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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054947
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/04 20180101AFI20240411BHJP
   F25C 1/045 20180101ALI20240411BHJP
【FI】
F25C1/04 302Z
F25C1/045 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161428
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】門脇 静馬
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢二
(72)【発明者】
【氏名】錦織 由和
(72)【発明者】
【氏名】泉川 尚斗
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 直樹
(57)【要約】
【課題】送水手段により製氷部に製氷水を送出しないようにして低負荷の製氷部を冷凍装置により冷却するときに生じる不具合を低減させる。
【解決手段】製氷機10は、冷凍装置30により冷却した製氷部21で送水手段22により送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転を実行するように制御して貯氷室16内に貯える氷を製造するものであり、送水手段22により製氷水を送出しないようにして低負荷の状態の製氷部21を冷凍装置30により冷却する保冷運転や霜洗浄運転のような低負荷冷却運転を実行可能としており、低負荷冷却運転を実行したときに冷凍装置30を製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて作動させるように制御した。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部と、
圧縮機により循環供給される冷媒によって前記製氷部を冷却する冷凍装置と、
前記製氷部に製氷水を送出する送水手段と、
前記製氷部で製造された氷を貯える貯氷室とを備え、
前記冷凍装置により冷却した前記製氷部で前記送水手段により送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転を実行するように制御して前記貯氷室内に貯える氷を製造する製氷機であって、
前記送水手段により製氷水を送出しないようにして低負荷の状態の前記製氷部を前記冷凍装置により冷却する低負荷冷却運転を実行可能としており、前記低負荷冷却運転を実行したときに前記冷凍装置を前記製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて作動させるように制御したことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
請求項1に記載の製氷機において、
前記冷凍装置は、前記圧縮機から循環供給される圧縮冷媒を冷却する凝縮器ファンを備えた凝縮器により凝縮させて液化させるようにし、液化させた冷媒を前記製氷部に設けた蒸発器により蒸発させることで前記製氷部を冷却するようにしたものであり、
前記低負荷冷却運転を実行したときには前記凝縮器の凝縮器ファンを前記製氷運転で作動させるときよりも低出力で作動させるように制御することで前記冷凍装置の冷却能力を低下させたことを特徴とする製氷機。
【請求項3】
製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部と、
圧縮機により循環供給される冷媒によって前記製氷部を冷却する冷凍装置と、
前記製氷部に製氷水を送出する送水手段と、
前記製氷部で製造された氷を貯える貯氷室と、
前記製氷部の温度を検出する製氷部温度センサとを備え、
前記冷凍装置により冷却した前記製氷部で前記送水手段により送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転を実行するように制御して前記貯氷室内に貯える氷を製造する製氷機であって、
前記送水手段により製氷水を送出しないようにして低負荷の状態の前記製氷部を前記冷凍装置により冷却する低負荷冷却運転を実行可能としていて、
前記低負荷冷却運転を実行開始させてから所定の低負荷冷却運転時間で前記冷凍装置を作動させるように制御するものであり、
前記製氷部温度センサの検出温度が前記製氷部温度センサを保護するために設定された保護温度よりも高く設定した下限温度以下を検出したときに前記低負荷冷却運転時間前であっても前記冷凍装置の圧縮機の作動を停止させるように制御したことを特徴とする製氷機。
【請求項4】
請求項3に記載の製氷機において、
前記圧縮機にて設定されている最低運転時間経過前に前記製氷部温度センサが前記下限温度以下を検出したときに、前記最低運転時間経過後に前記冷凍装置の圧縮機の作動を停止させるように制御したことを特徴とする製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷部で氷を製造する製氷機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、製氷室内に設けた製氷部で氷を製造する製氷機の発明が開示されている。この製氷機は、製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部と、圧縮機により循環供給される冷媒によって製氷部を冷却する冷凍装置と、製氷部に製氷水を送出する送水手段と、製氷部が配設される製氷室と、製氷室の下側に配置されて製氷部で製造された氷を貯える貯氷室と、貯氷室内にて氷が満たされたことを検知する貯氷検知器とを備えている。
【0003】
この製氷機においては、冷凍装置により冷却された製氷部で送水手段により製氷水を送出して凍結させることにより氷を製造する製氷運転と、冷凍装置から製氷部にホットガスを送出することによって製氷部から氷を離脱させる除氷運転とを交互に実行することにより、貯氷室内に貯える氷を製造している。貯氷検知器により氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして製氷部により製氷運転と除氷運転とを交互に実行するように制御して貯氷室内に貯える氷を製造し、貯氷検知器により氷が満たされたことを検知したときには、貯氷モード(待機モード)として製氷運転と除氷運転とを実行しないように制御して貯氷室内に貯える氷を製造せずに待機している。
【0004】
この製氷機においては、貯氷モードであるときに、貯氷室内の温度の上昇を抑制するための保冷運転を実行するように制御しており、保冷運転は冷凍装置により製氷部を冷却することによって製氷室内を介して貯氷室内を冷却するようにしている。この製氷機は、貯氷室または製氷部の温度を検出する温度センサを備えており、保冷運転ではこの温度センサの検出温度が上限温度となると冷凍装置を作動させ、温度センサの検出温度が下限温度となると冷凍装置の作動を停止させるように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-032062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の製氷機は、貯氷モード(待機モード)中に貯氷室内を保冷運転によって冷却しているが、製氷機の冷凍装置は製氷部に送出される製氷水を氷となるように冷却可能としたものであるので、製氷水が送出されていない状態の製氷部を冷却するときの冷凍装置の負荷が低く(小さく)、冷凍装置は貯氷室内を冷却するのに長い時間を要しない。さらに、外気温が低い場合に貯氷室内を冷却しようとすると、貯氷室内を冷却するのための冷却時間が短くなり、冷凍装置を構成する圧縮機を短時間で作動停止させることになり、圧縮機は短時間で作動停止させることに起因した不具合が生じるおそれがある。
【0007】
この種の製氷機においては、温度センサにサーミスタが用いられることがあり、サーミスタよりなる温度センサは温度によって変化する抵抗値に基づいて温度を検出している。極めて温度の低い状態で検出されるサーミスタの抵抗値はサーミスタの断線を検知するときに設定した閾値と同じ程度に低くなる。圧縮機が一定の運転時間内に作動停止されることがないように、上記の保冷運転を温度センサの検出温度に基づかずに一定の運転時間で実行したときには、製氷部がサーミスタよりなる温度センサで断線と検知される温度まで冷却され、サーミスタよりなる温度センサで断線が生じたと誤検知がされるおそれがある。本発明は、送水手段により製氷部に製氷水を送出しないようにして低負荷の状態で冷凍装置により製氷部を冷却するときに生じる不具合を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部と、圧縮機により循環供給される冷媒によって製氷部を冷却する冷凍装置と、製氷部に製氷水を送出する送水手段と、製氷部で製造された氷を貯える貯氷室とを備え、冷凍装置により冷却した製氷部で送水手段により送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷機であって、送水手段により製氷水を送出しないようにして低負荷の状態の製氷部を冷凍装置により冷却する低負荷冷却運転を実行可能としており、低負荷冷却運転を実行したときに冷凍装置を製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて作動させるように制御したことを特徴とする製氷機を提供するものである。
【0009】
上記のように構成した製氷機においては、送水手段により製氷水を送出しないようにして低負荷の状態の製氷部を冷凍装置により冷却する低負荷冷却運転を実行可能としており、低負荷冷却運転を実行したときに冷凍装置を製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて作動させるように制御している。低負荷冷却運転を実行すると、冷凍装置により製氷部を冷却する負荷が製氷運転を実行したときよりも低いので、製氷部は短時間で十分に冷却されるようになる。冷凍装置の圧縮機を短時間で停止させなければ、製氷部が過剰に冷却されるおそれがあるが、低負荷冷却運転を実行したときに冷凍装置を製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて作動させるように制御したので、製氷部は短時間で過剰に冷却されないようになり、冷凍装置の圧縮機は短時間で作動停止されないようになる。これにより、低負荷の状態で冷凍装置により製氷部を冷却したときに生じる不具合として、圧縮機が短時間で作動停止することに起因した不具合が生じにくくなる。
【0010】
上記のように構成した製氷機においては、冷凍装置は、圧縮機から循環供給される圧縮冷媒を冷却する凝縮器ファンを備えた凝縮器により凝縮させて液化させるようにし、液化させた冷媒を製氷部に設けた蒸発器により蒸発させることで製氷部を冷却するようにしたものであり、低負荷冷却運転を実行したときには凝縮器の凝縮器ファンを製氷運転で作動させるときよりも低出力で作動させるように制御することで冷凍装置の冷却能力を低下させるようにしてもよい。
【0011】
本発明は上記課題を解決するため、製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部と、圧縮機により循環供給される冷媒によって製氷部を冷却する冷凍装置と、製氷部に製氷水を送出する送水手段と、製氷部で製造された氷を貯える貯氷室と、製氷部の温度を検出する製氷部温度センサとを備え、冷凍装置により冷却した製氷部で送水手段により送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転を実行するように制御して貯氷室内に貯える氷を製造する製氷機であって、送水手段により製氷水を送出しないようにして低負荷の状態の製氷部を冷凍装置により冷却する低負荷冷却運転を実行可能としていて、低負荷冷却運転を実行開始させてから所定の低負荷冷却運転時間で冷凍装置を作動させるように制御するものであり、製氷部温度センサの検出温度が製氷部温度センサを保護するために設定された保護温度よりも高く設定した下限温度以下を検出したときに低負荷冷却運転時間前であっても冷凍装置の圧縮機を停止させるように制御したことを特徴とする製氷機を提供するものである。
【0012】
上記のように構成した製氷機においては、送水手段により製氷水を送出しないようにして低負荷の状態で冷凍装置により製氷部を冷却する低負荷冷却運転を実行可能としていて、低負荷冷却運転を実行開始させてから所定の低負荷冷却運転時間で冷凍装置を作動させるように制御するものであり、製氷部温度センサの検出温度が製氷部温度センサを保護するために設定された保護温度よりも高く設定した下限温度以下を検出したときに低負荷冷却運転時間前であっても冷凍装置の圧縮機の作動を停止させるように制御している。低負荷冷却運転を実行すると、冷凍装置により製氷部を冷却する負荷が製氷運転を実行したときよりも低いので、製氷部は短時間で十分に冷却されるようになる。冷凍装置の圧縮機を短時間で停止させなければ、製氷部が製氷部温度センサを保護するために設定された保護温度より低い温度まで冷却されるおそれがあるが、製氷部温度センサの検出温度が製氷部温度センサを保護するために設定された保護温度よりも高く設定した下限温度以下を検出したときに、低負荷冷却運転時間前であっても冷凍装置の圧縮機の作動を停止させるように制御している。これにより、製氷部が製氷部温度センサを保護するために設定された保護温度より低くならず、低負荷の状態で冷凍装置により製氷部を冷却したときに生じる不具合を生じにくくすることができる。
【0013】
上記のように構成した製氷機においては、圧縮機にて設定されている最低運転時間経過前に製氷部温度センサが下限温度以下を検出したときに、最低運転時間経過後に冷凍装置の圧縮機の作動を停止させるように制御するのが好ましい。このようにしたときには、冷凍装置の圧縮機が最低運転時間経過前に作動停止しないようになり、圧縮機が短時間で作動停止することに起因した不具合が生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の製氷機の斜視図である。
図2】本発明の製氷機の概略図である。
図3】製氷部と水皿とを示す概略図である。
図4】制御装置のブロック図である。
図5】待機モード中に保冷運転を実行するときのタイムチャートである。
図6】待機モード中に霜洗浄運転を実行するときのタイムチャートである。
図7】待機モード中に霜洗浄運転を実行するときのタイムチャートであり、着霜運転時間中に製氷部温度センサの検出温度が下限温度以下となって圧縮機を一時的に停止させたときのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の製氷機の一実施形態を図面を用いて説明する。図1及び図2に示したように、この実施形態の製氷機10は、所謂クローズドセルタイプの製氷機であり、ハウジング11の上部を構成する上側ハウジング12と、ハウジング11の下部を構成する下側ハウジング13と、上側ハウジング12内に製氷室14と機械室15と、下側ハウジング13に貯氷室16とを備えている。図1では貯氷室16内の氷を一点鎖線にて示している。
【0016】
図2に示したように、製氷機10は氷を製造する製氷機構部20を備え、製氷機構部20は、製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部21と、製氷部21を冷却及び加温する冷凍装置30と、製氷部21に製氷水を送出する送水手段22とを備えている。製氷部21は、製氷室14内に配設されており、下側が開口した浅い箱形状の内部に格子状の仕切部材を設けることで下側に開いた複数の製氷小室21aが形成されている。各製氷小室21aに下側から製氷水が噴射送出され、各製氷小室21a内には製氷水が凍結することでブロック形の氷が形成される。
【0017】
製氷部21の上面には冷凍装置30を構成する蒸発器34が配設されている。冷凍装置30は、冷却運転及び加温運転によって製氷部21を冷却または加温可能とするものであり、製氷室14内にて製氷部21の上側に配設された蒸発器34を除いて機械室15内に配設されている。冷凍装置30は、冷媒を圧縮する圧縮機31と、圧縮機31から圧送された冷媒を冷却して液化させる凝縮器32と、凝縮器32にて液化させた液化冷媒を膨張させて低圧の液化冷媒とする膨張弁33と、膨張弁33により膨張させた液化冷媒を気化させて製氷部21を冷却する蒸発器34とを備えている。冷凍装置30は圧縮機31、凝縮器32、膨張弁33及び蒸発器34を冷媒管によって環状に接続して冷凍回路が構成されている。冷凍装置30の冷却運転を実行すると、圧縮機31から圧送された冷媒が凝縮器32にて冷却されて液化冷媒となり、液化冷媒は膨張弁33にて低圧の液化冷媒となり、低圧の液化冷媒は蒸発器34にて蒸発するときの気化熱によって製氷部21を冷却する。
【0018】
圧縮機31は短時間での発停(作動及び作動停止)を繰り返すのを防止するために、最低運転時間(この実施形態では3分)と最低停止時間(この実施形態では3分)が設定されている。凝縮器32には凝縮器ファン32aが設けられており、凝縮器32を通過する冷媒は凝縮器ファン32aによる送風によって冷却される。この実施形態の凝縮器ファン32aは、回転速度(回転数)を調節可能としたものであり、段階的または無段階で回転速度を調節可能として、蒸発器32を通過する冷媒の冷却能力を調節可能としている。凝縮器32には凝縮器温度センサ32bが設けられており、凝縮器温度センサ32bは凝縮器32を通過する冷媒の温度を検出するとともに、後述する機械室15内の温度を検出するのにも用いられる。蒸発器34は熱導電性の高い管部材を用いたものであり、製氷部21の上側で蛇行状に配置されている。
【0019】
また、冷凍装置30は蒸発器34にホットガスを供給するホットガス管(ホットガス経路)35を備えている。ホットガス管35は、圧縮機31の下流と蒸発器34の上流とを接続して、圧縮機31からのホットガスを蒸発器34に導くようにしている。ホットガス管35にはホットガス弁36が介装されており、ホットガス弁36はホットガス管35を開閉可能としている。冷凍装置30を加温運転すると、圧縮機31から送出されるホットガスはホットガス弁36の開放によって蒸発器34に導かれ、ホットガスは蒸発器34を通過するときに製氷部21を加温する。このように、製氷部21は、冷凍装置30の冷却運転によって循環する冷媒が蒸発器34で蒸発することによって冷却され、冷凍装置30の加温運転によって圧縮機31から蒸発器34に送出されるホットガスによって加温される。
【0020】
図2に示したように、製氷部21の下側には製氷水を送出する送水手段22が設けられている。送水手段22は、製氷部21の製氷小室21aの下側を開閉自在に塞ぐ水皿23と、水皿23の下側にて製氷水を貯える製氷水タンク24と、製氷水タンク24内の製氷水を製氷部21に送出する送水ポンプ25とを備えている。水皿23、製氷水タンク24及び送水ポンプ25は製氷部21と同様に製氷室14内に配設されている。水皿23は、製氷小室21aの下側を塞ぐ閉塞位置(図2の実線に示した)と製氷小室21aの下側を開放する開放位置(図2の二点鎖線に示した)との間で水平軸線回りに傾動可能に軸支されている。水皿23には開閉機構26が設けられており、水皿23は開閉機構26のアクチュエータモータ26aの駆動によって閉塞位置と開放位置との間で傾動して製氷小室21aの下側を開閉させている。図3に示したように、水皿23には製氷水タンク24から送出される製氷水を各製氷小室21aに送るための製氷水通路23aが形成されており、水皿23の上面には製氷水通路23aから各製氷小室21aに製氷水を噴射させる噴射孔23bが形成されている。
【0021】
製氷水タンク24には水道等の給水源の水を製氷水として供給する給水管27が接続されており、給水管27には給水弁27aが介装されている。給水源の水は、給水弁27aを開放することによって給水管27を通って製氷水タンク24に供給される。製氷水タンク24内の製氷水は送水ポンプ25によってから水皿23の製氷水通路23aに送出され、製氷水通路23aに送出された製氷水は噴射孔23bから製氷小室21aに噴射される。噴射された製氷水は製氷小室21a内で冷却されつつ製氷水タンク24に戻り、製氷水は製氷水タンク24と製氷小室21aとの間を循環することで冷却されながら製氷小室21a内で凍結して氷となる。
【0022】
製氷水タンク24の下側にはドレンパン28が設けられており、ドレンパン28は製氷運転後に製氷水タンク24に残る製氷水を受けるようにしたものである。ドレンパン28には排水管(図示省略)が接続されており、ドレンパン28で受けた製氷水は排水管を通ってハウジング11の外側に排出される。また、ドレンパン28は、製氷部21の下側を覆っており、製氷部21により製造された氷を貯氷室16に放出する放出口28aを有した状態で製氷室14と貯氷室16とを仕切る仕切部として機能している。
【0023】
製氷部21には製氷部温度センサ41が設けられており、製氷部温度センサ41は製氷部21の温度を検出することにより後述する製氷運転での製氷完了及び除氷運転での除氷完了を検知可能としている。製氷部温度センサ41は、温度によって変化する抵抗値に基づいて温度を検出するサーミスタが用いられ、断線と判定する抵抗値に基づく保護温度としてこの実施形態では-60℃に設定されている。製氷室14には製氷室温度センサ42が設けられており、製氷室温度センサ42は製氷室内14の温度を検出する。この実施形態では、製氷室温度センサ42は、製氷室14内にて製氷部21から氷が放出口28aに送出される経路に配置されている。貯氷室16には氷が満たされたことを検知する貯氷検知器43が設けられている。貯氷検知器43は、製氷室14から放出口28aを通って貯氷室16まで延出しており、放出口28aの下側にて貯氷室16内の上部に堆積した氷を検知して、貯氷室16内の氷が満たされたことを検知する。
【0024】
製氷機10は制御装置50を備えており、図4に示したように、この制御装置50は、送水ポンプ25、開閉機構26のアクチュエータモータ26a、給水弁27a、圧縮機31、凝縮器ファン32a、凝縮器温度センサ32b、ホットガス弁36、製氷部温度センサ41、製氷室温度センサ42及び貯氷検知器43に接続されている。制御装置50はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。制御装置50は、製氷部21にて製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転と、製氷運転により製氷部21で凍結させた氷を離脱させて除氷する除氷運転とを交互に繰り返し実行させる製氷プログラムを有している。
【0025】
制御装置50は、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷プログラムを実行して、貯氷室16内に貯える氷を製造している。また、制御装置50は、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知したときには、待機モードとして製氷運転と除氷運転とを繰り返す製氷プログラムを実行せずに待機している。
【0026】
制御装置50は、この待機モード中に、送水手段22により製氷水を送出することなく冷凍装置30の作動を制御して製氷室14内と貯氷室16内を冷却する保冷運転を実行可能としている。保冷運転は、冷凍装置30の冷却運転(作動)によって製氷部21を冷却し、冷却された製氷部21により製氷室14及び貯氷室16を冷却するようにしたものである。保冷運転は、製氷室14内を低温に保って細菌の繁殖を抑えるようにするともに、貯氷室16内に貯える複数の氷が凍結して結合する所謂アーチングを生じさせないようにしつつ氷を融けないように貯えるようにすることを目的としたものである。
【0027】
制御装置50は、この待機モード中に、送水手段22により製氷水を送出することなく冷凍装置30を冷却運転することで製氷部21に霜を付着させる着霜運転と、着霜運転後に冷凍装置30を加温運転することにより製氷部21に付着した霜を融かして除去する除霜運転とを行うことにより、製氷部21を霜によって洗浄する霜洗浄運転を実行可能としている。製氷モードにて製氷プログラムを実行して氷を製造したときに、製氷運転中に製氷水タンクに残る製氷水に含まれるミネラル成分が濃縮されるようになり、製氷運転中にミネラル成分が濃縮された製氷水が製氷部21に付着して残り、製氷部21に付着して残る製氷水中のミネラル成分が除氷運転によって析出する。このように、製氷プログラムを繰り返し実行すると、製氷部21にはミネラル成分等の汚れが徐々に蓄積する。霜洗浄運転は、製氷部21に付着したミネラル成分等の汚れを霜によって洗い流すものであり、製氷部21の製氷小室21a内だけでなく製氷部21の外周面にも付着する霜によって洗い流すものである。特に、霜洗浄運転は、製氷部21を製氷水を用いて洗浄するものではなく、周囲の水分を霜として製氷部21に付着させて、製氷部21に付着した汚れを霜により洗浄するものであるので、製氷水に含まれるミネラル成分による汚れが新たに製氷部21に付きにくくなっている。なお、この実施形態の製氷機10においては、待機モード中に霜洗浄運転を実行可能としているが、これに限られるものでなく、製氷モード中の除氷運転の終了後に次の製氷運転を開始する前に実行可能としてもよい。
【0028】
これらの保冷運転と霜洗浄運転の着霜運転は、製氷運転を実行するときに送水手段22によって製氷水が送出された製氷部21を冷凍装置30の冷却運転により冷却するときと異なり、送水手段22により製氷水を送出しないようにして低負荷の状態の製氷部21を冷凍装置30の冷却運転により冷却する低負荷冷却運転となっている。保冷運転と霜洗浄運転の着霜運転のような低負荷冷却運転を実行するときに、製氷運転を実行しているときと同様の冷凍装置30の冷却能力を用いて製氷部21を冷却すると、製氷部21が短時間で過剰に冷却されるおそれがあり、この場合に、製氷部21の温度が製氷部温度センサ41を保護するための保護温度以下となるおそれがある。また、製氷部21が短時間で製氷部温度センサ41の保護温度よりも低くならないようにするために、冷凍装置30の圧縮機31を短時間で作動停止させようとすると、圧縮機31が最低運転時間経過前に作動停止されるおそれがある。
【0029】
このため、保冷運転と霜洗浄運転の着霜運転のような低負荷冷却運転を実行するときには、冷凍装置30を製氷運転で作動させたときよりも冷却能力を低下させて作動させるように制御している。この実施形態では、凝縮器32の凝縮器ファン32aの回転速度を低下させるようにして冷凍装置30の冷却能力を低下させ、具体的には、凝縮器ファン32aの回転速度を定格出力での回転速度の50%としている。凝縮器32の凝縮器ファン32aの回転速度を低下させるようにしたときには、凝縮器32を通過する冷媒を冷却する冷却能力が低下し、蒸発器34に送出される冷媒の温度が高くなって、製氷部21の温度低下速度が遅くなる。保冷運転と霜洗浄運転の着霜運転のような低負荷冷却運転を実行したときに、凝縮器32の凝縮器ファン32aの回転速度を低下させた状態で冷凍装置30の冷却運転により製氷部21を冷却することにより、製氷部21が短時間で例えば製氷部温度センサ41の保護温度よりも低くなるように過剰に冷却されにくく、圧縮機31を短時間で作動停止させることによる不具合や、製氷部温度センサ41が保護温度以下となる不具合が生じにくい。
【0030】
次に、製氷モード中に実行される製氷プログラムについて説明する。制御装置50は、製氷モード中に製氷プログラムを実行したときに製氷部21にて製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返し実行する。制御装置50は、製氷運転を実行させたときに、冷凍装置30を冷却運転させると、圧縮機31から圧送された冷媒が凝縮器32により液化されて液化冷媒となり、液化冷媒は膨張弁33により膨張して低圧の液化冷媒となり、低圧の液化冷媒は蒸発器34で気化してから圧縮機31に戻り、製氷部21は蒸発器34で液化冷媒が気化することによって冷却される。また、制御装置50は、開閉機構26のアクチュエータモータ26aにより水皿23を閉塞位置に傾動させた状態で、給水弁27aを製氷水タンク24の容量に応じた所定時間開放することで、製氷水タンク24には製氷部21にて氷を形成するのに必要な量の製氷水が貯えられる。
【0031】
制御装置50は冷凍装置30を冷却運転させた状態で送水ポンプ25を作動させると、製氷水タンク24内の製氷水は送水ポンプ25の作動によって製氷部21の各製氷小室21aに噴射送出され、噴射送出された製氷水は各製氷小室21a内で冷却されて製氷水タンク24内に再び戻り、製氷水は製氷水タンク24と各製氷小室21aとの間を循環する過程で冷却されて各製氷小室21a内で徐々に凍結する。製氷水タンク24内の製氷水が減少し、製氷水が各製氷小室21a内で凍結してブロック形の氷が形成されるようになり、製氷部温度センサ41による検出温度が製氷完了温度以下となると、制御装置50は製氷運転を終了させて除氷運転を開始する。
【0032】
製氷運転後の除氷運転では、制御装置50は、圧縮機31を作動させた状態でホットガス弁36を開放して冷凍装置30を加温運転させるとともに、開閉機構26のアクチュエータモータ26aにより水皿23を開放位置に傾動させる。冷凍装置30を加温運転させると、圧縮機31から送出されるホットガスは、ホットガス管35を通って蒸発器34に導かれて製氷部21の各製氷小室21aを加温する。製氷部21の温度は蒸発器34に導入されるホットガスによって徐々に上昇して、各製氷小室21a内で凍結した氷は離脱して水皿23を滑り落ちて放出口28aから貯氷室16内に落下する。製氷部21の温度は氷が離脱することにより徐々に上昇し、製氷部温度センサ41の検出温度が除氷が完了したことを検知する除氷完了温度以上となると、制御装置50は、製氷部21の製氷小室21aに氷が残ってない、即ち除氷が完了したと検知して、ホットガス弁36を閉止させて除氷運転を終了する。制御装置50は、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知していなければ、上述した製氷運転及び除氷運転を交互に実行する製氷プログラムを再び実行させる。このように、制御装置50は、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知するまで、製氷モードにて製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷プログラムを実行するように制御する。
【0033】
製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷プログラムを実行するように制御すると、貯氷室16内に製氷部21で製造された氷が満たされるようになる。貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知すると、制御装置50は、製氷モードを終了して待機モードに移行し、製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷プログラムを実行せずに待機するように制御する。
【0034】
制御装置50は、待機モード中に、製氷室14及び貯氷室16内を冷却する保冷運転と、製氷部21を霜によって洗浄する霜洗浄運転とを実行可能にしている。先ず、保冷運転について以下に説明する。図5に示したように、待機モード中の保冷運転においては、制御装置50は、製氷室温度センサ42の検出温度が保冷設定温度以上であるときに、圧縮機31を作動させるとともに、凝縮器32の凝縮器ファン32aを製氷運転を実行したとき(定格出力で回転させたとき)よりも50%の回転速度(出力)で回転させることにより、冷凍装置30の冷却運転を製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて実行させる。圧縮機31から圧送された冷媒が凝縮器32にて冷却されて液化冷媒となり、液化冷媒は膨張弁33にて低圧の液化冷媒となり、低圧の液化冷媒は蒸発器34にて蒸発するときの気化熱により製氷部21を冷却する。このとき、凝縮器32の凝縮器ファン32aの回転速度を50%に抑えるようにしているので、凝縮器32で凝縮される冷媒の温度が製氷運転を実行したときよりも高く、製氷部21の冷却能力が抑えられるようになる。これにより、製氷部21は短時間で過剰に冷却されにくくなり、圧縮機31を短時間(少なくとも圧縮機31の最低運転時間)で作動停止させないようにして、圧縮機31が短時間で発停を繰り返すのを防ぐことができる。特に、製氷部21は短時間で製氷部温度センサ41の保護温度よりも低くなりにくく、圧縮機31を短時間で作動停止させることがなくなる。なお、圧縮機31の最低運転時間以上に設定した保冷運転時間(この実施形態では圧縮機31の最低運転時間と同じ3分としており、3分~5分で設定可能としている)が経過すると、圧縮機31と凝縮器ファン32aの作動を停止して保冷運転を終了させる。
【0035】
また、制御装置50は、保冷運転の開始後から、製氷室温度センサ42により検出される検出温度を経時的に積算した積算温度を経過時間で除することによって積算温度の単位時間あたりの平均温度を算出している。圧縮機31は短時間での発停(作動及び作動停止)を防止するために、圧縮機31には作動停止後に最低停止時間が設定されている。圧縮機31の作動停止後に最低停止時間より長く設定した運転停止時間(この実施形態では10分で設定されている)経過した後であるとともに、算出した平均温度が製氷室14の保冷設定温度以上となると、停止されている保冷運転を再開させるように制御する。なお、この実施形態の保冷運転の最低停止運転時間は、例えば1時間のような長い時間単位で圧縮機31の発停回数を減らすことを目的として、圧縮機31の最低停止時間である3分よりも長い10分に設定されている。このように、保冷運転では、冷凍装置30を製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて作動させているので、製氷部21が短時間で製氷部温度センサ41の保護温度よりも低くように過剰に冷却されず、圧縮機31は短時間で発停(作動及び作動停止)しないようにすることができる。
【0036】
保冷運転を実行するときに、製氷室温度センサ42が故障して製氷室14内の温度を検出できなくなるときがある。この場合に、保冷運転を停止するのではなく、上述したのと同じ程度の長さとなるように予め設定した保冷運転時間と保冷運転停止時間となるように保冷運転を実行するように制御するのが好ましい。なお、保冷運転停止時間は変更可能とするのが好ましく、このようにしたときには、貯氷室16内の複数の氷が凍結して結合する、所謂アーチングが形成されにくくすることができる。また、この場合において、保冷運転時間と保冷運転停止時間とを外気温に応じて補正するのが好ましい。さらに、過去に実行された保冷運転での保冷運転時間と保冷運転停止時間とを予め記憶させ、記憶させた保冷運転時間と保冷運転停止時間となるように保冷運転を実行するように制御してもよい。
【0037】
また、製氷室温度センサ42が故障したときには、製氷室温度センサ42に代えて製氷部温度センサ41に基づいて保冷運転を実行するように制御してもよい。この場合には、製氷部温度センサ41の検出温度は製氷室温度センサ42の検出温度より低くなるので、製氷部温度センサ41の検出温度に所定の補正値を加算した値を用いて保冷運転を実行するように制御するのが好ましい。
【0038】
また、製氷室温度センサ42に基づいて製氷室14内の温度を制御するときに、製氷機10の設置場所の温度に応じて保冷運転停止時間が定まる傾向がある。このため、製氷室温度センサ42が故障する前の保冷運転停止時間に基づき製氷機10の設置場所の温度を推定し、製氷機10の設置場所の推定した温度に基づいて保冷運転の要否、保冷運転時間及び保冷運転停止時間を決定するようにしてもよく、また、保冷設定温度を補正するようにしてもよい。
【0039】
次に、待機モード中の霜洗浄運転について以下に説明する。図6に示したように、待機モード中の霜洗浄運転の着霜運転においては、制御装置50は、圧縮機31を作動させるとともに、凝縮器32の凝縮器ファン32aを製氷運転を実行したとき(定格出力で回転させたとき)よりも50%の回転速度(出力)で回転させることにより、冷凍装置30の冷却運転を製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて実行させる。圧縮機31から圧送された冷媒が凝縮器32にて冷却されて液化冷媒となり、液化冷媒は膨張弁33にて低圧の液化冷媒となり、低圧の液化冷媒は蒸発器34にて蒸発するときの気化熱により製氷部21を冷却する。このとき、凝縮器32の凝縮器ファン32aの回転速度を50%に抑えるようにしているので、凝縮器32で凝縮される冷媒の温度が製氷運転を実行したときよりも高く、製氷部21の冷却能力が抑えられるようになる。これにより、製氷部21は短時間で過剰に冷却されにくくなり、圧縮機31を短時間で作動停止させないようにして、圧縮機31が短時間で発停を繰り返すのを防ぐことができる。特に、製氷部21は短時間で製氷部温度センサ41の保護温度よりも低くなりにくく、圧縮機31を短時間で作動停止させることがなくなる。なお、圧縮機31の最低運転時間以上に設定した着霜運転時間(この実施形態では15分間)が経過すると、圧縮機31と凝縮器ファン32aの作動を停止して着霜運転を終了させる。
【0040】
着霜運転開始後から着霜運転時間が経過すると、ホットガス弁36を開放させることで除霜運転を開始する。圧縮機31から送出されるホットガスは、ホットガス管35を通って蒸発器34に導かれて製氷部21を加温する。製氷部21の温度は蒸発器34に導入されるホットガスによって徐々に上昇して、着霜運転によって製氷部21に付着した霜は融けて水皿23に流れ落ちるようになる。着霜運転時に製氷部21の製氷小室21a内だけでなく製氷部21の外周面にも付着した霜が融けて流れ落ちるので、製氷部21の全体が霜が融けた水によって洗い流される。除霜運転時に水皿23は開放位置に維持されており、製氷部21から流れ落ちた水は水皿23を流れ落ちるようになる。製氷部温度センサ41の検出温度が除霜完了温度以上を検出すると、ホットガス弁36を閉止させ、所定時間として3分経過後に圧縮機31の作動を停止させるようにして除霜運転を終了する。
【0041】
上記のように構成した製氷機10においては、製氷水を凍結させて氷を製造する製氷部21と、圧縮機31により循環供給される冷媒によって製氷部21を冷却する冷凍装置30と、製氷部21に製氷水を送出する送水手段22と、製氷部21で製造された氷を貯える貯氷室16とを備えている。この製氷機10は、冷凍装置30により冷却した製氷部21で送水手段22により送出される製氷水を凍結させて氷を製造する製氷運転を実行するように制御して貯氷室16内に貯える氷を製造可能としている。
【0042】
この製氷機10においては、送水手段22により製氷水を送出しないようにして低負荷の状態の製氷部21を冷凍装置30により冷却する低負荷冷却運転として保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行可能としている。保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行するときに、製氷運転を実行しているときと同様の冷凍装置30の冷却能力を用いて製氷部21を冷却すると、冷凍装置30により製氷部21を冷却する負荷が製氷運転を実行したときよりも低いので、製氷部21は短時間で過剰に冷却されるおそれがある。
【0043】
この製氷機10においては、保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行したときに冷凍装置30を製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて作動させるように制御している。この実施形態では、凝縮器ファン32aの回転速度を製氷運転を実行したとき(定格出力で回転させたとき)よりも50%の回転速度(出力)で回転させ、冷凍装置30を製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて作動させるように制御している。これにより、製氷部21は短時間で過剰に冷却されないようになり、冷凍装置30の圧縮機31は短時間で停止されないようになる。また、製氷部21は短時間で過剰に冷却されないようになるので、製氷部21の温度が製氷部温度センサ41の保護温度以下となる不具合が生じにくい。この実施形態では、保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行したときに、凝縮器ファン32aの回転速度を定格出力の50%としているが、これに限られるものでなく、凝縮器ファン32aの回転速度を定格出力よりも低下させるようにしていればよい。
【0044】
また、これらの保冷運転及び霜洗浄運転の着霜運転においては、凝縮器ファン32aの回転速度を製氷運転を実行したとき(定格出力で回転させたとき)より低下させることで冷凍装置30の冷却能力を低下させているが、これに限られるものでなく、保冷運転または着霜運転中に凝縮器ファン32aを作動及び作動停止(オンオフ)させて間欠的に作動させることで冷凍装置30の冷却能力を低下させるようにしてもよい。また、凝縮器温度センサ32bの検出温度が所定の設定温度として例えば25℃以上のときには、凝縮器ファン32aを定格出力(または定格出力より低い出力)で作動させ、凝縮器温度センサ32bの検出温度が設定温度より例えば3℃低い下限温度を検出すると、凝縮器ファン32aを停止させるようして、凝縮器ファン32aを凝縮器温度センサ32bの検出温度に基づいて間欠的に作動させることで冷凍装置30の冷却能力を低下させるようにしてもよい。
【0045】
これらの保冷運転及び霜洗浄運転の着霜運転においては、製氷機10の設置場所の温度に応じて凝縮器ファン32aの回転速度を変えるように制御するのが好ましい。製氷機10の設置場所の温度が高いと、保冷運転で製氷室14及び貯氷室16が十分に冷却されず、着霜運転で製氷部21に十分に霜が付着されないおそれがあり、製氷機10の設置場所の温度が低いと、保冷運転で製氷室14及び貯氷室16が過剰に冷却され、着霜運転で製氷部21が過剰に冷却されるおそれがある。このため、製氷室14及び貯氷室16の外側の温度を検出する温度センサとして例えば凝縮器温度センサ(外側温度センサ)32bを用い、凝縮器温度センサ32bが所定温度として例えば20℃より高いときには、凝縮器ファン32aの回転速度を定格出力の50%より高く(例えば定格出力の70%)するのが好ましく、凝縮器温度センサ32bが所定温度として例えば20℃以下のときには、凝縮器ファン32aの回転速度を定格出力の50%よりもさらに低く(例えば定格出力の30%)するのが好ましい。
【0046】
このようにしたときには、製氷機10の設置場所の温度が高いときに、凝縮器ファン32aの回転速度を定格出力の50%より高く(例えば定格出力の70%)することで、保冷運転で製氷部21を介して製氷室14内及び貯氷室16内を十分に冷却することができ、着霜運転で製氷部21に十分に霜を付着することができるようになる。また、製氷機10の設置場所の温度が低いときに、凝縮器ファン32aの回転速度を定格出力の50%よりもさらに低く(例えば定格出力の30%)することで、保冷運転で製氷部21を介して製氷室14内及び貯氷室16内を過剰に冷却しないようにすることができ、着霜運転で製氷部21を過剰に冷却しないようにすることができる。なお、製氷室14及び貯氷室16の外側の温度を検出する温度センサとして例えば凝縮器温度センサ32bを用いているが、これに限られるものでなく、例えば機械室15内またはハウジング11の内部または外部に温度センサを設けるようにしてもよい。
【0047】
また、これらの保冷運転及び霜洗浄運転の着霜運転においては、製氷部21が短時間で過剰に冷却されるのを防ぐために、製氷部21の負荷を一時的に増加させるようにしてもよい。製氷部21の負荷を一時的に増加させる手段として、ホットガス弁36を瞬時的(例えば5秒間等のような短時間)に開放して圧縮機31から蒸発器34にホットガスを一時的に供給し、製氷部21が過剰に冷却されるのを防ぐようにしてもよい。この場合に、保冷運転を実行するときには、製氷部温度センサ41の検出温度が所定温度として例えば-10℃を検出したときに、ホットガス弁36を5秒間開放し、製氷部21の温度低下の抑制または温度上昇させるようにして、製氷室14内の温度低下の抑制または温度上昇させるようにしてもよい。また、製氷部温度センサ41の検出温度が-10℃、-15℃・・・と-5℃低下する毎にホットガス弁36を5秒間開放し、製氷部21の温度低下の抑制または温度上昇させるようにしてもよい。また、製氷部温度センサ41の検出温度が-10℃以下とならないように、製氷部温度センサ41の検出温度が-10℃となる度にホットガス弁36を開放するように制御してもよい。
【0048】
また、保冷運転において、製氷部21の負荷を一時的に増加させる手段として、製氷部21に送水手段22により製氷水を一時的に送出するようにして、製氷部21が過剰に冷却されるのを防ぐようにしてもよい。なお、送水手段22により製氷水を送出するときには、製氷部21に氷が形成されない程度の短時間に送出する。この場合において、製氷室温度センサ42の検出温度が所定温度として0℃となるまで送水手段22により製氷水を送出するようにしてもよい。
【0049】
次に、他の実施形態の製氷機10について説明する。製氷部温度センサ41には保護温度(この実施形態では-60℃)が設定されており、保護温度は製氷部温度センサ41が断線が生じたと検知して保護するための温度である。次に説明する製氷機10は、製氷部温度センサ41の検出温度が製氷部温度センサ41の保護温度(この実施形態では-60℃)よりも高く設定した下限温度(-45℃)以下を検出したときに低負荷冷却運転時間である保冷運転時間(この実施形態では3分)または着霜運転時間(この実施形態では15分)前であっても冷凍装置30の圧縮機31の作動を停止させるように制御したものである。
【0050】
この実施形態の製氷機10においては、上述した実施形態と同様に、送水手段22により製氷水を送出しないようにして低負荷の状態の製氷部21を冷凍装置30により冷却する低負荷冷却運転として保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行可能としている。これらの保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転のような低負荷冷却運転を実行するときに、保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行開始させてから所定の保冷運転時間または着霜運転時間(低負荷冷却運転時間)で冷凍装置30を冷却運転(作動)させるように制御している。この実施形態の製氷機10においては、保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転の実行中に製氷部温度センサ41の検出温度が製氷部温度センサ41を保護するために設定された保護温度よりも高く設定した下限温度以下を検出したときに保冷運転時間または着霜運転時間経過前(低負荷冷却運転時間前)であっても冷凍装置30の圧縮機31の作動を停止させるように制御している。
【0051】
待機モード中に低負荷冷却運転として保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行すると、冷凍装置30により製氷部21を冷却する負荷が製氷運転を実行したときよりも低いので、製氷部21は短時間で十分に冷却されることになる。冷凍装置30の圧縮機31を短時間で停止させなければ、製氷部21が製氷部温度センサ41を保護するために設定された保護温度より低い温度まで冷却されるおそれがあるが、製氷部温度センサ41の検出温度が製氷部温度センサ41を保護するために設定された保護温度よりも高く設定した下限温度以下を検出したときに、保冷運転時間または着霜運転時間(低負荷冷却運転時間)であっても冷凍装置30の圧縮機31の作動を停止させるように制御している。これにより、製氷部21が製氷部温度センサ41を保護するために設定された保護温度より低くならず、低負荷の状態の製氷部21を冷凍装置30により冷却したときに生じる不具合として、製氷部温度センサ41が保護温度より低くなって製氷部温度センサ41が断線したとの誤検知が生じるのを防ぐことができる。
【0052】
特に、上述した実施形態のように、保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行するときに、冷凍装置30を製氷運転で作動させるときよりも冷却能力を低下させて作動させたときに限られるものでなく、冷凍装置30を製氷運転で作動させたときと同様の冷却能力で作動させたときに、製氷部21が短時間で過剰に冷却されやすい。このため、保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行するときであって、冷凍装置30を製氷運転で作動させたときと同様の冷却能力で作動させたときに、製氷部温度センサ41の検出温度が製氷部温度センサ41を保護するために設定された保護温度よりも高く設定した下限温度以下を検出したときに保冷運転時間または着霜運転時間経過前(低負荷冷却運転時間前)であっても冷凍装置30の圧縮機31の作動を停止させるように制御することによって、製氷部温度センサ41が保護温度より低い温度になる不具合を確実に受けないようにすることができる。
【0053】
保冷運転を実行しているときに、上述したように、保冷運転の開始後から、製氷室温度センサ42により検出される検出温度を経時的に積算した積算温度を経過時間で除することによって積算温度の単位時間あたりの平均温度を算出している。保冷運転を実行しているときに、製氷部温度センサ41の検出温度が製氷部温度センサ41の保護温度よりも高く設定した下限温度以下を検出して冷凍装置30の圧縮機31の作動を停止させたときにも継続して平均温度を算出しており、圧縮機31の作動を停止させてから所定時間としてこの実施形態では10分経過後の平均温度が保冷設定温度以上であるときに、圧縮機31を作動させるように制御して保冷運転を再開するように制御している。これに対し、圧縮機31の作動を停止させてから所定時間経過後の平均温度が保冷設定温度より低いときには、平均温度が保冷設定温度以上となるまで保冷運転を継続して停止させる。
【0054】
また、図7に示したように、霜洗浄運転の着霜運転をしているときに、製氷部温度センサ41の検出温度が製氷部温度センサ41の保護温度よりも高く設定した下限温度以下を検出して冷凍装置30の圧縮機31の作動を停止させたときには、着霜運転時間(この実施形態では15分間)内で圧縮機31の最低停止時間(この実施形態では3分)経過後に、再び圧縮機31を作動させる。なお、圧縮機31の最低停止時間内に着霜運転時間が経過したときには、圧縮機31の最低停止時間の経過後に着霜運転を終了させて除霜運転を開始させる。
【0055】
また、この実施形態の製氷機10においては、保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行しているときに、圧縮機31にて設定されている最低運転時間経過前に製氷部温度センサ41が下限温度以下を検出したときに、圧縮機31の最低運転時間経過後に冷凍装置30の圧縮機31の作動を停止させるように制御している。このようにしたことで、冷凍装置30の圧縮機31が最低運転時間経過前に作動停止しないようになり、圧縮機31が短時間で作動停止することに起因した不具合が生じにくくなる。
【0056】
また、この実施形態の製氷機10においては、製氷機10の設置場所の検出温度、圧縮機31の冷媒の吐出部の検出温度または凝縮器32の冷媒の出口部の検出温度に基づいて製氷部温度センサ41の保護温度よりも高く設定した下限温度を変更したり、下限温度を設定しないようにしてもよい。設置場所の検出温度が低く、圧縮機31の冷媒の吐出部の検出温度または凝縮器32の冷媒の出口部の検出温度が低い場合には、製氷部21が上述した製氷部温度センサ41の保護温度よりも高く設定した下限温度(この実施形態では-45℃)以下とならないように圧縮機31の作動を制御し、設置場所の検出温度が低く、、圧縮機31の冷媒の吐出部の検出温度(または凝縮器32の冷媒の出口部の検出温度)が低くない場合、または、設置場所の検出温度が低くなく、圧縮機31の冷媒の吐出部の検出温度(または凝縮器32の冷媒の出口部の検出温度)が低いときには、圧縮機31の発停の頻度が低くなるように下限温度をさらに低い温度として-50℃に変更して圧縮機31の作動を制御し、設置場所の検出温度が低くなく、圧縮機31の冷媒の吐出部の検出温度(または凝縮器32の冷媒の出口部の検出温度)が低くないときには、設置場所の温度が低くないので製氷部21の温度が低くなりにくいので、下限温度を設定せずに圧縮機31を保冷運転時間または着霜運転時間まで作動させる。このように、製氷機10の設置場所の検出温度、圧縮機31の冷媒の吐出部の検出温度または凝縮器32の冷媒の出口部の検出温度に基づいて製氷部温度センサ41の保護温度よりも高く設定した下限温度を変更したり、下限温度を設定しないようにすることで、安定した保冷運転または霜洗浄運転の着霜運転を実行することができる。
【0057】
この実施形態の製氷機10は、所謂クローズドセルタイプの製氷機であるが、これに限られるものでなく、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知していないときには、製氷モードとして製氷運転を実行するように制御し、貯氷検知器43により貯氷室16内に氷が満たされたことを検知したときには、待機モードとして製氷運転を実行しないようにする製氷機であれば、所謂オープンセルタイプの製氷機や、水平方向に開口した製氷小室に製氷水を流下させるバーチカルタイプの製氷機等の他の製氷機にも適用されるものである。また、この実施形態の温度や等の記載は一例であり、本発明は、これらの温度や時間等の記載に限られるものではない。
【符号の説明】
【0058】
10…製氷機、16…貯氷室、21…製氷部、22…送水手段、30…冷凍装置、31…圧縮機、32…凝縮器、32a…凝縮器ファン、34…蒸発器、41…製氷部温度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7