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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055011
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ぶどう風味飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20240411BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240411BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20240411BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A23L2/02 A
A23L2/52 101
A23L2/56
A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161568
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】森田 冴美
(72)【発明者】
【氏名】高岸 知輝
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LG05
4B117LK06
4B117LL01
4B117LL02
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】ぶどう風味飲料のぶどうらしさ、飲みごたえを向上できる技術を提供する。
【解決手段】本発明のぶどう風味飲料は、ぶどう果汁と、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含み、ぶどう果汁率が10~40%であり、以下の要件(i)~(iv)のいずれかを満たす、(i)リナロール濃度が2501~5001ppbである、(ii)リモネン濃度が101~1001ppbである、(iii)リナロール濃度が21~2501ppbであり、リモネン濃度が6~1001ppbである、(iv)リナロール濃度が51~2501ppbであり、フェニルアセトアルデヒド濃度が31~136ppbである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ぶどう果汁と、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含み、
ぶどう果汁率が10~40%であり、以下の要件(i)~(iv)のいずれかを満たす、ぶどう風味飲料;
(i)リナロール濃度が2501~5001ppbである、
(ii)リモネン濃度が101~1001ppbである、
(iii)リナロール濃度が21~2501ppbであり、リモネン濃度が6~1001ppbである、
(iv)リナロール濃度が51~2501ppbであり、フェニルアセトアルデヒド濃度が31~136ppbである。
【請求項2】
ポリフェノール濃度が15~65mg/100mlである、請求項1に記載のぶどう風味飲料。
【請求項3】
前記ぶどう果汁が赤ぶどう果汁由来である、請求項1または2に記載のぶどう風味飲料。
【請求項4】
甘味料を含む、請求項1または2に記載のぶどう風味飲料。
【請求項5】
非アルコール飲料である、請求項1または2に記載のぶどう風味飲料。
【請求項6】
容器詰めされた、請求項1または2に記載のぶどう風味飲料。
【請求項7】
ぶどう果汁と、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含むぶどう風味飲料の製造方法であって、
ぶどう果汁率が10~40%となるように調整する工程と、
以下の要件(i)~(iv)のいずれかを満たすように香気成分を配合する工程と、
を順不同に含む、ぶどう風味飲料の製造方法;
(i)リナロール濃度が2501~5001ppbである、
(ii)リモネン濃度が101~1001ppbである、
(iii)リナロール濃度が21~2501ppbであり、リモネン濃度が6~1001ppbである、
(iv)リナロール濃度が51~2501ppbであり、フェニルアセトアルデヒド濃度が31~136ppbである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ぶどう風味飲料に関する。より詳細には、ぶどう風味飲料、ぶどう風味飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果汁含有飲料は、果汁風味が得られる嗜好性飲料として広く親しまれており、果汁らしい風味・香味を向上させるための研究開発が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、スッキリ感と果汁飲料らしいおいしさとのバランスが向上された飲料に関し、柑橘類果汁率が1~80w/w%であり、リナロールを0.4~5.0ppm含有することが開示されている。また、特許文献2には、赤ぶどう様およびマンゴー様の香りを特徴とするフルーツ様の香気が感じられるビールテイスト飲料において、リナロールを130.3~339.1ppb含有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-184967号公報
【特許文献2】特開2012-029628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、果汁含有飲料は、果汁率が高いほど果汁本来の香味が得られやすく、果汁率が低いほど果汁本来の香味や飲みごたえが低下することが知られている。
本発明者は、比較的低めの果汁率でぶどう果汁を含むぶどう風味飲料に着目し、ぶどうらしさ、飲みごたえを向上させることに関し鋭意検討を行った。その結果、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドを用い、これらの濃度および組み合わせに応じた濃度を制御することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
一方、特許文献1、2には、リナロールを用いることが開示されているものの、いずれもぶどう風味飲料ではなく、ぶどうらしさを向上するものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下のぶどう風味飲料に関する技術が提供される。
【0007】
[1] ぶどう果汁と、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含み、
ぶどう果汁率が10~40%であり、以下の要件(i)~(iv)のいずれかを満たす、ぶどう風味飲料;
(i)リナロール濃度が2501~5001ppbである、
(ii)リモネン濃度が101~1001ppbである、
(iii)リナロール濃度が21~2501ppbであり、リモネン濃度が6~1001ppbである、
(iv)リナロール濃度が51~2501ppbであり、フェニルアセトアルデヒド濃度が31~136ppbである。
[2] ポリフェノール濃度が15~65mg/100mlである、[1]に記載のぶどう風味飲料。
[3] 前記ぶどう果汁が赤ぶどう果汁由来である、[1]または[2]に記載のぶどう風味飲料。
[4] 甘味料を含む、[1]乃至[3]いずれか一つに記載のぶどう風味飲料。
[5] 非アルコール飲料である、[1]乃至[4]いずれか一つに記載のぶどう風味飲料。
[6] 容器詰めされた、[1]乃至[5]いずれか一つに記載のぶどう風味飲料。
[7] ぶどう果汁と、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含むぶどう風味飲料の製造方法であって、
ぶどう果汁率が10~40%となるように調整する工程と、
以下の要件(i)~(iv)のいずれかを満たすように香気成分を配合する工程と、
を順不同に含む、ぶどう風味飲料の製造方法;
(i)リナロール濃度が2501~5001ppbである、
(ii)リモネン濃度が101~1001ppbである、
(iii)リナロール濃度が21~2501ppbであり、リモネン濃度が6~1001ppbである、
(iv)リナロール濃度が51~2501ppbであり、フェニルアセトアルデヒド濃度が31~136ppbである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ぶどう風味飲料のぶどうらしさ、飲みごたえを向上できる技術が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0010】
本件明細書において、「ぶどうらしさ」とは飲料を飲んだ際に、ぶどう果実を食したときに感じられる甘味およびジューシー感が感じられ、ぶどう果実に近い香味が感じられることを意図する。「飲みごたえ」とは飲料を飲んだ際に、味の濃さ、コクがほどよく感じられ、満足感が得られることを意図する。
また、本実施形態のぶどう風味飲料は、飲料を飲んだ際にぶどう果実と同様の風味が得られることを意図する。
【0011】
<ぶどう風味飲料>
本実施形態のぶどう風味飲料は、ぶどう果汁と、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含み、ぶどう果汁率が10~40%であり、以下の要件(i)~(iv)のいずれかを満たすものである。
(i)リナロール濃度が2501~5001ppbである、
(ii)リモネン濃度が101~1001ppbである、
(iii)リナロール濃度が21~2501ppbであり、リモネン濃度が6~1001ppbである、
(iv)リナロール濃度が51~2501ppbであり、フェニルアセトアルデヒド濃度が31~136ppbである。
これにより、ぶどうらしさ、飲みごたえを向上できる。かかる理由の詳細は明らかではないが、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドはいずれも果汁や茶葉などに含まれる好ましい香りとして知られるが、これら香気成分を所定の濃度に調整することでぶどう果汁が有する香味と相まって、ぶどうらしさ、飲みごたえを向上できると推測される。
【0012】
以下、本実施形態のぶどう風味飲料(以下、単に「飲料」とも表記する)に含まれる各成分について説明する。
【0013】
[香気成分]
本実施形態の飲料が上記の要件(i)~(iv)を満たすためには、ぶどう果汁にくわえ、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドを所望の濃度となるようにそれぞれ含有させることが不可欠である。使用するぶどう果汁にこれら香気成分が含まれる場合には、それらの含有量を加味した量とする。
また、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドは、ぶどう果汁以外の果汁や茶葉などにも含まれるが、ぶどう果汁以外の成分を用いる場合は、本実施形態の飲料のぶどう風味を損なわない濃度とする。
飲料中の香気成分の濃度は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いた固相マイクロ抽出法(SPME)法により行うことができる。
【0014】
[ぶどう果汁]
本実施形態の飲料は、ぶどう由来の果汁を含む。
本実施形態において果汁とは、果物・果実を破砕して搾汁したり、あるいは裏ごししたりするなどして得られる液体成分をいう。また、果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれてもよく、パルプ分を含むもの、または、ろ過や遠心分離等の処理によりパルプ分を除去したものあってもよい。
また、本実施形態で用いられる果汁としては、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁などが挙げられる。また、透明な果汁、半透明な果汁、または不透明な果汁のいずれであってもよく、安定した果汁感、おいしさを得る観点からは透明な果汁であることが好適である。
【0015】
本実施形態の飲料の果汁率(ストレート果汁換算;質量%)は、10~40%であり、好ましくは10~35質量%であり、より好ましくは12~30質量%である。
果汁率を、上記数値範囲とすることにより、低果汁でありながらも、ぶどうらしさ、飲みごたえ、おいしさのバランスを向上できる。
【0016】
なお、果汁率とは、果汁を搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない果汁の搾汁(ストレート果汁)のBrix値または酸度を100%としたときの相対濃度である。果汁率をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果汁の種類ごとに定められている。また、果汁の果汁率をJAS規格のBrix値に基づいて換算する場合、果汁に加えられた糖類、はちみつ等のBrix値は除いて算出される。
【0017】
例えば、ぶどうについてはJAS規格のBrix値が11であるため、Brix値が55の濃縮ぶどう果汁を飲料中10質量%配合した場合、50質量%の果汁率の飲料となる。
【0018】
本実施形態のぶどう果汁に用いられるぶどうは、特に限定されないが、例えば、果皮の色味で、黄緑系の白ぶどうと、赤系・黒系の赤ぶどうとに分類した場合、白ぶどうと赤ぶどうを共に含むものであってもよく、少なくとも赤ぶどうを含むことが好ましい。赤ぶどうを含むことで、ぶどうらしさ、飲みごたえの向上効果が一層顕著になる。
【0019】
黄緑系の白ぶどうとしては、たとえば、ナイアガラ、ロザリオビアンコ、マスカット、シャルドネ等の品種が挙げられる。赤系・黒系の赤ぶどうとしては、たとえば、コンコード、巨峰、ナガノパープル、ピオーネ、スチューベン、藤稔、キャンベル・アーリー等の黒系の赤ぶどう、デラウェア、ロザリオ・ロッソ、甲斐路、ゴルビー等の赤系の赤ぶどうが挙げられる。
【0020】
なお、ぶどう果汁の調製に用いることのできるぶどうの産地、熟度、大きさなどは特に限定されず、適宜設定することができる。
【0021】
[その他の成分]
本実施形態の飲料は、本発明の効果が奏される限り、上記以外の他の成分を含んでもよい。具体的には、ぶどう以外の果汁、糖類や高甘味度甘味料などの甘味料、クエン酸などの酸味料、香料、茶抽出物、ビタミン、着色料、食塩、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、増粘剤などの飲料に通常配合される成分を含有することができる。
【0022】
上記のぶどう以外の果汁としては、例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、およびマンゴー果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ぶどう糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類;キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料;タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸、酢酸、およびリン酸、ならびにそれらの塩類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0025】
[ポリフェノール]
本実施形態の飲料は、ポリフェノールを含むことが好ましい。本実施形態において、飲料中のポリフェノール濃度は、好ましくは15~65mg/100mlであり、より好ましくは20~50mg/100mlである。ポリフェノール濃度を上記数値範囲内とすることで、良好なぶどう風味を保持しつつ、ぶどうらしさ、飲みごたえを向上しやすくなる。
なお、ポリフェノールとは1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物の総称を意味する。具体的には、例えば、ぶどうなどの果汁や果皮に含まれるアントシアニン等、茶葉等に含まれるカテキン、テアニン、およびタンニン等が挙げられる。
ポリフェノール濃度は、フォーリン・チオカルト法(FOLIN-CIOCALTEU法)(没食子酸換算)により測定できる。
【0026】
[糖度(Brix値)]
本実施形態の飲料(20℃)の糖度(Brix値)は、飲料の嗜好性に応じて適宜設定できるが、例えば、糖度1~20が好ましく、糖度5~15がより好ましい。
糖度(Brix値)は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
糖度は、例えば、上記の甘味料、果汁、その他の各種成分の含有量により調整することができる。
【0027】
[酸度]
本実施形態の飲料の酸度は、0.2g/100ml以上、0.5g/100ml以下であることが好ましい。酸度を、上記下限値以上とすることにより、おいしさが得られるようになる。一方、酸度を、上記上限値以下とすることにより、過度な酸味を抑制し、おいしさを両立できる。
【0028】
酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0029】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、2.8~4.6であることが好ましく、3.1~4.2であることがより好ましく、3.2~3.5であることがさらに好ましい。これにより、ぶどうらしさ、飲みごたえをバランスよく向上し、おいしさを良好に保持できる。
【0030】
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、酸味料の量を変えることや、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0031】
[炭酸ガス、アルコール]
また、本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよい。炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
【0032】
また、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0033】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。飲料を外観から視認できる観点からは、ペットボトルが好ましい。
【0034】
飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000mlが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500mlがより好ましい。
【0035】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0036】
<ぶどう風味飲料の製造方法>
本実施形態の製造方法は、ぶどう果汁と、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含むぶどう風味飲料の製造方法であって、
ぶどう果汁率が10~40%となるように調整する工程と、
以下の要件(i)~(iv)のいずれかを満たすように香気成分を配合する工程と、
を順不同に含む。これにより、ぶどう風味飲料のぶどうらしさ、飲みごたえを向上し、おいしさも向上できる。
(i)リナロール濃度が2501~5001ppbである、
(ii)リモネン濃度が101~1001ppbである、
(iii)リナロール濃度が21~2501ppbであり、リモネン濃度が6~1001ppbである、
(iv)リナロール濃度が51~2501ppbであり、フェニルアセトアルデヒド濃度が31~136ppbである。
混合方法は特に限定されず公知の方法を用いることができる。なお、飲料に含まれる各成分およびその含有量等は上記飲料と同様である。
【0037】
<ぶどう風味飲料のぶどうらしさおよび飲みごたえの向上方法>
本実施形態の飲料のぶどうらしさおよび飲みごたえの向上方法は、ぶどう果汁と、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含むぶどう風味飲料において、
ぶどう果汁率が10~40%となるように調整する工程と、
以下の要件(i)~(iv)のいずれかを満たすように香気成分を配合する工程と、
を順不同に含む。これにより、ぶどう風味飲料のぶどうらしさ、飲みごたえを向上し、おいしさも向上できる。
(i)リナロール濃度が2501~5001ppbである、
(ii)リモネン濃度が101~1001ppbである、
(iii)リナロール濃度が21~2501ppbであり、リモネン濃度が6~1001ppbである、
(iv)リナロール濃度が51~2501ppbであり、フェニルアセトアルデヒド濃度が31~136ppbである。
混合方法は特に限定されず公知の方法を用いることができる。なお、飲料に含まれる各成分およびその含有量等は上記飲料と同様である。
【0038】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(1)飲料中の香気成分の定量
飲料中のリナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドの濃度(ppb)について、SPME-GC/MS測定に供し、以下に示す条件で測定を行った。
装置:GC:Agilent Technologies社製 8890
MS:Agilent Technologies社製 5977B
SPMEファイバー:DVB/CAR/PDMS
カラム:DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
定量イオン:リナロール m/z=71、リモネン m/z=136、フェニルアセトアルデヒド m/z=92、
内標:2-ヘキサノン m/z=100、3-オクタノール m/z=101
温度条件:40℃(3分)~5℃/分110℃~10℃/分240℃(5分)
キャリアガス流量:He 1ml/分
注入法:スプリットレス
イオン源温度:230℃
【0041】
(2)飲料の官能評価
ぶどう風味飲料の開発に精通した5~7名の専門家がそれぞれ飲料(20℃)を試飲し、以下の官能試験を実施した。各対照例を基準とし全項目4点とした場合に、それぞれの試験区において、各評価項目を7段階で評価し、その平均値をとった。評価基準は以下の通りである。
・評価基準
<おいしさ、ぶどうらしさ、飲みごたえの評価基準>
評点7:対照例と比較して、非常に良く(強く)感じる
評点6:対照例と比較して、良く(強く)感じる
評点5:対照例と比較して、やや良く(強く)感じる
評点4:対照例と同等である
評点3:対照例と比較して、やや劣るように(弱く)感じる
評点2:対照例と比較して、劣るように(弱く)感じる
評点1:対照例と比較して、非常に劣るように(弱く)感じる
【0042】
(3)原料
飲料の原料として、以下のものを用いた。
・ぶどう透明濃縮果汁;68°赤ぶどう透明濃縮果汁(コンコード種)糖度68.5
・果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖);糖度75.5、酸度0
・クエン酸三ナトリウム
・無水クエン酸
なお、糖度(Brix)は糖用屈折計(ATAGO RX-5000α)を用いて測定される値、酸度は、クエン酸酸度(g/100ml)を示す。
【0043】
(4)実験1(各香気成分の濃度の影響)
まず、以下の割合で各原料を混合し、果汁率20%のベース液を調製した。
<ベース液>
・ぶどう透明濃縮果汁 34g/L
・果糖ぶどう糖液糖 95g/L
・クエン酸三ナトリウム 1.2g/L
・無水クエン酸 2.3g/L
つぎに、得られたベース液を用いて、以下の表1~4に示す含有量となるように、リナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドをそれぞれ配合し、果汁率20%の各飲料を得た。
各飲料のポリフェノール量(mg/100ml)は、30.3であった。また、糖度(Brix)は9.5、クエン酸酸度は0.3(g/100ml)であった。
各飲料について、対照例1を基準として、上記(2)の官能評価を行った。結果を表1~4に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
(5)実験2(果汁率の影響)
以下の表5~6に示す含有量および果汁率となるように、各原料およびリナロール、リモネン、およびフェニルアセトアルデヒドをそれぞれ配合し、異なる果汁率の各飲料を得た。また、各原料の含有量は、飲料のブリックス値と酸度がそれぞれ同じになるように調整した。
各飲料の糖度(Brix)は9.5、クエン酸酸度は0.3(g/100ml)であった。
各飲料について、対照例1~6のうち同じ果汁率を基準として、上記(2)の官能評価を行った。結果を表5~6に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】