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特開2024-5497原子炉建屋内の水素対策用パージシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005497
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】原子炉建屋内の水素対策用パージシステム
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/06 20060101AFI20240110BHJP
   G21D 3/08 20060101ALI20240110BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G21C9/06
G21D3/08 F
G21C13/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105698
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水原 丈
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄士
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎太郎
(57)【要約】
【課題】
原子炉建屋内の小部屋に対して、直接的に水素処理が可能であり、電源喪失時にも使用可能な自立性を備え、かつ、小部屋内の温度上昇が抑えられること。
【解決手段】
本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムは、原子炉建屋内の小部屋内に水素濃度を低減させるためのパージ用ガスを供給するガス供給部と、前記小部屋内の温度上昇を計測する温度計測部と、該温度計測部で計測された前記小部屋内の温度上昇に基づき、前記小部屋内の水素濃度を推定する水素濃度推定部と、該水素濃度推定部で推定した水素濃度に応じて、前記ガス供給部による前記パージ用ガスの供給量を調整する調整部と、を備え、前記調整部で調整された前記ガス供給部からの前記パージ用ガスを前記小部屋内に供給して、前記小部屋内の前記水素濃度を前記水素濃度に応じて希釈し、前記小部屋内の前記水素濃度を可燃限界未満にすることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉建屋内に、原子炉圧力容器と、該原子炉圧力容器の外周側に所定の間隔を介して設置された原子炉格納容器と、該原子炉格納容器の内部から貫通部を介して連通し、前記原子炉圧力容器より容積が小さい小部屋とが収納されており、前記原子炉格納容器から前記小部屋へ漏洩した水素濃度を抑制する原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記水素対策用パージシステムは、前記小部屋内に水素濃度を低減させるためのパージ用ガスを供給するガス供給部と、前記小部屋内の温度上昇を計測する温度計測部と、該温度計測部で計測された前記小部屋内の温度上昇に基づき、前記小部屋内の水素濃度を推定する水素濃度推定部と、該水素濃度推定部で推定した水素濃度に応じて、前記ガス供給部による前記パージ用ガスの供給量を調整する調整部と、を備え、
前記調整部で調整された前記ガス供給部からの前記パージ用ガスを前記小部屋内に供給して、前記小部屋内の前記水素濃度を前記水素濃度に応じて希釈し、前記小部屋内の前記水素濃度を可燃限界未満にすることを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記水素対策用パージシステムは、前記小部屋の内部又は外部に設置された前記ガス供給部であるガスボンベと、一端が前記ガスボンベに接続され、他端から前記ガスボンベ内の前記パージ用ガスを前記小部屋内に噴出するパージガス配管と、前記温度計測部の機能及び前記水素濃度推定部の機能を備えた温度計測及び水素濃度推定器と、前記パージガス配管の途中に設置され、前記調整部の機能を備えた調整弁と、から成り、
前記調整弁で調整された前記ガスボンベからの前記パージ用ガスを前記小部屋内に噴出して前記小部屋内の前記水素濃度を前記水素濃度に応じて希釈し、前記小部屋内の前記水素濃度を可燃限界未満にすることを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記温度計測及び水素濃度推定器は、触媒を備えているものと触媒を備えていないものとが複数ある接触燃焼式センサであり、
前記接触燃焼式センサは、触媒を備えたセンサが水素と反応することで温度が上昇し、センサの温度が上昇することで抵抗値が増加し、触媒を備えていないセンサとの間に不均衡電流が流れ、この不均衡電流の大きさが分かることで前記水素濃度を推定することを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記温度計測及び水素濃度推定器で推定された前記水素濃度に応じて前記調整弁の開度を調整し、前記ガスボンベから前記パージガス配管を経由して噴出する前記パージ用ガスの量を調整することを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記水素濃度が高ければ前記パージ用ガスの噴出量を多くし、前記水素濃度が低ければ前記パージ用ガスの噴出量を少なくすることを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項6】
請求項5に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記小部屋は、パージされた水素を前記小部屋の外に排気する開口部又は配管を有することを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記小部屋の内部に、水素処理時の反応熱を抑制する触媒式再結合装置が設置されていることを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記水素対策用パージシステムは、前記小部屋の内部に設置された前記ガス供給部である空調機と、一端が前記空調機に接続され、他端から前記空調機からの前記パージ用ガスを前記小部屋内に噴出するパージガス配管と、前記温度計測部の機能及び前記水素濃度推定部の機能を備えた温度計測及び水素濃度推定器と、前記パージガス配管の途中に設置され、前記調整部の機能を備えた調整弁と、から成り、
前記調整弁で調整された前記空調機からの前記パージ用ガスを前記小部屋内に噴出して前記小部屋内の前記水素濃度を前記水素濃度に応じて希釈し、前記小部屋内の前記水素濃度を可燃限界未満にすることを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項9】
請求項8に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記温度計測及び水素濃度推定器は、触媒を備えているものと触媒を備えていないものとが複数ある接触燃焼式センサであり、
前記接触燃焼式センサは、触媒を備えたセンサが水素と反応することで温度が上昇し、センサの温度が上昇することで抵抗値が増加し、触媒を備えていないセンサとの間に不均衡電流が流れ、この不均衡電流の大きさが分かることで前記水素濃度を推定することを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項10】
請求項9に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記温度計測及び水素濃度推定器で推定された前記水素濃度に応じて前記調整弁の開度を調整し、前記空調機から前記パージガス配管を経由して噴出する前記パージ用ガスの量を調整することを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項11】
請求項10に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記水素濃度が高ければ前記パージ用ガスの噴出量を多くし、前記水素濃度が低ければ前記パージ用ガスの噴出量を少なくすることを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項12】
請求項11に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記小部屋は、パージされた水素を前記小部屋の外に排気する開口部又は配管を有することを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、
前記原子炉建屋内の小部屋は、機器搬入用ハッチ室、所員用エアロック室及びサプレッションチェンバ出入口室等の原子炉格納容器からの水素漏えいポテンシャルのある部屋及びそれらに隣接する部屋のいずれかであることを特徴とする原子炉建屋内の水素対策用パージシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉建屋内の水素対策用パージシステムに係り、特に、原子炉建屋内の原子炉圧力容器より容積が小さい小部屋に備えられているものに好適な原子炉建屋内の水素対策用パージシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力プラントでは、原子炉圧力容器内に配置された炉心が万が一溶融するような事態(以下、重大事故という)が発生した場合、原子炉格納容器内では、金属-水反応により水素ガスが発生すると共に、水の放射性分解により水素や酸素ガスが発生する可能性がある。原子炉格納容器内で発生した水素等の可燃性ガス濃度は、可燃性ガス濃度制御系によって、可燃限界未満に制御できるように設計されている。
【0003】
しかし、重大事故等時に原子炉格納容器内で発生した水素等の可燃性ガスが、原子炉建屋内の小部屋に漏洩する可能性があり、想定を大幅に超える水素等の可燃性ガスの漏洩が生じた場合には、小部屋内に水素が蓄積し、燃焼が生じる可能性はゼロではない。
【0004】
原子炉建屋内における水素対策として、例えば、特許文献1には、非常用ガス処理系による排気が提案されている。
【0005】
この特許文献1によれば、非常用ガス処理系を作動することで、原子炉格納容器から原子炉建屋内に漏洩した水素を、主蒸気筒から外気へ放出し、原子炉建屋内での水素の燃焼を防ぐことが可能である。
【0006】
また、原子炉建屋内の水素を処理する方法として、例えば、特許文献2に記載された技術がある。
【0007】
この特許文献2によれば、触媒式再結合装置を原子炉建屋内に設置することで、原子炉格納容器内で発生した可燃性ガスである水素や酸素は、触媒に含まれる触媒層によって再結合されて水になる。この結果、可燃性ガス濃度は可燃限界未満に抑制され、全電力喪失時においても受動的に可燃性ガスの燃焼を防ぐことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-232492号公報
【特許文献2】特開2011-174773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1においては、原子炉建屋内の小部屋に漏洩した水素を処理する場合、対象とする小部屋から離れた位置からダクトを経由し、間接的に小部屋内の水素を排気する必要があるため、直接的な水素処理はできないという課題がある。
【0010】
また、上述した特許文献2においては、原子炉建屋内の小部屋に触媒式再結合装置を設置した場合、小部屋の容積が小さいことから水素の燃焼又は再結合の反応熱により、小部屋内の温度が上昇しやすく、作業員の立ち入りや機器へ悪影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、原子炉建屋内の小部屋に対して、直接的に水素処理が可能であり、電源喪失時にも使用可能な自立性を備え、かつ、小部屋内の温度上昇が抑えられる原子炉建屋内の水素対策用パージシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムは、上記目的を達成するために、原子炉建屋内に、原子炉圧力容器と、該原子炉圧力容器の外周側に所定の間隔を介して設置された原子炉格納容器と、該原子炉格納容器の内部から貫通部を介して連通し、前記原子炉圧力容器より容積が小さい小部屋とが収納されており、前記原子炉格納容器から前記小部屋へ漏洩した水素濃度を抑制する原子炉建屋内の水素対策用パージシステムであって、前記水素対策用パージシステムは、前記小部屋内に水素濃度を低減させるためのパージ用ガスを供給するガス供給部と、前記小部屋内の温度上昇を計測する温度計測部と、該温度計測部で計測された前記小部屋内の温度上昇に基づき、前記小部屋内の水素濃度を推定する水素濃度推定部と、該水素濃度推定部で推定した水素濃度に応じて、前記ガス供給部による前記パージ用ガスの供給量を調整する調整部と、を備え、前記調整部で調整された前記ガス供給部からの前記パージ用ガスを前記小部屋内に供給して、前記小部屋内の前記水素濃度を前記水素濃度に応じて希釈し、前記小部屋内の前記水素濃度を可燃限界未満にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原子炉建屋内の小部屋に対して、直接的に水素処理が可能であり、電源喪失時にも使用可能な自立性を備え、かつ、小部屋内の温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムの実施例1に係わる原子炉建屋内部の断面図である。
図2】本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムの実施例1に係わる原子炉建屋内の小部屋内部の断面図である。
図3】本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムの実施例2に係わる原子炉建屋内の小部屋内部の断面図である。
図4】本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムの実施例3に係わる原子炉建屋内の小部屋内部の断面図である。
図5】本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムの実施例4に係わる原子炉建屋内の小部屋内部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムを説明する。なお、各実施例において、同一構成部品には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0016】
図1及び図2を用いて、本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムに実施例1を説明する。図1は、本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムの実施例1に係わる原子炉建屋1内部の断面図であり、図2は、本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムの実施例1に係わる原子炉建屋1内の小部屋5の内部の断面図である。
【0017】
図1に示すように、原子炉建屋1内には、原子炉圧力容器2と、この原子炉圧力容器2の外周側に間隔を介して設置された原子炉格納容器3と、この原子炉格納容器3の内部から貫通部4を介して連通し、原子炉圧力容器2より容積が小さい小部屋5が収納されており、そして、本実施例の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムは、原子炉格納容器3から小部屋5へ漏洩した水素濃度を抑制するものである。
【0018】
図2に示すように、本実施例の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムは、小部屋5の内部に設置され、小部屋5内に水素濃度を低減させるためのパージ用ガスを供給するガス供給部であるガスボンベ7と、一端がガスボンベ7に接続され、他端からガスボンベ7内のパージ用ガスを小部屋5内に噴出するパージガス配管10と、小部屋5内の温度上昇を計測する温度計測部の機能及び温度計測部で計測された小部屋5内の温度上昇に基づき、小部屋5内の水素濃度を推定する水素濃度推定部の機能を備えた温度計測及び水素濃度推定器9と、パージガス配管10の途中に設置され、温度計測及び水素濃度推定器9で推定した水素濃度に応じて、ガスボンベ7によるパージ用ガスの供給量を調整する調整部の機能を備えた調整弁8とから概略構成されている。
【0019】
そして、上記した本実施例の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムは、調整弁8で調整されたガスボンベ7からのパージ用ガスを小部屋5内に噴出し、小部屋5内の水素濃度を水素濃度に応じて希釈して、小部屋5内の水素濃度を可燃限界未満に抑制するものである。
【0020】
以下、本実施例の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムを、具体的に説明する。
【0021】
例えば、原子炉圧力容器2内に配置された炉心が万が一溶融するような重大事故等時に、原子炉格納容器3内で発生した水素が貫通部4から原子炉建屋1内の小部屋5に漏洩した場合には、温度計測及び水素濃度推定器9によって、小部屋5内の水素の漏洩による温度上昇と水素濃度を検知する。
【0022】
温度計測及び水素濃度推定器9は、例えば、触媒を備えているものと触媒を備えていないものとが複数ある接触燃焼式センサを用いることが考えられる(なお、触媒は水素と反応するので、触媒が水素と反応することで小部屋5内に水素が入ってきたことが分かる)。
【0023】
この接触燃焼式センサにおいて、触媒を備えたセンサは水素と反応することで温度が上昇し、センサの温度が上昇することで抵抗値が増加し、触媒を備えていないセンサとの間に不均衡電流が流れる。この不均衡電流の大きさは、可燃限界濃度以下において、水素濃度に比例することから、不均衡電流の大きさが分かることで水素濃度を推定可能であり、環境温度及び湿度の影響をほとんど受けない。
【0024】
この温度計測及び水素濃度推定器9により、推定された水素濃度に応じて調整弁8の開度を調整し、ガスボンベ7からパージガス配管10を経由して噴出するパージ用ガスの量を受動的に調整する。
【0025】
ガスボンベ7内のパージ用ガスとしては、例えば、不活性ガスである窒素、アルゴン、二酸化炭素等がある。また、小部屋5内への作業員の立ち入りを考慮する場合には、空気を用いても良い。
【0026】
また、ガスボンベ7からパージガス配管10を経由して噴出するパージ用ガスの噴出量は、水素濃度を可燃限界未満に十分抑制できる(水素濃度を可燃限界未満に低くする)ものとし、パージ用ガスの噴出量を水素濃度に応じて調整する(例えば、水素濃度が高ければパージ用ガスの噴出量を多くし、水素濃度が低ければパージ用ガスの噴出量を少なくする)ことで、原子炉格納容器3内から長期間にわたって水素の漏洩が継続する場合においても、小部屋5内の水素濃度を可燃限界未満に抑制できる。
【0027】
この小部屋5内の水素濃度が可燃限界未満であることは、図示していないが、小部屋5内に設置されている検出器で検出している。
【0028】
ガスボンベ7からパージガス配管10を経由して噴出されたパージ用ガスによって、パージされた水素は、小部屋5内の開口部11又は配管(図示せず)から小部屋5外に排気され処理される。
【0029】
なお、小部屋5内のくぼみ等の局所的に水素の蓄積しやすい箇所についても、パージガスによる対流の効果によって、水素濃度を均一に希釈することができる。
【0030】
これによって、電源喪失時においても、受動的に小部屋5内の水素濃度を可燃限界未満に抑制し、燃焼を防ぐことができる。
【0031】
従って、本実施例によれば、原子炉建屋1内の小部屋5に対して、直接的に水素処理が可能であり、電源喪失時にも使用可能な自立性を備え、かつ、小部屋5内の温度上昇が抑えられる。
【0032】
なお、上記した小部屋5としては、機器搬入用ハッチ室、所員用エアロック室、サプレッションチェンバ出入口室等の原子炉格納容器からの水素漏えいポテンシャルのある部屋及びそれらに隣接する部屋等を挙げることができ、これらの部屋の容積は約100m以下である。これは、以下に記載する各実施例においても同一である。
【実施例0033】
図3に、本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムの実施例2に係わる原子炉建屋1内の小部屋5の内部を示す。
【0034】
図3に示す実施例2は実施例1の変形例であり、図2に示す本実施例では、ガスボンベ7を小部屋5の外に設置し、パージ用ガスを小部屋5内に噴出するためのパージガス配管10を、小部屋5の外部から内部に接続するように設置したものである。それ以外の構成は、図2の実施例1の構成と同様である。
【0035】
これにより、パージ用のガスはガスボンベ7からパージガス配管10を経由して、小部屋5内に噴出される。また、噴出されるガスの量は、温度計測及び水素濃度推定器9によって推定された水素濃度に応じて調整され、小部屋5内の水素濃度を可燃限界未満に抑制することができる。
【0036】
また、小部屋5の外にガスボンベ7を設置することで、ガスボンベ7内のガスが少なくなった場合は、別のガスボンベに繋ぎ変えることで長期間にわたって小部屋5内にパージ用ガスを供給することができる。
【0037】
なお、ガスボンベ7の代わりに不活性ガスを供給可能な系統である不活性ガス系等に、パージガス配管10を接続することでも、小部屋5内の水素濃度を可燃限界未満に抑制することができる。これは、不活性ガス系が小部屋5の外にあるから可能になることで、図2の実施例1の構成ではできないことである。
【0038】
このような本実施例の構成であっても、その効果は実施例1と同様である。
【実施例0039】
図4に、本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムの実施例3に係わる原子炉建屋1内の小部屋5の内部を示す。
【0040】
図4に示す実施例3は実施例1の変形例であり、図4に示す本実施例では、小部屋5の内部の下部中央に、水素処理時の反応熱を抑制する触媒式再結合装置13を設置したものである。それ以外の構成は、図2の実施例1の構成と同様である。
【0041】
上記した触媒式再結合装置13を小部屋5の内部の下部に設置したことにより、水素及び酸素は、触媒に含まれる触媒層によって再結合されて水になる。また、温度計測及び水素濃度推定器9により、推定された水素濃度に応じて調整弁8の開度を調整し、ガスボンベ7からパージガス配管10を経由して、パージ用ガスを小部屋5内に噴出する。
【0042】
これにより、小部屋5内の水素濃度を希釈することができ、触媒式再結合装置13による水素処理時の反応熱を抑制することが可能となり、小部屋5内の機器6に悪影響を及ぼすことなく水素を処理できる。
【0043】
更に、ガスボンベ7からのガスによるパージと触媒式再結合装置13による水素処理を組み合わせることで、より効率的な水素処理が可能となり、小部屋5内の水素濃度を可燃限界未満に抑制し、燃焼を防ぐことができる。
【0044】
このような本実施例の構成であっても、その効果は実施例1と同様である。
【実施例0045】
図5に、本発明の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムの実施例4に係わる原子炉建屋1内の小部屋5の内部を示す。
【0046】
図5に示す実施例4は実施例1の変形例であり、図5に示す本実施例は、非常用電源が回復した場合を想定して、小部屋5内にガスボンベ7に代えて空調機12を設置したものである。
【0047】
そして、本実施例の原子炉建屋内の水素対策用パージシステムが、一端が空調機12に接続され、他端から空調機12からのパージ用ガスを小部屋5内に噴出するパージガス配管10と、上記した温度計測部の機能及び水素濃度推定部の機能を備えた温度計測及び水素濃度推定器9と、パージガス配管10の途中に設置され、上記した調整部の機能を備えた調整弁8とを備えている点は、図2の実施例1の構成と同様である。
【0048】
なお、上記した空調機12の設置位置は、小部屋5内のどこでも良いが、対流の行いやすいところが望ましい。
【0049】
このような本実施例の構成とすることにより、温度計測及び水素濃度推定器9によって推定された水素濃度に対して、空調機12からパージ用ガスの供給量を調整弁8によって調整し、小部屋5内の水素濃度を可燃限界未満に抑制することができる。
【0050】
また、本実施例では、上述した実施例1-3のようなガスボンベ7が不要であり、電源が使える場合には、本実施例の空調機12を用いると良い。
【0051】
このような本実施例の構成であっても、その効果は実施例1と同様である。
【0052】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をする事が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…原子炉建屋、2…原子炉圧力容器、3…原子炉格納容器、4…貫通部、5…小部屋、6…機器、7…ガスボンベ、8…調整弁、9…温度計測及び水素濃度推定器、10…パージガス配管、11…開口部、12…空調機、13…触媒式再結合装置。
図1
図2
図3
図4
図5