(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055028
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/62 20060101AFI20240411BHJP
A47C 3/04 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A47C7/62 Z
A47C3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161600
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】原 永祐
(72)【発明者】
【氏名】河合 春樹
【テーマコード(参考)】
3B084
3B091
【Fターム(参考)】
3B084JA08
3B084JA10
3B084JC00
3B091BA02
(57)【要約】
【課題】上下方向に積み重ね(スタッキング)可能であり、容器を保持できる椅子を提供する。
【解決手段】同形の椅子100Bを上下方向Vに積み重ね可能な椅子100(100A)であって、座面10sを有する座部10と、左右方向Hにおける前記座部10の両外側に配置され、前記座部10を支持する脚部20と、前記座部10の前記左右方向Hにおける一方側に配置された容器保持部30と、前記容器保持部30を前記座部10に対して移動可能に支持する支持部40と、を備え、前記容器保持部30の少なくとも一部は、第一位置と、前記第一位置に対して前記座部10から前記一方側へ移動した第二位置P2とを移動可能であり、前記第二位置P2に位置する前記容器保持部30の少なくとも前記一部は、前記同形の椅子100Bが上側UPから積み重なるときに前記同形の椅子100Bが通過する軌跡領域の範囲外に配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同形の椅子を上下方向に積み重ね可能な椅子であって、
座面を有する座部と、
左右方向における前記座部の両外側に配置され、前記座部を支持する脚部と、
前記座部の前記左右方向における一方側に配置された容器保持部と、
前記容器保持部を前記座部に対して移動可能に支持する支持部と、
を備え、
前記容器保持部の少なくとも一部は、第一位置と、前記第一位置に対して前記座部から前記一方側へ移動した第二位置とを移動可能であり、
前記第二位置に位置する前記容器保持部の少なくとも前記一部は、前記同形の椅子が上側から積み重なるときに前記同形の椅子が通過する軌跡領域の範囲外に配置されている、
椅子。
【請求項2】
前記容器保持部は、
保持開孔部を有する第一保持部と、
前記容器保持部が前記第一位置に位置するときに、前記第一保持部の下側に位置する第二保持部と、
を備える、
請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記第二保持部は、前記第一保持部に接続されており、前記第一保持部と一体となって、前記第一位置と前記第二位置とを移動可能である、
請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記支持部は、前記容器保持部を前後方向に延びる回転軸を中心に回動可能に支持し、
前記容器保持部は、前記回転軸を回転中心として前記第一位置と前記第二位置とを回動可能である、
請求項3に記載の椅子。
【請求項5】
前記第二位置に位置する前記第一保持部は、前記同形の椅子における前記第二位置に位置する前記第二保持部と対向して積み重なる、
請求項4に記載の椅子。
【請求項6】
前記第二保持部は、前記脚部に設けられている、
請求項2に記載の椅子。
【請求項7】
前記支持部は、前記第一保持部を前後方向に延びる回転軸を中心に回動可能に支持し、
前記第一保持部は、前記回転軸を回転中心として前記第一位置と前記第二位置とを回動可能である、
請求項6に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、会議室等で使用される椅子として、同形の椅子同士を上下方向に積み重ね(スタッキング)可能な椅子が知られている。複数の同形の椅子において、座面同士が近い位置になるように上下方向に積み重ねることで、1つの椅子の収納に必要な収納空間とほぼ同等の収納空間に複数の椅子を収納できる。そのため、会議室内で椅子を使用しない際、最小限の収納空間に複数の椅子を収納できる。また、会議室内で会議を行う際、会議の参加者がペットボトル等に入った飲料を会議室内に持ち込むことが一般化してきているため、ペットボトル等の容器を保持できる構造(カップホルダ)を備えた椅子が求められる。
【0003】
特許文献1に記載される椅子における肘掛け取付け構造は、背シェル(背凭れ)に取り付けられた肘掛けを備える積み重ね可能な椅子における肘掛け取付け構造であり、背シェルに接続された取付軸が有する突起と、肘掛けが有する凹部を嵌合させることで、肘掛けは背シェルに対して簡単に位置決めされ、肘掛けの組み立て作業を短時間に行える。また、同形の椅子を積み重ねる際、肘掛けに設けた突部をスペーサとすることで、クッション性のある座が積み重ねた他の椅子の硬質部分と当接して傷つくのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される椅子における肘掛け取付け構造が適用された椅子は、同形の椅子を積み重ね可能であり、かつ、肘掛けを備えるが、ペットボトル等の容器を保持する保持構造は備えていない。そのため、特許文献1に記載の椅子を備えた会議室内にペットボトル等の飲料を持ち込んだ場合、使用者は、机の上又は床等にペットボトルを置く必要があり、机の上の空間が狭くなり他の物を置きづらくなる虞や、ペットボトルを手に取り飲料を飲むために床まで手を伸ばす手間がかかる虞がある。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、上下方向に積み重ね(スタッキング)可能であり、容器を保持できる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の椅子は、同形の椅子を上下方向に積み重ね可能な椅子であって、座面を有する座部と、左右方向における前記座部の両外側に配置され、前記座部を支持する脚部と、前記座部の前記左右方向における一方側に配置された容器保持部と、前記容器保持部を前記座部に対して移動可能に支持する支持部と、を備え、前記容器保持部の少なくとも一部は、第一位置と、前記第一位置に対して前記座部から前記一方側へ移動した第二位置とを移動可能であり、前記第二位置に位置する前記容器保持部の少なくとも前記一部は、前記同形の椅子が上側から積み重なるときに前記同形の椅子が通過する軌跡領域の範囲外に配置されている。
【0008】
本態様では、椅子が容器保持部を備えることで、使用者の手の近くにペットボトル等の容器を載置でき、使用者は、椅子に着座したままで容易に容器を手に取って飲料を飲むことができる。また、容器保持部は、使用者が容器を載置する第一位置から、第一位置に対して座部から離れる方向へ移動した第二位置まで移動可能であり、同形の椅子を上側から積み重ねる場合、第二位置に位置する容器保持部は、同形の椅子が上側から積み重なるとき、同形の椅子が通過する領域(軌跡領域)の範囲外に配置されているため、容器保持部が同形の椅子と突き当たらずに積み重ねることができる。
【0009】
上記椅子では、前記容器保持部は、保持開孔部を有する第一保持部と、前記容器保持部が前記第一位置に位置するときに、前記第一保持部の下側に位置する第二保持部と、を備えていてもよい。
【0010】
本態様では、容器保持部が保持開孔部を有する第一保持部と、第一保持部の下側に配置された第二保持部を備えることで、ペットボトル等の容器を保持開孔部に差し込んで保持し、さらに、第二保持部で下側から容器を支持でき、安定して容器を保持できる。
【0011】
上記椅子では、前記第二保持部は、前記第一保持部に接続されており、前記第一保持部と一体となって、前記第一位置と前記第二位置とを移動可能であってもよい。
【0012】
本態様では、第二保持部が第一保持部と一体となって第二位置へ移動可能であり、第一保持部および第二保持部を第二位置に移動することで、第一保持部および第二保持部が上側から積み重なる同形の椅子の軌跡領域の範囲外に配置される。その結果、第一保持部および第二保持部が同形の椅子と突き当たらずに、同形の椅子を積み重ねることができる。
【0013】
上記椅子では、前記支持部は、前記容器保持部を前後方向に延びる回転軸を中心に回動可能に支持し、前記容器保持部は、前記回転軸を回転中心として前記第一位置と前記第二位置とを回動可能であってもよい。
【0014】
本態様では、容器保持部は、前後方向に延びる回転軸を中心に回動可能に支持部に支持され、回転軸を回転中心として第一位置と第二位置とを回動可能なため、容易に容器保持部を移動できる。
【0015】
上記椅子では、前記第二位置に位置する前記第一保持部は、前記同形の椅子における前記第二位置に位置する前記第二保持部と対向して積み重なってもよい。
【0016】
本態様では、容器保持部が第二位置に位置する同形の複数の椅子において、容器保持部が対向して上下方向に積み重なるため、積み重ねた状態から上側に配置された椅子を取り外す際に、上側の椅子の容器保持部と下側の椅子の容器保持部とが引っかからずに容易に上側の椅子を取り外すことができる。
【0017】
上記椅子では、前記第二保持部は、前記脚部に設けられていてもよい。
【0018】
本態様では、第二保持部が、上側から積み重なる同形の椅子が通過する軌跡領域の範囲外に配置されていて、第一位置と第二位置とを移動せずとも積み重ねる同形の椅子と突き当たらない場合、第二保持部を、容器保持部ではなく脚部に設けることができる。
【0019】
上記椅子では、前記支持部は、前記第一保持部を前後方向に延びる回転軸を中心に回動可能に支持し、前記第一保持部は、前記回転軸を回転中心として前記第一位置と前記第二位置とを回動可能であってもよい。
【0020】
本態様では、第一保持部は、前後方向に延びる回転軸を中心に回動可能に支持部に支持され、回転軸を回転中心として第一位置と第二位置とを回動可能なため、容易に第一保持部を移動できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の椅子によれば、上下方向に積み重ね(スタッキング)可能であり、容器を保持できる椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る容器保持部が第一位置に位置する椅子の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る容器保持部が第二位置に位置する椅子の斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る容器保持部および支持部の概略構成を示す斜視図および分解斜視図である。
【
図4】同容器保持部の動作を模式的に示す正面図である。
【
図5】同容器保持部の使用方法の一例を示す斜視図である。
【
図6】同容器保持部が第二位置に位置する同形の椅子を積み重ねた状態の斜視図である。
【
図7】同容器保持部が第二位置に位置する同形の椅子を積み重ねた状態の容器保持部を示す正面図である。
【
図8】上側から積み重なる同形の椅子の軌跡領域を模式的に示す斜視図である。
【
図9】変形例1に係る容器保持部が第一位置に位置する椅子の斜視図である。
【
図10】変形例1に係る容器保持部が第二位置に位置する椅子の斜視図である。
【
図11】変形例1に係る容器保持部が第二位置に位置する同形の椅子を積み重ねた状態の斜視図である。
【
図12】変形例1に係る容器保持部が第二位置に位置する同形の椅子を積み重ねた状態の容器保持部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る容器保持部30が第一位置P1に位置する椅子100の斜視図である。
図2は、本実施形態に係る容器保持部30が第二位置P2に位置する椅子100の斜視図である。
【0025】
椅子100は、座部10と、脚部20と、容器保持部30と、支持部40と、背凭れ部50と、を備える。椅子100は、使用者が座部10の座面10sに着座し、背凭れ部50に背中を凭せ掛けることができる椅子である。また、ペットボトル等を保持可能な容器保持部30は、
図1に示す第一位置P1と、
図2に示す第二位置P2とを移動可能である。
【0026】
本実施形態では、
図1に示すように、椅子100における鉛直方向を「上下方向V」、鉛直上向きを上下方向Vにおける「上側UP」、鉛直下向きを上下方向Vにおける「下側LO」と定義する。また、椅子100における前後方向を「奥行方向(前後方向)D」、背凭れ部50が配置される側を奥行方向Dにおける「後側RR」、奥行方向Dにおける後側RRと反対側を「前側FR」と定義する。また、椅子100における左右方向を「水平方向(左右方向)H」、椅子100を正面(前側FR)から見たときの左側を水平方向Hにおける「左側LT」、右側を水平方向Hにおける「右側RT」と定義する。
【0027】
座部10は、略平板状であり、上側UPに使用者が着座できる座面10sを有する。座部10は、左側LTおよび右側RTの両外側に接続された脚部20によって支持されている。
【0028】
脚部20は、座部10の左側LTの端部を支持する左脚部21と、座部10の右側RTの端部を支持する右脚部22とを備える。脚部20は、上下方向Vに延びる略棒状であり、下側LOの端部を地面又は床面等に接地させて、椅子100を起立可能に支持している。左脚部21は、前側FRに配置された左前脚21aと、後側RRに配置された左後脚21bとを有する。また、右脚部22は、前側FRに配置された右前脚22aと、後側RRに配置された右後脚22bとを有する。すなわち、本実施形態に係る椅子100は、4本の脚に支持された椅子である。
【0029】
容器保持部30および支持部40は、座部10の水平方向(左右方向)Hにおける一方側に配置されている。本実施形態において、容器保持部30および支持部40は、座部10の左側LTに配置されている。容器保持部30は、座部10に対して移動可能に支持部40に支持されている。
【0030】
容器保持部30は、
図1に示す第一位置P1と、
図2に示す、第一位置P1に対して座部10から水平方向(左右方向)Hにおける一方側(左側LT)に移動した第二位置P2とを移動可能である。容器保持部30は、奥行方向(前後方向)Dに延びる回転軸に対して第一位置P1と第二位置P2とを回動する。
【0031】
図3は、本実施形態に係る容器保持部30および支持部40の概略構成を示す斜視図および分解斜視図である。
図3(a)は、容器保持部30および支持部40の斜視図である。
図3(b)は、容器保持部30および支持部40の分解斜視図である。ここで、
図3に示す容器保持部30は、第一位置P1に位置するときの容器保持部30を示している。
【0032】
容器保持部30は、第一保持部31と、第二保持部32と、軸受け部33とを備える。
第一保持部31は、平板状であり、平板の厚さ方向(上下方向V)に貫通した孔である保持開孔部31hを有する。第二保持部32は、容器保持部30が第一位置P1に位置するとき、第一保持部31の下側LOに配置されている。
【0033】
第二保持部32は、L字形状の平板であり、L字の一端が第一保持部31の右側RTの端部と接続されている。第二保持部32の第一保持部31と接続されていない方の端部は、左側LTに延び、第一保持部31と対向して、保持開孔部31hの少なくとも一部と重なっている。ここで、第二保持部32は、保持開孔部31hの大部分と重なってもよいし、保持開孔部31hの半分程度又は半分以下の部分と重なっていてもよい。第二保持部32は、保持開孔部31hの中央部分と重なっているのが望ましい。また、第二保持部32は、後述する容器Cの下側LOの面に当接する部位があれば、板状である必要はなく、たとえば、棒状の部材であってもよい。その場合、棒状の部材が複数並置されていることが望ましい。本実施形態において、第二保持部32は、第一保持部31に接続されており、第一保持部31と一体となって、第一位置P1と第二位置P2とを移動(回動)可能である。
【0034】
軸受け部33は、
図3に示すように、第一保持部31の左側LTの端部における下側LOに接続されている。軸受け部33は、容器保持部30の回転軸(回転軸心)Xが通る軸受けであり、
図3に示すように、奥行方向Dに並んで2つ配置されている。軸受け部33には、回転軸Xが通るための開孔が設けられている。
【0035】
支持部40は、軸支持部41と、軸部42と、規制部43とを備える。支持部40は、容器保持部30を奥行方向(前後方向)Dに延びる回転軸Xを中心に回動可能に支持している。軸支持部41は、座部10の左側LTに配置され、中心軸が奥行方向Dに延びる棒形状であり、座部10、脚部20又は背凭れ部50と接続されて固定されている。本実施形態に係る軸支持部41において、
図1に示すように、軸支持部41の前側FRが下側LOに屈曲し、座部10の左側LTの端部と接続されている。また、後側RRは背凭れ部50と接続している。
【0036】
軸部42は、軸基部42aと、軸ボルト42bとを備える。軸部42は、容器保持部30が第一位置P1と第二位置P2とを回動する回転軸心Xを画成する部材である。軸基部42aは、奥行方向Dに延びる棒形状の軸支持部41に沿って接続された棒状の部材であり、軸支持部41と接続されたU字状の部材と、U字状の部材と内接して接続された円筒状の部材とで構成されている。
【0037】
軸ボルト42bは、容器保持部30を軸部42に接続するためのボルトである。奥行方向Dにおいて、容器保持部30の2つの軸受け部33が軸基部42aを挟み込んで配置され、前側FRおよび後側RRから軸受け部33の開孔および軸基部42aの開孔に軸ボルト42bを差し込み、容器保持部30と支持部40とを接続する。
【0038】
このとき、ワッシャ、ブッシュ、カラー、皿バネ等を用いてもよい。ワッシャ、ブッシュ、カラー、皿バネ等を用いることで、軸ボルト42bの緩みの防止や、容器保持部30の回転動作の安定性の向上、摩耗による各構成部材の劣化の抑制ができる。
【0039】
図4は、容器保持部30が第一位置P1から第二位置P2まで回動する動作を模式的に示す正面図である。容器保持部30は、回転軸Xを回転中心として第一位置P1と第二位置P2とを回動可能である。
【0040】
規制部43は、
図4に示すように、L字形状をしており、L字の一端が軸支持部41の下側LOに接続されている。規制部43は、軸支持部41と接続されていない一端である第二当接部43aを有し、容器保持部30が第二位置P2に位置するとき、第二当接部43aと、第一保持部31とが当接する。
【0041】
背凭れ部50は、平板状であり、厚さ方向を奥行方向Dに向けて座部10の後側RRに配置されている。使用者は、椅子100に着座したとき、背凭れ部50に背中を凭せ掛けることができる。
【0042】
次に、椅子100を使用する際の動作について説明する。まず、使用者が椅子100に着座しているときの使用方法について説明する。
【0043】
図5は、容器保持部30の使用方法の一例を示す斜視図である。容器保持部30が第一位置P1に位置するとき、使用者は、ペットボトル等の容器(被保持物品)Cを容器保持部30に載置することができる。
図5に示すように、上側UPから容器Cを保持開孔部31hに入れ、容器Cの底面と第二保持部32とを当接させて容器Cを載置する。そのため、椅子100に着座している使用者は、手の近傍に容器Cを載置でき、容器Cの内容物が飲料の場合、容易に容器Cを手に取り飲料を飲むことができる。
【0044】
また、このとき、保持開孔部31hが容器Cを囲っているため、使用者の手が接触するなどして容器Cが倒れる方向に力が加わった場合、容器Cの側面が保持開孔部31hと当接して支持され、容器Cは倒れない。そのため、容器Cの内容物の飲料等が外部へ漏れるのを防ぐことができる。また、
図4に示したように、容器保持部30が第一位置P1に位置するとき、第一保持部31の下側LOの面における、軸受け部33よりも右側RTに配置された第一当接部31aと、軸支持部41の上側UPの面とが当接している。そのため、
図4において、容器保持部30の回転動作は軸支持部41に規制され、第一位置P1からさらに時計回りに回転しない。そのため、容器保持部30に載置された容器Cの重さで容器保持部30が傾くことがなく、安定して容器Cを保持できる。
【0045】
また、第一位置P1における容器保持部30および支持部40は、椅子100に着座した使用者の右腕の近傍に配置されているため、使用者は容器保持部30および支持部40を肘掛けや、手置きとしても使用できる。
【0046】
次に、椅子100を積み重ねて収納する際の使用方法について説明する。
図6は、容器保持部30が第二位置P2に位置する複数の椅子100を積み重ねた状態を示す斜視図である。複数の椅子100を収納するとき、複数の椅子100を上下方向Vに積み重ねて収納することで、より小さい収納空間に収納できる。
【0047】
ここで、上下方向Vに積み重ねた複数の椅子100において、下側LOに位置する椅子100を第一椅子100A、上側UPに位置する椅子100を第二椅子100Bとする。使用者は、第一椅子100Aに対して、背凭れ部50の奥行方向Dの厚さとほぼ同等の距離だけ第二椅子100Bを前側FRにずらした状態で、第一椅子100Aの上側UPから第二椅子100Bを積み重ねる。
【0048】
このとき、第一椅子100Aの背凭れ部50と、第二椅子100Bの背凭れ部50とが、奥行方向Dに対向して積み重ねられている。また、第二椅子100Bの左後脚21bと右後脚22bとが、第一椅子100Aの座部10を水平方向Hに挟み込んで積み重ねられている。第二椅子100Bの左前脚21aおよび右前脚22aは、背凭れ部50と同様に、第一椅子100Aより前側FRにずれた状態で積み重ねられている。また、第一椅子100Aおよび第二椅子100Bは、上側UPから見たとき、座部10の大部分が重なって積み重ねられている。
【0049】
そのため、第一椅子100Aにおける座部10の上側UPの面と、第二椅子100Bにおける座部10の下側LOの面とが対向および接触した状態で積み重ねることができる。
図6に示すように、椅子100が座部10の下側LOにスペーサ10aを有する場合、スペーサ10aの上下方向Vにおける高さを調節することで、第一椅子100Aにおける座部10と第二椅子100Bにおける座部10との上下方向Vにおける距離を任意の距離(最小積み重ね高さ)に設定できる。
【0050】
また、第一椅子100Aおよび第二椅子100Bを上下方向Vに積み重ねる際、使用者は、第一椅子100Aおよび第二椅子100Bの容器保持部30の位置を第二位置P2にする。
【0051】
図7は、容器保持部30が第二位置P2に位置する第一椅子100Aおよび第二椅子100Bを積み重ねた状態の容器保持部30および支持部40の概略を示す正面図である。
図8は、上側UPから積み重なる第二椅子100Bの軌跡領域S1を模式的に示す斜視図である。
図7に示すように、容器保持部30が第二位置P2に位置するとき、第一椅子100Aの容器保持部30は、第二椅子100Bの支持部40より左側LTに位置する。すなわち、第一椅子100Aの容器保持部30は、第二椅子100Bの座部10より左側LTに位置している。
【0052】
そのため、第一椅子100Aの容器保持部30より第二椅子100Bの座部10が下側LOに位置するように最小積み重ね高さを設定した場合、第一椅子100Aの容器保持部30は、第一椅子100Aの上側UPから第二椅子100Bが積み重なるとき、
図8に示すように、第二椅子100Bが通過する領域(軌跡領域)S1の範囲外に配置されている。その結果、第二椅子100Bは、第一椅子100Aの容器保持部30に突き当たることなく最小積み重ね高さの積み重ね位置まで移動でき、第一椅子100Aと第二椅子100Bとを最小積み重ね高さで積み重ねることができる。
【0053】
容器保持部30が第一位置P1に位置するとき、第一椅子100Aの上側UPから第二椅子100Bを積み重ねようとすると、第二椅子100Bの座部10が、第一椅子100Aの容器保持部30に上側UPから突き当たり、第二椅子100Bは、最小積み重ね高さの積み重ね位置まで移動できない。このとき、第一椅子100Aの容器保持部30は、第二椅子100Bを上側UPから積み重ねる軌跡領域S1の範囲内に配置されている。
【0054】
このように、第一椅子100Aの容器保持部30が第二椅子100Bの軌跡領域S1の範囲外に配置されていることで、上下方向Vにおいて、第二椅子100Bの座部10を第一椅子100Aの座部10のより近い位置に位置するように積み重ねることができ、収納空間を最小化できる。
【0055】
また、
図7に示すように、第二位置P2における第一保持部31と水平方向Hとがなす角度(第二位置角度)αと、上下方向Vにおける最小積み重ね高さD1に対して、第一椅子100Aの第一保持部31と第二椅子100Bの第一保持部31との距離(対向距離)H1は、式1で表すことができる。
【0056】
【0057】
第一椅子100Aの容器保持部30と第二椅子100Bの容器保持部30とが突き当たらずに積み重ねるためには、対向距離H1より容器保持部高さH2が小さい必要がある。すなわち、式2の関係である。
【0058】
【0059】
式1および式2を満足する最小積み重ね高さD1、第二位置角度αおよび容器保持部高さH2を設定することで、第一椅子100Aの容器保持部30と第二椅子100Bの容器保持部30とが突き当たらず最小積み重ね高さD1の位置に第二椅子100Bを積み重ねることができる。
【0060】
また、このとき、
図4に示したように、第二位置P2に位置する第一保持部31と、規制部43の第二当接部43aとが当接し、容器保持部30の回転動作は規制部43に規制されている。そのため、容器保持部30は、第二位置P2からさらに反時計回りに回転しない。その結果、容器保持部30を式1および式2に基づいて決定した第二位置角度αの位置に容易に回転させて積み重ねることができる。また、容器保持部30が必要以上に左側LTに移動するのを抑制できるため、水平方向Hにおける収納空間を最小限にすることができる。
【0061】
また、
図7および式2に示すように、容器保持部30が第二位置P2に位置するとき、第二椅子100Bの第一保持部31は、第一椅子100Aの第二保持部32と対向して積み重なる。また、第二椅子100Bの第一保持部31と第一椅子100Aの第二保持部32は接触していない。そのため、第二椅子100Bを取り外して積み重ね(スタッキング)状態を解除するとき、第二椅子100Bの容器保持部30が第一椅子100Aの容器保持部30に引っかかることなく第二椅子100Bを取り外すことができる。
【0062】
本実施形態の椅子100によれば、椅子100が容器保持部30を備えることで、椅子100に着座した使用者の手の近くにペットボトル等の容器Cを載置でき、使用者は、椅子100に着座したままで容易に容器Cを手に取って飲料を飲むことができる。また、容器保持部30は、使用者が容器Cを載置する第一位置P1から、第一位置P1に対して左側LTに位置する第二位置P2まで回転軸Xを回転中心として回動可能である。そのため、第一椅子100Aの上側UPに第二椅子100B(同形の椅子)を積み重ねる場合、第一椅子100Aの容器保持部30が第二位置P2に位置するとき、第一椅子100Aの容器保持部30は、第二椅子100Bが第一椅子100Aの上側UPから積み重なるときに第二椅子100Bが通過する軌跡領域S1の範囲外に配置されているため、第一椅子100Aの容器保持部30と第二椅子100Bとが突き当たらずに、第二椅子100Bを最小積み重ね高さD1の積み重ね位置まで移動して積み重ねることができる。
【0063】
その結果、上下方向に積み重ね(スタッキング)可能であり、容器を保持できる椅子を提供することができる。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0065】
(変形例1)
上記実施形態において、容器保持部30は、第二保持部32を備えるが、容器保持部の態様はこれに限定されない。容器保持部の少なくとも一部(第一保持部31)が、第一位置P1と第二位置P2とを移動可能であればよく、容器保持部は、第二保持部32を一体に備えなくてもよい。
【0066】
容器保持部が第二保持部32を備えない場合、例えば、支持部又は脚部が第二保持部を備えてもよい。
図9は、容器保持部30Cが第一位置P1に位置するときの変形例1に係る椅子100Cの斜視図である。
図10は、容器保持部30Cが第二位置P2に位置するときの椅子100Cの斜視図である。
【0067】
図9に示すように、変形例1に係る椅子100Cは、支持部40Cおよび左脚部21に設けられた第二保持部32Cを備える。第二保持部32Cは、軸支持部41Cおよび左脚部21に固定して接続されている。また、第一保持部31Cは、奥行方向(前後方向)Dに延びる回転軸を中心に回動可能に支持部40Cに支持され、回転軸を中心として第一位置P1と第二位置P2とを回動可能である。そのため、
図10に示すように、容器保持部30Cが軸部42Cを回転軸として第二位置P2に回転する際、第一保持部31Cのみが回転し、第二保持部32Cの位置は変わらない。変形例1において、第二保持部32Cは、支持部40および左脚部21に設けられているが、第二保持部32Cは、支持部40と接続されずに、左脚部21に設けられてもよい。
【0068】
図11は、変形例1に係る椅子100Cと、同形の椅子とを上下方向Vに積み重ねた(スタッキング)状態を示す斜視図である。ここで、下側LOに位置する椅子100Cを第一椅子100D、上側UPに位置する椅子100Cを第二椅子100Eとする。
図12は、第一椅子100Dと第二椅子100Eとを積み重ねたときの容器保持部30Cおよび第二保持部32Cの正面図である。
【0069】
図12に示すように、第二椅子100Eを積み重ねたとき、支持部40Cおよび左脚部21に設けられた第二保持部32Cは、第一椅子100Dと突き当たらずに最小積み重ね高さD1の位置に第二椅子100Eを積み重ねることができる。すなわち、第一椅子100Dの第二保持部32Cは、第一椅子100Dの上側UPから第二椅子100Eが積み重なるときに第二椅子100Eが通過する軌跡領域の範囲外に配置されている。そのため、第二椅子100Eを積み重ねる際に、第一椅子100Dにおける第二保持部32Cの位置を移動させる必要が無いため、第二保持部32は移動可能な容器保持部30Cの構成でなくてよい。
【0070】
また、第一椅子100Dにおいて、容器保持部30Cが備える第一保持部31Cは、第一位置P1に位置するときに第二椅子100Eの軌跡領域の範囲内に配置される。そのため、最小積み重ね高さD1の位置に第二椅子100Eを積み重ねるためには、第一保持部31Cを第二位置P2に移動させる必要がある。
【0071】
図11および
図12に示すように、容器保持部30Cが第二位置P2に位置するとき、第一椅子100Dの容器保持部30Cは、第二椅子100Eの軌跡領域の範囲外に配置され、かつ、第二椅子100Eの容器保持部30Cと対向して配置されている。また、第一椅子100Dの容器保持部30Cと、第二椅子100Eの容器保持部30Cは接触していない。そのため、容器保持部30Cが第二保持部32Cを備えなくても、最小積み重ね高さD1の位置に第二椅子100Eを積み重ね(スタッキング)可能であり、第二椅子100Eを第一椅子100Dから取り外す際に、第二椅子100Eが第一椅子100Dに引っかかることなく取り外すことができる。
【0072】
(変形例2)
上記実施形態において、容器保持部30は、使用者が容器保持部30に手などで力を加えることで第一位置P1と第二位置P2とを移動するが、容器保持部の態様はこれに限定されない。容器保持部は、バネ構造等の付勢機構を備えてもよい。
【0073】
例えば、容器保持部と、容器保持部の回転軸となる軸部とをねじりバネを介して接続し、容器保持部が第二位置P2に回転する方向に付勢させる。容器保持部にペットボトル等の容器Cを保持する際は、保持開孔部と容器Cとの当接又は容器Cの重さによって容器保持部の回転(付勢)を規制し、容器保持部を第一位置P1に固定する。容器保持部から容器Cを取り出すと、容器保持部は付勢機構によって第二位置P2へ回転する。そのため、使用者は、容器保持部を第一位置P1から第二位置P2へ容易に移動させることができる。
【0074】
(変形例3)
上記実施形態において、容器保持部30および支持部40は、座部10の左側LTに配置されているが、容器保持部30および支持部40の態様はこれに限定されない。容器保持部および支持部は、座部10の右側RTに配置されてもよいし、左側LTおよび右側RTに配置されてもよい。
【0075】
容器保持部および支持部が座部10の右側RT(左右方向Hにおける一方側)に配置される場合、容器保持部が第一位置と、第一位置に対して座部10から右側RTに移動した第二位置とを移動可能とすることで、容器保持部が第二位置に位置するとき、容器保持部は同形の椅子が上側UPから積み重なるときに通過する軌跡領域の範囲外に配置されている。その結果、容器保持部と上側UPから積み重なる椅子とが突き当たらずに積み重ね(スタッキング)可能である。
【0076】
(変形例4)
上記実施形態において、容器保持部30は、第一位置P1と、第一位置P1に対して座部10から左側LT(一方側)へ移動した第二位置P2とを移動可能であるが、容器保持部の態様はこれに限定されない。容器保持部は、前側FR又は後側RRへ移動可能であってもよい。
【0077】
例えば、容器保持部が後側RRに移動可能な場合、容器保持部が、水平方向Hに延びる回転軸を回転中心として後側RRに回転する態様がある。座部10の左側LTに配置された容器保持部において、容器保持部が、背凭れ部50の左側LTの側端部から左側LTに延びる回転軸を中心に回動可能に支持されている。容器保持部が第一位置に位置するとき、容器保持部は、上記実施形態と同様に、背凭れ部50より前側FRに配置されている。容器保持部は、背凭れ部50の左側LTの側端部から左側LTに延びる回転軸を中心に回転し、背凭れ部50より後側RRへ移動した第二位置へ移動する。容器保持部を左側LTから見たとき、容器保持部は、回転軸を中心として反時計回りに第一位置から第二位置へ回転し、第一位置における容器保持部の下側LOの面が上下方向Vに対して後傾して配置されている。
【0078】
同形の椅子が上側UPから積み重なるとき、第二位置に位置する容器保持部は、背凭れ部50より後側RRおよび左側LTに配置されているため、上側UPから積み重なる同形の椅子が通過する軌跡領域の範囲外に配置されている。第一位置に位置する容器保持部と、上側UPから積み重なる同形の椅子とが突き当たって積み重ねできない場合でも、容器保持部を軌跡領域の範囲外である第二位置へ回転させることで、上側UPから積み重なる同形の椅子と突き当たらずに積み重ね可能である。このとき、第一位置に位置する容器保持部の前側FRの端部を支持するフレーム等を左脚部21又は座部10の左側LTの側端部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 椅子
10 座部
10s 座面
20 脚部
30 容器保持部
31 第一保持部
31h 保持開孔部
32 第二保持部
40 支持部
42 軸部
50 背凭れ部
V 上下方向
UP 上側
LO 下側
H 水平方向(左右方向)
LT 左側
RT 右側
D 奥行方向(前後方向)
FR 前側
RR 後側
P1 第一位置
P2 第二位置
S1 軌跡領域
X 回転軸(回転軸心)