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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055000
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/02 20060101AFI20240411BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F24F6/02 B
F24F6/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161542
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】599026946
【氏名又は名称】株式会社テクノファイン
(71)【出願人】
【識別番号】519210077
【氏名又は名称】熊野 勝文
(72)【発明者】
【氏名】熊野 勝文
(72)【発明者】
【氏名】宮川 久行
(72)【発明者】
【氏名】本間 孝治
【テーマコード(参考)】
3L055
【Fターム(参考)】
3L055BC04
3L055CA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒーター部分にスケールが付き、スケールが固着する加湿皿において、スケールを付きにくくし、スケールが付いた場合のヒーターの清掃も簡単に出来る加熱蒸発式加湿器を提供する。
【解決手段】ヒーター3にわずかな距離を保って金属薄板等の高熱伝導性キャップ4と高熱伝導性キャップの外側にこれを包み込んだ円筒キャップ2とを配することにより、これらの二つの部品に選択的にスケールが付くようにし、洗浄が簡単に出来るようにこれらの部品を上方に取れるような構造とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.水中に直漬された熱源ヒーターにより水を加熱して水蒸気を発生させるスチーム式加湿器であって、
2.加熱される水を入れる蒸発皿と、
3.蒸発皿に固定された加熱ヒーターを備えており、
4.加熱ヒーターにわずかな距離を保つ高熱伝導性キャップと
5.高熱伝導性キャップの外側にこれを包み込む円筒キャップとを配した事を特徴とするスチーム式加湿器。
【請求項2】
請求項1に記載のスチーム式加湿器であって、
加熱ヒーターにわずかな距離を保って固定される高熱伝導キャップは、加熱ヒーターに対して脱着可能である。
【請求項3】
請求項1に記載のスチーム式加湿器であって、
高熱伝導金属キャップの外側にこれを包み込んだ円筒キャップは、
水蒸気の抜ける孔が開いていることを特徴としたスチーム式加湿器。
【請求項4】
請求項1に記載のスチーム式加湿器であって、
加熱ヒーターにわずかな距離を保って固定される高熱伝導キャップは、
水蒸気の抜ける孔が開いていることを特徴としたスチーム式加湿器。
【請求項5】
請求項1にある円筒キャップは外側表面が親水性、および/または、粗面加工されている事を特徴とするスチーム式加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を加熱して水蒸気を発生するスチーム式加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
水を加熱し、蒸気を発生させ、加湿するスチーム式加湿器においては、給水タンクの水を蒸発皿へ供給し、ヒーター等の加熱機器で加熱し水を蒸発させ水蒸気を発生させる方法が一般的に使われている(図2)。この場合の水5としては水道水を使用しているが、水道水には金属(カルシュウムやマグネシウムなど)が硫酸塩や炭酸塩などの形で含まれているので蒸発時にこれらの塩類がスケールとなって、蒸発皿やヒーター部へ付着・堆積する。これを防ぐためには、定期的に蒸発皿1やヒーター3を洗浄により洗い、スケールを除去しなければならない。
【0003】
しかしながら、従来のスチーム式加湿器においては、蒸発皿とヒーターが一体化された構成となっているため、蒸発皿1のみを取り外して洗浄することが出来ず、スケール除去作業に手間のかかることが課題となっていた。(図2
【0004】
この課題を解決するために特許文献1、あるいは特許文献2のような提案が為された。特許文献1には、発熱部、または/および、蒸発部を内表面積の大きな繊維メッシュなど、取り外し可能な透水性濾過材で覆い、ここにスケールを堆積させ、洗浄はこの濾過材を取り外し行うことで作業を容易にすることが記されている。
【0005】
一方、特許文献2には、スケールを除去するために洗浄を容易にする構成が開示されている。特許文献2に開示された加湿器は、給水タンクから加熱タンクに供給された水を加熱するために加熱タンクから離れた位置に配置した電磁誘導コイル(IHコイル)を用いる。加熱タンクは磁性体材料からなり、IHコイルからの高周波磁束によって自己発熱しタンク内の水を加熱する。加熱により水が蒸発するとともにこの磁性材タンク(ヒーター)にスケールが堆積する構造となっている。
【0006】
タンクとコイル間の分離壁を境に下方にIH源と上方にヒーターとなる磁性体が配置され、蒸発皿の洗浄をし易くしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-327741号公報
【特許文献2】特開2019-124383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
まず、特許文献1のスケールを透水性濾過材に析出させる方式では、スケールがヒーター近傍に集中して堆積する。時間経過とともにヒーターの接水部がスケール固着物で覆われる結果、原水への熱伝達効率の低下とヒーターの過熱損傷を引き起こすのでスケール除去(透水性濾過材の清掃、交換)を頻繁に行う必要がある。また透水性濾過材に掛るランニングコストも無視できないし、交換も時間が掛かることが懸念される。更に使用しない場合には、カビが出易いなどの問題もある。このようにコスト面、衛生面、取り扱いの簡単さ等に問題がある。
【0009】
一方特許文献2のIHコイルを使用するやり方は、コイルを使うためにコストの面で高くなる欠点がある。他にもIHコイルとヒーターの距離は、いわゆる効率と相関しており、長時間使うような使い方もすることから加湿器全体が熱く加熱することも考えられ、駆動電源部の冷却など構成が一層、複雑になる。
【0010】
その他、文献1,2に記載以外の方法として水道水の代わりに純水を使えば、スケールの元となる元素がないのでスケールが付かないことが予想されるが、この方法も純水が必要でランニングコストが掛かり、スケール以外にも休止時にぬめり等の有機系の汚れやカビの発生など懸念されるので使用環境が制限される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、ヒーターを囲う熱伝導金属キャップ4、および、4の周りを同軸状に囲う円筒キャップ2を配置したことを特徴とする方法を提案する。これらの2個の機能部品は、個別に上部から上方に持ち上げるだけで容易に取り外すことが出来る構造と成っている。しかも2個の部品は軽く、これらの部品に付着したスケールの除去・洗浄が容易に行える。この脱着可能な2個の機能部品の表面にスケールの大部分を堆積させ、ヒーターの接水部でのスケール堆積を防ぐことが可能となった。
【0012】
まず、スケール発生の主要因としては、原水蒸発の時間経過とともに浸水状態の発熱部材表面で、水に溶存していた複数の無機塩類が凝縮、析出することが挙げられる。通常、蒸発型加湿器に使われる上水道水の溶存塩類は硬度として50~100程度であり、1000mlの原水蒸発で0.5~5gのスケールが発生することになる。
【0013】
ヒーター電力200W程度の加湿器においては一日2l程度の原水を消費するので、水中のヒーター部材伝熱面積が25平方cm程度、スケール物質の比重を2程度とすると、硬度100の原水から析出するスケールの発熱体(ヒーター)表面での平均厚みは一日あたり0.1mmとなり、スケール除去しなければ発熱体から流入水への熱伝達効率が時間とともに低下、電力消費増大とヒーター寿命を短くすることになる。
【0014】
図2に発熱体(ヒーター)が原水に直浸された従来型加湿器の構成を示す。 発熱体表面でスケールが発生するメカニズムとしては、加熱開始とともに発熱体(ヒーター)表面で昇温とともに溶存空気と水蒸気からなる気泡が多数発生、この気泡領域に在る原水が気化するとともに溶存していた無機塩類が発熱体(ヒーター)表面にスケールの初期核として析出することが挙げられる。水蒸気発生部では蒸散する水量に相当する量の原水が給水容器から連続的に供給される結果、加熱時間経過とともにスケール核は成長し、肥大化する。
【0015】
本発明は取り外し可能な2個の機能部品(図1中の2,4)を取り付けることにより、発熱体部材表面でのスケール核発生、成長を抑制し、スケール付着・堆積の部位を発熱部材表面から離れた位置にある2個の機能部品表面に移すものである。
【0016】
図1において、本発明の金属キャップ4と円筒キャップ2は同軸状に配置され、金属キャップ4は発熱体3の水浸部を覆い、さらに円筒キャップ2が金属キャップ4を覆うように取り付けられる。
金属キャップ4と円筒キャップ2の挿入により、蒸気発生部の原水溜まり5は、発熱部材が浸る内側容積(V1)、金属キャップ4の外側で円筒キャップ2の内側に制限された容積(V2)、円筒キャップ2の外側で原水容器との間の容積(V3)に分離される。
V1,V2の水位は原水蒸散により低下するが、この水位低下を補う流路として金属キャップ4および円筒キャップ2の底部は1mm程度の狭い間隙を有している。この間隙の流れ抵抗により突沸時に供給路における瞬間的な逆流が緩和し、原水の安定した供給ができる。
【0017】
以下まず1個目の部品である熱伝導金属キャップ4の作用について説明する。金属キャップ4はCuなど熱伝導が良い金属で0.1-1mm程度の厚み帯板でできており、発熱部材3の表面に直接接触する原水を金属キャップ4と容器1底部の間隙からのみ流入させる。
このキャップ4とヒーター3で囲まれた水の容量V1はヒーターに接しているのでヒーター3と熱伝導金属キャップ4の距離を0.1~数ミリにすることにより、沸騰した水が上下に激しく移動し突沸が起き、V1部が高温水蒸気で置換される。これにより発熱体表面ではスケール核が連続して付くために必要な原水の滞留接触時間が少なく見積もっても10分の1以下と短く、また場所も非定常となる。突沸時には発熱体と金属キャップ4の間は高温水蒸気で満たされ、これによる高い熱伝導が発熱体から原水への熱移動を担う。
金属キャップ4上方は蒸散する高温水蒸気が抜けるよう開口(8)されており、突沸時の高温水蒸気は速やかに放出される。突沸水面から飛沫水滴が金属キャップ4のうらがわ水上部表面に付着するが、これは一か所に固着することはなく液滴は4の内外両面に濡れ拡がる。このようにして金属キャップ4の上部への原水供給がV1、V2両領域からの突沸および金属キャップ4の壁面での原水浸潤により起こる。金属キャップ4上部温度についてはヒーター3の温度(T0)、V1の平均温度(T1)としてT0>T1>T2>T3でT2は100℃より高く、水面から露出した金属キャップ4の表面温度は少なくともT1同等となる。この結果、高温水蒸気の4上部での再凝縮が抑えられ、浸潤した沸騰原水の希釈も阻止されるのでスケールの再溶解もない。この間、水蒸気蒸散は持続するので金属キャップ4の水面上に出た領域にスケールを優先堆積することができる。
【0018】
上記機構により、熱伝導金属キャップ4の内側でヒーターに近い領域は、ほとんどスケールが付かない。金属キャップ4は材質がCuと言う熱伝導性が高い金属の為に、100℃近くの温度となり高温水蒸気の再凝縮が抑えられ、一方、V1,V2領域からの原水供給は持続する結果水面上に出た熱伝導金属キャップ4の外側にスケールが優先成長する。
【0019】
次に2番目の部品である円筒キャップ2は原水溜まりV1およびV2からの高温水蒸気を空気中に導くための気流ガイドとして必要な10センチ程度の長さを有し、適度な保温性を有するプラスティックなどでできている。高温水蒸気が、円筒キャップ2の上方の空隙(8)から出ていく際、円筒キャップ2の外側は外気温暴露となっており、高温水蒸気は上方拡散中に円筒キャップ2の内壁に触れ一部が再凝縮しV2に還流する。これにより円筒キャップ2の内壁における水上に出た部分では再凝縮水が流下するのでV2における原水の浸潤が阻止されスケールの発生はない。
円筒キャップ2の内壁で水中にある部分ではV2部の原水は還流する再凝縮水9で希釈されるので原水中のスケール濃度も下がり、また、原水は円筒キャップ2の外側でのスケール発生により、V2領域に流入する原水の溶存塩類の濃度が減少しているので、スケール発生は無視できるレベルである。
円筒キャップ2の外側表面でV3に水浸している部分は原水流入口にあるので、溶存物質の析出するほどの温度差はなく、スケールは円筒キャップ2の内部表面と同じ無視できるレベルの量である。一方この、円筒キャップ2の外側表面で、V3の水面から大気暴露している境界領域では、原水接触の気液境界部の蒸発によりスケール核が生成する。これは初めは水面近くで優先発生するのがやがて時間経過とともに浸潤俎上しV2外面の空気暴露部ほぼ全面を被覆する。
これは円筒キャップ2の内壁部で高温水蒸気が凝縮するときの凝縮熱が円筒キャップ2の外側表面に浸潤した原水の蒸発に使われる結果、その部位に溶存物質が析出するものである。このスケールで覆われた円筒キャップ2の表面はフレーク状の微細凹凸を形成するに至り、極めて大きな蒸発表面積を持つことになる。この結果、スケールの発生量としては熱伝導金属キャップ4にくらべ一桁近い効率でスケール成長が持続する。V1の突沸により
発熱体への原水の流入は抑制され、V2からの蒸発量は増す。部材2を通過する熱量Q2が増加し、外壁節水部でのスケール核が増加する。
また、円筒キャップ2の外側表面を親水性処理や浸潤しやすいフィルムなどで被覆することにより、V3におけるスケール核形成初期の原水浸潤を速やかに起こすことができ、2の外側表面のスケール被覆形成までの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスチーム式加湿器は、ヒーター周りに適切な部品2,4を配置し、この部品に選択的にスケールを着きやすくした。ヒーター接水部のスケール堆積を無視できる結果、長期間の連続運転が可能。またこれらの部品は、取り外しが簡単なことから、部品全体を丸洗い洗浄するなど、スケール除去清掃も短時間容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のスチーム式加湿器の蒸気発生部。
図2】従来のスチーム式加湿器。
図3】本発明のスチーム式加湿器。
【発明を実施するための形態】
【0022】
スチーム式加湿器のスケールの発生を特定の場所に設定し、洗浄しやすい構造とした。
【実施例0023】
図1は、本発明によるスチーム式加湿器の蒸気発生部である。蒸発皿1に固定されたヒーター3が有り、このヒーター3の浸水部は熱伝導金属キャップ4との間に僅かの隙間を有する。この隙間はヒーターに一番近く、熱伝導金属キャップ4の裾から水が供給されるものの、常に温度が高く水が突沸状態で高温水蒸気で満ち、スケール発生が抑制される。熱伝導キャップの水面上の部分には突沸飛沫・液滴の浸潤によるスケール発生が集中する。
【0024】
円筒キャップ2は、水に浸かっている部分は内壁、外壁ともほとんどスケールは付かず、水面上部は外壁にのみ浸潤原水の蒸発乾固によるスケールが堆積する。また内壁は再凝縮水の流下によりほとんどスケールは発生しない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
蒸気発生熱源が水に直浸する構造の水蒸気発生装置は加湿器のほか、水蒸気を熱源として利用する工業製品にも用いられるが、熱源部に発生するスケール処理が課題である。本発明は熱源に対し、取り外し、保守の容易な部材を用いその表面にスケールを優先的に発生させ、熱源表面でのスケール発生を抑えるものである。
【符号の説明】
【0026】
1 蒸発皿
2 円筒キャップ
3 ヒーター
4 熱伝導金属キャップ
5 水
6 給水タンク
7 スケール
8 水蒸気
9 再凝縮水
10 底部隙間
11 蒸発面
12 給水バルブ
13 水蒸気突出孔
T0 ヒーター中心温度
T1 ヒーター外被温度
T2 容器C内原水の平均温度
T3 蒸気離脱水面温度
T4 再凝縮水部温度
Q2 再凝縮部の放熱
図1
図2
図3