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特開2024-55037受電要素の受電制御方法、及び受電要素の受電制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055037
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】受電要素の受電制御方法、及び受電要素の受電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20240411BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240411BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20240411BHJP
   B60L 53/63 20190101ALI20240411BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240411BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240411BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J3/14
B60L53/30
B60L53/63
H02J7/00 P
H02J7/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161618
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】村井 謙介
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064CB21
5G064DA11
5G066HA17
5G066KA01
5G066KA12
5G066KD01
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD04
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BE01
5H125DD02
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】ユーザが希望する時間内に、電力消費要素が必要とする蓄電量に到達することができる受電制御方法を提供する。
【解決手段】電力供給基点を経由して負荷群に送ることができる総送電電力の最大値から、電力供給基点を経由して負荷群に送っている総送電電力の現在値を減じた第1差分電力が予め設定された余裕量以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値より大きい場合には、余裕量から第1差分電力を減じた第2差分電力に、他の受電要素の受電よりも自己の受電が優先される度合いを示す受電要素の優先度を乗じることにより、受電要素の第1要素差分電力を算出する。前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力から、第1要素差分電力を減算することにより、第1要素受電電力を更新し、更新後の第1要素受電電力を受電するように受電要素の受電装置を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受電要素を含む負荷群へ電力供給基点を経由して電気エネルギーを供給する電力システムにおいて、前記受電要素に搭載された受電制御装置が、前記受電要素が受電する電力である第1要素受電電力を、処理サイクルを繰り返すことにより制御する受電要素の受電制御方法であって、
前記処理サイクルには、
前記電力供給基点を経由して前記負荷群に送ることができる総送電電力の最大値から、前記電力供給基点を経由して前記負荷群に送っている総送電電力の現在値を減じた第1差分電力を示す情報を取得し、
前記受電要素が必要とする電力量である必要充電量と、前記受電要素を充電することができる残り時間である充電可能時間とを示す情報を取得し、
前記必要充電量を前記充電可能時間で除することにより出力制御閾値を算出し、
前記第1差分電力が予め設定された余裕量以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値より大きい場合には、
前記余裕量から前記第1差分電力を減じた第2差分電力に、他の受電要素の受電よりも自己の受電が優先される度合いを示す前記受電要素の優先度を乗じることにより、前記受電要素の第1要素差分電力を算出し、
前回の処理サイクルにおける前記第1要素受電電力から、前記第1要素差分電力を減算することにより、前記第1要素受電電力を更新し、
更新後の前記第1要素受電電力を受電するように前記受電要素の受電装置を制御する
ことが含まれる受電要素の受電制御方法。
【請求項2】
前記処理サイクルには、
前記第1差分電力が予め設定された余裕量より大きい場合には、
前記第1差分電力に、前記優先度を乗じることにより、第2要素差分電力を算出し、
前回の処理サイクルにおける前記第1要素受電電力に、前記第2要素差分電力を加算することにより、前記第1要素受電電力を更新する
ことが含まれることを特徴とする請求項1に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項3】
前記処理サイクルには、
前回の処理サイクルにおける前記第1要素受電電力が、前回の処理サイクルにおける前記出力制御閾値以下の場合には、
前記第1差分電力に、前記優先度を乗じることにより、第2要素差分電力を算出し、
前回の処理サイクルにおける前記第1要素受電電力に、前記第2要素差分電力を加算することにより、前記第1要素受電電力を更新する
ことが含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項4】
前記処理サイクルには、
前記第1差分電力が零以上且つ予め設定された余裕量以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける前記第1要素受電電力が、前回の処理サイクルにおける前記出力制御閾値と等しい場合には、
今回の処理サイクルにおける前記出力制御閾値の値を前記第1要素受電電力として、前記第1要素受電電力を更新する
ことが含まれることを特徴とする請求項1に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項5】
前記処理サイクルには、
前記第1差分電力に、前記優先度を乗じることにより、第2要素差分電力を算出し、
前回の処理サイクルにおける前記第1要素受電電力に、前記第2要素差分電力を加算することにより、第2要素受電電力を算出し、
前回の処理サイクルにおける前記第1要素受電電力が、前回の処理サイクルにおける前記出力制御閾値より小さく、且つ、第2要素受電電力が、今回の処理サイクルにおける前記出力制御閾値以上の場合には、
今回の処理サイクルにおける前記出力制御閾値の値を前記第1要素受電電力として、前記第1要素受電電力を更新する
ことが含まれることを特徴とする請求項1又は4に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項6】
前記出力制御閾値は、前記必要充電量を前記充電可能時間で除した値を、前記電力供給基点から電力が供給される際の電力損失を考慮した充電効率で除することにより算出される
ことを特徴とする請求項1、2又は4のいずれか1項に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項7】
複数の受電要素を含む負荷群へ電力供給基点を経由して電気エネルギーを供給する電力システムにおいて、前記受電要素に搭載され、前記受電要素が受電する電力である第1要素受電電力を、処理サイクルを繰り返すことにより制御する受電要素の受電制御装置であって、
前記処理サイクルには、
前記電力供給基点を経由して前記負荷群の全体に送ることができる総送電電力の最大値から、前記電力供給基点を経由して前記負荷群の全体に送っている総送電電力の現在値を減じて得られる第1差分電力を示す情報を取得し、
前記受電要素が充電を必要とする電力量である必要充電量と、前記受電要素を充電することができる残り時間である充電可能時間とを取得し、
前記必要充電量を前記充電可能時間で除することにより、単位時間あたりに前記受電要素に供給が必要とされる電力の閾値である出力制御閾値を算出し、
前記第1差分電力が予め設定された余裕量以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値より大きい場合には、
前記余裕量から前記第1差分電力を減じることにより第2差分電力を算出し、
前記第2差分電力に、他の受電要素の受電よりも自己の受電が優先される度合いを示す前記受電要素の優先度を乗じることにより、前記受電要素の第1要素差分電力を算出し、
前回の処理サイクルにおける前記第1要素受電電力から、前記第1要素差分電力を減算することにより、前記第1要素受電電力を更新し、
更新後の前記第1要素受電電力を受電するように前記受電要素の受電装置を制御する
ことが含まれる受電要素の受電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電要素の受電制御方法、及び受電要素の受電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6168528号公報(特許文献1)には、複数の電力消費要素を含むグループ全体で消費される総消費電力の制約に基づいて、各電力消費要素の消費電力を制御する技術が記載されている。具体的には、次の事項が記載されている。同報送信要素が、総消費電力の現在値と総消費電力の基準値との差の関数(総消費電力調整指示値)をグループ内に同報送信する。各電力消費要素が、この関数と自己に与えられた優先度とを用いて自己の消費電力を制御する。これによってグループ全体の総消費電力の現在値が総消費電力の基準値に収束されて制約される。結果として、各電力消費要素は、電力制御同報送信要素及び他の電力消費要素から独立して制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6168528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、優先度を設定する際に、各電力消費要素のユーザの要求を考慮していない。よって、総消費電力の現在値と総消費電力の基準値との差を各電力消費要素に均等に分配することはできても、ユーザが希望する時間内に、電力消費要素が必要とする蓄電量に到達できない場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザが希望する時間内に、電力消費要素が必要とする蓄電量に到達することができる受電要素の受電制御方法及び受電制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る受電制御方法及び受電制御装置は、複数の受電要素を含む負荷群へ電力供給基点を経由して電気エネルギーを供給する電力システムにおいて、受電要素に搭載された受電制御装置が、受電要素が受電する電力である第1要素受電電力を、処理サイクルを繰り返すことにより制御する。電力供給基点を経由して負荷群に送ることができる総送電電力の最大値から、電力供給基点を経由して負荷群に送っている総送電電力の現在値を減じた第1差分電力を示す情報を取得する。受電要素が必要とする電力量である必要充電量と、受電要素を充電することができる残り時間である充電可能時間とを示す情報を取得する。必要充電量を充電可能時間で除することにより出力制御閾値を算出する。第1差分電力が予め設定された余裕量以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値より大きい場合には、余裕量から第1差分電力を減じた第2差分電力に、他の受電要素の受電よりも自己の受電が優先される度合いを示す受電要素の優先度を乗じることにより、受電要素の第1要素差分電力を算出する。前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力から、第1要素差分電力を減算することにより、第1要素受電電力を更新し、更新後の第1要素受電電力を受電するように受電要素の受電装置を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ユーザが希望する時間内に、電力消費要素が必要とする蓄電量に到達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る受電制御装置及びその周辺装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係る受電制御装置が実行する処理ステップの一例を示すフローチャートである。
図3A図3Aは、第1実施形態において各電気自動車が受電する第1要素受電電力の第1の例を示す積み上げ折れ線グラフである。
図3B図3Bは、図3Aの各電気自動車の第1要素受電電力及び出力制御閾値を示すグラフである。
図3C図3Cは、図3Aの各電気自動車の必要充電量を示すグラフである。
図4A図4Aは、第1実施形態において各電気自動車が受電する第1要素受電電力の第2の例を示す積み上げ折れ線グラフである。
図4B図4Bは、図4Aの各電気自動車の第1要素受電電力及び出力制御閾値を示すグラフである。
図4C図4Cは、図4Aの各電気自動車の必要充電量を示すグラフである。
図5図5は、図3Bの一部を拡大したグラフである。
図6A図6Aは、第2実施形態に係る受電制御装置が実行する処理ステップの一例を示すフローチャートである。
図6B図6Aは、第2実施形態に係る受電制御装置が実行する処理ステップ一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態における各電気自動車の第1要素受電電力及び出力制御閾値の一例を示すグラフである。
図8図8は、本発明の変形例に係る受電制御装置の出力制御閾値の算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態及びその変形例について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
[第1実施形態]
図1を参照して、第1実施形態に係る電気自動車(受電要素の一例)の受電制御装置及びその周辺装置の構成を説明する。受電制御装置は、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)を含む負荷群11へ、電力設備12(電力供給基点10の一例)を経由して電気エネルギーを供給する電力システムにおいて、負荷群11に含まれる電気自動車EV1が受電する電力である要素受電電力を、所定の処理サイクルを繰り返すことにより制御する。
【0011】
受電制御装置は、外部から電気信号を受信する受信装置21と、電気自動車EV1の状態を示す情報を取得する車両状態取得装置22と、電気自動車EV1の第1要素受電電力を算出する計算装置23とを備える。電気自動車EV1は、外部から電力を受ける受電装置24と、受電装置24が受けた電力(第1要素受電電力)を蓄えるバッテリ25と、バッテリ25が蓄える電気エネルギー又は第1要素受電電力に基づいて駆動するモータ26とを備える。
【0012】
「処理サイクル」には、以下の処理ステップが含まれる(以下、添え字(右下付文字)「t」「t+1」は、「処理サイクル」の繰り返し回数を示し、tは整数である)。
(a)受信装置21は、電力設備12を経由して負荷群11に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)から、電力設備12を経由して負荷群11に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)を減じた第1差分電力(△P)を示す情報を取得する。
(b)車両状態取得装置22は、電気自動車EV1が必要とする電力量である必要充電量(Ereq)と、前記受電要素を充電することができる残り時間である充電可能時間(Tleave)とを示す情報を取得する。
(c)計算装置23は、必要充電量(Ereq)を充電可能時間(Tleave)で除することにより出力制御閾値(Lt+1)を算出する。
(d)計算装置23は、他の電気自動車(EV2、EV3、・・・)の受電よりも自己(電気自動車EV1)の受電が優先される度合いを示す電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。
(e)計算装置23は、第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きいという第1の条件を満たすか否かを判断する。
(f)計算装置23は、第1の条件を満たす場合には、後述する第1の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
計算装置23は、第1の条件を満たさない場合には、後述する第2の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
(g)計算装置23は、更新後の第1要素受電電力(Pt+1)を受電するように電気自動車EV1を制御する。
【0013】
ここで、実施形態及び変形例において、「電気自動車」は、電力設備12を経由して伝送される電力を受電する「蓄電要素」又は「受電要素」の一例である。蓄電要素は、受電した電力をバッテリ(二次電池、蓄電池、充電式電池を含む)に蓄える。「蓄電要素」には、車両(電気自動車、ハイブリッド車、建設機械、農業機械を含む)、鉄道車両、遊具、工具、家庭製品、日用品など、バッテリを備える、あらゆる機器及び装置が含まれる。
【0014】
「蓄電要素」は、電力設備12を経由して伝送される電力を受電する「受電要素」の一例である。「受電要素」には、「蓄電要素」の他に、受電した電力を蓄えずに消費する「電力消費要素」も含まれる。「電力消費要素」には、鉄道車両、遊具、工具、家庭製品、日用品など、が含まれる。「電力消費要素」は、電気自動車のように、バッテリを備えていても構わない。電気自動車が受電した電力をバッテリに蓄えずに、直接、モータへ電送し、モータの駆動力として消費する場合、電気自動車は「電力消費要素」の一例となる。このように、「電力消費要素」には、バッテリを備えるか否かに係わらず、受電した電力を蓄電せずに消費する、あらゆる機器及び装置が含まれる。
【0015】
「蓄電要素」及び「受電要素」は、いずれも受電制御装置による受電制御の単位構成を示す。即ち、蓄電要素又は受電要素を単位として実施形態及び変形例に係わる受電制御が行われる。例えば、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)の各々について、互いに独立して並列に実施形態及び変形例に係わる受電制御が行われる。
【0016】
実施形態では、受電要素の一例として蓄電要素を挙げ、更に、蓄電要素の一例として、電気をエネルギー源とし、モータ26を動力源として走行する電気自動車(EV)を挙げる。しかし、本発明における受電要素及び蓄電要素をそれぞれ電気自動車(EV)に限定することは意図していない。
【0017】
実施形態及び変形例において、「電力設備12」は、電力供給基点10の一例である。
【0018】
実施形態及び変形例では、受電制御装置が、電気自動車EV1に搭載されている例を説明するが、勿論、受電制御装置は、短距離無線、無線LAN、無線WANなどの近距離無線通信技術、或いは、携帯電話通信網を利用して、電気自動車EV1の外部から電気自動車EV1の要素受電電力を制御してもよい。
【0019】
また、負荷群11に含まれる複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)のうちの1台の電気自動車EV1の構成を例に取り説明するが、負荷群11に含まれる他の電気自動車(EV2、EV3、・・・)も電気自動車EV1と同じ構成を有している。
【0020】
受電制御装置は、電力設備12を経由して電気自動車EV1が受電する電力を制御する。電気自動車EV1は、オンボードチャージャー(OBC)と呼ばれる受電装置24を備える。計算装置23は、受電装置24が電力設備12を経由して受電する電力を制御する。受電装置24が受電した電力は、バッテリ25に蓄えられる。又は、電気自動車EV1は、受電装置が受電した電力を、バッテリ25に蓄えず、駆動源としてのモータ26へ直接送電しても構わない。
【0021】
電力設備12を経由して電気自動車EV1へ供給される電力は、電流計測装置13により計測される。電流計測装置13により計測された電力値は、差分情報送信装置14へ送信される。
【0022】
1つの電力設備12を経由して、負荷群11に含まれる複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)に対して電気エネルギーが供給される。更に、1つの電力設備12を経由して、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)のみならず、負荷群11に含まれる1又は2以上の他の電力消費要素15に対しても電気エネルギーが供給されてもよい。電力設備12を経由して電気エネルギーの供給を受ける複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)及び1又は2以上の他の電力消費要素15は、1つのグループ(負荷群11)を形成している。
【0023】
電流計測装置13は、電力設備12を経由して1つの負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)及び他の電力消費要素15へ送られている総送電電力の現在値(Pall_now)、換言すれば、負荷群11の全体の総送電電力を計測する。
【0024】
ここで、負荷群11の全体の電力容量、即ち、電力設備12を経由して負荷群11に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)が予め定められている。実施形態に係わる受電制御装置は、総送電電力の最大値(Pall_max)の制約に基づき、電気自動車EV1の要素受電電力を制御する。例えば、受電制御装置は、電流計測装置13が計測する総送電電力の現在値(Pall_now)が、総送電電力の最大値(Pall_max)を超えないように、電気自動車EV1の受電電力を制御する。勿論、総送電電力の現在値(Pall_now)が総送電電力の最大値(Pall_max)を一時的に超えることを許容するように、電気自動車EV1の受電電力を制御しても構わない。
【0025】
図1に示すように、第1実施形態では、電力設備12、電流計測装置13及び電気自動車EV1の各々に対して、差分情報送信装置14が無線又は有線により通信可能に接続されている。電力設備12は、差分情報送信装置14へ総送電電力の最大値(Pall_max)を示す電気信号を送信する。電流計測装置13は、計測した総送電電力の現在値(Pall_now)を示す電気信号を差分情報送信装置14へ送信する。
【0026】
差分情報送信装置14は、計算部31と送信部32とを備える。計算部31は、(1)式に示すように、総送電電力の最大値(Pall_max)から総送電電力の現在値(Pall_now)を減ずることにより第1差分電力(△P)を算出する。送信部32は、第1差分電力(△P)を示す電気信号を、負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)に対して、移動体通信により送信(ブロードキャスト)する。
【0027】
【数1】
【0028】
第1差分電力(△P)を示す電気信号は受信装置21により受信され、計算装置23へ転送される。これにより、受電制御装置は、第1差分電力(△P)を示す情報を取得することができる。
【0029】
なお、差分情報送信装置14は、送信部32を用いて、負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)の受信装置21に対して、無線通信により第1差分電力(△P)を示す情報を送信(ブロードキャスト)する。または、第1差分電力(△P)を示す情報の送信には有線による通信でもよい。
【0030】
差分情報送信装置14は、例えば、コンピュータネットワークを介して、電力設備12、電流計測装置13、及び負荷群11に接続されたサーバであってもよい。或いは、差分情報送信装置14は、電力設備12の一部分として構成されていてもよい。
【0031】
車両状態取得装置22は、電気自動車EV1が充電を必要とする電力量である必要充電量(Ereq)を示す情報を取得する。必要充電量(Ereq)は、例えば、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)から算出可能である。必要充電量(Ereq)は、現在のバッテリ25(蓄電要素)の充電率の現在値(SOCnow)から、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)を達成するために必要な充電量である。車両状態取得装置22は、充電率の目標値(SOCgoal)及びバッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)を取得して、必要充電量(Ereq)を算出してもよい。
【0032】
充電率の目標値(SOCgoal)は、ユーザがスマートフォンなどの情報通信端末又は電気自動車EV1に搭載されたユーザインターフェースを用いて実際に設定した値であってもよい。又は、ユーザからの具体的な指示又は設定が無い場合、ユーザの過去の行動履歴(過去の目標値(SOCgoal)の設定履歴など)を調査して得られる統計データから推定される値であっても構わない。或いは、ユーザからの具体的な指示又は設定が無い場合、目標値(SOCgoal)と100%(満充電)に設定してもよい。
【0033】
バッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)は、例えば、車両状態取得装置22が測定するバッテリ25の充電率の値である。
【0034】
また、車両状態取得装置22は、電気自動車EV1のバッテリ25を充電することができる残り時間である充電可能時間(Tleave)を示す情報を取得する。充電可能時間(Tleave)は、電気自動車EV1が受電を終了する時刻(受電の終了時刻T)から算出可能である。
【0035】
「受電の終了時刻(T)」とは、電気自動車EV1が受電を続けることが可能な期間が終了する時刻を意味し、受電制御フロー(図4)において、受電を継続しない(S103でNO)と判断する時刻から区別される。
【0036】
受電の終了時刻(T)は、ユーザがスマートフォンなどの情報通信端末又は電気自動車EV1に搭載されたユーザインターフェースを用いて実際に設定した時刻であってもよい。又は、ユーザからの具体的な指示又は設定が無い場合、ユーザの過去の行動履歴(過去の出発時刻の履歴など)を調査して得られる統計データから推定される時刻であっても構わない。
【0037】
計算装置23は、(2)式に示すように、必要充電量(Ereq)を充電可能時間(Tleave)で除することにより出力制御閾値(Lt+1)を算出する。出力制御閾値(Pt+1)は、充電可能時間(Tleave)内に必要充電量(Ereq)を充電するために必要な第1要素受電電力の最小値(閾値)を意味する。
【0038】
【数2】
【0039】
計算装置23は、他の電気自動車(EV2、EV3、・・・)の受電よりも自己の受電が優先される度合いを示す電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。例えば、計算装置23は、(3)式を用いて優先度(β)を算出する。(3)式において、Nは、負荷群11内で受電を行う電気自動車の総数を示す。なお、優先度(β)の算出方法はこれに限定されるものではない。
【0040】
【数3】
【0041】
電気自動車の総数(N)は、負荷群11における過去の受電履歴を調査して得られる統計データ(数量データ)であってもよいし、総送電電力の現在値(Pall_now)から、おおよその電気自動車の総数(N)を推定することも可能である。総数(N)は第1差分電力(△P)と同様に差分情報送信装置14もしくは差分情報送信装置14に付随する装置から同報送信される。または、充電システムの位置情報や識別信号などで、総数(N)を特定してもよい。
【0042】
計算装置23は、第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きいという第1の条件を満たすか否かを判断する。
【0043】
第1差分電力(△P)が余裕量(△Pmargin)以下の状態とは、電力設備12を経由して負荷群11に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)が、電力設備12を経由して負荷群11に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)に対して余裕が無い状態を意味する。また、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きい状態とは、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、充電可能時間(Tleave)内に必要充電量(Ereq)を充電するために必要な出力制御閾値(L)に対して余裕がある状態を意味する。
【0044】
計算装置23は、第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きいという第1の条件を満たす場合には、(4)式に示す第1の式に基づいて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
【0045】
【数4】
【0046】
この場合、計算装置23は、(4)式に示すように、余裕量(△Pmargin)から第1差分電力(△P)を減じた第2差分電力(△Pmargin-△P)に優先度(β)を乗じることにより第1要素差分電力(β・(△Pmargin-△P))を算出し、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)から、第1要素差分電力(β・(△Pmargin-△P))を減算することにより、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
【0047】
一方、計算装置23は、第1の条件を満たさない場合、すなわち、第1差分電力(△P)が余裕量(△Pmargin)より大きい場合、又は、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)以下の場合には、(5)式に示す第2の式に基づいて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
【0048】
第1差分電力(△P)が余裕量(△Pmargin)より大きい状態とは、電力設備12を経由して負荷群11に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)が、電力設備12を経由して負荷群11に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)に対して余裕がある状態を意味する。また、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)以下の状態とは、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、充電可能時間(Tleave)内に必要充電量(Ereq)を充電するために必要な出力制御閾値(L)に対して余裕が無い状態を意味する。
【0049】
【数5】
【0050】
この場合、計算装置23は、(5)式に示すように、第1差分電力(△P)に優先度(β)を乗じることにより第2要素差分電力(β△P)を算出し、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)に、第2要素差分電力(β△P)を加算することにより、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
【0051】
計算装置23は、受電装置24が更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように受電装置24に対して指示信号を送信し、指示信号を受信した受電装置24は、更新後の要素受電電力(Pt+1)を、電力設備12を経由して受電する。
【0052】
受電制御装置は、(a)~(g)の処理ステップを含む「処理サイクル」を一定の周期で繰り返し実行することにより、電気自動車EV1の受電装置24が受電する電力(第1要素受電電力P)を制御する。
【0053】
図2のフローチャートを参照して、図1の受電制御装置による受電制御方法の一例を説明する。なお、当業者であれば、図1の受電制御装置の具体的な構成及び機能の説明から、受電制御装置による受電処理方法の具体的な手順を、容易に理解できる。よって、ここでは、図1の受電制御装置による受電処理方法として、受電制御装置の主要な処理動作を説明し、詳細な処理動作の説明は、図1を参照した説明と重複するため割愛する。
【0054】
まず、ステップS101で、受信装置21は、計算部31により算出された第1差分電力(△P)を示す情報を取得する。
【0055】
ステップS102に進み、車両状態取得装置22は、電気自動車EV1が必要とする電力量である必要充電量(Ereq)を示す情報を取得する。
【0056】
ステップS103に進み、車両状態取得装置22は、受電要素を充電することができる残り時間である充電可能時間(Tleave)を示す情報を取得する。
【0057】
ステップS104に進み、計算装置23は、必要充電量(Ereq)を充電可能時間(Tleave)で除することにより出力制御閾値(Lt+1)を算出する。
【0058】
ステップS105に進み、受電制御装置は、受電を継続するか否かを判断する。例えば、電気自動車EV1のユーザから受電終了の指示信号を受信した場合(S105でNO)、又は、現時刻が受電の終了時刻(T)となった場合、受電の継続を終了する。或いは、充電ポートの未接続を検知した場合など(S105でNO)、それから数分の内に、電気自動車EV1が移動を開始する可能性が高まるため、受電の継続を終了する。更に、バッテリ25の充電率(SOC)が目標値に達した場合(S105でNO)、受電の継続を終了する。これらの状況が無ければ(S105でYES)、受電制御装置は、受電を継続するために、ステップS106へ進む。
【0059】
ステップS106では、計算装置23は、(3)式を用いて、電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。
【0060】
ステップS107へ進み、計算装置23は、第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下であるか否かを判断する。第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下である場合(S107でYES)、ステップS108に進み、計算装置23は、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きいか否かを判断する。一方、第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)より大きい場合(S107でNO)、ステップS110に進む。
【0061】
ステップS108において、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きい場合(S108でYES)、ステップS109に進み、計算装置23は、(4)式に示す第1の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。一方、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)以下の場合(S108でNO)、ステップS110に進む。
【0062】
ステップS110において、計算装置23は、(5)式に示す第2の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
【0063】
ステップS111へ進み、計算装置23は、受電装置24が更新後の第1要素受電電力(Pt+1)を受電するように受電装置24を制御する。
【0064】
受電制御装置は、ステップS101からステップS111までを単位とする処理サイクルを、ステップS105でNOと判定されるまで、繰り返し実行することにより、第1要素受電電力(P)を制御する。
【0065】
(シミュレーション結果)
次に、第1実施形態に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行したシミュレーションの結果を説明する。
【0066】
先ず、第1実施形態のシミュレーションの条件を説明する。3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)の各々が、第1実施形態に係わる受電制御方法により受電制御を実行するものとする。電力設備12を経由して3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)は6kWである。
【0067】
図3A~3Cを用いて、第1実施形態のシミュレーションの第1の例について説明する。図3Aは、各電気自動車が受電する第1要素受電電力の第1の例を示す積み上げ折れ線グラフである。図3Aにおいて、P1~P3は電気自動車EV1~EV3の各々の第1要素受電電力を示す。
【0068】
図3Aにおいては、電気自動車EV1の開始時刻はおおよそ8時であり、終了時刻はおおよそ18時である。電気自動車EV2の開始時刻はおおよそ8時半であり、終了時刻はおおよそ16時半である。電気自動車EV3の開始時刻はおおよそ9時であり、終了時刻はおおよそ14時である。すなわち、充電可能時間Tleaveは、電気自動車EV1、電気自動車EV2、電気自動車EV3、の順に長くなる。
【0069】
図3Bは、図3Aの各電気自動車の第1要素受電電力及び出力制御閾値を示すグラフである。Pt1~Pt3は電気自動車EV1~EV3の各々の第1要素受電電力を示し、L1~L3は電気自動車EV1~EV3の各々の出力制御閾値を示す。
【0070】
第1の例において、各電気自動車の計算装置23は、各処理サイクルにおいて、第1の条件を満たすか否かを判断する。そして、第1の条件を満たす場合には、(4)式に示す第1の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。一方、第1の条件を満たさない場合には、(5)式に示す第2の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
【0071】
すなわち、各電気自動車は、第1差分電力(△P)が余裕量(△Pmargin)以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きいか否か(第1の条件を満たすか否か)に基づいて、第1の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を低下したり、第2の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を増加したりしながら、自己が受電する第1要素受電電力を調整する。
【0072】
図3Cは、図3Aの各電気自動車の必要充電量を示すグラフである。Ereq1~Ereq3は電気自動車EV1~EV3の各々の必要充電量を示す。各電気自動車が図3Bに示すような受電制御を行った結果、図3Cに示すように、各電気自動車の必要充電量は、それぞれの受電の終了時刻までに零となった。すなわち、各電気自動車は、第1の例において、受電の終了時刻までにそれぞれ満充電に到達することができた。
【0073】
次に、図4A~4Cを用いて、第1実施形態のシミュレーションの第2の例について説明する。図4Aは、各電気自動車が受電する第1要素受電電力の第2の例を示す積み上げ折れ線グラフである。図4Aにおいて、P1~P3は電気自動車EV1~EV3の各々の第1要素受電電力を示す。なお、第2の例において、各電気自動車が充電開始時に必要とする必要充電量は、第1の例において、各電気自動車が充電開始時に必要とする必要充電量と同じであるものとする。
【0074】
図4Aにおいては、電気自動車EV1の開始時刻はおおよそ8時であり、終了時刻はおおよそ15時である。電気自動車EV2の開始時刻はおおよそ8時半であり、終了時刻はおおよそ15時である。電気自動車EV3の開始時刻はおおよそ9時であり、終了時刻はおおよそ14時である。すなわち、充電可能時間Tleaveは、電気自動車EV1、電気自動車EV2、電気自動車EV3、の順に長くなる。
【0075】
また、図4Aにおける電気自動車EV1,EV2の充電可能時間Tleaveは、図3Aに示す第1の例における電気自動車EV1,EV2の充電可能時間Tleaveよりも短い。このため、第2の例においては、電気自動車EV1,EV2は、第1の例よりも短時間で必要充電量を充電しなければならない。したがって、図4Aにおいては、総送電電力の現在値(Pall_now)が、総送電電力の最大値(Pall_max)に対して余裕が無い状態になりやすい。すなわち、総送電電力の最大値(Pall_max)から総送電電力の現在値(Pall_now)を減じた第1差分電力(△P)が、余裕量(△Pmargin)以下の状態になりやすい。
【0076】
図4Bは、図4Aの各電気自動車の第1要素受電電力及び出力制御閾値を示すグラフである。Pt1~Pt3は電気自動車EV1~EV3の各々の第1要素受電電力を示し、L1~L3は電気自動車EV1~EV3の各々の出力制御閾値を示す。
【0077】
第2の例において、各電気自動車の計算装置23は、第1の例と同様の処理を行う。図4Cは、図4Aの各電気自動車の必要充電量を示すグラフである。Ereq1~Ereq3は電気自動車EV1~EV3の各々の必要充電量を示す。各電気自動車が図4Bに示すような受電制御を行った結果、図4Cに示すように、各電気自動車の必要充電量は、それぞれの受電の終了時刻までに零となった。すなわち、各電気自動車は、第2の例においても、受電の終了時刻までにそれぞれ満充電に到達することができた。
【0078】
(第1実施形態の作用効果)
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0079】
第1実施形態に係る受電制御方法及び受電制御装置は、電力供給基点10を経由して負荷群11に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)が、電力供給基点10を経由して負荷群11に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)に対して余裕が無い場合であって、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、充電可能時間(Tleave)内に必要充電量(Ereq)を充電するために必要な出力制御閾値(L)に対して余裕があるような場合には、電気自動車が受電する第1要素受電電力(Pt+1)を低下させることができる。これにより、電力システム内で供給可能な電力量に余裕が無い場合には、各受電要素が、必要充電量(Ereq)を充電するための出力制御閾値(L)を満たす範囲で、第1要素受電電力(Pt+1)を低下することができる。その結果、ユーザが希望する時間内に、電力消費要素が必要とする蓄電量に到達することができる。
【0080】
第1実施形態に係る受電制御方法及び受電制御装置は、電力供給基点10を経由して負荷群11に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)が、電力供給基点10経由して負荷群11に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)に対して余裕がある場合に、受電要素が受電する第1要素受電電力(Pt+1)を増加させることができる。これにより、電力システム内で供給可能な電力量に余裕ある場合には、各受電要素が、第1要素受電電力(Pt+1)を増加することができる。その結果、ユーザが希望する時間内に、電力消費要素が必要とする蓄電量に到達することができる。
【0081】
また、第1実施形態に係る受電制御方法及び受電制御装置は、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、充電可能時間(Tleave)内に必要充電量(Ereq)を充電するために必要な出力制御閾値(L)に対して余裕が無い場合に、受電要素が受電する第1要素受電電力(Pt+1)を増加させることができる。これにより、第1要素受電電力(P)が出力制御閾値(L)に対して余裕が無い場合に、各受電要素が、出力制御閾値(L)を満たすように、第1要素受電電力(Pt+1)を増加させることができる。その結果、ユーザが希望する時間内に、電力消費要素が必要とする蓄電量に到達することができる。
【0082】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0083】
第1実施形態では、計算装置23は、第1差分電力(△P)が余裕量(△Pmargin)以下の場合、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きいか否かに基づいて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新するのに用いる第1の式と第2の式を切り替える。
【0084】
このため、第1実施形態では、図5に示すように、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する際に、出力制御閾値(L)の近傍で、第1の式及び第2の式を交互に用いて第1要素受電電力(Pt+1)を更新する場合がある。図5は、図3Bの一部を拡大したグラフである。図5に示すように、第1実施形態では、電気自動車EV3の第1要素受電電力Pt3は、電気自動車EV3の出力制御閾値L3の近傍で、第1の式及び第2の式を交互に用いて第1要素受電電力を更新したことにより、第1要素受電電力Pt3が、出力制御閾値(L3)を跨いで小刻みに上昇と下降を繰り返しながら上昇している。この場合には、電気自動車EV3が充電可能時間内に受電する第1要素受電電力が、電気自動車EV3の必要充電量を超過する恐れがある。また、電気自動車EV3に、必要以上の電力が供給されることにより、電力システム全体の電力が不足する恐れがある。
【0085】
そこで、第2実施形態では、第1要素受電電力(P、Pt+1)と、出力制御閾値(L、Lt+1)との関係をより考慮して、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
【0086】
以下に、第2実施形態に係わる受電制御装置及び受電制御方法の具体的な構成及び手順を説明する。
【0087】
第2実施形態に係わる受電制御装置の構成を説明する。図1に示す第1実施形態に係わる受電制御装置と比べて、第2実施形態に係わる受電制御装置は、計算装置23による第1要素受電電力(Pt+1)の更新処理に違いが有る。その他の構成は、図1に示す受電制御装置と等しい。よって、相違する部分を中心に説明し、等しい部分については再度の説明を割愛する。
【0088】
第2実施形態に係わる受電制御装置は、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)を含む負荷群11へ電気エネルギーを供給する電力設備12を経由して、負荷群11に含まれる電気自動車EV1が受電する電力である第1要素受電電力(P)を、所定の処理サイクルを繰り返すことにより制御する。
【0089】
「処理サイクル」には、(1)~(7)の処理ステップが含まれる。(1)~(5)、(7)の処理は、第1実施形態における(a)~(e)、(g)の処理と同じである。
(1)受信装置21は、電力設備12を経由して負荷群11に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)から、電力設備12を経由して負荷群11に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)を減じた第1差分電力(△P)を示す情報を取得する。
(2)車両状態取得装置22は、電気自動車EV1が必要とする電力量である必要充電量(Ereq)と、前記受電要素を充電することができる残り時間である充電可能時間(Tleave)とを示す情報を取得する。
(3)計算装置23は、必要充電量(Ereq)を充電可能時間(Tleave)で除することにより出力制御閾値(Lt+1)を算出する。
(4)計算装置23は、他の電気自動車(EV2、EV3、・・・)の受電よりも自己(電気自動車EV1)の受電が優先される度合いを示す電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。
(5)計算装置23は、第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きいという第1の条件を満たすか否かを判断する。
(6)計算装置23は、第1の条件を満たす場合には、第1の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
一方、第1の条件のうち、「前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きい」という条件を満たさない場合には、計算装置23は、後述する第2の条件を満たすか否かを判断する。第2の条件を満たす場合には、計算装置23は、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)の値を第1要素受電電力(Pt+1)として更新する。
また、第1の条件のうち、「第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下である」という条件を満たさない場合、又は、第2の条件を満たさない場合には、計算装置23は、後述する第3の条件を満たすか否かを判断する。第3の条件を満たす場合にも、計算装置23は、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)の値を第1要素受電電力(Pt+1)として更新する。
さらに、上記第1~第3の条件をいずれも満たさない場合には、計算装置23は、第2の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
(7)計算装置23は、更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように電気自動車EV1を制御する。
【0090】
処理(5)において、計算装置23は、第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きいという第1の条件を満たすか否かを判断する。
【0091】
処理(6)において、計算装置23は、第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きいという第1の条件を満たす場合には、(4)式に示す第1の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
【0092】
また、計算装置23は、第1の条件のうち、「前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きい」という条件を満たさない場合には、以下の第2の条件を満たすか否かを判断する。第2の条件とは、第1差分電力(△P)が零以上且つ予め設定された余裕量(△Pmargin)以下であり、且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)と等しい、という条件である。第2の条件を満たす場合には、計算装置23は、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)の値を第1要素受電電力(Pt+1)として更新する。
【0093】
さらに、計算装置23は、第1の条件のうち、「第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下である」という条件を満たさない場合、又は、第2の条件を満たさない場合には、以下の第3の条件を満たすか否かを判断する。計算装置23は、第1差分電力(△P)に優先度(β)を乗じることにより第2要素差分電力(β△P)を算出する。そして、(6)式に示すように、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)に、第2要素差分電力(β△P)を加算することにより、第2要素受電電力(Qt+1)を算出する。
【0094】
【数6】
【0095】
その後、計算装置23は、以下の第3の条件を満たすか否かを判断する。第3の条件とは、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より小さく、且つ、第2要素受電電力(Qt+1)が、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)以上である、という条件である。第3の条件を満たす場合にも、計算装置23は、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)の値を第1要素受電電力(Pt+1)として更新する。
【0096】
そして、計算装置23は、第1~第3の条件をいずれも満たさない場合には、(5)式に示す第2の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。
【0097】
受電制御装置は、(1)~(7)の処理ステップを含む「処理サイクル」を一定の周期で繰り返し実行することにより、電気自動車EV1の受電装置24が受電する電力(第1要素受電電力Pt+1)を制御する。
【0098】
図6A及び図6Bのフローチャートを参照して、第2実施形態に係わる受電制御装置による受電制御方法の一例を説明する。なお、図6AのステップS201~S206、ステップS215は、図2のステップS201~S106、ステップS111と同じであるため、説明を割愛する。
【0099】
図6AのステップS207において、計算装置23は、第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下であるか否かを判断する。第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)以下である場合(S207でYES)、ステップS108に進み、計算装置23は、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きいか否かを判断する。一方、第1差分電力(△P)が予め設定された余裕量(△Pmargin)より大きい場合(S207でNO)、図6BのステップS212に進む。
【0100】
ステップS208において、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より大きい場合(S208でYES)、ステップS209に進み、計算装置23は、(4)式に示す第1の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。そして、ステップS215へ進む。一方、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)以下の場合(S208でNO)、図6BのステップS210に進む。
【0101】
ステップS210において、計算装置23は、第1差分電力(△P)が零以上且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)と等しいか否かを判断する。第1差分電力(△P)が零以上且つ、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)と等しい場合(ステップS210でYES)、ステップS211に進み、計算装置23は、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)の値を第1要素受電電力(Pt+1)として更新する。そして、図6AのステップS215に進む。一方、第1差分電力(△P)が零より小さい、又は、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)と等しくない場合(ステップS210でNO)、ステップS212に進む。
【0102】
ステップS212において、計算装置23は、第1差分電力(△P)に優先度(β)を乗じることにより第2要素差分電力(β△P)を算出する。そして、(6)式を用いて、第2要素受電電力(Qt+1)を算出する。
【0103】
ステップS213に進み、計算装置23は、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より小さく、且つ、第2要素受電電力(Qt+1)が、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)より大きいか否かを判断する。前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)より小さく、且つ、第2要素受電電力(Qt+1)が、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)以上の場合(ステップS213でYES)、ステップS211に進み、計算装置23は、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)の値を第1要素受電電力(Pt+1)として更新する。そして、図6AのステップS215に進む。一方、前回の処理サイクルにおける第1要素受電電力(P)が、前回の処理サイクルにおける出力制御閾値(L)以上、又は、第2要素受電電力(Qt+1)が、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)より小さい場合(ステップS213でNO)、ステップS214に進み、計算装置23は、(5)式に示す第2の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新する。そして、図6AのステップS215に進む。
【0104】
受電制御装置は、ステップS201からステップS215までを単位とする処理サイクルを、ステップS205でNOと判定されるまで、繰り返し実行することにより、第1要素受電電力(P)を制御する。
【0105】
(シミュレーション結果)
次に、第2実施形態に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行したシミュレーションの例を説明する。第2実施形態のシミュレーションの条件は、第1実施形態における図3Aの条件と同様である。
【0106】
図7は、第2実施形態における各電気自動車の第1要素受電電力及び出力制御閾値の一例を示すグラフである。Pt1~Pt3は電気自動車EV1~EV3の各々の第1要素受電電力を示す。また、L1~L3は電気自動車EV1~EV3の各々の出力制御閾値を示す。
【0107】
図3Bにおいては、各電気自動車の計算装置23は、各処理サイクルにおいて、第1の条件を満たす場合には、(4)式に示す第1の式を用いて第1要素受電電力(Pt+1)を更新し、第1の条件を満たさない場合には、(5)式に示す第2の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新して、更新した第1要素受電電力(Pt+1)を受電した。
【0108】
これに対し、図7においては、各電気自動車の計算装置23は、各処理サイクルにおいて、第1の条件を満たすか否かを判断する。そして、第1の条件を満たす場合には、(4)式に示す第1の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新し、更新した第1要素受電電力(Pt+1)を受電する。一方、第1の条件を満たさない場合には、計算装置23は、第2の条件又は第3の条件を満たすか否かを判断する。そして、第2の条件又は第3の条件を満たす場合には、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)の値を第1要素受電電力(Pt+1)として更新し、更新した第1要素受電電力(Pt+1)を受電する。さらに、計算装置23は、第1~第3の条件のいずれも満たさない場合には、(5)式に示す第2の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を更新し、更新した第1要素受電電力(Pt+1)を受電する。
【0109】
すなわち、各電気自動車は、第1の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を低下したり、第2の式を用いて、第1要素受電電力(Pt+1)を増加したりするだけでなく、第2の条件又は第3の条件を満たす場合には、今回の処理サイクルにおける出力制御閾値(Lt+1)の値を第1要素受電電力(Pt+1)として受電する。
【0110】
各電気自動車が図7に示すような受電制御を行った結果、図7においては、各電気自動車の第1要素受電電力Pt1~Pt3が、各電気自動車の出力制御閾値L1~L3の近傍で、第1の式及び第2の式を交互に用いて第1要素受電電力を更新することを抑制できた。これにより、第1要素受電電力Pt1~Pt3が、出力制御閾値L1~L3を跨いで小刻みに上昇と下降を繰り返しながら上昇することを抑制できた。
【0111】
(第2実施形態の作用効果)
以上説明したように、第2実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0112】
第2実施形態に係る受電制御方法及び受電制御装置は、各受電要素の第1要素受電電力(Pt+1)が、出力制御閾値(Lt+1)を跨いで小刻みに上昇と下降を繰り返しながら上昇することを抑制できる。各受電要素が充電可能時間(Tleave)内に受電する第1要素受電電力が、各受電要素の必要充電量を超過することを抑制できる。各受電要素に、必要以上の電力が供給されることにより、電力システム全体の電力が不足することを抑制できる。
【0113】
[変形例]
第1実施形態及び第2実施形態では、出力制御閾値(Lt+1)を(2)式に示すように、必要充電量(Ereq)を、充電可能時間(Tleave)で除することにより算出した。しかしながら、実際の電力システムにおいては、電力供給基点から電気エネルギーが供給される際には、送電時の抵抗等により、電力損失が生じる。このため、電気自動車が実際に受電する第1要素受電電力(Pt+1)が、出力制御閾値(Lt+1)を下回ってしまい、充電可能時間(Tleave)が経過した時点で、充電された電力量が必要充電量(Ereq)に到達しない場合がある。例えば図8に示すように、電気自動車が実際に受電した第1要素受電電力Ptが、電力損失によって出力制御閾値Ltを下回り、充電可能時間Tleaveが経過した時点で充電された電力量Pが、必要充電量Ereqを損失量Lだけ下回ってしまうような場合がある。
【0114】
そこで、計算装置23は、必要充電量(Ereq)を充電可能時間(Tleave)で除した値を、電力供給基点から電力が供給される際の電力損失を考慮した充電効率で除することにより算出してもよい。具体的には、計算装置23は、(2)式で示した出力制御閾値(Lt+1)を想定される最低送電効率(ηmin)で除することにより、出力制御閾値(Lt+1)を算出してもよい。具体的には計算装置23は、(2)式の代わりに、(7)式を用いて、出力制御閾値(Lt+1)を算出してもよい。
【0115】
【数7】
【0116】
これにより、受電要素が実際に受電する第1要素受電電力(Pt+1)が、送電時の電力損失により、出力制御閾値(Lt+1)を下回ってしまい、充電可能時間(Tleave)が経過した時点で、充電された電力量が必要充電量(Ereq)に到達することを抑制できる。
【0117】
なお、上述の実施形態、及び変形例は、本発明を実施する形態の例である。このため、本発明は、上述の実施形態、その変形例、及び実施例に限定されることはなく、これ以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0118】
実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータを受電制御装置として機能させるためのコンピュータプログラム(受電制御プログラム)を、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、受電制御が備える複数の情報処理部として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって受電制御装置を実現する例を示すが、もちろん、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、受電制御装置を構成することも可能である。専用のハードウェアには、実施形態、その変形例又は実施例に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。また、受電制御装置に含まれる複数の情報処理部を個別のハードウェアにより構成してもよい。受電制御装置は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【符号の説明】
【0119】
10 電力供給基点
11 負荷群
12 電力設備(電力供給基点)
15 他の電力消費要素(受電要素)
EV1~EV3 電気自動車(蓄電要素、受電要素)
Ereq 必要充電量
出力制御閾値
Pall_max 総送電電力の最大値
Pall_now 総送電電力の現在値
第1要素受電電力
SOCgoal 蓄電要素の充電率の目標値
SOCnow 蓄電要素の充電率の現在値
Tleave 充電可能時間
β 優先度
β・(△Pmargin-△P) 第1要素差分電力
△P 第1差分電力
△Pmargin 余裕量
△Pmargin-△P 第2差分電力
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8