(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005501
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ゴム金属接合体の製造方法、粘接着シート及び接着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 5/00 20060101AFI20240110BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240110BHJP
C09J 123/28 20060101ALI20240110BHJP
C09J 161/06 20060101ALI20240110BHJP
C09J 161/18 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09J5/00
C09J7/30
C09J123/28
C09J161/06
C09J161/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105704
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 容一
(72)【発明者】
【氏名】縄手 建亮
(72)【発明者】
【氏名】岡本 秀二
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA07
4J004BA02
4J004BA03
4J004FA08
4J040DA181
4J040EB031
4J040EB081
4J040EC001
4J040KA16
4J040LA01
4J040MA02
4J040MA12
4J040PA00
(57)【要約】
【課題】作業性に優れた未加硫ゴムと金属とを接合したゴム金属接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】未加硫ゴムと金属とを接合したゴム金属接合体の製造方法であって、前記未加硫ゴム、接着シート及び前記金属をこの順に積層する、未加硫ゴム金属積層体形成工程、及び前記未加硫ゴム金属積層体を加熱及び加圧し、前記未加硫ゴム及び前記金属を同時に、前記接着シートと接着する加硫接着工程、を含み、前記接着シートは、前記未加硫ゴム側から順に、加硫接着剤層及び粘接着剤層を含む、ゴム金属接合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴムと金属とを接合したゴム金属接合体の製造方法であって、
前記未加硫ゴム、接着シート及び前記金属をこの順に積層する、未加硫ゴム金属積層体形成工程、及び
前記未加硫ゴム金属積層体を加熱及び加圧し、前記未加硫ゴム及び前記金属を同時に、前記接着シートと接着する加硫接着工程、を含み、
前記接着シートは、前記未加硫ゴム側から順に、加硫接着剤層及び粘接着剤層を含む、ゴム金属接合体の製造方法。
【請求項2】
前記接着シートは、前記未加硫ゴム側に位置する最外層に前記加硫接着剤層を、かつ、前記金属側に位置する最外層に前記粘接着剤層を含む、請求項1に記載のゴム金属接合体の製造方法。
【請求項3】
前記加硫接着剤層が、ハロゲン化ポリオレフィンを含む、請求項1又は2に記載のゴム金属接合体の製造方法。
【請求項4】
前記粘接着剤層が、ハロゲン化ポリオレフィン30~60質量%、レゾール型フェノール樹脂30~60質量%、及びキシレン樹脂1~40質量%を含む組成物からなる、請求項3に記載のゴム金属接合体の製造方法。
【請求項5】
前記粘接着剤層が、エポキシ樹脂混合物、潜在性硬化剤及び硬化促進剤を含む組成物からなり、前記エポキシ樹脂混合物は、重量平均分子量(Mw)が10000~80000のエポキシ樹脂(A)を40~60質量%、及び重量平均分子量(Mw)が200~1000のエポキシ樹脂(B)を40~60質量%含み、前記エポキシ樹脂混合物100質量部に対して、前記潜在性硬化剤が1~10質量部、かつ前記硬化促進剤が0.1~5質量部である、請求項3に記載のゴム金属接合体の製造方法。
【請求項6】
未加硫ゴムと金属とを接合するための粘接着シートであって、加硫接着剤層と共に用いられ、前記粘接着シートは、ハロゲン化ポリオレフィン30~60質量%、レゾール型フェノール樹脂30~60質量%、及びキシレン樹脂1~40質量%を含む組成物からなる、粘接着シート。
【請求項7】
未加硫ゴムと金属とを接合するための粘接着シートであって、加硫接着剤層と共に用いられ、前記粘接着シートは、エポキシ樹脂混合物、潜在性硬化剤及び硬化促進剤を含む組成物からなり、前記エポキシ樹脂混合物は、重量平均分子量(Mw)が10000~80000のエポキシ樹脂(A)を40~60質量%、及び重量平均分子量(Mw)が200~1000のエポキシ樹脂(B)を40~60質量%含み、前記粘接着シートは、前記エポキシ樹脂混合物100質量部に対して、前記潜在性硬化剤が1~10質量部、かつ前記硬化促進剤が0.1~5質量部である、粘接着シート。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の粘接着シート、及び加硫接着剤層を含む、接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴムと金属とを接合したゴム金属接合体の製造方法に関する。また、本発明は、未加硫ゴムと金属とを接合するための、粘接着シート及び接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム材料と金属等の他の材質の材料を接着する方法として、加硫接着法が一般的に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、加硫接着剤として、金属に下塗り接着剤及び上塗り接着剤を塗布した後、所定の条件で加熱処理し、金属を焼き付ける方法が開示されている。これにより、加硫工程における未加硫ゴムの注入による接着剤の流れを防ぎ、ゴムの接着不良が解消される。一方で、上記方法は揮発性有機化合物を使用することから、環境や安全の観点から改良が望まれる。また、接着剤の塗布にあたり、膜厚の均一性や塗着効率についても改良の余地があった。
【0004】
そこで、特許文献2では、高分子からなるフィルムに対し、一方の面上にゴムと反応性を有する溶剤分散型加硫接着剤からなる上塗接着剤層を、他方の面上に金属と反応性を有する下塗接着剤層を、それぞれ備える接着シートが開示されている。これにより、接着工程前に予め、接着剤中の揮発性成分を揮発により除去でき、また、膜厚も容易に均一にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-260233号公報
【特許文献2】特開2010-013567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の未加硫ゴムと金属とを接合する方法はいずれも、二回以上の加熱加圧工程を必要とするため、作業性の改善が望まれていた。
【0007】
そこで本発明は、作業性に優れた未加硫ゴムと金属とを接合したゴム金属接合体の製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、上記製造方法に好適に使用できる、未加硫ゴムと金属とを接合するための、粘接着シート及び接着シートを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先述したように、従来の未加硫ゴムと金属とを接合する方法は二回以上の加熱加圧工程を必要とする。具体的には、接着シートの一方の面に金属を積層し、一回目の加熱加圧工程で金属を接着させた後、他方の面に未加硫ゴムを積層し、二回目の加熱加圧工程で未加硫ゴムを加硫接着させる。これは、接着シートが脆いために取扱性が悪く、さらには接着シート表面にタックがほとんど無いため、未加硫ゴムと金属とを加硫接着させるまでの仮接着ができないことを理由とする。
【0009】
本発明者らは、未加硫ゴムと金属とを接合する接着シートに、従来の加硫接着剤層に加えて、粘接着剤層を設けることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記態様に関するものである。
【0010】
《態様1》
未加硫ゴムと金属とを接合したゴム金属接合体の製造方法であって、
前記未加硫ゴム、接着シート及び前記金属をこの順に積層する、未加硫ゴム金属積層体形成工程、及び
前記未加硫ゴム金属積層体を加熱及び加圧し、前記未加硫ゴム及び前記金属を同時に、前記接着シートと接着する加硫接着工程、を含み、
前記接着シートは、前記未加硫ゴム側から順に、加硫接着剤層及び粘接着剤層を含む、ゴム金属接合体の製造方法。
《態様2》
前記接着シートは、前記未加硫ゴム側に位置する最外層に前記加硫接着剤層を、かつ、前記金属側に位置する最外層に前記粘接着剤層を含む、態様1に記載のゴム金属接合体の製造方法。
《態様3》
前記加硫接着剤層が、ハロゲン化ポリオレフィンを含む、態様1又は2に記載のゴム金属接合体の製造方法。
《態様4》
前記粘接着剤層が、ハロゲン化ポリオレフィン30~60質量%、レゾール型フェノール樹脂30~60質量%、及びキシレン樹脂1~40質量%を含む組成物からなる、態様3に記載のゴム金属接合体の製造方法。
《態様5》
前記粘接着剤層が、エポキシ樹脂混合物、潜在性硬化剤及び硬化促進剤を含む組成物からなり、前記エポキシ樹脂混合物は、重量平均分子量(Mw)が10000~80000のエポキシ樹脂(A)を40~60質量%、及び重量平均分子量(Mw)が200~1000のエポキシ樹脂(B)を40~60質量%含み、前記粘接着シートは、前記エポキシ樹脂混合物100質量部に対して、前記潜在性硬化剤が1~20質量部、かつ前記硬化促進剤が0.1~5質量部である、態様3に記載のゴム金属接合体の製造方法。
《態様6》
未加硫ゴムと金属とを接合するための粘接着シートであって、加硫接着剤層と共に用いられ、前記粘接着シートは、ハロゲン化ポリオレフィン30~60質量%、レゾール型フェノール樹脂30~60質量%、及びキシレン樹脂1~40質量%を含む組成物からなる、粘接着シート。
《態様7》
未加硫ゴムと金属とを接合するための粘接着シートであって、加硫接着剤層と共に用いられ、前記粘接着シートは、エポキシ樹脂混合物、潜在性硬化剤及び硬化促進剤を含む組成物からなり、前記エポキシ樹脂混合物は、重量平均分子量(Mw)が10000~80000のエポキシ樹脂(A)を40~60質量%、及び重量平均分子量(Mw)が200~1000のエポキシ樹脂(B)を40~60質量%含み、前記粘接着シートは、前記エポキシ樹脂混合物100質量部に対して、前記潜在性硬化剤が1~20質量部、かつ前記硬化促進剤が0.1~5質量部である、粘接着シート。
《態様8》
態様6又は7に記載の粘接着シート、及び加硫接着剤層を含む、接着シート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0012】
<ゴム金属接合体の製造方法>
本実施形態にかかるゴム金属接合体の製造方法は、未加硫ゴムと金属とを接合したゴム金属接合体の製造方法であって、下記工程1及び工程2を含む。
工程1:未加硫ゴム、接着シート及び金属をこの順に積層する、未加硫ゴム金属積層体形成工程
工程2:上記工程1で得られた未加硫ゴム金属積層体を加熱及び加圧し、上記未加硫ゴム及び上記金属を同時に、上記接着シートと接着する加硫接着工程
ここで、上記工程1における接着シートは、未加硫ゴム側から順に、加硫接着剤層及び粘接着剤層を含む。
【0013】
(工程1)
工程1では、未加硫ゴム、接着シート及び金属をこの順に積層し、未加硫ゴム金属積層体を形成する。
接着シートは、未加硫ゴム側から順に、加硫接着剤層及び粘接着剤層を含む。接着シートは未加硫ゴム及び金属の双方を仮接着できればよく、これにより、続く加硫接着工程において、未加硫ゴム及び金属を同時に、接着シートと接着できるようになる。
【0014】
[接着シート]
未加硫ゴムに対する加硫接着性の観点から、接着シートの加硫ゴム側に位置する最外層に加硫接着剤層を含み、加硫接着剤層を未加硫ゴムに当接させることが好ましい。また、金属に対する接着性の観点から、接着シートの金属側に位置する最外層に粘接着剤層を含み、粘接着剤層を金属に当接させることが好ましい。接着シートは、未加硫ゴム側に位置する最外層に加硫接着剤層を、かつ、金属側に位置する最外層に粘接着剤層を含むことがより好ましい。
【0015】
・加硫接着剤層
接着シートにおける加硫接着剤層は、未加硫ゴムに対して加硫接着できる、従来公知の接着剤を使用できる。接着剤は、例えば、ハロゲン化ポリオレフィンを含む接着剤が挙げられ、そのうち、ハロゲン化ポリオレフィンの接着剤としては、例えばChemlok(商標)252X(商品名、ロード社製)、Chemlok(商標)6108(商品名、ロード社製)、メタロックXF572(商品名、東洋化学研究所製)等が挙げられる。また、下記の粘接着剤層に用いられるハロゲン化ポリオレフィンも使用することができる。
【0016】
接着剤は、剥離性のあるフィルム上に塗布等により形成する。塗布する方法は特に限定されないが、ドクターブレード等の塗布ローラーを用いた塗布、マイクログラビア(商標)ロールコート法による塗布、スロットダイコート法による塗布、リバースロールコート法による塗布、ナイフコート法による塗布等が挙げられる。
【0017】
接着剤を塗布した後、加熱処理することで、溶剤の揮発、乾燥を行い、加硫接着剤層が形成される。
【0018】
加硫接着剤層の厚みは特に限定されないが、通常5~30μm、特に10~20μm程度である。
【0019】
・粘接着剤層
接着シートにおける粘接着剤層は、被接着物を仮接着でき、続く工程2の加熱及び加圧により、上記被接着物を接着できればよい。例えば、工程2の加熱及び加圧を行うまでは、半硬化の状態であればよい。半硬化とは、未反応で硬化していない成分を一定の割合で含有した状態を意味し、適度なタックを有している状態である。この未反応で硬化していない成分が、工程2の加熱によって硬化反応が完了する。
【0020】
粘接着剤層は、例えば熱硬化性樹脂を含む組成物により構成される。熱硬化性樹脂として、例えば、ハロゲン化ポリオレフィンやエポキシ樹脂が挙げられる。上記組成物は、熱硬化性樹脂を1種のみ含んでもよく、2種以上を含んでもよい。また、熱硬化性樹脂以外の成分を含んでもよい。
【0021】
粘接着剤層を構成する組成物が、熱硬化性樹脂としてハロゲン化ポリオレフィンを含む場合、ハロゲン化ポリオレフィンは塩素化ポリオレフィン、フッ化ポリオレフィン等が挙げられる。
【0022】
ハロゲン化ポリオレフィンは、優れた接着性及び適度な取扱い性の観点から、塩素化ポリオレフィンが好ましく、クロロスルホン化ポリオレフィンがより好ましく、クロロスルホン化ポリエチレンがさらに好ましい。
【0023】
クロロスルホン化ポリオレフィンにおける塩素含有量は、優れた接着性及び適度な取扱い性の観点から10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、塩素含有量は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
クロロスルホン化ポリオレフィンが、クロロスルホン化ポリエチレンである場合、クロロスルホン化ポリエチレンの25重量%トルエン溶液粘度は、シート状に加工しやすい観点から、200mPa・s以上が好ましく、250mPa・s以上がより好ましく、300mPa・s以上がさらに好ましい。また、2000mPa・s以下が好ましく、1800mPa・s以下がより好ましく、1600mPa・s以下がさらに好ましい。
【0025】
ここで、25重量%トルエン溶液粘度とは、濃度を25質量%としたクロロスルホン化ポリエチレンのトルエン溶液の、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃における粘度の測定値である。
【0026】
ハロゲン化ポリオレフィンの重量平均分子量Mwは、優れた接着性の観点から、10万以上が好ましく、15万以上がより好ましく、20万以上がさらに好ましい。また、重量平均分子量Mwは50万以下が好ましく、45万以下がより好ましく、40万以下がさらに好ましい。
【0027】
粘接着剤層を構成する組成物は、上記ハロゲン化ポリオレフィンに加え、優れた硬化性及び接着性の観点からフェノール樹脂、キシレン樹脂、その他の樹脂等を含むことが好ましく、フェノール樹脂及びキシレン樹脂を含むことがより好ましい。
【0028】
フェノール樹脂は、レゾール型でもノボラック型でもよいが、優れた硬化性の観点から、特にレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
【0029】
粘接着剤層を構成する組成物がハロゲン化ポリオレフィンに加え、レゾール型フェノール樹脂及びキシレン樹脂を含む場合、組成物中の各々の含有量は下記が好ましい。
【0030】
ハロゲン化ポリオレフィンの組成物中の含有量は、優れた接着性の観点から30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。上記含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
レゾール型フェノール樹脂の組成物中の含有量は、優れた硬化性の観点から30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。上記含有量は、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
粘接着剤層を構成する組成物が上記キシレン樹脂も含む場合、キシレン樹脂の組成物中の含有量は、優れた粘着性の観点から1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。上記含有量は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
キシレン樹脂の数平均分子量Mnは、優れた粘着性の観点から、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、200以上がさらに好ましい。また、数平均分子量Mnは1000以下が好ましく、900以下がより好ましく、800以下がさらに好ましい。
【0034】
粘接着剤層を構成する組成物が、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、粘着性及び接着性のバランスを容易に好適化できる観点から、分子量の異なる2種以上のエポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂混合物を含むことが好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂混合物は、重量平均分子量Mwが10000~80000のエポキシ樹脂(A)と重量平均分子量Mwが200~1000のエポキシ樹脂(B)を含むことが好ましい。エポキシ樹脂混合物は、エポキシ樹脂(A)に該当するエポキシ樹脂を1種含んでも、2種以上含んでもよく、エポキシ樹脂(B)に該当するエポキシ樹脂を1種含んでも、2種以上含んでもよい。
【0036】
エポキシ樹脂(A)の重量平均分子量Mwは10000~80000であるが、優れた接着性の観点から、20000以上が好ましく、40000以上がより好ましい。また、上記重量平均分子量Mwは70000以下が好ましく、60000以下がより好ましい。
【0037】
エポキシ樹脂(B)の重量平均分子量Mwは200~1000であるが、優れた粘着性の観点から、250以上が好ましく、300以上がより好ましい。また、上記重量平均分子量Mwは800以下が好ましく、500以下がより好ましい。
【0038】
エポキシ樹脂混合物における重量平均分子量Mwが10000~80000であるエポキシ樹脂(A)の含有量は、優れた接着性の観点から40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。上記含有量は、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。なお、エポキシ樹脂(A)として2種以上のエポキシ樹脂を含む場合には、それらの合計の含有量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0039】
エポキシ樹脂混合物における重量平均分子量Mwが200~1000であるエポキシ樹脂(B)の含有量は、優れた粘着性の観点から40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。上記含有量は、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。なお、エポキシ樹脂(B)として2種以上のエポキシ樹脂を含む場合には、それらの合計の含有量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0040】
粘接着剤層を構成する組成物は、上記エポキシ樹脂に加え、接着性及び生産性の観点から潜在性硬化剤、硬化促進剤等を含むことが好ましく、潜在性硬化剤及び硬化促進剤を含むことがより好ましい。
【0041】
潜在性硬化剤とは、保存安定性と反応性を両立させた硬化剤であり、常温では反応することなく安定して存在するが、熱により活性化する硬化剤である。潜在性硬化剤として従来公知のものを使用できるが、例えば、ジシアンジアミド、アミン系化合物、イミダゾール系化合物等が挙げられ、中でもジシアンジアミドがより好ましい。
【0042】
硬化促進剤は、従来公知のものを使用できるが、例えば、第三級アミン系化合物、イミダゾール系化合物、リン化合物等が挙げられ、中でもイミダゾール系化合物、第三級アミン系化合物が好ましい。
【0043】
粘接着剤層を構成する組成物がエポキシ樹脂に加え、潜在性硬化剤及び硬化促進剤を含む場合、エポキシ樹脂100質量部に対する潜在性硬化剤の含有量は、硬化性及び接着性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。上記含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。なお、上記エポキシ樹脂100質量部とは、エポキシ樹脂の合計の含有量100質量部を意味する。
【0044】
エポキシ樹脂100質量部に対する硬化促進剤の含有量は、硬化性の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。上記含有量は、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。なお、上記エポキシ樹脂100質量部とは、エポキシ樹脂の合計の含有量100質量部を意味する。
【0045】
粘接着剤層の粘着力は、工程2の加熱及び加圧を経る前の仮接着力が高く、被接着物を十分に固定する観点から、0.1N/25mm以上が好ましく、0.2N/25mm以上がより好ましく、0.3N/25mm以上がさらに好ましい。また、粘着力の上限は特に限定されないが、仮接着において接着位置を誤っても、再度貼り直すことが容易になる観点から、30N/25mm以下が好ましく、20N/25mm以下がより好ましく、10N/25mm以下がさらに好ましい。
【0046】
粘接着剤層を構成する組成物を、必要に応じて、溶媒又は溶剤を用いて、加硫接着剤層上に塗布する。接着シートが、加硫接着剤層と粘接着剤層との間に後述するプライマー層等の他の層を含む場合には、かかる他の層の上に、上記組成物を塗布する。
【0047】
また、剥離性のフィルム上に上記組成物を塗布し、粘接着剤層を独自に形成した後に、この粘接着剤層を上記加硫接着剤層又は上記他の層に貼り合わせてもよい。
【0048】
上記組成物を塗布する方法は特に限定されず、例えば、上記加硫接着剤層を形成する際と同様、ドクターブレード等の塗布ローラーを用いた塗布、マイクログラビア(商標)ロールコート法による塗布、スロットダイコート法による塗布、リバースロールコート法による塗布、ナイフコート法による塗布等が挙げられる。
【0049】
組成物を塗布した後、加熱処理することで溶剤の揮発、乾燥を行い、粘接着剤層を形成する。
【0050】
加熱処理は、組成物が硬化する温度よりも低い温度で行い、例えば、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。温度の下限は特に限定されないが、通常50℃以上である。
【0051】
加熱時間も特に限定されないが、例えば、0.5分以上が好ましく、1分以上がより好ましく、3分以上がさらに好ましく、また、30分以下が好ましく、10分以下がより好ましく、5分以下がさらに好ましい。
【0052】
粘接着剤層の厚みは、接着性及び取扱い性の観点から3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。また、粘接着剤層の厚みは50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
【0053】
上記により形成された粘接着剤層は、柔軟性を有することから、脆さによる割れや欠けがなく、作業性に優れる。
【0054】
・他の層
接着シートは、加硫接着剤層と粘接着剤層の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層を含んでいてもよい。
【0055】
他の層は従来公知の層を採用できるが、例えば、プライマー層と呼ばれるフェノール樹脂層等が挙げられる。これら他の層は、従来公知の方法で形成できる。
【0056】
他の層は、加硫接着剤層が未加硫ゴムと、粘接着剤層が金属と、それぞれ直接接するようにするため、加硫接着剤層と粘接着剤層との間に形成することが好ましい。
【0057】
他の層の厚みも特に限定されないが、通常3~30μm、特に5~15μmである。
【0058】
[未加硫ゴム、金属]
未加硫ゴムや金属は、それぞれ従来公知のものを使用でき、目的に合わせて適宜選択する。
【0059】
接着シートの一方の表面、好ましくは加硫接着剤層側の表面に未加硫ゴムを、他方の表面、好ましくは粘接着剤層側の表面に金属ゴムを貼り合わせる。これにより、未加硫ゴム金属積層体が形成される。
【0060】
(工程2)
工程2では、工程1で得られた未加硫ゴム金属積層体を加熱及び加圧し、未加硫ゴム金属積層体における未加硫ゴム及び金属を同時に、接着シートに接着する。未加硫ゴムについては、接着シートに加硫接着される。
【0061】
従来の未加硫ゴムと金属とを接合したゴム金属接合体の製造方法では、複数回の加熱及び加熱を必須とし、接着シートに対する、未加硫ゴムの加硫接着と、金属の接着とを、別々に行っていた。
【0062】
これに対し、本実施形態に係る製造方法では、未加硫ゴム及び金属を同時に接着シートに接着できるため、加熱及び加圧を複数回行う必要がない。ただし、加熱及び加圧を複数回行うことを、何等排除するものではない。
【0063】
未加硫ゴムと金属を同時に接着シートに接着するための加熱温度は、硬化性の観点から、120℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、160℃以上がさらに好ましい。また、熱劣化を抑制する観点から、加熱温度は200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。
【0064】
未加硫ゴムと金属を同時に接着シートに接着するための加圧は、上記加熱と同時に行うが、未加硫ゴム及び金属を十分に接着させる観点から、負荷する荷重は100N以上が好ましく、300N以上がより好ましく、500N以上がさらに好ましい。また、生産性の観点から、負荷する荷重は2000N以下が好ましく、1000N以下がより好ましく、800N以下がさらに好ましい。
【0065】
未加硫ゴムと金属を同時に接着シートに接着するための加熱及び加圧を行う時間は、未加硫ゴム及び金属を十分に接着させる観点から、1分以上が好ましく、3分以上がより好ましく、5分以上がさらに好ましい。また、熱劣化を抑制する観点から、加熱及び加圧を行う時間は30分以下が好ましく、15分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましい。
【0066】
上記により得られた、未加硫ゴムと金属とが接合されたゴム金属接合体は、従来の接着シートを用いて接合した場合と同等の接着強度を有する。この理由は定かではないが、加硫接着工程における加熱によって各層が一時的に軟化した際に、各層の界面近傍で、互いの成分が部分的に混ざり合うか、又は一体化することによるのではないかと考えている。
【0067】
<粘接着シート>
本実施形態に係る粘接着シートは、未加硫ゴムと金属とを接合するためのシートであり、加硫接着剤層と共に用いられる。
すなわち、上記粘接着シートは、上記<ゴム金属接合体の製造方法>における(工程1)[接着シート]における粘接着剤層からなるシートと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0068】
本実施形態に係る粘接着シートの一態様として、粘接着シートは、ハロゲン化ポリオレフィン30~60質量%、レゾール型フェノール樹脂30~60質量%、及びキシレン樹脂1~40質量%を含む組成物からなる。
【0069】
また、別の態様として、粘接着シートは、エポキシ樹脂混合物、潜在性硬化剤及び硬化促進剤イミダゾール系化合物を含む組成物からなる。上記エポキシ樹脂混合物は、重量平均分子量(Mw)が10000~80000のエポキシ樹脂(A)を40~60質量%、及び重量平均分子量(Mw)が200~1000のエポキシ樹脂(B)を40~60質量%含み、粘接着シートは、エポキシ樹脂混合物100質量部に対して、潜在性硬化剤が1~20質量部、かつ硬化促進剤が0.1~5質量部である。
【0070】
本実施形態に係る粘接着シートは、上記粘接着剤層で記載したように、柔軟性を有することから、脆さによる割れや欠けがない。そのため、ゴム金属接合体を作製するための粘接着シートとして取り扱う際には、特に作業性に優れる。
【0071】
粘接着シートと共に用いられる加硫接着剤層は、上記<ゴム金属接合体の製造方法>における(工程1)[接着シート]における加硫接着剤層と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0072】
なお、粘接着シートは、少なくとも一方の主面の最外層に保護層を有していてもよく、取扱い性の観点から、両主面の最外層に保護層を有することが好ましい。
【0073】
粘接着シートを、加硫接着剤層と共に用いる際に、かかる保護層を粘接着シートから剥離して用いる。
【0074】
保護層は従来公知のものを使用でき、例えば、紙のシートの他、高分子化合物を材料とするシート等が挙げられる。高分子化合物は、例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリイミド等が挙げられる。耐熱性の観点から、ポリエステル、ポリイミドが好ましく、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)がより好ましい。
【0075】
保護層となるシートの、粘接着シートの内側に位置する側の表面には、必要に応じて剥離処理が施されていてもよい。剥離処理とは従来公知の方法を採用でき、例えば、エンボス加工等により面を荒らして空気の層を形成する方法や、剥離剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0076】
<接着シート>
本実施形態に係る接着シートは、粘接着シート及び加硫接着剤層を含み、未加硫ゴムと金属とを接合するために用いられる。
【0077】
粘接着シートは、上記<粘接着シート>に記載の粘接着シートと同様である。すなわち、上記<ゴム金属接合体の製造方法>における(工程1)[接着シート]における粘接着剤層からなるシートと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0078】
また、加硫接着剤層も上記<粘接着シート>に記載の加硫接着剤層と同様である。すなわち、上記<ゴム金属接合体の製造方法>における(工程1)[接着シート]における加硫接着剤層と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0079】
なお、接着シートは、少なくとも一方の主面の最外層に保護層を有していてもよく、取扱い性の観点から、両主面の最外層に保護層を有することが好ましい。
接着シートを、未加硫ゴムと金属とを接合するために接着シートを用いる際に、かかる保護層を接着シートから剥離して用いる。
【0080】
保護層は従来公知のものを使用でき、例えば、上記<粘接着シート>における保護層と同様のものを使用できる。
【実施例0081】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0082】
〈実施例1〉
(粘接着剤層(粘接着シート)の製造)
クロロスルホン化ポリエチレン(東ソー株式会社製、CN-1500、塩素含有量30質量%(東ソー研究・技術報告 第45巻(2001)))40質量部、レゾール型フェノール樹脂(DIC株式会社製、TD-2620)50質量部、及びキシレン樹脂(フドー株式会社製、ニカノールLLL)10質量部を混合し、粘接着剤層を構成する組成物を調製した。
【0083】
剥離処理された厚さ38μmのPETフィルム上に、得られた上記組成物をドクターブレードを用いて塗布し、80℃で4分間処理することにより、厚さが15μmの粘接着剤層を得た。
【0084】
得られた粘接着剤層の露出面には、保護層として、剥離処理された厚さ38μmのPETフィルムの剥離処理面を貼り合わせ、2枚のPETフィルムに挟まれた粘接着シートを得た。
【0085】
(接着シートの製造)
剥離処理された厚さ38μmのPETフィルム上に、加硫接着剤層として、塩素化ゴム系加硫接着剤(Chemlok(商標)6108、ロード社製)をドクターブレードで塗布し、120℃で4分間処理することにより、厚さが15μmの加硫接着剤層を形成した。次いで、その上にフェノール樹脂系加硫接着剤(Chemlok(商標)205、ロード社製)をドクターブレードで塗布し、120℃で4分間処理することにより、厚さが10μmの、フェノール樹脂層からなるプライマー層を形成した。その後、上記で得た粘接着シートの一方の保護層(PETフィルム)を剥離し、露出面をプライマー層に貼り合わせることで、保護層(PETフィルム)/粘接着剤層/プライマー層/加硫接着剤層/保護層(PETフィルム)の順に構成された接着シートを得た。
【0086】
〈実施例2~5及び比較例1~7〉
粘接着剤層(粘接着シート)の製造に用いた原料の種類、配合量、膜厚を表1に示したものに変更した以外は、実施例1と同様にして、粘接着剤層(粘接着シート)を得た。また、かかる粘接着剤層(粘接着シート)を用いて、実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0087】
表1中、空欄は含まないことを示す。また、クロロプレンゴムは昭和電工株式会社製のショウプレンADを用いた。エポキシ樹脂(A)は三菱ケミカル株式会社製のjER1256を用いたが、これは重量平均分子量Mwが50000のビスフェノールA型エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂(B)は三菱ケミカル株式会社製のjER828を用いたが、これは重量平均分子量Mwが370のビスフェノールA型エポキシ樹脂である。ジシアンジアミドは三菱ケミカル株式会社製のDICY7を用いた。2-メチルイミダゾールは四国化成工業株式会社製の2MZを用いた。アクリル系粘着剤は、綜研化学株式会社製のSKダイン1604Nを用いた。イソシアネート化合物は、綜研化学株式会社製のL-45を用いた。
【0088】
なお、比較例5における原料に接着性はないため、得られた層(シート)も粘接着剤層(粘接着シート)ではなく粘着剤層(粘着シート)であった。
【0089】
【0090】
〈評価〉
(取扱い性)
実施例、比較例で得られた接着シートから、保護層であるPETフィルムを2枚とも剥離し、残った粘接着剤層/フェノール樹脂層/加硫接着剤層、粘接着剤層/加硫接着剤層、フェノール樹脂層/加硫接着剤層、又は加硫接着剤層のみを手で折り畳んだ。その際の状態を下記の基準に従って評価した。結果を表1の「取扱い性」に示した。
○:PETフィルム剥離中に破けは生じず、かつ、折り畳んだ際にも割れない
×:PETフィルム剥離中に破けが生じた、又は、折り畳んだ際に割れが生じた
【0091】
(粘着力)
実施例、比較例で調製した粘接着剤層を構成する組成物を用いて、粘着力の評価用サンプルを作製した。具体的には、厚さ25μmのPETフィルム上に、各粘接着剤層を構成する組成物を、ドクターブレードを用いて塗布し、80℃で4分間処理することにより、厚さ20μmの塗膜を得た。当該塗膜面に剥離処理された厚さ38μmのPETフィルムの剥離処理面を貼り合わせ、粘着力評価用サンプルを得た。
【0092】
得られた粘着力評価用サンプルを25mm幅に裁断して、試験片を作製した。試験片から、剥離処理されたPETフィルムを剥離し、露出した塗膜をステンレス板に貼着し、2kgのローラーを用いて圧着した。次いで、23℃/50%RH環境下に20分間静置した後、貼着面に対して180°方向に300mm/minの引張速度で試験片の一端を引っ張り、剥離にかかる粘着力、すなわち剥離強度を測定した。結果を表1の「粘着力(N/25mm)」に示した。
【0093】
なお、表1中の「測定不可」とは、得られた粘着力評価用サンプルに粘着性が全くないため測定できなかったことを示す。0.1N/25mm以上であれば良好である。
【0094】
(加硫接着時のズレ・はみ出し、加硫接着後の接着性)
実施例、比較例で得られた接着シートを12.5mm×25mmに裁断し、加硫接着剤層側のPETフィルムを剥離して、露出面を鉄板に貼り付けた。次いで、もう一方のPETフィルムを剥離して、露出面に別の鉄板を重ねて貼り合わせた。160℃環境下で500Nの荷重を10分間かけて加硫接着を行い、試験片を作製した。
【0095】
その後、23℃/50%RH環境下に取り出し、鉄板同士のズレや粘接着シートのはみだし状況を目視で観察し、下記の基準に従って評価した。結果を表1の「ズレ・はみ出し」に示した。
○:鉄板同士のズレおよび粘接着シートのはみ出しがない
△:鉄板同士のズレまたは粘接着シートのはみ出しが若干あるが、実用上問題ない
×:鉄板同士のズレまたは粘接着シートのはみ出しがあり、実用上問題を生じる懸念がある
【0096】
また、上記で得られた試験片の接着面の剪断方向に10mm/minの引張速度で引っ張り、接着シートの破壊形態を下記の基準に従って評価した。結果を表1の「接着性」に示した。これは、加硫接着剤層/鉄板界面で破壊している割合が多いほど、粘接着剤層/鉄板界面における接着性が高いことを意味する。
○:加硫接着剤層/鉄板界面で破壊している割合が多い。
×:加硫接着剤層/鉄板界面で破壊している割合が少ない。
-:評価なし
【0097】
上記結果より、本実施形態に係る粘接着シートは、従来と同等の接着性を有しつつ、取扱い性や粘着力に優れ、加硫接着時のズレやはみ出しも少なく、非常に作業性に優れることが分かった。