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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055014
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
H05B6/12 324
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161571
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】榊原 隆文
(72)【発明者】
【氏名】杉本 喜輝
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151CA01
3K151CA56
(57)【要約】
【課題】少なくとも2つの誘導加熱コイルを有するコンロ部と、調理庫部とを有する加熱調理器において、ユーザの使い勝手を向上させる。
【解決手段】コンロ部2が使用されるときのコンロ部使用可能電力値は、加熱調理器の最大定格消費電力値と、調理庫部6が使用されるときの調理庫部の消費電力値の総和である調理庫部総和最大消費電力値とに基づき設定され、コンロ部2で少なくとも2つの誘導加熱コイル20,21が同時に使用される場合、調理庫部6の使用の有無に関わらず、コンロ部2の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値がコンロ部使用可能電力値内に収まるように、各誘導加熱コイル20,21の最大出力を抑制する火力抑制制御を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理器本体と、
加熱調理器本体の上面を覆う天板と、
天板上に載置された被調理物を加熱する複数のコンロ部加熱手段を有するコンロ部と、
加熱調理器本体内に収容された調理庫、及び調理庫内の被調理物を加熱する調理庫部加熱手段を有する調理庫部と、
コンロ部加熱手段や調理庫部加熱手段の加熱運転を制御する制御部と、を備え、
コンロ部は、複数のコンロ部加熱手段として、少なくとも2つの誘導加熱コイルを有する加熱調理器であって、
コンロ部が使用されるときのコンロ部使用可能電力値は、加熱調理器の最大定格消費電力値と、調理庫部が使用されるときの調理庫部の消費電力値の総和である調理庫部総和最大消費電力値とに基づき設定されており、
制御部は、コンロ部で少なくとも2つの誘導加熱コイルが使用される場合、調理庫部の使用の有無に関わらず、コンロ部の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値がコンロ部使用可能電力値内に収まるように、誘導加熱コイルの最大出力を抑制する火力抑制制御を実行する、加熱調理器。
【請求項2】
加熱調理器本体と、
加熱調理器本体の上面を覆う天板と、
天板上に載置された被調理物を加熱する複数のコンロ部加熱手段を有するコンロ部と、
加熱調理器本体内に収容された調理庫、及び調理庫内の被調理物を加熱する調理庫部加熱手段を有する調理庫部と、
コンロ部加熱手段や調理庫部加熱手段の加熱運転を制御する制御部と、を備え、
コンロ部は、複数のコンロ部加熱手段として、少なくとも2つの誘導加熱コイルを有する加熱調理器であって、
コンロ部のコンロ部加熱手段は、全てのコンロ部加熱手段が最大出力で使用されたときでも、コンロ部の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値が、加熱調理器の最大定格消費電力値と、調理庫部が使用されるときの調理庫部の消費電力値の総和である調理庫部総和最大消費電力値とに基づくコンロ部使用可能電力値内に収まるように設定されている加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器おいて、
調理庫部は、グリル部であり、
調理庫部は、調理庫部加熱手段として、グリルバーナを有する、加熱調理器。
【請求項4】
請求項3に記載の加熱調理器おいて、
コンロ部は、複数のコンロ部加熱手段として、少なくとも2つの導加熱コイルと、少なくとも1つのコンロバーナとを有する、加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関する。特に、本発明は、少なくとも2つの誘導加熱コイルを有するコンロ部と、調理庫部とを備える加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンロ部加熱手段として複数の誘導加熱コイルを有するコンロ部と、グリル部加熱手段として電熱ヒータを有するグリル部とを備えた加熱調理器がある。加熱調理器では、調理性能上、コンロ部及びグリル部でそれぞれ、できるだけ安定した火力が求められているが、一般家庭における電源容量、配線容量、コンセントの種類等の電源事情に基づく制約や安全上の制約などから、機器全体の最大の総合消費電力値を所定の電力値の範囲内で制御する必要がある。例えば、複数の誘導加熱コイルの合計の最大加熱出力が加熱調理器全体の最大定格消費電力値より大きな加熱調理器では、複数の誘導加熱コイルを同時に一定以上の出力で使用することができない。このため、複数の誘導加熱コイルを使用する場合、所定の消費電力値内に収まるように各誘導加熱コイルの出力を可変制御することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、特許文献1の加熱調理器では、消費電力値の大きなグリル部も有するから、コンロ部及びグリル部の加熱手段の使用の組み合わせによって、グリル部を使用することができないという問題がある。また、グリル部を使用できる場合でも、複数の誘導加熱コイルを同時に使用すると、各誘導加熱コイルの出力が調理途中で可変されるから、コンロ部でユーザの望む加熱調理を実行することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-347026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、少なくとも2つの誘導加熱コイルを有するコンロ部と、調理庫部とを有する加熱調理器において、ユーザの使い勝手を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の第1の態様によれば、
加熱調理器本体と、
加熱調理器本体の上面を覆う天板と、
天板上に載置された被調理物を加熱する複数のコンロ部加熱手段を有するコンロ部と、
加熱調理器本体内に収容された調理庫、及び調理庫内の被調理物を加熱する調理庫部加熱手段を有する調理庫部と、
コンロ部加熱手段や調理庫部加熱手段の加熱運転を制御する制御部と、を備え、
コンロ部は、複数のコンロ部加熱手段として、少なくとも2つの誘導加熱コイルを有する加熱調理器であって、
コンロ部が使用されるときのコンロ部使用可能電力値は、加熱調理器の最大定格消費電力値と、調理庫部が使用されるときの調理庫部の消費電力値の総和である調理庫部総和最大消費電力値とに基づき設定されており、
制御部は、コンロ部で少なくとも2つの誘導加熱コイルが使用される場合、調理庫部の使用の有無に関わらず、コンロ部の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値がコンロ部使用可能電力値内に収まるように、誘導加熱コイルの最大出力を抑制する火力抑制制御を実行する、加熱調理器が提供される。
【0007】
上記本技術の第1の態様の加熱調理器によれば、コンロ部が使用されるときのコンロ部使用可能電力値は、加熱調理器の最大定格消費電力値と、調理庫部が使用されるときの調理庫部の消費電力値の総和である調理庫部総和最大消費電力値とに基づき設定されているから、コンロ部の使用によって調理庫部の使用が制限を受けることはない。また、上記本技術の第1の態様の加熱調理器によれば、コンロ部で2以上の誘導加熱コイルが使用される場合、調理庫部の使用の有無に関わらず、コンロ部の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値がコンロ部使用可能電力値内に収まるように、誘導加熱コイルの最大出力を抑制する火力抑制制御が実行されるから、コンロ部の各誘導加熱コイルの出力の変化を防止することができる。これにより、ユーザの使い勝手を向上させることができる。なお、本明細書において、最大定格消費電力値とは、通常の電化製品と同様に、加熱調理器の機能を安全に達成できる最大の消費電力値をいう。また、後述するように、調理庫部総和最大消費電力値とは、調理庫部を使用するときの最大の消費電力値をいい、コンロ部総和消費電力値とは、コンロ部を使用するときの消費電力値の総和をいい、コンロ部使用可能電力値とは、コンロ部を使用するときに使用可能な電力値をいう。
【0008】
本技術の第2の態様によれば、
加熱調理器本体と、
加熱調理器本体の上面を覆う天板と、
天板上に載置された被調理物を加熱する複数のコンロ部加熱手段を有するコンロ部と、
加熱調理器本体内に収容された調理庫、及び調理庫内の被調理物を加熱する調理庫部加熱手段を有する調理庫部と、
コンロ部加熱手段や調理庫部加熱手段の加熱運転を制御する制御部と、を備え、
コンロ部は、複数のコンロ部加熱手段として、少なくとも2つの誘導加熱コイルを有する加熱調理器であって、
コンロ部のコンロ部加熱手段は、全てのコンロ部加熱手段が最大出力で使用されたときでも、コンロ部の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値が、加熱調理器の最大定格消費電力値と、調理庫部が使用されるときの調理庫部の消費電力値の総和である調理庫部総和最大消費電力値とに基づくコンロ部使用可能電力値内に収まるように設定されている加熱調理器が提供される。
【0009】
上記本技術の第2の態様の加熱調理器によれば、コンロ部のコンロ部加熱手段は、全てのコンロ部加熱手段が最大出力で使用されたときでも、コンロ部の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値が、加熱調理器の最大定格消費電力値と、調理庫部が使用されるときの調理庫部の消費電力値の総和である調理庫部総和最大消費電力値とに基づくコンロ部使用可能電力値内に収まるように設定されているから、コンロ部の使用による調理庫部の運転の制限や、コンロ部の各誘導加熱コイルの出力の変化を防止することができる。これにより、簡易な手段により、ユーザの使い勝手を向上させることができる。
【0010】
本技術の第3の態様によれば、上記第1または第2の態様の加熱調理器において、
調理庫部は、グリル部であり、
調理庫部は、調理庫部加熱手段として、グリルバーナを有する。
【0011】
上記本技術の第3の態様の加熱調理器によれば、調理庫部総和最大消費電力値の小さいグリル部が加熱調理器に搭載されるから、コンロ部使用可能電力値を大きくすることができ、一定の各誘導加熱コイルの最大出力を確保することができる。これにより、コンロ部の使い勝手をさらに向上させることができる。
【0012】
本技術の第4の態様によれば、上記第1~第3の態様のいずれかの加熱調理器において、
コンロ部は、複数のコンロ部加熱手段として、少なくとも2つの導加熱コイルと、少なくとも1つのコンロバーナとを有する。
【0013】
上記本技術の第4の態様の加熱調理器によれば、コンロ部使用可能電力値に対する各誘導加熱コイルへの割り当てを増加させることができるから、一定の各誘導加熱コイルの最大出力を確保することができる。これにより、コンロ部の使い勝手をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の一例を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の最大定格消費電力値等の設定値の一例を示すデータテーブルである。
図4図4は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の制御動作の一例を示すフローチャートの一部である。
図5図5は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の制御動作の一例を示すフローチャートの一部である。
図6図6は、本発明の実施の形態2に係る加熱調理器の最大定格消費電力値等の設定値の一例を示すデータテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態に係る加熱調理器を説明する。図1は、ビルトインコンロに適用した本実施の形態の加熱調理器の一例を示す概略斜視図であり、図2はそのブロック図である。
【0016】
加熱調理器は、加熱調理器本体10と、加熱調理器本体10の上面を覆う天板11と、天板11上に載置された被調理物である調理容器を加熱するコンロ部2と、加熱調理器本体10内に収容されたグリル庫(調理庫)60内で被調理物である食材を加熱するグリル部(調理庫部)6とを有する。なお、本明細書では、加熱調理器本体10の前面を加熱調理器の正面とし、加熱調理器を正面側から見たときの加熱調理器本体10の奥行方向を前後方向、幅方向を左右方向、高さ方向を上下方向という。
【0017】
コンロ部2は、コンロ部加熱手段として、天板11の前方領域の下面側に左右に分離して配置された第1誘導加熱コイル20及び第2誘導加熱コイル21と、天板11の後方領域に配設されたコンロバーナ32とを有する。天板11の上面におけるコンロバーナ32の外周には、鍋やフライパンなどの調理容器を下方から支持する五徳35が載置されている。誘導加熱コイルは、3つ以上設けてもよい。また、コンロバーナは設けなくてもよいし、2つ以上設けてもよい。各コンロ部加熱手段の配置は特に制限されず、誘導加熱コイルを天板11の左右いずれかの領域に配設してもよいし、コンロバーナを天板11の誘導加熱コイルと異なる左右いずれかの領域に配設してもよい。
【0018】
天板11の下面側における第1及び第2誘導加熱コイル20,21のそれぞれの中央部に設けられた空間には、誘導加熱コイル20,21によって加熱される調理容器の底部の温度を検出する鍋底温度センサ22,23が設けられている。コンロバーナ32の中央部には、五徳35上に載置された調理容器の底部に当接し、調理容器の底部の温度を検出する鍋底温度センサ34が設けられている。コンロバーナ32の炎孔形成部の近傍には、ガスの燃焼炎の有無を検出する炎検知センサ36と、炎孔形成部の近傍で火花放電させる点火プラグ37とが設けられている。なお、第1及び第2誘導加熱コイル20,21は同一の構成を有しており、煩雑化を避けるため、図2では1つの誘導加熱コイルのみが示されている。
【0019】
加熱調理器本体10の前面側の中央には、加熱調理器本体10に収容されたグリル庫60の前方を開閉可能なグリル扉61が設けられている。グリル部6は、グリル部加熱手段として、グリルバーナ62を有する。グリルバーナ62は、上火バーナのみまたは下火バーナのみを設けてもよいし、両バーナを設けてもよい。また、排気通路にアフターバーナを設けてもよい。
【0020】
グリル庫60内の後部(奥側)には、庫内の温度を検出する庫内温度センサ63が設けられている。グリルバーナ62の炎孔形成部の近傍には、ガスの燃焼炎の有無を検出する炎検知センサ64と、炎孔形成部の近傍で火花放電させる点火プラグ65とが設けられている。
【0021】
本体前面13の右側には、電源スイッチ40と、コンロバーナ32の点火や消火、火力の選択を手動操作するための出力操作手段としてのコンロ点消火操作子41とが設けられ、本体前面13の左側には、グリルバーナ62の点火や消火、火力の選択を手動操作するためのグリル点消火操作子45が設けられている。また、本体前面13における上記右側のコンロ点消火操作子41の配設部下方には、第1及び第2誘導加熱コイル20,21のオンオフを手動操作するオンオフ操作スイッチ42や、火力の選択を手動操作するための出力操作手段としてのコイル操作スイッチ43を有するコイル操作パネル44が設けられている。これらの点消火操作子41,42やオンオフ操作スイッチ42、コイル操作スイッチ43の操作信号は、後述する制御部に出力される。
【0022】
第1及び第2誘導加熱コイル20,21はそれぞれ、コイル操作スイッチ43による火力設定操作に応じて高周波電流が供給されて磁界を発生し、調理容器を誘導加熱する。
【0023】
加熱調理器本体10の内部には、コンロ点消火操作子41による点消火操作や火力設定操作に応じてコンロバーナ32へのガスの供給量を調整するコンロバーナ32用のバルブユニット30と、グリル点消火操作子45による点消火操作や火力設定操作に応じてグリルバーナ62へのガスの供給量を調整するグリルバーナ62用のバルブユニット70とが組み込まれている。
【0024】
コンロバーナ32用のバルブユニット30は、コンロ点消火操作子41で点火操作がなされれば開弁し、炎検知センサ36の出力値が所定の点火検知レベル未満になれば閉じる電磁開閉弁、コンロ点消火操作子41で点火操作がなされれば開弁し、消火操作がなされれば閉弁する主弁、コンロ点消火操作子41の火力設定操作に合わせて開度調整されるニードル弁、制御部からの火力変更の指示に応じて開度が切り替わる火力切替弁などからなり、これら各弁体によってコンロバーナ32へのガスの供給量が適宜調整される。グリルバーナ62用のバルブユニット70も同様に、グリル点消火操作子45で点火操作がなされれば開弁し、炎検知センサ64の出力値が所定の点火検知レベル未満になれば閉じる電磁開閉弁、グリル点消火操作子45で点火操作がなされれば開弁し、消火操作がなされれば閉弁する主弁、グリル点消火操作子45の火力設定操作に合わせて開度調整されるニードル弁、制御部からの火力変更の指示に応じて開度が切り替わる火力切替弁などからなり、これら各弁体によってグリルバーナ62へのガスの供給量が適宜調整される。なお、バルブユニット70は、回転ディスク式のバルブでもよい。
【0025】
加熱調理器本体10の内部には、制御部80や点火プラグ37,65に所定電圧を印加して火花放電させる図示しないイグナイタが配設されており、制御部80には、第1及び第2誘導加熱コイル20,21に高周波電流を供給するためのドライブ回路や電源回路、ユーザが所望する態様で各種の加熱調理を行い得るように各加熱手段の作動を全体的に制御する制御回路等が組み込まれている。制御回路は、CPU、ROM、RAM、インターフェース回路等を有する電子回路ユニットである。第1及び第2誘導加熱コイル20,21、鍋底温度センサ22,23,34、炎検知センサ36,64、庫内温度センサ63、バルブユニット30,70、電源スイッチ40、コンロ点消火操作子41、グリル点消火操作子45、オンオフ操作スイッチ42、コイル操作スイッチ43や、図示しないイグナイタ、表示部、音声出力部はそれぞれ、電気配線を通じて制御部80に接続されている。制御部80は、入力データを使用して、予め実装されたプログラムを実行することで機器を制御する。
【0026】
また、制御部80は、機能的構成手段として、第1及び第2誘導加熱コイル20,21への高周波電流の供給のオンオフや、火力設定を行うコイル制御部、第1及び第2誘導加熱コイル20,21の使用の有無を判定する使用判定部、各バーナ32,62の点火や消火、火力設定を行うバーナ制御部、両誘電加熱コイル20,21が併行して使用されるときに、後から使用する誘導加熱コイルの最大出力を抑制する火力抑制制御を実行する火力抑制制御部、図示しない表示部や音声出力部を制御する報知制御部等を有している。
【0027】
図3は、本実施の形態の加熱調理器の最大定格消費電力値や、調理庫部総和最大消費電力値、コンロ部使用可能電力値等を示すデータテーブルである。
【0028】
図3に示すように、本実施の形態の加熱調理器において、加熱調理器全体として使用可能な最大定格消費電力値は、例えば、一般家庭用の4.8kWである。また、第1及び第2誘導加熱コイル20,21が単独で使用されるときの最大出力における設定電力値はそれぞれ、例えば、3.0kWに設定されている。従って、第1及び第2誘導加熱コイル20,21の最大出力における設定電力値の合計(6.0kW)は、加熱調理器全体の最大定格消費電力値(4.8kW)よりも大きくなる。このため、既述したように、グリル部6の使用よりも先に第1及び第2誘導加熱コイル20,21が一定以上の出力で使用されていた場合、グリル部6を使用できないという問題や、グリル部6を使用できる場合でも、コンロ部2を使用中にグリル部6の使用が開始されると、第1及び第2誘導加熱コイル20,21の出力が変化するという問題がある。
【0029】
しかしながら、本実施の形態の加熱調理器では、グリル部6の使用を確保するため、コンロ部2が使用されるときのコンロ部使用可能電力値は、グリル部6の使用の有無に関わらず、最大定格消費電力値から調理庫部総和最大消費電力値(0.1kW未満)を減じた電力値(例えば、4.7kW)に予め設定されている。このため、コンロ部2の第1及び第2誘導加熱コイル20,21の使用の有無に関わらず、グリル部6を使用することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、調理庫部として、グリルバーナ62を有するグリル部6が搭載されており、グリル部6を使用するときの消費電力値は誘導加熱コイル20,21を使用するときよりも十分に小さい。具体的には、グリルバーナ62用のバルブユニット70、イグナイタ、表示部、音声出力部等のグリル部6が使用されるときの全ての負荷を最大出力で同時に駆動させたときのグリル部6の消費電力値の総和である調理庫部総和最大消費電力値は、0.1kW未満である。このため、コンロ部2でコンロ部加熱手段である第1及び第2誘導加熱コイル20,21並びにコンロバーナ32を使用するときのコンロ部2の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値が、最大定格消費電力値(4.8kW)から小電力の調理庫部総和最大消費電力値(0.1kW未満)を減じたコンロ部使用可能電力値(4.7kW)内に収まるように、後述する火力抑制制御が実行される。なお、グリル部6と同様に、コンロバーナ32を使用するときの消費電力値は誘導加熱コイル20,21を使用するときよりも十分に小さく、コンロバーナ32用のバルブユニット30、イグナイタ、表示部、音声出力部等の全ての負荷を最大出力で同時に駆動させたときの消費電力値の総和であるコンロバーナ総和最大消費電力値は、0.1kW未満である。従って、本実施の形態によれば、最大定格消費電力値と略同等のコンロ部使用可能電力値を第1及び第2誘導加熱コイル20,21に使用することができる。
【0031】
第1及び第2誘導加熱コイル20,21で火力を設定する場合、コイル操作スイッチ42,43の操作量に従って火力が設定されるが、第1及び第2誘導加熱コイル20,21が併行して使用されて、両誘導加熱コイル20,21がオン状態であることを示す信号が発生すると、コンロ部総和消費電力値が既述したコンロ部使用可能電力値内に収まるように、後から使用が開始される誘導加熱コイルの最大出力を抑制する火力抑制制御が実行される。具体的には、先に使用が開始された一方の誘導加熱コイルの最大出力における設定電力値は、火力抑制制御の無い単独使用時と同様に、例えば、3.0kWに設定されるが、グリル部6の使用の有無に関わらず、コンロ部使用可能電力値は4.7kWであり、コンロバーナ総和最大消費電力値は0.1kW未満であるため、後から使用が開始される他方の誘導加熱コイルの最大出力における設定電力値は、例えば、1.2kWに抑制される。これにより、いずれの誘導加熱コイル20,21でも、所定の出力まで安定して加熱運転を行うことができる。また、例えば、一方の誘導加熱コイル20を使用している途中で、他方の誘導加熱コイル21の使用が開始される場合でも、使用中の誘導加熱コイル20の出力に変化が生じるのを防止することができる。なお、本実施の形態では、後から使用が開始される他方の誘導加熱コイルの最大出力における設定電力値を1.2kWに抑制としたが、コンロ部総和消費電力値が既述したコンロ部使用可能電力値内に収まるのであれば、その限りではない。
【0032】
次に、本実施の形態の加熱調理器の制御動作について、図4及び図5のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
第1誘導加熱コイル20が先にオン操作されると(ステップS1で、Yes)、第1誘導加熱コイル20の火力は制限されていない単独使用時の最大出力(例えば、3.0kW)までの範囲で調整される(ステップS2)。
【0034】
同様に、第2誘導加熱コイル21が先にオン操作されると(ステップS21で、Yes)、第2誘導加熱コイル21の火力は制限されていない単独使用時の最大出力(例えば、3.0kW)までの範囲で調整される(ステップS22)。なお、図示しないが、既述したように、コンロバーナ32を使用するときのコンロバーナ総和最大消費電力値は十分に小さいから、コンロバーナ32と1つの誘導加熱コイルのみが使用されている場合でも、同様に、使用中の誘導加熱コイルの火力は制限されていない単独使用時の最大出力までの範囲で調整される。
【0035】
先に第1誘導加熱コイル20が使用されている状態で(ステップS1で、Yes)、後から第2誘導加熱コイル21がオン操作されると(ステップS3で、Yes)、既述した火力抑制制御が実行され、コンロ部2の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値がコンロ部使用可能電力値内に収まるように、後から使用が開始される第2誘導加熱コイル21の火力は抑制された最大出力(例えば、1.2kW)までの範囲で調整される(ステップS4)。第2誘導加熱コイル21が先に使用されている状態で(ステップS21で、Yes)、後から第1誘導加熱コイル20がオン操作される場合も同様である(ステップS23~S24)。
【0036】
両誘導加熱コイル20,21が併行して使用されている状態で、先に使用が開始された第1誘導加熱コイル20のみがオフ操作された場合(ステップS5で、Yes)、第2誘導加熱コイル21に対する火力抑制制御が停止され、第2誘導加熱コイル21の火力は制限されていない単独使用時の最大出力(例えば、3.0kW)までの範囲で調整される(ステップS6)。第2誘導加熱コイル21がオン操作されない場合(ステップS3で、No)や、後から使用が開始された第2誘導加熱コイル21のみがオフ操作された場合(ステップS8で、Yes)、第1誘導加熱コイル20の火力は単独使用時の最大出力(例えば、3.0kW)までの範囲で調整される(ステップS2)。
【0037】
同様に、両誘導加熱コイル20,21が併行して使用されている状態で、先に使用が開始された第2誘導加熱コイル21のみがオフ操作された場合(ステップS25で、Yes)、第1誘導加熱コイル20に対する火力抑制制御が停止され、第1誘導加熱コイル20の火力は制限されていない単独使用時の最大出力(例えば、3.0kW)までの範囲で調整される(ステップS26)。第1誘導加熱コイル20がオン操作されない場合(ステップS23で、No)や、後から使用が開始された第1誘導加熱コイル20のみがオフ操作された場合(ステップS28で、Yes)、第2誘導加熱コイル21の火力は単独使用時の最大出力(例えば、3.0kW)までの範囲で調整される(ステップS22)。
【0038】
いずれの誘導加熱コイル20,21もオフ操作されると(ステップS5、S7、S9、S25、S27、S29で、Yes)、加熱運転が終了する。
【0039】
なお、図示しないが、グリル部6の調理庫部総和最大消費電力値はコンロ部2の使用とは別に予め設定されているから、ユーザがグリル部6の使用を開始すると、設定されている範囲でグリル部6での火力が調整される。
【0040】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の加熱調理器によれば、コンロ部2が使用されるときのコンロ部使用可能電力値は、加熱調理器の最大定格消費電力値と、グリル部6が使用されるときのグリル部6の消費電力値の総和である調理庫部総和最大消費電力値とに基づき予め設定されているから、コンロ部2の使用によってグリル部6の使用が制限を受けることはない。また、本実施の形態によれば、コンロ部2で2つの誘導加熱コイル20,21が併行して使用される場合、グリル部6の使用の有無に関わらず、コンロ部総和消費電力値がコンロ部使用可能電力値内に収まるように後から使用する誘導加熱コイルの最大出力を制限する火力抑制制御が実行されるから、コンロ部2の各誘導加熱コイル20,21の出力の変化を防止することができる。これにより、ユーザの使い勝手を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、調理庫部総和最大消費電力値の小さいグリルバーナ62を有するグリル部6が加熱調理器に搭載されているから、コンロ部使用可能電力値を大きくすることができ、各誘導加熱コイル20,21の最大出力の抑制を軽減することができる。これにより、コンロ部2の使い勝手をさらに向上させることができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、コンロ部2は消費電力値の小さなコンロバーナ32を有しており、コンロ部使用可能電力値に対する各誘導加熱コイル20,21への割り当てを増加させることができるから、各誘導加熱コイル20,21の最大出力の抑制を軽減することができる。これにより、コンロ部2の使い勝手をさらに向上させることができる。
【0043】
(実施の形態2)
本実施の形態の加熱調理器は、第1及び第2誘導加熱コイル20,21の構成が実施の形態1のそれらと異なる以外は、実施の形態1の加熱調理器と同様の構成を有する。このため、実施の形態1と異なる部分のみを説明し、同一の部分については、同一の引用番号を使用して説明を省略する。
【0044】
図6に示すように、本実施の形態のコンロ部2の第1誘導加熱コイル20の最大出力における設定電力値は、例えば、2.5kWに設定され、第2誘導加熱コイルの最大出力における設定電力値は、例えば、1.2kWに設定されている。このため、全てのコンロ部加熱手段を併行して使用する場合でも、コンロ部総和消費電力値は最大定格消費電力値から調理庫部総和最大消費電力値を減じたコンロ部使用可能電力値内に収まる。このため、本実施の形態では、火力抑制制御は不要である。
【0045】
本実施の形態の加熱調理器によれば、コンロ部2のコンロ部加熱手段は、全てのコンロ部加熱手段が最大出力で使用されたときでも、コンロ部2の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値が、加熱調理器の最大定格消費電力値と、グリル部6が使用されるときのグリル部6の消費電力値の総和である調理庫部総和最大消費電力値とに基づくコンロ部使用可能電力値内に収まるように設定されているから、コンロ部2の使用によるグリル部6の運転の制限や、コンロ部2の各誘導加熱コイル20,21の出力の変化を防止することができる。これにより、簡易な手段により、ユーザの使い勝手を向上させることができる。
【0046】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、コンロ部加熱手段として、誘導加熱コイルとコンロバーナとが設けられている。しかしながら、本発明では、コンロバーナの代わりに電熱ヒータを用いてもよい。
【0047】
(2)上記実施の形態では、調理庫部として、グリルバーナを有するグリル部が設けられている。しかしながら、本発明では、グリル部の代わりに、マグネトロンを調理庫部加熱手段として有するレンジ部を設けてもよいし、オーブンバーナを調理庫部加熱手段として有するオーブン部を設けてもよい。
【0048】
(3)上記実施の形態では、1つの制御部によりコンロ部とグリル部の運転が制御されている。しかしながら、本発明では、コンロ部とグリル部とで異なる制御部を設けてもよいし、誘導加熱コイルの運転を制御する制御部と、コンロバーナ及びグリルバーナの運転を制御する制御部とを設けてもよい。
【0049】
(4)上記実施の形態1では、最大出力が同一の誘導加熱コイルが設けられている。しかしながら、本発明では、各誘導加熱コイルの最大出力は異なってもよい。また、上記実施の形態1では、2つの誘導加熱コイルが併行して使用される場合、後から使用される誘導加熱コイルに火力抑制制御が実行される。しかしながら、本発明では、3つ以上の誘導加熱コイルが併行して使用される場合、コンロ部の消費電力値の総和であるコンロ部総和消費電力値がコンロ部使用可能電力値内に収まれば、後から使用する少なくとも1つの誘導加熱コイルに火力抑制制御を実行すればよい。また、上記実施の形態1では、2つの誘導加熱コイルが併行して使用される場合、後から使用される誘導加熱コイルに火力抑制制御が実行される。しかしながら、2つの誘導加熱コイルの双方に火力抑制制御が実行されてもよい(例えば、最大出力を第1誘導加熱コイル2.5kW、第2誘導加熱コイル1.7kWに抑制)。
【符号の説明】
【0050】
10 加熱調理器本体
11 天板
2 コンロ部
20,21 誘導加熱コイル
32 コンロバーナ
6 グリル部
62 グリルバーナ
80 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6