IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホシザキ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-製氷機 図1
  • 特開-製氷機 図2
  • 特開-製氷機 図3
  • 特開-製氷機 図4
  • 特開-製氷機 図5
  • 特開-製氷機 図6
  • 特開-製氷機 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054946
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/04 20180101AFI20240411BHJP
   F25C 1/045 20180101ALI20240411BHJP
【FI】
F25C1/04 302Z
F25C1/045 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161427
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】錦織 由和
(72)【発明者】
【氏名】門脇 静馬
(72)【発明者】
【氏名】富永 祐之
(57)【要約】
【課題】製氷室を上下に多段状に配置した製氷機において、待機モード中に製氷室内を冷却する保冷運転を実行したときに、貯氷室内で複数の氷が互いに接着した状態で凍結する、所謂アーチングが生じないようにする。
【解決手段】製氷機10は、製氷機構部20と製氷室14を上下に多段状にで配置したものであり、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知して製氷運転を実行しないように待機する待機モード中に、最上段以外の2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bを作動させず、最上段と3段目の製氷機構部20A,20Cの冷凍装置30A,30Cにより製氷部21A,21Cを冷却することで、最上段の製氷室14A内と3段目の製氷室14Cを冷却しつつこれよりも下側の製氷室14B内及び貯氷室16内を冷却する保冷運転を実行可能とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部を有して上下に多段状に配置される複数の製氷機構部と、
前記複数の製氷機構部の少なくとも各製氷部を収容するために上下に多段状に配置される複数の製氷室と、
最下段の製氷室の下側に配置されて各製氷部で製造された氷を貯える貯氷室と、
前記貯氷室内の氷が満たされたことを検知する貯氷検知器とを備え、
各々の製氷機構部は、前記製氷部に加え、圧縮機により循環供給される冷媒によって前記製氷部を冷却する冷凍装置と、前記製氷部に製氷水を送出する送水手段とを有し、
前記貯氷検知器により前記貯氷室内に氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして各冷凍装置により冷却した各製氷部で各送水手段により送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転を実行するように制御して前記貯氷室内に貯える氷を製造し、
前記貯氷検知器により前記貯氷室内に氷が満たされたことを検知したときには、待機モードとして前記製氷運転を実行しないように制御して前記貯氷室内に貯える氷を製造せずに待機する製氷機であって、
前記待機モード中に、最上段以外の少なくとも一部の製氷機構部の冷凍装置を作動させず、少なくとも最上段の製氷機構部の冷凍装置により製氷部を冷却することで、最上段の製氷室内を冷却しつつこれよりも下側の製氷室内及び貯氷室内を冷却する保冷運転を実行可能としたことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部を有して上下に多段状に配置される複数の製氷機構部と、
前記複数の製氷機構部の少なくとも各製氷部を収容するために上下に多段状に配置される複数の製氷室と、
最下段の製氷室の下側に配置されて各製氷部で製造された氷を貯える貯氷室と、
前記貯氷室内の氷が満たされたことを検知する貯氷検知器とを備え、
各々の製氷機構部は、前記製氷部に加え、圧縮機により循環供給される冷媒によって前記製氷部を冷却する冷凍装置と、前記製氷部に製氷水を送出する送水手段とを有し、
前記貯氷検知器により前記貯氷室内に氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして各冷凍装置により冷却した各製氷部で各送水手段により送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転を実行するように制御して前記貯氷室内に貯える氷を製造し、
前記貯氷検知器により前記貯氷室内に氷が満たされたことを検知したときには、待機モードとして前記製氷運転を実行しないように制御して前記貯氷室内に貯える氷を製造せずに待機する製氷機であって、
前記待機モード中に、少なくとも最上段の製氷機構部の冷凍装置により製氷部を冷却することで、最上段の製氷室内を冷却しつつこれよりも下側の製氷室内及び貯氷室内を冷却する保冷運転を実行可能としており、
前記保冷運転は、最上段以外で作動させる製氷機構部の冷凍装置を選択可能とすることによって冷却能力を調節可能としたことを特徴とする製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷室に設けた製氷部を上下に多段状に配置するようにして氷を製造する製氷機に関し、最下段の製氷室の下側に配置される貯氷室に氷が満たされたときに各製氷部で氷の製造を待機するようにした製氷機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、製氷室内に設けた製氷部で氷を製造する製氷機の発明が開示されている。この製氷機は、製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部と、圧縮機により循環供給される冷媒によって製氷部を冷却する冷凍装置と、製氷部に製氷水を送出する送水手段と、製氷部が配設される製氷室と、製氷室の下側に配置されて製氷部で製造された氷を貯える貯氷室と、貯氷室内にて氷が満たされたことを検知する貯氷検知器とを備えている。
【0003】
この製氷機においては、冷凍装置により冷却された製氷部で送水手段により製氷水を送出して凍結させることにより氷を製造する製氷運転と、冷凍装置から製氷部にホットガスを送出することによって製氷部から氷を離脱させる除氷運転とを交互に実行することにより、貯氷室内に貯える氷を製造している。貯氷検知器により氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして製氷部により製氷運転と除氷運転とを交互に実行するように制御して貯氷室内に貯える氷を製造し、貯氷検知器により氷が満たされたことを検知したときには、貯氷モード(待機モード)として製氷運転と除氷運転とを実行しないように制御して貯氷室内に貯える氷を製造せずに待機している。
【0004】
この製氷機においては、貯氷モードであるときに、貯氷室内の温度の上昇を抑制するための保冷運転を実行するように制御しており、保冷運転は冷凍装置により製氷部を冷却することによって製氷室内を介して貯氷室内を冷却するようにしている。この製氷機は、貯氷室または製氷部の温度を検出する温度センサを備えており、保冷運転ではこの温度センサの検出温度が上限温度となると冷凍装置を作動させ、温度センサの検出温度が下限温度となると冷凍装置の作動を停止させるように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-032062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の製氷機においては、保冷運転は冷凍装置により製氷部を冷却することによって製氷室内を介して貯氷室内を冷却するようにしており、製氷室内も保冷運転により冷却されて清潔に保たれることになる。特許文献1の製氷機は、貯氷室の上側に製氷部を配設した製氷室を1段で配置したものであり、製氷能力を高くするために、貯氷室の上側に製氷部を配設した製氷室を上下に複数段で配置した製氷機もある。貯氷室の上側に製氷部を配設した製氷室を上下に複数段で配置した製氷機を、特許文献1の製氷機と同様に全ての製氷室で保冷運転を実行すると、各製氷室内の製氷部が冷凍装置により冷却され、各製氷室内が十分に冷却されるものの、貯氷室内には全ての製氷室の冷気が流入することになり、貯氷室内が過剰に冷却され、貯氷室内にて複数の氷が互いに接着した状態で凍結する、所謂アーチングが生じるおそれがある。また、全ての製氷室で保冷運転を実行すると、各製氷室が短時間で冷却され、各製氷室を冷却する冷凍装置の圧縮機が短時間で発停(作動と作動停止)を繰り返し、圧縮機が短時間で発停することに起因して不具合が生じるおそれがある。本発明は、製氷部が配設された製氷室を上下に多段状に配置した製氷機において、貯氷室内に氷が満たされたことを検知したことにより製氷運転を実行せずに待機する待機モード中に、冷凍装置を作動させることで冷却される製氷部により製氷室内を冷却する保冷運転を実行したときに、貯氷室内で複数の氷が互いに接着した状態で凍結する、所謂アーチングが生じないようにするとともに、圧縮機が短時間で発停(作動と作動停止)を繰り返すことに起因して不具合が生じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部を有して上下に多段状に配置される複数の製氷機構部と、複数の製氷機構部の少なくとも各製氷部を収容するために上下に多段状に配置される複数の製氷室と、最下段の製氷室の下側に配置されて各製氷部で製造された氷を貯える貯氷室と、貯氷室内の氷が満たされたことを検知する貯氷検知器とを備え、各々の製氷機構部は、製氷部に加え、圧縮機により循環供給される冷媒によって製氷部を冷却する冷凍装置と、製氷部に製氷水を送出する送水手段とを有し、貯氷検知器により貯氷室内に氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして各冷凍装置により冷却した各製氷部で各送水手段により送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転を実行するように制御して貯氷室内に貯える氷を製造し、貯氷検知器により貯氷室内に氷が満たされたことを検知したときには、待機モードとして製氷運転を実行しないように制御して貯氷室内に貯える氷を製造せずに待機する製氷機であって、待機モード中に、最上段以外の少なくとも一部の製氷機構部の冷凍装置を作動させず、少なくとも最上段の製氷機構部の冷凍装置により製氷部を冷却することで、最上段の製氷室内を冷却しつつこれよりも下側の製氷室内及び貯氷室内を冷却する保冷運転を実行可能としたことを特徴とする製氷機を提供するものである。
【0008】
上記のように構成した製氷機においては、待機モード中に、最上段以外の少なくとも一部の製氷機構部の冷凍装置を作動させず、少なくとも最上段の製氷機構部の冷凍装置により製氷部を冷却することで、最上段の製氷室内を冷却しつつこれよりも下側の製氷室内及び貯氷室内を冷却する保冷運転を実行可能としている。待機モード中に製氷室内及び貯氷室内を冷却する保冷運転においては、温度の高くなりやすい最上段の製氷室内は最上段の製氷機構部の冷凍装置により冷却される製氷部により確実に冷却され、最上段以外の製氷室は最上段以外の少なくとも一部の製氷機構部の冷凍装置が作動していなくても、最上段の製氷室から冷気が流れ落ちることで冷却され、全ての製氷室は冷却された状態で清潔に保たれるようになる。また、最上段以外の少なくとも一部の製氷機構部の冷凍装置を作動させていないので、貯氷室内は過剰に冷却されにくくなり、貯氷室内で複数の氷が互いに接着した状態で凍結する、所謂アーチングが生じないようにすることができるようになる。さらに、最上段以外の少なくとも一部の製氷機構部の冷凍装置を作動させていないので、各製氷室が短時間で冷却されないので、各製氷機構部の圧縮機が短時間で発停することに起因して不具合が生じるのを防ぐことができる。
【0009】
本発明は上記課題を解決するため、製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部を有して上下に多段状に配置される複数の製氷機構部と、複数の製氷機構部の少なくとも各製氷部を収容するために上下に多段状に配置される複数の製氷室と、最下段の製氷室の下側に配置されて各製氷部で製造された氷を貯える貯氷室と、貯氷室内の氷が満たされたことを検知する貯氷検知器とを備え、各々の製氷機構部は、製氷部に加え、圧縮機により循環供給される冷媒によって製氷部を冷却する冷凍装置と、製氷部に製氷水を送出する送水手段とを有し、貯氷検知器により貯氷室内に氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして各冷凍装置により冷却した各製氷部で各送水手段により送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転を実行するように制御して貯氷室内に貯える氷を製造し、貯氷検知器により貯氷室内に氷が満たされたことを検知したときには、待機モードとして製氷運転を実行しないように制御して貯氷室内に貯える氷を製造せずに待機する製氷機であって、待機モード中に、少なくとも最上段の製氷機構部の冷凍装置により製氷部を冷却することで、最上段の製氷室内を冷却しつつこれよりも下側の製氷室内及び貯氷室内を冷却する保冷運転を実行可能としており、保冷運転は、最上段以外で作動させる製氷機構部の冷凍装置を選択可能とすることによって冷却能力を調節可能としたことを特徴とする製氷機を提供するものである。
【0010】
上記のように構成した製氷機においては、待機モード中に、少なくとも最上段の製氷機構部の冷凍装置により製氷部を冷却することで、最上段の製氷室内を冷却しつつこれよりも下側の製氷室内及び貯氷室内を冷却する保冷運転を実行可能としており、保冷運転は、最上段以外で作動させる製氷機構部の冷凍装置を選択可能とすることによって冷却能力を調節可能にしている。待機モード中に製氷室内及び貯氷室を冷却する保冷運転においては、温度の高くなりやすい最上段の製氷室内は最上段の製氷機構部の冷凍装置により冷却される製氷部により確実に冷却され、最上段以外の製氷室は作動させる製氷機構部の冷凍装置を選択することで冷却能力が調節された状態で冷却されるので、全ての製氷室を清潔に保つように冷却することができる。また、最上段以外で作動させる製氷機構部の冷凍装置を選択することで冷却能力を調節可能としているので、貯氷室内は過剰に冷却されにくくなり、貯氷室内で複数の氷が互いに接着した状態で凍結する、所謂アーチングが生じないようにすることができるようになる。さらに、最上段以外で作動させる製氷機構部の冷凍装置を選択することで冷却能力を調節可能としているので、各製氷室が短時間で冷却されないので、各製氷機構部の圧縮機が短時間で発停することに起因して不具合が生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の製氷機の斜視図である。
図2】本発明の製氷機の概略図である。
図3】製氷部と水皿とを示す概略図である。
図4】制御装置のブロック図である。
図5】製氷モードの除氷運転から待機モードに移行し、待機モード開始時に保冷運転を実行するときのタイムチャートである。
図6図5の待機モード開始時に保冷運転を実行しないときのタイムチャートである。
図7】待機モードから製氷モードに移行するときのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の製氷機の一実施形態を図面を用いて説明する。図1及び図2に示したように、この実施形態の製氷機10は、所謂クローズドセルタイプの製氷機であり、製氷機構部20(20A~20C)の製氷部21(21A~21C)を配設した製氷室14(14A~14C)を上下に3段で(多段状に)配置するようにしたものである。製氷機10は、ハウジング11の上部を構成する上側ハウジング12(12A~12C)と、ハウジング11の下部を構成する下側ハウジング13と、上側ハウジング12内に製氷室14(14A~14C)と機械室15(15A~15C)と、下側ハウジング13に貯氷室16とを備えている。図1では貯氷室16内の氷を一点鎖線にて示している。
【0013】
図2に示したように、製氷機10は、各製氷室14A~14Cに氷を製造する製氷機構部20(20A~20C)を備えている。製氷機構部20(20A~20C)は、高さ位置の異なる各製氷室14A~14C及び機械室15A~15Cに配設されていて、各製氷機構部20A~20Cは配設されている高さ位置が異なるだけである。明細書及び図中のA~Cの符号は製氷室14、機械室15及び製氷機構部20の配置した段の位置(1段目がAであり、2段目がBであり、3段目がCである。)を示しており、以後の説明及び図中の符号では配置された位置を特定するための説明等の特別な場合を除いてA~Cの符号の記載を省略して説明する。
【0014】
製氷機構部20は、製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部21と、製氷部21を冷却及び加温する冷凍装置30と、製氷部21に製氷水を送出する送水手段22とを備えている。製氷部21は、製氷室14内に配設されており、下側が開口した浅い箱形状の内部に格子状の仕切部材を設けることで下側に開いた複数の製氷小室21aが形成されている。各製氷小室21aに下側から製氷水が噴射送出され、各製氷小室21a内には製氷水が凍結することでブロック形の氷が形成される。
【0015】
製氷部21の上面には冷凍装置30を構成する蒸発器34が配設されている。冷凍装置30は、冷却運転及び加温運転によって製氷部21を冷却または加温可能とするものであり、製氷室14内にて製氷部21の上側に配設された蒸発器34を除いて機械室15内に配設されている。冷凍装置30は、冷媒を圧縮する圧縮機31と、圧縮機31から圧送された冷媒を冷却して液化させる凝縮器32と、凝縮器32にて液化させた液化冷媒を膨張させて低圧の液化冷媒とする膨張弁33と、膨張弁33により膨張させた液化冷媒を気化させて製氷部21を冷却する蒸発器34とを備えている。冷凍装置30は圧縮機31、凝縮器32、膨張弁33及び蒸発器34を冷媒管によって環状に接続して冷凍回路が構成されている。冷凍装置30の冷却運転を実行すると、圧縮機31から圧送された冷媒が凝縮器32にて冷却されて液化冷媒となり、液化冷媒は膨張弁33にて低圧の液化冷媒となり、低圧の液化冷媒は蒸発器34にて蒸発するときの気化熱によって製氷部21を冷却する。
【0016】
圧縮機31は短時間での発停(作動及び作動停止)を繰り返すのを防止するために、最低運転時間と最低停止時間が設定されている。凝縮器32には凝縮器ファン32aが設けられており、凝縮器32を通過する冷媒は凝縮器ファン32aによる送風によって冷却される。凝縮器32には凝縮器温度センサ32bが設けられており、凝縮器温度センサ32bは凝縮器32を通過する冷媒の温度を検出するともに、後述する機械室15内の温度を検出するのにも用いられる。蒸発器34は熱導電性の高い管部材を用いたものであり、製氷部21の上側で蛇行状に配置されている。
【0017】
また、冷凍装置30は蒸発器34にホットガスを供給するホットガス管(ホットガス経路)35を備えている。ホットガス管35は、圧縮機31の下流と蒸発器34の上流とを接続して、圧縮機31からのホットガスを蒸発器34に導くようにしている。ホットガス管35にはホットガス弁36が介装されており、ホットガス弁36はホットガス管35を開閉可能としている。冷凍装置30を加温運転すると、圧縮機31から送出されるホットガスはホットガス弁36の開放によって蒸発器34に導かれ、ホットガスは蒸発器34を通過するときに製氷部21を加温する。このように、製氷部21は、冷凍装置30の冷却運転によって循環する冷媒が蒸発器34で蒸発することによって冷却され、冷凍装置30の加温運転によって圧縮機31から蒸発器34に送出されるホットガスによって加温される。
【0018】
図2に示したように、製氷部21の下側には製氷水を送出する送水手段22が設けられている。送水手段22は、製氷部21の製氷小室21aの下側を開閉自在に塞ぐ水皿23と、水皿23の下側にて製氷水を貯える製氷水タンク24と、製氷水タンク24内の製氷水を製氷部21に送出する送水ポンプ25とを備えている。水皿23、製氷水タンク24及び送水ポンプ25は製氷部21と同様に製氷室14内に配設されている。水皿23は、製氷小室21aの下側を塞ぐ閉塞位置(図2の実線に示した)と製氷小室21aの下側を開放する開放位置(図2の二点鎖線に示した)との間で水平軸線回りに傾動可能に軸支されている。水皿23には開閉機構26が設けられており、水皿23は開閉機構26のアクチュエータモータ26aの駆動によって閉塞位置と開放位置との間で傾動して製氷小室21aの下側を開閉させている。図3に示したように、水皿23には製氷水タンク24から送出される製氷水を各製氷小室21aに送るための製氷水通路23aが形成されており、水皿23の上面には製氷水通路23aから各製氷小室21aに製氷水を噴射させる噴射孔23bが形成されている。
【0019】
製氷水タンク24には水道等の給水源の水を製氷水として供給する給水管27が接続されており、給水管27には給水弁27aが介装されている。給水源の水は、給水弁27aを開放することによって給水管27を通って製氷水タンク24に供給される。製氷水タンク24内の製氷水は送水ポンプ25によって水皿23の製氷水通路23aに送出され、製氷水通路23aに送出された製氷水は噴射孔23bから製氷小室21aに噴射される。噴射された製氷水は製氷小室21a内で冷却されつつ製氷水タンク24に戻り、製氷水は製氷水タンク24と製氷小室21aとの間を循環することで冷却されながら製氷小室21a内で凍結して氷となる。
【0020】
製氷水タンク24の下側にはドレンパン28が設けられており、ドレンパン28は製氷運転後に製氷水タンク24に残る製氷水を受けるようにしたものである。ドレンパン28には排水管(図示省略)が接続されており、ドレンパン28で受けた製氷水は排水管を通ってハウジング11の外側に排出される。また、ドレンパン28は、製氷部21の下側を覆っており、製氷部21により製造された氷を貯氷室16に放出する放出口28aを有している。最上段の製氷機構部20Aのドレンパン28Aは、最上段の製氷室14Aと2段目の製氷室14Bとを仕切っている。2段目の製氷機構部20Bのドレンパン28Bは、2段目の製氷室14Bと3段目の製氷室14Cとを仕切っている。3段目の製氷機構部20Cのドレンパン28Cは、3段目の製氷室14Cと貯氷室16とを仕切っている。全ての放出口28Aa~28Caは鉛直方向に並んで配置されている。最上段の製氷部21Aにて製造された氷は放出口28Aa~28Caを通って貯氷室16に放出され、2段目の製氷部21Bにて製造された氷は放出口28Ba~28Caを通って貯氷室16に放出され、3段目の製氷部21Cにて製造された氷は放出口28Caを通って貯氷室16に放出される。ドレンパン28A~28Cは各々の製氷室14A~14Cの間と、製氷室14Cと貯氷室16とを仕切る仕切部として機能している。
【0021】
製氷部21には製氷部温度センサ41が設けられており、製氷部温度センサ41は製氷部21の温度を検出することにより後述する製氷運転での製氷完了及び除氷運転での除氷完了を検知可能としている。製氷部温度センサ41(41A~41C)は各々の製氷部21(21A~21C)に配設されている。製氷室14には製氷室温度センサ42が設けられており、製氷室温度センサ42は製氷室内14の温度を検出する。この実施形態では、製氷室温度センサ42は、製氷室14内にて製氷部21から氷が放出口28aに送出される経路に配置されている。製氷室温度センサ42(42A~42C)は各々の製氷室14(14A~14C)に配設されている。貯氷室16には氷が満たされたことを検知する貯氷検知器43が設けられている。貯氷検知器43は、最下段の製氷室14Cから放出口28Caを通って貯氷室16まで延出しており、放出口28Caの下側にて貯氷室16内の上部に堆積した氷を検知して、貯氷室16内の氷が満たされたことを検知する。
【0022】
製氷機10の各製氷機構部20は制御装置50を備えており、図4に示したように、この制御装置50は、送水ポンプ25、開閉機構26のアクチュエータモータ26a、給水弁27a、圧縮機31、凝縮器ファン32a、凝縮器温度センサ32b、ホットガス弁36、製氷部温度センサ41、製氷室温度センサ42及び貯氷検知器43に接続されている。制御装置50はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。制御装置50は、製氷部21にて製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転と、製氷運転により製氷部21で凍結させた氷を離脱させて除氷する除氷運転とを交互に繰り返し実行させる製氷プログラムを有している。
【0023】
制御装置50は、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷プログラムを実行して、貯氷室16内に貯える氷を製造している。また、制御装置50は、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知したときには、待機モードとして製氷運転と除氷運転とを繰り返す製氷プログラムを実行せずに待機している。また、制御装置50は、この待機モード中に、冷凍装置30の作動を制御して製氷室14内と貯氷室16内を冷却する保冷運転を実行するように制御している。
【0024】
保冷運転は、冷凍装置30の冷却運転(作動)によって製氷部21を冷却し、冷却された製氷部21により製氷室14及び貯氷室16を冷却するようにしたものである。保冷運転は、製氷室14内を低温に保って細菌の繁殖を抑えるようにするとともに、貯氷室16内に貯える複数の氷が凍結して結合する所謂アーチングを生じさせないようにした状態で、氷を融けないように貯えることを目的としたものである。保冷運転を実行することで、製氷室14内は冷凍装置30の冷却運転により冷却された製氷部21によって冷却され、貯氷室16内は製氷室14内の冷気が流れ落ちることによって冷却される。製氷室14内は冷却された製氷部21により低温に保たれて細菌等の繁殖が抑えられて衛生的となり、貯氷室16内は製氷室14内から放出口28aを通って流れ落ちる冷気によって氷が融けるのが防がれる。
【0025】
この保冷運転は、製氷運転を実行するときに送水手段22によって製氷水が送出された製氷部21を冷凍装置30の冷却運転により冷却するときと異なり、送水手段22によって製氷水が送出されない製氷部21を冷凍装置30の冷却運転により冷却しているので、冷凍装置30の冷却運転により製氷部21を冷却する負荷が製氷運転の実行時より小さい(低い)。このため、制御装置50は、保冷運転により冷凍装置30の圧縮機31を作動開始させてから圧縮機31にて設定されている最低運転時間以上で設定した保冷運転時間(この実施形態では3分に設定しており、製氷室14及び貯氷室16の冷却状態に応じて例えば3分~5分で設定可能としている)経過後に冷凍装置30の圧縮機31の作動を停止させるように制御している。なお、製氷室14内が広いことによって保冷運転時間で製氷室14内を十分に冷却できないおそれがあるときには、保冷運転時間経過後であり、さらに、製氷室温度センサ42により保冷設定温度(この実施形態では例えば11℃)以下であるときに冷凍装置30の圧縮機31の作動を停止させるように制御してもよい。
【0026】
保冷運転は、冷凍装置30の冷却運転(作動)によって製氷部21を冷却し、冷却された製氷部21により製氷室14及び貯氷室16を冷却するようにしたものである。全ての冷凍装置30A~30Cを冷却運転させて製氷部21A~21Cを冷却し、冷却された製氷部21A~21Cにより全ての製氷室14A~14Cを冷却したときには、製氷室14A~14C内の冷気が放出口28Aa~28Caを通って下側に流れるので、最上段に配置される製氷室14Aよりも下側に配置される製氷室14B,14Cが冷却されやすくなるだけでなく、貯氷室16内が過剰に冷却されるおそれがある。特に、貯氷室16内が過剰に冷却されると、貯氷室16内にて複数の氷が互いに接着した状態で凍結する、所謂アーチングが生じるおそれがある。
【0027】
このため、製氷機構部20を上下に多段状に配置した製氷機10においては、少なくとも最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aにより製氷部21Aを冷却することで最上段の製氷室14A内を冷却し、最上段以外の少なくとも一部の製氷機構部として2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bを作動させないようにしている。最上段の製氷室14Aは、最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aの冷却運転により冷却された製氷部21Aにより冷却され、2段目の製氷室14Bは、最上段の製氷室14Aの放出口28Aaから流れ落ちる冷気により冷却される。最下段となる3段目の製氷室14Cは、3段目の製氷機構部20Cの冷凍装置30Cの冷却運転により冷却された製氷部21Cにより冷却されるとともに、最上段から2段目の製氷室14Bを通って3段目の製氷室14Cに流れ落ちた冷気により冷却され、3段目の製氷室14Cの下側の貯氷室16は、3段目の製氷室14Cの放出口28Caから流れ落ちる冷気により冷却される。
【0028】
これにより、温度の高くなりやすい最上段の製氷室14A内は最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aにより冷却される製氷部21Aにより確実に冷却され、最上段以外の製氷室14B,14Cは最上段以外の少なくとも一部の製氷機構部として2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bが作動していなくても、最上段の製氷室14Aから冷気が流れ落ちることで冷却され、全ての製氷室14A~14Cは冷却された状態で清潔に保たれるようになる。また、最上段以外の少なくとも一部の製氷機構部として2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bを作動させていないので、貯氷室16内は過剰に冷却されにくくなり、貯氷室16内で複数の氷が互いに接着した状態で凍結する、所謂アーチングが生じないようにすることができるようになる。
【0029】
また、保冷運転は、最上段以外で作動させる製氷機構部20B,20Cの冷凍装置30B,30Cを選択可能とすることによって冷却能力を調節可能としたものである。この実施形態では、2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Cを作動させないようにし、3段目の製氷機構部20Cの冷凍装置30Cを作動させるようにして、製氷室14A~14C及び貯氷室16を冷却するための冷却能力を調節している。
【0030】
次に、製氷モード中に実行される製氷プログラムについて説明する。制御装置50(50A~50C)は、製氷モード中に製氷プログラムを実行したときに製氷機構部20の製氷部21にて製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返し実行する。製氷機構部20を上下に多段状に配置した製氷機10においては、製氷モード中に全ての製氷機構部20(20A~20C)の製氷部21(21A~21C)にて製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返し実行する。製氷プログラムは全ての製氷機構部20(20A~20C)で実行されるので、製氷プログラムに関する説明は製氷機構部20の配置した高さ位置を示すA~Cの符号の記載を省略して説明する。
【0031】
制御装置50は、製氷運転を実行させたときに、冷凍装置30を冷却運転させると、圧縮機31から圧送された冷媒が凝縮器32により液化されて液化冷媒となり、液化冷媒は膨張弁33により膨張して低圧の液化冷媒となり、低圧の液化冷媒は蒸発器34で気化してから圧縮機31に戻り、製氷部21は蒸発器34で液化冷媒が気化することによって冷却される。また、制御装置50は、開閉機構26のアクチュエータモータ26aにより水皿23を閉塞位置に傾動させた状態で、給水弁27aを製氷水タンク24の容量に応じた所定時間開放することで、製氷水タンク24には製氷部21にて氷を形成するのに必要な量の製氷水が貯えられる。
【0032】
制御装置50は冷凍装置30を冷却運転させた状態で送水ポンプ25を作動させると、製氷水タンク24内の製氷水は送水ポンプ25の作動によって製氷部21の各製氷小室21aに噴射送出され、噴射送出された製氷水は各製氷小室21a内で冷却されて製氷水タンク24内に再び戻り、製氷水は製氷水タンク24と各製氷小室21aとの間を循環する過程で冷却されて各製氷小室21a内で徐々に凍結する。製氷水タンク24内の製氷水が減少し、製氷水が各製氷小室21a内で凍結してブロック形の氷が形成されるようになり、製氷部温度センサ41による検出温度が製氷完了温度以下となると、制御装置50は製氷運転を終了させて除氷運転を開始する。
【0033】
製氷運転後の除氷運転では、制御装置50は、圧縮機31を作動させた状態でホットガス弁36を開放して冷凍装置30を加温運転させるとともに、開閉機構26のアクチュエータモータ26aにより水皿23を開放位置に傾動させる。冷凍装置30を加温運転させると、圧縮機31から送出されるホットガスは、ホットガス管35を通って蒸発器34に導かれて製氷部21の各製氷小室21aを加温する。製氷部21の温度は蒸発器34に導入されるホットガスによって徐々に上昇して、各製氷小室21a内で凍結した氷は離脱して水皿23を滑り落ちて放出口28aから貯氷室16内に落下する。製氷部21の温度は氷が離脱することにより徐々に上昇し、製氷部温度センサ41の検出温度が除氷が完了したことを検知する除氷完了温度以上となると、制御装置50は、製氷部21の製氷小室21aに氷が残ってない、即ち除氷が完了したと検知して、ホットガス弁36を閉止させて除氷運転を終了する。制御装置50は、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知していなければ、上述した製氷運転及び除氷運転を交互に実行する製氷プログラムを再び実行させる。このように、制御装置50は、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知するまで、製氷モードにて製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷プログラムを実行するように制御する。
【0034】
製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷プログラムを実行するように制御すると、貯氷室16内に製氷部21で製造された氷が満たされるようになる。図5に示したように、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知すると(図5で貯氷検知器43がON(満)となったとき)、制御装置50は、製氷モードを終了して待機モードに移行し、製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷プログラムを実行せずに待機するように制御する。制御装置50は、待機モード中に、製氷室14(14A~14C)及び貯氷室16内を冷却する保冷運転を実行可能にしている。
【0035】
上述したように、この実施形態の製氷機10の保冷運転では、最上段と3段目の製氷機構部20A,20Cの冷凍装置30A,30Cにより製氷部21A,21Cを冷却し、2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bにより製氷部21Bを冷却しないようにしている。最上段の製氷室14Aは、最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aの冷却運転により冷却された製氷部21Aにより冷却され、2段目の製氷室14Bは、最上段の製氷室14Aの放出口28Aaから流れ落ちる冷気により冷却される。最下段となる3段目の製氷室14Cは、3段目の製氷機構部20Cの冷凍装置30Cの冷却運転により冷却された製氷部21Cにより冷却されるとともに、最上段から2段目の製氷室14Bに流れ落ちた冷気により冷却され、最下段の製氷室14Cの下側の貯氷室16は、最下段の製氷室14Cの放出口28Caから流れ落ちる冷気により冷却される。
【0036】
保冷運転を実行したときに、各製氷室14A~14Cの温度及び冷却具合が異なるため、最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aは製氷室温度センサ42Aの検出温度に基づいて作動が制御され、3段目の製氷機構部20Cの冷凍装置30Cは製氷室温度センサ42Cの検出温度に基づいて作動が制御されている。このように、製氷機構部20A,20Cの冷凍装置30A,30Cは、各段の製氷室14A,14Cの製氷室温度センサ42A,42Cの検出温度に基づいて各制御装置50A,50Cによって独立して制御されている。なお、この実施形態の製氷機10においては、保冷運転として最上段の製氷機構部20Aと3段目の冷凍装置30A,30Cを作動させて最上段と3段目の製氷室14A,14C内を冷却し、2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bを作動させないようにしているが、保冷運転として最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aを作動させ、3段目の製氷機構部20Cの冷凍装置30Cを夏季のような温度が高くなるときや製氷機10を設置した場所の温度が高いときに補助的に作動させるようにしたものであってもよい。
【0037】
以下に、保冷運転を実行したときの制御について説明する。なお、下記の説明では主として最上段の各構成の符号を用いて説明しており、括弧内に3段目の各構成の符号を記載している。図5に示したように、制御装置50A(50C)は、待機モード開始時に、製氷室温度センサ42A(42C)の検出温度が製氷室14A(14C)を冷却するための温度として設定した保冷設定温度(この実施形態で11℃)以上であるときに、待機モード開始時に保冷運転を実行するように制御している。製氷モードから待機モードに移行させたときの待機モード開始時の保冷運転においては、製氷モードの除氷運転時に圧縮機31A(31C)を作動させており、除氷運転の終了とともに圧縮機31A(31C)を作動停止させると、圧縮機31が短時間で発停(作動及び停止)を繰り返すことになる。このため、製氷モードから移行する待機モード開始時に保冷運転を実行するときには、製氷モードの除氷運転終了時に圧縮機31A(31C)を停止させずにホットガス弁36A(36C)を閉止させる。圧縮機31A(31C)から圧送されるホットガスが凝縮器32で冷却されて液化冷媒となって蒸発器34A(34C)に供給され、製氷部21A(21C)は蒸発器34A(34C)で液化冷媒が蒸発することにより冷却される。製氷室14A(14C)は冷凍装置30A(30C)の冷却運転によって冷却された製氷部21A(21C)により冷却されるとともに、貯氷室16は製氷室14から放出口28aを流れ落ちる冷気によって冷却される。
【0038】
これに対し、図6に示したように、待機モード開始時に製氷室温度センサ42A(42C)の検出温度が保冷設定温度以上でないときには、待機モード開始時に保冷運転を実行しないように制御している。待機モード開始時に保冷運転を実行しないときに、冷凍装置30A(30C)の圧縮機31A(31C)の作動を停止させるとともにホットガス弁36A(36C)を閉止させる。待機モードの開始時(製氷モードでの除氷運転の終了時)に圧縮機31A(31C)の作動を停止させてから圧縮機31の最低停止時間より長く設定された最低運転停止時間(この実施形態では10分で設定されている)以上経過した後で、製氷室温度センサ42A(42C)の検出温度が保冷設定温度以上となったときには、制御装置50A(50C)は保冷運転を実行するように制御している。
【0039】
保冷運転を実行すると、製氷室14A(14C)内の温度が低下し、圧縮機31A(31C)にて設定されている最低運転時間以上で設定した保冷運転時間経過後に、制御装置50は冷凍装置30A(30C)の圧縮機31A(31C)の作動を停止させるように制御している。また、制御装置50は、保冷運転の開始後から、製氷室温度センサ42A(42C)により検出される検出温度を経時的に積算した積算温度を経過時間で除することによって積算温度の単位時間あたりの平均温度を算出している。上述したように、圧縮機31A(31C)は短時間での発停(作動及び作動停止)を防止するために、圧縮機31A(31C)には作動停止後に最低停止時間が設定されている。圧縮機31A(31C)の作動停止後に最低停止時間より長く設定した最低運転停止時間(この実施形態では10分で設定されている)経過した後であるとともに、算出した平均温度が製氷室14A(14C)の保冷設定温度以上となると、停止されている保冷運転を再開させるように制御する。このように、製氷室14A(14C)は待機モード中に保冷運転を実行することによって保冷設定温度となるように冷却されており、保冷運転を実行するときに圧縮機31A(31C)が短時間で発停を繰り返さないように制御されている。なお、保冷運転を再開させた後では、製氷室温度センサ42により検出される検出温度を経時的に積算した積算温度をリセットして新たに積算温度の算出を開始させる。
【0040】
また、製氷機10を設置した設置場所の温度が低い等の周囲の温度の影響により、保冷運転開始後から算出した平均温度が保冷設定温度以上とならないときがある。平均温度が保冷設定温度以上とならずに、保冷運転時間経過後に停止させた保冷運転が再開されないと、制御装置50A(50C)が積算温度を算出する算出処理の処理限界を超えるおそれがある。制御装置50A(50C)が、積算温度または平均温度を算出開始してから所定の経過時間として例えば2時間または積算温度または平均温度を算出する算出回数が所定回数として10,000回以上となっても平均温度が保冷設定温度以上とならないときには、保冷運転時間経過後に停止させた保冷運転を自動的に再開させるように制御する。また、平均温度が保冷設定温度以上とならずに保冷運転を自動的に再開させたときには、制御装置50は、算出した平均温度に基づいて保冷運転を再開させずに、製氷室温度センサ42A(42C)の検出温度が保冷設定温度として11℃以上となると保冷運転を再開させるように制御する。なお、保冷運転を自動的に再開するように制御した後では、平均温度を再度算出開始させるようにし、改めて算出開始した平均温度が保冷設定温度以上となると、保冷運転を再開させるように制御してもよい。
【0041】
また、製氷室14A(14C)内の温度は製氷機10の設置場所の温度の影響を受けやすい。製氷室14A(14C)内の温度は、設置場所の温度が低いと保冷運転の実行時に温度が下がりやすく(温度の低下速度が速く)、保冷運転の停止時に温度が上がりにくい(温度の上昇速度が遅い)。同様に、製氷室14A(14C)内の温度は、設置場所の温度が高いと保冷運転の実行時に温度が下がりにくく(温度の低下速度が遅く)、保冷運転の停止時に温度が上がりやすい(温度の上昇速度が速い)。製氷機10の設置場所の温度が異なる状態で、保冷運転の実行の可否の判定基準となったり、停止させた保冷運転を再開させる基準温度となる保冷設定温度を同じ温度に設定していると、保冷運転によって製氷室14内と貯氷室16内を適切に冷却できないおそれがある。特に、製氷機10の設置場所の温度が低いときには、保冷運転の実行時に貯氷室16内の複数の氷が凍結して結合するアーチングが生じるおそれがある。このため、製氷機10を設置した設置場所の温度を検出するために、機械室15A(15C)内の凝縮器32A(32C)に設けた凝縮器温度センサ32Ab(32Cb)を製氷室14A(14C)の外側の温度を検出する外側温度センサとして用い、凝縮器温度センサ(外側温度センサ)32Ab(32Cb)の検出温度に基づいて保冷運転の実行の可否の判定及び保冷設定温度を補正するようにしている。
【0042】
凝縮器温度センサ(外側温度センサ)32Ab(32Cb)の検出温度が例えば25℃以下であるときには、保冷運転として最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aを作動させて最上段の製氷室14A内を冷却し、最上段以外の製氷機構部20B,20Cの冷凍装置30B,30Cを作動させないようにしてもよい。また、凝縮器温度センサ(外側温度センサ)32Ab(32Cb)の検出温度が例えば15℃以下であるときには、製氷室14A(14C)及び貯氷室16の温度は製氷機10の設置場所の温度の影響を受けて低くなりやすい。このため、設置場所の温度が低いときには、製氷室14A(14C)内及び貯氷室16を保冷運転によって冷却する必要もなく、制御装置50は、保冷運転を実行しないように制御することで、貯氷室16内の氷が所謂アーチングを生じるのを防ぐことができる。また、製氷機10は温度が20℃位の場所に設置されることが想定されていて、凝縮器温度センサ(外側温度センサ)32Ab(32Cb)の検出温度が基準温度として設定された20℃より10℃高い30℃となると、保冷設定温度を11℃から1℃下げて10℃と補正し、凝縮器温度センサ(外側温度センサ)32Ab(32Cb)の検出温度が基準温度である20℃より10℃低い10℃となると、保冷設定温度を11℃から1℃上げて12℃と補正する。このように、凝縮器温度センサ(外側温度センサ)32Ab(32Cb)の検出温度に基づいて、保冷運転の実行の可否の判定または保冷設定温度を補正するようにしているので、製氷機10の設置場所の温度によって保冷運転の実行時及び停止時の製氷室14A(14C)内の温度のばらつきや不具合を抑制することができる。
【0043】
図7に示したように、待機モード中に貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知しなくなると、制御装置50(50A~50C)は、待機モードから製氷モードに移行させる。待機モード中に保冷運転を停止させるように制御しているときには、圧縮機31A(31C)を所定時間として3分以上作動停止させた後に作動開始させるとともに、ホットガス弁36A(36C)を開放させることで、蒸発器34A(34C)内にホットガスを送出するようにして、除氷運転を実行することにより製氷部21A(21C)に氷が残らないようにしている。なお、保冷運転を実行中であれば、圧縮機31A(31C)を継続して作動させた状態で、ホットガス弁36A(36C)を開放させることで、蒸発器34A(34C)内にホットガスを送出するようにして除氷運転を実行する。除氷運転後に製氷モードとして全ての製氷機構部20A~20Cにて製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷プログラムを実行させる。
【0044】
上記のように構成した製氷機10は、製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部21A~21Cを有して上下に3段(多段)に配置される製氷機構部20A~20Cと、3段の製氷機構部20A~20Cの少なくとも各製氷部21A~21Cを収容するために上下に3段(多段)に配置される製氷室14A~14Cと、最下段の製氷室14Cの下側に配置されて各製氷部21A~21Cで製造された氷を貯える貯氷室16と、貯氷室16内の氷が満たされたことを検知する貯氷検知器43とを備えている。各々の製氷機構部20A~20Cは、製氷部21A~21Cに加え、圧縮機31A~31Cにより循環供給される冷媒によって製氷部21A~21Cを冷却する冷凍装置30A~30Cと、製氷部21A~21Cに製氷水を送出する送水手段22A~22Cとを有している。
【0045】
この製氷機10においては、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして各冷凍装置30A~30Cにより冷却した各製氷部21A~21Cで各送水手段22A~22Cにより送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転を実行するように制御して貯氷室16内に貯える氷を製造し、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知したときには、待機モードとして製氷運転を実行しないように制御して貯氷室16内に貯える氷を製造せずに待機するように制御している。
【0046】
この製氷機10においては、待機モード中に、最上段以外の少なくとも一部の製氷機構部として2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bを作動させず、少なくとも最上段として最上段と3段目の製氷機構部20A,20Cの冷凍装置30A,30Cにより製氷部21A,21Cを冷却することで、最上段と3段目の製氷室14A,14C内を冷却しつつこれよりも下側の製氷室14B内及び貯氷室16内を冷却する保冷運転を実行可能としている。待機モード中に製氷室14A~14C内及び貯氷室16内を冷却する保冷運転においては、温度の高くなりやすい最上段の製氷室14A内は最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aにより冷却される製氷部21Aにより確実に冷却され、最上段以外として2段目の製氷室14Bは最上段以外の少なくとも一部として2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bが作動していなくても、最上段の製氷室14Aから冷気が流れ落ちることで冷却される。また、この実施形態では、最上段から離れた3段目の製氷室14Cは、3段目の製氷機構部20Cの冷凍装置30Cにより冷却される製氷部21Cにより冷却されている。これにより、全ての製氷室14A~14Cは冷却された状態で清潔に保たれるようになる。また、最上段以外の少なくとも一部として2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bを作動させていないので、貯氷室16内は過剰に冷却されにくくなり、貯氷室16内で複数の氷が互いに接着した状態で凍結する、所謂アーチングが生じないようにすることができるようになる。さらに、最上段以外の少なくとも一部として2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bを作動させていないので、各製氷室14A~14Cが短時間で冷却されないようになり、各製氷機構部20A~20Cの圧縮機31A~31Cが短時間で発停することに起因して不具合が生じるのを防ぐことができる。
【0047】
この製氷機10においては、待機モード中に、少なくとも最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aにより製氷部21Aを冷却することで、最上段の製氷室14内を冷却しつつこれよりも下側の製氷室14B,14C内及び貯氷室16内を冷却する保冷運転を実行可能としている。また、この製氷機10においては、保冷運転は、最上段以外で作動させる製氷機構部20B,20Cの冷凍装置30B,30Cを選択可能とすることによって冷却能力を調節可能としている。待機モード中に製氷室14A~14C内及び貯氷室16を冷却する保冷運転においては、温度の高くなりやすい最上段の製氷室14A内は最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aにより冷却される製氷部21Aにより確実に冷却され、最上段以外の製氷室14B,14Cは作動させる製氷機構部として3段目の製氷機構部20Cの冷凍装置30Cを選択することで冷却能力が調節された状態で冷却されるので、全ての製氷室14A~14Cを清潔に保つように冷却することができる。また、最上段以外で作動させる製氷機構部として3段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Cを選択することで冷却能力を調節可能としているので、貯氷室14A~14C内は過剰に冷却されにくくなり、貯氷室16内で複数の氷が互いに接着した状態で凍結する、所謂アーチングが生じないようにすることができるようになる。さらに、最上段以外で作動させる製氷機構部として3段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Cを選択することで冷却能力を調節可能としているので、各製氷室14A~14Cが短時間で冷却されないようになり、各製氷機構部20A~20Cの圧縮機31A~31Cが短時間で発停することに起因して不具合が生じるのを防ぐことができる。
【0048】
この実施形態では、最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aにより製氷部21Aを冷却することで最上段の製氷室14Aを冷却しているが、最上段以外で作動させる製氷機構部20B,20Cの冷凍装置30B,30Cを選択可能としており、3段目の製氷機構部20Cの冷凍装置30Cにより製氷部21Cを冷却することで3段目の製氷室14Cを冷却している。本発明はこれに限られるものでなく、製氷機10を設置した設置場所の温度が高い等の外的要因があれば、2段目及び3段目の製氷機構部20B,20Cの冷凍装置30B,30Cにより製氷部21B,21Cを冷却することで2段目及び3段目の製氷室14B,14Cを冷却するようにしてもよい。製氷機10を設置した設置場所の温度が低い等の外的要因があれば、2段目及び3段目の製氷機構部20B,20Cの冷凍装置30B,30Cにより製氷部21B,21Cを冷却しないことで2段目及び3段目の製氷室14B,14Cを冷却しないようにしてもよい。
【0049】
この実施形態の製氷機10は、3段の製氷機構部20A~20Cと3段の製氷室14A~14Cとを備えたものであるが、これに限られるものでなく、本願発明は、2段以上の製氷機構部と製氷室を備えたものに適用されるものである。また、3段以上の製氷機構部と3段以上の製氷室を備えた製氷機においては、奇数段または偶数段のように高さ方向にて1段空けるように製氷機構部の冷凍装置を作動させて保冷運転を実行させるように制御してもよい。
【0050】
この実勢形態の製氷機10の保冷運転においては、最上段と3段目の製氷機構部20A,20Cの各冷凍装置30A,30Cを作動させるように制御しているが、最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aと3段目の製氷機構部20Cの冷凍装置30Cとを交互に作動(冷却運転)させてもよい。このようにしたときには、冷凍装置30A,30Cの圧縮機31A,31Cが短時間で発停することに起因した不具合が発生するのを一層防ぐことができる。また、保冷運転においては、最上段の製氷機構部20Aの冷凍装置30Aにり製氷室14Aを冷却しつつ、2段目の製氷機構部20Bの冷凍装置30Bと3段目の製氷機構部20Cの冷凍装置30Cと交互に作動(冷却運転)させてもよい。さらに、最上段~3段目の製氷機構部20A~20Cの冷凍装置30A~30Cを順番に作動(冷却運転)させてもよい。このようにしたときには、冷凍装置30A~30Cの圧縮機31A~31Cが短時間で発停することに起因した不具合が発生するのを一層防ぐことができる。
【0051】
この実施形態の製氷機10においては、各放出口28Aa~28Caに下方に進むに従って内側に傾斜するシュート部を設け、シュート部に複数の通気用のスリットを形成するようにしてもよい。このようにしたときには、各製氷室14A~14Cの冷気を下側の製氷室14B,14C及び貯氷室16に伝えやすくすることができる。
【0052】
この実施形態の保冷運転は、製氷室温度センサ42A~42Cの検出温度に基づいて冷凍装置30A~30Cの作動(冷却運転)を制御しているが、これに限られるものでなく、 製氷部温度センサ41A~41Cの検出温度に基づいて冷凍装置30A~30Cの作動(冷却運転)を制御したり、貯氷室内に設けた貯氷室温度センサの検出温度に基づいて冷凍装置30A~30Cの作動(冷却運転)を制御するようにしたものであってもよい。
【0053】
この実施形態の製氷機10は、所謂クローズドセルタイプの製氷機であるが、これに限られるものでなく、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして製氷運転を実行するように制御し、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知したときには、待機モードとして製氷運転を実行しないようにする製氷機であれば、所謂オープンセルタイプの製氷機等の他の製氷機にも適用されるものである。また、この実施形態の製氷機10は、製氷室14と貯氷室16とが放出口28aを除いてドレンパン(仕切部)28により仕切られているが、これに限られるものでなく、製氷室14と貯氷室16とが仕切部によって仕切られることなく一体となったものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…製氷機、14(14A~14C)…製氷室、16…貯氷室、20(20A~20C)…製氷機構部、21(21A~21C)…製氷部、30(30A~30C)…冷凍装置、31(31A~31C)…圧縮機、43…貯氷検知器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7