(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005499
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ステアリング装置およびステアリング制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240110BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105701
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC33
3D232CC34
3D232CC35
3D232CC38
3D232DA03
3D232DA63
3D232EB11
3D232EC22
3D232EC37
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB29
3D333CD56
3D333CD57
3D333CD58
3D333CD59
3D333CD60
3D333CE39
(57)【要約】
【課題】 2重故障の発生時、操舵制御部側の1つのマイクロプロセッサが正常動作するときには、操舵輪の操舵制御を継続可能なステアリング装置およびステアリング制御装置を提供する。
【解決手段】 第1舵角センサ8は、操舵制御部7の第1操舵アクチュエータ制御部7aに第1操作量信号を出力し、第2舵角センサ9は、操舵制御部7の第2操舵アクチュエータ制御部7bに第2操作量信号を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングの操作情報を検出する操舵入力機構と、操舵輪に舵角を付与する操舵機構と、を有するステアリング装置であって、
前記操舵入力機構は、
前記操舵操作入力部材と、
前記操舵操作入力部材の動作に基づいて第1操作量信号を出力する第1操作量センサと、
前記操舵操作入力部材の動作に基づいて第2操作量信号を出力する第2操作量センサと、
前記操舵操作入力部材の操作量に基づいて操作量信号を出力する操舵入力制御部と、
を有し、
前記操舵機構は、
前記操舵輪に接続される操舵部材と、
前記操舵部材にトルクを付与する第1操舵アクチュエータ部および第2操舵アクチュエータ部を有する操舵アクチュエータと、
前記操舵入力制御部からの操作量信号に基づいて前記操舵アクチュエータへ駆動信号を出力する操舵制御部と、
を有し、
前記操舵制御部は、
前記第1操舵アクチュエータ部を制御する第1操舵アクチュエータ制御部と、
前記第2操舵アクチュエータ部を制御する第2操舵アクチュエータ制御部と、
を有し、
前記第1操作量センサは、前記第1操舵アクチュエータ制御部に第1操作量信号を出力し、
前記第2操作量センサは、前記第2操舵アクチュエータ制御部に第2操作量信号を出力する、
ステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記第1操作量センサは、前記第1操舵アクチュエータ制御部から電力を供給され、
前記第2操作量センサは、前記第2操舵アクチュエータ制御部から電力を供給される、
ステアリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記操舵機構は、
前記操舵部材の操舵量を検出する第1操舵量センサと、
前記操舵部材の操舵量を検出する第2操舵量センサと、
を有し、
前記第1操舵量センサは、前記第1操舵アクチュエータ制御部に第1操舵量信号を出力し、
前記第2操舵量センサは、前記第2操舵アクチュエータ制御部に第2操舵量信号を出力する、
ステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のステアリング装置であって、
前記操舵制御部には、前記第1操舵アクチュエータ制御部および前記第2操舵アクチュエータ制御部のそれぞれに電力を供給する電力供給部が独立して設けられている、
ステアリング装置。
【請求項5】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記第1操作量センサおよび第2操作量センサは、前記操舵操作入力部材の回転量を検出する回転角センサからなる、
ステアリング装置。
【請求項6】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記操舵機構は、
前記操作量に応じたトルクを前記操舵操作入力部材に付加する反力アクチュエータと、
前記反力アクチュエータの回転量を検出する第1回転量センサと、
前記反力アクチュエータの回転量を検出する第2回転量センサと、
を有し、
前記操舵入力制御部は、
前記第1回転量センサが検出した前記反力アクチュエータの回転量に基づいて算出した第1操作量信号を前記第1操舵アクチュエータ制御部に出力し、
前記第2回転量センサが検出した前記反力アクチュエータの回転量に基づいて算出した第2操作量信号を前記第2操舵アクチュエータ制御部に出力する、
ステアリング装置。
【請求項7】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記第1操舵入力制御部および前記第2操舵入力制御部には、車両内の他の制御装置と通信するための車両通信部がそれぞれ設けられ、
前記第1操舵入力制御部および前記第1操舵アクチュエータ制御部間には、相互に通信するための第1専用通信線が設けられ、
前記第2操舵入力制御部および前記第2操舵アクチュエータ制御部間には、相互に通信するための第2専用通信線が設けられている、
ステアリング装置。
【請求項8】
請求項7に記載のステアリング装置であって、
前記操舵制御部は、
前記第1操舵量センサが出力する第1操舵量信号を、前記第1操舵アクチュエータ制御部から前記第1専用通信線を介して前記第1操舵入力制御部へ出力し、
前記第2操舵量センサが出力する第2操舵量信号を、前記第2操舵アクチュエータ制御部から前記第2専用通信線を介して前記第2操舵入力制御部へ出力する、
ステアリング装置。
【請求項9】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記操舵制御部は、前記操舵入力制御部が故障したときに、
前記第1操舵アクチュエータ制御部が、前記第1操作量センサから出力される第1操作量信号に基づいて前記第1操舵アクチュエータ部を制御し、
前記第2操舵アクチュエータ制御部が、前記第2操作量センサから出力される第2操作量信号に基づいて前記第2操舵アクチュエータ部を制御する、
ステアリング装置。
【請求項10】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記操舵制御部は、
前記操舵入力制御部が故障したときに、前記第1操舵アクチュエータ部および前記第2操舵アクチュエータ部を駆動する第1の故障制御モードで制御を継続し、
前記第1操舵アクチュエータ制御部または前記第2操舵アクチュエータ制御部が故障したときに、前記第1操舵アクチュエータ部または前記第2操舵アクチュエータ部のいずれか一方を駆動する第2の故障制御モードで制御を継続する、
ステアリング装置。
【請求項11】
ステアリングの操作情報を検出する操舵入力機構と、操舵輪に舵角を付与する操舵機構と、を有するステアリング装置に設けられた前記操舵機構のステアリング制御装置であって、
前記操舵機構に設けられた操舵部材にトルクを付与する第1操舵アクチュエータ部を制御する第1操舵アクチュエータ制御部と、
前記操舵部材にトルクを付与する第2操舵アクチュエータ部を制御する第2操舵アクチュエータ制御部と、
を有し、
前記第1操舵アクチュエータ制御部は、前記操舵入力機構に設けられ、前記操舵入力機構の操舵操作入力部材の動作に基づいて第1操作量信号を出力する第1操作量センサから第1操作量信号を受信し、
前記第2操舵アクチュエータ制御部は、前記操舵入力機構に設けられ、前記操舵入力機構の前記操舵操作入力部材の動作に基づいて第2操作量信号を出力する第2操作量センサから第2操作量信号を受信する、
ステアリング制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載のステアリング制御装置であって、
前記第1操舵アクチュエータ制御部は、前記第1操作量センサに電力を供給し、
前記第2操舵アクチュエータ制御部は、前記第2操作量センサに電力を供給する、
ステアリング制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置およびステアリング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の操舵入力を受ける操舵入力機構と、操舵輪を転舵する操舵機構とが機械的に切り離された、いわゆるステア・バイ・ワイヤ方式のステアリング装置において、操舵反力用モータおよび操舵用モータの制御系をそれぞれ2系統化し、冗長性を図る技術が知られている。
特許文献1には、操舵入力機構を制御する操舵入力制御部および操舵機構を制御する操舵制御部がそれぞれ2つのマイクロプロセッサを有し、ステアリングホイールの操作角度を検出する2つの舵角センサのうち、第1舵角センサが操舵入力制御部の第1マイクロプロセッサに第1操作量信号を出力し、第2舵角センサが操舵制御部の第2マイクロプロセッサに第2操作量信号を出力するステアリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術にあっては、舵角センサと接続された2つのマイクロプロセッサが共に故障する2重故障が発生した場合、操舵制御部は舵角センサの信号を受信できない。このため操舵入力制御部および操舵制御部でそれぞれ1つずつマイクロプロセッサが正常動作するにもかかわらず、操舵輪の操舵制御が継続できないという問題があった。
本発明の目的の一つは、2重故障の発生時、操舵制御部側の1つのマイクロプロセッサが正常動作するときには、操舵輪の操舵制御を継続可能なステアリング装置およびステアリング制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態におけるステアリング装置は、第1操作量センサは、第1操舵アクチュエータ制御部に第1操作量信号を出力し、第2操作量センサは、第2操舵アクチュエータ制御部に第2操作量信号を出力する。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明のステアリング装置にあっては、2重故障の発生時、操舵制御部側の1つのマイクロプロセッサが正常動作するときには、操舵輪の操舵制御を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1のステアリング装置1の構成図である。
【
図2】実施形態1のステアリング装置1の回路ブロック図である。
【
図3】実施形態1のステアリング装置1において、第1故障・第2故障発生時の操舵機構4の制御状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1のステアリング装置1の構成図である。
ステアリング装置1は、ステアリングホイール(操作入力部材)2と前輪(操舵輪)3を操舵する操舵機構4とが機械的に切り離された、いわゆるステア・バイ・ワイヤ方式のステアリング装置である。すなわち、操舵機構4と操舵入力機構5とは互いに機械的なトルク伝達がないステアリング装置となっている。ステアリング装置1は、操舵入力機構5、操舵機構4、操舵入力制御部6および操舵制御部7を有する。
【0009】
操舵入力機構5は、ステアリングホイール2、第1舵角センサ(第1操作量センサ)8、第2舵角センサ(第2操作量センサ)9、第1操作トルクセンサ10、第2操作トルクセンサ11および第1電動モータ(反力アクチュエータ)12を有する。ステアリングホイール2は、運転者の操舵操作に応じて回転する。第1舵角センサ8は、ステアリングホイール2と接続された操舵軸2aの回転量を検出する回転角センサであって、検出した回転量に応じた第1操作量信号を出力する。第2舵角センサ9は、ステアリングホイール2の回転量を検出する回転角センサであって、検出した回転量に応じた第2操作量信号を出力する。第1操作量信号および第2操作量信号は、ステアリングホイール2の回転量に応じたアナログ信号か、SENT(Single Edge Nibble Transmission)ベースのSPC(Short PWM Code)プロトコルに基づいてSENTメッセージにエンコードされたデジタル信号である。
【0010】
第1操作トルクセンサ10は、操舵軸2aに入力された運転者の操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じた第1操作トルク信号を出力する。第2操作トルクセンサ11は、操舵軸2aに入力された運転者の操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じた第2操作トルク信号を出力する。第1電動モータ12は、ステアリングホイール2に対し、運転者の操舵操作に対し操舵負荷を増大させる力(操舵反力)を発生させる反力アクチュエータである。第1電動モータ12は、第1ロータ12a、第1ステータ12bおよび第1モータ回転角センサ12cを有する。第1ステータ12bのコイルは冗長化されている。第1モータ回転角センサ12cは、第1ロータ12aの回転位置を検出し、検出した回転位置に応じた第1モータ回転角信号を出力する。なお、第1モータ回転角センサ12cは、2つのモータ回転角センサ12c1,12c2を有する(
図2参照)。第1の第1モータ回転角センサ(第1回転量センサ)12c1は、第1の第1モータ回転角信号を出力する。第2の第1モータ回転角センサ(第2回転量センサ)12c2は、第2の第1モータ回転角信号を出力する。
【0011】
操舵機構4は、ラックバー(操舵部材)13、第1ラック位置センサ(第1操舵量センサ)14、第2ラック位置センサ(第2操舵量センサ)15および第2電動モータ(操舵アクチュエータ)16を有する。ラックバー13は、車幅方向に移動可能であり、移動量に応じて前輪3を操舵する。第1ラック位置センサ14は、ラックバー13の位置を検出し、検出した位置に応じた第1操舵量信号を出力する。ラックバー13は前輪3とタイロッド等を介して接続されており、前輪3の操舵角は、ラックバー13の位置に応じて一意に決まるため、第1操舵量信号は、前輪3の操舵角に関する信号である。第2ラック位置センサ15は、ラックバー13の位置を検出し、検出した位置に応じた第2操舵量信号を出力する。第1操舵量信号および第2操舵量信号は、ラックバー13の位置に応じたアナログ信号が、SENT(Single Edge Nibble Transmission)ベースのSPC(Short PWM Code)プロトコルに基づいてSENTメッセージにエンコードされたデジタル信号である。
【0012】
第2電動モータ16は、操舵制御部7からの操舵アクチュエータ駆動信号に基づき、ラックバー13を介して前輪3を操舵させる力を発生させる操舵アクチュエータである。本実施形態においては、ベルト駆動式ラックアシストタイプの操舵アクチュエータとなっている。第2電動モータ16は、第2ロータ16a、第2ステータ16bおよび第2モータ回転角センサ16cを有する。第2ステータ16bのコイルは冗長化されている。第2モータ回転角センサ16cは、第2ロータ16aの回転位置を検出し、検出した回転位置に応じた第2モータ回転角信号を出力する。なお、第2モータ回転角センサ16cは、2つのモータ回転角センサ16c1,16c2を有する(
図2参照)。第1の第2モータ回転角センサ16c1は、第1の第2モータ回転角信号を出力する。第2の第2モータ回転角センサ16c2は、第2の第2モータ回転角信号を出力する。
【0013】
第1舵角センサ8は、専用の通信線17により操舵制御部7と直接接続されている。第2舵角センサ8は、専用の通信線18により操舵制御部7と直接接続されている。また、第1操作トルクセンサ10は、専用の通信線19により操舵入力制御部6と直接接続されている。第2操作トルクセンサ11は、専用の通信線20により操舵入力制御部6と直接接続されている。さらに、第1ラック位置センサ14は、専用の通信線21により操舵制御部7と直接接続されている。第2ラック位置センサ15は、専用の通信線22により操舵制御部7と直接接続されている。
【0014】
操舵入力制御部6と操舵制御部7との間は、2系統のプライベートCAN通信線23,24で接続されている。プライベートCAN通信線23,24は、車両のパブリックCAN通信線(不図示)とは切り離された専用の通信線である。操舵入力制御部6は、第1プライベートCAN通信線(第1専用通信線)23を介して操舵制御部7から第1操作量信号および第1操舵量信号を受信し、第2プライベートCAN通信線(第2専用通信線)24を介して操舵制御部7から第2操作量信号および第2操舵量信号を受信する。操舵入力制御部6は、第1操作量信号または第2操作量信号と、第1操舵量信号または第2操舵量信号と、第1操作トルク信号または第2操作トルク信号と、他の車両状態(車速等)と、に基づいて、第1電動モータ12を駆動制御する。なお、操舵入力制御部6は、第1舵角センサ8および第2舵角センサ9が共に失陥した場合、第1の第1モータ回転角信号または第2の第1モータ回転角信号に基づき、第1操作量信号および第2操作量信号を算出し、算出した信号に基づいて第1電動モータ12を駆動制御すると共に、算出した第1操作量信号および第2操作量信号を操舵制御部7に出力する。
【0015】
操舵制御部7は、操舵機構4のステアリング制御装置として、第1操作量信号または第2操作量信号と、第1操舵量信号または第2操舵量信号と、他の車両状態(車速等)と、に基づいて第2電動モータ16を駆動制御する。なお、操舵制御部7は、第1ラック位置センサ14および第2ラック位置センサ15が共に失陥した場合、操舵入力制御部6が第1の第2モータ回転角信号および第2の第2モータ回転角信号に応じて算出した第1操作量信号および第2操作量信号に基づいて第2電動モータ16を制御する。
【0016】
操舵入力制御部6および操舵制御部7は、第1バッテリ25と第2バッテリ26から電力の供給を受ける。第1電動モータ12、第1操作トルクセンサ10および第2操作トルクセンサ11は、操舵入力制御部6から電力の供給を受ける。第2電動モータ16、第1舵角センサ8、第2舵角センサ9、第1ラック位置センサ14および第2ラック位置センサ15は、操舵制御部7から電力の供給を受ける。
【0017】
図2は、実施形態1のステアリング装置1の回路ブロック図である。
まず、操舵入力制御部6の構成を説明する。
操舵入力制御部6は、第1操舵入力制御部6aおよび第2操舵入力制御部6bを有する。
第1操舵入力制御部6aは、第1パワーサプライ27、第1インターフェース28、第1CANドライバ29、第1の第1モータ回転角センサ12c1、第1マイクロプロセッサ33および第1インバータ34を有する。
第2操舵入力制御部6bは、第2パワーサプライ30、第2インターフェース31、第2CANドライバ32、第2の第1モータ回転角センサ12c2、第2マイクロプロセッサ35および第2インバータ36を有する。
【0018】
第1パワーサプライ27は、第1操作トルクセンサ10の電源を作成して供給する。第1パワーサプライ27は、第1バッテリ25と接続されている。第1インターフェース28は、第1操作トルクセンサ10から受信した第1操作トルク信号をデコードする。第1CANドライバ29は、操舵制御部7の第1CANドライバ40と第1プライベートCAN通信線23を介してCAN通信を行う。
【0019】
第2パワーサプライ30は、第2操作トルクセンサ11の電源を作成して供給する。第2パワーサプライ30は、第2バッテリ26と接続されている。第2インターフェース31は、第2操作トルクセンサ11から受信した第2操作トルク信号をデコードする。第2CANドライバ32は、操舵制御部7の第2CANドライバ44と第2プライベートCAN通信線24を介してCAN通信を行う。
【0020】
第1マイクロプロセッサ33は、第1インターフェース28から第1操作トルク信号、第1CANドライバ29から第1操舵量信号および第1操作量信号を入力し、第1電動モータ12を駆動制御する第1反力アクチュエータ駆動信号を出力する。また、第1マイクロプロセッサ33は、第1操作トルク信号を第1CANドライバ29へ出力する。第1インバータ34は、第1反力アクチュエータ駆動信号に基づき、第1バッテリ25からの直流電力を交流電力に変換し、第1電動モータ12の第1ステータ12bの第1コイル12b1へ供給する。第1パブリックCANドライバ(車両通信部)49は、第1パブリックCAN通信線(不図示)を介して車両内の他のECUやセンサとCAN通信を行う。
【0021】
第2マイクロプロセッサ35は、第2インターフェース31から第2操作トルク信号、第2CANドライバ32から第2操舵量信号および第2操作量信号を入力し、第1電動モータ12を駆動制御する第2反力アクチュエータ駆動信号を出力する。また、第2マイクロプロセッサ35は、第2操作トルク信号を第2CANドライバ32へ出力する。第2インバータ36は、第2反力アクチュエータ駆動信号に基づき、第2バッテリ26からの直流電力を交流電力に変換し、第1電動モータ12の第1ステータ12bの第2コイル12b2へ供給する。第2パブリックCANドライバ(車両通信部)50は、第2パブリックCAN通信線(不図示)を介して車両内の他のECUや車載センサとCAN通信を行う。
【0022】
次に、操舵制御部7の構成を説明する。
操舵制御部7は、第1操舵アクチュエータ制御部7aおよび第2操舵アクチュエータ制御部7bを有する。
第1操舵アクチュエータ制御部7aは、第1パワーサプライ37、第1インターフェース38、第2インターフェース39、第1CANドライバ40、第1の第2モータ回転角センサ16c1、第1マイクロプロセッサ45および第1インバータ46を有する。
第2操舵アクチュエータ制御部7bは、第2パワーサプライ41、第3インターフェース42、第4インターフェース43、第2CANドライバ44、第2の第2モータ回転角センサ16c2、第2マイクロプロセッサ47および第2インバータ48を有する。
【0023】
第1パワーサプライ37は、第1舵角センサ8および第1ラック位置センサ14の電源を作成して供給する。第1パワーサプライ37は、第1バッテリ25と接続されている。第1インターフェース38は、第1ラック位置センサ14から受信した第1操舵量信号をデコードする。第2インターフェース39は、第1舵角センサ8から受信した第1操作量信号をデコードする。第1CANドライバ40は、操舵入力制御部6の第1CANドライバ29と第1プライベートCAN通信線23を介してCAN通信を行う。
【0024】
第2パワーサプライ41は、第2舵角センサ9および第2ラック位置センサ15の電源を作成して供給する。第2パワーサプライ41は、第2バッテリ26と接続されている。第3インターフェース42は、第2ラック位置センサ15から受信した第2操舵量信号をデコードする。第4インターフェース43は、第2舵角センサ9から受信した第2操作量信号をデコードする。第2CANドライバ44は、操舵入力制御部6の第2CANドライバ32と第2プライベートCAN通信線24を介してCAN通信を行う。
【0025】
第1マイクロプロセッサ45は、第1インターフェース38から第1操舵量信号、第2インターフェース39から第1操作量信号を入力し、第2電動モータ16を駆動制御する第1操舵アクチュエータ駆動信号を出力する。また、第1マイクロプロセッサ45は、第1操舵量信号および第1操作量信号を第1CANドライバ40へ出力する。第1インバータ46は、第1操舵アクチュエータ駆動信号に基づき第1バッテリ25からの直流電力を交流電力に変換し、第2電動モータ16の第2ステータ16bの第1コイル(第1操舵アクチュエータ部)16b1へ供給する。
【0026】
第2マイクロプロセッサ47は、第3インターフェース42から第2操舵量信号、第4インターフェース43から第2操作量信号を入力し、第2電動モータ16を駆動制御する第2操舵アクチュエータ駆動信号を出力する。また、第2マイクロプロセッサ47は、第2操舵量信号および第2操作量信号を第2CANドライバ44へ出力する。第2インバータ48は、第2操舵アクチュエータ駆動信号に基づき第2バッテリ26からの直流電力を交流電力に変換し、第2電動モータ16の第2ステータ16bの第2コイル(第2操舵アクチュエータ部)16b2へ供給する。
【0027】
実施形態1の操舵入力制御部6は、2つのマイクロプロセッサ33,35を有する。このため、一方のマイクロプロセッサが失陥した場合であっても、他方のマイクロプロセッサにより第1電動モータ12を駆動制御でき、反力制御を継続可能である。また、操舵制御部7は、2つのマイクロプロセッサ45,47を有する。このため、一方のマイクロプロセッサが失陥した場合であっても、他方のマイクロプロセッサにより第2電動モータ16を駆動でき、操舵制御を継続可能である。
【0028】
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
従来のステアリング装置では、第1舵角センサが操舵入力制御部の第1マイクロプロセッサに第1操作量信号を出力し、第2舵角センサが操舵制御部の第2マイクロプロセッサに第2操作量信号を出力している。操舵制御部の第1マイクロプロセッサは、双方向通信線を介して操舵入力制御部の第1マイクロプロセッサから第1操作量信号を受信する。このため、上記従来技術では、操舵入力制御部の第1マイクロプロセッサから操舵制御部の第1マイクロプロセッサへ第1操作量信号を送信できない故障(第1故障)が発生し、さらに操舵制御部の第2マイクロプロセッサが動作不良となる故障(第2故障)が発生した場合、ステアリングホイールの情報が操舵制御部の第1マイクロプロセッサへ送信できなくなり、操舵制御部の片系統は正常動作しているにもかかわらず、操舵制御を継続できないという問題があった。
【0029】
これに対し、実施形態1のステアリング装置1では、第1舵角センサ8は、操舵制御部7の第1操舵アクチュエータ制御部7aに第1操作量信号を出力し、第2舵角センサ9は、操舵制御部7の第2操舵アクチュエータ制御部7bに第2操作量信号を出力する。このため、操舵入力制御部6の第1マイクロプロセッサ33から操舵制御部7の第1マイクロプロセッサ45へ情報が送信できない故障(第1故障)が発生し、さらに操舵制御部7の第2マイクロプロセッサ47が動作不良となる故障(第2故障)が発生した場合であっても、操舵制御部7の第1マイクロプロセッサ45は第1舵角センサ8から第1操作量信号を受信可能であり、第1操作量信号に基づき、操舵制御を継続できる。
【0030】
図3は、実施形態1のステアリング装置1において、第1故障・第2故障発生時の操舵機構4の制御状態を示す図である。
(第1故障)
操舵入力制御部6の第1マイクロプロセッサ(1
stMPU)33または第2マイクロプロセッサ(2
ndMPU)35に故障が発生した場合、第1マイクロプロセッサ(1stMPU)45および第2マイクロプロセッサ(2ndMPU)47は、第1舵角センサ8および第2舵角センサ9から第1操作量信号および第2操作量信号を受信できるため、2系統で操舵制御可能である。
(第2故障)
上記第1故障に加えて、操舵入力制御部6の第2マイクロプロセッサ35または第1マイクロプロセッサ35に故障が発生した場合、第1マイクロプロセッサ45および第2マイクロプロセッサ47は、第1舵角センサ8および第2舵角センサ9から第1操作量信号および第2操作量信号を受信できるため、2系統での操舵制御を継続できる。
【0031】
一方、操舵制御部7の第1マイクロプロセッサ45または第2マイクロプロセッサ47に故障が発生した場合には、第2マイクロプロセッサ47または第1マイクロプロセッサ45の一方が第2操作量信号または第1操作量信号を受信できるため、1系統で操舵制御を継続できる。
以上のように、実施形態1のステアリング装置1では、2重故障の発生時、操舵制御部7側の1つのマイクロプロセッサが正常動作するときには、前輪3の操舵制御を継続できる、という顕著な作用効果を奏する。
【0032】
第1舵角センサ8は、第1操舵アクチュエータ制御部7aから電力を供給され、第2舵角センサ9は、第2操舵アクチュエータ制御部7bから電力を供給される。これにより、第1操舵入力制御部6aおよび第2操舵入力制御部6bの電源回路が失陥した場合であっても、第1舵角センサ8および第2舵角センサ9に対し電力供給可能であるため、継続して第1操作量信号および第2操作量信号を出力でき、操舵制御を継続できる。
【0033】
第1ラック位置センサ14は、第1操舵アクチュエータ制御部7aに第1操舵量信号を出力し、第2ラック位置センサ15は、第2操舵アクチュエータ制御部7bに第2操舵量信号を出力する。これにより、第1操舵入力制御部6aおよび第2操舵入力制御部6bが故障した場合であっても、第1操舵アクチュエータ制御部7aおよび第2操舵アクチュエータ制御部7bは、第1操舵量信号および第2操舵量信号を受信可能であり、前輪3の状態を把握できるため、操舵制御を継続できる。
【0034】
第1操舵アクチュエータ制御部7aは、第1バッテリ25から電力供給を受け、第2操舵アクチュエータ制御部7bは、第2バッテリ26から電力供給を受ける。すなわち、第1操舵アクチュエータ制御部7aおよび第2操舵アクチュエータ制御部7bのそれぞれに電力を供給する電力供給部が独立して設けられている。これにより、第1バッテリ25または第2バッテリ26の一方が故障した場合であっても、第1操舵アクチュエータ制御部7aまたは第2操舵アクチュエータ制御部7bの一方は正常なバッテリから電力供給を受けられるため、操舵制御を継続できる。
【0035】
操舵入力制御部6aは、第1の第1モータ回転角センサ12c1が検出した第1の第1モータ回転角信号に基づいて算出した第1操作量信号を第1操舵アクチュエータ制御部7aに出力し、第2の第1モータ回転角センサ12c2が検出した第2の第1モータ回転角信号に基づいて算出した第2操作量信号を第2操舵アクチュエータ制御部7bに出力する。これにより、第1舵角センサ8および第2舵角センサ9が共に失陥した場合であっても、操舵制御部7は、ステアリングホイール2の状態を把握でき、操舵制御の継続が可能である。
【0036】
第1操舵入力制御部6aおよび第2操舵入力制御部6bには、車両内の他の制御装置と通信するための第1パブリックCANドライバ49および第2パブリックCANドライバ50がそれぞれ設けられ、第1操舵入力制御部6aおよび第1操舵アクチュエータ制御部7a間には、相互に通信するための第1プライベートCAN通信線23が設けられ、第2操舵入力制御部6bおよび第2操舵アクチュエータ制御部7b間には、相互に通信するための第2プライベートCAN通信線24が設けられている。これにより、第1操舵入力制御部6aおよび第2操舵入力制御部6bは、第1プライベートCAN通信線23および第2プライベートCAN通信線24を介して第1操舵量信号および第2操舵量信号を受信できると共に、第1パブリックCANドライバ49および第2パブリックCANドライバ50を介して第1操舵量信号および第2操舵量信号を他のECUに送信できる。
【0037】
操舵制御部7は、操舵入力制御部6が故障したときに、第1操舵アクチュエータ制御部7aが、第1舵角センサ8から出力される第1操作量信号に基づいて第1コイル16b1を制御し、第2操舵アクチュエータ制御部7bが、第2舵角センサ9から出力される第2操作量信号に基づいて第2コイル16b2を制御する。よって、操舵制御部7は、操舵入力制御部6が故障した場合であっても、第1操作量信号および第2操作量信号を取得できるため、ステアリングホイール2の回転量に応じた操舵制御、すなわち運転者の操舵意図に応じた操舵制御が可能である。
【0038】
操舵制御部7は、操舵入力制御部6が故障したときに、第1コイル16b1および第2コイル16b2を駆動する第1の故障制御モードで制御を継続し、第1操舵アクチュエータ制御部7aまたは第2操舵アクチュエータ制御部7bが故障したときに、第1コイル16b1または第2コイル16b2のいずれか一方を駆動する第2の故障制御モードで制御を継続する。よって、操舵入力制御部6が故障した場合(第1故障)であっても、冗長構成による操舵制御を継続できる。さらに、第1操舵アクチュエータ制御部7aまたは第2操舵アクチュエータ制御部7bが故障した場合(第2故障)においても、第1コイル16b1または第2コイル16b2の一方を制御可能であるため、操舵制御を継続できる。
【0039】
〔他の実施形態〕
以上、本発明を実施するための実施形態を説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
操舵入力機構として、反力アクチュエータを持たず、ばね反力を利用して操舵反力を付与する構成としてもよい。
第1操作量センサおよび第2操作量センサへの電源供給は、操舵入力制御部の電源回路以外であれば、操舵制御部の電源回路に限らず、独立の電源回路から供給するようにしてもよい。
操舵アクチュエータは、ラックアシストタイプやデュアルピニオンタイプ等の他の方式の操舵アクチュエータに適用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…ステアリング装置、2…ステアリングホイール(操作入力部材)、3…前輪(操舵輪)、4…操舵機構、5…操舵入力機構、6…操舵入力制御部、7…操舵制御部、7a…第1操舵アクチュエータ制御部、7b…第2操舵アクチュエータ制御部、8…第1舵角センサ(第1操作量センサ)、9…第2舵角センサ(第2操作量センサ)、13…ラックバー(操舵部材)、16…第2電動モータ(操舵アクチュエータ)