(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054983
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ポンプ用インペラ、それを用いたポンプ及びポンプ用インペラのバランス調整方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/22 20060101AFI20240411BHJP
F04D 7/04 20060101ALI20240411BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20240411BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F04D29/22 D
F04D7/04 J
F04D29/60 E
F04D29/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161497
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100192692
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 智矢
(72)【発明者】
【氏名】岩間 海斗
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AA27
3H130AB13
3H130AB23
3H130AB46
3H130AC07
3H130BA13C
3H130BA74C
3H130BA95C
3H130CB01
3H130CB05
3H130CB09
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130EB01C
3H130ED01C
3H130ED02C
(57)【要約】
【課題】インペラを加工する場合であっても適切にバランス調整可能なポンプ用インペラ、それを用いたポンプ及びポンプ用インペラのバランス調整方法を提供することである。
【解決手段】ポンプ用インペラ100は、略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられた主板110と、主板110のうち一面側とは反対側である他面側において、当該主板110の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成された1つの羽根120と、を備え、主板110の外周を形成する側面の少なくとも一部に溝130が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられた主板と、
前記主板のうち前記一面側とは反対側である他面側において、当該主板の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成された1つの羽根と、を備え、
前記主板の外周を形成する側面の少なくとも一部に溝が形成されている、
ポンプ用インペラ。
【請求項2】
略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられた主板と、
前記主板のうち前記一面側とは反対側である他面側において、当該主板の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成された1つの羽根と、
略円盤形状であって、前記1つの羽根を介して前記主板に対向するように配置された側板と、を備え、
前記主板及び前記側板の外周を形成する側面において、少なくともいずれかの側面のうち少なくとも一部に溝が形成されている、
ポンプ用インペラ。
【請求項3】
前記溝は、前記主板及び前記側板の外径が大きい方の側面に形成されている、
請求項2に記載のポンプ用インペラ。
【請求項4】
前記側面において、前記溝は、前記1つの羽根の先端位置である羽根の最大外径部から±90°の範囲の少なくとも一部に形成されている、
請求項1又は2に記載のポンプ用インペラ。
【請求項5】
前記側面において、前記溝は、前記1つの羽根の先端位置である羽根の最大外径部を含む範囲に形成されている、
請求項4に記載のポンプ用インペラ。
【請求項6】
モータと、
前記モータを駆動させることにより回転する回転軸と、
前記回転軸の回転に伴って回転することにより、吸込口から吐出し口に向けた流れを発生させる請求項1又は2に記載のポンプ用インペラと、を備える、
ポンプ。
【請求項7】
略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられた主板と、前記主板のうち前記一面側とは反対側である他面側において、当該主板の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成された1つの羽根と、を備え、前記主板の外周を形成する側面の少なくとも一部に溝が形成されている、ポンプ用インペラについて、
前記側面において、前記1つの羽根の先端位置である羽根の最大外径部から、当該羽根とともに前記主板の側面を削り、
さらに、前記ポンプ用インペラの少なくとも一部を削る、又はウエイトを付加する、
ポンプ用インペラのバランス調整方法。
【請求項8】
略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられた主板と、前記主板のうち前記一面側とは反対側である他面側において、当該主板の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成された1つの羽根と、略円盤形状であって、前記1つの羽根を介して前記主板に対向するように配置された側板と、を備え、前記主板及び前記側板の外周を形成する側面において、少なくともいずれかの側面のうち少なくとも一部に溝が形成されている、ポンプ用インペラについて、
前記側面において、前記1つの羽根の先端位置である羽根の最大外径部から、当該羽根とともに前記主板及び前記側板の少なくともいずれかの側面を削り、
さらに、前記ポンプ用インペラの少なくとも一部を削る、又はウエイトを付加する、
ポンプ用インペラのバランス調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ用インペラ、それを用いたポンプ及びポンプ用インペラのバランス調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、汚物用ポンプでは、ポンプに異物を詰まらせないための構造として、流路(通過径)を大きく確保する必要があるため、汚物用ポンプには、略渦巻き状に形成された一枚羽根を有するインペラが用いられる。当該インペラの羽根は、回転軸に対して非対称形状であるため、当該インペラの一部を削ったり、ウエイトを付加したりして、バランス調整がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、本体部の外周に円周縁状のフランジ部を設け、当該フランジ部の内周側にバランスブロックを取り付けることにより、羽根車のバランス調整を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インペラは、使用されるポンプに応じて、所望の揚程や流用を得るために外径を削って加工する場合がある。適切にバランス調整がされていたとしても、インペラを加工することにより、そのバランスが崩れ、さらにバランス調整を行う必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、インペラを加工する場合であっても適切にバランス調整可能なポンプ用インペラ、それを用いたポンプ及びポンプ用インペラのバランス調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るポンプ用インペラは、略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられた主板と、主板のうち一面側とは反対側である他面側において、当該主板の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成された1つの羽根と、を備え、主板の外周を形成する側面の少なくとも一部に溝が形成されている。
【0008】
本発明の他の一態様に係るポンプ用インペラは、略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられた主板と、主板のうち一面側とは反対側である他面側において、当該主板の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成された1つの羽根と、略円盤形状であって、1つの羽根を介して主板に対向するように配置された側板と、を備え、主板及び側板の外周を形成する側面において、少なくともいずれかの側面のうち少なくとも一部に溝が形成されている。
【0009】
上記態様において、溝は、主板及び側板の外径が大きい方の側面に形成されていてもよい。
【0010】
上記態様において、側面において、溝は、1つの羽根の先端位置である羽根の最大外径部から±90°の範囲の少なくとも一部に形成されていてもよい。
【0011】
上記態様において、側面において、溝は、1つの羽根の先端位置である羽根の最大外径部を含む範囲に形成されていてもよい。
【0012】
本発明の一態様に係るポンプは、モータと、モータを駆動させることにより回転する回転軸と、回転軸の回転に伴って回転することにより、吸込口から吐出し口に向けた流れを発生させる上述したポンプ用インペラと、を備える。
【0013】
本発明の一態様に係るポンプ用インペラのバランス調整方法は、略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられた主板と、主板のうち一面側とは反対側である他面側において、当該主板の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成された1つの羽根と、を備え、主板の外周を形成する側面の少なくとも一部に溝が形成されている、ポンプ用インペラについて、側面において、1つの羽根の先端位置である羽根の最大外径部から、当該羽根とともに主板の側面を削り、さらに、ポンプ用インペラの少なくとも一部を削る、又はウエイトを付加する。
【0014】
本発明の他の一態様に係るポンプ用インペラのバランス調整方法は、略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられた主板と、主板のうち一面側とは反対側である他面側において、当該主板の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成された1つの羽根と、略円盤形状であって、1つの羽根を介して主板に対向するように配置された側板と、を備え、主板及び側板の外周を形成する側面において、少なくともいずれかの側面のうち少なくとも一部に溝が形成されている、ポンプ用インペラについて、側面において、1つの羽根の先端位置である羽根の最大外径部から、当該羽根とともに主板及び側板の少なくともいずれかの側面を削り、さらに、ポンプ用インペラの少なくとも一部を削る、又はウエイトを付加する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インペラを加工する場合であっても適切にバランス調整可能なポンプ用インペラ、それを用いたポンプ及びポンプ用インペラのバランス調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100の構成を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100における羽根120の形状を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、羽根120が配置されている他面側から見た底面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、主板110に形成される溝130の位置及び範囲を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、主板110に形成された溝130の一例を示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、主板110の外径を削る様子を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100の機械バランスについて、主板110と羽根120とを分けて説明するための図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、羽根120の先端123を含まない範囲に溝131が形成されている一例を示す図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、複数の溝132が形成されている一例を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るポンプ用インペラ200の構成を示す外観斜視図である。
【
図11】主板と側板との外径が同一であるポンプ用インペラ300の構成を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な各実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する各実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0018】
<第1実施形態>
[ポンプ用インペラの構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100の構成を示す外観斜視図である。
図1に示されるように、ポンプ用インペラ100は、主板110と、羽根120とを備え、所謂、オープン型インペラであり、主板110には、溝130が形成されている。なお、例えば、ポンプ用インペラ100は、一般的に、機械バランスが取れているものであって、ここでは、主板110の外周を形成する側面の少なくとも一部に溝130が形成されている状態で、機械バランスが取れているものとする。
【0019】
主板110は、略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられており、主板110の外周を形成する側面の一部には、溝130が形成されている。
【0020】
羽根120は、主板110のうち一面側とは反対側である他面側において、当該主板110の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成されている。
【0021】
図2は、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100における羽根120の形状を示す斜視図である。
図2では、主板110を、羽根120が配置されている他面側から見た斜視図を示しており、
図2に示されるように、羽根120は、主板110の他面側において、当該主板110の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成されている。そして、羽根120の先端123は、主板110の外周を形成する側面に到達している。
【0022】
より具体的には、羽根120について、ポンプ用インペラ100が回転することにより、当該略渦巻き状に形成された羽根120の表裏は、圧力が上昇する側である圧力面121と、圧力が低下する側である負圧面122とに区別される。ここで、圧力面121は、羽根120のうち、主板110の外周側の壁面であり、負圧面122は、羽根120のうち、主板110の中心側の壁面である。
【0023】
そして、圧力面121の最大外径部は、主板110の外周を形成する側面に到達している。換言すれば、羽根120の先端123は、当該羽根120の最大外径であり、主板110の外径と一致している。
【0024】
図3は、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、羽根120が配置されている他面側から見た底面図である。
図3に示されるように、羽根120の先端123(圧力面121の最大外径部)は、主板110の外径と一致している。
【0025】
図1に戻り、溝130は、主板110の外周を形成する側面の少なくとも一部に形成されている。以下に、溝130が形成される位置及び範囲について、詳しく説明する。
【0026】
[溝の位置及び範囲]
図4は、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、主板110に形成される溝130の位置及び範囲を示す図である。
図4に示されるように、溝130は、主板110の側面に形成され、そのうち、羽根120の先端123である羽根120の最大外径部から±90°の範囲に形成されるとよい。
【0027】
図5は、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、主板110に形成された溝130の一例を示す図である。
図5では、主板110をハブが設けられている一面側から見た平面図を示しており、
図5に示されるように、羽根120の先端123を含む範囲において溝130が形成されている。
【0028】
例えば、溝130は、主板110の側面において、羽根120の先端123を含む範囲であって、当該羽根120の先端123から羽根120が形成されている側に、主板110の側面に沿って所定の範囲(例えば、羽根120の先端123から60°等、90°以内)だけ形成されている。ポンプ用インペラ100は、主板110の側面の一部に、このように溝130が形成されている状態で、機械バランスが取れている。溝130は、機械バランスが取れるように形成されるとよいが、例えば、幅(主板110の径方向のサイズ)については、主板110の半径に対して2~4%程度の大きさであって、厚さ(主板110の厚み方向のサイズ)については、主板110の厚みに対して40~70%程度の大きさであるとよい。
【0029】
そして、当該ポンプ用インペラ100は、使用されるポンプに応じて、所望の揚程や流用を得るために外径を削って加工して用いられる場合がある。
【0030】
図6は、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、主板110の外径を削る様子を模式的に示す図である。
図6に示されるように、例えば、主板110の外径が小さくなるように、主板110は、切削線111に沿って削られるものとし、主板110の側面が削られる際には、溝130が形成されている範囲も削られる。
【0031】
この時、主板110の側面が削られるが、羽根120の最大外径は主板110の外径と一致しているため、羽根120も主板110の側面とともに、当該羽根120の先端123(最大外径部)から中央に向かって徐々に削られることになる。
【0032】
ここで、主板110の側面を切削線111に沿って削った場合、羽根120が存在する領域(例えば、
図6で示されるL側領域)と、羽根120が存在しない領域(例えば、
図6で示されるR側領域)とで、ポンプ用インペラ100の機械バランスが崩れる。ポンプ用インペラ100の機械バランスが取れている状態から、羽根120が削られる領域と削られない領域とが存在するため、一般的には、羽根120が削られた領域側にウエイトを付加したり、及び/又は羽根120が削られなかった領域側の一部を削ったりすることにより、ポンプ用インペラ100の機械バランスを調整する。
【0033】
本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100では、
図6に示されるように、羽根120が削られる領域(例えば、L側領域)と削られない領域(例えば、R側領域)とが存在するものの、L側領域における主板110の側面には、溝130が形成されている。
【0034】
すなわち、ポンプ用インペラ100は、主板110の側面が削られる前から、溝130の分だけ予め側面が削られた状態で、ポンプ用インペラ100の機械バランスが取れるように設定されている。この状態から、主板110の側面を切削線111に沿って削った場合、羽根120が削られる領域と削られない領域とが存在するため、ポンプ用インペラ100の機械バランスが崩れるものの、予め側面が削られている溝130の分だけ、主板110の側面が削られる量が少なくて済んでいる。
【0035】
つまり、ポンプ用インペラ100は、主板110の側面に溝130が形成されていない場合と比べて、崩れる機械バランスは小さい。その結果、ポンプ用インペラ100の機械バランスを調整するために、羽根120が削られた領域側(例えば、L側領域)にウエイトを付加したり、及び/又は羽根120が削られなかった領域側(例えば、R側領域)の一部を削ったりする量が小さくて済み、その調整に費やす作業時間を短縮することができる。
【0036】
さらに、ポンプ用インペラ100の機械バランスについて詳しく説明すると、例えば、
図7に示されるようにも考えることができる。
図7は、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100の機械バランスについて、主板110と羽根120とを分けて説明するための図である。
【0037】
図7(A)に示されるように、主板110の側面(外径)は、切削線111に沿って削られて、その際、溝130が形成されている範囲も削られる。この時、主板110のうち、L側領域には予め溝130が形成されている分、R側領域の方がL側領域に比べて多く削られることになるため、主板110の重心は、L側領域の方向に移動する。
【0038】
図7(B)に示されるように、羽根120は、切削線111に基づいてその先端が削られる。この時、羽根120のうち、L側領域の先端が削られて、それ以外の部分(R側領域や中央部など)は削られないため、羽根120の重心は、R側領域の方向に移動する。
【0039】
このように、ポンプ用インペラ100において、所望の揚程や流用を得るために外径を削って加工して用いられる場合、主板110と羽根120との重心の移動方向が略反対方向となり、ポンプ用インペラ100全体として、機械バランスが(大きく)崩れないように形成されている。その結果、上述したように、ポンプ用インペラ100の機械バランスの調整に費やす作業時間を短縮することができる。
【0040】
以上のように、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100によれば、主板110には、当該主板110の外周を形成する側面の少なくとも一部に、例えば、羽根120の先端123近傍に溝130が形成されている。所望の揚程や流用を得るためにポンプ用インペラ100を加工する場合であっても、溝130が形成された範囲を含む主板110の側面が削られるため、崩れる機械バランスが小さくて済み、その後、適切にバランス調整をすることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、溝130は、主板110の側面において、羽根120の先端123である羽根120の最大外径部を含む範囲に形成されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、羽根120の先端123を含まない範囲に形成されてもよいし、また、溝130は、複数形成されてもよい。
【0042】
図8は、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、羽根120の先端123を含まない範囲に溝131が形成されている一例を示す図である。
図8に示されるように、溝131は、主板110の側面において、羽根120の先端123を含まず、当該羽根120の先端123から羽根120が形成されている側に、主板110の側面に沿って所定の範囲(例えば、先端123から45°程度)だけ形成されている。
【0043】
図9は、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100において、複数の溝132が形成されている一例を示す図である。
図9に示されるように、溝131は、主板110の側面において、羽根120の先端123を含まず、当該羽根120の先端123からそれぞれ両側に、主板110の側面に沿って所定の範囲(先端123から90°以内)だけ形成されている。
【0044】
上述の
図8及び
図9のように、主板110の側面において溝131,132を形成すれば、主板110の側面が削られる前から、溝131,132の分だけ予め側面が削られた状態で、ポンプ用インペラ100の機械バランスが取れるように設定されている。この状態から、主板110の外径を削った場合、崩れる機械バランスは小さい。その結果、ポンプ用インペラ100の機械バランスを調整するために、羽根120が削られた領域にウエイトを付加したり、及び/又は羽根120が削られなかった領域の一部を削ったりする量が小さくて済み、その調整に費やす作業時間を短縮することができる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態では、クローズ型インペラを例に挙げて説明する。本実施形態に係るポンプ用インペラは、本発明の第1実施形態に係るポンプ用インペラ100と比べて側板を有し、主板と側板とで羽根を覆うクローズ型インペラである。本実施形態では、本発明の第1実施形態と共通する事柄については、その記述を省略又は簡略化し、主に、オープン型インペラとクローズ型インペラとの相違による特徴について、説明する。
【0046】
図10は、本発明の第2実施形態に係るポンプ用インペラ200の構成を示す外観斜視図である。
図10に示されるように、ポンプ用インペラ200は、主板210と、羽根220と、側板230とを備え、所謂、クローズ型インペラであり、側板230には、溝240が形成されている。なお、例えば、ポンプ用インペラ200は、一般的に、機械バランスが取れているものであって、ここでは、側板230の外周を形成する側面の少なくとも一部に溝240が形成されている状態で、機械バランスが取れているものとする。
【0047】
主板210は、略円盤形状であって、軸方向の一面側の中央にハブが設けられている。
【0048】
羽根220は、主板210のうち一面側とは反対側である他面側において、当該主板210及び側板230の中央から外周方向に向かって略渦巻き状に形成されている。
【0049】
側板230は、略円盤形状であって、羽根220を介して主板210に対向するように配置されている。ここでは、側板230の外径は、主板210の外径よりも大きいため、羽根220の先端221は、側板230の外周を形成する側面に到達している。すなわち、羽根220の先端221は、当該羽根220の最大外径であり、側板230の外径と一致している。
【0050】
溝240は、側板230の外周を形成する側面の少なくとも一部に形成されている。溝240は、側板230の側面において、羽根220の先端221である羽根220の最大外径部から±90°の範囲に形成されるとよい。さらに、第1実施形態でも説明したように、溝240は、羽根220の先端221を含む範囲に形成されてもよいし、羽根220の先端221を含まない範囲に形成されてもよいし、また、複数形成されてもよい。
【0051】
そして、ポンプ用インペラ200の外径を削って加工して用いられる場合には、主板210よりも外径の大きい側板230の側面が削られることになるが、羽根220の最大外径は側板230の外径と一致しているため、羽根220も側板230の側面とともに、当該羽根220の先端221(最大外径部)から中央に向かって徐々に削られることになる。ここで、溝240が形成されている範囲も削られるため、第1実施形態でも説明したように、ポンプ用インペラ200の機械バランスが崩れるものの、予め側面が削られていると解釈できる溝240の分だけ、側板230の側面が削られる量が少なくて済む。つまり、崩れる機械バランスは小さく、さらに、その調整に費やす作業時間を短縮することができる。
【0052】
以上のように、本発明の第2実施形態に係るポンプ用インペラ200によれば、側板230には、当該側板230の外周を形成する側面の少なくとも一部に、例えば、羽根220の先端221近傍に溝240が形成されている。所望の揚程や流用を得るためにポンプ用インペラ200を加工する場合であっても、溝240が形成された範囲を含む側板230の側面が削られるため、崩れる機械バランスが小さくて済み、その後、適切にバランス調整をすることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、側板230の方が主板210よりも外径が大きいポンプ用インペラ200を一例として挙げたが、これに限定されるものではなく、主板210の方が側板230よりも外径が大きいポンプ用インペラであってもよい。この場合、溝240は、主板210の外周を形成する側面の少なくとも一部に形成され、羽根220の先端221は、主板210の外周を形成する側面に到達することになる。
【0054】
ここで、ポンプ用インペラ200の外径を削って加工して用いられる場合には、側板230よりも外径の大きい主板210の側面が削られ、溝240が形成されている範囲も削られることになり、上述と同様の作用効果を得られる。
【0055】
さらに、主板と側板との外径が同一であってもよい。
図11は、主板と側板との外径が同一であるポンプ用インペラ300の構成を示す外観斜視図である。
図11に示されるように、ポンプ用インペラ300は、主板310と、羽根320と、側板330とを備え、所謂、クローズ型インペラであり、主板310には、溝340が形成されており、側板330には、溝350が形成されている。なお、例えば、ポンプ用インペラ300は、一般的に、機械バランスが取れているものであって、ここでは、主板310の外周を形成する側面の少なくとも一部に溝340が形成されており、側板330の外周を形成する側面の少なくとも一部に溝350が形成されている状態で、機械バランスが取れているものとする。
【0056】
羽根320は、主板310及び側板330の中央から外周方向に向かって、第1実施形態で説明したように、略渦巻き状に形成されている。ここでは、主板310と側板330との外径が同一であるため、羽根320の先端321は、主板310及び側板330の外周を形成する側面に到達している。すなわち、羽根320の先端321は、当該羽根320の最大外径であり、主板310及び側板330の外径と一致している。
【0057】
そして、ポンプ用インペラ300の外径を削って加工して用いられる場合には、外径が同一である主板310及び側板330の側面が削られ、羽根320の最大外径は主板310及び側板330の外径と一致しているため、羽根320も主板310及び側板330の側面とともに、当該羽根320の先端321(最大外径部)から中央に向かって徐々に削られることになる。ここで、溝340,350が形成されている範囲も削られるため、第1実施形態でも説明したように、ポンプ用インペラ300の機械バランスが崩れるものの、予め側面が削られていると解釈できる溝340,350の分だけ、主板310及び側板330の側面が削られる量が少なくて済む。つまり、崩れる機械バランスは小さく、さらに、その調整に費やす作業時間を短縮することができる。
【0058】
このように、主板310と側板330との外径が同一であるポンプ用インペラ300であっても、それぞれの側面に溝340,350を形成することにより、上述と同様の作用効果を得られる。
【0059】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
100,200,300…ポンプ用インペラ、110,210、310…主板、111…切削線、120,220,320…羽根、121…圧力面、122…負圧面、123,221,321…先端、130,131,132,240,340,350…溝、230,330…側板