとを備えている。スリット拡開ユニットUは、継手Cを介して連結された複数本のスリット付管Pの各スリットSを連続して拡開させて管挿入開口10を形成して、拡開直後の管挿入開口10を通してスリット付管Pの収容空間5に配線・配管材Aを連続して収容するためのものである。
【0035】
スリット拡開ユニットUは、
図6~
図8に示されるように、垂直配置された一対の拡開板単体24の先端部が一体に接合されることで、平面視でV字状をなしていると共に、その接合先端部が先端割り込み部25となっているスリット拡開体D
1 と、当該スリット拡開体D
1 の先端割り込み部25の下端部の両側に配置された一対の先行拡開板単体26から成る先行スリット拡開体D
2 とを備えている。一対の拡開板単体24は、左右対称形状をなしていて、1枚の金属薄板を折り曲げ加工することで、前記先行拡開板単体26を含めて、管挿入開口10を通してスリット付管Pの収容空間5に配線・配管材Aを収容する際に必要とされる後述の複数の機能部が一体に形成されている。即ち、拡開板単体24は、配置状態で斜前後方向に長辺を有する細長比の大きな長方形状をなしていて、先端部のみが残りの部分に対して所定長だけ下方に突出することで背丈が高くなった高背丈部27aを有する拡開板本体部27と、当該拡開板本体部27の高背丈部27aの下端部が外側に向けて直角に折り曲げられた前記先行拡開板単体26と、当該先行拡開板単体26の先端側の部分を下方に向けて鈍角状に折り曲げられることで、前記先行スリット拡開体D
2 の前方に存在する異物を掬い上げる形態で排除可能なスクレーパ板部28と、前記拡開板本体部27における前記高背丈部27aを除く部分の全長に亘る下端部が外側に直角に折り曲げられて、スリット付管Pにおけるスリット形成直後の管挿入開口10に臨む部分の外面側に当接されることで、当該スリット付管Pに対する前記先行スリット拡開体D
2 の挿入配置深さを規制する配置深さ規制板部29と、前記拡開板本体部27の上端部が全長に亘って外側に折り曲げられて、スリット付管Pに対して収容中の配線・配管材Aを当接させて、その収容案内を行う配線・配管材収容案内板部31と、前記拡開板本体部27の後端部に前記高背丈部27aと同様の高背丈状態で形成された部分を内側に鈍角状に折り曲げることで、配線・配管材Aの収容中のスリット付管Pの両側部に当接させて、当該スリット付管Pの過剰な拡開を規制する過剰拡開規制板部32とを備えている。
【0036】
また、
図7(b)に示されるように、先行拡開板単体26と配置深さ規制板部29と配線・配管材収容案内板部31とは、互いに平行に配置されている。従って、治具Tを使用したスリット付管PのスリットSの拡開作業時には、先行スリット拡開体D
2 を構成していて、スリット付管Pの内部に配置された一対の先行拡開板単体26は、拡開作業中のスリット付管Pの形成中のスリットSの部分から、配置深さ規制板部29と先行拡開板単体26の間の高さ方向に沿った離間長E〔
図7(b)参照〕だけ入り込んだ部分に配置される。
【0037】
一対の拡開板単体24は、その先端部を密着させて、平面視でV字状に配置した状態で、各拡開板単体24の先端部の内側の空間部に二等辺三角形状の連結板部33を配置して、各拡開板単体24と連結板部33とを溶接により固定すると、先端下端部に先行スリット拡開体D2 が一体に形成されたスリット拡開体D1 が形成される。二等辺三角形状の前記連結板部33の各等辺部には、嵌合板部33aがそれぞれ外方に突出して形成され、各嵌合板部33aは、スリット拡開体D1 を構成する一対の拡開板本体部27の嵌合孔部27bに嵌合されることで、一対の拡開板単体24の一体性が高められている。スリット拡開体D1 を構成する一対の拡開板単体24の先端下端部の先行拡開板単体26に近接した部分に、牽引紐通し孔34が形成されている。
【0038】
ここで、本発明においては、治具Tを構成する先行スリット拡開体D
2 をスリット付管PのスリットSを通して、当該スリット付管Pの内部に配置した状態で、当該スリット付管Pに沿って当該治具Tを移動させて、前記先行スリット拡開体D
2 が、複数本のスリット付管Pを連結している継手Cの部分に達すると、先行スリット拡開体D
2 を構成する一対の先行拡開板単体26の最大幅の部分が、前記継手Cの一対の腕部13の内面の被当接面部15に当接して外方に押圧することで、継手Cの一対の腕部13を外方に弾性変形させて、次のスリット付管PのスリットSを先行して拡開可能にするために、一対の先行拡開板単体26の最大幅部26aの最大幅W
1 は、継手Cの一対の腕部13の内幅W
2 (
図15参照)よりも所定幅だけ広く形成されている。一対の先行拡開板単体26の最大幅部26aの前方には、当該最大幅部26aに向けて漸次幅が広くなるように傾斜した傾斜案内部26bが形成されており、当該傾斜案内部26bが「くさび」のように作用するため、作業中において、スリット付管Pを連結している継手Cの被当接面部15に入り込み易くなっている。
【0039】
また、
図5及び
図10に示されるように、スリット拡開体D
1 を構成する一対の過剰拡開規制板部32には、当該スリット拡開体D
1 を前記第2フレーム23に対して一対のボルト35及び一対の蝶ナット36を介して連結する際に、第2フレーム23に対して当該ボルト35と蝶ナット36とを螺合させて取付けた状態で、当該一対のボルト35を挿通可能なL字形のボルト挿通孔37が、当該過剰拡開規制板部32の後端面に開口して形成されている。ボルト挿通孔37は、水平孔部37aと、当該水平孔部37aの内側の端部の上方に連続して形成された垂直孔部37bとから成り、第2フレーム23に対してスリット拡開体D
1 が連結された状態では、一対のボルト35を、ボルト挿通孔37の垂直孔部37bに配置させることで、作業時において、第2フレーム23に対してスリット拡開体D
1 が分離されにくい連結構造にしてある。
【0040】
また、
図5、
図9及び
図10に示されるように、コの字形の第2フレーム23は、その一対の側板部23aが、同形状の第1フレーム21の一対の側板部21aの内側に挿入配置されて、当該第2フレーム23の一対の側板部23aの間に管送り込みローラ22が配置され、当該管送り込みローラ22の軸貫通孔22aと、第1及び第2の各フレーム21,23の各側板部21a,23aにそれぞれ形成された計4個のボルト挿通孔21b,23bとに軸貫通ボルト38が挿通されて、当該軸貫通ボルト38の反対側の突出部にナット39が螺合されることで、第1及び第2の各フレーム21,23が相対回動が可能に連結されると共に、当該第2フレーム23に管送り込みローラ22が回動可能に支持される。第1フレーム21には、
図11に示されるように、作業者M
1 がスリット拡開体D
1 の後方から押すことで当該スリット拡開体D
1 をスリット付管Pに沿って移動可能な長さを有するハンドル41を備えた押しロッド42が一体に取付けられている。
【0041】
次に、
図11~
図18を参照して、前記治具Tを用いて、継手Cにより連結された複数本のスリット付管PのスリットSを拡開させて、その内部空間に配線・配管材Aを収容する作業について説明する。まず、
図11~
図13に示されるように、連結された複数本のスリット付管Pの一端部のスリットSを手で拡開させて、治具Tのスリット拡開ユニットUの先行スリット拡開体D
2 のみを、一対の配置深さ規制板部29で規制される深さまで、拡開されたスリットSを通してスリット付管Pの内部に配置すると共に、管送り込みローラ22をスリット付管PのスリットSの部分に配置して、作業者M
1 は、スリット拡開ユニットUの後方において、当該スリット拡開ユニットUを押して移動させると共に、別の作業者M
2 は、前記スリット拡開ユニットUの前方において配線・配管材Aの収容案内の作業を行う。即ち、スリット付管Pの両端の連結部を除く一般部においては、作業者M
1 によりスリット拡開ユニットUが後方から押されてスリット付管Pに沿って移動することで、スリット拡開体D
1 の一対の拡開板単体24によりV字状に形成される部分の先端拡開部により、スリットSが所定幅に拡開されて管挿入開口10を順次形成すると共に、前方の作業者M
2 により送り込み案内された配線・配管材Aは、スリット付管PのスリットSの部分を転動する管送り込みローラ22により下方に押圧される形態で、V字状のスリット拡開体D
1 の開口43及びスリット付管Pの管挿入開口10を通して、当該スリット付管Pの収容空間5に順次収容される。なお、スリット拡開体D
1 によりスリット付管PのスリットSが拡開されている状態で、当該スリット拡開体D
1 の後端部に配置された一対の過剰拡開規制板部32により、スリット付管Pの過剰な拡開が規制された状態でスリットSが拡開される。
【0042】
そして、継手Cを介して連結された複数本のスリット付管Pの特定の1本のスリット付管Pに対する配線・配管材Aの収容が終了に近付いて、2本のスリット付管Pの連結部に達した状態が、
図15で平面断面図で示されている。この状態では、スリット拡開ユニットUを構成する先行スリット拡開体D
2 の左右一対の先行拡開板単体26の傾斜案内部26bが継手Cの一対の腕部13の内側端面に当接して、配線・配管材Aを収容中のスリット付管PのスリットSは、スリット拡開体D
1 により大きく拡開されて管挿入開口10が形成されているが、次のスリット付管Pには、配線・配管材Aを収容中のスリット付管PのスリットSを拡開させている拡開力は、当該スリット付管Pの端部で遮断されて、次のスリット付管Pには及ばず、しかも前記継手Cが非変形(一対の腕部13が外方に弾性変形されていないこと)であるため、スリットSは、閉じた状態を維持している。
【0043】
上記の状態で、スリット拡開ユニットUが次のスリット付管Pに向けて移動すると、
図14、
図16及び
図18に示されるように、先行スリット拡開体D
2 の左右一対の先行拡開板単体26の最大幅部26aが継手Cの一対の腕部13の内面の被当接面部15に当接して、当該一対の腕部13を外側に弾性変形させ、当該一対の腕部13の外側への弾性変形は、次のスリット付管Pの端部に及んで、当該次のスリット付管Pの横方向(幅方向)に対向する一対の平面状管壁部は、同様に外側に弾性変形されて、次のスリット付管PのスリットSは、スリット拡開体D
1 の到来に先行して拡開される。従って、スリット拡開体D
1 の先端の先端割り込み部25は、先行して拡開済の次のスリット付管PのスリットSに確実に割り込むことが可能となって、2本のスリット付管Pの連結部において、連続している異なる2本のスリットSの拡開をスムーズに連続して行える。このため、連続している異なる2本のスリットSがスリット付管Pの幅方向に沿って多少ずれていても、当該ずれは、次のスリット付管PのスリットSの拡開幅に吸収されて、上記した異なる2本のスリットの連続拡開作用は、支障なく奏される。
【0044】
スリット拡開ユニットUが次のスリット付管Pに向けて更に移動して、先行スリット拡開体D
2 の一対の先行拡開板単体26の最大幅部26aが継手Cから脱出して、次のスリット付管P内に入り込むと共に、スリット拡開体D
1 の拡開部が次のスリット付管Pに入り込むと、
図17に示されるように、継手Cの手前側のスリット付管PのスリットSは、管壁6の切割端縁6aが当接又は近接することで、閉じられると共に、次のスリット付管Pは、スリット拡開体D
1 の拡開部により大きく拡開されて管挿入開口10が形成される。管壁6の各切割端縁6aが離間された次のスリット付管Pの内幅は、先行スリット拡開体D
2 の一対の先行拡開板単体26の最大幅部26aの最大幅W
1 よりも広いので、次のスリット付管Pの内部を移動中の先行スリット拡開体D
2 の一対の先行拡開板単体26の最大幅部26aは、次のスリット付管Pの内面に対して非接触で移動するため、当該次のスリット付管Pの内面が先行スリット拡開体D
2 により損傷されない。なお、上記実施例では、継手Cで連結された複数本のスリット付管Pの各スリットSの管周方向の位置は合致していて、各スリットSは、同一直線上に配置されている(正対している)が、各スリットSの管周方向の配置位置が多少ずれていても、次のスリット付管PのスリットSが拡開される作用は奏される。
【0045】
上記実施例は、拡開の対象であるスリットSは、継手Cを用いて連結された複数本のスリット付管Pに形成されている例を挙げたが、本発明は、継手を用いることなく、
図19(a)の模式的平面断面図に示されるように、端部に連結部が一体に形成されたスリット付管P
1 ,P
2 に対しても適用可能である。なお、各スリット付管P
1 ,P
2 の横断面は、前記スリット付管Pと同様に矩形状であるとして説明する。
図19は、両端部の連結部P
1aを含めた全長に亘って同一の横断面形状を有する第1スリット付管P
1 と、当該第1スリット付管P
1 に対して小サイズの連結部P
2aを両端部に有する第2スリット付管P
2 とが、第2スリット付管P
2 の連結部P
2aに対して第1スリット付管P
1 の連結部P
1aが外嵌されることで、第1及び第2の各スリット付管P
1 ,P
2 が連結された状態を模式的に図示してある。なお、
図19の模式的平面断面図において、第1及び第2の各スリット付管P
1 ,P
2 の各スリットS
1 ,S
2 を仮想線で表示すると、連結部P
1a, P
2aの部分で、両仮想線が重なって判読しずらいので、各スリットS
1 ,S
2 を示す二点鎖線は、第1及び第2の各スリット付管P
1 ,P
2 の幅方向にずらして表示してある。
【0046】
このため、第1及び第2の各スリット付管P1 ,P2 の連結部では、治具Tの移動により、先行スリット拡開体D2 は、第1スリット付管P1 に比較して小サイズの第2スリット付管P2 の連結部P2aの内側において、当該連結部P2aの対向する各平面状管壁部を外側に押圧することで、その外側の第1スリット付管P1 の連結部P1aの各平面状管壁部も外側に押圧されて、いずれも弾性変形される。これにより、第1及び第2の各スリット付管P1 ,P2 の各連結部P1a,P2aは先行して拡開されて、後続のスリット拡開体D1 の先端の先端割り込み部25は、治具Tがいずれの方向に移動する場合においても、先行して拡開されている各連結部P1a,P2aのスリットS1 ,S2 のいずれかに確実に割り込むことが可能となる。
【0047】
また、上記において、
図19(b)に示されるように、第2スリット付管P
2 の小サイズの連結部P
2aの対向平面状管壁部の内周面に突起状の被当接部51を設け、治具Tの先行スリット拡開体D
2 が、当該被当接部51に当接して、対向する各平面状管壁部を外側に押圧変形させる構成にすると、当該押圧変形を一層確実に行える利点がある。
【0048】
また、上記実施例では、第1及び第2のスリット付管P1 ,P2 の全体形状は異なるが、長手方向(軸方向)の一端部のみに、一般部よりも小サイズの連結部を設けることで、同一形状の複数本のスリット付管を、自身の一端部に設けられた連結部を介することで、上記と同様にして直列連結できる。
【0049】
特に、先行スリット拡開体D2 を構成する一対の傾斜案内部26bは、両側に対称配置されて均等に延設されているので、スリット付管又は継手の内面をバランスよく押圧したり、次のスリット付管のスリットに対する治具のスリット拡開体の案内をバランスよく行える。
【0050】
また、上記した治具Tの操作に関しても、先行スリット拡開体D2 は、スリット付管に対する治具Tの先行スリット拡開体D2 の配置深さ位置を作業者の操作により調整することで、スリット付管どうしを連結する継手C又はスリット付管の接続部の内面を押圧して、当該スリット付管のスリットの拡開する位置と、押圧しない位置とを選択してもよい。即ち、次のスリット付管のスリットの両端縁に対する治具Tのスリット拡開体D1 の正対位置を確保すべく、作業者による前記調整により、次のスリット付管のスリットの拡開の程度を調整してもよい。
【0051】
また、上記実施例では、横断面が矩形状のスリット付管について説明したが、横断面が矩形以外、例えば円形のスリット付管に対しても、本発明は、実施可能である。
【0052】
更に、治具Tの使用方法に関しては、スリット拡開ユニットUを、その後方から押して移動させるのに限られず、当該スリット拡開ユニットUを構成するスリット拡開体D1 の先端部に形成された牽引紐通し孔34に牽引紐を通して、当該スリット拡開ユニットUを前方から牽引して移動させて、スリット付管P内に配線・配管材を収容することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
A:配線・配管材
C:継手
D1 :スリット拡開体
D2 :先行スリット拡開体(先行位置合せ部)
P,P1 ,P2 :スリット付管
P1a,P2a:スリット付管の連結部
S,S1 ,S2 :スリット
U:スリット拡開ユニット
W1 :一対の先行拡開板単体の最大幅
W2 :継手の一対の腕部の内幅
6: 管壁
6a:管壁の切割端縁
11:管通過開口
12:継手の基部
13:継手の腕部
15:継手の被当接面部
24:スリット拡開体の拡開板単体
25:先端割り込み部
26:先行スリット拡開体の先行拡開板単体
26a:先行スリット拡開体の最大幅部
26b:先行スリット拡開体の傾斜案内部