(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055009
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】複合スラブ及び複合床構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/18 20060101AFI20240411BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
E04B5/18
E04B5/02 E
E04B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161564
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】510065067
【氏名又は名称】▲高▼松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】吉井 浩人
(57)【要約】
【課題】スラブの重量低減を実現するとともに、十分な保有水平耐力を有する複合スラブ及び複合床構造を提供する。
【解決手段】 両端から距離Lだけ離間した中央領域Cが、木質部12と木質部12の上に形成された鉄筋コンクリート部14とで構成され、両端から距離Lの範囲の端部領域Eが、鉄筋コンクリート部14のみで構成された複合スラブ10及び複合床構造を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端から距離Lだけ離間した中央領域が、木質部と前記木質部の上に形成された鉄筋コンクリート部とで構成され、
両端から前記距離Lの範囲の端部領域が、前記鉄筋コンクリート部のみで構成されることを特徴とする複合スラブ。
【請求項2】
前記端部領域の前記鉄筋コンクリート部が、鉄筋コンクリート製の梁と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合スラブ。
【請求項3】
前記距離Lが、スラブ協力幅に対応した長さであることを特徴とする請求項1または2に記載の複合スラブ。
【請求項4】
スラブ長をSとすると、前記距離Lが、0.07S以上0.2S以下の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の複合スラブ。
【請求項5】
前記木質部及び前記鉄筋コンクリート部の水平方向及び/または垂直方向の接触面間に応力伝達機構を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の複合スラブ。
【請求項6】
両端から距離Lだけ離間した中央領域が、木質部と前記木質部の上に形成された鉄筋コンクリート部とで構成され、両端から前記距離Lの範囲の端部領域が、前記鉄筋コンクリート部のみで構成される複合スラブと、
前記端部領域の前記鉄筋コンクリート部と一体的に形成された鉄筋コンクリート製の梁と、
で構成される複合床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質部及び鉄筋コンクリート部を有する複合スラブ、及びこの複合スラブを含む複合床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な脱炭素化の流れを背景にして、建築における木造化の機運が高まっている。特に、国産材利用推進等を背景に、中・高層建築物に直交集成板(CLT:Cross Laminated Timber)や集成材等の木質構造材の利用が進んでいる。その中でも、鉄筋コンクリート(RC:Reinforced concrete)の建物に組込む場合、建物重量の中でも大きな割合を示すスラブにCLTを用いた構法も提案されている。スラブに木質板を適用することにより、建物重量を低減し、作用する地震力を低減することができる。
【0003】
しかしながら、CLTのような木質板を用いたスラブの場合、コンクリート単一スラブと比較して強度が低く、比重が小さいため遮音性能も低下し、耐火性能も低下する。その課題解決手法として、木質板の上部にコンクリートを打設した複合スラブが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-173020号
【特許文献2】特開2020-26660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の複合スラブを、RC建物に組み込んだ場合、RC梁と複合スラブとの一体性が損なわれることにより、RC梁の剛性が低下する。RC梁の剛性低下に伴い、建物全体の変形量が増大し、建物の保有水平耐力が低下する。また、室内の居住性能が高く求められるマンション建物においては、たわみ量や振動特性が単一RCスラブと比較して低下するため、スパン長を短くするなどの対応が必要になる。つまり、特許文献1、2に記載の複合スラブでは、スラブの重量低減は実現できるが、保有水平耐力が低下する問題を有する。
【0006】
よって、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、スラブの重量低減を実現するとともに、十分な保有水平耐力を有する複合スラブ及び複合床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る複合スラブでは、
両端から距離Lだけ離間した中央領域が、木質部と前記木質部の上に形成された鉄筋コンクリート部とで構成され、
両端から前記距離Lの範囲の端部領域が、前記鉄筋コンクリート部のみで構成されている。
【0008】
本態様では、中央領域に重量の軽い木質部を有するので、スラブ重量を軽減できる。また、端部領域が鉄筋コンクリート部のみで構成されているので、鉄筋コンクリート製の梁との間の接続部で十分な厚み寸法を有することができ、十分な保有水平耐力を有することができる。これにより、スラブの重量低減を実現するとともに、十分な保有水平耐力を有する複合スラブを提供することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る複合スラブでは、第1の態様において、
前記端部領域の前記鉄筋コンクリート部が、鉄筋コンクリート製の梁と一体的に形成されている。
【0010】
本態様のように、端部領域の鉄筋コンクリート部が鉄筋コンクリート製の梁と一体的に形成されている場合には、確実に十分な保有水平耐力を有することができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る複合スラブでは、第1または第2の態様において、
前記距離Lが、スラブ協力幅に対応した長さである。
【0012】
本態様のように、距離Lが、スラブ協力幅に対応した長さであれば、鉄筋コンクリート製の梁と共働して十分な剛性が得られ、十分な保有水平耐力を得ることができる。
【0013】
本発明の第4の態様では、第1から第3の何れかの態様において、
スラブ長をSとすると、前記距離Lが、0.07S以上0.2S以下の範囲にある。
【0014】
本態様のように、距離Lが0.07S以上0.2S以下の範囲にある場合には、スラブ協力幅内の鉄筋コンクリート部の十分なスラブ厚を確保することができ、十分な保有水平耐力を得ることができる。
【0015】
本発明の第5の態様では、第1から第4の何れかの態様において、
前記木質部及び前記鉄筋コンクリート部の水平方向及び/または垂直方向の接触面間に応力伝達機構を備える。
【0016】
本態様のように、木質部及び鉄筋コンクリート部の水平方向及び/または垂直方向の接触面間に応力伝達機構を備えることにより、水平方向及び/または垂直方向において、木質部及び鉄筋コンクリート部が一体化して、外力に対して両者が複合して抵抗することができる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る複合床構造は、
両端から距離Lだけ離間した中央領域が、木質部と前記木質部の上に形成された鉄筋コンクリート部とで構成され、両端から前記距離Lの範囲の端部領域が、前記鉄筋コンクリート部のみで構成される複合スラブと、
前記端部領域の前記鉄筋コンクリート部と一体的に形成された鉄筋コンクリート製の梁と、で構成される。
【0018】
本態様では、中央領域に重量の軽い木質部を有するので、スラブ重量を軽減できる。また、端部領域が鉄筋コンクリート部のみで構成されているので、鉄筋コンクリート製の梁との間の接続部で十分な厚み寸法を有することができ、十分な保有水平耐力を有することができる。これにより、スラブの重量低減を実現するとともに、十分な保有水平耐力を有する複合床構造を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
上記の態様では、スラブの重量低減を実現するとともに、十分な保有水平耐力を有する複合スラブ及び複合床構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る複合スラブを模式的に示す側面断面図である。
【
図2】
図1に示す複合スラブの端部領域及びRC梁を拡大して示す側面断面図である。
【
図3A】木質部及び鉄筋コンクリート部の接続部における応力伝達機構の第1の例を模式的に示す側面断面図である。
【
図3B】木質部及び鉄筋コンクリート部の接続部における応力伝達機構の第2の例を模式的に示す側面断面図である。
【
図3C】木質部及び鉄筋コンクリート部の接続部における応力伝達機構の第3の例を模式的に示す側面断面図である。
【
図3D】木質部及び鉄筋コンクリート部の接続部における応力伝達機構の第4の例を模式的に示す側面断面図である。
【
図4A】従来のRCスラブを模式的に示す側面断面図である。
【
図4B】従来の複合スラブを模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態、実施例を説明する。以下に説明する実施形態、実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0022】
(本発明の1つの実施形態に係る複合スラブ)
はじめに、
図1、
図4A及び
図4Bを参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る複合スラブについて、従来のスラブと比較しながら説明を行う。
図1は、本発明の1つの実施形態に係る複合スラブを模式的に示す側面断面図である。
図4Aは、従来のRCスラブを模式的に示す側面断面図である。
図4Bは、従来の複合スラブを模式的に示す側面断面図である。
【0023】
図4Aには、全て鉄筋コンクリートで構成されたRCスラブ50がRC梁52と一体的に形成されているところを示す。RCスラブ50は、全て鉄筋コンクリートで占められるため、重量が嵩む課題を有する。この課題に対処するため、
図4Bに示すように、下側にCLTからなる木質部62が配置され、その上に鉄筋コンクリートからなる鉄筋コンクリート部64が形成された従来の複合スラブ60が提案されている。この複合スラブ60は、下側の領域に重量の軽い木質部62が配置されているので、RCスラブ50に比べて、重量を軽減することができる。
【0024】
従来の複合スラブ60では、両端部まで木質部62が配置されている。複合スラブ60の鉄筋コンクリート部64を両側のRC梁70と一体的に形成することができるが、矢印Yで示す鉄筋コンクリート部64とRC梁70との間の接続部(一点鎖線参照)の厚み寸法bは、木質部62の存在で単一なRCスラブ50の場合に比べてかなり小さくなっている。このため、実用上十分は保有水平耐力Quが得られない虞がある。
【0025】
一方、本実施形態に係る複合スラブ10では、長期曲げモーメントの卓越するスラブのスパン中央部の下面のみを木質部12にて置換したことを特徴とする。つまり、本実施形態に係る複合スラブ10では、
図1に示すように、両端から距離Lだけ離間した中央領域Cが、木質部12と木質部12の上に形成された鉄筋コンクリート部14とで構成され、両端から距離Lの範囲の端部領域Eが、鉄筋コンクリート部14のみで構成されている。木質部12として、例えば、直交集成板(CLT:Cross Laminated Timber)や集成材等の木質構造材を用いることができる。
【0026】
本実施形態に係る複合スラブ10でも、中央領域Eの下側に重量の軽い木質部12が配置されているので、複合スラブ10の重量を軽減することができる。中央領域Cにおいて、スラブ下部に木質部12を有し、上部に鉄筋コンクリート部14を有する複合構造とすることで、複合スラブ10の積載荷重による応力のうち、スラブ断面上部に作用する圧縮力を鉄筋コンクリート部14で負担し、断面下部に作用する引張力を木質部12で負担することができる。
【0027】
平時の長期荷重に対しては、木質部12と鉄筋コンクリート部14とが複合して抵抗する。火災時の短期荷重についても、上面側の鉄筋コンクリート部14の熱劣化による支持能力低下や、木質部12の炭化による支持能力低下を想定して、質部12及び鉄筋コンクリート部14の単体での短期耐力で支持できるように形成されている。
【0028】
次に、
図2を参照しながら、本実施形態に係る混合スラブ10とその両側のRC梁20との連結構造について説明する。
図2は、
図1に示す複合スラブの端部領域及びRC梁を拡大して示す側面断面図である。
【0029】
鉄筋及び木質部12となるCLT等が配置された型枠内にコンクリートを流し込まれて、複合スラブ10の両端部Eを構成する鉄筋コンクリート部14とRC梁20とが同時に打設される。このとき、乾式構造である木質部(CLT等)12を下面に使用することで、上面に打込まれる湿式の鉄筋コンクリート部形成に必要なコンクリート型枠として使用することが可能となり、必要なコンクリート型枠量を削減できる。
【0030】
鉄筋コンクリート部14とRC梁20とを同時に打設することにより、混合スラブ10とRC梁20の接合部近傍をコンクリート単一スラブとして形成できるので、混合スラブ10の剛性も増大し、中央領域Cでのたわみ量を低減でき、振動・防音性能が向上する。
【0031】
図1に示すように、矢印Xで示す鉄筋コンクリート部14とRC梁20との間の接続部(一点鎖線参照)の厚み寸法Bは、通常のRC単一スラブ50(
図4A参照)と同等の大きさを有する。よって、RC梁20と一体となって地震力に抵抗する鉄筋コンクリート部14の断面量が増大し、RC梁20の剛性が増大する。更に、スラブ協力幅内における鉄筋コンクリート部14の十分なスラブ厚を確保することができ、十分な保有水平耐力Quを得ることができる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る複合スラブ10は、両端から距離Lだけ離間した中央領域Cが、木質部12と木質部12の上に形成された鉄筋コンクリート部14とで構成され、両端から距離Lの範囲の端部領域Eが、鉄筋コンクリート部14のみで構成されている。
【0033】
本実施形態では、中央領域Eに重量の軽い木質部12を有するので、スラブ重量を軽減できる。端部領域Eが鉄筋コンクリート部14のみで構成されているので、RC梁20との間の接続部で十分な厚み寸法を有することができ、十分な保有水平耐力Quを有することができる。これにより、スラブの重量低減を実現するとともに、十分な保有水平耐力Quを有する複合スラブ10を提供することができる。
【0034】
特に、端部領域Eの鉄筋コンクリート部14が、鉄筋コンクリート製の梁(RC梁)20と一体的に形成されている場合には、確実に十分な保有水平耐力Quを有することができる。
【0035】
<距離L>
端部領域Eに対応する両端からの距離Lは、スラブ協力幅に対応した長さであることが好ましい。これにより、複合スラブ10は、RC梁20と共働して十分な剛性が得られ、十分な保有水平耐力Quを得ることができる。
【0036】
更に具体的に述べれば、混合スラブ10のスラブ長をSとすると、距離Lが、0.07S以上0.2S以下の範囲にあることが好ましい。これにより、スラブ協力幅内の鉄筋コンクリート部14の十分なスラブ厚を確保することができ、十分な保有水平耐力Quを得ることができる。
【0037】
このような混合スラブ10を含む複合床構造は、両端から距離Lだけ離間した中央領域Cが、木質部12と木質部12の上に形成された鉄筋コンクリート部14とで構成され、両端から距離Lの範囲の端部領域Eが、鉄筋コンクリート部14のみで構成される複合スラブ10と、端部領域Eの鉄筋コンクリート部14と一体的に形成された鉄筋コンクリート製の梁20と、で構成される。これにより、スラブの重量低減を実現するとともに、十分な保有水平耐力Quを有する複合床構造を提供することができる。
【0038】
(応力伝達機構)
上記のように、中央領域Cにおいて、木質部12と鉄筋コンクリート部14とが一体化することにより、外力に対して両者が複合して抵抗することができる。例えば、木質部12及び鉄筋コンクリート部14の間に接着剤層を設けて一体化を図ることも考えられるが、十分な接合力が得られない虞もある。
【0039】
本実施形態に係る複合スラブ10では、木質部12と鉄筋コンクリート部14とをより効果的に一体化させるため、木質部12及び鉄筋コンクリート部14の水平方向及び/または垂直方向の接触面間に応力伝達機構を備える。次に、
図3Aから
図3Dを参照しながら、木質部12及び鉄筋コンクリート部14の接触面間における応力伝達機構の説明を行う。
【0040】
<第1の例>
はじめに、
図3Aを参照しながら、応力伝達機構の第1の例を説明する。
図3Aは、木質部及び鉄筋コンクリート部の接続部における応力伝達機構の第1の例を模式的に示す側面断面図である。
【0041】
第1の例では、木質部12の水平面の一部が切り欠かれて勘合部(水平)32Aが形成され、垂直面の一部が切り欠かれて勘合部(垂直)32Bが形成されている。これらの勘合部32A、32Bにより、木質部12及び鉄筋コンクリート部14が嵌合接合されている。よって、図面の矢印に示すように、接触面に沿った水平方向及び垂直方向の応力を伝達することができる。これにより、木質部12と鉄筋コンクリート部14とを確実に一体化させることができる。
【0042】
なお、第1の例では、木質部12及び鉄筋コンクリート部14の水平方向及び垂直方向両方の接触面に嵌合接合を有するが、どちらか一方の方向の接触面にのみ嵌合接合を有する場合もあり得る。
【0043】
<第2の例>
次に、
図3Bを参照しながら、応力伝達機構の第2の例を説明する。
図3Bは、木質部及び鉄筋コンクリート部の接続部における応力伝達機構の第2の例を模式的に示す側面断面図である。
【0044】
第2の例では、木質部12及び鉄筋コンクリート部14の水平方向の接触面に凹凸部(水平)30Aを備え、垂直方向の接触面に凹凸部(垂直)30Bを備える。これらの凹凸部30A、30Bにより、木質部12及び鉄筋コンクリート部14が互いに勘合した状態で接続されている。よって、図面の矢印に示すように、接触面に沿った水平方向及び垂直方向の応力を伝達することができる。これにより、木質部12と鉄筋コンクリート部14とを確実に一体化させることができる。
【0045】
図面では、尖った先端を有する直線的な凹凸形状を示しているが、これに限られるものではない。例えば、湾曲した波形をはじめとするその他の任意の凹凸形状を採用することができる。第2の例では、木質部12及び鉄筋コンクリート部14の水平方向の接触面及び垂直方向の両方の接触面に凹凸形状を有するが、どちらか一方の方向の接触面にのみ凹凸形状を有する場合もあり得る。
【0046】
<第3の例>
次に、
図3Cを参照しながら、応力伝達機構の第3の例を説明する。
図3Cは、木質部及び鉄筋コンクリート部の接続部における応力伝達機構の第3の例を模式的に示す側面断面図である。
【0047】
第3の例では、金属製(例えば、鉄鋼製)のプレストレス棒34が、木質部12及び鉄筋コンクリート部14を貫通するようにして取り付けられている。プレストレス棒34の両端に螺合されたナットによる締め付けで、プレストレス棒34には引張力がかかり、木質部12及び鉄筋コンクリート部14には圧縮力がかかっている。これにより、木質部12及び鉄筋コンクリート部14は、垂直方向において、プレストレス棒34の締付力で一体化される。
【0048】
一方、木質部12及び鉄筋コンクリート部14の接触面間に大きな摩擦力が生じる。このような摩擦力による摩擦接合により、接触面に沿った水平方向の応力を伝達することができる(図面の矢印参照)。これにより、木質部12と鉄筋コンクリート部14とを確実に一体化させることができる。
【0049】
<第4の例>
次に、
図3Dを参照しながら、応力伝達機構の第4の例を説明する。
図3Dは、木質部及び鉄筋コンクリート部の接続部における応力伝達機構の第4の例を模式的に示す側面断面図である。
【0050】
第4の例では、木質部12及び鉄筋コンクリート部14の垂直方向の接触面において、十字形の側面形状の金物36が取り付けられている。複合スラブ10に力が加わったとき、木質部12及び鉄筋コンクリート部14の金物36との接触領域で支圧力(局所的な圧縮力)が発生し応力が伝達される。このような金物36による支圧接合により、接触面に沿った水平方向及び垂直方向の応力を伝達することができる。図面の矢印に示すように、金物36により、曲げモーメントに対しても耐力を有することができる。これにより、木質部12と鉄筋コンクリート部14とを確実に一体化させることができる。
【0051】
第4の例では、金物36が木質部12及び鉄筋コンクリート部14の垂直方向の接触面にのみ配置されているが、水平方向の接触面にも配置することができる。なお、金物36より簡易な方法として、木質部12の上面にラグスクリューボルトを植え込んで一体化を図ることも考えられる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る複合スラブ10は、木質部12及び鉄筋コンクリート部14の水平方向及び/または垂直方向の接触面間に応力伝達機構30A,B、32A,B、34、36を備える。
【0053】
このように、木質部12及び鉄筋コンクリート部の水平方向及び/または垂直方向の接触面間の応力伝達機構30A,B、32A,B、34、36により、水平方向及び/または垂直方向において、木質部12及び鉄筋コンクリート部14が一体化して、外力に対して両者が複合して抵抗することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施形態及び実施例における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0055】
10 複合スラブ
12 木質部
14 鉄筋コンクリート部
20 RC梁
22 鉄筋
30A 凹凸部(水平)
30B 凹凸部(垂直)
32A 嵌合部(水平)
32B 嵌合部(垂直)
34 プレストレス棒
36 金型
50 従来のRCスラブ
52 RC梁
60 従来の複合スラブ
62 木質部
64 鉄筋コンクリート部
70 RC梁
C 中央領域
E 端部領域