IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 社会医療法人蘇西厚生会の特許一覧

<>
  • 特開-肘装具及び肘装具用の組部品 図1
  • 特開-肘装具及び肘装具用の組部品 図2
  • 特開-肘装具及び肘装具用の組部品 図3
  • 特開-肘装具及び肘装具用の組部品 図4
  • 特開-肘装具及び肘装具用の組部品 図5
  • 特開-肘装具及び肘装具用の組部品 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054960
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】肘装具及び肘装具用の組部品
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20240411BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A61F5/02 N
A61F5/01 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161451
(22)【出願日】2022-10-06
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】519246881
【氏名又は名称】社会医療法人蘇西厚生会
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小森 健司
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB09
4C098BC12
4C098BC15
4C098BD06
(57)【要約】
【課題】肩の挙上運動などの肩関節周囲の筋肉を強化するための運動を適切に補助できる。
【解決手段】肘装具1は、上肢90に装着され、肘93を伸展させた状態に固定する。肘装具1は、上腕91に装着される第1カフ10と、前腕92に装着される第2カフ20と、第1カフ10と第2カフ20とにわたって延びる軸部33を有し、第1カフ10及び第2カフ20の各々の外側部同士を連結する連結部材30と、軸部33の軸線を中心に回動可能に設けられ、肘93を後側から支持する支持部50と、支持部50を前側に向けて付勢する付勢部60とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上肢に装着され、肘を伸展させた状態に固定する肘装具であって、
上腕に装着される第1カフと、
前腕に装着される第2カフと、
前記第1カフと前記第2カフとにわたって延びる軸部を有し、前記第1カフ及び前記第2カフの各々の外側部同士を連結する連結部材と、
前記軸部の軸線を中心に回動可能に設けられ、前記肘を後側から支持する支持部と、
前記支持部を前側に向けて付勢する付勢部と、を備える、
肘装具。
【請求項2】
前記軸部の外周面には、突部が設けられており、
前記付勢部は、前記軸部の軸線を中心に回転することで前記突部に接触可能に構成された接触部と、前記接触部が前記突部に対して押し付けられることに伴い弾性変形する弾性変形部と、を有し、前記弾性変形部の弾性反発力によって前記支持部を前側に向けて付勢するように構成されている、
請求項1に記載の肘装具。
【請求項3】
前記支持部及び前記付勢部は、硬質樹脂材料製の紐状部材により一体に形成されており、
前記支持部は、前記肘の肘頭の周囲の部分を支持するU字状の支持部本体と、前記軸部の軸線方向において互いに間隔をあけて設けられる一対の軸受け部と、を有し、
前記軸受け部は、前記軸部の外周を取り囲む湾曲状であるとともに前記軸部の軸線を中心に回動可能に設けられており、
前記軸線方向における前記接触部の一端及び他端と前記一対の軸受け部の一方及び他方とをそれぞれ連結する一対の前記弾性変形部が設けられており、
前記弾性変形部は、前記支持部よりも細くされている、
請求項2に記載の肘装具。
【請求項4】
前記第1カフ及び前記第2カフは、内側に向かって開放された開放部を有する断面C字状のカフ本体と、前記カフ本体の周方向において前記カフ本体を締め付ける締め付け機構と、を有し、
前記第1カフ及び前記第2カフの各々の前記カフ本体と前記連結部材とは、熱可塑性の樹脂材料により形成されている、
請求項1に記載の肘装具。
【請求項5】
前記連結部材は、前記軸部の第1端と前記第1カフの前記カフ本体の外側部とを連結する第1連結部と、前記軸部における前記第1端とは反対側の第2端と前記第2カフの前記カフ本体の外側部とを連結する第2連結部と、を有する、
請求項4に記載の肘装具。
【請求項6】
上肢に装着され、肘を伸展させた状態に固定する肘装具用の組部品であって、
上腕に装着される第1カフと前腕に装着される第2カフとにわたって延びる軸部を有し、前記第1カフ及び前記第2カフの各々の外側部同士を連結する連結部材と、
前記軸部の軸線を中心に回動可能に設けられ、前記肘を後側から支持する支持部と、
前記支持部を前側に向けて付勢する付勢部と、を備える、
肘装具用の組部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上肢に装着され、肘を伸展させた状態に固定する肘装具及び同肘装具用の組部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の肘装具としては、例えば非特許文献1に記載の肘装具がある。
非特許文献1に記載の肘装具は、上腕に装着される第1カフと、前腕に装着される第2カフと、第1カフ及び第2カフの内側部同士を連結する内側連結機構と、第1カフ及び第2カフの外側部同士を連結する外側連結機構とを備えている。
【0003】
各連結機構は、第1カフに連結される第1連結部材と、第2カフに連結される第2連結部材と、第1連結部材と第2連結部材との間に設けられ、第1連結部材に対する第2連結部材の角度を変更可能な継手とを備えている。
【0004】
こうした肘装具によれば、継手を調節することにより、第1連結部材に対する第2連結部材の角度を変更することができるので、肘関節を所望の角度にて固定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】有限会社須田義肢製作所,[令和4年9月29日検索],インターネット<URL:http://www.sudagishi.com/p-gishisougu/kind01/ >
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、重篤な運動麻痺からの回復過程にある中枢神経性麻痺者の上肢に対する治療において、肩関節周囲の筋肉の出力が現れ始めたタイミングで、肘を伸展させた状態に固定しながら当該筋肉を強化することが回復の促進を図る上で重要であることを見出した。
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載の肘装具を含む従来の肘装具を用いて肘を伸展させた状態に固定すると、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、上記肘装具の内側連結機構が体側部と干渉しやすいために、肩の挙上運動などの肩関節周囲の筋肉を強化するための運動の妨げとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための肘装具及び肘装具用の組部品の各態様を記載する。
[態様1]
上肢に装着され、肘を伸展させた状態に固定する肘装具であって、上腕に装着される第1カフと、前腕に装着される第2カフと、前記第1カフと前記第2カフとにわたって延びる軸部を有し、前記第1カフ及び前記第2カフの各々の外側部同士を連結する連結部材と、前記軸部の軸線を中心に回動可能に設けられ、前記肘を後側から支持する支持部と、前記支持部を前側に向けて付勢する付勢部と、を備える、肘装具。
【0009】
同構成によれば、上腕に第1カフを装着し、前腕に第2カフを装着し、支持部によって肘を後側から支持させると、付勢部によって支持部が前側に向けて付勢される。これにより、肘の曲げ動作が規制されるとともに、上腕に対する第1カフの回旋及び前腕に対する第2カフの回旋が抑制されるようになる。
【0010】
また、上記構成によれば、第1カフ、第2カフ、及び支持部がいずれも上肢の外側に位置する連結部材によって連結される構造であるので、連結部材が胸部などに干渉しにくい。したがって、肩の挙上運動などの肩関節周囲の筋肉を強化するための運動を適切に補助できる。
【0011】
[態様2]
前記軸部の外周面には、突部が設けられており、前記付勢部は、前記軸部の軸線を中心に回転することで前記突部に接触可能に構成された接触部と、前記接触部が前記突部に対して押し付けられることに伴い弾性変形する弾性変形部と、を有し、前記弾性変形部の弾性反発力によって前記支持部を前側に向けて付勢するように構成されている、態様1に記載の肘装具。
【0012】
同構成によれば、軸部の外周面に設けられた突部に対して接触部が押し付けられると、これに伴い弾性変形部が弾性変形する。そして、弾性変形部の弾性反発力によって支持部が前側に向けて付勢される。したがって、付勢部を簡単な構成によって具現化することができる。
【0013】
[態様3]
前記支持部及び前記付勢部は、硬質樹脂材料製の紐状部材により一体に形成されており、前記支持部は、前記肘の肘頭の周囲の部分を支持するU字状の支持部本体と、前記軸部の軸線方向において互いに間隔をあけて設けられる一対の軸受け部と、を有し、前記軸受け部は、前記軸部の外周を取り囲む湾曲状であるとともに前記軸部の軸線を中心に回動可能に設けられており、前記軸線方向における前記接触部の一端及び他端と前記一対の軸受け部の一方及び他方とをそれぞれ連結する一対の前記弾性変形部が設けられており、前記弾性変形部は、前記支持部よりも細くされている、態様2に記載の肘装具。
【0014】
同構成によれば、支持部は、一対の軸受け部により軸部の軸線を中心に回動可能に設けられているとともに、U字状の支持部本体により肘を支持する。また、接触部の一端及び他端と、一対の軸受け部の一方及び他方とが一対の弾性変形部により連結されている。そして、弾性変形部が支持部よりも細くされているので、支持部に優先して弾性変形部が弾性変形するようになる。このように、上記構成によれば、支持部及び付勢部を樹脂材料製の紐状部材により一体に形成することで、支持部及び付勢部の構成を簡単にしながらも、支持部の変形を抑制することで肘を適切に支持することができる。
【0015】
また、上記構成によれば、支持部の支持部本体がU字状であるので、肘頭を逃がすことができるとともに肘に対する支持部の位置ずれを適切に抑制できる。
[態様4]
前記第1カフ及び前記第2カフは、内側に向かって開放された開放部を有する断面C字状のカフ本体と、前記カフ本体の周方向において前記カフ本体を締め付ける締め付け機構と、を有し、前記第1カフ及び前記第2カフの各々の前記カフ本体と前記連結部材とは、熱可塑性の樹脂材料により形成されている、態様1から態様3のいずれか一項に記載の肘装具。
【0016】
同構成によれば、第1カフのカフ本体、第2カフのカフ本体、及び連結部材が熱可塑性の樹脂材料により形成されている。このため、樹脂材料を加熱して軟化させることにより、第1カフのカフ本体を患者の上腕に対応した形状に調整することができるとともに、第2カフのカフ本体を患者の前腕に対応した形状に調整することができる。また、連結部材の端部を加熱して軟化させることで、第1カフと連結部材との取付角度を調整することができるとともに、第2カフと連結部材との取付角度を調整することができる。したがって、患者の上肢に対応する肘装具を容易に作製することができる。
【0017】
[態様5]
前記連結部材は、前記軸部の第1端と前記第1カフの前記カフ本体の外側部とを連結する第1連結部と、前記軸部における前記第1端とは反対側の第2端と前記第2カフの前記カフ本体の外側部とを連結する第2連結部と、を有する、態様4に記載の肘装具。
【0018】
同構成によれば、第1カフのカフ本体と軸部の第1端とが第1連結部を介して連結されている。また、第2カフのカフ本体と軸部の第2端とが第2連結部を介して連結されている。このため、上記構成によれば、以下の肘装具の作製方法を採用することができる。すなわち、第1カフのカフ本体、第2カフのカフ本体、及び軸部を予め作製しておく。続いて、加熱することで軟化した第1連結部によって軸部の第1端と第1カフのカフ本体の外側部とを連結するとともに、加熱することで軟化した第2連結部によって軸部の第2端と第2カフのカフ本体の外側部とを連結する。こうした作製方法によれば、第1連結部を適宜変形させることで、軸部と第1カフのカフ本体との取付角度を容易に調整することができる。また、第2連結部の形状を適宜変形させることで、軸部と第2カフのカフ本体との取付角度を容易に調整することができる。したがって、患者の上肢に対応する肘装具を容易且つ迅速に作製することができる。
【0019】
[態様6]
上肢に装着され、肘を伸展させた状態に固定する肘装具用の組部品であって、
上腕に装着される第1カフと前腕に装着される第2カフとにわたって延びる軸部を有し、前記第1カフ及び前記第2カフの各々の外側部同士を連結する連結部材と、
前記軸部の軸線を中心に回動可能に設けられ、前記肘を後側から支持する支持部と、
前記支持部を前側に向けて付勢する付勢部と、を備える、
肘装具用の組部品。
【0020】
同構成によれば、第1カフ及び第2カフの各々の外側部同士を連結部材によって連結することで上記肘装具を作製することができる。こうして作製された上記肘装具によれば、上記[態様1]の作用効果と同様な作用効果を奏することができる。このため、連結部材、支持部、及び付勢部を備える組部品を既製品とすれば、上記肘装具を容易に作製することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、肩の挙上運動などの肩関節周囲の筋肉を強化するための運動を適切に補助できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、一実施形態に係る肘装具の斜視図である。
図2図2は、図1の肘装具の前面図である。
図3図3は、図1の肘装具の後面図である。
図4図4(a)は、図2の4a-4a線に沿った断面図であり、図4(b)は、図2の4b-4b線に沿った断面図である。
図5図5は、図3の5-5線に沿った断面図であって、軸部の突部に対して接触部が押し付けられて弾性変形部が弾性変形している状態を示す断面図である。
図6図6(a)は、上肢に装着された状態の肘装具の前面図であり、図6(b)は、上肢に装着された状態の肘装具の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1図6を参照して、一実施形態について説明する。
図1図3図6(a)及び図6(b)に示すように、肘装具1は、上肢90に装着され、肘93を伸展させた状態に固定するものである。なお、以降において、患者の人体及び肘装具1についての表現は、患者が直立した状態で手掌を前に向け、且つ指を伸ばしたかたちである解剖学的正位に基づいている。すなわち、前側とは腹側であり、後側とは背側である。また、内側とは、正中面に近い側であり、外側とは、正中面から遠い側である。また、図2図5では、図1に示す肘装具1を模式的に示している。
【0024】
肘装具1は、上腕91に装着される第1カフ10と、前腕92に装着される第2カフ20と、第1カフ10及び第2カフ20の各々の外側部同士を連結する連結部材30とを備えている。連結部材30は、第1カフ10と第2カフ20とにわたって延びる軸部33を有している。また、肘装具1は、軸部33の軸線を中心に回動可能に設けられ、肘93を後側から支持する支持部50と、支持部50を前側に向けて付勢する付勢部60とを備えている。
【0025】
次に、肘装具1の各構成について詳細に説明する。
<第1カフ10>
図1図4(a)に示すように、第1カフ10は、カフ本体11と締め付け機構12とを有している。
【0026】
図4(a)に示すように、カフ本体11は、内側に向かって開放された開放部11aを有する断面C字状である。
カフ本体11は、熱可塑性の樹脂材料により形成されている。上記樹脂材料としては、65℃~75℃のお湯で軟化し、常温で硬化する低温熱可塑性の樹脂材料が好ましい。
【0027】
図1図3に示すように、締め付け機構12は、カフ本体11の周方向においてカフ本体11を締め付ける。
締め付け機構12は、多数のフック(図示略)を有する一対のフックシート13と、多数のループ(図示略)を有するバンド14とを備えている。フックとループとにより面ファスナーが構成される。
【0028】
一対のフックシート13は、カフ本体11の周方向の両端部の外周面に接着されている。
<第2カフ20>
図1図4(b)に示すように、第2カフ20は、カフ本体21と締め付け機構22とを有している。
【0029】
図4(b)に示すように、カフ本体21は、内側に向かって開放された開放部21aを有する断面C字状である。カフ本体21は、前腕92の断面形状に対応して断面略惰円弧状である。
【0030】
カフ本体21は、第1カフ10のカフ本体11と同一の樹脂材料により形成されている。
図1図3に示すように、締め付け機構22は、カフ本体21の周方向においてカフ本体21を締め付ける。
【0031】
締め付け機構22は、第1カフ10の締め付け機構12と同様にして、一対のフックシート23と、バンド24とを備えている。
<連結部材30>
図1図3に示すように、連結部材30は、第1連結部31及び第2連結部32と、軸部33とを有している。
【0032】
軸部33は、略円柱状である。
第1連結部31は、軸部33の第1端33aと第1カフ10のカフ本体11の外側部とを連結している。
【0033】
第2連結部32は、軸部33における第1端33aとは反対側の第2端33bと第2カフ20のカフ本体21の外側部とを連結している。
図3及び図5に示すように、軸部33の外周面には、突部36が設けられている。突部36は、軸部33の軸線方向において軸部33の中央部に設けられている。突部36は、軸部33の周方向において軸部33の一部に設けられている。
【0034】
図1図3に示すように、軸部33の外周面には、一対の規制突起34と一対の規制突起35とが、軸部33の軸線方向において突部36を挟んで設けられている。
規制突起34は、軸部33の周方向の全体にわたって設けられている。規制突起34同士は、軸部33の軸線方向において間隔をあけて設けられている。
【0035】
規制突起35は、軸部33の周方向の全体にわたって設けられている。規制突起35同士は、軸部33の軸線方向において間隔をあけて設けられている。
連結部材30、すなわち軸部33、第1連結部31、及び第2連結部32は、第1カフ10及び第2カフ20の各々のカフ本体11,21と、同一の熱可塑性の樹脂材料により形成されている。
【0036】
<紐状部材40>
図1図3、及び図5に示すように、支持部50及び付勢部60は、硬質樹脂材料製の紐状部材40により一体に形成されている。
【0037】
紐状部材40は、第1カフ10及び第2カフ20の各々のカフ本体11,21と、同一の熱可塑性の樹脂材料により形成されている。
<支持部50>
図1図3、及び図5に示すように、支持部50は、支持部本体51と一対の軸受け部52とを有する。
【0038】
図6(b)に示すように、支持部本体51は、肘頭94の周囲の部分を支持するU字状である。支持部本体51は、上肢90の周方向に沿って湾曲している(図1参照)。
図1図3に示すように、一対の軸受け部52は、支持部本体51の一対の端部にそれぞれ連なっている。
【0039】
一対の軸受け部52は、軸部33の軸線方向において互いに間隔をあけて設けられている。軸受け部52は、軸部33の外周を取り囲む湾曲状であるとともに軸部33の軸線を中心に回動可能に設けられている。
【0040】
一対の軸受け部52のうちの一方は、一対の規制突起34の間に設けられ、他方は、一対の規制突起35の間に設けられている。
軸受け部52は、一対の規制突起34(35)によって挟まれることで軸部33の軸線方向における移動が規制されている。
【0041】
<付勢部60>
図3及び図4に示すように、付勢部60は、接触部61と、一対の弾性変形部62とを有している。
【0042】
接触部61は、軸部33の軸線を中心に回転することで軸部33の突部36に接触可能に構成されている。
図3に示すように、一対の弾性変形部62は、軸線方向における接触部61の一端及び他端と一対の軸受け部52の一方及び他方とをそれぞれ連結している。
【0043】
弾性変形部62は、軸受け部52のうち軸部33よりも内側の部分から折り返されて外側に向かって延びている。一対の弾性変形部62は、軸部33に近づくほど軸部33の軸線方向において互いに近づくように延びている。弾性変形部62は、支持部50、すなわち支持部本体51及び軸受け部52よりも細くされている。
【0044】
図4に示すように、弾性変形部62は、接触部61が突部36に対して押し付けられることに伴い弾性変形する。付勢部60は、弾性変形部62の弾性反発力によって支持部50を前側に向けて付勢するように構成されている。
【0045】
次に、肘装具1の作製手順について説明する。
まず、患者の上腕91の形状及び大きさに対応する第1カフ10のカフ本体11を作製する。また、患者の前腕92の形状及び大きさに対応する第2カフ20のカフ本体21を作製する。また、一対の規制突起34、一対の規制突起35、及び突部36を有する軸部33を作製する。
【0046】
続いて、球状の第1連結部31及び第2連結部32を加熱して軟化させる。
続いて、患者の上腕91及び前腕92に第1カフ10のカフ本体11及び第2カフ20のカフ本体21をそれぞれ装着し、且つ肘93を伸展させた状態で、カフ本体11,21に対して第1連結部31及び第2連結部32を介して軸部33を連結する。
【0047】
続いて、患者の上腕91及び前腕92からカフ本体11,21をそれぞれ取り外して常温になるまで放置する。その後、カフ本体11,21にフックシート13,23をそれぞれ接着する。
【0048】
また、患者の肘93の形状及び大きさに対応する支持部本体51を有する紐状部材40を作製する。このとき、紐状部材40のうち軸受け部52及び付勢部60については予め作製しておくこともできる。
【0049】
最後に、弾性変形させて拡開させた一対の軸受け部52に、軸部33を嵌め込むことで、肘装具1が完成する。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0050】
(1)図6(a)及び図6(b)に示すように、上腕91に第1カフ10を装着し、前腕92に第2カフ20を装着し、支持部50によって肘93を後側から支持させると、付勢部60によって支持部50が前側に向けて付勢される。これにより、肘93の曲げ動作が規制されるとともに、上腕91に対する第1カフ10の回旋及び前腕92に対する第2カフ20の回旋が抑制されるようになる。
【0051】
また、第1カフ10、第2カフ20、及び支持部50がいずれも上肢90の外側に位置する連結部材30によって連結される構造であるので、連結部材30が胸部などに干渉しにくい。したがって、肩の挙上運動などの肩関節周囲の筋肉を強化するための運動を適切に補助できる。
【0052】
(2)軸部33の外周面に設けられた突部36に対して接触部61が押し付けられると、これに伴い弾性変形部62が弾性変形する。そして、弾性変形部62の弾性反発力によって支持部50が前側に向けて付勢される。したがって、付勢部60を簡単な構成によって具現化することができる。
【0053】
(3)支持部50は、一対の軸受け部52により軸部33の軸線を中心に回動可能に設けられているとともに、U字状の支持部本体51により肘93のうち肘頭94の周囲の部分を支持する。また、接触部61の一端及び他端と、一対の軸受け部52の一方及び他方とが一対の弾性変形部62により連結されている。そして、弾性変形部62が支持部50よりも細くされているので、支持部50に優先して弾性変形部62が弾性変形するようになる。このように支持部50及び付勢部60を樹脂材料製の紐状部材40により一体に形成することで、支持部50及び付勢部60の構成を簡単にしながらも、支持部50の変形を抑制することで肘93を適切に支持することができる。
【0054】
また、上記構成によれば、支持部50の支持部本体51がU字状であるので、肘頭94を逃がすことができるとともに肘93に対する支持部50の位置ずれを適切に抑制できる。
【0055】
(4)第1カフ10のカフ本体11、第2カフ20のカフ本体21、及び連結部材30が熱可塑性の樹脂材料により形成されている。このため、樹脂材料を加熱して軟化させることにより、第1カフ10のカフ本体11を患者の上腕91に対応した形状に調整することができるとともに、第2カフ20のカフ本体21を患者の前腕92に対応した形状に調整することができる。また、連結部材30の端部を加熱して軟化させることで、第1カフ10と連結部材30との取付角度を調整することができるとともに、第2カフ20と連結部材30との取付角度を調整することができる。したがって、患者の上肢90に対応する肘装具1を容易に作製することができる。
【0056】
(5)第1カフ10のカフ本体11と軸部33の第1端33aとが第1連結部31を介して連結されている。また、第2カフ20のカフ本体21と軸部33の第2端33bとが第2連結部32を介して連結されている。このため、上記構成によれば、以下の肘装具1の作製方法を採用することができる。すなわち、第1カフ10のカフ本体11、第2カフ20のカフ本体21、及び軸部33を予め作製しておく。続いて、加熱することで軟化した第1連結部31によって軸部33の第1端33aと第1カフ10のカフ本体11の外側部とを連結する。また、加熱することで軟化した第2連結部32によって軸部33の第2端33bと第2カフ20のカフ本体21の外側部とを連結する。
【0057】
こうした作製方法によれば、第1連結部31を適宜変形させることで軸部33と第1カフ10のカフ本体11との取付角度を容易に調整することができる。また、第2連結部32を適宜変形させることで軸部33と第2カフ20のカフ本体21との取付角度を容易に調整することができる。したがって、患者の上肢90に対応する肘装具1を容易且つ迅速に作製することができる。
【0058】
(6)第2カフ20のカフ本体21は、前腕92の断面形状に対応して断面略惰円弧状である。このため、前腕92に対してカフ本体21が回旋することを抑制できる。
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
・第1連結部31及び第2連結部32を省略し、第1カフ10のカフ本体11及び第2カフ20のカフ本体21の各々の外側部に対して軸部33を直接連結することもできる。
・第1カフ10の締め付け機構12及び第2カフ20の締め付け機構22の構成は上記実施形態において例示したものに限定されず、適宜変更することができる。
【0060】
・締め付け機構12,22を省略し、カフ本体11,21のみによって第1カフ10及び第2カフ20を構成することもできる。
・第1カフ10及び第2カフ20の各々のカフ本体11,21と連結部材30とが互いに異なる熱可塑性の樹脂材料により形成されていてもよい。また、これらを熱硬化性の樹脂材料によって形成することもできる。
【0061】
・支持部50と付勢部60とを別体にて構成してもよい。
・支持部本体51は、U字状に限定されず、肘93を支持する支持面を有するものであってもよい。
【0062】
・上記実施形態においては、第1カフ10及び第2カフ20の各々のカフ本体11,21、連結部材30、及び紐状部材40の全てが低温熱可塑性の樹脂材料により形成されている構成について例示した。これに代えて、これらの一部または全てを例えば3Dプリンタにより作製するようにしてもよいし、成形型を用いて成形するようにしてもよい。この場合、3Dプリンタあるいは成形型により作製される部材については、低温熱可塑性の樹脂材料により形成される必要はなく、汎用の樹脂材料により形成することができる。
【0063】
・上記実施形態では、第1カフ10、第2カフ20、連結部材30、紐状部材40(支持部50及び付勢部60)を備える肘装具1として本開示を具体化した。これに代えて、連結部材30、支持部50、及び付勢部60を備える肘装具1用の組部品として本開示を具体化することもできる。この場合、第1カフ10及び第2カフ20の各々の外側部同士を連結部材30によって連結することで肘装具1を作製することができる。こうして作製された上記肘装具によれば、上記(1)の作用効果と同様な作用効果を奏することができる。このため、連結部材30、支持部50、及び付勢部60を備える組部品を既製品とすれば、肘装具1を容易に作製することができる。
【0064】
・コイルスプリングなどによって付勢部を構成することもできる。
(課題を解決するための手段に関する付記)
上記課題を解決するための手段は、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想である以下の[付記項]を含む。
【0065】
[付記項]
下肢に装着され、膝を伸展させた状態に固定する膝装具であって、大腿に装着される第1カフと、下腿に装着される第2カフと、前記第1カフと前記第2カフとにわたって延びる軸部を有し、前記第1カフ及び前記第2カフの各々の外側部同士を連結する連結部材と、前記軸部の軸線を中心に回動可能に設けられ、前記膝を前側から支持する支持部と、前記支持部を後側に向けて付勢する付勢部と、を備える、膝装具。
【符号の説明】
【0066】
1…肘装具
10…第1カフ
11…カフ本体
11a…開放部
12…締め付け機構
13…フックシート
14…バンド
20…第2カフ
21…カフ本体
21a…開放部
22…締め付け機構
23…フックシート
24…バンド
30…連結部材
31…第1連結部
32…第2連結部
33…軸部
33a…第1端
33b…第2端
34,35…規制突起
36…突部
40…紐状部材
50…支持部
51…支持部本体
52…軸受け部
60…付勢部
61…接触部
62…弾性変形部
90…上肢
91…上腕
92…前腕
93…肘
94…肘頭
図1
図2
図3
図4
図5
図6