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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055029
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】鉄道車両の異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240411BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20240411BHJP
   B61K 13/04 20060101ALI20240411BHJP
   G01M 17/08 20060101ALI20240411BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B60L3/00 Q
B61D37/00 G
B61K13/04
G01M17/08
B60T17/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161601
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 信一
(72)【発明者】
【氏名】岩波 健
(72)【発明者】
【氏名】北村 賢一
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】藤田 晋平
【テーマコード(参考)】
3D049
5H125
【Fターム(参考)】
3D049AA04
3D049BB02
3D049BB03
3D049BB14
3D049KK16
3D049QQ04
3D049RR02
3D049RR10
5H125AA05
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】センサの数を削減でき、FFT解析など複雑な信号処理を行わなくても鉄道車両の異常検知を可能にする鉄道車両の異常検知方法を提供することを目的とする。
【解決手段】鉄道車両の異常検知方法は、異常検知装置が、鉄道車両の一本リンクに取り付けられる歪センサが検出した歪量を取得し、歪量に対してフィルタ処理を行い、フィルタ処理された歪量に対して所定の処理を行い、所定の処理によって求めた値と所定値とを比較して、鉄道車両の異常を検知する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常検知装置が、
鉄道車両の一本リンクに取り付けられる歪センサが検出した歪量を取得し、
前記歪量に対してフィルタ処理を行い、
前記フィルタ処理された歪量に対して所定の処理を行い、
前記所定の処理によって求めた値と所定値とを比較して、前記鉄道車両の異常を検知する、
鉄道車両の異常検知方法。
【請求項2】
前記所定の処理で、前記フィルタ処理された歪量の実効値を算出し、前記実効値を用いて評価変数を算出し、
前記所定の処理によって求めた値は、前記評価変数である、
請求項1に記載の鉄道車両の異常検知方法。
【請求項3】
前記所定の処理によって求めた値は、前記フィルタ処理された歪量に対して全波整流処理した値であり
前記所定の処理で、前記フィルタ処理された歪量に対して全波整流処理を行う、
請求項1に記載の鉄道車両の異常検知方法。
【請求項4】
前記フィルタ処理は、低域通過濾波処理であり、
前記異常検知装置が、前記鉄道車両のブレーキがオン状態の場合に、前記低域通過濾波処理した歪量の実効値を、前記鉄道車両が有する台車に対する指令値である必要ブレーキ力で除算することで第1評価変数を算出し、
前記第1評価変数に対して設定されている上限値と下限値と、前記第1評価変数とを比較することで、前記鉄道車両のブレーキ力の異常を検知する、
請求項2に記載の鉄道車両の異常検知方法。
【請求項5】
前記第1評価変数に対して設定されている上限値と下限値と、前記第1評価変数とを比較した結果、前記第1評価変数が前記上限値以下でありかつ前記下限値以上である場合に前記鉄道車両のブレーキ力が正常範囲であることを検知する、
請求項4に記載の鉄道車両の異常検知方法。
【請求項6】
前記フィルタ処理は、高域通過濾波処理であり、
前記異常検知装置が、前記鉄道車両の制御で用いられる編成速度が所定値以上の場合に、前記高域通過濾波処理した歪量の実効値を、前記鉄道車両の制御で用いられる編成速度で除算することで第2評価変数を算出し、
前記第2評価変数に対して設定されている上限値と下限値と、前記第2評価変数とを比較することで、前記鉄道車両の車輪回転系の異常を検知する、
請求項2、請求項4、請求項5のうちのいずれか1項に記載の鉄道車両の異常検知方法。
【請求項7】
前記第2評価変数に対して設定されている上限値と下限値と、前記第2評価変数とを比較した結果、前記第2評価変数が前記上限値以下でありかつ前記下限値以上である場合に前記鉄道車両の車輪回転系が正常範囲であることを検知する、
請求項6に記載の鉄道車両の異常検知方法。
【請求項8】
前記異常検知装置が、前記歪量に対してフィルタ処理を行う前に、取得された前記歪量に対してアンチエイリアスフィルタ処理と絶対値処理を行う、
請求項2、請求項4、請求項5のうちのいずれか1項に記載の鉄道車両の異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走行している鉄道車両の台車に生じる異常検知について、従来技術では、例えば、台車枠の異常検知については、加速度センサを1台車につき2~4個取り付けていた。また、軸受の異常検知については、車軸用軸箱では1台車につき4個の温度センサ、歯車箱装置では1台車につき2個の温度センサをそれぞれ取り付けていた。また、ブレーキ力の測定評価としては、一本リンクの幹部に歪ゲージを貼り付けて、ブレーキ力を測定評価することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-60261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、1台車あたりのセンサ個数が増加し、コストが高くなること、センサ個数が増えることによる信頼性の低下という課題があった。特に加速度センサの処理はFFT(Fast Fourier Transformation、高速フーリエ変換)解析を伴うなど複雑で特殊な処理装置が必要であった。このように、従来技術では、鉄道車両用台車の異常検知は、1台車あたりのセンサ個数が増加し、センサのコストが高くなるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、センサの数を削減でき、FFT解析など複雑な信号処理を行わなくても鉄道車両の異常検知を可能にする鉄道車両の異常検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、異常検知装置が、鉄道車両の一本リンクに取り付けられる歪センサが検出した歪量を取得し、前記歪量に対してフィルタ処理を行い、前記フィルタ処理された歪量に対して所定の処理を行い、前記所定の処理によって求めた値と所定値とを比較して、前記鉄道車両の異常を検知する。
【0007】
本発明の一態様は、前記所定の処理で、前記フィルタ処理された歪量の実効値を算出し、前記実効値を用いて評価変数を算出し、前記所定の処理によって求めた値は、前記評価変数である。
【0008】
本発明の一態様は、前記所定の処理によって求めた値は、前記フィルタ処理された歪量に対して全波整流処理した値であり前記所定の処理で、前記フィルタ処理された歪量に対して全波整流処理を行う。
【0009】
本発明の一態様は、前記フィルタ処理は、低域通過濾波処理であり、前記異常検知装置が、前記鉄道車両のブレーキがオン状態の場合に、前記低域通過濾波処理した歪量の実効値を、前記鉄道車両が有する台車に対する指令値である必要ブレーキ力で除算することで第1評価変数を算出し、前記第1評価変数に対して設定されている上限値と下限値と、前記第1評価変数とを比較することで、前記鉄道車両のブレーキ力の異常を検知する。
【0010】
本発明の一態様は、前記第1評価変数に対して設定されている上限値と下限値と、前記第1評価変数とを比較した結果、前記第1評価変数が前記上限値以下でありかつ前記下限値以上である場合に前記鉄道車両のブレーキ力が正常範囲であることを検知する。
【0011】
本発明の一態様は、前記フィルタ処理は、高域通過濾波処理であり、前記異常検知装置が、前記鉄道車両の制御で用いられる編成速度が所定値以上の場合に、前記高域通過濾波処理した歪量の実効値を、前記鉄道車両の制御で用いられる編成速度で除算することで第2評価変数を算出し、前記第2評価変数に対して設定されている上限値と下限値と、前記第2評価変数とを比較することで、前記鉄道車両の車輪回転系の異常を検知する。
なお、編成速度とは、1軸速度ではなく、各車軸の空転滑走の影響を受けないように算出されるものである。また、車輪回転系とは、車輪、車軸、歯車装置、継ぎ手、モータなどの回転する機器のことである。
【0012】
本発明の一態様は、前記第2評価変数に対して設定されている上限値と下限値と、前記第2評価変数とを比較した結果、前記第2評価変数が前記上限値以下でありかつ前記下限値以上である場合に前記鉄道車両の車輪回転系が正常範囲であることを検知する。
【0013】
本発明の一態様は、前記異常検知装置が、前記歪量に対してフィルタ処理を行う前に、取得された前記歪量に対してアンチエイリアスフィルタ処理と絶対値処理を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサの数を削減でき、FFT解析など複雑な信号処理を行わなくても鉄道車両の異常検知を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る鉄道車両の異常検知装置の構成例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る鉄道車両における歪センサの取り付け箇所例を示す正面図である。
図3】一本リンクが取り付けられている位置を概念的に示した図である。
図4】加速度センサが取り付けられている位置を概念的に示した図である。
図5】加速度センサ(上下)の周波数解析結果例を示す図である。
図6】一本リンクに取り付けた歪センサの周波数解析結果例を示す図である。
図7】第1実施形態に係る前処理とブレーキ力の正常異常の判定検知処理のフローチャートである。
図8】第1実施形態に係る車輪回転系の正常異常の判定検知処理のフローチャートである。
図9】第1実施形態に係る変数aに対する上限値と下限値の例、変数bに対する上限値と下限値の例を示す図である。
図10】第1実施形態に係るデータ処理例のタイミングチャートである。
図11】第2実施形態に係る鉄道車両の異常検知装置の構成例を示す図である。
図12】曲げ歪を検出するセンサと曲げ応力の発生方向例を示す図である。
図13】ブリッジ回路の例を示す図である。
図14】曲げ歪とヨー角速度との関係を示す図である。
図15】第2実施形態に係るデータ処理例のタイミングチャートである。
図16】第2実施形態に係る台車挙動の正常異常の判定検知処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
<第1実施形態>
[鉄道車両の異常検知装置の構成例]
まず、鉄道車両の異常検知装置1の構成例を説明する。
図1は、本実施形態に係る鉄道車両の異常検知装置の構成例を示す図である。図1のように、鉄道車両の異常検知装置1は、歪センサGと、異常検知装置2を備えている。
異常検知装置2は、前処理部201、LPF(Low-pass filter)202、実効値算出部203、変数a算出部204、HPF(How-pass filter)205、実効値算出部206、変数b算出部207、判定部208、出力部209、および車両情報取得部210を備える。
【0018】
歪センサGは、歪量を検出値として検出する。歪センサGは、例えば、一本リンクLの幹部に作用する引張・圧縮荷重を測定するために4アクティブゲージ法(直交配置法)を適用したセンサである。この測定手法は、1ゲージ法に比べて、曲げ成分の消去、歪の感度向上、温度補償機能などの利点が得られる。
【0019】
異常検知装置2は、車両情報取得部210が取得した速度情報に基づいて、鉄道車両10が例えば編成速度5(km/h)以上で走行している場合に処理を開始する。異常検知装置2は、歪センサGが検出した検出値を用いて、ブレーキ力が正常であるか異常であるか、回転系が正常であるか異常であるかを検知する。なお、編成速度とは、1軸速度ではなく、各車軸の空転滑走の影響を受けないように算出されるものである。
【0020】
前処理部201は、歪センサGが検出した検出値に対して、アンチエイリアスフィルタ処理と絶対値処理を行い、前処理後の検出値をLPF202とHPF205に出力する。
【0021】
LPF202は、前処理された検出値に対して、例えばDC(直流)~3(Hz)の成分を低域通過濾波処理によって抽出して、抽出した成分を実効値算出部203に出力する。なお、LPF202が抽出する周波数成分は一例であり、これに限らない。抽出する帯域は、例えば、検知対象の鉄道車両や立地等に応じて設定された帯域であればよい。
【0022】
実効値算出部203は、LPF202が抽出した帯域の検出値に対して実効値を算出する。
【0023】
変数a算出部204は、車両情報取得部210が取得した情報がブレーキオン状態の場合に、実効値算出部203が算出した実効値を車両情報取得部210が取得した台車必要ブレーキ力で除算して、変数a(第1評価変数)を算出する。なお、台車あたりの必要ブレーキ力は、例えば車両の制御指令値である。なお、車両情報取得部210が取得した情報が制御指令値の場合、変数a算出部204は、制御指令値を用いて、台車必要ブレーキ力を算出するようにしてもよい。この場合、変数a算出部204は、制御指令値と台車必要ブレーキ力との関係を数式または表形式等で記憶しておく。
【0024】
HPF205は、前処理された検出値に対して、例えば5(Hz)以上の成分を高域通過濾波処理によって抽出して、抽出した成分を実効値算出部206に出力する。なお、HPF205が抽出する周波数成分は一例であり、これに限らない。抽出する帯域は、例えば、検知対象の鉄道車両や立地等に応じて設定された帯域であればよい。
【0025】
実効値算出部206は、HPF205が抽出した帯域の検出値に対して実効値を算出する。
【0026】
変数b算出部207は、実効値算出部206が算出した実効値を車両情報取得部210が取得した編成速度で除算して、変数b(第2評価変数)を算出する。なお、編成速度は、例えば、編成の速度(運転台で表示されるもの、編成制御で使用されるもの)である。なお、車両情報取得部210が取得した情報が制御指令値の場合、変数b算出部207は、制御指令値を用いて、車両速度を算出するようにしてもよい。この場合、変数b算出部207は、制御指令値と車両速度との関係を数式または表形式等で記憶しておく。
【0027】
判定部208は、変数a算出部204が算出した変数aと、変数aに対する上限値(所定値)または下限値(所定値)を比較してブレーキ力が正常であるか以上であるかを判定する。なお、変数aに対する上限値と下限値は、例えば、検知対象の鉄道車両や立地等に応じて設定された値である。判定部208は、変数b算出部207が算出した変数bと、変数bに対する上限値または下限値を比較して車輪回転系が正常であるか以上であるかを判定する。なお、変数bに対する上限値と下限値は、例えば、検知対象の鉄道車両や立地等に応じて設定された値である。
【0028】
出力部209は、判定部208は判定した結果を、例えば制御装置3へ出力する。
【0029】
車両情報取得部210は、例えば鉄道車両を制御する制御装置3から車両に関する車両情報を取得する。車両情報には、例えば、制御指令値、速度情報、ブレーキがオン状態であるか否かを示す情報、台車必要ブレーキ力等が含まれる。
【0030】
なお、図1に示した構成は一例であり、これに限らない。異常検知装置2は、例えば歪センサGからの検出値を取得する取得部を備えていてもよく、判定結果に判定した日時情報等を関連付けて記憶する記憶部を備えていてもよい。または、変数aに対する上限値と下限値、変数bに対する上限値と下限値を、記憶部が記憶していてもよい。
【0031】
[歪センサの取り付け位置例]
次に、歪センサの取り付け位置例を説明する。
図2は、本実施形態に係る鉄道車両における歪センサの取り付け箇所例を示す正面図である。図2のように、鉄道車両10において、台車11上に車体12が搭載されている。車体12側に連結部材13が固定されている。台車11側に台車枠14が固定されている。連結部材13と台車枠14との間には、一本リンクLが設けられている。歪センサGは、一本リンクLの周囲に、例えば、貼り付けられて取り付けられている。
【0032】
近年、鉄道車両10は、車体12と台車11ともに軽量化が進められており、台車11として空気バネ式ボルスタレス台車の使用が主流になっている。
この鉄道車両10は、車体12と台車11枠の間を許容変位の大きな空気バネ16(図3参照)で直結し、駆動力及びブレーキ力を一本リンクLからなる牽引装置で伝達する。
【0033】
図3は、一本リンクが取り付けられている位置を概念的に示した図である。図3のように、一本リンクLは、台車枠20毎に、例えば車輪18の間に取り付けられている。なお、図3に示した例は位置例であり概略であるため、これに限らない。
【0034】
[検討]
ここで、歪センサから取得したデータをFFT処理した結果例を説明する。
図4は、加速度センサが取り付けられている位置を概念的に示した図である。図4の例では、加速度センサ(g902)(上下)を、車軸用軸箱(g901)の上面に水平に取り付けた。なお、加速度センサは、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)加速度センサである。また、歪センサは、図1と同様に一本リンクの幹部に取り付けた。
【0035】
図5は、加速度センサ(上下)の周波数解析結果例を示す図である。図5において、横軸は時間(s(秒))、左縦軸は周波数(Hz)、コンターは振動レベル(dB)である。なお、0(dB)=1×10-5(m/s)とした。なお、図5の結果は、加速度センサの検出値に対して、アンチエイリアスフィルタ処理した後にFFT解析した結果例である。
図5のように、加速度センサのFFT解析結果では、DC成分がない(g911)。また、加速度センサのFFT解析結果では、車輪回転数に相当する周波数が断続的であり、検出感度が低い(g912)。さらに、加速度センサのFFT解析結果では、車輪回転数の約4倍の周波数が卓越している(g913)。このように、加速度センサによる検知では、車輪回転数の評価が困難である。
【0036】
図6は、一本リンクに取り付けた歪センサの周波数解析結果例を示す図である。図6において、横軸と左縦軸は図5と同じであり、コンターは歪レベル(dB)である。なお、0(dB)=1×10-1(με))とした。なお、図6の結果は、加速度センサの検出値に対して、アンチエイリアスフィルタ処理した後にFFT解析した結果例である。
図6のように、一本リンクに取り付けた歪センサのFFT解析結果では、DC(直流)成分があり、これがブレーキ力を含んでいる(g921)。また、歪センサのFFT解析結果では、車輪回転数に相当する周波数が卓越し(g922)、ギア比倍の成分も検知可能である(g923)。このため、歪センサを用いた検知を用いることで、車輪回転数(例えば車輪、車軸(不図示)、大歯車(不図示))の評価、ギア比倍となる小歯車(不図示)、継手(不図示)、モータ(不図示)の評価が容易であることを示唆している。このため、本実施形態では、一本リンクに取り付けた歪センサの検出値を処理して、異常検知を行うようにした。
【0037】
[処理手順例]
次に、鉄道車両の異常検知装置1の処理手順例を、図7図8を用いて説明する。
図7は、本実施形態に係る前処理とブレーキ力の正常異常の判定検知処理のフローチャートである。図8は、本実施形態に係る車輪回転系の正常異常の判定検知処理のフローチャートである。
【0038】
(ステップS1)異常検知装置2は、歪センサGが検出した検出値を取得する。
【0039】
(ステップS2)車両情報取得部210は、制御装置から車両情報を取得する。
【0040】
(ステップS3)前処理部201は、車両情報に含まれる速度情報に基づいて、編成速度が所定値(例えば5(km/h)以上であるか否かを判別する。前処理部201は、速度が所定値以上であると判別した場合、ステップS4の処理に進める。前処理部201は、速度が所定値未満であると判別した場合、ステップS3の処理を繰り返す。
【0041】
(ステップS4)前処理部201は、歪センサGが検出した検出値に対して、アンチエイリアスフィルタ処理と絶対値処理を行う。
【0042】
異常検知装置2は、ブレーキ力に関する検知をステップS5~S13の処理で行い、車輪回転系に関する検知をステップS21~S28で行う。なお、異常検知装置2は、ブレーキ力に関する検知処理と、車輪回転系に関する検知処理を同時に行ってもよく、時分割処理で行ってもよく、いずれか1つを先に行ってもよい。
【0043】
まず、図7を参照してブレーキ力に関する検知処理手順を説明する。
(ステップS5)LPF202は、前処理された検出値に対して、例えばDC(直流)~3(Hz)の成分を抽出する。
【0044】
(ステップS6)実効値算出部203は、LPF202が抽出した帯域の検出値に対して実効値を算出する。
【0045】
(ステップS7)変数a算出部204は、車両情報取得部210が取得した情報がブレーキオン状態の場合に、実効値算出部203が算出した実効値を車両情報取得部210が取得した台車必要ブレーキ力で除算して、変数aを算出する。
【0046】
(ステップS8)判定部208は、ブレーキがON状態であるか否かを判別する。判定部208は、ブレーキがON状態では無い場合(ステップS8;NO)、ステップS8の処理を繰り返す。判定部208は、ブレーキがON状態の場合(ステップS8;YES)、ステップS9、S10の処理に進める。
【0047】
(ステップS9)判定部208は、変数a算出部204が算出した変数aと、変数aに対する上限値を比較して、変数aが変数aに対する上限値より大きいか否かを判別する。判定部208は、変数aが変数aに対する上限値より大きいと判別した場合(ステップS9;YES)、ステップS11の処理に進める。判定部208は、変数aが変数aに対する上限値以下であると判別した場合(ステップS9;NO)、ステップS13の処理に進める。
【0048】
(ステップS10)判定部208は、変数a算出部204が算出した変数aと、変数aに対する下限値を比較して、変数aより変数aに対する下限値が大きいか否かを判別する。判定部208は、変数aより変数aに対する下限値が大きいと判別した場合(ステップS10;YES)、ステップS12の処理に進める。判定部208は、変数aより変数aに対する下限値が大きくないと判別した場合(ステップS10;NO)、ステップS13の処理に進める。
【0049】
なお、判定部208は、ステップS8の処理を例えばステップS3とS4の間で行ってもよい。また、判定部208は、ステップS9とステップS10の処理を平行して行ってもよく、時分割処理してもよく、ステップS9の後にステップS10の処理を行ってもよく、あるいはステップS10の後にステップS9の処理を行ってもよい。
【0050】
(ステップS11)判定部208は、ブレーキ力が異常(過大)であると判定し、判定検知処理を終了する。
【0051】
(ステップS12)判定部208は、ブレーキ力が異常(不足)であると判定し、判定検知処理を終了する。
【0052】
(ステップS13)判定部208は、ブレーキ力が正常範囲であると判定し、判定検知処理を終了する。
【0053】
次に、図8を参照して車輪回転系に関する検知処理手順を説明する。
(ステップS21)HPF205は、前処理された検出値に対して、例えば5(Hz)以上の成分を抽出する。
【0054】
(ステップS22)実効値算出部206は、HPF205が抽出した帯域の検出値に対して実効値を算出する。
【0055】
(ステップS23)変数b算出部207は、実効値算出部206が算出した実効値を車両情報取得部210が取得した車両速度で除算して、変数bを算出する。
【0056】
(ステップS24)判定部208は、変数b算出部207が算出した変数bと、変数bに対する上限値を比較して、変数bが変数bに対する上限値より大きいか否かを判別する。判定部208は、変数bが変数bに対する上限値より大きいと判別した場合(ステップS24;YES)、ステップS26の処理に進める。判定部208は、変数bが変数bに対する上限値以下であると判別した場合(ステップS24;NO)、ステップS28の処理に進める。
【0057】
(ステップS25)判定部208は、変数b算出部207が算出した変数bと、変数bに対する下限値を比較して、変数bより変数bに対する下限値が大きいか否かを判別する。判定部208は、変数bより変数bに対する下限値が大きいと判別した場合(ステップS25;YES)、ステップS27の処理に進める。判定部208は、変数bより変数bに対する下限値が大きくないと判別した場合(ステップS25;NO)、ステップS28の処理に進める。
【0058】
なお、判定部208は、ステップS24とステップS25の処理を平行して行ってもよく、時分割処理してもよく、ステップS24の後にステップS25の処理を行ってもよく、あるいはステップS25の後にステップS24の処理を行ってもよい。
【0059】
(ステップS26)判定部208は、車輪回転系が異常であると判定し、判定検知処理を終了する。
【0060】
(ステップS27)判定部208は、車輪回転系が異常であると判定し、判定検知処理を終了する。
【0061】
(ステップS28)判定部208は、車輪回転系が正常範囲であると判定し、判定検知処理を終了する。
【0062】
なお、図7図8に示した処理手順は一例であり、これに限らない。
【0063】
[上限値、下限値の例]
次に、上限値と下限値の例を説明する。
図9は、本実施形態に係る変数aに対する上限値と下限値の例、変数bに対する上限値と下限値の例を示す図である。
グラフg100は、変数aに対する上限値と下限値の例である。グラフg110は、変数bに対する上限値と下限値の例である。グラフg100とグラフg110において、横軸は時間(例えば秒)であり、縦軸は変数と上限値または下限値の値である。
【0064】
グラフg100のように、本実施形態では、台車必要ブレーキ力(kN)に対する実効値(με)の比を基準g101として、上限値g102と下限値g103の閾値(たとえば±10%)を設定する。
また、グラフg110のように、本実施形態では、速度(km/h)に対する実効値(με)の比を基準g111として、上限値g112と下限値g113の閾値(たとえば±10%)を設定する。
【0065】
なお、図9を用いて説明した上限値と下限値の設定方法や範囲は一例であり、これらは、例えば検知する対象の車両、季節、温度、車両が走行する環境等に応じて設定するようにしてもよい。また、異常検知装置2は、上限値や下限値を、上述した環境や地点などの条件に応じて切り替えて使用するようにしてもよい。
【0066】
[データ処理のタイミングチャート]
次に、上述した処理をタイミングチャートを用いて、処理内容と処理タイミング等を説明する。
図10は、本実施形態に係るデータ処理例のタイミングチャートである。図10において、横軸は時刻(秒)であり、グラフg200の縦軸は編成速度(km/h)、グラフg210の縦軸は力行制動ノッチの値、グラフg220の縦軸は台車必要ブレーキ力(kN)、グラフg230の縦軸は歪量(με)、グラフg240の縦軸は歪量のLPF後(με)、グラフg250の縦軸はLPF後の実効値(με)、グラフg260の縦軸は変数a(評価変数a)、グラフg270の縦軸は歪量のHPF後(με)、グラフg280の縦軸はHPF後の実効値(με)、グラフg290の縦軸は変数b(評価変数b)である。なお、実効値の単位は、μεrmsであるが、図10ではμεと省略して示している。
【0067】
図10の例では、グラフg290のように、異常検知装置2は、鉄道車両の編成速度が所定値以上(例えば5(km/h))の全範囲で評価を行う。
グラフg230に示すように、歪量に係数を掛けると実ブレーキ力(kN)に換算できる。そして、グラフg220とg250のように、歪量にLPF処理を行い、さらに実効値を求めた結果は、実ブレーキ力に相似している。
そして、異常検知装置2は、グラフg210のようにブレーキがオン状態を検出し、ブレーキがオン状態の範囲で、変数aに付いての評価を行う。なお、グラフg260の例では、上限値と下限値を図示していない。
【0068】
また、グラフg200とg280のように、歪量にHPF処理を行い、さらに実効値を求めた結果は、編成速度に相似している。
そして、異常検知装置2は、グラフg290のように、速度が所定値以上の全範囲で、変数bに付いての評価を行う。なお、グラフg290の例では、上限値と下限値を図示していない。
【0069】
なお、図10に示した例は一例であり、これに限らない。
【0070】
以上のように、本実施形態では、鉄道車両において、一本リンクに取り付けた歪センサが検出した検出値に対して、LPF処理、HPF処理、実効値算出処理、変数算出処理、上限値または下限値の比較値によって、ブレーキ力と車輪回転系が正常であるか異常であるかの判定と検知を行うようにした。
【0071】
すなわち、本実施形態の鉄道車両の異常検知方法は、
異常検知装置が、
鉄道車両の一本リンクに取り付けられる歪センサが検出した歪量を取得し、
前記歪量に対してフィルタ処理を行い、
前記フィルタ処理された歪量の実効値を算出し、
前記実効値を用いて評価変数を算出し、
前記評価変数と所定値とを比較して、前記鉄道車両の異常を検知する、
鉄道車両の異常検知方法である。
【0072】
これにより、本実施形態によれば、1台車枠あたり1つの歪センサで済むため、センサの数を削減できる。また、本実施形態によれば、歪量をフィルタ処理することによってFFT解析など複雑な信号処理を行わなくても、減速時(または加速時)に台車に負荷されるブレーキ力(駆動力)の過不足を抽出して評価することができる。さらに、本実施形態によれば、速度に相当する輪軸などの回転数が抽出されるため、車輪や車軸、小歯車、大歯車、継手、モータまでの回転系の異常(たとえば、車輪フラット、蛇行動、脱線、台車枠亀裂、歯車装置故障、継手分離、軸受剥離および損傷)を検知することができる。
【0073】
なお、図7図8を用いて説明した例では、正常と判定した場合も検知して出力する例を説明したが、異常を検知して出力し、正常時は検知しない、または出力しないようにしてもよい。
【0074】
<第2実施形態>
図11は、本実施形態に係る鉄道車両の異常検知装置の構成例を示す図である。図11のように、鉄道車両の異常検知装置1Aは、歪センサGAと、異常検知装置2Aを備えている。
異常検知装置2Aは、前処理部201、LPF202A、判定部208A、出力部209、車両情報取得部210、全波整流部211、および記憶部212を備える。
なお、第1実施形態で用いるゲージ数は4枚であり、本実施形態で用いるゲージ数は2枚である。
【0075】
歪センサGAは、歪量を検出値として検出する。歪センサGAは、例えば、一本リンクに直交する方向、すなわち枕木方向の曲げ歪を検出する2つのセンサである。
【0076】
LPF202Aは、曲げ歪に対してLPF処理を行う。なお、LPF202Aの帯域は、例えばDC(直流)~3(Hz)である。
【0077】
全波整流部211は、例えばブリッジ回路であり、曲げ歪に対して全波整流処理を行う。この全波整流部211による全波整流処理は、第1実施形態における実効値算出の代わりに行う。
【0078】
判定部208Aは、全波整流処理後の曲げ歪の値と閾値を比較して、全波整流処理後の曲げ歪の値が閾値を超えた場合に異常検知を行う。なお、判定部208Aは、LPF処理後の曲げ歪の値と、上限の閾値、下限の閾値を比較して、LPF処理後の曲げ歪の値が下限の閾値または上限の閾値を超えた場合に異常検知を行うようにしてもよい。
【0079】
記憶部212は、LPF後の値に対する上限値の閾値と下限値の閾値、またはブリッジ回路後の値に対する閾値を記憶する。
【0080】
なお、図11では、車輪回転系の異常検知を省略しているが、異常検知装置2Aは、異常検知装置2と同様にHPF205、実効値算出部206、変数b算出部207を備えていてもよい。
【0081】
ここで、曲げ歪みの測定方法の一例を説明する。本実施形態では、曲げ歪みの測定方法として、2アクティブゲージ法を用いる。
図12は、曲げ歪を検出するセンサと曲げ応力の発生方向例を示す図である。符号Rgは第1の歪センサであり、符号Rgは第2の歪センサである。歪センサは、白抜き矢印方向応力を検出する。
【0082】
図13は、ブリッジ回路の例を示す図である。図13のブリッジ回路の出力eとEには、e=(E/2)K・εの関係がある。第1の曲げ歪Rgの検出値はεであり、第2の曲げ歪Rgの検出値は-εである。また、Rは固定抵抗である。
【0083】
図14は、曲げ歪とヨー角速度との関係を示す図である。横軸はヨー角速度(rad/s)、縦軸は曲げ歪(με)である。図14のように、一本リンクの曲げ歪と、台車の鉛直z軸方向回りのヨー角速度との間には相関があることが実験により確認できた。このため、本実施形態では、この関係を利用して、レールに対して台車が脱線する兆候または脱線時に生じるヨー角速度(アタック角に相当)の変化を検出する。具体的には、判定部208Aが、ヨー角速度が大きくなると異常であると判定、すなわちヨー角速度の閾値に相当する歪量で異常検知と判定を行う。なお、図14の関係は一例であり、車両や台車等によって異なる。
【0084】
なお、ヨー角速度から線路(レール)の曲率を求め、線路曲率のデータベースとの比較も可能であるが、演算値が発散する場合もあるため、本実施形態では、歪値の閾値で異常検知するようにした。なお、演算値が発散しない場合は、ヨー角速度から線路(レール)の曲率を求めるようにしてもよい。
【0085】
これにより、本実施形態によれば、従来、例えば軸箱に設置されていたアタック角検出装置が不要になる。
【0086】
図15は、本実施形態に係るデータ処理のタイミングチャートである。図15において、横軸は時刻(秒)であり、グラフg300の縦軸は編成速度(km/h)、グラフg310の縦軸は力行制動ノッチの値、グラフg320の縦軸はヨー角速度(dag/s)、グラフg330の縦軸は曲げ歪(με)、グラフg340の縦軸は曲率(l/m)、グラフg350の縦軸はヨー角速度の全波整流出力(dag/s)、グラフg360の縦軸は曲げ歪の全波整流出力(με)である。なお、図15では、値の関係性を参考として示すため、異常検知装置2Aが備えていないヨー角速度を検出するセンサを、実験用に台車に設置して値を取得し、さらに取得した値に対して全波整流処理を行っている(グラフg320、g350)。そして、実験用に設置したヨー角速度から曲率を参考のため求めた(グラフg340)。すなわち、グラフg320、g340、およびg350は、参考値である。
【0087】
また、線g321はヨー角速度のLPF後の値であり、線g322はヨー角速度に対する上限の閾値であり、線g323はヨー角速度に対する下限の閾値である。線g331は曲げ歪のLPF後の値であり、線g332は曲げ歪に対する上限の閾値であり、線g333は曲げ歪に対する下限の閾値である。線g341は、ヨー角速度から求めた曲率である。線g351はヨー角速度を全波整流処理した結果であり、線g352はヨー角速度を全波整流処理した結果に対する閾値である。線g361は曲げ歪を全波整流処理した結果であり、線g362は曲げ歪を全波整流処理した結果に対する閾値である。
【0088】
図15は、例えば、車体が走行し始めて、速度を上げていった状態の例である。グラフg320のように、例えば曲線状のレール上を通過する際に、ヨー角速度の値が0を中心にして正負に振れる。そして、グラフg320とg330のように、LPF後のヨー角速度の変化と、LPF後の曲げ歪の変化には相関がある。このため、LPF後のヨー角速度に対して上限の閾値と下限の閾値を設け、例えば図15のような関係式に基づいて、これに対応するLPF後の曲げ歪に対して上限の閾値と下限の閾値を設けて、異常検知を行うようにしてもよい。
【0089】
なお、グラフg340のように、ヨー角速度から求めた曲率の値は、下三桁であるため、上述したように、例えば速度が0の場合に発散することがある。このため、本実施形態では、曲率を用いずに、閾値での異常検知を行っている。
【0090】
そして、グラフg350、g360のように、ヨー角速度に対して全波整流処理した値と、曲げ歪に対して全波整流処理した値とも、ピークの現れ方等、相関がある。このため、判定部208Aは、曲げ歪に対して全波整流処理した値と閾値とを比較し、曲げ歪に対して全波整流処理した値が閾値を超えた場合に異常検知を行う。
【0091】
[処理手順例]
次に、鉄道車両の異常検知装置1Aの処理手順例を、図16を用いて説明する。
図16は、本実施形態に係る台車挙動の正常異常の判定検知処理のフローチャートである。
【0092】
(ステップS101)異常検知装置2Aは、歪センサGAが検出した検出値を取得する。
【0093】
(ステップS102)車両情報取得部210は、制御装置から車両情報を取得する。
【0094】
(ステップS103)前処理部201は、車両情報に含まれる速度情報に基づいて、編成速度が所定値(例えば5(km/h)以上であるか否かを判別する。前処理部201は、速度が所定値以上であると判別した場合、ステップS104の処理に進める。前処理部201は、速度が所定値未満であると判別した場合、ステップS103の処理を繰り返す。
【0095】
(ステップS104)前処理部201は、歪センサGAが検出した検出値に対して、例えばアンチエイリアスフィルタ処理を行う。
【0096】
(ステップS105)LPF202Aは、前処理された検出値に対して、例えばDC(直流)~3(Hz)の成分を抽出する。
【0097】
(ステップS106)全波整流部211は、LPF202Aが抽出した帯域の検出値に対して全波整流処理を行う。
【0098】
(ステップS107)判定部208Aは、全波整流処理した曲げ歪と閾値を比較して、全波整流処理した曲げ歪が閾値より大きいか否かを判別する。判定部208Aは、全波整流処理した曲げ歪が閾値より大きいと判別した場合(ステップS107;YES)、ステップS108の処理に進める。判定部208Aは、全波整流処理した曲げ歪が閾値以下であると判別した場合(ステップS107;NO)、ステップS109の処理に進める。
【0099】
(ステップS108)判定部208Aは、台車挙動が異常であると判定し、判定検知処理を終了する。
【0100】
(ステップS109)判定部208Aは、台車挙動が正常範囲であると判定し、判定検知処理を終了する。
【0101】
なお、本実施形態においても、ブレーキ力系に関する検知を行う場合は、第1実施形態と同様にステップS5~S13(図7)の処理を行うようにしてもよい。
【0102】
なお、上述した例では、全波整流部211が全波整流処理を行う例を説明したが、これに限らない。例えば正負考慮しないならば、実効値でもよい。この場合、異常検知装置2Aは、全波整流部211の代わりに実効値算出部を備えていてもよい。
【0103】
以上のように、本実施形態では、センサが取得した値に対して全波整流処理した結果と閾値とを比較して、異常検知を行うようにした。
【0104】
これにより、本実施形態によれば、異常検知装置2Aの構成を簡素化できる。
【0105】
なお、本発明における異常検知装置2(または2A)の機能の全てまたは一部を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより異常検知装置2(または2A)が行う処理の全てまたは一部を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0106】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0107】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0108】
1,1A…鉄道車両の異常検知装置、G,GA…歪センサ、2,2A…異常検知装置、201…前処理部、202,202A…LPF、203…実効値算出部、204…変数a算出部、205…HPF、206…実効値算出部、207…変数b算出部、208,208A…判定部、209…出力部、210…車両情報取得部、211…全波整流部、212…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16