(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005498
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】有機物を含む液体廃棄物の処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
C02F11/04 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105700
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】517306640
【氏名又は名称】株式会社下瀬微生物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】下瀬 眞一
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA01
4D059BA11
4D059BA45
4D059BA46
4D059BA48
4D059BA56
4D059BE02
4D059BE49
4D059BJ03
4D059BK11
4D059CA14
4D059CA22
4D059CB04
(57)【要約】
【課題】有機物を含む液体廃棄物を自然に、大量に、乾燥させることができるので、ランニングコストが安く、設備投資を抑えた有機物を含む液体廃棄物の処理システムを提供する。
【解決手段】発酵原料を収容部21dに収容するとともに収容部21dの減圧および加熱が行われる密閉容器21と、攪拌装置22とを有し、微生物を利用して発酵原料の有機成分を分解させる発酵装置2と、処理対象植物Pを配置する処理エリア3と、発酵原料が発酵された後に発酵装置2から排出される発酵生成物Sを処理エリア3へ移送する移送部10と、移送部10から発酵生成物Sを放出させる放出部51と、を備えている。放出部51は、処理エリア3に配置された処理対象植物Pの上方位置から処理対象植物Pに向けて発酵生成物Sを放出させるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む液体廃棄物を収容する収容部を有する密閉容器と、前記収容部を減圧する収容部減圧部と、前記収容部を加熱する収容部加熱部と、前記収容部内で前記有機物を含む液体廃棄物を撹拌する攪拌部材を有する攪拌装置とを含み、微生物を利用して前記有機物を含む液体廃棄物を分解させ、前記有機物を含む液体廃棄物から生成される発酵生成物を排出する発酵装置と、
敷料用の処理対象植物を配置する処理エリアと、
前記発酵装置から排出される発酵生成物を前記処理エリアへ移送する移送部と、
前記移送部から前記発酵生成物を放出させる放出部と、
を備え、
前記放出部は、前記処理エリアに配置された前記処理対象植物の上方位置から前記処理対象植物に向けて前記発酵生成物を放出させるように構成された
ことを特徴とする有機物を含む液体廃棄物の処理システム。
【請求項2】
前記処理エリアは、前記処理対象植物を配置する収集床部を含み、
前記収集床部は、前記処理対象植物を通過した後に前記処理対象植物から下方に落ちた前記発酵生成物の濾過液を集めて貯留槽に貯める
ことを特徴とする請求項1に記載の有機物を含む液体廃棄物の処理システム。
【請求項3】
前記収集床部は、第1の多角形傾斜平面部と第2の多角形傾斜平面部とを有し、
前記第1の多角形傾斜平面部は、前記第2の多角形傾斜平面部と共有する共有辺部を有し、
前記共有辺部は水平面に対して傾斜した傾斜状であり、前記共有辺部の一端部は、前記収集床部の最低部となるように形成され、
前記最低部の近傍に前記貯留槽が配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の有機物を含む液体廃棄物の処理システム。
【請求項4】
前記貯留槽に貯めた前記濾過液を前記処理対象植物の上方位置の散布ノズルから前記処理対象植物に向けて撒くためのリピート散布流路を備え、
前記リピート散布流路の途中部には、前記貯留槽から前記散布ノズルまで前記濾過液を送るための送液ポンプが設けられている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の有機物を含む液体廃棄物の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含む液体廃棄物、例えば酪乳牛などの家畜の水分の多い排泄物に有効な処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、例えば特許文献1に記載するように、家畜の排泄物をタンクなどの密閉容器に収容し、密閉容器内を減圧するとともに、所定の温度範囲に加熱しながら撹拌することによって、密閉容器内に収容した排泄物の水分除去と乾燥とを効率的に行うとともに、こうして処理する家畜の排泄物に所定の微生物を添加し、排泄物の発酵を促進させることができる減圧発酵乾燥装置を発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来の排泄物の処理システムでは、水分の多い排泄物では、大量に乾燥することが難しかった。また、乾燥機を長期間使用することにより、ランニングコストが高額になる恐れがあった。さらに、上述の特許文献1記載のシステムでは、大量に処理するには、数多くの減圧発酵乾燥装置が必要となり、設備投資が高額になる恐れもあった。
【0005】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、その目的は、自然に、大量に有機物を含む液体廃棄物を発酵、乾燥させることができ、ランニングコストが安く、設備投資を抑えることができる、有機物を含む液体廃棄物の処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために本明細書に開示する発明は、以下のように構成されている。すなわち、第1の発明は、有機物を含んだ液体廃棄物である発酵原料を収容する収容部を有する密閉容器と、前記収容部を減圧する収容部減圧部と、前記収容部を加熱する収容部加熱部と、前記収容部内で前記発酵原料を攪拌する攪拌部材を有する攪拌装置とを含み、微生物を利用して前記発酵原料の有機成分を分解させ、前記発酵原料から発酵生成物を生成して排出する発酵装置と、敷料用の処理対象植物を配置する処理エリアと、前記発酵装置から排出される発酵生成物を前記処理エリアへ移送する移送部と、前記移送部から前記発酵生成物を放出させる放出部と、を備え、前記放出部は、前記処理エリアに配置された前記処理対象植物の上方位置から前記処理対象植物に向けて前記発酵生成物を放出させるように構成されたことを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、有機物を含んだ液体廃棄物を発酵装置で発酵させることにより、処理対象植物を効率良く発酵、乾燥させるために有用な微生物が多く含まれた発酵生成物を作り出すことができる。そして、処理エリアに配置された大量の処理対象植物の上方位置から当該発酵生成物を放出させることにより、重力の作用により処理対象植物の上方から下方へ発酵生成物を通過させる間に、処理対象植物全体に発酵生成物を浸透させることができる。これにより、有機物を含んだ液体廃棄物を大量に発酵、乾燥でき、ランニングコストが安く、設備投資を抑えた処理システムを提供することができる。
【0008】
第2の発明では、第1の発明において、前記処理エリアは、前記処理対象植物を配置する収集床部を含み、前記収集床部は、前記処理対象植物を通過した後に前記処理対象植物から下方に落ちた前記発酵生成物の濾過液を集めて貯留槽に貯めることを特徴とする。
【0009】
第2の発明によれば、発酵生成物の液状部分は、処理対象植物を通過した後、処理対象物から下方に落ちる。これにより、収集床部は、処理対象植物の乾燥を促進させることができる。また、処理対象植物は、上方から下方へ発酵生成物を通過させる間に、発酵生成物に存在する固体部分を処理対象植物内に引っ掛けて残すことができる。そして、発酵生成物が濾過されることによって得られた濾過液は、収集床部により貯留槽の方へ集められる。これにより、濾過液は、当該貯留槽に貯めることができる。貯留槽に貯められた濾過液を、再度、処理対象植物に、上方から下方に向かって流すことにより、発酵、乾燥、消滅させることができる。
【0010】
第3の発明では、第2の発明において、前記収集床部は、第1の多角形傾斜平面部と第2の多角形傾斜平面部とを有し、前記第1の多角形傾斜平面部は、前記第2の多角形傾斜平面部と共有する共有辺部を有する。前記共有辺部は水平面に対して傾斜した傾斜状であり、前記共有辺部の一端部は、前記収集床部の最低部となるように形成され、前記最低部の近傍に前記貯留槽が配置されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明によれば、収集床部上のいずれかの場所に処理対象植物を配置すれば、処理対象植物の上方から下方へ通過した濾過液は、第1の多角形傾斜平面部と第2の多角形傾斜平面部との共有辺部に一旦集められる。そして、共有辺部に集められた濾過液は、収集床部の最低部にスムーズに導かれ、貯留槽に貯留することができる。これにより、収集床部上の任意の位置に処理対象植物を配置した場合であっても、処理対象植物の乾燥が促進される。これにより、処理エリア内における処理対象植物の配置場所の自由度が高められる。また、貯留槽に貯められた濾過液を、再度、処理対象植物に、上方から下方に向かって流すことにより、発酵、乾燥、消滅させることができる。
【0012】
第4の発明では、第2または第3の発明において、前記貯留槽に貯めた前記濾過液を前記処理対象植物の上方位置の散布ノズルから前記処理対象植物に向けて撒くためのリピート散布流路を備え、前記リピート散布流路の途中部には、前記貯留槽から前記散布ノズルまで前記濾過液を送るための送液ポンプが設けられていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明によれば、濾過液を繰り返し処理対象植物の上方から下方に通過させることができるので、濾過液に含まれる微生物を処理対象植物により多く付着させることができ、また処理対象植物の発酵、乾燥速度を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る有機物を含む液体廃棄物の処理システムによれば、自然に、有機物を含む液体廃棄物を大量に乾燥、乾燥させることができるので、ランニングコストが安く、設備投資を抑えた有機物を含む液体廃棄物の処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機物を含む液体廃棄物の処理システムの全体像を示す概略平面図である。
【
図2】本実施形態の有機物を含む液体廃棄物の処理システムの全体構成図である。
【
図3】本実施形態の有機物を含む液体廃棄物の処理システムに備える発酵装置の全体概略構成を模式的に示す図である。
【
図4】本実施形態の有機物を含む液体廃棄物の処理システムにおいて処理対象植物が処理された後の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る有機物を含む液体廃棄物の処理システム1の全体像を示す概略平面図である。
図2は、本実施形態の有機物を含む液体廃棄物の処理システム1の全体構成図である。
図3は、本実施形態の有機物を含む液体廃棄物の処理システム1に備える発酵装置2の全体概略構成を模式的に示す図である。
図4は、本実施形態の有機物を含む液体廃棄物の処理システム1において処理対象植物Pが処理された後の状態を示す説明図である。
図1~
図3において、本実施形態の有機物を含む液体廃棄物の処理システム1は、発酵装置2と、処理エリア3と、ボイラ4と、クーリングタワー5と、発酵原料投入ホッパ6と、液状発酵原料投入槽7と、移送部10と、放出部51と、を備えている。
【0018】
発酵原料投入ホッパ6は、酪乳牛などの家畜の糞尿混合物または有機汚泥を発酵原料として一時的に貯留する場所である。発酵原料投入ホッパ6には、例えば家畜舎から糞尿混合物を運んできたダンプトラックTによって、糞尿混合物が投入される。対象となる家畜は、例えば、酪乳牛、豚、羊、鶏等であるが、特に限定されない。発酵原料投入ホッパ6は、破砕スクリュ6aを有している。破砕スクリュ6aは、投入された糞尿混合物のうち、大きな塊となった部分を破砕して細かくする。
【0019】
発酵原料投入ホッパ6と発酵装置2とは、投入側第1コンベヤ11、投入側第2コンベヤ12、投入側第3コンベヤ13および投入側第4コンベヤ14によって接続されている。
投入側第1コンベヤ11、投入側第2コンベヤ12、投入側第3コンベヤ13および投入側第4コンベヤ14は、移送部10の一部である。これらの複数の投入側コンベヤにより、スラリー状の発酵原料が、発酵原料投入ホッパ6から発酵装置2へ供給される。各投入側コンベヤは平面視で直線的に発酵原料を搬送する。投入側コンベヤは、発酵原料投入ホッパ6に近い順から投入側第1コンベヤ11、投入側第2コンベヤ12、投入側第3コンベヤ13および投入側第4コンベヤ14の順に、長手方向が直交するように組み合わされている。
【0020】
液状発酵原料投入槽7は、例えば酪牛乳などの家畜の糞尿混合物のうち特に固形分が少ない尿を、液状発酵原料として一時的に貯留する。液状発酵原料投入槽7と発酵装置2とは、液状発酵原料送液管9によって接続されている。液状発酵原料送液管9の途中部には、原料送液ポンプ8が設けられている。原料送液ポンプ8の作動により、液状発酵原料が、液状発酵原料投入槽7から発酵装置2へ供給される。
【0021】
発酵装置2は、微生物を利用して発酵原料の有機成分を分解させる装置である。発酵装置2は、
図3に示すように、密閉容器21と攪拌装置22と凝縮部23とを有している。
【0022】
密閉容器21は、例えば略円筒状の耐圧タンクを用いて構成される。密閉容器21は、家畜の糞尿混合物または有機汚泥である発酵原料を収容部21dに収容する。また、密閉容器21の収容部21dでは、後述する収容部減圧部による減圧と後述する収容部加熱部による加熱が行われる。密閉容器21は、収容部21dを大気圧以下に保持するように気密に形成されている。密閉容器21の周壁部には、加熱ジャケット24が設けられている。加熱ジャケット24は、図示省略の加熱用蒸気供給路によってボイラ4と接続されている。ボイラ4で発生した加熱用蒸気は、加熱ジャケット24に供給される。上記収容部加熱部は、加熱ジャケット24およびボイラ4によって構成されている。
【0023】
密閉容器21の上部には、発酵原料投入口21aが設けられている。この発酵原料投入口21aは、投入側第4コンベヤ14と接続されている。発酵原料投入口21aには、発酵原料投入ホッパ6または液状発酵原料投入槽7から送られてきた発酵原料が投入される。また、密閉容器21の上部には、案内部21cが突設されている。この案内部21cは、密閉容器21の長手方向の一端部側および他端部側に各々設けられている。案内部21cは、加熱された発酵原料から発生する蒸気を凝縮部23へ案内する。また、密閉容器21の後壁下部には、発酵原料が発酵された後の発酵生成物Sを排出するための発酵生成物排出口21bが設けられている。
【0024】
攪拌装置22は、攪拌シャフト22aと攪拌板22bと電動モータ22cとを有している。攪拌シャフト22aは、密閉容器21の収容部21dにおいて密閉容器21の長手方向に延在している。攪拌部材としての攪拌板22bは、攪拌シャフト22aの軸方向に離間して複数個攪拌シャフト22aに設けられている。電動モータ22cは、攪拌シャフト22aを所定の回転速度で回転駆動させる。
【0025】
発酵原料が発酵原料投入口21aから投入されると、発酵原料は、攪拌シャフト22aおよび攪拌板22bの回転駆動によって、攪拌されながら、加熱ジャケット24に供給された加熱用蒸気の熱によって加熱される。また、発酵原料は、加熱および攪拌されながら密閉容器21の長手方向で発酵生成物排出口21bの方に送られる。
【0026】
密閉容器21内の発酵原料には、微生物が添加される。添加する微生物としては、複数種類の土着菌をベースとし、これを予め培養した複合有効微生物群が好ましく、通称、SHIMOSE 1/2/3群がコロニーの中心になる。なお、SHIMOSE 1は、FERM BP-7504(経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1-3)に、2003年3月14日に国際寄託されたもの)である。SHIMOSE 2は、FERM BP-7505(SHIMOSE1と同様に国際寄託されたもの)であり、塩に耐性を有するピチアファリノサ(Pichiafarinosa)に属する微生物である。SHIMOSE 3は、FERM BP-7506(SHIMOSE 1と同様に国際寄託されたもの)であり、スタフィロコッカス(Staphylococcus)に属する微生物である。
【0027】
凝縮部23は、密閉容器21の案内部21cと接続管26により接続されている。凝縮部23は、一対のヘッド23aによって支持された複数の冷却管23bを備えている。冷却管23bの冷却水は、案内部21cから凝縮部23へ入った蒸気と熱交換することにより、高温になる。高温になった冷却管23bの冷却水は、クーリングタワー5において冷却される。冷却管23bとクーリングタワー5との間には、冷却水通路5aが設けられている。
【0028】
クーリングタワー5は、受水槽5b、汲み上げポンプ5c、ノズル5d、流下部5e、および、ファン5fを有している。受水槽5bには、凝縮部23から排出された冷却水が流入する。汲み上げポンプ5cは、受水槽5bから冷却水を汲み上げる。ノズル5dは、汲み上げられた冷却水を流下部5eに向けて噴射する。ファン5fは、冷却水が流下部5eを流下する間、流下部5eに向けて送風を行う。冷却水は、ファン5fからの送風を受けて温度が低下する。冷却水は、流下部5eを流下した後、再び受水槽5bに流入する。
【0029】
クーリングタワー5で冷却された冷却水は、冷却水ポンプ5gによって送水され、冷却水通路5aを通って凝縮部23に戻される。凝縮部23に戻された冷却水は、複数の冷却管23b内を流通する間に。発酵原料の蒸気と熱交換して温度が上昇する。温度上昇した冷却水は、冷却水通路5aを通って再びクーリングタワー5に流入する。つまり、冷却水は凝縮部23とクーリングタワー5との間に設けられた冷却水通路5aを循環する。
【0030】
加熱された発酵原料から発生する蒸気は凝縮部23において凝縮する。クーリングタワー5では、上述のように循環する冷却水の他に、凝縮部23において凝縮した凝縮水も注水される。具体的に説明すると、凝縮部23には、連通路28が接続されている。凝縮部23において生成した凝縮水は、凝縮部23および連通路28の内部に滞留する。連通路28には、真空ポンプ25が接続されている。この真空ポンプ25が密閉容器21の収容部21dを減圧する上述の収容部減圧部として機能する。このため、真空ポンプ25は、連通路28を介して凝縮部23から空気および凝縮水を吸い出すように作動する。また、真空ポンプ25は、案内部21cおよび接続管26を介して収容部21dの空気および蒸気を凝縮部23に導く。真空ポンプ25によって凝縮部23から吸い出された凝縮水は、図示省略の導水管によってクーリングタワー5の受水槽5bに導かれる。
【0031】
クーリングタワー5の受水槽5bに導かれた凝縮水は、冷却水と混ざり合って冷却される。なお、凝縮水には、収容部21dの発酵原料に添加されたものと同じ微生物が含まれているので、凝縮水に含まれる臭気成分等は微生物によって分解される。このため、凝縮水に含まれる臭気は密閉容器21の外部へ発散しない。
【0032】
発酵装置2は、上述のように構成されている。密閉容器21の発酵原料投入口21aから投入された発酵原料は、ボイラ4の加熱用蒸気によって加熱された加熱ジャケット24によって加熱される。また、真空ポンプ25の駆動によって密閉容器21の収容部21dは減圧され、減圧の効果によって水の沸点は低下する。これにより、収容部21dは50~60℃に維持されつつ、発酵原料に含まれる水分が沸騰されるようになる。また、発酵原料の発酵は、攪拌装置22の攪拌板22bで攪拌されることにより、促進される。
【0033】
発酵原料が発酵された後の発酵生成物Sは、
図2に示すように、麦稈およびおが粉などの処理対象植物Pに散布すると、前記処理対象植物Pは発酵、乾燥して敷料として使用される。発酵生成物Sは、微生物が豊富に含まれたスラリー状となっている。発酵生成物Sは、発酵原料の状態と比較して、麦稈およびおが粉などの発酵を促進させることができる。処理対象植物Pとしては、例えば麦稈およびおが粉があげられるが、これに限定されない。対象植物Pは、処理エリア3に配置される。
【0034】
処理エリア3は、
図1に示すように、平面視長方形状のエリアである。処理エリア3は、上記発酵装置2、ボイラ4、クーリングタワー5、発酵原料投入ホッパ6等が設けられた平面視略正方形状の装置エリアEの隣に設けられている。処理エリア3は、平面視長方形の1つの短辺側において装置エリアEに接している。処理エリア3は、平面視長方形状の収集床部31を有している。収集床部31は、第1の多角形傾斜平面部32と第2の多角形傾斜平面部33とを有している。これらの多角形傾斜平面部32,33は、何れも水平面に対して傾斜した多角形の平面である。本実施形態における第1の多角形傾斜平面部32と第2の多角形傾斜平面部33とは、それぞれ三角形状の平面である。なお、第1の多角形傾斜平面部32および第2の多角形傾斜平面部33は、三角形状に限らず、四角形以上の多角形であってもよい。第1の多角形傾斜平面部32は、第2の多角形傾斜平面部33と共有する共有辺部31aを有している。この共有辺部31aは水平面に対して傾斜した傾斜状になっている。
【0035】
共有辺部31aは、平面視において長方形状の収集床部31の対角線上に形成されている。共有辺部31aは、装置エリアEに近い方の一端部が、収集床部31の最低部となり、装置エリアEから遠い方の他端部が、収集床部31の最高部となるように形成されている。第1の多角形傾斜平面部32と第2の多角形傾斜平面部33とは、それぞれ共有辺部31aに向かって下方に傾斜する形状となっている。なお、前記収集床部31の最高部とは、収集床部31の周辺に形成され、装置エリアEの床部と同じ高さである。
【0036】
収集床部31には、平面視直線状の排出側最終コンベヤ17が配置されている。排出側最終コンベヤ17は、平面視長方形状の収集床部31の長辺と平行に配置されている。排出側最終コンベヤ17は、装置エリアEから処理エリア3に入り、装置エリアEと反対側の処理エリア3の端部近くまで延在している。排出側最終コンベヤ17は、図示省略の複数の柱部によって、収集床部31から所定の高さ位置となるように配置されている。排出側最終コンベヤ17と装置エリアEの発酵装置2とは、平面視直線状の排出側第1コンベヤ15および平面視直線状の排出側第2コンベヤ16により接続されている。排出側第1コンベヤ15、排出側第2コンベヤ16および排出側最終コンベヤ17は、移送部10の一部である。排出側第1コンベヤ15、排出側第2コンベヤ16および排出側最終コンベヤ17は、発酵原料が発酵された後に発酵装置2から排出される発酵生成物Sを、処理エリア3へ移送する。
【0037】
排出側最終コンベヤ17には、
図1および
図2に示すように、所定の間隔をあけて複数(本実施形態では4個)の放出部51が取り付けられている。放出部51は、例えば可撓性のホースから形成されている。放出部51は、排出側最終コンベヤ17から下方に垂れ下がるように設けられている。放出部51は、排出側最終コンベヤ17から発酵生成物Sを放出させる。処理エリア3の収集床部31には、処理対象植物Pが排出側最終コンベヤ17に沿って配置される。発酵生成物Sは、収集床部31に配置された処理対象植物Pの上方位置から処理対象植物Pに向けて放出される。
【0038】
収集床部31の最低部の近傍には、貯留槽41が配置されている。収集床部31は、処理対象植物Pを通過した後に処理対象植物Pから下方に落ちた発酵生成物Sの濾過液Lを集めて貯留槽41に貯める。
【0039】
本実施形態に係る有機物を含む液体廃棄物の処理システム1は、リピート散布流路35を備えている。リピート散布流路35は、貯留槽41に貯めた濾過液Lを処理対象植物Pの上方位置から処理対象植物Pに向けて繰り返し撒くために設けられている。具体的には、リピート散布流路35は、装置エリアEと処理エリア3との境界に沿って延在する第1配管36と、第1配管36から分岐される第2配管37、第3配管38および第4配管39とを有している。第2配管37、第3配管38および第4配管39は、それぞれ、平面視長方形状の収集床部31の長辺と平行、かつ、収集床部31から所定の高さ位置に配置されている。また、第2配管37、第3配管38および第4配管39は、それぞれ、装置エリアEと反対側の処理エリア3の端部近くまで延在している。また、第2配管37、第3配管38および第4配管39には、それぞれ、所定の間隔をあけて複数の散布ノズル35aが設けられている。
【0040】
リピート散布流路35の途中部には、貯留槽41から散布ノズル35aまで濾過液Lを送るための送液ポンプ42が設けられている。貯留槽41に貯めた濾過液Lは、処理対象植物Pの上方位置の散布ノズル35aから処理対象植物Pに向けて繰り返し撒かれる。
【0041】
本実施形態の処理エリア3には、1本の排出側最終コンベヤ17と、第1配管36から3本に分岐された第2配管37、第3配管38および第4配管39とが配置されている。処理対象植物Pは、処理エリア3において、排出側最終コンベヤ17、第2配管37、第3配管38および第4配管39のそれぞれに沿って並べて配置される。この処理対象植物Pの配置は、ホイールローダHを使用して行われる。
【0042】
処理エリア3に新しい処理対象植物Pが入ると、ホイールローダHは、最初に新しい処理対象植物Pを排出側最終コンベヤ17に沿って並べる。そして、スラリー状の発酵生成物Sを、処理対象植物Pの上方位置から処理対象植物Pに向けて放出させる。ホイールローダHは、発酵生成物Sを処理対象植物Pに十分に浸透させた後、処理対象植物Pを、第2配管37、第3配管38および第4配管39のいずれかに沿うように並べ替える。そして、処理対象植物Pには、発酵生成物Sの濾過液Lが、上方位置の散布ノズル35aから繰り返し撒かれる。処理対象植物Pに対して発酵生成物Sの濾過液Lを繰り返し撒く時間は、所定の第1時間に設定される。そして、所定時間経過後は、所定の第2時間の乾燥時間を設ける。さらに、処理対象植物Pに対して濾過液Lを撒く第1時間と処理対象植物Pを乾燥させる第2時間とは、繰り返し交互に行われる。この繰り返し処理により、処理対象植物Pは、効率良く発酵が行われる。最終的には、処理対象植物Pは、
図4に示すように、処理前の固さのある状態から、柔らかく、かつ、きめ細かい良質な敷料Bへと変化する。
【0043】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、上述した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 有機物を含む液体廃棄物の処理システム
2 発酵装置
3 処理エリア
10 移送部
21 密閉容器
21d 収容部
22 攪拌装置
22b 攪拌板(攪拌部材)
31 収集床部
31a 共有辺部
32 第1の多角形傾斜平面部
33 第2の多角形傾斜平面部
35 リピート散布流路
35a 散布ノズル
41 貯留槽
42 送液ポンプ
51 放出部
L 濾過液
S 発酵生成物
P 処理対象植物