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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055030
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】面角度計測装置及び面角度計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/26 20060101AFI20240411BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20240411BHJP
   G01N 21/88 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
G01B11/26 H
G01B11/02 H
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161602
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 琴音
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065AA21
2F065AA31
2F065FF04
2F065HH02
2F065JJ14
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065LL21
2F065LL59
2F065QQ24
2F065QQ31
2G051AA89
2G051AB05
(57)【要約】
【課題】光学異方性の検査を効率的に行うために検査対象物の面角度を効率良く計測することを課題とする。
【解決手段】面角度計測装置10は、光源が内蔵された撮像部20より拡散光を検査対象物30に照射し、撮像部20と検査対象物30の延長線上に設置されたスクリーン40に検査対象物30の影Gを映し出す。そして、テレセントリック光学系を有する撮像部20により検査対象物30の影Gを含む検査画像53bを撮像し、画像処理により影Gの寸法を算出する。その後、検査対象物30の寸法データ53aに基づいて撮像部20から検査対象物30までの距離を算出し、検査対象物30の影Gの寸法、検査対象物30の寸法及び距離に基づいて検査対象物30の面角度を求めるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検査対象物の面角度を計測する面角度計測装置であって、
前記検査対象物に光を照射する光源を有する撮像部と、
前記撮像部と前記検査対象物の延長線上の所定位置に、前記撮像部の撮像面と平行となるように配設されたスクリーンと、
前記撮像部により撮像され、前記光源に照射された拡散光によって前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影と前記検査対象物とを含む検査画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記検査画像から影の寸法を算出する影寸法算出部と、
前記影寸法算出部により算出された影の寸法に基づいて、前記検査対象物と前記撮像部との距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部により算出された距離に基づいて、前記検査対象物の面角度を算出する面角度算出部と
を備えたことを特徴とする面角度計測装置。
【請求項2】
前記撮像部は、
テレセントリック光学系を含むことを特徴とする請求項1に記載の面角度計測装置。
【請求項3】
前記スクリーンは、
前記検査対象物の一端と接するように配設されたことを特徴とする請求項2に記載の面角度計測装置。
【請求項4】
前記距離算出部は、
前記影寸法算出部により算出された影の寸法とあらかじめ計測された前記検査対象物の寸法とに基づいて、前記検査対象物の上端と前記撮像部との第1の距離と、前記検査対象物の下端と前記撮像部との第2の距離とを算出することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の面角度計測装置。
【請求項5】
前記面角度算出部は、
前記距離算出部により算出された前記第1の距離及び前記第2の距離と、前記検査対象物の寸法とに基づいて前記検査対象物の面角度を算出することを特徴とする請求項4に記載の面角度計測装置。
【請求項6】
所定の検査対象物の面角度を計測する面角度計測装置であって、
前記検査対象物に光を照射する光源と、
前記光源と前記検査対象物の延長線上の所定位置に配設されたスクリーンと、
前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影を撮像する該スクリーンの裏面方向に配設された裏面撮像部と、
前記裏面撮像部により撮像され、前記光源に照射された拡散光によって前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影を含む検査画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記検査画像から影の寸法を算出する影寸法算出部と、
前記影寸法算出部により算出された影の寸法に基づいて、前記検査対象物と前記光源との距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部により算出された距離に基づいて、前記検査対象物の面角度を算出する面角度算出部と
を備えたことを特徴とする面角度計測装置。
【請求項7】
所定の検査対象物に光を照射する光源を有する撮像部と、前記撮像部と前記検査対象物の延長線上の所定位置に、前記撮像部の撮像面と平行となるように配設されたスクリーンとを有し、前記検査対象物の面角度を計測する面角度計測装置における面角度計測方法であって、
前記撮像部により撮像され、前記光源に照射された拡散光によって前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影と前記検査対象物とを含む検査画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程により取得された前記検査画像から影の寸法を算出する影寸法算出工程と、
前記影寸法算出工程により算出された影の寸法に基づいて、前記検査対象物と前記撮像部との距離を算出する距離算出工程と、
前記距離算出工程により算出された距離に基づいて、前記検査対象物の面角度を算出する面角度算出工程と
を含むことを特徴とする面角度計測方法。
【請求項8】
所定の検査対象物に光を照射する光源と、前記光源と前記検査対象物の延長線上の所定位置に配設されたスクリーンと、前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影を撮像する該スクリーンの裏面方向に配設された裏面撮像部とを有し、前記検査対象物の面角度を計測する面角度計測装置における面角度測定方法であって、
前記裏面撮像部により撮像され、前記光源に照射された拡散光によって前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影を含む検査画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程により取得された前記検査画像から影の寸法を算出する影寸法算出部と、
前記影寸法算出工程により算出された影の寸法に基づいて、前記検査対象物と前記光源との距離を算出する距離算出工程と、
前記距離算出工程により算出された距離に基づいて、前記検査対象物の面角度を算出する面角度算出工程と
を含むことを特徴とする面角度計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性の検査を効率的に行うために検査対象物の面角度を効率良く計測することができる面角度計測装置及び面角度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成型部品の表面や車両の塗装面に光学異方性が生じる場合がある。例えば、金型内で溶融樹脂の合流部分が線状の跡となるウェルドラインという成型不良が発生した場合には、見る角度によって射出成型部品等の色合いが異なる結果となる。
【0003】
このため、射出成型部品等の成型不良を検査する従来技術が知られている。例えば、テレセントリック性を有する光学系を用いて取得した画像に基づいて物体に関する情報を取得する技術が知られている。例えば、特許文献1には、同心円状のカラーフィルタを介して画像を取得し、撮像された光線の色を特定し、散乱角を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-203796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1によれば、光学異方性を検査する場合に正反射光が得られることが必須条件となる。このため、検査対象物が所定の面角度に配設されていない場合には、光学異方性を検査することが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術による問題点(課題)を解決するためになされたものであって、光学異方性の検査を効率的に行うために検査対象物の面角度を効率良く計測する面角度計測装置及び面角度計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、所定の検査対象物の面角度を計測する面角度計測装置であって、前記検査対象物に光を照射する光源を有する撮像部と、前記撮像部と前記検査対象物の延長線上の所定位置に、前記撮像部の撮像面と平行となるように配設されたスクリーンと、前記撮像部により撮像され、前記光源に照射された拡散光によって前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影と前記検査対象物とを含む検査画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された前記検査画像から影の寸法を算出する影寸法算出部と、前記影寸法算出部により算出された影の寸法に基づいて、前記検査対象物と前記撮像部との距離を算出する距離算出部と、前記距離算出部により算出された距離に基づいて、前記検査対象物の面角度を算出する面角度算出部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記撮像部は、テレセントリック光学系を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記スクリーンは、前記検査対象物の一端と接するように配設されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記距離算出部は、前記影寸法算出部により算出された影の寸法とあらかじめ計測された前記検査対象物の寸法とに基づいて、前記検査対象物の上端と前記撮像部との第1の距離と、前記検査対象物の下端と前記撮像部との第2の距離とを算出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記面角度算出部は、前記距離算出部により算出された前記第1の距離及び前記第2の距離と、前記検査対象物の寸法とに基づいて前記検査対象物の面角度を算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、所定の検査対象物の面角度を計測する面角度計測装置であって、前記検査対象物に光を照射する光源と、前記光源と前記検査対象物の延長線上の所定位置に配設されたスクリーンと、前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影を撮像する該スクリーンの裏面方向に配設された裏面撮像部と、前記裏面撮像部により撮像され、前記光源に照射された拡散光によって前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影を含む検査画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された前記検査画像から影の寸法を算出する影寸法算出部と、前記影寸法算出部により算出された影の寸法に基づいて、前記検査対象物と前記光源との距離を算出する距離算出部と、前記距離算出部により算出された距離に基づいて、前記検査対象物の面角度を算出する面角度算出部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、所定の検査対象物に光を照射する光源を有する撮像部と、前記撮像部と前記検査対象物の延長線上の所定位置に、前記撮像部の撮像面と平行となるように配設されたスクリーンとを有し、前記検査対象物の面角度を計測する面角度計測装置における面角度計測方法であって、前記撮像部により撮像され、前記光源に照射された拡散光によって前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影と前記検査対象物とを含む検査画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程により取得された前記検査画像から影の寸法を算出する影寸法算出工程と、前記影寸法算出工程により算出された影の寸法に基づいて、前記検査対象物と前記撮像部との距離を算出する距離算出工程と、前記距離算出工程により算出された距離に基づいて、前記検査対象物の面角度を算出する面角度算出工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、所定の検査対象物に光を照射する光源と、前記光源と前記検査対象物の延長線上の所定位置に配設されたスクリーンと、前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影を撮像する該スクリーンの裏面方向に配設された裏面撮像部とを有し、前記検査対象物の面角度を計測する面角度計測装置における面角度測定方法であって、前記裏面撮像部により撮像され、前記光源に照射された拡散光によって前記スクリーンの表面に形成された前記検査対象物の影を含む検査画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程により取得された前記検査画像から影の寸法を算出する影寸法算出部と、前記影寸法算出工程により算出された影の寸法に基づいて、前記検査対象物と前記光源との距離を算出する距離算出工程と、前記距離算出工程により算出された距離に基づいて、前記検査対象物の面角度を算出する面角度算出工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光学異方性の検査を効率的に行うために検査対象物の面角度を効率良く計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態1に係る面角度計測装置の概要を説明するための説明図である。
図2図2は、図1に示した面角度計測装置による検査対象物の影の生成要領を説明するための説明図である。
図3図3は、図1に示した面角度計測装置の検査画像の取得要領を説明するための説明図である。
図4図4は、撮像部により撮像された画像の一例を示す図である。
図5図5は、撮像部から検査対象物の下辺までの距離の算出要領を説明するための説明図である。
図6図6は、撮像部から検査対象物の上辺までの距離の算出要領を説明するための説明図である。
図7図7は、検査対象物の面角度の算出要領を説明するための説明図である。
図8図8は、図1に示した面角度計測装置の処理手順を示すフローチャートである。
図9図9は、変形例を説明するための説明図である。
図10図10は、実施形態2に係る面角度計測装置の概要を説明するための説明図である。
図11図11は、図10に示した面角度計測装置の検査対象物の影の生成要領を説明するための説明図である。
図12図12は、図10に示した面角度計測装置の撮像部から検査対象物の下辺までの距離の算出要領を説明するための説明図である。
図13図13は、図10に示した面角度計測装置の検査対象物の面角度の算出要領を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る面角度計測装置及び面角度計測方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態における検査対象物の面角度とは、撮像部の撮像面(Y―Z平面)を基準(角度0度)としてX軸方向に傾いた角度を意味する。
【0018】
[実施形態1]
本実施形態1に係る面角度計測装置10の概要について説明する。図1は、実施形態1に係る面角度計測装置10の概要を説明するための説明図である。図1に示す面角度計測装置10は、撮像部20に内蔵された光源から検査対象物30に対して拡散光を照射し、スクリーン40に映し出された影及び検査対象物30を含む検査画像を撮像し、あらかじめ計測された検査対象物30の寸法及び影の寸法に基づいて面角度を算出する装置である。
【0019】
図1に示すように、面角度計測装置10は、撮像部20と、検査対象物30と、スクリーン40と、端末装置50とを有する。撮像部20は、拡散光を照射する光源及びテレセントリック光学系を有し、検査対象物30の影及び検査対象物30を含む検査画像を撮像する撮像部である。光源は、例えばLED(Light-Emitting Diode)等である。
【0020】
検査対象物30は、車両のボディ等の部材の一部をなし、例えばウェルドライン等の表面検査を行う対象物である。スクリーン40は、検査対象物30の影を映し出すスクリーンであり、例えば、ポリ塩化ビニール及びガラス機材等により形成される。
【0021】
端末装置50は、検査対象物30の面角度を算出する装置であり、表示部51、入力部52、記憶部53及び制御部54を有する。表示部51は、各種情報を表示する液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。入力部52は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。記憶部53は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスであり、寸法データ53a及び検査画像53bを有する。
【0022】
寸法データ53aは、あらかじめ計測した検査対象物30の寸法データであり、例えば検査対象物30が長方形のものであれば、上辺の長さ、下辺の長さ及び高さの寸法である。検査画像53bは、スクリーン40に映し出された検査対象物30の影及び検査対象物30を含む画像であり、テレセントリック光学系を有する撮像部20にて撮像される。
【0023】
制御部54は、端末装置50の全体を制御する制御部であり、光学制御部54aと、画像取得部54bと、影寸法算出部54cと、距離算出部54dと、面角度算出部54eと、表示処理部54fとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、光学制御部54aと、画像取得部54bと、影寸法算出部54cと、距離算出部54dと、面角度算出部54eと、表示処理部54fとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0024】
光学制御部54aは、撮像部20に内蔵された光源を点灯又は消灯する制御を行う制御部である。画像取得部54bは、スクリーン40に写し出された検査対象物30の影及び検査対象物30の画像を取得する処理部である。
【0025】
影寸法算出部54cは、検査画像53bに基づいて検査対象物30の影の寸法を算出する処理部である。具体的には、撮像部20の撮像範囲と撮像部20の撮像センサの画素数とに基づき、1画素あたりの寸法(画素分解能)をあらかじめ算出し、撮像された検査画像53bの影部分の画素数から寸法を算出する。
【0026】
距離算出部54dは、検査対象物30の寸法データ53a及び影の寸法に基づいて撮像部20から検査対象物30までの距離を算出する処理部である。具体的には、検査対象物30の上辺の長さと、下辺の長さと、影の上辺の長さと、下辺の長さと、撮像部20からスクリーン40までの距離とに基づいて撮像部20から検査対象物30の上辺までの距離及び撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離を算出する。
【0027】
面角度算出部54eは、検査対象物30の寸法データ53a及び撮像部20から検査対象物30までの距離に基づいて検査対象物30の面角度を算出する処理部である。具体的には、検査対象物30の上辺の長さ、下辺の長さと、高さと、撮像部20から検査対象物30の上辺までの距離と、撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離とに基づいて検査対象物30の面角度を算出する。表示処理部54fは、面角度算出部54eにより算出された面角度を所定の表示部51に表示する。
【0028】
<検査対象物30の影の生成要領>
次に、検査対象物30の影の生成要領について説明する。図2は、図1に示した面角度計測装置10による検査対象物30の影Gの生成要領を説明するための説明図である。図2に示すように、撮像部20に内蔵された光源から拡散光Sが検査対象物30に向けて照射される。拡散光Sは、撮像部20と検査対象物30の延長線上の所定位置に配設されたスクリーン40上に影Gが映る。
【0029】
ここで、検査対象物30の影Gの寸法は、撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離を距離Aとし、撮像部20から検査対象物30の上辺までの距離を距離Bとすると、影Gの下辺の長さaは、距離Aに反比例し、影Gの上辺の長さbは、距離Bに反比例する。また、影Gの高さkは、検査対象物30のZ軸方向の長さHに比例する。
【0030】
<検査画像53bの取得要領>
次に、検査画像53bの取得要領について説明する。図3は、図1に示した面角度計測装置10の検査画像53bの取得要領を説明するための説明図である。図3に示すように、面角度計測装置10は、テレセントリック光学系を有する撮像部20において、スクリーン40に写し出された影G及び検査対象物30の光軸Cと平行な正反射光Pを結像させ、撮像部20の図示しない撮像センサにおいて検査画像53bを取得する。検査画像53bは、例えば、図4に示すように検査対象物30及び検査対象物30の影Gが重なった画像となる。
【0031】
面角度計測装置10は、検査画像53bから検査対象物30の影Gの寸法を算出する。画像から寸法を算出するには、画像処理を用いる。具体的には、検査画像53bに微分処理を適用してエッジ抽出を行う。そして、検査対象物30の各辺を形成するピクセル数から長さを特定する。このようにして、検査対象物30の影Gの下辺の長さb、上辺の長さa及び高さkが算出される。
【0032】
<撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離の算出要領>
次に、撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離Aの算出要領について説明する。図5は、撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離Aの算出要領を説明するための説明図である。ここで、図5は、面角度計測装置10の光学系の上面(X―Y平面)図を表わしている。図5に示すように、検査対象物30の下辺の長さをw2、検査対象物30の下辺がスクリーン40に映し出す影Gの下辺の長さをa、撮像部20からスクリーン40までの距離をLとする。
【0033】
そして、撮像部20の中心とスクリーン40の中心を結ぶ線OR2に対して検査対象物30のQ1とQ2の長さがw2/2になるように設置すると、三角形OQ12と三角形OR12は相似形となる。これより、w2/2:A=a/2:Lの関係が成り立つ。ここからAを導出すると、次式で表される。
【数1】
【0034】
<撮像部20から検査対象物30の上辺までの距離の算出要領>
次に、撮像部20から検査対象物30の上辺までの距離Bの算出要領について説明する。図6は、撮像部20から検査対象物30の上辺までの距離Bの算出要領を説明するための説明図である。ここで、図6は、面角度計測装置10の光学系の上面(X-Y平面)図を表わしている。図6に示すように、検査対象物30の上辺の長さをw1、検査対象物30の上辺がスクリーン40に映し出す影Gの上辺の長さをb、撮像部20からスクリーン40までの距離をLとする。
【0035】
そして、撮像部20の中心とスクリーン40の中心を結ぶ線OV2に対して検査対象物30のT1とT2の長さがw1/2になるように設置されているとすると、三角形OT12と三角形OV12は相似形となる。これより、w1/2:B=b/2:Lの関係が成り立つ。ここからBを導出すると、次式で表される。
【数2】
【0036】
<面角度の算出要領>
次に、撮像部20から検査対象物30までの距離に基づく面角度の算出要領について説明する。図7は、検査対象物30の面角度の算出要領を説明するための説明図である。同図は、面角度計測装置10の光学系の側面(X-Z平面)図を表わしている。同図に示すように、検査対象物30の高さをh、撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離をA、撮像部20から検査対象物30の上辺までの距離をB、撮像部20からスクリーン40までの距離をLとする。また、検査対象物30がスクリーン40に映し出す影Gの高さをk、検査対象物30の上辺がスクリーン40に映し出す影Gの位置R1と面角度計測装置10の光学系の中心点の位置R2との長さをK1、検査対象物30の下辺がスクリーン40に映し出す影Gの位置R3と面角度計測装置10の光学系の中心点の位置R2との長さをK2とする。
【0037】
スクリーン40に映し出された検査対象物30の影Gの高さkは、次式で表される。
【数3】
【0038】
検査対象物30がE12=F12=H/2になるように設置されたならば、三角形OE12と三角形OR23は相似形であるため、H/2:A=K2:Lの関係が成り立ち、ここから式(4)が導き出せる。
【数4】
【0039】
また、三角形OF12と三角形OR12は相似形であるため、H/2:B=K1:Lの関係が成り立ち、ここから式(5)が導き出せる。
【数5】
【0040】
次に、式(4)及び式(5)から、2AK2/L=2B(k―K2)/Lとなり、ここからK2を導き出すと式(6)となる。
【数6】
【0041】
次に、式(4)に式(6)を代入すると、式(7)となる。
【数7】
【0042】
そして、式(7)に式(1)及び式(2)を代入し整理すると、Hは、次式で表される。
【数8】
【0043】
面角度θは、θ=cos-1(H/h)で求められるので、Hに式(8)を代入すると面角度θは、式(9)となる。
【数9】
ここで、w1、w2、h、a、b及びkは既知であることから面角度θを求めることができる。
【0044】
<面角度計測装置10の処理手順>
次に、面角度計測装置10の処理手順について説明する。図8は、図1に示した面角度計測装置10の処理手順を示すフローチャートである。図8に示すように、面角度計測装置10は、検査画像を撮像するため光源をONに制御する(ステップS101)。
【0045】
そして、面角度計測装置10は、撮像部20を制御し、検査画像53bを取得する(ステップS102)。その後、面角度計測装置10は、取得した検査画像53bのノイズ除去を行い(ステップS103)、検査対象物30の影Gの寸法を算出する(ステップS104)。
【0046】
その後、面角度計測装置10は、あらかじめ計測した検査対象物30の寸法と、検査対象物30の影Gとに基づいて撮像部20から検査対象物30までの距離を算出する(ステップS105)。そして、面角度計測装置10は、あらかじめ計測した検査対象物30の寸法と、検査対象物30の影Gの影寸法に基づいて面角度を算出する(ステップS106)。そして、求めた面角度を所定の表示部51に表示し(ステップS107)、全ての処理を終了する。
【0047】
上述してきたように、本実施形態1では、面角度計測装置10は、光源が内蔵された撮像部20より拡散光を検査対象物30に照射し、撮像部20と検査対象物30の延長線上に設置されたスクリーン40に検査対象物30の影Gを映し出す。そして、テレセントリック光学系を有する撮像部20により検査対象物30の影Gを含む検査画像53bを撮像し、画像処理により影Gの寸法を算出する。その後、検査対象物30の寸法データ53aに基づいて撮像部20から検査対象物30までの距離を算出し、検査対象物30の影Gの寸法、検査対象物30の寸法及び距離に基づいて検査対象物30の面角度を求めるようにしたため、検査対象物30の影Gを撮像した検査画像53bから検査対象物30の面角度を効率良く計測することができる。
【0048】
<変形例>
ところで、上記実施形態1では、検査対象物30の影Gを検査対象物30が設置している方向から撮像する場合について説明したが、変形例では、検査対象物30の影Gをスクリーン40の裏面から撮像する場合について説明する。
【0049】
図9は、変形例を説明するための説明図である。図9に示すように、変形例の光学系は、光源22、検査対象物30、スクリーン41及び裏面撮像部21を有する。光源22は、拡散光を検査対象物30に照射する光源である。スクリーン41は、透明あるいは透過型スクリーンフィルム等を用いたスクリーンであり、スクリーン41の裏面(スクリーン41に対して光源22と反対側)から検査対象物30の影Gを撮像することができる。裏面撮像部21は、セントリック光学系を有する撮像部である。
【0050】
そして裏面撮像部21は、スクリーン41に映し出された検査対象物30の影Gを撮像し、撮像した検査画像53bに基づいて実施形態1と同様の手順で面角度θを算出する。
【0051】
[実施形態2]
ところで、上記実施形態1では、スクリーン40は、検査対象物30から所定の距離離れた位置に配設する場合について説明したが、実施形態2では、スクリーン40が検査対象物30の端部に接触するように配設する場合について説明する。なお、実施形態1と同様の部位については、同一の符号を付すこととして、その詳細な説明は省略する。
【0052】
図10は、実施形態2に係る面角度計測装置70の概要を説明するための説明図である。図10に示すように、実施形態2に係る面角度計測装置70は、撮像部20と、検査対象物30と、スクリーン40と、端末装置80とを有する。
【0053】
端末装置80は、表示部51、入力部52、記憶部53及び制御部84を有する。制御部84は、端末装置80の全体を制御する制御部であり、光学制御部54aと、画像取得部54bと、影寸法算出部54cと、距離算出部84dと、面角度算出部84eと、表示処理部54fとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、光学制御部54aと、画像取得部54bと、影寸法算出部54cと、距離算出部84dと、面角度算出部84eと、表示処理部54fとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0054】
距離算出部84dは、検査対象物30の寸法データ53a及び影Gの寸法に基づいて撮像部20から検査対象物30までの距離を算出する処理部である。具体的には、検査対象物30の下辺の長さと、影Gの下辺の長さと、撮像部20からスクリーン40までの距離とに基づいて撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離を算出する。
【0055】
面角度算出部84e、検査対象物30の寸法データ53a及び撮像部20から検査対象物30までの距離に基づいて検査対象物30の面角度を算出する処理部である。具体的には、検査対象物30の上辺の長さと、下辺の長さと、高さと、撮像部20から検査対象物30の上辺までの距離、又は、撮像部20からスクリーン40までの距離と、撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離とに基づいて検査対象物30の面角度を算出する。
【0056】
<検査対象物30の影Gの生成要領>
次に、面角度計測装置70の検査対象物30の影の生成要領について説明する。図11は、図10に示した面角度計測装置70の検査対象物30の影Gの生成要領を説明するための説明図である。図11に示すように、撮像部20に内蔵された光源から拡散光Sが検査対象物30に向けて照射される。照射された拡散光Sは、検査対象物30の上面に接触するように配設されたスクリーン40に検査対象物30の影Gを生成する。
【0057】
ここで、生成される検査対象物30の影Gの寸法は、撮像部20からスクリーン40までの距離をL、撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離をAとすると、影Gの上辺の長さはw1となり、影Gの下辺の長さw3は検査対象物30の下辺の長さw2に対して撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離Aに反比例する。
【0058】
<撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離の算出要領>
次に、撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離Aの算出要領について説明する。図12は、図10に示した面角度計測装置70の撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離Aの算出要領を説明するための説明図である。ここで、図12は、面角度計測装置70の光学系の上面(X―Y平面)図を表わしている。図12に示すように、検査対象物30の下辺の長さをw2、検査対象物30の下辺がスクリーン40に映し出す影Gの下辺の長さをw3、撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離をA、撮像部20からスクリーン40までの距離をLとする。
【0059】
そして、撮像部20の中心とスクリーン40の中心を結ぶ線OR2に対して検査対象物30のQ12の長さがw2/2になるように設置すると、三角形OQ12と三角形OR12は相似形となる。これより、w2/2:A=w3/2:Lの関係が成り立つ。ここからAを導出すると、次式となる。
【数10】
【0060】
<面角度の算出要領>
次に、撮像部20から検査対象物30までの距離に基づく面角度の算出要領について説明する。図13は、図10に示した面角度計測装置70の検査対象物30の面角度の算出要領を説明するための説明図である。ここで、図13は、面角度計測装置70の光学系の側面(X-Z平面)図を表わしている。図13に示すように、検査対象物30の高さをh、撮像部20から検査対象物30の下辺までの距離をA、撮像部20からからスクリーン40までの距離をL、検査対象物30がスクリーン40に映し出す影Gの高さをk、面角度計測装置70の光学系の中心点の位置R4と検査対象物30の下辺がスクリーン40に映し出す影Gの位置R5との長さをK3、検査対象物30のZ軸方向の高さをHとする。
【0061】
検査対象物30がスクリーン40に映し出す影Gの高さkは、撮像部20の中心とスクリーン40の中心を結ぶ線OR4に対して検査対象物30のE3とE4の長さがH/2になるように設置されているとすると、高さkは次式で表される。
【数11】
【0062】
三角形OE34と三角形OR45は相似形であるため、H/2:A=K3:Lの関係が成り立ち、ここから式(12)が導き出せる。
【数12】
【0063】
そして、式(12)に式(10)を代入して整理すると、Hは、次式で表される。
【数13】
【0064】
面角度θは、θ=cos-1(H/h)でもとめられるのでHに式(13)を代入すると面角度θは、次式で求められる。
【数14】
ここで、w2、h、w3及びkは既知であることから面角度θを求める事ができる。
【0065】
上述してきたように、本実施形態2では、面角度計測装置70は、光源が内蔵された撮像部20より拡散光を検査対象物30に照射し、検査対象物30の上辺に接するように配設されたスクリーン40に検査対象物30の影Gを映し出す。そして、テレセントリック光学系を有する撮像部20により検査対象物30の影Gを含む検査画像53bを撮像し、画像処理により影Gの寸法を算出する。その後、検査対象物30の寸法データ53aに基づいて撮像部20から検査対象物30までの距離を算出し、検査対象物30の影Gの寸法、検査対象物30の寸法及び距離に基づいて検査対象物30の面角度を求めるようにしたため、検査対象物30の影Gを撮像した検査画像53bから検査対象物30の面角度を効率良く計測することができる。
【0066】
なお、上記実施形態1及び実施形態2では、算出した面角度を表示する場合について説明したが、本発明はこれ限定されるものではなく、検査対象物30の角度を変更できる角度変更部を配設し、所定の設定角度を記憶しておき、算出した面角度と所定の設定角度との差分を角度変更部に送信し、検査対象物30の面角度を自動で調整できるようにしてもよい。
【0067】
上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る面角度計測装置及び面角度計測方法は、光学異方性の検査を効率的に行うために検査対象物の面角度を効率良く計測する場合に適している。
【符号の説明】
【0069】
10、70 面角度計測装置
20 撮像部
21 裏面撮像部
22 光源
30 検査対象物
40、41 スクリーン
50、80 端末装置
51 表示部
52 入力部
53 記憶部
53a 寸法データ
53b 検査画像
54 制御部
54a 光源制御部
54b 画像取得部
54c 影寸法算出部
54d 距離算出部
54e 面角度算出部
54f 表示処理部
84 制御部
84d 距離算出部
84e 面角度算出部
C 光軸
G 影
P 正反射光
S 拡散光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13