(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054992
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】被害特定装置、被害特定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240411BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20240411BHJP
G06Q 50/26 20240101ALI20240411BHJP
E02B 3/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H04N7/18 D
G08B21/10
G06Q50/26
E02B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161520
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】円谷 信一
【テーマコード(参考)】
5C054
5C086
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CA05
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC01
5C054FC07
5C054FC12
5C054FC15
5C054FE28
5C054GB01
5C054GB05
5C054HA18
5C086AA14
5C086AA15
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA33
5C086EA40
5C086EA45
5C086FA17
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】河川流域における被害の発生箇所を特定することが可能な被害特定装置、被害特定方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】被害特定装置は、河川が延びる河川流域に設置された複数のカメラから、各々の画像を取得する取得部と、各前記画像同士の違いを検出する検出部と、検出した前記違いに基づいて、被害の位置を特定する特定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川が延びる河川流域に設置された複数のカメラから、各々の画像を取得する取得部と、
各前記画像同士の違いを検出する検出部と、
検出した前記違いに基づいて、被害の位置を特定する特定部と、
を備える被害特定装置。
【請求項2】
各前記カメラは、複数の区間に分割された前記河川における一つの区間を映すように、かつ各前記カメラ同士が互いに異なる区間を映すように前記河川流域に設置されている
請求項1に記載の被害特定装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記河川における一の区間を流れる流下物の多さと、前記一の区間よりも上流側又は下流側の他の区間を流れる流下物の多さとの違いを各前記画像同士の違いとして検出する
請求項2に記載の被害特定装置。
【請求項4】
前記特定部は、検出した前記違いに基づいて、前記河川に架かる橋梁のうち前記流下物が集積した橋梁の位置を前記被害の位置として特定する
請求項3に記載の被害特定装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記画像中の前記河川の濁り具合の違いを各前記画像同士の違いとして検出する
請求項1又は2に記載の被害特定装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記画像中の前記河川の水位の違いを各前記画像同士の違いとして検出し、
前記特定部は、検出した前記違いに基づいて、前記河川流域中に生じた越水又は破堤の位置を前記被害の位置として特定する
請求項1又は2に記載の被害特定装置。
【請求項7】
前記検出部は、
あらかじめ取得された各前記区間の画像及び該画像の取得時における特徴量を入力データとし、前記画像中の前記流下物の多さを示す分類を出力データとするデータセットで繰り返し機械学習された学習済みモデルを用いて、
前記一の区間を流れる流下物の多さと、前記他の区間を流れる流下物の多さとの違いを各前記画像同士の違いとして検出する
請求項3又は4に記載の被害特定装置。
【請求項8】
前記河川における二つの区間の間を前記流下物が流下した時間を推定する推定部を更に備え、
前記検出部は、前記二つの区間のうち上流側の区間を前記一の区間とし、下流側の区間を前記他の区間として、前記一の区間を流れる前記流下物の多さと、前記流下した時間後の前記他の区間を流れる前記流下物の多さとの違いを各前記画像同士の違いとして検出する
請求項3又は4に記載の被害特定装置。
【請求項9】
河川が延びる河川流域に設置された複数のカメラから、各々の画像を取得するステップと、
各前記画像同士の違いを検出するステップと、
検出した前記違いに基づいて、被害の位置を特定するステップと、
を実行する被害特定方法。
【請求項10】
河川が延びる河川流域に設置された複数のカメラから、各々の画像を取得するステップと、
各前記画像同士の違いを検出するステップと、
検出した前記違いに基づいて、被害の位置を特定するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被害特定装置、被害特定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、河川を監視する撮像部の映像信号の輝度値を用いて浮遊物の有無を自動的に判定する河川監視装置が開示されている。この河川監視装置によれば、河川の監視者が河川を巡回監視することで浮遊物の有無を把握する必要がないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、豪雨などが発生した場合、河川流域では土砂崩れなどの被害が発生することがある。その際、被害の発生箇所を基点に流木などの浮遊物(流下物)が河川に発生することがある。上記特許文献1に記載の技術では、河川に浮遊する浮遊物の有無の判定に留まるため、河川流域における被害の発生箇所を特定することが難しいという課題がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、河川流域における被害の発生箇所を特定することが可能な被害特定装置、被害特定方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る被害特定装置は、河川が延びる河川流域に設置された複数のカメラから、各々の画像を取得する取得部と、各前記画像同士の違いを検出する検出部と、検出した前記違いに基づいて、被害の位置を特定する特定部と、を備える。
【0007】
本開示に係る被害特定方法は、河川が延びる河川流域に設置された複数のカメラから、各々の画像を取得するステップと、各前記画像同士の違いを検出するステップと、検出した前記違いに基づいて、被害の位置を特定するステップと、を実行する。
【0008】
本開示に係るプログラムは、河川が延びる河川流域に設置された複数のカメラから、各々の画像を取得するステップと、各前記画像同士の違いを検出するステップと、検出した前記違いに基づいて、被害の位置を特定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、河川流域における被害の発生箇所を特定することが可能な被害特定装置、被害特定方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る河川流域の概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係る被害特定装置の機能ブロック図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係る被害特定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の第二実施形態に係る被害特定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の第三実施形態に係る被害特定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の第四実施形態に係る被害特定装置の機能ブロック図である。
【
図7】本開示の第四実施形態に係る被害特定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態に係るコンピュータの構成を示すハードウェア構成図である。
【
図9】本開示のその他の実施形態に係る被害特定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、添付図面を参照しながら、本開示による被害特定システムを実施するための形態を説明する。本実施形態における被害特定システムは、河川流域における被害の発生箇所を特定するためのシステムである。はじめに、
図1を用いて河川流域Rvについて説明する。
【0012】
河川流域Rvは、地表に降った雨や雪などが河川Rに流れ込む範囲である。河川Rは、上流側の山間部から下流側の海に向かって蛇行しながら延びている。本実施形態における河川Rは陸地に挟まれており、河川Rの両岸には、例えば堤防Bが設けられている。また、河川Rには、複数の橋梁Brが架かっている。
図1中では、一つの橋梁Brのみを図示している。
【0013】
河川Rは、この河川Rが延びる方向で複数の区間に分割されている。本実施形態では、河川Rが七つの区間に分割されている場合を一例として説明する。河川Rの分割区間は、例えば、避難単位ごとに設定されてもよい。なお、ここでいう「避難単位」は、避難に係る指示を行う対象となる地域的なまとまり(大字や学区など)を意味し、例えば河川流域Rvが存在する行政区域などによって指定されている。
【0014】
以下、説明の便宜上、七つの区間に分割された河川Rの各区間を下流側から順に「第一区間I1」、「第二区間I2」、「第三区間I3」、「第四区間I4」、「第五区間I5」、「第六区間I6」、「第七区間I7」と称する。
【0015】
被害特定システム1は、河川流域Rvに導入されている。
本実施形態における被害特定システム1は、カメラ20と、被害特定装置10とを備えている。
【0016】
(カメラ)
カメラ20は、河川流域Rvに複数が設置されており、可視画像を取得可能である。複数のカメラ20は、河川Rの延びる方向に沿って並んで配置されている。カメラ20は、河川Rの分割されている数と同じ個数が河川流域Rvに配置されている。したがって、本実施形態では、七つのカメラ20が河川Rの延びる方向に沿って並んで配置されている構成を一例に説明する。各カメラ20は、複数の区間に分割された河川Rにおける一つの区間を映すように、かつ各カメラ20同士が互いに異なる区間を映すように河川流域Rvに設置されている。
【0017】
以下、説明の便宜上、河川Rの第一区間I1の全体を映すカメラ20を「第一カメラ21」と称する。また、第二区間I2の全体を映すカメラ20を「第二カメラ22」と称する。また、第三区間I3の全体を映すカメラ20を「第三カメラ23」と称する。また、第四区間I4の全体を映すカメラ20を「第四カメラ24」と称する。また、第五区間I5の全体を映すカメラ20を「第五カメラ25」と称する。また、第六区間I6の全体を映すカメラ20を「第六カメラ26」と称する。また、第七区間I7の全体を映すカメラ20を「第七カメラ27」と称する。
【0018】
各カメラ20は、有線又は無線通信によって被害特定装置10に接続されている。各カメラ20は、撮像することで取得した可視画像を示す信号を被害特定装置10に送信する。以下、説明の便宜上、カメラ20によって取得された可視画像を単に「画像」と称する。なお、カメラ20が被害特定装置10に送信する画像を示す信号には、当該画像を取得した時刻データが含まれている。
【0019】
(被害特定装置)
被害特定装置10は、各カメラ20から送信された画像を取得するとともに、取得した画像に基づいて河川流域Rv中に生じている被害Xの位置を特定する。なお、被害特定装置10は、例えば、河川Rの管理事務所などに設けられている。
【0020】
図2に示すように、本実施形態における被害特定装置10は、取得部11と、検出部12と、特定部13と、報知部14とを備えている。
【0021】
(取得部)
取得部11は、各カメラ20から送信された画像を示す信号を受信する。
取得部11は、受信した画像を検出部12に送る。
【0022】
(検出部)
検出部12は、取得部11から受け付けた画像に基づいて、各画像同士の違いを検出する。
本実施形態における検出部12は、例えば、AI(人工知能)を用いることによって各画像中の流木Dwの有無を検出する。
【0023】
検出部12は、画像中の流木Dwの有無を各画像間で比較することで、隣り合う区間の画像同士の違いを検出する。ここでいう「違い」は、一の区間に流木Dwが存在する一方で、この一の区間に上流側から隣接する区間に流木Dwが存在しないことを意味する。
【0024】
検出部12は、画像同士の違いを検出した場合、この違いに対応したカメラ情報を特定部13に送る。ここでいう「カメラ情報」は、二つの画像が、複数のカメラ20のうちどの二つのカメラ20で取得されたかを含む情報である。
【0025】
(特定部)
特定部13は、検出部12から受け付けたカメラ情報に基づいて、被害Xの位置を特定する。具体的には、特定部13は、カメラ情報から定まった隣り合う二つの区間のうち、下流側の区間に面する陸地が被害Xの発生箇所であると特定する。例えば、特定部13は、第一カメラ21及び第二カメラ22を示すカメラ情報を検出部12から受け付けた場合、第一区間I1に面する陸地が被害Xの発生位置であると特定する。本実施形態における被害Xには、例えば、流木Dwを発生させる原因となる土砂崩れが挙げられる。
特定部13は、特定した被害Xの発生位置を報知部14に送る。
【0026】
(報知部)
報知部14は、特定部13から受け付けた被害Xの発生位置を、例えば河川Rの監視者が利用するモニタなどに送信する。すなわち、報知部14は、モニタに被害Xの発生位置を表示させることで、河川Rの監視者に発生位置で被害Xが発生した旨を知らせる。
【0027】
(被害特定装置の動作)
続いて、本実施形態における被害特定装置10の動作について
図3を参照して説明する。
はじめに、被害特定装置10の取得部11は、複数のカメラ20から画像を取得する(ステップS1)。
【0028】
次いで、被害特定装置10の検出部12は、ステップS1で取得された複数の画像に基づいて、各画像同士の違いを検出する(ステップS2)。
次いで、被害特定装置10の特定部13は、ステップS2で検出された各画像同士の違いに基づいて、被害Xとしての土砂崩れの位置を特定する(ステップS3)。
【0029】
次いで、被害特定装置10の報知部14は、ステップS3で特定された発生位置で被害Xが発生していることを河川Rの監視者に知らせる(ステップS4)。
以上説明したステップS1からステップS4までの被害特定装置10の処理は、河川Rの監視中に繰り返し実行される。
【0030】
(作用効果)
豪雨などの影響により、河川流域Rv中で土砂崩れなどの被害Xが発生する場合がある。
上記によれば、検出された各画像同士の違いに基づいて、河川流域Rv中の被害Xの位置が特定される。具体的には、各画像における流木Dwの有無を画像同士の違いとすることで、流木Dwを発生させる土砂崩れの位置が被害Xの位置として特定される。
したがって、被害特定装置10によって被害Xの位置が特定された際、例えば、河川Rの監視者は、被害Xの位置に近い区域に居住する住民に対して迅速かつ正確に避難指示を発令することができる。
【0031】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態に係る被害特定装置10について説明する。第一実施形態と同一部分には同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0032】
(被害特定装置)
本実施形態における被害特定装置10は、取得部11と、検出部12と、特定部13と、報知部14とを備えている。
【0033】
(取得部)
取得部11は、各カメラ20から送信された画像を示す信号を受信する。取得部11は、受信した画像を検出部12に送る。
【0034】
(検出部)
検出部12は、取得部11から受け付けた画像に基づいて、各画像同士の違いを検出する。
本実施形態における検出部12は、画像中の流木Dwの多さを各画像間で比較することで、隣り合う区間の画像同士の違いを検出する。ここでいう「違い」は、一の区間に存在する流木Dwよりも、この一の区間に下流側から隣接する区間に存在する流木Dwの方が少ないことを意味する。検出部12は、画像同士の違いを検出した場合、この違いに対応したカメラ情報を特定部13に送る。
【0035】
(特定部)
特定部13は、検出部12から受け付けたカメラ情報に基づいて、被害Xの位置を特定する。具体的には、特定部13は、カメラ情報により定まった隣り合う二つの区間のうち、上流側の区間に面する陸地が被害Xの発生箇所であると特定する。例えば、特定部13は、第四カメラ24及び第五カメラ25を示すカメラ情報のみを検出部12から受け付けた場合、特定部13は、第四区間I4に被害Xが発生していると特定する。この際、特定部13は、河川Rに架かる複数の橋梁Brのうち、第四区間I4における橋梁Brを流木Dwが集積した橋梁Brとみなし、この橋梁Brの位置を被害Xの位置として特定する。本実施形態における被害Xには、例えば、橋梁Brでの流木Dwの詰まりが挙げられる。
特定部13は、特定した被害Xの発生位置を報知部14に送る。
【0036】
(報知部)
報知部14は、特定部13から受け付けた被害Xの発生位置を、例えば河川Rの監視者が利用するモニタなどに送信する。すなわち、報知部14は、モニタに被害Xの発生位置を表示させることで、河川Rの監視者に発生位置で被害Xが発生した旨を知らせる。
【0037】
(被害特定装置の動作)
続いて、本実施形態における被害特定装置10の動作について
図4を参照して説明する。
はじめに、被害特定装置10の取得部11は、複数のカメラ20から画像を取得する(ステップS1´)。
【0038】
次いで、被害特定装置10の検出部12は、ステップS1´で取得された複数の画像に基づいて、各画像同士の違いを検出する(ステップS2´)。
次いで、被害特定装置10の特定部13は、ステップS2´で検出された各画像同士の違いに基づいて、被害Xとしての橋梁Brの位置を特定する(ステップS3´)。
【0039】
次いで、被害特定装置10の報知部14は、ステップS3´で特定された発生位置で被害Xが発生していることを河川Rの監視者に知らせる(ステップS4´)。
以上説明したステップS1´からステップS4´までの被害特定装置10の処理は、河川Rの監視中に繰り返し実行される。
【0040】
(作用効果)
上記によれば、検出された各画像同士の違いに基づいて、被害Xの位置が特定される。具体的には、各画像における流木Dwの多さを画像同士の違いとすることで、流木Dwの詰まりが生じている橋梁Brの位置が被害Xの位置として特定される。
したがって、被害特定装置10によって被害Xの位置が特定された際、例えば、河川Rの監視者は、流木Dwが集積した橋梁Brが存在する区間で越水又は破堤の可能性があると判断することができる。その結果、被害Xの位置に近い区域に居住する住民に対して迅速かつ正確に避難指示を発令することができる。
【0041】
<第三実施形態>
次に、本開示の第三実施形態に係る被害特定装置10について説明する。第一実施形態と同一部分には同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
本実施形態における被害特定装置は、取得部11と、検出部12と、特定部13と、報知部14とを備えている。
【0042】
(取得部)
取得部11は、各カメラ20から送信された画像を示す信号を受信する。また、取得部11は、受信した画像に関連付く特徴量を取得する。ここでいう「特徴量」は、例えば、画像撮影時の時刻データや、画像撮影時の季節データ、画像撮影時の水位データ、画像撮影時の水温データなどを意味する。
【0043】
具体的には、取得部11は、受信した画像を示す信号から撮影時の時刻データを取得する。また、取得部11は、被害特定装置10が実装されているコンピュータ1100などから日付に基づいた撮影時の季節データ(例えば、春夏秋冬の4分類)を取得する。また、取得部11は、例えば、河川Rに配置され、河川Rを流れる水の温度を測定可能な温度センサ(図示省略)から送信された撮影時の水温データを受信することで取得する。また、取得部11は、例えば、河川Rに配置され、河川Rを流れる水の水位を測定可能なレベルセンサ(図示省略)から送信された撮影時の水位データを受信することで取得する。なお、取得部11は、温度データ及び水位データを取得した画像から取得してもよい。
【0044】
取得部11は、取得した画像及び特徴量を検出部12に送る。
【0045】
(検出部)
検出部12は、取得部11から受け付けた画像及び特徴量に基づいて、各画像同士の違いを検出する。本実施形態における検出部12は、機械学習が行われた学習済みモデルを用いて各画像中の流木Dwの多さを検出する。
【0046】
学習済みモデルは、あらかじめ取得された河川Rの対象区間における複数の画像と、当該複数の画像の撮影時における時刻データ、季節データ、水温データ、水位データなどの特徴量とが互いに関連付いた情報に基づいて生成されている。具体的には、学習済みモデルは、これら画像及び特徴量を入力データとし、後述の分類結果を出力データとしたデータセット(教師ありデータ)で機械学習が繰り返し行われることで生成されている。
【0047】
ここで、画像の撮影時における時刻は、例えば、画像中の影のでき方に影響する。季節は、例えば、画像中の色味に影響する。水温は、例えば、画像中の水の色に影響する。水位は、例えば、河川Rの対象区間における流速に影響する。なお、対象となる河川Rで学習済みモデルを生成することが難しい場合は、川幅などが当該河川Rと類似する河川を対象として生成された学習済みモデルを流用してもよい。
【0048】
学習済みモデルでは、あらかじめ定められた流木Dwの多さを示す基準に基づいて、画像と当該画像に関連付いた特徴量との組み合わせが流木Dwの多さごとに分類(クラスタリング)されている。学習済みモデルでは、例えば、流木Dwの多さが「無」、「少」、「中」、「多」の4段階で分類されている。これら「無」、「少」、「中」、「多」は、この順に画像中の流木Dwが多くなることを意味する。「無」は画像中に流木Dwが存在しないことを意味する。
【0049】
学習済みモデルは、画像と特徴量との組み合わせが入力された際、この組み合わせに最も近しい組合せを含む分類(上記の4分類のうちのいずれか)を出力として返す。つまり、学習済みモデルは、上記組合せが入力された場合、流木Dwの多さを示した分類結果を出力として返す。
【0050】
検出部12は、取得部から受け付けた画像及び特徴量を学習済みモデルに入力することで、当該学習済みモデルの出力として流木Dwの多さを取得する。検出部12は、画像中の流木Dwの多さを各画像間で比較することで、隣り合う区間の画像同士の違いを検出する。ここでいう「違い」は、一の区間に存在する流木Dwよりも、この一の区間に下流側から隣接する区間に存在する流木Dwの方が少ないことを意味する。検出部12は、画像同士の違いを検出した場合、この違いに対応したカメラ情報を特定部13に送る。
【0051】
(特定部)
特定部13は、検出部12から受け付けたカメラ情報に基づいて、被害Xの位置を特定する。具体的には、特定部13は、カメラ情報により定まった隣り合う二つの区間のうち、上流側の区間に面する陸地が被害Xの発生箇所であると特定する。例えば、特定部13は、第四カメラ24及び第五カメラ25を示すカメラ情報のみを検出部12から受け付けた場合、特定部13は、第四区間I4に被害Xが発生していると特定する。本実施形態における被害Xには、例えば、流木Dwを発生させる原因となる土砂崩れが挙げられる。
特定部13は、特定した被害Xの発生位置を報知部14に送る。
【0052】
(被害特定装置の動作)
続いて、本実施形態における被害特定装置10の動作について
図5を参照して説明する。
はじめに、被害特定装置10の取得部11は、複数のカメラ20から画像を取得するとともに、各画像に関連付いた特徴量を取得する(ステップS10)。
【0053】
次いで、被害特定装置10の検出部12は、ステップS10で取得された複数の画像と各画像に関連付いた特徴量との組合せを学習済みモデルに入力することで出力された流木Dwの多さ(分類結果)に基づいて、各画像同士の違いを検出する(ステップS11)。
次いで、被害特定装置10の特定部13は、ステップS11で検出された各画像同士の違いに基づいて、被害Xとしての土砂崩れの位置を特定する(ステップS12)。
【0054】
次いで、被害特定装置10の報知部14は、ステップS12で特定された発生位置で被害Xが発生していることを河川Rの監視者に知らせる(ステップS13)。
以上説明したステップS10からステップS13までの被害特定装置10の処理は、河川Rの監視中に繰り返し実行される。
【0055】
(作用効果)
上記によれば、検出された各画像同士の違いに基づいて、被害Xの位置が特定される。具体的には、学習済みモデルを用いて得られた各画像における流木Dwの多さの違いを画像同士の違いとすることで、被害Xの位置として土砂崩れの位置が特定される。
したがって、被害Xの発生位置をより高精度に特定することができる。
【0056】
<第四実施形態>
次に、本開示の第四実施形態に係る被害特定装置10について説明する。第一実施形態と同一部分には同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態における被害特定装置は、取得部11と、検出部12と、特定部13と、報知部14と、推定部15とを備えている。
【0057】
(取得部)
取得部11は、各カメラ20から送信された画像を示す信号を受信する。また、取得部11は、例えば、河川Rの各区間のそれぞれに配置され、河川Rの水位を測定可能なレベルセンサ(図示省略)から送信された水位データを受信することで、各区間における水位を取得する。なお、取得部11は、水位データを取得した画像から取得してもよい。取得部11は、取得した画像を示す信号を検出部12に送信し、取得した水位を示す信号を推定部15に送る。
【0058】
(推定部)
推定部15は、取得部11から受け付けた各区間における水位に基づいて、河川Rの二つの区間の間を流木Dwが流下する時間を推定する。以下、二つの区間の間を流木Dwが流下する時間を「到達時間」と称する。
【0059】
具体的には、推定部15は、取得部11から受け付けた水位(Di:iは1~7のうちいずれか)を所定の関数(W=W(Di))に代入することで、対象となる区間の水域の幅(Wi:iは1~7のうちいずれか)を算出する。推定部15は、取得した水位(Di)と水域の幅(Wi)とを引数とする所定の関数(Vi=V(Di,Wi))に代入することで、各区間における流速(Vi:iは1~7のうちいずれか)を算出する。なお、この関数は、例えば、各区間における複数地点間の標高及び距離が互いに関連付くことで求められる勾配や、各区間における曲率半径などを引数としてもよい。
【0060】
推定部15は、算出した各区間の流速(Vi)に基づいて、区間同士の平均流速(Va)を算出する。具体的には、検出部12は、一の区間(例えば第五区間I5)と、この一の区間よりも下流側の他の区間(例えば第三区間I3)との間の平均流速(Va)を算出する。推定部15は、例えば、各区間(第五区間I5から第三区間I3まで)の流速(V5,V4,V3)を合計するとともに、区間数(3)で除することで平均流速(Va)を算出する。
【0061】
さらに、推定部15は、この推定部15にあらかじめ記憶されている一の区間及び他の区間の離間距離(L)を、算出した平均流速で除することで(L/Va)、一の区間から他の区間までの流木Dwの到達時間を推定する。推定部15は、推定した到達時間(L/Va)を検出部12に送る。なお、被害特定装置10は、記憶部を更に備え、当該記憶部が二つの区間の離間距離(L)をあらかじめ記憶し、推定部15が記憶部を参照することで離間距離(L)を取得してもよい。
【0062】
(検出部)
検出部12は、取得部11から受け付けた画像、及び推定部15から受け付けた到達時間に基づいて、各画像同士の違いを検出する。検出部12は、画像中の流木Dwの多さを各画像間で比較することで、隣り合う区間の画像同士の違いを検出する。以下、これら二つの区間のうちの一方を「一の区間」と称し、この一の区間に下流側から隣り合う区間を「他の区間」と称する。
【0063】
この際、検出部12は、観測時刻における一の区間の画像と、到達時間後の時刻における他の区間の画像との間の違いを検出する。ここでいう「違い」は、一の区間に存在する流木Dwよりも、他の区間に存在する流木Dwの方が少ないことを意味する。検出部12は、画像同士の違いを検出した場合、この違いに対応したカメラ情報を特定部13に送る。
【0064】
また、検出部12は、取得部11から受け付けた各区間における一の画像と、この一の画像が取得された時刻よりも前の時刻に取得された画像とに基づいて、各区間における経時的な流木Dwの流下状態を検出する。以下、一の画像が取得された時刻よりも前の時刻に取得された画像を「前時刻画像」と称する。
【0065】
具体的には、検出部12は、各区間における一の画像中の流木Dwの多さと前時刻画像中の流木Dwの多さとの違いを検出することで流下状態を検出する。
検出部12は、一の画像中の流木Dwの多さと前時刻画像中の流木Dwの多さとの間に違いがないことを検出した場合、その旨を示す信号をカメラ情報と共に特定部13に送る。ここでいう「カメラ情報」は、二つの画像(一の画像と前時刻画像)が、複数のカメラ20のうちどのカメラ20で取得されたかを含む情報である。
【0066】
具体的には、一の画像中及び前時刻画像中に流木Dwが無い場合、検出部12は、流下状態が「流木無」であることを検出し、その旨を示す信号をカメラ情報と共に特定部13に送る。一方、一の画像中及び前時刻画像中に流木Dwが有り、かつ、多さが同一である場合、流下状態が「流木有」であることを検出し、その旨を示す信号をカメラ情報と共に特定部13に送る。
【0067】
また、検出部12は、一の画像中の流木Dwの多さと前時刻画像中の流木Dwの多さとの間に違いがあることを検出した場合、その旨を示す信号を特定部13に送る。具体的には、一の画像中の流木Dwが前時刻画像中の流木Dwよりも多い場合、検出部12は、流下状態が「流木増」であることを検出し、その旨を示す信号をカメラ情報と共に特定部13に送る。一方、一の画像中の流木Dwが前時刻画像中の流木Dwよりも少ない場合、検出部12は、流下状態が「流木減」であることを検出し、その旨を示す信号をカメラ情報と共に特定部13に送る。
【0068】
(特定部)
特定部13は、検出部12から受け付けたカメラ情報に基づいて、被害Xの位置を特定する。具体的には、特定部13は、カメラ情報により定まった隣り合う二つの区間のうち、上流側の区間に面する陸地が被害Xの発生箇所であると特定する。例えば、特定部13は、第四カメラ24及び第五カメラ25を示すカメラ情報のみを検出部12から受け付けた場合、特定部13は、第五区間I5に被害Xが発生していると特定する。本実施形態における被害Xには、例えば、流木Dwを発生させる原因となる土砂崩れが挙げられる。
【0069】
また、特定部13は、検出部12から受け付けたカメラ情報及び流木Dwの流下状態に基づいて、被害Xの位置を特定する。
具体的には、特定部13は、一の区間における流下状態が「流木無」であり、この一の区間よりも下流側の区間における流下状態が「流木無」である場合、その区間では流木Dwが無いと特定する。
【0070】
また、特定部13は、一の区間における流下状態(「流木無」以外)と、この一の区間よりも下流側の区間における流下状態(「流木無」以外)とが同一である場合、一の区間、又はこの一の区間よりも上流側の区間に面する陸地に被害Xが発生していると特定する。
特定部13は、特定した被害Xの発生位置を報知部14に送る。
【0071】
(被害特定装置の動作)
続いて、本実施形態における被害特定装置10の動作について
図7を参照して説明する。
はじめに、被害特定装置10の取得部11は、各区間における画像を取得するとともに、各区間における水位を取得する(ステップS20)。
【0072】
次いで、被害特定装置10の推定部15は、ステップS20で取得された水位に基づいて、到達時間を推定する(ステップS21)。
【0073】
次いで、被害特定装置10の検出部12は、ステップS20で取得された複数の画像と、ステップS21で推定された到達時間とに基づいて、各画像同士の違いを検出する(ステップS22)。なお、検出部12は、ステップS22中で、一の画像と前時刻画像とに基づき各区間における流木Dwの流下状態を検出してもよい。
次いで、被害特定装置10の特定部13は、ステップS22で検出された各画像同士の違いに基づいて、被害Xとしての土砂崩れの位置を特定する(ステップS23)。なお、特定部13は、ステップS23中で、ステップS22で検出された各区間における流木Dwの流下状態に基づき被害Xの位置を特定してもよい。
【0074】
次いで、被害特定装置10の報知部14は、ステップS23で特定された発生位置で被害Xが発生していることを河川Rの監視者に知らせる(ステップS24)。
以上説明したステップS20からステップS24までの被害特定装置10の処理は、河川Rの監視中に繰り返し実行される。
【0075】
(作用効果)
上記によれば、検出された各画像同士の違いに基づいて、被害Xの位置が特定される。この際、一の区間と、到達時間後の他の区間との違いを検出するため、区間ごとの流速の違いによる影響を抑えた状態で被害Xの発生位置を特定することができる。
したがって、被害Xの発生位置をより高精度に特定することができる。
【0076】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は各実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0077】
なお、
図8は、本実施形態に係るコンピュータ1100の構成を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1100は、プロセッサ1110、メインメモリ1120、ストレージ1130、インターフェース1140を備える。
【0078】
上述の被害特定装置10は、コンピュータ1100に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
【0079】
プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、又は他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。
【0080】
また、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、又は上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部又は全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0081】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース1140又は通信回線を介してコンピュータ1100に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。上記実施形態では、ストレージ1130は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0082】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0083】
また、第一実施形態で説明した被害特定装置10の検出部12は、画像中の河川Rの水位の高さを比較することで、各画像同士の違いを検出してもよい。ここでいう「違い」は、一の区間における河川Rの水位が、この一の区間に上流側から隣接する区間における河川Rの水位よりも低いことを意味する。検出部12は、画像同士の違いを検出した場合、この違いに対応したカメラ情報を特定部13に送る。
【0084】
この場合、特定部13は、検出部12から受け付けたカメラ情報に基づいて、被害Xの位置を特定する。例えば、特定部13は、第一カメラ21及び第二カメラ22を示すカメラ情報のみを検出部12から受け付けた場合、第一区間I1に面する陸地が被害Xの発生位置であると特定する。この被害Xには、例えば、越水や破堤などが挙げられる。特定部13は、特定した被害Xの発生位置を報知部14に送る。
【0085】
ここで、上記の場合の被害特定装置10の動作について
図9を参照して説明する。
はじめに、被害特定装置10の取得部11は、複数のカメラ20から画像を取得する(ステップS1a)。
【0086】
次いで、被害特定装置10の検出部12は、ステップS1aで取得された複数の画像に基づいて、各画像同士の違いを検出する(ステップS2a)。
次いで、被害特定装置10の特定部13は、ステップS2aで検出された各画像同士の違いに基づいて、被害Xとしての越水又は破堤の位置を特定する(ステップS3a)。
【0087】
次いで、被害特定装置10の報知部14は、ステップS3aで特定された発生位置で被害Xが発生していることを河川Rの監視者に知らせる(ステップS4a)。
以上説明したステップS1aからステップS4aまでの被害特定装置10の処理は、河川Rの監視中に繰り返し実行される。
【0088】
また、第一実施形態で説明した被害特定装置10の検出部12は、画像中の河川Rの濁り具合を比較することで、各画像同士の違いを検出してもよい。ここでいう「違い」は、一の区間における河川Rの濁り具合が、この一の区間に上流側から隣接する区間における河川Rの濁り具合よりも高いことを意味する。検出部12は、画像同士の違いを検出した場合、この違いに対応したカメラ情報を特定部13に送る。
【0089】
この場合、特定部13は、検出部12から受け付けたカメラ情報に基づいて、被害Xの位置を特定する。具体的には、特定部13は、例えば第一カメラ21及び第二カメラ22を示すカメラ情報のみを検出部12から受け付けた場合、第一区間I1に面する陸地が被害Xの発生位置であると特定する。この被害Xには、例えば、河川Rの濁りの原因となる土砂崩れが挙げられる。特定部13は、特定した被害Xの発生位置を報知部14に送る。この被害特定装置10の動作は、上述した第一実施形態における被害特定装置10の動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0090】
また、第一実施形態で説明した「違い」は、複数の連続する区間に流木Dwが存在する一方で、この複数の連続する区間に上流側から隣接する区間に流木Dwが存在しないことを意味してもよい。この場合、検出部12が特定部13に送るカメラ情報は、流木Dwが存在する複数の連続する区間のうち最も上流側に位置する区間の全体を映すカメラ20と、この区間に上流側から隣接する区間の全体を映すカメラ20の情報を含んでいればよい。
【0091】
また、第二実施形態で説明した「違い」は、一の区間に存在する流木Dwよりも、この一の区間に上流側から隣接する区間に存在する流木Dwの方が多いことを意味してもよい。この場合、特定部13は、検出部12から受け付けたカメラ情報に基づいて被害Xの位置を特定する際、上記一の区間に上流側から隣接する区間に面する陸地に新たな土砂崩れが発生していると特定してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、被害特定装置10の特定部13が隣り合う区間の画像同士の違いを検出する旨を説明したが、これに限定されることはなく、隣り合っていない区間の画像同士の違いを検出してもよい。
【0093】
また、上記実施形態で説明した検出部12は、画像中の流木Dwの有無や多さ(多寡)を画像同士の違いとして検出しているが、必ずしも流木Dwに限定されることはなく、河川R上を流下(移流)する流下物であればよい。
【0094】
また、上記実施形態では、カメラ20が可視画像を取得可能である旨を説明したが、これに限定されることはない。カメラ20は、例えば、赤外画像や近赤外画像を取得可能なカメラであってもよい。この場合、上記実施形態で説明した被害特定装置10の取得部11は、可視画像に代えて赤外画像や近赤外画像を取得すればよく、検出部12は、赤外画像中や近赤外画像中の温度の分布(サーモグラフィー)などに基づく流下物の有無や多さを画像同士の違いとして検出すればよい。
【0095】
また、上記実施形態で説明した画像を取得する手段としては、カメラ20に限定されることはない。例えば、カメラ20に代えて、各区間に対応するように河川流域Rvに複数配置され、河川Rの各区間の全域にレーダー波(電波)を照射可能なレーダー(Radio Detection and Ranging)であってもよい。この場合、レーダーは、取得したレーダー画像を被害特定装置10に有線又は無線を通じて送信する。レーダー画像中では、対象区間中に流下物などの物体が存在する場合に、この物体にレーダー波が反射することで物体のサイズ及び位置などが表示される。上記実施形態で説明した被害特定装置10の取得部11は、可視画像に代えてレーダー画像を取得すればよく、検出部12は、レーダー画像中の戻ってきた電波を示したプロットなどに基づく流下物の有無や多さを画像同士の違いとして検出すればよい。
【0096】
また、上記の各実施形態で説明される被害特定装置10の動作は、それぞれ独立した構成に留まることはなく、各実施形態に記載の動作を適宜組み合わせて被害特定装置10の動作を構成してもよい。
【0097】
<付記>
実施形態に記載の被害特定装置、被害特定方法、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0098】
(1)第1の態様に係る被害特定装置10は、河川Rが延びる河川流域Rvに設置された複数のカメラ20から、各々の画像を取得する取得部11と、各前記画像同士の違いを検出する検出部12と、検出した前記違いに基づいて、被害Xの位置を特定する特定部13と、を備える。
【0099】
これにより、複数のカメラ20のそれぞれによって取得された画像同士の違いを用いることで河川流域Rv中の被害Xの位置が特定される結果、例えば、河川Rの監視者は、被害Xの位置に近い区域に居住する住民に対して迅速かつ正確に避難指示を発令することができる。
【0100】
(2)第2の態様に係る被害特定装置10は、(1)の被害特定装置10であって、各前記カメラ20は、複数の区間に分割された前記河川Rにおける一つの区間を映すように、かつ各前記カメラ20同士が互いに異なる区間を映すように前記河川流域Rvに設置されていてもよい。
【0101】
これにより、上記作用をより高精度に実現することができる。
【0102】
(3)第3の態様に係る被害特定装置10は、(2)の被害特定装置10であって、前記検出部12は、前記河川Rにおける一の区間を流れる流下物(流木Dw)の多さと、前記一の区間よりも上流側又は下流側の他の区間を流れる流下物の多さとの違いを各前記画像同士の違いとして検出してもよい。
【0103】
これにより、画像同士の違いを流下物の多さの違いとして検出するため、例えば土砂崩れなどの被害Xの位置を特定することができる。
【0104】
(4)第4の態様に係る被害特定装置10は、(3)の被害特定装置10であって、前記特定部13は、検出した前記違いに基づいて、前記河川Rに架かる橋梁Brのうち前記流下物が集積した橋梁Brの位置を前記被害Xの位置として特定してもよい。
【0105】
これにより、流下物の詰まりが生じている橋梁Brの位置が被害Xの位置として特定されるため、例えば河川Rの監視者は、この橋梁Brが存在する区間で越水又は破堤の可能性があると判断することができる。
【0106】
(5)第5の態様に係る被害特定装置10は、(1)又は(2)の被害特定装置10であって、前記検出部12は、前記画像中の前記河川Rの濁り具合の違いを各前記画像同士の違いとして検出してもよい。
【0107】
これにより、画像同士の違いを河川Rの濁り具合の違いとして検出するため、例えば土砂崩れの位置を特定することができる。
【0108】
(6)第6の態様に係る被害特定装置10は、前記検出部12は、前記画像中の前記河川Rの水位の違いを各前記画像同士の違いとして検出し、前記特定部13は、検出した前記違いに基づいて、前記河川流域Rv中に生じた越水又は破堤の位置を前記被害Xの位置として特定してもよい。
【0109】
これにより、例えば河川Rの監視者は、被害Xの位置に近い区域に居住する住民に対して迅速かつ正確に避難指示を発令することができる。
【0110】
(7)第7の態様に係る被害特定装置10は、(3)又は(4)の被害特定装置10であって、前記検出部12は、あらかじめ取得された各前記区間の画像及び該画像の取得時における特徴量を入力データとし、前記画像中の前記流下物の多さを示す分類を出力データとするデータセットで繰り返し機械学習された学習済みモデルを用いて、前記一の区間を流れる流下物の多さと、前記他の区間を流れる流下物の多さとの違いを各前記画像同士の違いとして検出してもよい。
【0111】
(8)第8の態様に係る被害特定装置10は、(3)又は(4)の被害特定装置10であって、前記河川Rにおける二つの区間の間を前記流下物が流下した時間を推定する推定部15を更に備え、前記検出部12は、前記二つの区間のうち上流側の区間を前記一の区間とし、下流側の区間を前記他の区間として、前記一の区間を流れる前記流下物の多さと、前記流下した時間後の前記他の区間を流れる前記流下物の多さとの違いを各前記画像同士の違いとして検出してもよい。
【0112】
(9)第9の態様に係る被害特定方法は、河川Rが延びる河川流域Rvに設置された複数のカメラ20から、各々の画像を取得する取得工程と、各前記画像同士の違いを検出する検出工程と、検出した前記違いに基づいて、被害Xの位置を特定する特定工程と、を実行する。
【0113】
(10)第11の態様に係るプログラムは、河川Rが延びる河川流域Rvに設置された複数のカメラ20から、各々の画像を取得するステップと、各前記画像同士の違いを検出するステップと、検出した前記違いに基づいて、被害Xの位置を特定するステップと、をコンピュータ1100に実行させる。
【符号の説明】
【0114】
1…被害特定システム 10…被害特定装置 11…取得部 12…検出部 13…特定部 14…報知部 15…推定部 20…カメラ 21…第一カメラ 22…第二カメラ 23…第三カメラ 24…第四カメラ 25…第五カメラ 26…第六カメラ 27…第七カメラ 1100…コンピュータ 1110…プロセッサ 1120…メインメモリ 1130…ストレージ 1140…インターフェース B…堤防 Br…橋梁 Dw…流木 I1…第一区間 I2…第二区間 I3…第三区間 I4…第四区間 I5…第五区間 I6…第六区間 I7…第七区間 R…河川 Rv…河川流域 X…被害