(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055024
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240411BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161595
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】小谷 匡士
(72)【発明者】
【氏名】成川 理優
(72)【発明者】
【氏名】石本 英史
(72)【発明者】
【氏名】伊東 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慧
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB00
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
2D015GA03
(57)【要約】
【課題】作業現場の状況に合わせて自動運転の動作をより容易かつ的確に変更することができ、生産性の低下を抑制しつつオペレータの疲労を軽減することができる作業機械を提供すること。
【解決手段】状態認識センサの検出結果に応じて現在の動作モードと次の動作モードとを予測し、現在の動作モードから次の動作モードに遷移する状態にある場合、作業機械の動作制御の種類を示す制御モードを、操作装置の操作に応じて作業装置を動作させる手動運転モードと、操作装置の操作に応じつつ作業装置の動作に介入して半自動的に作業装置を動作させるアシストモードと、操作装置の操作によらずに作業装置を動作させる自動運転モードと、の中から次の動作モードに対応する制御モードに切り替えて作業機械の動作制御を開始する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作装置の操作に応じて動作する作業装置、及び前記作業装置の動作を制御するコントローラを備えた作業機械において、
前記作業装置の状態を検出する状態認識センサを備え、
前記コントローラは、
前記状態認識センサの検出結果に応じて、前記作業機械における予め分類された動作の種類を示す複数の動作モードから、前記作業機械の現在の動作モードと次の動作モードとを予測し、
前記作業機械が前記現在の動作モードから前記次の動作モードに遷移する状態にある場合、前記作業機械の動作制御の種類を示す制御モードを、前記操作装置の操作に応じて前記作業装置を動作させる手動運転モードと、前記操作装置の操作に応じつつ前記作業装置の動作に介入して半自動的に前記作業装置を動作させるアシストモードと、前記操作装置の操作によらずに自動的に前記作業装置を動作させる自動運転モードと、の中から前記次の動作モードに対応する制御モードに切り替えて前記作業機械の動作制御を開始することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において、
走行可能に設けられた下部走行体と、
前記下部走行体の上部に旋回可能に設けられ、対象物の掘削および運搬を行う前記作業装置が設けられた上部旋回体とを備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械において、
前記複数の動作モードは、
掘削位置において前記作業装置で対象物を掘削する掘削動作を行う堀削動作モードと、
対象物を運搬する運搬車両に対する所定の放土位置に、掘削動作によって掘削された対象物を前記作業装置で移動させる積込動作モードと、
放土位置において前記作業装置から前記運搬車両に対象物を放土する放土動作モードと、
前記作業装置を放土位置から掘削位置に戻す戻り動作モード、
走行装置によって前記作業機械の位置を変更する走行動作モードと、
前記作業機械と前記運搬車両との連携動作を行う連携動作モードと
を含むことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1記載の作業機械において、
前記コントローラは、オペレータからの入力によって前記複数の動作モードのそれぞれに対応する前記制御モードを予め設定し、設定内容と予測された前記動作モードとに応じて制御モードを切り替えることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1記載の作業機械において、
オペレータに情報を提示する表示装置を備え、
前記コントローラは、
次の動作モードに移行するために必要な条件と、
次の動作モードおいてオペレータに要求される操作内容とを前記表示装置に表示させることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1記載の作業機械において、
前記コントローラは、制御モードが自動運転モードの際に前記操作装置が操作された場合には、制御モードを現在の動作モードが次の動作モードに切り替わるまで自動運転モードから手動運転モードに切り替えることを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1記載の作業機械において、
前記状態認識センサは、姿勢センサと、車両検知センサと、前記作業装置が保持する物質の重量を計測するペイロードセンサとを含むことを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項1記載の作業機械において、
前記コントローラは、過去の手動操作による作業を学習して、次の動作モードの予測に用いる情報を含む状態遷移設定を追加および上書きする機能を備えることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ショベルやブルドーザなどの作業機械においては、オペレータの特定の操作に対して制御システムが介入し、半自動的に作業機械の動作を行う、すなわち、一部の作業を自動化する部分自動運転機能が開発されている。また、作業機械による一連の作業を自動化して、オペレータの操作を不要とする自動運転機能も開発されている。このように、作業機械の一部または一連の作業を自動運転とすることでオペレータの操作量が減少するため、オペレータの負担を軽減することができる。一方で、作業機械で行う作業は多種に渡るため、部分自動運転や自動運転が可能な作業の種類を増やすことが期待される。
【0003】
自動運転機能を備えた作業機械に関する従来技術として、例えば、特許文献1には、自動運転機能を備えたショベルとそのティーチングシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、作業機械であるショベルに新しい作業をティーチング(教示)させるために、オペレータが教示したい動作でショベルを一度動かし、その時動作したショベルの姿勢情報等を時系列的にショベルに記憶させ、記憶した姿勢情報を携帯端末でティーチングポイントとして表示して、携帯端末での姿勢情報を編集可能とする。ショベルは携帯端末で編集された姿勢情報に従って自動運転する。すなわち、ティーチングポイントは携帯端末で変更可能であるため、作業変更のたびにオペレータがショベルを再運転させて教示する必要がなくなり、作業効率の向上が期待される。
【0006】
しかしながら、実際の作業現場においては、ショベルなどの作業機械はダンプトラックなどの他車両と遅延なく連携作業を行わなければならない。したがって、上記従来技術のように、時々刻々と変わる現場の状況や地形変化に対応して自動運転の動作を逐次変更する必要があると、ショベルと他車両との連携を遅延なく実施することは困難となる。例えば、ショベルとダンプトラックとの連携が遅延することによって、ダンプトラックの停車時間が増加し、作業現場全体の生産性が低下することが考えられる。また、ショベルに限らず、種々の作業を行う作業機械において、生産性の低下を招くことなくオペレータへの作業負担及び疲労を軽減することが期待されている。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、作業現場の状況に合わせて自動運転の動作をより容易かつ的確に変更することができ、生産性の低下を抑制しつつオペレータの疲労を軽減することができる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、操作装置の操作に応じて動作する作業装置、及び前記作業装置の動作を制御するコントローラを備えた作業機械において、前記作業装置の状態を検出する状態認識センサを備え、前記コントローラは、前記状態認識センサの検出結果に応じて、前記作業機械における予め分類された動作の種類を示す複数の動作モードから、前記作業機械の現在の動作モードと次の動作モードとを予測し、前記作業機械が現在の動作モードから前記次の動作モードに遷移する状態にある場合、前記作業機械の動作制御の種類を示す制御モードを、前記操作装置の操作に応じて前記作業装置を動作させる手動運転モードと、前記操作装置の操作に応じつつ前記作業装置の動作に介入して半自動的に前記作業装置を動作させるアシストモードと、前記操作装置の操作によらずに前記作業装置を動作させる自動運転モードと、の中から前記次の動作モードに対応する制御モードに切り替えて前記作業機械の動作制御を開始するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業現場の状況に合わせて自動運転の動作をより容易かつ的確に変更することができ、生産性の低下を抑制しつつオペレータの疲労を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】作業機械の一例として示す油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。
【
図2】第1の実施の形態における車体制御装置の処理内容を示す機能ブロック図である。
【
図3】事前設定装置における事前設定情報の設定画面の一例を示す図である。
【
図4】動作モードの遷移情報および状態遷移条件の関係を示す状態遷移情報の一例を示す図である。
【
図7】車体制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【
図8】第2の実施の形態における車体制御装置の処理内容を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の実施の形態においては、作業機械として油圧ショベルを例示して説明するが、ホイールローダーやクレーンのように作業装置を備える他の作業機械においても本発明を適用することが可能である。
【0012】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1~
図7を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例として示す油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。また、
図2は、車体制御装置の処理内容を示す機能ブロック図である。
【0014】
図1において、大型の油圧ショベル1(作業機械)は、下部走行体2と、下部走行体2の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3の前方に設けられた作業装置4とを備えている。
【0015】
下部走行体2は、油圧アクチュエータである左右一対の走行油圧モータ2a(
図1では一方のみを図示)により走行可能に構成されている。
【0016】
上部旋回体3は、油圧アクチュエータである旋回油圧モータ(図示せず)によって旋回駆動される。上部旋回体3の内部には、図示しないが、ディーゼルエンジンなどの原動機、原動機により駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプから吐出されて各油圧アクチュエータ(走行油圧モータ2a、旋回油圧モータ、ブームシリンダ14a、アームシリンダ14b、バケットシリンダ14c、など)に供給される圧油の流量および方向を制御するコントロールバルブなどが配置されている。また、上部旋回体3には、油圧ショベル1の動作を制御するコントローラとして、操作レバー7aやスイッチ7bなどの操作装置の操作に応じて各油圧アクチュエータの動作を制御するための操作信号を生成する車体制御装置6(コントローラ)と、車体制御装置6からの操作信号に応じてコントロールバルブなどを制御する制御信号を生成する油圧回路制御装置5とが設けられている。
【0017】
作業装置4は、上部旋回体3の前部に上下方向に回動可能に連結されたブーム4aと、ブーム4aの先端部に上下方向に回動可能に連結されたアーム4bと、アーム4bの先端部に上下方向に回動可能に連結されたバケット4cと、上部旋回体3に対してブーム4aを回動駆動するブームシリンダ14aと、ブーム4aに対してアーム4bを回動駆動するアームシリンダ14bと、アーム4bに対してバケットを回動駆動するバケットシリンダ14cとから概略構成されている。
【0018】
状態認識センサ9は、油圧ショベル1の各部の姿勢や周辺状況を認識するためのセンサである。状態認識センサ9としては、図示しないが、例えば、ブーム4aの回動角度を検出するブーム角度センサ、アーム4bの回動角度を検出するアーム角度センサ、バケット4cの回動角度を検出するバケット角度センサ、水平面等の基準面に対する上部旋回体3の傾斜角を検出する傾斜角センサ、下部走行体2に対する上部旋回体3の相対的な角度である旋回角度を検出する旋回角度センサ、外界認識センサとしての3D-LiDAR(Light Detection And Ranging)などが設けられている。
【0019】
上部旋回体3前方の作業装置の横には、オペレータが搭乗して油圧ショベル1の操作を行う運転室3aが設けられている。運転室3a内には、各油圧アクチュエータを操作するための操作装置として操作レバー7aが設置されている。操作レバー7aは、例えば、左右の走行油圧モータをそれぞれ操作するための左右の走行レバーや、作業装置4の各油圧アクチュエータ14a,14b,14cや旋回油圧モータを操作するための作業操作レバーなどである。また、運転室3a内には、油圧ショベル1に設けられたホーンを鳴動させるスイッチ7b(ホーンスイッチ)が配置されている。
【0020】
図2において、車体制御装置6は、手動操作部6a、自動制御指令生成部6b(アシスト制御部6c、自動運転部6d)、制御モード選択部6e、及び、動作モード予測部10を備えている。
【0021】
手動操作部6aは、操作レバー7aにおけるオペレータのレバー操作量および操作方向の信号(操作信号)を受信し、油圧ショベル1を受信した操作信号に応じて駆動させるための制御信号を生成する。
【0022】
アシスト制御部6cは、操作レバー7aからの操作信号、スイッチ5b(ホーンスイッチ)の操作信号、及び、状態認識センサ9からの情報に基づいて、オペレータによる油圧ショベル1の操作のアシスト制御を行う制御信号を生成する。アシスト制御としては、例えば、土砂等を運搬する運搬車両であるダンプトラックへの積込動作に必要な上部旋回体3の旋回動作と作業装置4の上げ動作の2つの動作を行う操作のうち、少なくとも一方の操作の制御信号の生成を自動的に行い、他の操作については操作信号に応じた制御信号を生成するものがある。すなわち、例えば、積込動作のアシスト制御において、作業装置4の上げ動作を自動的に行う場合には、オペレータは旋回動作に関する操作レバー7aの操作を行うだけで、ダンプトラックへの積込動作に必要な程度に作業装置4の上げ動作が行われ、積込動作を半自動的に行うことができる。
【0023】
自動運転部6dは、スイッチ5bの操作信号、及び、状態認識センサ9からの情報に基づいて、オペレータの操作なしで油圧ショベル1を駆動する制御信号を生成する。すなわち、自動運転部6dでは、状態認識センサ9によって認識した油圧ショベル1の状態とその周辺状況と、スイッチ5bの操作信号とに応じて自動運転の制御信号を生成する。
【0024】
制御モード選択部6eは、動作モード予測部10の予測部10e(後述)からの制御モードの情報に基づいて、油圧回路制御装置5に出力する制御信号を、手動操作部6a、アシスト制御部6c、自動運転部6dのいずれか1つで生成されたものを選択し、油圧回路制御装置5に出力する。例えば、制御モード選択部6eは、予測部10eからの制御モードの情報が「手動運転モード」を示すものである場合には、手動操作部6aで生成された制御信号を選択して油圧回路制御装置5に出力する。また、制御モード選択部6eは、予測部10eからの制御モードの情報が「アシストモード」を示すものである場合には、アシスト制御部6cで生成された制御信号を選択して油圧回路制御装置5に出力する。また、制御モード選択部6eは、予測部10eからの制御モードの情報が「自動運転モード」を示すものである場合には、自動運転部6dで生成された制御信号を選択して油圧回路制御装置5に出力する。
【0025】
油圧回路制御装置5は、車体制御装置6からの操作信号に応じてコントロールバルブなどを制御する制御信号を生成する。例えば、制御モード選択部6eにおいて、手動操作部6aで生成された操作信号が選択された場合には、各油圧アクチュエータがオペレータによる操作レバー7aの操作(操作量および操作方向)に応じた動作となるように、制御信号を生成する。また、制御モード選択部6eにおいて、アシスト制御部6cで生成された操作信号が選択された場合には、各油圧アクチュエータの少なくとも一部がオペレータによる操作レバー7aの操作(操作量および操作方向)に応じて動作し、他の油圧アクチュエータが自動で動作するように(すなわち、アシスト制御を行うように)、制御信号を生成する。また、制御モード選択部6eにおいて、自動運転部6dで生成された操作信号が選択された場合には、各油圧アクチュエータがオペレータによる操作なしで動作するように(すなわち、自動運転を行うように)、制御信号を生成する。
【0026】
動作モード予測部10は、動作モード保管部10a、動作モード遷移生成部10b、遷移条件生成部10c、現動作モード推定部10d、及び、予測部10eを備えている。
【0027】
動作モード保管部10aは、事前設定装置8で設定された事前設定情報を受信して保管する。
【0028】
図3は、事前設定装置における事前設定情報の設定画面の一例を示す図である。
【0029】
事前設定装置8は、例えば、タッチパネル式の表示装置であり、表示された設定画面11を画面上で操作することによって事前設定情報を設定することができる。
【0030】
図3において、設定画面11には、縦方向に動作モードが、横方向に制御モードがそれぞれ示されている。
【0031】
動作モードとは、油圧ショベル1(作業機械)における作業の種類を示すものであり、掘削動作モード(掘削)、積込動作モード(積込)、放土動作モード(放土)、戻り動作モード(戻り)、走行動作モード(走行)、連携動作モードなどを定義する。
【0032】
堀削動作モードは、掘削位置において作業装置4で対象物である土砂を掘削する掘削動作を行う動作モードである。また、積込動作モードは、対象物である土砂を運搬するダンプトラック(運搬車両)に対する所定の放土位置に、掘削動作によって掘削された土砂を作業装置4で移動させる動作モードである。すなわち、掘削動作および積込動作により、油圧ショベル1で土を掘り、ダンプトラックの上まで移動する。
【0033】
放土動作モードは、放土位置において作業装置4からダンプトラック(運搬車両)に土砂を放土する動作モードである。また、戻り動作モードは、作業装置4を放土位置から掘削位置に戻す動作モードである。すなわち、放土動作および戻り動作により、ダンプトラックのベッセル上に土を捨て、再び掘削位置まで戻る。
【0034】
走行動作モードは、下部走行体2の走行油圧モータ2a(走行装置)の駆動によって油圧ショベル1(作業機械)の位置を移動させて変更する作業モードである。
【0035】
連携動作モードは、油圧ショベル1(作業機械)とダンプトラック(運搬車両)との連携動作を行う動作モードである。油圧ショベル1とダンプトラックとの連携は、例えば、スイッチ5bによってホーンを鳴らし、ダンプトラックのオペレータに合図をする動作である。
【0036】
制御モードとは、油圧ショベル1(作業機械)の動作制御の種類を示すものであり、手動運転モード、アシストモード、自動運転モードなどを定義する。
【0037】
手動運転モードは、操作レバー7a(操作装置)の操作(操作量、操作方向)に応じて作業装置4等を動作させる制御モードである。また、アシストモードは、操作レバー7a(操作装置)の操作(操作量、操作方向)に応じた作業装置4の動作に介入して半自動的に作業装置4等を動作させる制御モードである。また、自動運転モードは、操作レバー7a(操作装置)の操作によらずに作業装置4等を動作させる制御モードである。
【0038】
設定画面11では、各動作モードについて、3つの制御モードのうちのいずれか1つを選択的に設定することができる。
図3の設定画面11では、掘削動作モードは手動運転モードに、積込動作モード、放土動作モード、走行動作モード、及び、連携動作モードは自動運転モードに、戻り動作モードはアシストモードにそれぞれ設定されている場合を例示している。
【0039】
また、事前設定装置8では、自動制御指令生成部6bでの制御実行のトリガとなる操作情報も設定される。トリガとなる操作情報としては、例えば、自動運転モード(制御モード)において、スイッチ5bが操作(押下)された情報などであり、このような操作情報に応じて動作を開始する。なお、事前設定装置8による設定画面11での設定は、油圧ショベル1が稼働している間でも可能としてもよい。
【0040】
動作モード遷移生成部10bは、動作モード保管部10aに保管されている設定情報を読み込み、設定情報に基づいて動作モードの遷移状態を示す遷移情報を生成する。また、遷移条件生成部10cは、動作モード遷移生成部10bで生成された遷移情報に基づいて、遷移状態間での状態遷移条件を設定する。ここで、各動作モードにおける遷移情報および状態遷移条件の関係を示す情報を状態遷移情報と称する。
【0041】
図4は、動作モードの遷移情報および状態遷移条件の関係を示す状態遷移情報の一例を示す図である。
【0042】
図4においては、遷移状態として、油圧ショベル1の起動で開始される開始状態(Start)と、各動作モードに対応する手動操作状態(S0)、放土状態(S1)、戻り状態(S2)、掘削状態(S3)、積込状態(S4)、走行状態(S5)、及び、連携状態(S6)とが動作モード遷移生成部10bにより生成されている。また、
図4においては、遷移状態(Start),(S0)~(S6)間の状態遷移条件(C0)~(C9)が遷移条件生成部10cにより生成されている。このように、
ここで、
図4に例示した状態遷移情報(遷移情報と状態遷移条件)について詳述する。
【0043】
【0044】
図5においては、放土状態(S1)、戻り状態(S2)、掘削状態(S3)、積込状態(S4)の順に状態遷移し、再び放土状態(S1)に戻ってくる1サイクルの作業例における状態遷移条件(C2)~(C5)を例示している。
図5では、下行に遷移条件とする油圧ショベル1とダンプトラック15の姿勢を側面および上面から見た模式図と条件とを記載している。
【0045】
放土状態(S1)から戻り状態(S2)へ遷移するための状態遷移条件(C2)は、例えば、油圧ショベル1のバケット4cの位置がダンプトラック15の外側へ移動し、かつ、バケット4c内の土砂重量が0(ゼロ)トン付近である場合(すなわち、バケット4cが空状態である場合)としている。以降、状態認識センサ9としてバケット4c内の土砂重量を計測するためのセンサを備える場合を考える。
【0046】
戻り状態(S2)から掘削状態(S3)へ遷移するための状態遷移条件(C3)は、例えば、バケット4cの爪先位置が一点鎖線が囲う範囲内へ移動した場合としている。バケット4cの位置姿勢は、例えば、次の遷移状態である掘削状態(S3)で効率的な掘削が可能なバケット4cの掘削開始位置となる姿勢とするよう定めても良い。
【0047】
掘削状態(S3)から積込状態(S4)へ遷移するための状態遷移条件(C4)は、例えば、バケット4cの位置姿勢が一点鎖線が囲う範囲内へ移動し、かつ、状態認識センサ9によりダンプトラック15の位置を適切に検知済みであり、かつ、バケット4c内の土砂重量が予め定めたしきい値以上である場合(すなわち、バケット4cに土砂が積載されている場合)とした。この条件は、状態認識センサ9によって積込目標であるダンプトラック15の位置を適切に検出した状態で、バケット4cをダンプトラック15の上に安全かつ効率的に移動させる事のできる位置姿勢であり、かつ、バケット4c内に十分な土砂が入っており、効率的な積込が開始できる条件である。
【0048】
積込状態(S4)から放土状態(S1)へ遷移するための状態遷移条件(C5)は、例えば、バケット4cの位置がダンプトラック15へ土砂を積込める位置へ移動した場合としている。
【0049】
また、図示しないが、遷移状態(Start),(S0)~(S6)間の状態遷移条件(C0)~(C9)のうち、状態遷移条件(C0),(C1),(C6)~(C9)については、以下のように定義する。
【0050】
開始状態(Start)から手動操作状態(S0)へ遷移するための状態遷移条件(C0)は、例えば、油圧ショベル1のキーON操作がなされ、エンジンが始動した場合とする。
【0051】
手動操作状態(S0)から放土状態(S1)へ遷移するための状態遷移条件(C1)は、例えば、手動操作により状態遷移条件(C5)と同じ条件を満たした場合とする。
【0052】
戻り状態(S2)から走行状態(S5)へ遷移するための状態遷移条件(C6)は、例えば、操作レバー5aで走行の操作をした場合とする。
【0053】
走行状態(S5)から掘削状態(S3)へ遷移するための状態遷移条件(C7)は、例えば、操作レバー5aでの走行操作を停止し、遷移条件(C3)と同じ条件を満たした場合とする。
【0054】
放土状態(S1)から運搬車両との連携状態(S6)へ遷移するための状態遷移条件(C8)は、例えば、ダンプトラック15の積載量が予め定めたしきい値以上になった場合(例えば、満積載近い積載量となった場合など)とする。
【0055】
運搬車両との連携状態(S6)から戻り状態(S2)へ遷移するための状態遷移条件(C9)は、例えば、ダンプトラック15が油圧ショベル1から離れて行った場合(例えば、油圧ショベル1のダンプ検知範囲から外れた場合)とする。
【0056】
【0057】
図2において、動作モード予測部10の現動作モード推定部10dは、状態認識センサ9からの姿勢情報等に基づいて、油圧ショベル1が現在行っている動作から対応する動作モードを推定し、推定した動作モードを出力する。
【0058】
予測部10eは、推定された現在の動作モードと、状態遷移情報(遷移情報と状態遷移条件)とに基づいて、次に行われる動作モードを予測する。また、予測部10eは、事前設定装置8によって現在の動作モードに設定されている制御モードの情報を制御モード選択部6eに出力するとともに、予測した動作モードに対応する制御モードの情報を表示装置13に出力する。
【0059】
表示装置13は、運転室3aなどに設置されたモニタなどであり、オペレータに映像などの情報を提供するための装置である。表示装置13は、予測部10eで予測された現在の動作モードに対応する制御モードの情報を受信する。
【0060】
【0061】
図6においては、表示装置13は、油圧ショベル1の現在の状態と制御モード13dとを示す機械状態領域13a、オペレータへ予測した次の動作モードと動作モードに設定された制御モードで必要となるオペレータの操作を表示するトリガ操作表示領域13b、及び、未達成の状態遷移条件を示す遷移条件領域13cを表示している場合を例示している。
図6では、
図5に示した積込状態(S4)への状態遷移条件(C4)と、積込状態(S4)に設定された制御モードがアシスト制御である場合の一例を示している。
【0062】
動作モードの積込状態S4の制御モードがアシスト制御に設定された場合、例えば、操作レバー7aの左旋回操作をアシスト制御の開始のトリガ操作として、油圧ショベル1の上部旋回体3の旋回動作と作業装置4の上昇が半自動的に制御される。なお、トリガ操作表示領域13bでは、例えば、操作する操作レバー7aの操作方向を絵で表示してもよい。
【0063】
以上のように構成した本実施の形態における動作を説明する。
【0064】
図7は、車体制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0065】
図7において、車体制御装置6が起動すると、まず、事前設定装置8で設定された設定情報を動作モード保管部10aに保存する(ステップS100)。
【0066】
続いて、動作モード遷移生成部10bは、各動作モードの遷移状態に関する情報(遷移情報)を生成する(ステップS110)。
【0067】
続いて、遷移条件生成部10cは、生成された遷移情報に基づいて、状態遷移条件を設定する(ステップS120)。
【0068】
続いて、現動作モード推定部10dは、状態認識センサ9からの情報に基づいて、油圧ショベル1の現在の動作モードを推定する(ステップS130)。
図4に示した状態遷移では、車体制御装置6が起動すると状態遷移条件(C0)が真となり、開始状態(Start)から自動的に手動操作状態(S0)へと遷移する。
【0069】
続いて、状態認識センサ9による状態遷移条件は真か否かを判定する(ステップS140)。判定結果がNOの場合、すなわち、状態遷移条件を満たしていない場合には、現在の動作モードを保持し(ステップS141)、ステップS140の判定処理に戻る。例えば、動作モードが放土状態(S1)である場合に、状態遷移条件(C2),(C8)を満たさない場合には、現在の動作モードを放土状態(S1)のまま保持し、ステップS140の判定処理に戻る。
【0070】
また、ステップS140での判定結果がYESの場合、すなわち、状態遷移条件を満たした場合には、状態遷移条件を満たす次の動作モードに遷移し(ステップS150)、現動作モード推定部10dは、遷移先の動作モードを現在の動作モードに更新する(ステップS160)。例えば、手動操作状態(S0)では、オペレータが操作レバー7aやスイッチ7bを操作することで状態遷移条件(C1)を満たす。また、例えば、
図2に示した設定情報によれば、動作モードの放土状態(S1)の制御モードは自動運転モードであるため、油圧ショベル1は自動で放土動作を行い、状態遷移条件(C2)を満たす姿勢に制御され、戻り状態(S2)に状態遷移する。
【0071】
続いて、現在の制御モードが自動運転であり、かつ、操作レバー7aが予め定めた一定時間以上操作されたか否かを判定する(ステップS170)。ステップS170での判定結果がYESの場合には、現在の動作モードに設定された制御モードを手動運転モード(
図3における「手動(or遠隔)」に相当)に上書きし、制御モード選択部6eに出力し(ステップS171)、ステップS140の処理に戻る。例えば、遷移状態が戻り状態(S2)で制御モードが自動運転モードである場合に、オペレータが操作レバー7aを一定時間以上操作した場合には、現在の動作モードに設定された制御モードを手動運転モード(
図3における「手動(or遠隔)」に相当)に切り替えて、オペレータの操作レバー7aによる油圧ショベル1の制御を優先する。このとき、保存されている設定情報の動作モードである戻り状態(S2)の制御モードは自動運転モードから手動運転モードに上書きされる。
【0072】
また、ステップS170での判定結果がNOの場合、すなわち、自動運転モードにおいてオペレータによる操作介入が無いと判定された場合には、予測部10eは、次の動作モードに設定された制御モードを表示装置13に出力し(ステップS180)、現在の動作モードに設定された制御モードを制御モード選択部6eに出力して(ステップS190)、ステップS130の処理に戻る。例えば、動作モードの遷移状態が戻り状態(S2)で制御モードが自動運転モードである場合に、オペレータによる操作介入がない場合には、予測部10eは戻り状態(S2)の次の動作モードである掘削状態(S3)に設定された制御モードである手動運転モードでの操作情報と掘削状態(S3)への状態遷移条件(C3)の情報を表示装置13に送信して表示し、オペレータに報知する。また、現在の動作モードの遷移状態である戻り状態(S2)に設定された制御モードである自動運転モードの情報を制御モード選択部6eへ出力する。制御モード選択部6eは、受信した自動運転モードの情報に基づいて、自動運転部6dが算出した油圧ショベル1の制御信号を油圧回路制御装置5へと出力する。これにより、油圧ショベル1は、現在の動作モードである戻り状態(S2)への動作を自動で実行する。
【0073】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0074】
油圧ショベル(作業機械)の主要な動作である掘削積込に関する生産性は、オペレータの段取り(掘削や放土の位置、作業の順番、掘削量の調整などの判断)が影響する。このようなオペレータの高度な判断力を必要とする作業を自動化するには、あらゆる作業環境に対応した適切な判断処理機能が必要となる。すなわち、自動化を行ったとしても、判断処理機能が対応できない作業環境が存在する場合には、油圧ショベルによる生産性の低下が懸念される。
【0075】
一方、オペレータは長時間連続的に作業する場合があり、時間経過に伴う疲労の蓄積によって生産性が低下することがある。また、油圧ショベルの遠隔操作などにおいて、オペレータはモニタなどに表示された映像を見ながら作業を行うが、モニタに表示される映像は遠近感が乏しくなる傾向にあるため、油圧ショベルによるダンプトラックへの土砂等の積込動作のように機械同士の接触リスクがある作業を行う場合には、オペレータは映像を注視しなければならず、油圧ショベルの運転室に搭乗して操作を行うよりも疲労が増加する。
【0076】
本実施の形態においては、状態認識センサの検出結果に応じて、油圧ショベル1(作業機械)の現在の動作モードと次の動作モードとを予測し、予測した現在および次の動作モードに応じて、制御モードを選択的に切り替えるように構成した。選択的に切り替える制御モードには、操作レバー7a(操作装置)の操作に応じて作業装置4を動作させる手動運転モードと、操作レバー7a(操作装置)の操作に応じた作業装置4の動作に介入して半自動的に作業装置4を動作させるアシストモードと、操作レバー7a(操作装置)の操作によらずに作業装置4を動作させる自動運転モードとを設定した。すなわち、本実施の形態によれば、作業現場の状況に合わせて自動運転の動作をより容易かつ的確に変更することができ、生産性の低下を抑制しつつオペレータの疲労を軽減することができるので、長時間生産性を高い水準で安定させる事ができる。
【0077】
例えば、生産性への影響度が大きい作業(例えば、掘削動作や放土動作)はオペレータが行い、それ以外の生産性への影響度が小さい作業(例えば、積込動作や戻り動作)は自動・半自動化できる。また、遠隔操作において操作の疲労度合いの大きい積込動作などの作業も自動・半自動化による疲労低減効果が見込まれる。これにより、掘削動作や放土動作はオペレータの高度な判断力を活用しつつ、他の作業を一部自動化できるため、高い水準での生産性維持とオペレータの疲労低減とを両立することができる。
【0078】
また、掘削積込以外の作業についても、オペレータの段取りが生産性に寄与する作業に対しては手動操作(手動運転モード)を設定し、それ以外の作業を自動・半自動で行うことが可能である。
【0079】
また、作業中に地形が大きく変わるような場合、すなわち、自動運転による掘削動作では作業効率に影響が出るような場合には、掘削状態の制御モードを自動運転モードから手動運転モードに切り換えることができる。すなわち、生産性を維持するのに適切な制御モードに適宜変更できる。
【0080】
また、オペレータの操作の熟練度に応じて、制御モードを生産性を維持するのに適切な制御モードに変えることができ、作業現場全体の生産性を底上げすることができる。例えば、熟練度が高いオペレータについては、手動操作(手動運転モード)の割合を多く設定することで、高い生産性が得られる。一方で、熟練度が比較的低いオペレータについては、自動・半自動(アシストモード、自動運転モード)の割合を多く設定することで、生産性を向上させるなどができる。
【0081】
また、例えば、オペレータの高度な判断力を必要とするため手動操作を行っていた動作モードについて、判断を代替できる自動化機能が得られた場合に、車体制御装置6のソフトウェアを更新し、当該動作モードに対する制御モードの設定を手動運転モードから自動運転モードに変更すれば、自動化機能を容易に向上することができる。すなわち、機械の開発コストを削減することができる。
【0082】
また、表示装置13に制御モードの情報を表示するように構成したので、オペレータが掘削積込の一連の動作モードの遷移に応じてシームレスに操作を行うことができる。例えば、各動作モードとして自動運転モードと手動運転モードとが混在している掘削積込動作においては、状態遷移条件を満たした直後に次の動作モードに応じた操作を必要としている。本実施の形態においては、表示装置13に状態遷移条件や次の動作モードにおける操作の情報を表示してオペレータに報知するので、オペレータが動作モードに応じたトリガを把握していなくてもトリガを確認できるため、次の動作の開始の遅れを抑制することができ、生産性の低下を抑制することができる。
【0083】
また、オペレータによる操作が一定時間以上行われた場合、すなわち、オペレータが意図する操作が明確である場合には、油圧ショベルが自動化作業中であってもオペレータの意図と大きく異なる動作を行わないように、速やかに制御モードを手動運転モードに切り替えるので、生産性の低下を抑制することができる。
【0084】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図8を参照しつつ説明する。本実施の形態において、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0085】
本実施の形態は、操作レバー7aと状態認識センサ9からの情報に基づいて、動作モード遷移生成部10b及び遷移条件生成部10cで生成される状態遷移情報(遷移情報および状態遷移条件)を更新するものである。
【0086】
図8は、本実施の形態における車体制御装置の処理内容を示す機能ブロック図である。
【0087】
図8において、車体制御装置6Aは、手動操作部6a、自動制御指令生成部6b(アシスト制御部6c、自動運転部6d)、制御モード選択部6e、及び、動作モード予測部10Aを備えている。
【0088】
動作モード予測部10は、動作モード保管部10a、動作モード遷移生成部10b、遷移条件生成部10c、現動作モード推定部10d、予測部10e、及び、動作モード遷移更新部10fを備えている。
【0089】
動作モード遷移更新部10fは、操作レバー7aと状態認識センサ9からの信号を受け取り、動作モード遷移生成部10bが生成した遷移情報を更新する。
【0090】
動作モード遷移生成部10bは、動作モード保管部10aに保管されている設定情報を読み込み、設定情報に基づいて動作モードの遷移状態を示す遷移情報を生成する。また、動作モード遷移更新部10fで新たに生成された動作モードの遷移情報に応じて、遷移情報を更新する。
【0091】
遷移条件生成部10cは、動作モード遷移生成部10bで生成された遷移情報に基づいて、遷移状態間での状態遷移条件を設定する。
【0092】
このように、本実施の形態においては、作業環境の変化に応じて、状態遷移情報(遷移情報および状態遷移条件)が更新される。
【0093】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0094】
以上のように構成した本実施の形態における作用効果を説明する。
【0095】
動作モード遷移更新部10fは、オペレータの手動操作時の操作レバー5aの操作履歴情報とその際の状態認識センサ9から油圧ショベル1の作業情報を収集する。動作モード遷移更新部10fは、収集した作業情報の時系列データを分類し、新たな動作モードを生成する。分類方法としては、例えば、Support Vector Machineなどの統計的なクラスタリングアルゴリズムを利用することができる。また、遷移情報の更新時に、状態認識センサ9の情報に基づいて、新たに生成した動作モードの遷移状態の情報(遷移情報)に対応した状態遷移条件を設定する。
【0096】
事前設定装置8で設定した動作モードや動作モード遷移生成部10bが生成した状態遷移情報の初期情報は、車体制御装置6に予め設定されたものを使用する。しかしながら、油圧ショベル1が作業する環境は多種多様であるため、状態遷移情報が初期情報のままで作業を行う場合には、制御モードが自動運転モードとなった場合に、作業環境に十分対応ができなくなることが考えられる。
【0097】
そこで、本実施の形態においては、オペレータの手動操作時の操作レバー7aの操作履歴情報とその際の状態認識センサ9の検出結果に基づいて油圧ショベル1の作業情報を分析し、動作モード遷移更新部10fが作業環境に適した動作モードを追加・修正して状態遷移情報を更新するように構成した。すなわち、作業環境に適した動作モードに対し動作モード遷移生成部10bは適切な遷移情報を生成し、遷移条件生成部10cで生成される状態遷移条件を含む状態遷移情報を更新することができる。その結果、新たな作業環境においても十分適合した自動化・半自動動作を得ることができ、生産性とオペレータの疲労低減とを両立することができる。
【0098】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。
【0099】
例えば、上記の実施の形態においては、作業機械として油圧ショベルを例示して説明したが、これに限られず、例えば、電気モータなどにより駆動される電気駆動方式の作業機械においても本発明を適用することができる。
【0100】
また、上記の実施の形態においては、表示装置13への表示によってオペレータに情報を報知する場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、音声などのように表示以外の方法において情報をオペレータに報知する場合においても本発明を適用することができる。
【0101】
また、上記の実施の形態においては、運転室3aに、オペレータによる油圧ショベル1(作業機械)の操作に係る構成である操作レバー7a、スイッチ7b、事前設定装置8、表示装置13などを配置し、車体制御装置6,6Aに、自動運転・半自動運転の制御に係る機能部である自動制御指令生成部6b(アシスト制御部6c、自動運転部6d)、制御モード選択部6e、動作モード予測部10,10Aなどを設けた場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、油圧ショベル1(作業機械)の操作に係る構成や自動運転・半自動運転の制御に係る機能部を油圧ショベル1の外部に設けられた遠隔操作室などに配置し、無線装置によって油圧ショベル1と通信可能に構成してもよい。
【0102】
また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…油圧ショベル、2…下部走行体、2a…走行油圧モータ、3…上部旋回体、3a…運転室、4…作業装置、4a…ブーム、4b…アーム、4c…バケット、5…油圧回路制御装置、5a…操作レバー、5b…スイッチ、6,6A…車体制御装置、6a…手動操作部、6b…自動制御指令生成部、6c…アシスト制御部、6d…自動運転部、6e…制御モード選択部、7a…操作レバー、7b…スイッチ、8…事前設定装置、9…状態認識センサ、10,10A…動作モード予測部、10a…動作モード保管部、10b…動作モード遷移生成部、10c…遷移条件生成部、10d…現動作モード推定部、10e…予測部、10f…動作モード遷移更新部、11…設定画面、13…表示装置、13a…機械状態領域、13b…トリガ操作表示領域、13c…遷移条件領域、13d…制御モード、14a…ブームシリンダ、14b…アームシリンダ、14c…バケットシリンダ、15…ダンプトラック、C0~C9…状態遷移条件、S0…手動操作状態、S1…放土状態、S2…戻り状態、S3…掘削状態、S4…積込状態、S5…走行状態、S6…連携状態、Start…開始状態