(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054961
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】手術時間比較システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20240411BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161453
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】306032981
【氏名又は名称】株式会社医用工学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(74)【代理人】
【識別番号】100228038
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】奥津 健一
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 晶二
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
(57)【要約】
【課題】病院間での手術時間を比較することで比較元病院の手術時間が妥当なものであるか評価できるようにする。
【解決手段】複数の病院における手術に要する手術時間を、病院と術式が特定できる状態で記憶する手術時間記憶部11と、前記手術時間記憶部11に記憶された比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間を、同じ術式同士でまとめて比較する手術時間比較部21と、
前記手術時間比較部21で比較された比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間を、術式毎に画面に表示する表示部30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の病院における手術に要する手術時間を、病院と術式が特定できる状態で記憶する手術時間記憶部と、
前記手術時間記憶部に記憶された比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間を、同じ術式同士でまとめて比較する手術時間比較部と、
前記手術時間比較部で比較された比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間を、術式毎に画面に表示する表示部と、
を備えることを特徴とする手術時間比較システム。
【請求項2】
前記手術時間比較部が、比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間との時間差も算出して、
前記表示部が、前記時間差も画面に表示する請求項1に記載の手術時間比較システム。
【請求項3】
手術において複数の術式が混在するとき、前記手術時間比較部は複数の術式が一致する手術同士を比較する請求項1又は2に記載の手術時間比較システム。
【請求項4】
前記表示部の所定場所を操作することで、術式毎の手術一覧と手術時間に影響を与える患者毎の特性を含む詳細情報が表示される詳細表示部を備える請求項1又は2に記載の手術時間比較システム。
【請求項5】
複数の病院の種別を記憶する病院種別記憶部を備え、
前記手術時間比較部が前記比較先病院を選択する際に、所望の種別の前記比較先病院を選択できる請求項1又は2に記載の手術時間比較システム。
【請求項6】
前記病院種別記憶部がその項目として、
病院の開設者別に種別を分ける病院種類、病院のDPC群によって種別を分けるDPC群、及び病院の病床数で種別を分ける病床数のうち1以上を備える請求項5に記載の手術時間比較システム。
【請求項7】
前記表示部がその項目として、
手術による収益、医師が患者を執刀している執刀時間、患者が手術室に滞在している入退出時間、及び患者が麻酔科医の管理下にある麻酔時間を備える請求項1又は2に記載の手術時間比較システム。
【請求項8】
前記手術時間比較部が、手術を緊急手術と計画手術とに区別して比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間の比較をする請求項1又は2に記載の手術時間比較システム。
【請求項9】
前記表示部が、手術が行われた年、手術が行われた月、診療科、及び手術をする原因となった手術病名のうち1以上の条件で、前記手術時間記憶部のレコードの絞り込みをする検索条件入力部を備える請求項1又は2に記載の手術時間比較システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる病院間での手術時間を比較できる、手術時間比較システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2019-197436号公報に、内視鏡検査で医師が内視鏡を挿入するのに要した挿入時間と、内視鏡を引き抜くのに要した抜去時間とを取得する取得部と、挿入時間に対する抜去時間の比を算出し、算出した比が大きいほど当該医師の技量レベルを高いレベルに決定するレベル決定部と、当該医師が担当する患者の薬剤投与量を、当該医師の技量レベルが高いほど、少ない量に決定する投与量決定部と、を備える医療支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている医療支援装置は、目的が適切な薬剤投与量を決定する技術を提供することにあり、病院間の手術時間を比較するものではない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、病院間での手術時間を比較することで比較元病院の手術時間が妥当なものであるか評価できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の手術時間比較システムは、
複数の病院における手術に要する手術時間を、病院と術式が特定できる状態で記憶する手術時間記憶部と、
前記手術時間記憶部に記憶された比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間を、同じ術式同士でまとめて比較する手術時間比較部と、
前記手術時間比較部で比較された比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間を、術式毎に画面に表示する表示部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例は、
前記手術時間比較部が、比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間との時間差も算出して、
前記表示部が、前記時間差も画面に表示する。
【0008】
これらの本発明の手術時間比較システムによれば、複数の病院間の手術時間を、その術式別に比較することができ、比較元病院の手術時間が妥当なものか否かを判断することができる。
【0009】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例は、
手術において複数の術式が混在するとき、前記手術時間比較部は複数の術式が一致する手術同士を比較する。
【0010】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例によれば、複数の術式が混在するような手術においても、正確に手術時間の比較を行なうことができる。
【0011】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例は、
前記表示部の所定場所を操作することで、術式毎の手術一覧と手術時間に影響を与える患者毎の特性を含む詳細情報が表示される詳細表示部を備える。
【0012】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例によれば、詳細表示部によって手術時間の時間差の分析を詳細に行なうことができる。
【0013】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例は、
複数の病院の種別を記憶する病院種別記憶部を備え、
前記手術時間比較部が前記比較先病院を選択する際に、所望の種別の前記比較先病院を選択できる。
【0014】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例は、
前記病院種別記憶部がその項目として、
病院の開設者別に種別を分ける病院種類、病院のDPC群によって種別を分けるDPC群、及び病院の病床数で種別を分ける病床数のうち1以上を備える。
【0015】
これらの本発明の手術時間比較システムの好ましい例によれば、複数の病院間で手術時間を比較するときに、病院の種別を考慮することができ、比較の精度を向上させたり、参考とする情報を得たりすることができる。
【0016】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例は、
前記表示部がその項目として、
手術による収益、医師が患者を執刀している執刀時間、患者が手術室に滞在している入退出時間、及び患者が麻酔科医の管理下にある麻酔時間を備える。
【0017】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例によれば、表示部が複数の項目を備えるため、複数の病院間での手術時間の比較を詳細に行なうことができる。
【0018】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例は、
前記手術時間比較部が、手術を緊急手術と計画手術とに区別して比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間の比較をする。
【0019】
本発明の手術時間比較システムの好ましい例は、
前記表示部が、手術が行われた年、手術が行われた月、診療科、及び手術をする原因となった手術病名のうち1以上の条件で、前記手術時間記憶部のレコードの絞り込みをする検索条件入力部を備える。
【0020】
これらの本発明の手術時間比較システムの好ましい例によれば、手術時間の比較条件を設定することができ、比較の精度を向上させ、参考となる情報が得やすくなる。
【発明の効果】
【0021】
上述したように、本発明の手術時間比較システムによれば、病院間での手術時間を比較することで比較元病院の手術時間が妥当なものであるかが評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る手術時間比較システムを説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の手術時間比較システム1の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の手術時間比較システム1は、記憶部10と、制御部20と、表示部30と、詳細表示部31と、入力部32とを備える。また、本実施形態の手術時間比較システム1は、複数の病院と電気通信回線2を通じて接続される。複数の病院としては、比較元病院と比較先病院があり、ここでは比較元病院を自病院、比較先病院を他の病院(比較先病院A、比較先病院B、比較先病院C)としている。なお、比較元病院からみて、比較先病院が具体的にどこの病院なのかはわからないようにすることが好ましい。
【0025】
先ずは、本実施形態の手術時間比較システム1の概要を説明する。記憶部10は、公知のHDD(HARD DISK DRIVE)等で構成され、その内部に手術時間記憶部11、病院種別記憶部12、及び手術時間比較システム1を実行するためのオペレーティングシステムや各種プログラムが記憶又は格納される。
【0026】
制御部20は、CPU(CENTRAL PROCESSING UNIT)、メモリ、入出力回路等で構成され、記憶部10に格納されたオペレーティングシステムやプログラムとともに、各構成要素と協働して手術時間比較システム1を稼働させる。なお、手術時間比較部21は、制御部20によって実現される。
【0027】
表示部30及び詳細表示部31は、公知のモニタ等のハードウエアを備える。そして、記憶部10に記憶されたデータが手術時間比較部21を含む制御部20で加工され、加工された情報がモニタに表示されることで表示部30及び詳細表示部31が実現される。
【0028】
入力部32は、公知のキーボードやマウス等であり、本実施形態の手術時間比較システム1を操作するために用いられる。
【0029】
次に、
図2(A)(B)を参照して、手術時間記憶部11を説明する。本実施形態では、
図2(A)を比較元病院(自病院)のテーブル、
図2(B)を比較先病院Aのテーブルとしている。手術時間記憶部11は、その項目として手術ID、患者ID、手術年月日、既往歴、治療中病名、手術病名、診療科、術式、術式コード、手術金額、執刀時間、予定時間、入退出時間、麻酔時間、緊急区分、入外区分を備える。なお、手術時間とは、執刀時間、予定時間、入退出時間、麻酔時間等の総称であることを意図する。
【0030】
手術IDは、手術毎に付与されて当該手術を特定するコードである。患者IDは、患者毎に付与されて当該患者を特定するコードである。手術年月日は、手術をした日付を記憶するものである。既往歴は、当該患者が過去に患った病名を記憶するものである。治療中病名は、当該患者が現在罹っている病気のうち手術とは関係ない病名を記憶するものである。手術病名は、手術の原因となる病名又は手術と関係する病名を記憶するものである。診療科は、手術を担当する診療科を記憶するものである。術式は、どのような手術をしたかを記憶するものである。ここでは、1つの手術で複数の術式が混在する場合、複数の術式がスラッシュ等で区切られて記憶される。術式コードは、術式を端的に表わすものであり、例えばレセプト電算コードやKコード等が記憶される。ここでも、複数の術式コードが存在する場合、複数の術式コードがスラッシュで区切られる等して記憶される。手術金額は、当該手術により患者等に請求できる金額を記憶するものである。
【0031】
執刀時間は、医師が患者を執刀していた時間を記憶するものであり、ここでは単位を分で表わしている(予定時間、入退出時間、麻酔時間も同様)。予定時間は、当該手術にかかる時間として当初予定していた時間を記憶するものである。入退出時間は、患者が手術室に滞在していた時間を記憶するものである。麻酔時間は、患者が麻酔科医の管理下にあった時間を記憶するものである。なお、執刀時間、予定時間、入退出時間、及び麻酔時間は、ここでは経過した時間を分で表わしているが、開始時刻と終了時刻を記憶して、制御部20でその差分を計算してもよい。緊急区分は、その手術が緊急手術か予定手術かを記憶するものである。入外区分は、その手術が入院患者に対して行なわれたものか、外来患者に対して行なわれたものかを記憶するものである。
【0032】
もっとも手術時間記憶部11は、上記のテーブル構成に限られず、その項目を増減させることが可能である。また、テーブル構成もこれに限られず、テーブルをもっと細分化することもできるし、逆に病院を特定する病院IDの項目を加えて複数の病院を1つのテーブルにまとめることもできる。また、手術時間記憶部11に記憶されたデータは、他のテーブルと連携されていることが多い。例えば患者IDは、図示しない患者用のテーブルで、患者ID毎に患者氏名、性別、年齢等が記憶される。また、既往歴は、図示しない既往歴用のテーブルから、患者IDに紐付く病名が読み出されて記憶される等である。
【0033】
次に、
図3を参照して、病院種別記憶部12を説明する。病院種別記憶部12は、複数の病院の種別を病院毎に記憶するテーブルである。本実施形態では、病院種別記憶部12の項目として、病院ID、病院種類、がん拠点、DPC群、病床数のうち1以上を備える。病院IDは、病院毎に付与されて当該病院を特定するコードである。ここでは、H001の病院が比較元病院としての自病院、H002以下の病院を比較先病院A、比較先病院B、比較先病院C・・・としている。病院種類は、病院の開設者別に種別を分けるもので、例えば民間病院、公立病院、公的病院、大学病院、診療所等が記憶される。がん拠点は、厚生労働省が質の高いがん医療を提供することができるよう定めたもので、例えば、地域がん診療連携拠点、都道府県がん診療連携拠点、地域がん診療拠点が記憶される。DPC群は、診療報酬に関する取り決めであり、所定の評価を得た医療機関に付与されるもので、例えば、大学病院本院群、DPC特定病院群、DPC標準病院群等が記憶される。また、DPC群の列にはDPC群が付与されていない病院を表わすのに、DPC対象外、出来高算定等も記憶される。病床数は、その病院の病床数が記憶されるもので、本実施形態では100床単位で記憶している。例えば、0床、100床未満、100床台、200床台・・・、1000床以上という具合である。なお、現実には、この病床数として実際の病床数を記憶させ、制御部20又は表示部30で100床単位等に数字を丸めて表示させることの方が多い。100床単位とするのは、具体的な病床数によって比較先病院が特定されるのを防止するためである。
【0034】
図1に戻り、手術時間比較部21を説明する。手術時間比較部21は、手術時間記憶部11に記憶された比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間を、同じ術式同士でまとめて比較するものである。この手術時間として、既に述べたように、手術時間記憶部11の項目である執刀時間、予定時間、入退出時間、麻酔時間等が挙げられる。
【0035】
続いて、手術時間比較部21の動作を、既に説明した手術時間記憶部11と病院種別記憶部12、及び
図4(A)~(E)に示す表示部30とともに説明する。
【0036】
先に表示部30を説明する。
図4(A)は、手術時間記憶部11のレコードの絞り込みをするためと、比較先病院を選択するための検索条件入力部33である。検索条件入力部33のうち上の行である検索条件の行においては、手術時間記憶部11のレコードの絞り込みの際に、手術が行なわれた年度と月、診療科、病名のうち1つ以上を絞り込みの条件としている。もっとも上記以外に、術式、転帰、手術が緊急か予定されていたものか、手術が入院患者に対して行なわれたものか外来患者に対して行なわれたものか等の他の条件を加えることもできる。検索条件入力部33のうち下の行である比較先病院の行では、比較先病院の行において、病院種類、がん拠点、DPC群、病床数を絞り込みの条件として例示している。
【0037】
図4(B)は、比較元病院として自病院の手術時間が表示される欄である。ここでは、自病院で行った手術の術式、術式コード、収益、件数、執刀、予定、入退室、麻酔、予定と執刀の差を項目として備えている。術式、術式コードは手術時間記憶部11の項目と同じである。収益は、手術時間記憶部11の手術金額と、収益の右隣の項目である件数との積である。件数は、同じ術式が何件行なわれたかを表示するものであり、手術時間記憶部11のレコードのうち、同じ術式のレコード数を積算して導き出される。執刀、予定時間、入退室、麻酔は、手術時間記憶部11の執刀時間、予定時間、入退出時間、麻酔時間のうち、同じ術式のレコードの平均値又は中央値を表示するものである。予定と執刀の差は、執刀の項目に記された時間と予定の項目に記された時間の差を表わすものである。また、執刀、予定時間、入退室、麻酔、予定と執刀の差の項目に表示されている上下の矢印を操作することで、並べ替えも可能である。
【0038】
図4(C)は、比較先病院の手術時間が表示される欄である。ここではその項目として、執刀、予定、入退室、麻酔、予定と執刀の差を備える。これらの項目は、比較元病院の数字か比較先病院の数字かの違いだけで、意味するものは
図4(B)で説明したものと同じである。なお、ここにも収益や件数の項目を加えることができる。
【0039】
図4(D)は、比較元病院の手術時間と比較先病院の手術時間との時間差が表示される欄である。ここでもその項目として、執刀、予定、入退室、麻酔、予定と執刀の差を備える。ここでは各項目における、
図4(B)に示す比較元病院と、
図4(C)に示す比較先病院との差を表示している。
【0040】
図4(E)は、さらに別の比較先病院を選択したときに表示される欄であり、
図4(C)(D)同様の欄が連続する。なお、
図4(B)において、表示される情報の並べ替えがなされた場合、
図4(C)~(E)に表示される情報も連動させることが好ましい。例えば、
図4(B)のデータの並べ替えをして、術式Cが最も上に来た場合、
図4(C)~(E)も連動して術式Cが最も上になるようにするのである。また、
図4(B)~(E)に術式毎の手術時間等を表示させるとき、手術時間記憶部11の緊急区分を参照して、緊急手術と予定された手術とに分けて表示させることもできる。係る場合、例えば術式の列には、「術式A(緊急)」「術式A(予定)」と表示して区別することができるし、あるいは緊急区分の項目を表示部30に設けて表示してもよい。
【0041】
次に、手術時間比較部21の動作を説明する。先ず、手術がなされると、制御部20等によって、手術時間記憶部11にデータが記憶され、手術の件数に応じて複数のレコードが蓄積される。次に、医師等の病院関係者が、表示部30の
図4(A)の検索条件入力部33のうち、検索条件の行で所望の検索条件を入力し、図示しない実行ボタンを押す。ここでは、仮に2022年9月に行った手術で、全ての診療科、及び全ての病名で検索する。すると、手術時間比較部21は、比較元病院である自病院の手術時間記憶部11(
図2(A))のうち、手術年月日の項目のデータを検索して、2022年9月になされた手術のみを抽出する(便宜上、手術時間記憶部11に表示されているデータは全て2022年9月の日付となっている。)。次に、手術時間比較部21は、同じ術式のレコードをまとめて、
図4(B)に示す表を作成する。すなわち、術式A全体の手術の収益がいくらであり、その件数が何件であり、執刀時間、予定時間、入退室時間、麻酔時間の平均又は中央値が何分であり、執刀時間と予定時間との差が何分であるかを明らかにした情報を作成する。なお、複数の術式が混在するような手術では、複数の術式同士が完全に一致するレコードをまとめて上記の情報を作成する。そして、作成された情報を表示部30が
図4(B)にして表示する。
【0042】
次に、医師等の病院関係者が、
図4(A)に示す検索条件入力部33の比較先病院の行で選択条件を入力し、図示しない実行ボタンを押す。ここでは病院種類が公立病院で病床数が200床台の病院を選択している。すると、手術時間比較部21は、病院種別記憶部12のレコードの中から上記の条件に合致する病院として、病院IDがH002の比較先病院Aを選択する。次に、手術時間比較部21は、手術時間記憶部11の中から比較先病院Aのテーブル(
図2(B))を探し出し、これらの手術年月日から2022年9月の日付のレコードを抽出し、術式毎にまとめる。そして、
図4(B)に記載された術式に対応する術式を抜き出して、執刀時間、予定時間、入退室時間、麻酔時間の平均又は中央値、及び執刀時間と予定時間との差の情報を作成し、その情報を表示部30が
図4(C)として画面に表示する。なお、
図4(B)と
図4(C)を表示させるための情報を作成する順序は上記の例に限られない。例えば、
図4(A)の検索条件入力部33において、検索条件と比較先病院の入力を同時に行うような場合、手術時間比較部21は、比較元病院のテーブルと比較先病院のテーブルとを同時に処理することも可能である。
【0043】
次に、手術時間比較部21は、
図4(B)と
図4(C)とを比較して、これらの時間差を算出し、表示部30がそれを
図4(D)として表示する。また、比較先病院が複数あるときは、
図4(E)以下に、
図4(C)(D)同様の情報を作成し表示する。
【0044】
次に、
図5(A)(B)に示す詳細表示部31を説明する。本図では、図面に表わす都合上、テーブルを2段に分けている。なお、詳細表示部31は、制御部20とハードウエアとしてのモニタが協働してなされる。詳細表示部31は、表示部30の所定場所を操作することで、術式毎の手術一覧と手術時間に影響を与える患者毎の特性を含む詳細情報が表示されるものである。これは、例えば自病院と比較先病院とにおいて、手術時間が異なるとき、その原因を分析するために用いられる。
【0045】
例えば、
図4(B)の「術式A」のセルをマウスでクリックすると、
図5(A)に示す、自病院における2022年9月の術式Aの手術の一覧が表示される。また、詳細表示部31には患者毎の特性を含む詳細情報として、例えば過去に患った病気である既往歴、現在治療中である治療中病名、手術中に何か特別なことをしたときに入力される手術中の措置、性別、年齢、転帰、執刀医等の項目を備える。また、
図4(C)の「術式A」のセルをクリックすると、比較先病院Aにおける2022年9月の術式Aの手術の一覧が表示される。ここでも患者毎の特性を含む詳細情報が表示される。医師等の病院関係者は、この詳細表示部31を見ることによって、手術時間の細かな分析をすることができる。
【0046】
例えば、
図5(B)の手術ID「CH005」では、執刀時間が120分であり、他の手術の150~160分に比べて大幅に短い。そこで、患者毎の特性を見ていくと、当該手術に係る患者は年齢が20代と若く、既往歴や治療中病名もなく、手術中の措置も必要なかったことから執刀時間が短かったと推測できる。一方、他の手術に係る患者は、既往歴と治療中病名があり、手術中の措置においても輸血や薬の静脈注射が行われていることから、手術中に何らかの処置が必要になり手術時間が延びたと推測される。また、詳細表示部31を見たとき、既往歴や手術中の措置等に差が無いのに執刀時間が長ければ、何らかの無駄な作業があったり、執刀そのものが遅いといった原因が推測される。さらに、特定の執刀医の手術時間が短い又は長いのであれば、その執刀医の技術の優劣が推測される。なお、詳細表示部31は、本実施形態のように1階層での表示に限られず、他の特性等も含めて多階層に表示しても良い。例えば、
図4(B)の「術式A」をクリックすると、最初は手術ID、患者の性別、及び年齢のみが表示され、手術IDをクリックすると、当該手術においてさらに詳細な情報が表示される等である。
【0047】
以上、説明したように、本実施形態の手術時間比較システム1によれば、手術時間比較部21によって、比較元病院(自病院)と比較先病院(他病院)との手術時間の比較が可能となり、自病院の手術室の稼働を含めた手術時間が適正なものか否かを判断することができる。また、表示部30に表示されたデータの並べ替えが可能なため、例えば、収益が大きい手術、件数が多い手術、優先度が高い術式等を優先的に分析することができる。さらに、詳細表示部31によって、患者毎の特性を含む詳細情報を把握できるため、手術時間の詳細な分析が可能となる。例えば、手術時間が長い場合、単に非効率なのか、又は他に理由があるのかが明らかになる。また、病院種別記憶部12を備えるため、手術時間の比較において、所望の種別の病院を選択できる。例えば、自病院と同様の病床数帯の病院を選択したり、がん拠点になっている病院の手術時間を参考にしたりできる。また、複数の病院間で手術時間の比較をするときに、手術の年月、診療科、病名等で絞り込みができるため、比較の精度を向上させることができる。
【0048】
なお、上述した手術時間比較システムは本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。例えば、どの病院でも比較元病院として機能するため、比較元病院が変われば上述した比較元病院(病院ID H001(
図3参照))は相対的に比較先病院となる。また、本発明の手術時間比較システムを用いた方法も、本発明の範囲に含まれる。係る場合、上述した手術時間比較システムの実施形態において、その動作に関する箇所を手術時間比較方法と読み替えることができる。
【符号の説明】
【0049】
1・・手術時間比較システム、2・・電気通信回線、
10・・記憶部、11・・手術時間記憶部、12・・病院種別記憶部、
20・・制御部、21・・手術時間比較部、
30・・表示部、31・・詳細表示部、32・・入力部、33・・検索条件入力部