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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055008
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】燃焼装置およびこれを備えた温水装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/82 20060101AFI20240411BHJP
   F23D 14/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F23D14/82 Z
F23D14/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161558
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】宮川 晴徳
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 佑輝
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017AA05
3K017AB01
3K017AB08
3K017AD01
3K017AD12
3K017AE03
3K017DE01
(57)【要約】
【課題】水素または水素含有ガスが燃料ガスとされている条件下において、炎孔プレートの静電気放電に起因して燃料ガスに不当な着火が生じることを適切に防止することが可能な燃焼装置を提供する。
【解決手段】非導電性の炎孔プレート4と、この炎孔プレート4の裏面側に隣接し、かつ水素または水素含有ガスとしての燃料ガスと空気との混合ガスを炎孔プレート4に導くチャンバ30と、を備えている燃焼装置Cであって、グランド電位に設定され、かつ炎孔プレート4の裏面に接触して設けられた地絡用導電部5を、さらに備えており、この地絡用導電部5は、炎孔プレート4のうち、複数の炎孔40が設けられている領域の略全域に及んだ配置に設けられている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炎孔が設けられている非導電性の炎孔プレートと、
この炎孔プレートの裏面側に隣接しており、かつ水素または水素含有ガスとしての燃料ガスと空気との混合ガスを、前記炎孔プレートに導くチャンバと、
を備えており、
前記チャンバから前記炎孔プレートに導かれることにより前記複数の炎孔を通過した前記混合ガスが、前記炎孔プレートの表面側領域において燃焼するように構成されている、燃焼装置であって、
グランド電位に設定され、かつ前記炎孔プレートの裏面に接触して設けられた地絡用導電部を、さらに備えており、
この地絡用導電部は、前記炎孔プレートのうち、前記複数の炎孔が設けられている領域の略全域に及んだ配置に設けられていることを特徴とする、燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置であって、
前記チャンバを内側に形成している金属製かつグランド電位のバーナケースを、さらに備えており、
前記地絡用導電部は、前記バーナケースに電気的に導通している、燃焼装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃焼装置であって、
前記炎孔プレートを前記バーナケースに取付ける金属製の取付け部材を、さらに備えており、
この取付け部材は、前記地絡用導電部に接触する接触部を有していることにより、前記地絡用導電部と前記バーナケースとは前記取付け部材を介して電気的に導通している、燃焼装置。
【請求項4】
請求項1に記載の燃焼装置であって、
前記地絡用導電部は、金属製の複数の線状部が交差して繋がった網状である、燃焼装置。
【請求項5】
請求項4に記載の燃焼装置であって、
前記地絡用導電部の前記各線状部は、断面円形状であり、前記複数の炎孔の開口部は、前記各線状部と重なった箇所においても開放状態にある、燃焼装置。
【請求項6】
請求項1に記載の燃焼装置であって、
前記地絡用導電部は、前記炎孔プレートの裏面に積層された導電膜により構成されている、燃焼装置。
【請求項7】
燃焼装置と、
この燃焼装置によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なって湯水を加熱するための熱交換器と、
を備えている、温水装置であって、
前記燃焼装置として、請求項1ないし6のいずれかに記載の燃焼装置が用いられていることを特徴とする、温水装置。
【請求項8】
請求項7に記載の温水装置であって、
前記熱交換器は、伝熱管を内部に収容する金属製の缶体を備え、かつこの缶体は、グランド電位に設定された金属製であり、
前記地絡用導電部は、前記缶体に電気的に導通している、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎孔プレートを備えたタイプの燃焼装置、およびこれを備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼装置としては、複数の炎孔が設けられた炎孔プレートを利用して燃料ガスを燃焼させる全1次空気燃焼方式のものがある。このような燃焼装置においては、燃料ガスと空気との混合ガスを、炎孔プレートに向けてその裏面側のチャンバ(混合室)から供給する。前記混合ガスは、各炎孔を通過して炎孔プレートの表面側に到達し、この表面側の領域(燃焼領域)において燃焼する。
【0003】
前記した燃焼装置において、燃料ガスを安定的に燃焼させるには、各炎孔を通過する混合ガスの流速の管理が重要であり、そのためには、各炎孔の寸法管理が重要である。そこで、従来においては、炎孔プレートとして、セラミック製のものがある(特許文献1~3を参照)。セラミック製であれば、各炎孔の寸法管理が比較的容易であり、また耐熱性にも優れる。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次のように解決すべき課題がある。
【0005】
近年においては、自然環境保護の観点から低炭素社会を実現する施策が促進されている実情がある。そのための施策として、燃焼装置の技術分野においては、燃料ガスとして水素を用いることが考えられる。水素は、燃料ガスとしてよく用いられる都市ガス(主成分:メタンCH4)や、LPガス(主成分:プロパンC38)などと比較すると、点火に必要なエネルギが低く、着火し易い。
一方、炎孔プレートがセラミック製であって、非導電性(低電気伝導率)である場合には、この炎孔プレートに静電気が帯電し易い。
このため、炎孔プレートにおいて静電気放電が発生することにより、本来、燃焼を想定していない箇所で水素に着火を生じる虞がある。また、そのような着火が、炎孔プレートの裏面側、つまり混合ガス流れ方向の上流側のチャンバ内において発生すると、燃焼装置の機器損傷を生じる虞がある。したがって、このようなことを適切に回避することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2689190号公報
【特許文献2】実開平1-178447号公報
【特許文献3】特許第4034749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、水素または水素含有ガスが燃料ガスとされている条件下において、炎孔プレートの静電気放電に起因して燃料ガスに不当な着火が生じることを適切に防止することが可能な燃焼装置、およびこれを備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される燃焼装置は、複数の炎孔が設けられている非導電性の炎孔プレートと、この炎孔プレートの裏面側に隣接しており、かつ水素または水素含有ガスとしての燃料ガスと空気との混合ガスを、前記炎孔プレートに導くチャンバと、を備えており、前記チャンバから前記炎孔プレートに導かれることにより前記複数の炎孔を通過した前記混合ガスが、前記炎孔プレートの表面側領域において燃焼するように構成されている、燃焼装置であって、グランド電位に設定され、かつ前記炎孔プレートの裏面に接触して設けられた地絡用導電部を、さらに備えており、この地絡用導電部は、前記炎孔プレートのうち、前記複数の炎孔が設けられている領域の略全域に及んだ配置に設けられていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、炎孔プレートは非導電性であるため、本来的には静電気が帯電する虞がある。ただし、炎孔プレートの裏面には、グランド電位の地絡用導電部が接触して設けられ、しかもその範囲は複数の炎孔が設けられている領域の略全域に及んでいるため、炎孔プレートの裏面側においては除電が適切に図られる。その結果、燃料ガスが、水素または水素含有ガスであって、点火に必要なエネルギが低く、着火し易いものであるものの、炎孔プレートの裏面側における静電気放電に起因して燃料ガスに着火を生じることは適切に防止される。既述したように、炎孔プレートの裏面側のチャンバ内において燃料ガスに着火が生じたのでは、機器損傷を生じる虞があるが、本発明によれば、そのようなことを適切に防止することが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記チャンバを内側に形成している金属製かつグランド電位のバーナケースを、さらに備えており、前記地絡用導電部は、前記バーナケースに電気的に導通している。
【0012】
このような構成によれば、チャンバを囲むバーナケースを利用して、地絡用導電部をグランド電位に設定し、静電気を前記バーナケースに逃がすことができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記炎孔プレートを前記バーナケースに取付ける金属製の取付け部材を、さらに備えており、この取付け部材は、前記地絡用導電部に接触する接触部を有していることにより、前記地絡用導電部と前記バーナケースとは前記取付け部材を介して電気的に導通している。
【0014】
このような構成によれば、バーナケースに炎孔プレートを取付けるための取付け部材を利用して、地絡用導電部をバーナケースに電気的に導通させることができる。地絡用導電部をグランド電位に設定するための専用の配線部材などは不要であり、構成の合理化、簡素化を図る上で好ましい。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記地絡用導電部は、金属製の複数の線状部が交差して繋がった網状である。
【0016】
このような構成によれば、地絡用導電部の通気開口部を大きな開口面積で確保することができる。また、地絡用導電部全体のボリュームを小さくしつつ、地絡用導電部を、炎孔プレートの複数の炎孔が設けられている領域の略全域に及んだ配置とすることも容易に行なうことが可能である。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記地絡用導電部の前記各線状部は、断面円形状であり、前記複数の炎孔の開口部は、前記各線状部と重なった箇所においても開放状態にある。
【0018】
このような構成によれば、後述の図10を参照した説明からも理解されるように、炎孔プレートの炎孔と地絡用導電部の線状部とが重なった箇所において、炎孔に混合ガスが適切に流入しなくなる不具合を生じないようにすることが可能である。また、燃焼装置の製造に際して、地絡用導電部を炎孔プレートの裏面に接触させるように設ける場合に、地絡用導電部の線状部が炎孔と重ならないように設定する必要はない、または少ないため、地絡用導電部を設ける作業の容易化も図られる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記地絡用導電部は、前記炎孔プレートの裏面に積層された導電膜により構成されている。
【0020】
このような構成によれば、地絡用導電部を設ける作業の容易化などを図り、製造コストの低減化を図ることができる。また、地絡用導電部としては全体のボリュームが小さく、軽量なものとすることもできる。
【0021】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、燃焼装置と、この燃焼装置によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なって湯水を加熱するための熱交換器と、を備えている、温水装置であって、前記燃焼装置として、本発明の第1の側面により提供される燃焼装置が用いられていることを特徴としている。
【0022】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される燃焼装置について述べた効果と同様な効果が得られる。
【0023】
本発明において、好ましくは、前記熱交換器は、伝熱管を内部に収容する金属製の缶体を備え、かつこの缶体は、グランド電位に設定された金属製であり、前記地絡用導電部は、前記缶体に電気的に導通している。
【0024】
このような構成によれば、熱交換器の缶体を利用して、地絡用導電部をグランド電位に設定し、静電気を前記缶体に逃がすことができる。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る温水装置の分解斜視図である。
図2図1に示した温水装置の組立状態における要部断面図である。
図3図2の要部拡大断面図である。
図4図1および図2に示す温水装置の燃焼装置を構成する炎孔プレートおよびその付属部品の組立状態を示す斜視図である。
図5図4の平面図である。
図6図5のVI-VI断面図である。
図7図6の分解断面図である。
図8図4の分解斜視図である。
図9】(a)は、図4図8に示す炎孔プレートおよび地絡用導電部の組み合わせ構造を示す平面図であり、(b)は、(a)の一部拡大平面図である。
図10図9(b)のX-X断面図である。
図11】(a)は、図9および図10に示す炎孔プレートの平面図であり、(b)は、(a)の一部拡大平面図である。
図12】(a)は、図9および図10に示す地絡用導電部の平面図であり、(b)は、(a)のXII-XII断面図である。
図13】本発明の他の例を示す要部拡大断面図である。
図14】(a)は、本発明の他の例を示す要部平面図であり、(b)は、(a)のXIV-XIV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
図1および図2に示す温水装置WHは、バーナ部Bを有する燃焼装置C、および熱交換器HEを備えた給湯装置として構成とされている。
【0029】
熱交換器HEは、燃焼装置Cのバーナ部Bにより発生されて下向きに進行する燃焼ガスから熱を回収し、湯水加熱を行なうためのものである。この熱交換器HEとしては従来既知のものを用いることが可能であり、平面視略矩形筒状の缶体8、複数の胴パイプ9A、および伝熱管9を備えている。
複数の胴パイプ9Aは、缶体8の側壁部80a~80cの内面側に沿って設けられた平面視略コ字状であり、缶体8の側壁部80dに設けられたヘッダ流路92a,92bを介して一連に繋がっている。伝熱管9は、熱回収用の複数のフィン97に接合され、かつ水平方向に延びる複数の直状の管体部90が、缶体8の外部において略U字状のベンド管91を介して一連に接続された構成である。
【0030】
この熱交換器HEにおいては、最上段の胴パイプ9Aにその入水口98から湯水が供給される。この湯水は、その後に上下複数段の胴パイプ9Aを、ヘッダ流路92a,92bを経由しながら図2の矢印N1~N3に示すように下段側に流れる。次いで、前記湯水は、矢印N4~N7に示すような順序で伝熱管9(直状の複数の管体部90およびベンド管91)を流れ、出湯口99に到達する。このような過程において、湯水は前記燃焼ガスにより加熱され、出湯口99から所望の給湯先に供給される。
【0031】
燃焼装置Cは、前記したバーナ部Bに加え、ファン1、およびバーナケース3を備えている。ファン1は、その吸気口から外部の空気を吸入し、吐出口から吐出するが、この空気の流通経路には、不図示のガス管を経由して送られてきた燃料ガスとしての水素が導入される。このことにより、水素と空気との混合ガス(予混合ガス)が生成される。この混合ガスは、バーナケース3の給気用開口部31からその内側のチャンバ30に流入し、バーナ部Bに到達する。
【0032】
バーナ部Bは、炎孔プレート4、地絡用導電部5、シール部材6、ならびに上側および下側の取付け部材7A,7Bを組み合わせて構成されている(図4図8も参照)。
【0033】
炎孔プレート4は、セラミック製の非導電性(低電気導電率)の矩形平板状であり、前記混合ガスを通過させるための複数の炎孔40が設けられている。これら複数の炎孔40は、小径の円形貫通孔であり、たとえば図11に示すように、平面視において、クロスハッチング状(厳密には、クロスハッチングの破線状)に並んだ配列に設けられている。
【0034】
地絡用導電部5は、図12(a)によく表われているように、金属製の複数の線状部50が交差して繋がった平面視クロスハッチング状の網状であり、複数の線状部50によって囲まれた平面視菱形状の領域は、前記混合ガスを通過させるための通気開口部51である。この地絡用導電部5は、複数の線状部50を構成する部材として、たとえばステンレス製線材などの金属製線材を用い、かつこれらを網状に編んだ構成とすることもできる。各線状部50は、好ましくは、図12(b)に示すように、断面円形状である。これは、後述するように、地絡用導電部5が炎孔40を塞がない構成とするのに役立つ。
【0035】
図9によく表われているように、地絡用導電部5は、炎孔プレート4の裏面(上面)に
接触した状態でその上側に重ねられている。地絡用導電部5は、炎孔プレート4の複数の炎孔40が設けられている領域の略全域に及ぶサイズであるが、本実施形態においては、地絡用導電部5の縦横の幅L1,L2が、炎孔プレート4の縦横の幅L1’,L2’よりも大きくされ、適当なはみ出し寸法L1”,L2”を生じる構成とされている。
地絡用導電部5の複数の線状部50の形状と、炎孔プレート4の複数の炎孔40の配列とは、いずれもクロスハッチング状であるものの、これらはあまり大きな割合で重ならないように、それらの配列ピッチや傾斜角が相違している。
【0036】
図10の符号Na,Nbで示すように、炎孔40上に線状部50が重なっている部分が存在する。ただし、既述したように、線状部50は、断面円形状であるため、その下方に位置する炎孔40の開口部を全閉状態に塞ぐことはなく、炎孔40の開口部は、線状部50と重なった箇所においても開放した状態にあり、この炎孔40に対しても混合ガスは流入可能である。
【0037】
図7および図8によく表われているように、上側および下側の取付け部材7A,7Bは、導電性を有する金属製の部材であり、炎孔プレート4および地絡用導電部5を保持し、かつこれらをバーナケース3に取付けるためのものである。
下側の取付け部材7Bは、中央部に矩形状の開口部70が設けられた枠状であり、この開口部70には炎孔プレート4の下部が嵌入して保持される。開口部70の内周面下部には、炎孔プレート4の落下を阻止するストッパ用凸部71が設けられている。
【0038】
上側の取付け部材7Aは、下側の取付け部材7Bとの組み合わせにより、炎孔プレート4および地絡用導電部5を挟み込むための部材である。この上側の取付け部材7Aは、矩形枠状をなす複数のフランジ部72、これらの内周縁部から上向きに起立した矩形枠状の複数の起立壁部73、およびこれらの上端から取付け部材7Aの内方側に屈曲した複数の突出片部74を備えている。上側の取付け部材7Aは、そのフランジ部72が、下側の取付け部材7Bの外周縁部の上側に重ねられた状態とされた上で、下側の取付け部材7Bに組み付けられている。この組み付けの固定は、たとえば不図示のビスなどの締結部材を用いて図られるが、たとえば後述するビス68を利用することもできる。
【0039】
図3図6によく表われているように、上側の取付け部材7Aの複数の突出片部74は、地絡用導電部5の上面部に接触しており、本発明の接触部に相当する。この構成は、後述するように、地絡用導電部5をグランド電位に設定するのに役立つ。
上側および下側の取付け部材7A,7Bの相互間には、シール部材6も挟まれ、かつこのシール部材6によって炎孔プレート4の周囲が囲まれてシールされた状態に設定される。シール部材6は、たとえば非導電性であるが、これとは異なり、導電性であってもよい。
【0040】
図2および図3によく表われているように、バーナ部Bを構成する上側および下側の取付け部材7A,7Bは、バーナケース3の下部にビス68を用いて取付けられている。この取付けにより、バーナ部Bは、バーナケース3内のチャンバ30の下面部を塞ぐ配置に設けられ、炎孔プレート4の裏面側(上面側)に、チャンバ30が位置している。チャンバ30に供給された混合ガスは、炎孔プレート4の複数の炎孔40を通過して炎孔プレート4の表面側(下面側)に流出する。この混合ガスには、点火プラグ69を利用して点火がなされ、炎孔プレート4の下面側の燃焼領域CAにおいて前記混合ガスは燃焼する。
【0041】
バーナケース3は、既述したように金属製であるが、グランド電位に設定されている。これに対し、上側の取付け部材7Aのフランジ部72は、バーナケース3と電気的に導通可能な状態に取付けられている。このことにより、地絡用導電部5もグランド電位に設定されている。図3においては、フランジ部72とバーナケース3とのビス止め箇所に、ガ
スケット67が介在しているが、このガスケット67は、耐熱性をもつ導電性ガスケットである。
【0042】
次に、前記した燃焼装置Cおよびこれを備えた温水装置WHの作用について説明する。
【0043】
給湯動作が実行される場合、ファン1が駆動され、チャンバ30には、空気と水素(燃料ガス)との混合ガスが供給される。この混合ガスは、既述したように、炎孔プレート4の各炎孔40を通過し、炎孔プレート4の表面側(下面側)の燃焼領域CAにおいて燃焼する。一方、炎孔プレート4は、非導電性のセラミック製であるため、本来的には、静電気が帯電する虞がある。仮に、炎孔プレート4が帯電し、炎孔プレート4の裏面側において静電気放電を生じたのでは、混合ガス中の燃料ガスが着火し易い水素であることと相俟って、チャンバ30内において前記混合ガスに着火を生じる虞がある。これに対し、本実施形態においては、炎孔プレート4の裏面側(上面側)には、グランド電位の地絡用導電部5が接触して設けられているため、除電が適切に図られ、チャンバ30に面した領域において、前記した静電気放電を生じないようにすることが可能である。したがって、チャンバ30内における混合ガスへの着火に起因する機器損傷を適切に回避することができる。
【0044】
地絡用導電部5は、複数の通気開口部51を形成する網状であるため、その開口率は高く、複数の線状部50が多くの炎孔40上に重ならないようにすることができる。また、図10を参照して説明したとおり、線状部50が断面円形状であるため、炎孔40と線状部50とが互いに重なった箇所においても、炎孔40を開放状態にしておくことが可能である。したがって、地絡用導電部5が設けられていることに起因して、炎孔40が不当に塞がれることはなく、複数の炎孔40のそれぞれへの混合ガスの供給も適切に行なわせることができる。
【0045】
地絡用導電部5をバーナケース3に電気的に導通させてグランド電位に設定するための手段として、上側の取付け部材7Aが利用されている。したがって、グランド電位を設定するための専用部品を地絡用導電部5に別途取付けるなどの煩雑さはない。その構成は合理的であって、構成の簡素化、製造コストの低減化を適切に図ることも可能である。
【0046】
図13および図14は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0047】
図13に示す温水装置WHaにおいては、熱交換器HEの缶体8の上端に設けられているフランジ部88に対し、上側および下側の取付け部材7A,7Bがネジ部材66a,66bを用いて締結されている。缶体8は、金属製であり、グランド電位に設定されている。一方、上側の取付け部材7Aは、下側の取付け部材7Bを介して缶体8に電気的に導通しており、このことによって地絡用導電部5もグランド電位に設定されている。
本実施形態によれば、バーナケース3は、グランド電位の金属製でなくてもよい。
【0048】
図14に示す実施形態においては、地絡用導電部5A(網点模様の部分)が、炎孔プレート4の裏面(上面)に直接的に積層された金属塗膜などの導電膜により構成されている。この地絡用導電部5Aは、たとえば平面視格子状などの網状に形成されており、複数の炎孔40は、地絡用導電部5Aを避けた配置に設けられている。
本実施形態においても、地絡用導電部5Aの存在により、炎孔プレート4の裏面側における静電気放電を防止する効果が得られる。地絡用導電部5Aとしては、製造が容易であって、全体のボリュームが小さく、かつ軽量なものとすることが可能である。
【0049】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る燃焼装置、およびこれを備えた温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0050】
上述の実施形態においては、地絡用導電部は、金属線材などを用いた網状に構成され、あるいは導電膜により構成されているが、本発明はこれに限定されない。地絡用導電部は、たとえば、炎孔プレートとは別体で形成された地絡用導電部の一部が炎孔プレート内に埋設された構成(いわゆるインサート成形の構成)とされていてもよい。また、網状に代えて、たとえば多孔プレート状とされていてもかまわない。さらに、地絡用導電部は、グランド電位に設定された導電部であればよく、グランド電位に設定するための具体的な手段としても、種々の手段を採用することができる。
【0051】
炎孔プレートは、非導電性(低電気伝導率)であるが、セラミック製に限定されない。複数の炎孔の具体的な形状、サイズ、数、配列なども限定されない。
燃料ガスは、水素に代えて、水素含有ガスとすることもできる。
【0052】
本発明に係る燃焼装置は、燃焼用空気や燃焼ガスが進行する方向が下向き(逆燃焼方式)のものに限定されず、たとえば上向き(正燃焼方式)とすることもできる。
また、本発明に係る燃焼装置は、給湯装置用でなくてもよく、たとえば温風装置用、あるいは焼却炉用などの燃焼装置として構成することも可能であり、具体的な用途も限定されない。
本発明に係る温水装置は、一般給湯、風呂給湯、暖房用給湯などを行なうための給湯装置に限らず、湯水を加熱して温水を生成する装置を広く含む。温水装置に具備される熱交換器は、顕熱のみを回収可能なものに限らず、たとえば顕熱および潜熱の双方を回収可能なものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
WH,WHa 温水装置
B バーナ部
C 燃焼装置
CA 燃焼領域
HE 熱交換器
1 ファン
3 バーナケース
30 チャンバ
4 炎孔プレート
40 炎孔
5,5A 地絡用導電部
50 線状部
51 通気開口部
7A,7B 取付け部材(上側および下側の取付け部材)
74 突出片部(接触部)
8 缶体(熱交換器の)
9 伝熱管(熱交換器の)
図1
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